JP3584634B2 - 光学的情報記録用媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザー光照射による相変化によって生じる反射率差または反射光位相差を利用した記録消去可能な光学的情報記録用媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクは再生専用型、記録可能型(書換可能型を含む)に分けられ、再生専用型はビデオディスク、オーディオディスク、さらには大容量コンピューター用ディスクメモリーとしてすでに実用化されている。
記録可能型の代表的なものには孔あけ・変形型、有機色素型、光磁気型、相変化型がある。孔あけ・変形型としてはTe等の低融点金属または染料等の記録層が用いられ、レーザー光照射により局所的に加熱され、孔もしくは凹凸部が形成される。
【0003】
有機色素型としては色素または色素を含むポリマー等からなる記録層が用いられ、記録前後で反射率(屈折率)が変化する。CDフォーマット信号の記録をおこなう光記録媒体として実用化されている。
光磁気型は記録層の磁化の向きにより記録や消去を行い、磁気光学効果によって再生を行う。
【0004】
一方、相変化型は相変化前後で反射率または反射光の位相が変化することを利用するものであり、外部磁界を必要とせず反射光量の違いを検出して再生を行う。相変化型は光磁気型と比較すると、磁石を必要としない、光学系が単純である等の理由によりドライブ作製が容易で、小型化、低コスト化にも有利である。さらに、レーザー光のパワーを変調するだけで、記録・消去が可能であり、消去と再記録を単一ビームで同時に行う、1ビームオーバーライトも可能であるという利点を有する。
【0005】
相変化記録方式に用いられる記録層材料としては、カルコゲン系合金薄膜を用いることが多い。例えば、Ge−Te系、Ge−Te−Sb系、In−Sb−Te系、Ge−Sn−Te系、Ag−In−Sb−Te系合金薄膜等の使用が試みられている。
1ビームオーバーライト可能な相変化記録方式では、結晶状態の記録膜を非晶質化させることによって記録ビットを形成し、結晶化させることによって消去を行う場合が一般的である。
【0006】
この場合、as−depo状態はアモルファスである場合が一般的であるため、初期状態を結晶状態とするために媒体全面を短時間で結晶化させる。この工程を初期結晶化とよぶ。通常この初期結晶化は数十〜百μm程度に絞ったレーザービームを回転する媒体に照射することにより行なう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来、共晶組成近傍の合金材料は、非晶質形成能は高いものの結晶化の際に相分離を伴うため、100ナノ秒未満の短時間の加熱では結晶化できず、オーバーライト可能な光記録媒体の記録層としては不適当であると考えられてきた(文献 Appl. Phys. Lett., vol.49(1986), p502等)。
【0008】
特に、GeSbTe3元合金に注目した場合、Te85Ge15共晶組成近傍では実用的な結晶化速度は得られていない。
一方、Sb70Te30共晶組成近傍では、反射率変化のみをモニタした極めて初歩的な方法であるけれども、SbTe1−x(0.58<x<0.75)2元合金が結晶−非晶質状態間で繰り返し記録消去可能であることが米国特許第5015548号において開示されている。
【0009】
Sb70Te30に第3元素、特にGeを加えた組成範囲を含む先願としては特開平1−115685、特開平1−251342、特開平1−303643、特開平4−28587各号公報等が挙げられる。
しかしながら、それ以後SbTe共晶組成近傍の相変化媒体に関しては実用化にむけての進展はなかった。殊に、成膜後の記録層を結晶化させる初期化操作が困難であるために生産性が低く実用に供されないという深刻な問題があった。
【0010】
このため、初期化の容易な金属間化合物組成近傍の材料、あるいはその擬似2元合金のみが実用的な特性を示すと考えられていた(特開平2−243388、特開平2−243389、特開平2−243390、特開平2−255378、特開昭63−228433、特開昭61−89889各号公報、文献 Jpn. J. Appl. Phys., vol.69(1991), p2849)。
【0011】
例えばGeSbTe3元合金については、近年、GeTe−SbTe擬似2元合金近傍組成のみが注目され実用化されてきた。
こうした動向は、例えば1991年より毎年開催されている、「相変化光メモリシンポジウム」の発表論文(予稿集に掲載されている)に顕著にあらわれている。
【0012】
本発明者らは、単純化のためSbTeからなる2元合金に注目し、従来の説にとらわれず共晶組成組成近傍の結晶化/非晶質化特性につき、より高密度記録に適した光ディスク評価機を用い、マーク長記録への適性の観点から再検討を行った。
その結果、Sb70Te30共晶組成近傍のSbTe合金を主成分とする記録層は、初期結晶化は困難であるものの一旦初期結晶化してしまえば以後の非晶質−結晶相変化による記録消去は極めて高速に行なうことができることを見出した。
【0013】
