JP2003220765A - 光学的情報記録用媒体及び記録消去方法 - Google Patents

光学的情報記録用媒体及び記録消去方法

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JP2003220765A
JP2003220765A JP2002049152A JP2002049152A JP2003220765A JP 2003220765 A JP2003220765 A JP 2003220765A JP 2002049152 A JP2002049152 A JP 2002049152A JP 2002049152 A JP2002049152 A JP 2002049152A JP 2003220765 A JP2003220765 A JP 2003220765A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高速記録消去が可能で保存安定性に優れる光
学的情報記録用媒体を提供する。 【解決手段】 基板上に、少なくとも2つの異なる相を
取りうる相変化型記録層を設けた光学的情報記録用媒体
であって、該相変化型記録層が下記一般式(1)で表さ
れる組成を主成分とすることにより、高速記録消去が可
能で保存安定性に優れる光学的情報記録用媒体が得られ
る。 (AuxSb1-x1-yGey (1) ただしx、yは、それぞれ0.01≦x≦0.4、0<
y≦0.3を満たす数である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば書き換え可
能な相変化型記録層を有する光学的情報記録用媒体に関
し、特に、未記録状態および記録状態の保存安定性の優
れた相変化型記録層を有する光学的情報記録用媒体及び
高転送レートでの記録で優れたジッタ特性を有する光学
的情報記録用媒体及びその記録消去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】相変化型記録層を有する光学的情報記録
用媒体は、結晶状態の可逆的な変化に伴う反射率変化を
利用して記録再生消去が行われる。このような光学的情
報記録用媒体、中でも相変化型光ディスク(本明細書に
おいては、相変化型光ディスクを単にディスクという場
合がある。)は、可搬性、耐候性、耐衝撃性等に優れた
安価な大容量記録媒体として開発および実用化が進んで
いる。例えば、CD−RWなどの書き換え可能なCDが
既に普及しており、DVD−RW、DVD+RW、DV
D−RAMなどの書き換え可能なDVDが販売されつつ
ある。
【0003】書き換え可能な相変化型記録材料の記録手
法として現在実用化されているのは、結晶相と非晶質相
との間での可逆的変化を利用し、結晶状態を未記録・消
去状態とし、記録時に非晶質(アモルファス)のマーク
を形成するものである。通常、記録層を融点より高い温
度まで加熱し急冷して非晶質のマークを形成し、一方、
記録層を加熱し結晶化温度付近に一定時間保つことで結
晶状態とする。すなわち一般的には、安定的な結晶相と
非晶質相との間での可逆的変化を利用する。このような
相変化型記録層の材料としては、カルコゲン系合金薄膜
が用いられることが多い。例えば、GeSbTe系、I
nSbTe系、GeSnTe系、AgInSbTe系合
金が挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年の
情報量の増大に伴い、より高速の記録再生が可能な光学
的情報記録用媒体を得たいとの要請がある。また、記録
情報の保存安定性に優れること、つまり長期間保存して
も光学的情報記録用媒体に記録した情報が劣化せず安定
であることも光学的情報記録用媒体に求められる重要な
性能の一つである。本発明はこのような要請に応えるた
めになされたもので、その目的は、より高速での記録消
去が可能で、記録信号の保存安定性が高い光学的情報記
録用媒体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち本発明の要旨は、基
板上に、少なくとも2つの異なる相を取りうる相変化型
記録層を設けた光学的情報記録用媒体であって、該相変
化型記録層が下記一般式(1)で表される組成を主成分
とすることを特徴とする光学的情報記録用媒体に存す
る。
【0006】
【化3】 (AuxSb1-x1-yGey (1) ただしx、yは、それぞれ0.01≦x≦0.4、0<
y≦0.3を満たす数である。
【0007】上記のSbリッチのAu−Sb系合金に少
量のGeを添加した組成を主成分とする記録層を用いる
ことにより、従来の光学的情報記録用媒体よりも相変化
速度が速い光学的情報記録用媒体を得ることができ、ひ
いてはより高速の記録消去が行えるようになる。この理
由は次のように考えられる。すなわち、Au−Sb系合
金にはアモルファス相、安定結晶相の他に準安定結晶相
が存在すると推測されるが、従来の相変化記録媒体にお
いては、活性化エネルギーの大きい安定結晶相とアモル
ファス相との間の相変化が主に用いられていたため、相
変化速度の速さが不十分で高速での記録消去ができなか
ったのである。これに対し、本発明においては、Au−
Sb系合金の準安定結晶相を有効に利用して、安定結晶
相とアモルファス相との間の活性化エネルギーよりも活
性化エネルギーの小さい準安定結晶相とアモルファス相
との間の相変化を記録消去に用いることができるように
なったため、より速い相変化速度を達成できるのであ
る。
【0008】本発明の他の要旨は、所定のAu−Sb系
合金組成を主成分とする記録層を有する上記光学的情報