さらにこの共晶組成近傍でGeを添加した材料につき評価したところ、SbTe共晶近傍のGeSbTe3元合金は、特定の記録パルスパターンを用いた場合、繰り返しオーバーライトにおいて広く知られているGeTe−SbTe疑似2元合金近傍の材料より劣化が少ない、あるいは、マーク長記録したときのマークエッジのジッタが小さいという利点があることを見出した。
【0014】
また、結晶化温度がSb70Te302元共晶合金より高く、経時安定性に優れていることもわかった。
しかしながら、SbTe共晶近傍のGeSbTe3元合金は記録パルスパターン依存性及び線速依存性が強く、通常利用されている記録パワ−と消去パワーの2値の変調でオーバーライトした場合、例えば、中心線速2.8m/sの±50%程度しか正常なオーバーライトができなかった。
すなわち、低線速では再結晶化が著しく非晶質マークの形成が阻害され、高線速では逆に結晶化速度が十分でなく消去が不十分であった。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、基板上に、少なくとも下部保護層、相変化型光記録層、上部保護層、反射層からなる多層構成を有し、該相変化型光記録層の組成がGey(SbxTe1-x1-y (ただし、0.60≦x≦0.85、0.01≦y≦0.20)で厚みが15nm以上30nm以下、該上部保護層の厚みが10nm以上30nm以下、該反射層がAu、Ag、またはAlを90原子%以上含む金属からなり厚みが50nm以上500nm以下であり、該相変化型光記録層と該下部保護層との間に結晶化促進層を設け、該結晶化促進層がSb z Te 1-z (ただし、0.3≦z≦0.5)であることを特徴とする光学的情報記録用媒体に存する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明の光学的情報記録用媒体の記録層の組成範囲を説明する図である。本発明のGeSbTe3元合金薄膜の組成範囲はSb70Te30共晶組成近傍をベースに図1の如くGeを添加したものである。
【0017】
本記録層材料を用いる最大の利点は、非晶質マークの周辺部あるいは消去されたマーク内に、初期化状態と反射率の異なる粗大グレインが生じにくいということである。これは結晶成長が相分離によって律速されている共晶点近傍の合金に特有の現象である。
しかし、この記録層には、固相での結晶化速度を高めると非晶質マーク形成時の再凝固時の再結晶速度まで極端に速くなってしまい、溶融領域の外周部が再結晶化して非晶質マークの形成が不十分になりやすいという特徴がある。
【0018】
すなわちこの記録層は共晶点近傍の組成であるため、結晶化速度は相分離のための原子の拡散速度によって支配されており、拡散速度が最大となる融点直下まで加熱しないと結晶化による高速消去ができない。つまり、現在広く使用されているGeTe−SbTe擬似2元合金組成近傍の記録層にくらべて、高結晶化速度が得られる温度範囲が狭く、かつ高温に偏っているのである。
【0019】
従って本記録層を光記録媒体に適用するためには、高結晶化速度と十分な大きさの非晶質マークの形成とを両立させるため、再凝固時の融点近傍での冷却速度をとりわけ大きくしてやる必要がある。
そこで、本発明の光学的情報記録用媒体においては、記録層材料がSbTe比を一定とする線上では基本的にSb相とSbTe相とに相分離することを利用した。
【0020】
平衡状態で熱アニールした場合には、相分離がX線回折で確認できている。
しかし、光記録媒体において非晶質マークを形成するような非平衡な過冷却状態では、過剰のSbが含まれると再凝固時にまず微小Sbクラスタが析出する。このSbクラスタが結晶核となって非晶質マーク中に残存するため、以後の非晶質膜の消去(再結晶化)は相分離に時間をかけることなく短時間で終了するものと考えられる(過剰Sbの添加効果については、奥田等、Proc. Int. Symp. on Optical Memory, 1991, p73 に詳しい)。
【0021】
本発明は、本記録層組成のこうした特徴に関する考察に基づいてなされた。
すなわち、上記Sbクラスタ析出による高速結晶化メカニズムを保持し、かつ、Sb70Te302元共晶系で問題となる非晶質マークの不安定性(結晶化温度が100−150℃と低く、保存安定性が不十分)という問題を解決するために種々の添加元素について検討した結果、適量のGeの添加が高速結晶化を損ねることなく、かつ、結晶化温度を150℃以上に高め、非晶質マークを安定化させる効果があることが判明した。
【0022】
なお、Geの添加量が1原子%未満では効果が無く、かえって結晶化温度を低下させる場合もある。Ge添加量が20原子%を超えると、GeTe等の他の安定相が析出するため、高速結晶化がさまたげられ、また、結晶粒が粗大化して非晶質マークの輪郭がぼけ、ジッタが増加するため好ましくない。 特に、繰り返しオーバーライトによる組成変動の原因となるので好ましくない。繰り返しオーバーライト1万回後でも良好な特性を維持するため、一層好ましいのは、2原子%以上であり、15原子%以下である。
【0023】
本発明における光学的情報記録用媒体の層構成は、基板上に少なくとも下部保護層、相変化型記録層、上部保護層、反射層を設けてなる。保護層、記録層、反射層はスパッタリング法などによって形成される。記録膜用ターゲット、保護膜用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ターゲットを同一真空チャンバー内に設置したインライン装置で膜形成を行うことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生産性の面からもすぐれている。