記録用媒体に対して、該相変化型記録層の2つの異なる
相をそれぞれ記録状態及び未記録・消去状態とする記録
消去方法であって、該相変化型記録層がA相、B相、C
相の少なくとも3つの相を取り得、A相よりB相が安定
であり、B相よりC相が安定であるとき、該B相を記録
状態または未記録・消去状態とすることを特徴とする記
録消去方法に存する。尚、本発明においては、A相から
B相への相変化がB相からA相への相変化より低温で起
こり得る場合、A相よりB相の方が安定であると定義す
る。
【0009】本発明のさらに他の要旨は、所定のAu−
Sb系合金組成を主成分とする記録層を有する上記光学
的情報記録用媒体に対して、基準クロック周期Tが15
nsec以下でのみ情報信号の記録消去を行う記録消去
方法であって、記録に際しては高パワーのレーザーパル
スと低パワーのレーザーパルスとが交互に照射され、該
低パワーのレーザーパルスがパルス幅0.9T以上のパ
ルスを含む記録消去方法に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明についてより詳細に
説明する。 (A)光学的情報記録用媒体 (A−1)記録層の組成 本発明の光学的情報記録用媒体は、基板上に、少なくと
も2つの異なる相を取りうる相変化型記録層を設けた光
学的情報記録用媒体であって、該相変化型記録層が下記
一般式(1)で表される組成を主成分とすることを特徴
とする。
【0011】
【化4】 (AuxSb1-x1-yGey (1) ただしx、yは、それぞれ0.01≦x≦0.4、0<
y≦0.3を満たす数である。尚、本発明において、
「記録層が所定組成イを主成分とする」というような場
合、前記所定組成イが記録層全体の50原子%以上含有
されていることを意味する。
【0012】本発明においては、光学的情報記録用媒体
の記録層として上記所定の組成を主成分とする組成を用
いることにより、相変化速度が速く、保存安定性に優れ
る光学的情報記録用媒体を得ることができる。本発明に
おいては、光学的情報記録用媒体へ記録消去を行う際に
Au−Sb系合金の準安定結晶相を利用するため、この
準安定結晶相が安定して形成される必要がある。準安定
結晶相を安定に形成するために、上記一般式(1)にお
いては、xを0.01以上とする。そしてAu含有量を
多くすれば、前記準安定結晶相の保存安定性がより向上
するので、xは0.02以上であることが好ましく、
0.05以上であることがより好ましく、0.12以上
であることが特に好ましく、0.20以上であることが
最も好ましい。このようにAuの含有量を多くしていけ
ば、長時間が経っても準安定結晶相の反射率がほとんど
変化しない光学的情報記録用媒体を得ることができる。
一方、準安定結晶相の保存安定性の観点からはAuの含
有量は多い方がよいが、Au含有量が多い程、アモルフ
ァス相から準安定結晶相への相変化速度が遅くなる傾向
がある。また、Au含有量が多すぎるとAu−Sb系の
安定結晶相が常に形成され、アモルファス相や準安定結
晶相が安定に存在しなくなる傾向もある。このため本発
明においては、xの上限を0.4とする。そして好まし
くは、xを0.35以下とする。さらに好ましくは0.
30以下とする。この範囲とすれば、準安定結晶相の保
存安定性と相変化速度とのバランスがより良好となる。
【0013】つまり、Au−Sb比を上記範囲にするこ
とで、優れた保存安定性を有する準安定結晶状態を得る
ことができる。そして、この範囲ではアモルファス相及
び準安定結晶相から安定結晶相への相変化速度が遅いた
め、準安定結晶相とアモルファス相との間の相変化記録
が可能となる。本発明においては、Au−Sb系合金に
Geを含有させることでアモルファス相が形成され易く
なり、準安定結晶相とアモルファス相との間の安定した
相変化が可能となる。従って、本発明に用いるAu−S
b系合金においては、Geは0より多く含有されている
ことが必要である。さらにGeの含有量を多くすれば、
アモルファス相がより安定に存在するようになるので、
上記一般式(1)の組成において、yを0.01以上と
することが好ましく、0.03以上とすることがより好
ましい。一方、Geの含有量が多すぎるとアモルファス
相から準安定結晶相への相変化速度が遅くなる傾向があ
るため、yを0.3以下とするが、より速い結晶化速度
(アモルファス相から準安定結晶相への相変化速度)を
達成するためには、yを0.28以下とすることが好ま
しく、yを0.15以下とすることがより好ましい。
【0014】ところで、一般には、媒体を高速で回転さ
せながら光照射部から出射した光ビーム(レーザー)ス
ポットを記録層に照射し、光照射部と媒体とを高速で相
対移動させながら記録消去を行う。この相対移動速度が
大きい場合を記録線速度が大きいと称し、相対移動速度
が小さい場合を記録線速度が小さいと称する。記録線速
度が大きい状態では、記録層は一旦光ビームスポットに
より加熱された後、急速に冷却される。すなわち記録層
の温度履歴は急冷的になり、同じ組成の記録層では、記
録線速度が大きいほどアモルファス相が形成されやすく
結晶相が形成されにくくなる。
【0015】本発明に用いる上記Au−Sb組成は、G
eの含有量を調節することによって、アモルファス相の
安定性及びアモルファス相から準安定結晶相への相変化
速度を制御することができるので、目的とする記録線速
に合わせて光学的情報記録用媒体を設計することができ
る利点がある。すなわち、目的とする記録線速度が大き
い媒体では、Ge量を少なめに含有させればよく、目的
とする記録線速度が小さい媒体では、Ge量を多めに含