【0024】
さらに、傷防止、繰返しオーバーライトによる変形防止、耐腐食性向上のために、紫外線もしくは熱硬化性樹脂からなる保護層を設けることが望ましい。保護層は通常スピンコート法により塗布され、1mm以上、10mm以下の厚みとすることが望ましい。
本発明における記録媒体の基板としては、ガラス、プラスチック、ガラス上に光硬化性樹脂を設けたもの等のいずれであってもよいが、コストを含む生産性の面ではプラスチックが好ましく、中でもポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0025】
記録層の膜厚は15nm以上、30nm以下である。15nm未満ではコントラストが取りにくく、また結晶化速度が遅く、消去が困難となる。30nmを超えるとやはりコントラストが得にくく、また記録感度が悪くなる。
上下の保護層の材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点であるMg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ho、Er、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Si、Ge、Pb等の酸化物、硫化物、窒化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができる。これらの酸化物、硫化物、窒化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。
【0026】
繰返し記録特性を考慮すると誘電体混合物が好ましい。具体的にはZnSや希土類硫化物と酸化物、窒化物、炭化物等の耐熱化合物の混合物が挙げられる。
下部保護層は特に、プラスチック基板の熱変形を抑える機能も求められるので、少なくともその膜厚は50nm以上が好ましい。また、500nmを超えると内部応力によりクラックが生じ易くなるので500nm以下であるのが好ましい。
【0027】
好ましい膜厚範囲は50nm以上500nm以下と広いが、通常はこの範囲から、光干渉効果を考慮して反射率や、記録前後の反射率差、位相差が適当な値になるように選ばれる。
特に好ましい構造としては、該下部保護層の記録層、または後で詳細に説明する結晶化促進層に接する側の1nm以上10nm以下の部分がカルコゲン化合物と分解温度または融点が1000℃以上のカルコゲン化物ではない耐熱性化合物との混合物からなり、残部が上記耐熱性化合物と異種又は同種の耐熱性化合物からなるものが挙げられる。
【0028】
カルコゲン化合物としては、MgS、CaS、SrS、BaSなどのIIa属元素の硫化物や、MgSe、CaSe、SrSe、BaSeなどのIIa属元素のセレン化物が挙げられる。
上記硫化物又はセレン化物はカルコゲン元素を含むため相変化型記録層に主として含まれるカルコゲン及びその周辺元素との密着性も良い。
【0029】
単なる酸化物よりなる誘電体層を用いた場合に比べ大幅な改善が見られる。
カルコゲン化物ではない耐熱性化合物としては、Al、Si、Ge、Y、Zr、Ba、Ta、Nb、V、W、Hf、Sc又はランタノイドの酸化物、Al、Si、Ge、Ta、Bの窒化物、Mg、Ca、Nd、Tb、Laの弗化物、Si、Bの炭化物等が挙げられる。
【0030】
これらのうち、弗化物を用いる場合には、酸化物も合わせて用いた方が脆性が改善される傾向にあるので好ましい。
コスト、ターゲット製造の容易さ等の観点から、二酸化珪素、酸化イットリウム、酸化バリウム、酸化タンタル、LaF、NdF、TbF、SiC、Si、AlNを用いるが好ましい。
【0031】
上記2種の物質の膜中の合計量は含有率にして50mol%以上が好ましく、さらに好ましくは80mol%以上である。この含有率が50mol%を下回ると、基板や記録膜の変形防止効果が不十分であり、保護層としての役目をなさない傾向がある。
またカルコゲン化合物の含有率は保護層全体の10mol%以上、95mol%以下が好ましい。10mol%未満では望みの特性が発揮されない。また95mol%を超えると光学吸収係数が大きくなり、好ましくなく、より好ましくは15mol%以上90mol%以下である。
【0032】
また上記耐熱性化合物の含有率は誘電体層全体の5mol%以上、90mol%以下が好ましく、より好ましくは10mol%以上である。これ以外の範囲では望みの特性が得られないことがある。
耐熱性化合物は1000℃以上の耐熱性と共に記録再生に用いるレーザー光に対して光学的に十分透明であることが必要となる。
【0033】
すなわち、50nm程度の厚さで約600nm以上の波長領域で複素屈折率の虚部が0.05以下であることが望ましい。
この光学的透明性を得るために、スパッタ成膜時に、Arと酸素及び/又は窒素との混合ガスを用いると好ましい。
特に、硫化物、及びセレン化物中のSやSeは蒸気圧が高いために、スパッタ中に一部が分解、蒸発する傾向がある。
【0034】
このように、保護層中にSやSeの欠損が多いと、光吸収性の欠陥となり、また、化学的にも不安定であるために好ましくない。