有させるようにすればよい。
【0016】このように、本発明に用いるAu−Sb組
成は、Auの含有量、Geの含有量を調節することによ
り、保存安定性、及びアモルファス相から準安定結晶相
への相変化速度を自由に制御することができる利点を有
する。これは、上記Au−Sb組成を記録層に用いた本
発明の光学的情報記録用媒体の記録消去機構に、下記二
つの態様があるためと推測される。
【0017】まず、第一の態様は、準安定結晶相を未記
録・消去状態とし、記録時にアモルファス相のマークを
形成する態様である。この態様を有効に利用することに
より高速記録消去が可能な光学的情報記録用媒体が得ら
れるようになる。一方、第二の態様は、準安定結晶相を
未記録・消去状態とし、記録時にアモルファス相のマー
クを形成したのち、マークが安定結晶相に転移する態様
である。この態様を有効に利用すれば、保存特性に特に
優れる光学的情報記録用媒体が得られるようになる。
【0018】以下に第一の態様を利用した光学的情報記
録用媒体、及び第二の態様を利用した光学的情報記録用
媒体の具体的な例について(I)、(II)でそれぞれ
説明する。 (I)第一の態様を利用した光学的情報記録用媒体 まず、本発明に用いるAu−Sb組成においては、Ge
含有量がアモルファス相から準安定結晶相への相変化速
度を制御する一因となるので、Geの含有量を制御すれ
ば、第一の態様を有効に利用した記録消去が可能とな
る。
【0019】また、Auの含有量を制御して第一の態様
を有効に利用した記録消去を行うこともできる。この場
合、特に高転送レート記録でのオーバーライトジッタ特
性が改善されるようになる。具体的には、上記一般式
(1)において0.05≦xとすればよい。高転送レー
トでのオーバーライトジッタ特性が改善されるようにな
れば、基準クロック周期Tが15nsec以下でのみ情
報信号の記録消去が行われる場合においても使用可能な
光学的情報記録用媒体を得ることができる。より具体的
には、基準クロック周期Tが15nsec以下でのみ情
報信号の記録消去が行われる場合において、記録に際し
ては高パワーのレーザーパルスと低パワーのレーザーパ
ルスが交互に照射され、該低パワーのレーザーパルスが
パルス幅0.9T以上のパルスを含むような記録消去方
法においても良好に使用できる光学的情報記録用媒体が
得られるようになる。
【0020】ここで、マーク形成部には高パワーのレー
ザーパルスと低パワーのレーザーパルスを交互に照射す
る場合(このような記録方法を、本明細書においては
「パルス分割記録」という場合がある。)、十分な冷却
速度を得るために該低パワーレーザーパルスを長くする
ことが必要となる。このため、低レーザーパルスは、T
を基準クロック周期として0.9Tより長いものを含め
ることが好ましい。尚、本発明の光学的情報記録用媒体
の記録消去方法については、下記(B)において詳細に
説明する。 (II)第二の態様を利用した光学的情報記録用媒体 本発明の光学的情報記録用媒体においては、例えば記録
層中のAu量が多いときなど、記録層の組成によって
は、アモルファス相がゆっくりと安定結晶相に相変化す
る現象が観察される場合がある。第二の態様は、アモル
ファス相のマークを形成したのち、マークが安定結晶相
に相変化する前記現象を利用するものである。本発明の
光学的情報記録用媒体に用いられる記録層の組成範囲に
おいては、アモルファス相の反射率と安定結晶相との反
射率は同程度となる。従って、たとえアモルファス相が
安定結晶相に変化しても、信号の再生が可能となる。む
しろ、このように記録マークが安定結晶相となることに
より、光学的情報記録用媒体の保存特性が大きく改良さ
れるようになる。さらに、Geの含有量を少なくして、
アモルファス相が若干不安定となるような記録層組成に
おいても、上記第二の態様を利用すれば記録マークが消
えてしまうことはなくなる。
【0021】第二の態様を利用する光学的情報記録用媒
体を得るためには、上記一般式(1)において、x、y
の値を、0.12≦x≦0.4、0.01≦y≦0.3
とすることが好ましい。尚、アモルファス相(アモルフ
ァスマーク)は、記録層を加熱し結晶化温度付近に一定
時間保つことで消去(準安定結晶相へ相変化)する。一
方、安定結晶相(安定結晶マーク)を消去(準安定結晶
相へ相変化)するためには、記録層を一旦溶融する必要
がある。従って、上記安定結晶マークを記録に利用する
場合は、記録層が溶融する程度まで、マーク消去用に照
射する光ビームのパワー(消去パワー)を上げてやれば
よい。
【0022】以上より、本発明においては、相変化型記
録層を(AuxSb1-x1-yGeyとし、0.01≦x≦
0.4、0<y≦0.3とすることにより、記録信号保
存安定性及び高転送レートオーバーライト記録時ジッタ
特性のバランスに優れる媒体を得ることができるように
なる。また、上記組成範囲とすることにより、結晶化速
度(アモルファス相から準安定結晶相への相変化速度)
を十分に大きくすることができる。さらには、上記組成
範囲とすることにより、再生信号の反射率均一性(オシ
ロスコープで再生波形を観察したときの反射率均一性)
に優れた光学的情報記録用媒体をも得ることができる。
【0023】記録層の結晶相が均一でない光学的情報記
録用媒体は、結晶相(未記録状態)の反射率レベルが一
定ではなくなる。従って、このような光学的情報記録用
媒体におけるオシロスコープで観察される再生波形は、
幅を持った太い線となる。これは、異なる反射率をもつ
2種以上の相が、ビームの照射面積に対して十分に均一
ではない状態で混ざっているためであると推測される。
このような現象は、基準クロック周期15nsec(ナ
ノ秒)以下の高線速記録で顕著となる。しかしながら、
本発明の光学的情報記録用媒体に用いる記録層の組成範
囲では、反射率レベルが不安定となるような高線速記録
に対応する高結晶化速度の組成とした場合においても、
オシロスコープで観察される再生波形は、シャープな細
い線となる。これは、本発明の光学的情報記録媒体にお
いては、準安定結晶相が不均一となることがなく反射率
レベルが一定であることを示しているに他ならない。
【0024】従って本発明によれば、高線速記録に適し
た光学的情報記録用媒体を得ることができるようになる
のである。特に、基準クロック周期Tが15nsec以
下でのみ記録信号の記録消去が行われるような高線速記
録・消去に適した光学的情報記録用媒体を得ることがで
きるようになるのである。そして、前記光学的情報記録
用媒体の結晶化速度に適用する記録条件(光ビーム(レ
ーザー)のパルス分割記録方法、パルスストラテジー)
を用いることにより、実際の高線速記録が行われること
となる。 (A−2)記録層の好ましい組成 光学的情報記録用媒体の記録層の好ましい態様は、相変
化型記録層が下記一般式(2)で表される組成を主成分
とすることである。
【0025】
【化5】 ((AuxSb1-x1-yGey1-zM2z (2) ただし、x、y、zは、0.01≦x≦0.4、0<y
≦0.3、0≦z≦0.4を満たす数である。また、M
2は、Te、In、及びSnで表される少なくとも一つ
の元素である。
【0026】Au−Sb系合金にGeを更に含有させた
記録層組成を用いた光学的情報記録用媒体においては、
さらなる性能の向上が求められた場合に、高転送レート
記録でのオーバーライトジッタ特性と準安定結晶相の安
定性とを両立させるのが難しい場合がある。このような
場合には、Au−Sb系合金にGeを更に含有させるの
みならずさらに元素M2を含有させることにより、上記
ジッタ特性と上記安定性との両立を図ることができ、さ
らに良好な性能を有する光学的情報記録用媒体を得るこ
とができる。特に、基準クロック周期Tが15nsec
以下でのみ記録信号の記録消去を行うことができる光学
的情報記録用媒体を良好に得ることができるようにな
る。
【0027】上記一般式(2)におけるM2の含有量は
0以上であればよく、その上限は0.4以下とすればよ
い。添加元素M2を用いることによって、光学的情報記
録用媒体の高転送レート記録でのオーバーライトジッタ
特性と準安定結晶相の安定性との両立をより容易に図る
ことができるようになるが、M2として用いる添加元素
の種類によっては、上記効果をさらに高めることができ
るようになる。このような添加元素の具体例について以
下に説明する。
【0028】前記元素M2としてTeを用いると、アモ
ルファス相及び準安定結晶相から安定結晶相への転移速
度が遅くなる傾向がある。これにより準安定結晶相の安
定性がさらに高くなり、ひいては記録された信号の保存
安定性がより高まる。即ち、本発明の組成範囲において
Au量が多いと、上記(II)で説明した通り、用いる
記録層組成によってはアモルファス相及び準安定結晶相
がゆっくりと安定結晶相に相変化する現象が起こりやす
くなる傾向がある。この現象は、上記(II)で説明し
た通り、記録マークの安定性をさらに向上させるという
点からは好ましい一方で、記録マークの安定性が向上す
る結果、この記録マークを消去するための消去ビームの
パワーを大きくすることが必要となる。消去パワー(ビ
ーム出力)を大きくする自体はそれほど困難なことでは
ないが、ビーム出力の上昇幅が非常に大きくなるような
場合は、消去ビームの寿命が短くなるような場合があ
る。従って、このような場合、アモルファス相及び準安
定結晶相の安定性が十分高く、上記のような安定結晶相
への相変化が起こらないような記録層組成を用いること
が最も好ましい。このような観点から、Au−Sb系合
金にGeを含有させる組成にさらにTeを添加すること
は非常に好ましい態様である。さらに、Teを添加する
ことにより、アモルファス相や準安定結晶相の安定結晶
相への相変化を抑制できるので、上記一般式(2)にお
いてAuの含有量をさらに多くすることができる利点も
生まれる。
【0029】上記相変化の抑制の効果は、上記一般式
(2)において、0.01≦zのときに顕著であり、T
e含有量が多くなるほど効果は大きくなる。一方、Te
含有量が多すぎると長期保存したときにアモルファス相
が準安定結晶相に相変化してしまうことがある。つま
り、Te含有量が少なければアモルファス相は安定結晶
相へ相変化する傾向があるが、Te含有量が多いと安定
結晶相への相変化が起こりにくくなり、そのかわりアモ
ルファス相は次に安定な準安定結晶相に相変化してしま
う場合がある。
【0030】従ってTe含有量が多すぎると、未記録状
態が準安定結晶相である場合には、アモルファスマーク
が準安定結晶相へ相変化することで記録マークが消失し
てしまう現象が発生する場合がある。従って、このよう
な観点からTeを含有させる場合、zは、0.4以下と
する必要があるが、0.2以下とすることが好ましく、
0.1以下とすることがより好ましい。
【0031】なお、上記一般式(2)において、Ge量
を多くするとアモルファスマークの安定性を良くするこ
とができ、上記した通り、アモルファス相から安定結晶
相への相変化を抑制できる。しかし、TeとGeとは共
に、含有量を大きくすると、記録消去時にアモルファス
相から準安定結晶相への相変化速度(結晶化速度)を遅
くする傾向がある。従って、Te含有量とGe含有量と