上記のように、酸素や窒素をスパッタガスに添加することは、この欠損を酸素や窒素で置き換えることを目的としている。
このとき上記カルコゲン化合物の金属元素の酸化物や窒化物が膜中に一部形成されるが、耐熱性化合物の一部として働くために、膜の特性は特に損なわれない。
【0035】
ところで、本誘電体層は、一般に高周波放電スパッタで製造されるため、成膜速度が遅い傾向があり、生産性の面からは200nm以上の厚膜を設けることは好ましくはない。
従って、厚膜を形成する必要がある場合には、全膜厚のうち記録層または結晶化促進層に接する側の1nm以上10nm以下の部分がカルコゲン化合物と分解温度または融点が1000℃以上のカルコゲン化物ではない耐熱性化合物との混合物からなり、残部が上記耐熱性化合物と異種又は同種の耐熱性化合物からなる保護膜とするのがよい。
【0036】
少なくとも記録層または結晶化促進層界面側に本組成の誘電体層を適用すれば、全膜厚を本発明で特徴とする組成の誘電体層とした場合と同様の効果が得られる。
ただし、記録層または結晶化促進層界面側の複合誘電体層と、その上に設ける耐熱化合物保護膜との密着性が良くなければ、剥離を生じやすいので、両者の組み合わせには注意を要する。最も問題の少ない組み合わせは、記録層または結晶化促進層界面側の複合誘電体層に含まれる耐熱性化合物と同種の材料を上に設ける耐熱性化合物保護膜として用いることである。
【0037】
上部保護層も上述のような材料が使用されるが、その膜厚範囲は10nm以上、30nm以下に限られる。その最大の理由は、反射層への放熱を有効に作用させるためである。放熱を促進し、記録層再凝固時の冷却速度を高める層構成を採用することで、再結晶化の問題を回避しつつ、高速結晶化による高消去比を実現する。
【0038】
上部保護層の膜厚が30nmより厚くなると、記録層の熱が反射層に到達する時間が長くなり、反射層による放熱効果が有効に作用しない。すなわち、反射層は熱を汲みだすポンプであり、上部保護層はポンプへ熱流を伝える配管であると見なせる。保護層が厚いということは配管が長いということであり、いくらポンプの性能が高くても(反射層の熱伝導が大きくても)、有効に作用しない。
【0039】
配管の流量は配管の太さ、つまり上部保護層の熱伝導率にも作用されるが、一般に、100nm未満の薄膜の熱伝導率は同じ物質のバルクの熱伝導率より2−3桁以上小さく、物質による差が小さくなるから、厚さが重要な因子となる。
一方、上部保護層が10nmより薄いと、記録層溶融時の変形等によって破壊されやすく好ましくない。また、放熱効果が大きすぎて記録に要するパワーが不必要に大きくなる点でも好ましくない。
【0040】
ここで提案した層構成は、相変化媒体では「急冷構造」と呼ばれ、それ自体は公知である(特開平2−56746号公報、文献Jpn. J. Appl. Phys., Vol.28(1989), suppl.28−3, p123)。
ただし、本発明記録層にとっては、この層構成は従来のGeTe−SbTe系にくらべ必然性が高く、急冷の範囲がより限定され、より急冷であることが必要である。
【0041】
反射層は反射率の大きい物質が好ましく、本発明では特に熱伝導率が大きく上部誘電体層を介しても、放熱効果が期待できるAu、Ag、Alを90原子%以上含む金属を用いる。
反射層自体の熱伝導度制御、耐腐蝕性改善のためTa、Ti、Cr、Mo、Mg、V、Nb、Zr等を少量加えてもよい。特にAlTa1−x(0.01<x≦0.10)なる合金は、耐腐蝕性に優れており本光学的情報記録用媒体の信頼性を向上させる上で効果がある。
【0042】
反射層の膜厚としては、透過光がなく完全に入射光を反射させるために50nm以上必要である。膜厚500nmより大では、放熱効果に変化はなくいたずらに生産性を悪くし、また、クラックが発生しやすくなるので500nm以下とする必要がある。
本発明では、この急冷構造にさらに、以下の記録方法を合わせ用い、記録層の再凝固時の冷却速度を正確に制御することで、マーク長記録に適した本発明記録層材料の特徴をいかんなく発揮させることが可能となる。
【0043】
図2は、光記録時のレーザーパワーの照射パターンの一例を示す図である。
長さnT(Tは基準クロック周期、nはマーク長変調記録において取りうるマーク長であり、2以上の自然数をとる)にマーク長変調された非晶質マークを形成する。図では例としてn=7の場合を示している。
本発明記録媒体に対しては、長さnTのマークに記録する際に、m=n−k(0≦k≦2なる整数、ただしnの最小値をnminとしてnmin−k≧1)個の記録パルスに分割し、個々の記録パルス幅をαTとし、個々の記録パルスにβT(ただし、2≦i≦m−1においてα≦β)なる時間のオフパルス区間が付随する。オフパルス区間では0<Pb≦0.5Peなるバイアスパワーを照射する。
【0044】
ここで、マーク長を検出した際に、正確なnTマークが得られるよう、Σα+Σβはn−j(jは0≦j≦2なる実数)のように調整できるものとする。本発明媒体は、これまでGeTe−SbTe擬似2元合金系で用いられてきたような記録パワーPwと消去パワーPeの2値変調よりも、上記オフパルス区間を設けバイアスパワーPbを照射する3値変調により記録消去を行うことが望ましい。2値変調のオーバーライトも可能ではあるが、3値変調方式を用いることで、パワーマージン、記録時線速マージンを広げることができる。