の両方を同時に増やすと結晶化速度が不十分となる場合
があるため、Te含有量が多いときにGe含有量を増や
すことは、相変化速度を適切に保つ観点から十分考慮す
る必要がある。Ge含有量とのバランスを考慮しつつア
モルファスマークの保存安定性を良くするには、Teの
含有量を0.10以下とすることが好ましく、0.08
以下とすることがより好ましい。
【0032】また、上記元素M2としてTeを用いるこ
とにより、本発明に用いる光学的情報記録用媒体の信号
特性が改善される効果もある。つまり、光学的情報記録
用媒体を長期保存すると安定結晶相となったマークが広
がってしまう、つまりマーク周囲の準安定結晶相が安定
結晶相に相転移してしまう傾向があり、信号特性が悪化
する場合がある。Teはアモルファス相及び準安定結晶
相から安定結晶相への転移速度を遅くするため、Te添
加によりこの傾向を軽減することができる。
【0033】本発明においては、前記元素M2としてI
nを用いても良い。前記元素M2としてInを用いた場
合には、記録層の未記録部は、In−Sb系とAu−S
b系の準安定結晶相の混合相からなると考えられるた
め、前記混合相を形成するにはAuとInとの合計含有
量を適正な範囲にする必要がある。AuとInとの合計
含有量が少なすぎるとこの相の形成が不十分となる。一
方、AuとInとの含有量の合計が多すぎると、In−
Sb系、Au−Sb系の安定結晶相が常に形成され、ア
モルファス相や準安定結晶相に相当する相が安定に存在
しなくなり、記録媒体としての機能を果たさなくなって
しまう場合がある。また、InやAuの含有量が多くな
ると結晶化速度は遅くなるため、AuとInとの含有量
の合計が多すぎるとアモルファスマークの消去ができな
くなる場合がある。
【0034】以上から、Inを前記元素M2として用い
る場合は、上記一般式(2)における記録層組成におい
て、AuとInとの合計量が組成全体の5〜50原子%
とすることが好ましく、10〜45原子%とすることが
より好ましい。具体的には、上記一般式(2)における
x及びzの値を調節して、上記含有量となるようにAu
とInとの合計含有量を制御すればよい。
【0035】前記元素M2としてInを用いると、Te
を用いる場合と同様に、アモルファス相及び準安定結晶
相から安定結晶相への転移速度が遅くなる傾向がある。
これにより準安定結晶相が安定結晶相に相変化するのを
抑制でき、準安定結晶相の安定性が高まり、ひいては記
録された信号の保存安定性がより高まる。これは、In
を用いることによって、上記したように記録層がIn−
Sb系合金とAu−Sb系合金との混合した状態となっ
ているからではないかと推測される。In−Sb系合金
とAu−Sb系合金とを混合することにより、アモルフ
ァス相及び準安定結晶相が安定結晶相に相変化しにくく
なる理由は必ずしも明らかではないが、相変化速度が遅
くなるためか、又は、Inを添加することにより安定結
晶相が最も安定な相ではなくなるためではないかと考え
られる。例えば、Inの添加により、添加前の記録層に
おける準安定結晶相に相当する相が室温付近においても
最も安定な相になっている可能性がある。
【0036】以上より、前記元素M2としてInを用い
た場合、上記一般式(2)においてzの値は、0以上と
する必要があるが、好ましくは0.03以上、より好ま
しくは0.05以上、一方、0.4以下とする必要があ
るが、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.3
以下とする。In−Sb系合金、Au−Sb系合金単独
では、それぞれIn量、Au量が多くなると、安定結晶
相が常に形成され準安定結晶相が安定に存在できなくな
る。これに対し、本発明ではAuSbGe系組成にIn
を添加しており、アモルファス相及び準安定結晶相の安
定結晶相への相変化が起こりにくくなるため、InとA
uとの含有量を適宜調節することにより、記録層に含有
可能なSbの含有量の範囲が広くなる効果もある。
【0037】尚、本発明においては、Inは、少なくと
もその一部をGaで置き換えてもよい。これは、記録層
組成における、InとGaとの働きが同等であるためで
ある。次に、前記一般式(2)において、元素M2にS
nを選択すると、Au−Sb系合金の準安定結晶相の保
存安定性が特に高くなる。すなわち、Au−Sb系材料
は準安定結晶相が十分に安定ではなく、長期保存により
記録層の反射率が低下する場合がある(層構成によって
は反射率は上昇することもあり得ると思われる。)。こ
れは、アモルファス相と準安定結晶相との間の相変化記
録において、記録された信号の強度が長期保存により低
下してしまうということを意味する。さらには、この記
録層の反射率の低下は、書換時にアモルファス相が結晶
化した領域の反射率とはじめから結晶であった領域の反
射率との差を生じさせることにより、信号品質が悪化す
ることも意味する。従って、記録層組成によって準安定
結晶相の安定性が十分でない場合は、元素M2にSnを
用いればよい。
【0038】つまり、本発明においては、Au−Sb系
合金にSnを添加することにより、Au−Sb系にみら
れる準安定結晶相の反射率の経時変化を抑えることがで
きる。Au−Sb系準安定結晶相の反射率が経時的に変
化する理由は必ずしも明らかではない。本発明の組成範
囲においては、Auの多い方が安定結晶相への相変化が
起こりやすいが、Auの少ない方が反射率の低下がむし
ろ大きくなる傾向にあることを考えると、反射率低下の
理由は安定結晶相への相変化が徐々に起こっているから
ではなく、例えば準安定結晶のおける結晶配向の変化の