【0045】
特に本発明記録層ではオフパルス時のバイアスパワーPbを0<Pb≦0.5Peなるように十分低くとることが必要である。ただし、βTにおいては0<Pb≦Peとなってよい。
なお、消去パワーPeは非晶質マーク部を100ナノ秒未満の照射で再結晶化させうるパワー、記録パワーPwはαTなる時間で記録層を溶融させるに足るパワーであり、Pw>Peである。
【0046】
図3は、本発明の媒体に光記録を行ったときの記録層の温度変化の模式図である。記録パルス幅をm=2として分割し、1番目の記録パルス(記録パワー)、1番目のオフパルス(バイアスパワー)、2番目の記録パルス、2番目のオフパルスを順に照射して非晶質マークを形成する場合であって、(a)α=β=0.5でPb=Peとした場合と、(b)α=β=0.5でPb≒0(≠0)とした場合である。
【0047】
記録層の位置としては、1番目の記録パルスの後端が照射される位置の記録層を想定している。
(a)ではオフパルス区間でもPeが照射されるため、後続の記録パルスによる加熱の影響が前方に及び、1番目の記録パルス照射後の冷却速度が遅く、かつオフパルス区間での温度降下で到達する最低温度TLaが融点近傍に留まっている。
【0048】
一方(b)では、オフパルス区間のPbがほとんど0のため、最低温度TLbは融点より十分低い点まで下がり、かつ途中の冷却速度も大きい。非晶質マークは1番目の記録パルス照射時に溶解し、その後のオフパルス時の急冷によって形成される。
前述のように、本発明媒体における記録層は融点近傍でのみ大きな結晶化速度を示す。
【0049】
従って図3(b)に示す温度プロファイルをとることは、再結晶化を抑制し、良好な非晶質マークを得る上で重要なことである。
逆に、冷却速度及び最低温度Tを制御することで再結晶化をほぼ完全に抑制し、溶融領域とほぼ一致するクリアな輪郭を有する非晶質マークが得られるためマーク端において低ジッタが得られる。
【0050】
一方、GeTe−SbTe擬似2元系合金では、図3(a)、(b)いずれの温度プロファイルでも非晶質マーク形成プロセスに大差がない。
なぜなら、広い温度範囲で速度は若干遅いものの再結晶化を示すからである。この場合、パルス分割方法によらずある程度の再結晶化が生じ、これが非晶質マーク周辺の粗大グレインとなってマーク端でのジッタを悪化させる傾向がある。この記録層組成では、オフパルスは必須ではなく、むしろ従来の2値変調によるオーバーライトが単純で望ましい。
【0051】
すなわち、本発明記録層にとってオフパルスは必須要件であるが、従来のGeTe−SbTe系記録層あるいは本記録層を特開平1−303643号公報の実施例に示されたようなマーク位置記録に適用した場合にとっては必ずしも好ましいものではない。
本発明媒体は線速1m/s〜7m/sの範囲で使用される。1m/s未満では再結晶化が著しく、本発明記録方式を用いても適正な非晶質マークが記録できない。7m/sより大であると前述の記録方式では、十分な消去比が得られない。
【0052】
マージンを大きく取るため、より好ましくは2m/s〜7m/sの範囲である。
本発明の記録用媒体の線速依存性は、ほとんどSb/Te比、すなわち母体となるSb70Te30共晶組成に含まれる過剰Sb量で決まる。
Sbが多くなれば急冷状態で析出するSbクラスタサイトが増え、結晶核生成が促進されると考えられる。これは、各結晶核から同一結晶成長速度を仮定しても、成長した結晶粒で埋め尽くされるに要する時間が短縮され、結果として非晶質マークを結晶化するに要する時間が短縮されることを意味する。従って、高線速度で短時間のレーザー光照射で消去する場合に有利である。
【0053】
一方、記録層の冷却速度は記録時の線速度にも依存する。すなわち、同一層構成であっても低線速度ほど冷却速度は低下する。従って、低線速度ほど非晶質形成のための臨界冷却速度が小さい組成、すなわち過剰Sb量の少ない組成が望ましい。
まとめると、Sb70Te30共晶組成を基準として、過剰Sb量が多い組成ほど高線速度に適している。
【0054】
なお、Geの添加によりSb/Te比は70/30ではなく、母体となるSbTeが共晶となるのは60/40程度が基準となるようである。従って、Sb/Te原子比としては60/40以上、85/15以下が好ましい。より好ましくは65/35以上、75/25以下である。
【0055】
本発明の相変化媒体は記録層を結晶化温度以上で固相にて結晶化させる初期結晶化では結晶化が遅く生産性が良くないことは既に述べた。これは、本記録層組成は成膜直後の非晶質状態から、いったん相分離させ安定な結晶状態を形成する必要があるためであり、この相分離には通常、固相(融点以下)では1μ秒以上の加熱が必要である。
【0056】
例えば記録層としてGeSbTeを用いた場合にas−depo状態の媒体を十分高速に結晶化できる条件で、Ge10Sb66Te24等の記録層の媒体の初期結晶化を試みると多くの部分が結晶化しないままアモルファス状態として残ってしまう。この操作を数十回繰り返すことにより相分離が完了し、初期化できる場合もあるがこれでは生産性が低く実用的でない。しかしながら、いったん初期化してしまえば、以後は高速で結晶化(消去)できるようになる。
【0057】
この、初期化が困難な傾向は添加Ge量を多くすることで一層顕著になる。
as−depo状態の膜が結晶化しにくい原因の一つは、as−depoのアモルファスの状態が記録マークのアモルファスの状態と異なり結晶化しにくいためと考えられる。また、結晶核がas−depo状態の記録層にはほとんどないことが結晶化しにくい原因となっていることも考えられる。実際、光学顕微鏡で初期結晶化を試みた部分の観察をすると、結晶化のすすんだ部分が島状に観察される。これは結晶核のできた部分でのみ結晶化がすすんでいるとすれば理解できる。
【0058】
このように初期結晶化が困難である場合、生産性は著しく悪化する。
本発明者らはさらに、初期化に要する時間を短縮するための一つの方法として、本発明記録層には溶融初期化が有効なことを見出した。
上記層構成を有する限り、溶融したからといって記録媒体がただちに破壊されるものではない。例えば、直径100μm程度に集束したガウシアンビーム(ガスもしくは半導体レーザー光)を用いて局所的に加熱し、ビーム中心部に限定して溶融させれば、記録媒体は破壊されることはない。加えて、ビーム周辺部の加熱により、溶融部が余熱されるため冷却速度が遅くなり、良好な再結晶化が行われる。
【0059】
すなわち、溶融初期化自体は公知の方法であるが、本発明記録媒体にとっては非常に好適な手法であることを見出したのである。この方法を用いれば、例えば、従来の固相結晶化に対して10分の1の初期化時間を短縮でき、生産性が大幅に短縮できるとともに、オーバーライト後の消去時における結晶性の変化を防止できる。
【0060】
本発明者らはまた、初期化の困難さを解決するもう一つの方法として、結晶化促進層を設けることにより初期結晶化が短時間で完了することを見出した。
この理由としては、結晶化促進層が結晶核となり結晶化のきっかけとなる、または、結晶化促進層上に設けられる記録層のas−depo状態の構造が結晶化促進層のない場合と異なり結晶化し易くなる等が考えられる。
【0061】
本発明者らの検討によれば、結晶化促進層を記録層の下に設けると初期結晶化はスムースに行われるが、記録層の上に結晶化促進層を設けた場合は効果が小さいため、後者の理由の効果が大きいと考えられる。
結晶化促進層としては結晶化し易い金属等、たとえばAu、Ag、Cu、Al等でもよいが、屈折率が記録層と近いものが好ましいため、本発明組成の記録層を用いる場合には結晶化促進層はSbTe付近の組成が好ましい。SbTe付近の組成はas−depo状態から結晶である場合が多く、初期結晶化時結晶核になりやすく、またこの上に設けられる記録層のas−depo状態を結晶化しやすい状態にする利点もある。
【0062】
結晶化促進層の組成範囲はSbTe1−zとしたとき0.3≦z≦0.5が好ましく、特には0.35≦z≦0.45が好ましい。さらに10原子%以下の添加元素が加わってもよい。たとえばGeSbTe等は結晶化促進層として使用可能である。
初期化後に非晶質マークを記録した後は記録膜作成時に設けた結晶化促進層は記録層の他の部分と混ざり合うと考えられる。結晶化促進層は平均記録層組成と組成は異なるため、また、屈折率の関係上、初期結晶化後の反射率が結晶化促進層のない場合、または10回程度の書き換えを行なった後と異なってくるため結晶化促進層膜厚は厚すぎると良くない。
【0063】
結晶化促進層が厚すぎると2〜5回のオーバーライト時の記録信号がきたなくなる。薄すぎると初期結晶化を容易にする効果が小さくなる。したがって結晶化促進層膜厚は0.2nm以上、より好適には1nm以上、また10nm以下、好ましくは5nm以下である。
また記録層と結晶化促進層の組成の違いを補うため結晶化促進層に接して組成補正層を設け、結晶化促進層と組成補正層の組成を平均したとき記録層組成に近くすることも有効である。
【0064】
従来、GeSbTe3元合金が相変化媒体に適用された例があるが、基本的にSbTe−GeTe擬似2元合金をベースとしたもの(特開昭61−89889、62−53886、62−152786各号公報等)であって本発明の組成範囲とは大きく異なり、本発明組成範囲は実用的な光記録媒体への応用検討からは実際上、見捨てられていたのである。
【0065】
一部の特許で前述のように、SbTe共晶近傍組成の合金が開示されており、本発明の記録層組成範囲を含むものもある(米国特許4670345号、特開平1−115685、平1−251342、平1−303643、平4−28587各号公報)が、本発明で開示したマーク長記録に適した記録方法を適用することについては述べられていない。
【0066】
従って、本発明媒体の組成・層構成・記録法はSb70Te30共晶組成近傍の合金を実用的相変化媒体とするための欠くべからざる進歩改良である。また、従来、省みられることの少ない組成でも、いったん初期化し、本発明の記録方法と組み合わせて使用すればむしろ高密度記録に適していることを見出したことは、一定の思想の飛躍が必要であることは言うまでもない。さらに、短時間で初期化するために本発明記録媒体に適した初期化方法を組み合わせたことも産業上重要なことである。
【0067】
【実施例】
以下実施例をもって本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の合金薄膜の組成は、化学分析によって校正された蛍光X線強度で測定した。
【0068】
実施例1