ようなものである可能性がある。いずれにせよ結晶化直
後の状態より安定な状態に少しずつ変化しているものと
思われる。従って、Snの添加により、この変化速度が
遅くなるか、またはAu−Sb系合金の準安定結晶相の
経時変化後の状態が安定に存在しなくなると考えられ
る。
【0039】従って、Snの含有量が少なすぎると反射
率経時変化を抑える効果が十分でなく、多すぎると結晶
とアモルファスの反射率差が小さくなるため信号強度が
十分でなくなる。以上から、上記一般式(2)におい
て、元素M2にSnを用いる場合のzの値は、0≦zと
するが、0.1≦zが好ましく、0.15≦zがより好
ましい。一方、z≦0.4とするが、z≦0.35とす
ることが好ましく、z≦0.3とすることがより好まし
い。
【0040】さらに、Snを添加するとアモルファス相
から準安定結晶相への結晶化速度が速くなり、より高線
速での結晶化が可能となる。また、Snの添加により結
晶核形成が容易になるため、スパッタリング法等により
形成されたAs−depo状態のアモルファス相にレー
ザー光を照射し結晶相のマークを形成することによる記
録も可能となる。 (A−3)記録層についてのその他の事項 本発明においては、種々の特性改善のために、記録層
に、Al、Ag、Ga、Zn、Si、Cu、Pd、P
t、Pb、Cr、Co、O、N、S、Se、V、Nb、
Ta、等を必要に応じて添加してもよい。特性改善の効
果を得るために、添加量は記録層の全体組成の0.1a
t.%(原子%)以上が好ましい。ただし、本発明組成
の好ましい特性を特に発揮するためには、10at.%
以下にとどめるのが好ましい。
【0041】上記記録層の膜厚は、十分な光学的コント
ラストを得、また結晶化速度を速くし短時間での記録消
去を達成するためには5nm以上あるのが好ましい。ま
た反射率を十分に高くするために、より好ましくは10
nm以上とする。一方、クラックを生じにくく、かつ十
分な光学的コントラストを得るためには、記録層膜厚は
100nm以下とするのが好ましい。
【0042】より好ましくは50nm以下とする。熱容
量を小さくし記録感度を上げるためである。また、相変
化に伴う体積変化を小さくし、記録層自身や上下の保護
層に対して、繰り返しオーバーライトによる繰り返し体
積変化の影響を小さくすることもできる。ひいては、不
可逆な微視的変形の蓄積が抑えられノイズが低減され、
繰り返しオーバーライト耐久性が向上する。
【0043】書き換え可能型DVDのような高密度記録
用媒体では、ノイズに対する要求が一層厳しいため、よ
り好ましくは記録層膜厚を30nm以下とする。尚、A
u−Sb系合金の準安定結晶相を利用する相変化記録に
ついては、安定結晶相との相変化を利用するものが知ら
れている。例えば米国特許第4、860、274号に
は、Sbの含有量が5〜25%のAu−Sb合金又はS
bの含有量が70〜90原子%のAu−Sb合金につい
て、異なった2種類の結晶相である準安定結晶相と安定
結晶相の間で記録消去することが記載されている。ま
た、特開昭63−225933号公報には、SbとAu
を主成分とし、SbとAuの原子数比が4:1と1:1
の間であり、かつSe、Bi、As、Te、Znよりな
る群から選択した少なくとも1種の元素を2〜50原子
%含む合金記録層において、溶融後急冷すると準安定結
晶相のπ相が、準安定結晶相を加熱アニールすると安定
結晶相が得られることが記載されている。
【0044】しかし、これら文献中に記載されているA
u−Sb系合金は、準安定結晶相が比較的安定に存在し
準安定結晶相と安定結晶相との間の相変化速度が遅いた
め、高速での記録消去が困難である。そして、上記文献
のAu−Sb系合金が高速での記録消去に不向きである
ことは、いずれの文献でも静的な記録しか行われていな
いことからも裏付けられる。また、これらの組成は準安
定結晶相の安定性が記録信号の安定性を確保する程は安
定ではない問題もある。
【0045】これに対し、本発明者は、Au−Sb系合
金を用いた場合においても、Au−Sb系合金にGeを
添加すれば、相変化速度が速く準安定結晶相の安定性も
十分な光学的情報記録用媒体が得られることを見出し
た。これは、Geを添加することにより、アモルファス
相が形成され易くなり、準安定結晶相とアモルファス相
との間の高速の相変化が可能となるからである。
【0046】ところで、特開平1−251342号公報
には、本発明に用いる光学的情報記録用媒体の記録層組
成と類似する組成が開示されている。しかしながら、こ
の公報に開示された記録層組成においては、Geの含有
量が5〜80at.%と広範囲である一方、本発明に用
いるAu−Sb系合金組成に含有され得るGe量の範囲
は、最大で30at.%である。本発明において、Ge
の含有量を最大で30at.%とする理由は、Geの含
有量が30at.%より多くなると、アモルファス相か
ら準安定結晶相への相変化速度が低下し、高速の線速度
での記録が困難になるからであり、これは、後述する実
施例中の比較例3においてGe含有量を32at.%と
すると、線速度1.2〜24m/sのいずれにおいても
相変化型光ディスクとしての使用が困難となることから
も裏付けられる。これに対し、前記公報において具体的
に開示されている記録層組成におけるGeの含有量は、
実験2では、47at.%((Ge55Sb4585Te10
Au5の組成から算出)であり、実験例3、4では、3
5at.%((Ge50Sb5 070Te30の組成から算
出)である。つまり、これらいずれの数字も本発明の許
容範囲である30at.%よりも多く、上記公報に記載