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO20層を230nm、結晶化促進層としてSbTe層を1nm、組成補正層としてSb層を1nm、記録層としてGe10Sb67Te23層を18nm、(ZnS)80(SiO20層を20nm、Al97.5Ta2.5合金層を100nm、順次マグネトロンスパッタリング法にて積層し、さらに紫外線硬化樹脂層を4μm設け光ディスクを作製した。
【0069】
この光ディスクを、楕円形の照射ビームの長軸の長さを50μm程度とした光ディスク初期化装置を用い、ディスク回転数2700rpm、ビーム送り速度5μm/回転、半径64mmでのレーザーパワー400mW、半径27mmでのレーザーパワー170mWで溶融初期結晶化を試みたところ、初期結晶化が可能であった。
【0070】
光ディスク評価装置(レーザー波長780nm、NA0.55)を用いて、2.8m/sの線速度でEFMランダム信号(クロック周波数は115ナノ秒)の記録を行なった。記録時にはα=1、α=0.5(i≧2)、β=0.5とし、Pw=13mW、Pe=6.5mW、Pb=0.8mWとした。
実際の信号特性を示すジッタは最短マーク長でクロック周期の10%未満という良好な値が得られ、1000回オーバーライト後もこの特性は維持された。
さらに、記録された信号は、温度80℃、湿度80%RHの環境下に2000時間放置した後にも劣化はみられなかった。
【0071】
実施例2
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO20層を230nm、結晶化促進層としてSbTe層を1nm、記録層としてGe10Sb67Te23層を19nm、(ZnS)80(SiO20層を20nm、Al97.5Ta2.5合金層を100nm、順次マグネトロンスパッタリング法にて積層し、さらに紫外線硬化樹脂層を4μm設け光ディスクを作製した。
【0072】
この光ディスクを、楕円形の照射ビームの長軸の長さを50μm程度とした光ディスク初期化装置を用い、ディスク回転数2700rpm、ビーム送り速度5μm/回転、半径64mmでのレーザーパワー400mW、半径27mmでのレーザーパワー170mWで溶融初期結晶化を試みたところ、初期結晶化が可能であった。
【0073】
光ディスク評価装置(レーザー波長780nm、NA0.55)を用いて、2.8m/sの線速度でEFMランダム信号(クロック周波数は115ナノ秒)の記録を行なった。記録時にはα=1、α=0.5(i≧2)、β=0.5とし、Pw=13mW、Pe=6.5mW、Pb=0.8mWとした。
実際の信号特性を示すジッタは最短マーク長でクロック周期の10%未満という良好な値が得られ、1000回オーバーライト後もこの特性は維持された。
さらに、記録された信号は、温度80℃、湿度80%RHの環境下に2000時間放置した後にも劣化はみられなかった。
【0074】
実施例3
ポリカーボネート基板上に(Zn)80(SiO20層を230nm、記録層としてGe10Sb67Te23層を20nm、(ZnS)80(SiO20層を20nm、Al97.5Ta2.5合金層を100nm、順次マグネトロンスパッタリング法にて積層し、さらに紫外線硬化樹脂層を4μm設け光ディスクを作製した。
【0075】
この光ディスクを、楕円形の照射ビームの長軸の長さを50μm程度とした光ディスク初期化装置を用い、ディスク回転数2700rpm、ビーム送り速度5μm/回転、半径64mmでのレーザーパワー400mW、半径27mmでのレーザーパワー170mWで溶融初期結晶化を試みたが初期結晶化はできなかったため、光ディスク評価装置で1トラックごとにDCレーザー光を多数回照射することにより溶融初期結晶化を行った。
【0076】
さらに、2.8m/sの線速度でEFMランダム信号(クロック周波数は115ナノ秒)の記録を行なった。記録時にはα=1、α=0.5(i≧2)、β=0.5とし、Pw=13mW、Pe=6.5mW、Pb=0.8mWとした。実際の信号特性を示すジッタは最短マーク長でクロック周期の10%未満という良好な値が得られ、1000回オーバーライト後もこの特性は維持された。
さらに、記録された信号は、温度80℃、湿度80%RHの環境下に2000時間放置した後にも劣化はみられなかった。
【0077】
実施例4
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO20層を230nm、記録層としてGeSb65Te28層を20nm、(ZnS)80(SiO20層を20nm、Al97.5Ta2.5合金層を100nm、順次マグネトロンスパッタリング法にて積層し、さらに紫外線硬化樹脂層を4μm設け光ディスクを作製した。
【0078】
この光ディスクを、楕円形の照射ビームの長軸の長さを50μm程度とした光ディスク初期化装置を用い、ディスク回転数2700rpm、ビーム送り速度5μm/回転、半径64mmでのレーザーパワー400mW、半径27mmでのレーザーパワー170mWで溶融初期結晶化を試みたが初期結晶化はできなかったため、光ディスク評価装置で1トラックごとにDCレーザー光を多数回照射することにより溶融初期結晶化を行った。
【0079】
さらに、2.8m/sの線速度でEFMランダム信号(クロック周波数は115ナノ秒)の記録を行なった。記録時にはα=1、α=0.5(i≧2)、β=0.5とし、Pw=13mW、Pe=6.5mW、Pb=0.8mWとした。実際の信号特性を示すジッタは最短マーク長でクロック周期の10%未満という良好な値が得られ、1000回オーバーライト後もこの特性は維持された。
さらに、記録された信号は、温度80℃、湿度80%RHの環境下に1000時間放置した後にも劣化はみられなかった。
【0080】
比較例1
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO20層を230nm、記録層としてSb72Te28層を20nm、(ZnS)80(SiO20層を20nm、Al97.5Ta2.5合金層を100nm、順次マグネトロンスパッタリング法にて積層し、さらに紫外線硬化樹脂層を4μm設け光ディスクを作製した。
【0081】
この光ディスクを、楕円形の照射ビームの長軸の長さを50μm程度とした光ディスク初期化装置を用い、ディスク回転数2700rpm、ビーム送り速度5μm/回転、半径64mmでのレーザーパワー400mW、半径27mmでのレーザーパワー170mWで溶融初期結晶化を試みたが初期結晶化することはできなかったため、光ディスク評価装置で1トラックごとにDCレーザー光を多数回照射することにより溶融初期結晶化を行った。
【0082】
2.8m/sの線速度でEFMランダム信号(クロック周波数は115ナノ秒)の記録を行なった。記録時にはα=1、α=0.5(i≧2)、β=0.5とし、Pw=13mW、Pe=6.5mW、Pb=0.8mWとした。
実際の信号特性を示すジッタは最短マーク長でクロック周期の10%未満という良好な値が得られ、1000回オーバーライト後もこの特性は維持されたが、記録された信号は、温度80℃、湿度80%RHの環境下に500時間放置した後には劣化し、信号を読みとることはできなかった。
【0083】
比較例2
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO20層を230nm、記録層としてGe21Sb61Te18層を20nm、(ZnS)80(SiO20層を20nm、Al97.5Ta2.5合金層を100nm、順次マグネトロンスパッタリング法にて積層し、さらに紫外線硬化樹脂層を4μm設け光ディスクを作製した。
【0084】
この光ディスクを、楕円形の照射ビームの長軸の長さを50μm程度とした光ディスク初期化装置を用い、ディスク回転数2700rpm、ビーム送り速度5μm/回転、半径64mmでのレーザーパワー400mW、半径27mmでのレーザーパワー170mWで溶融初期結晶化を試みたが初期結晶化することはできなかったため、光ディスク評価装置で1トラックごとにDCレーザー光を多数回照射することにより溶融初期結晶化を行った。
【0085】
2.8m/sの線速度でEFMランダム信号(クロック周波数は115ナノ秒)の記録を行なった。記録時にはα=1、α=0.5(i≧2)、β=0.5とし、Pw=13mW、Pe=6.5mW、Pb=0.8mWとした。
実際の信号特性を示すジッタは最短マーク長でクロック周期の10%以上となり良好な特性は得られなかった。
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の媒体に比べて劣化が少なく、マーク長変調記録時にジッターの少ない、高密度記録に適した光学的情報記録用媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学的情報記録用媒体の記録層の組成範囲の説明図
【図2】本発明に用いる光記録時のレーザーパワーの照射パターンの一例を示す説明図
【図3】本発明の光学的情報記録用媒体に光記録を行ったときの記録層の温度変化の模式図

Claims (5)

  1. 基板上に、少なくとも下部保護層、相変化型光記録層、上部保護層、反射層からなる多層構成を有し、該相変化型光記録層の組成がGey(SbxTe1-x1-y (ただし、0.60≦x≦0.85、0.01≦y≦0.20)で厚みが15nm以上30nm以下、該上部保護層の厚みが10nm以上30nm以下、該反射層がAu、Ag、またはAlを90原子%以上含む金属からなり厚みが50nm以上500nm以下であり、
    該相変化型光記録層と該下部保護層との間に結晶化促進層を設け
    該結晶化促進層がSb z Te 1-z (ただし、0.3≦z≦0.5)であることを特徴とする光学的情報記録用媒体。
  2. 0.65≦x≦0.75、0.02≦y≦0.15であることを特徴とする請求項1記載の光学的情報記録用媒体。
  3. 該結晶化促進層の厚さが、0.2nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学的情報記録用媒体。
  4. 結晶化促進層に隣接して組成補正層を設け、結晶化促進層と組成補正層の組成を平均したときの組成を記録層組成近傍にすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体にエネルギービームを照射して結晶化せしめる初期化操作を行うにあたり、該光学的情報記録用媒体の記録層を局所的に溶融せしめ、再凝固の際に結晶化させる
    ことを特徴とする光学的情報記録用媒体の製造方法。
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