された記録層組成は、高速記録には不向きな記録層組成
である。これに対し、本発明の光学的情報記録用媒体
は、前記公報には記載も示唆もない、Au−Sb系合金
組成における準安定結晶相を利用するものである。さら
に、本発明の光学的情報記録用媒体は、記録層に含有さ
れるGeの量を制御することにより、前記公報に記載さ
れた光学的情報記録用媒体と比較して、高速記録が可能
となるという格別の効果を奏するのである。 (A−3)記録層以外の層 次に相変化光ディスクの構造における他の部分について
説明する。相変化光ディスクでは基板上に保護層、記録
層、保護層、反射層をこの順に、或いは逆の順に有する
場合が多い。
【0047】基板としては、ポリカーボネート、ポリア
クリレート、ポリオレフィンなどの樹脂、あるいはガラ
ス等を用いることができる。基板側から記録再生光を入
射する場合は、基板は記録再生光に対して透明とする必
要がある。記録層は、その上下を保護層で被覆されてい
る場合が多い。保護層の材料としては誘電体が多く用い
られるが、この誘電体の選択は、屈折率、熱伝導率、化
学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定され
る。誘電体としては、一般的には透明性が高く高融点で
ある金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物やCa、M
g、Li等のフッ化物が用いられる。
【0048】これらの酸化物、硫化物、窒化物、フッ化
物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率
等の制御のために組成を制御したり、混合して用いるこ
とも有効である。より具体的にはZnSや希土類硫化物
と酸化物、窒化物、炭化物等の耐熱化合物との混合物が
挙げられる。たとえばZnSとSiO2の混合物は、相
変化型光ディスクの保護層に用いられる場合が多い。こ
れらの保護層の膜密度は、バルク状態の80%以上であ
ることが機械的強度の面から望ましい。
【0049】保護層の膜厚は、記録層の変形防止効果を
十分なものとし保護層として機能するために、5nm以
上が好ましい。一方、保護層の膜厚は、保護層を構成す
る誘電体自体の内部応力や接している膜との弾性特性の
差を小さくし、クラックが発生しにくくするためには、
膜厚を500nm以下とするのが好ましい。一般に、保
護層を構成する材料は成膜レートが小さくため、保護層
の成膜時間は長くなる。従って、成膜時間を短くし製造
時間を短縮しコストを削減するためには、保護層膜厚を
200nm以下に抑えるのが好ましい。より好ましく
は、保護層膜厚を150nm以下とすることである。
【0050】記録層と反射層の間に設ける保護層の膜厚
は、記録層の変形を防ぐために、5nm以上とすること
が好ましい。一般に、繰り返しオーバーライトによって
保護層内部には微視的な塑性変形が蓄積される。この微
視的な組成変形は、再生光を散乱させノイズを増加させ
る原因となる。従って、この微視的な塑性変形を抑制す
るためには保護層膜厚を60nm以下とするのが好まし
い。
【0051】一方、記録層と基板の間に設ける保護層の
膜厚は、基板を保護するために20nm以上が好まし
い。なお、記録層及び保護層の厚みは、上記機械的強
度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う干渉
効果も考慮して、レーザー光の吸収効率が良く、記録信
号の振幅すなわち記録状態と未記録状態のコントラスト
が大きくなるように、選択される。
【0052】反射層は、反射率、熱伝導度が大きい材料
からなるのが好ましい。反射率、熱伝導度が大きい反射
層材料としてはAg、Au、Al、Cu等を主成分とす
る金属が挙げられる。中でもAgはAu、Al、Cu等
に比べて反射率、熱伝導度が最も大きい。短波長の光に
対しては、Agと比較して、Au、Cu、Alを反射層
に用いると、光が吸収されやすくなる。このため、記録
再生に650nm以下の短波長レーザーを使用する場合
には、反射層としてAgを主成分とする金属を用いるこ
とが特に好ましい。さらにAgは、スパッタリングター
ゲットとしての値段が比較的安く、放電が安定で成膜速
度が速く、空気中で安定であるため、反射層材料として
用いることが好ましい。
【0053】Ag、Al、Au、Cu等は他の元素を含
んでいてもよい。これら金属は、不純物が混ざると熱伝
導度や反射率が低下してしまうが、反面、安定性や膜表
面平坦性が改善される場合がある。従って、反射層にさ
らに他の元素を5at.%以下程度含有してもよい。含
有元素としては、Cr、Mo、Mg、Zr、V、Ag、
In、Ga、Zn、Sn、Si、Cu、Au、Al、P
d、Pt、Pb、Ta、Ni、Co、O、Se、V、N
b、Ti、O、Nからなる群から選ばれる1以上の元素
が好ましい。
【0054】反射層の膜厚は、十分な反射率と放熱効果
を得るためには50nm以上が好ましい。一方、反射層
の膜厚は、膜応力を低減するためには200nm以下が
好ましい。また、成膜時間を短くし製造時間を短縮しコ
ストを削減するためにも、反射層の膜厚は、200nm
以下が好ましい。記録層、保護層、反射層等は、所定割
合の合金ターゲットを用い、常法に従ってスパッタリン
グ法などによって形成される。記録層、保護層、反射層
当の膜形成は、各スパッタリングターゲットを同一真空
チャンバー内に設置したインライン装置でで行うこと
が、各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生
産性の面からも優れている。
【0055】これらの層のうえに、紫外線硬化樹脂など
からなる保護コート層を設けて保護しても良い。また、
記録容量を大容量化するために、基板上に記録層を2層
以上設けてもよいし、或いは基板上に上記各層を形成し
たのち、接着剤で貼り合わせても良い。尚、以上述べた
以外の他の層を必要に応じて加えても良い。 (B)光学的情報記録用媒体の記録消去方法 次に、本発明の光学的情報記録用媒体の記録消去方法に
ついて説明する。
【0056】前記記録消去方法は、以上述べた光学的情
報記録用媒体に対して、相変化型記録層の2つの異なる
相をそれぞれ記録状態及び未記録・消去状態とする記録
消去方法であって、該相変化型記録層がA相、B相、C
相の少なくとも3つの相を取り得、A相よりB相が安定
であり、B相よりC相が安定であるとき、該B相を記録
状態または未記録・消去状態とする。
【0057】即ち、従来は最も安定なC相及び最も不安
定なA相の間の相変化により記録消去を行っていたが、
本発明では、上記組成の記録層を有する媒体において準
安定なB相を記録消去に用いることができるようになる
ので、高速での記録消去が可能となる。B相は未記録・
消去状態であっても、記録状態であってもよい。一般的
に、記録層の組成の取りうるA相、B相、C相の安定性
が、A相<B相<C相、つまりA相、B相、C相の順に
より安定となる場合、最も不安定なA相はアモルファス
相(非晶質相)であり、他のB相、C相は結晶相であ
る。このことからA相がアモルファス相、B相が準安定
結晶相、C相が安定結晶相と考えるのが一般的である。
【0058】なお、各相がアモルファスか結晶か、結晶
であればどのような結晶かは、X線回折法又は電子線回
折法を用いて記録層の回折パターンを観察することで確
認できる。好ましくは、少なくともA相を記録状態とし
B相を未記録・消去状態とする、又はA相を未記録・消
去状態としB相を記録状態とする。つまりA相(アモル
ファス相)とB相(準安定結晶相)の間の相変化により
記録消去を行う。これにより、前述したように、アモル
ファス相と安定結晶相の間の相変化により記録消去を行
う従来法よりも速い相変化速度が得られ、より高速での
記録消去が可能となる。
【0059】準安定結晶相を未記録・消去状態とし、記
録時にアモルファス相のマークを形成してもよいし、ア
モルファス相を未記録・消去状態とし、記録時に準安定
結晶相のマークを形成してもよい。更にまた、準安定結
晶相を未記録・消去状態とし、記録時にアモルファス相
のマークを形成し、それが更に安定結晶相に相転移して
もよい。
【0060】以下、準安定結晶相を未記録・消去状態と
し、記録時にアモルファス相のマークを形成する場合を
例として説明する。通常、ディスク状の媒体には螺旋状
又は同心円状に記録トラックが形成され、これに沿って
情報の記録が行われる。媒体を高速で回転させながら光
照射部から出射した光ビーム(レーザー)スポットを記
録層に照射し、光照射部と媒体とを高速で相対移動させ
ながら記録・再生・消去を行う。
【0061】光源から出射した光は、通常各種光学系を
経て対物レンズを通って媒体に照射される。光照射部を
媒体に対して相対移動させるとは、例えば対物レンズを
ほぼ固定した状態でディスク状の媒体を回転させなが
ら、該レンズから媒体の記録トラックに光を照射する。
記録トラックが媒体に螺旋状に形成されている場合は、
媒体を回転させながら対物レンズをディスク半径方向に
少しずつ変移させる。
【0062】まず、アモルファス相を形成する際には高
パワーのレーザーパルスと低パワーのレーザーパルスを
交互に照射するのが好ましい。以下、高パワーのレーザ
ーパルスを記録パルスと称し、このとき印加されるパワ
ーを記録パワーPwとする。また低パワーのレーザーパ
ルスをオフパルスと称し、このとき印加されるパワーを
バイアスパワーPbとする。
【0063】上記高パワーのレーザーパルスと低パワー
のレーザーパルスとを交互に照射することにより、記録
パルスにより加熱された領域をオフパルスの間に相対的
に急冷することができ、アモルファス相が形成されやす
いくなる。パルスの立上がり/立下がりを速くしたり、
記録に用いるレーザー光源を安価なものとするために
は、小さい記録パワーPwで記録できるのが好ましい
が、小さいパワーで記録可能であるということは再生光
で劣化しやすいことにつながる。このため、媒体は記録
パワーPwが8〜25mWになるように設計するのが好
ましい。より好ましくは8〜20mWである。
【0064】なお、バイアスパワーPbは記録パワーP
wの0.5倍以下(Pb/Pw≦0.5)が好ましく、
より好ましくは0.3倍以下(Pb/Pw≦0.3)で
ある。ここで、トラッキング性能等を考慮すると、バイ
アスパワーPbは、再生時に照射する再生光のパワーP
rの値に近い値が好ましい。再生パワーPrは通常0.
5〜1.0mWである。
【0065】冷却速度を速めたい場合には、バイアスパ
ワーPbを小さくするのがよく、0としてもよい。即ち
光を照射しなくてもよい。準安定結晶相形成時には、記
録層に消去パワーPeのレーザー光を連続照射するのが
好ましい。消去パワーPeは、オーバーライトの際に準
安定結晶相を消去できるよう記録層を加熱できる大きさ
であれば特に制限はないが、通常、バイアスパワーPb
より大きく記録パワーPwより小さい。例えば0.2≦
Pe/Pw<1.0とする。消去パワーPeが連続照射
されると、記録層は結晶化温度付近まで加熱されるとと
もに、加熱された領域を相対的に徐冷することができ、
準安定結晶相を形成できる。
【0066】但し、(A)(A−1)(II)で説明し
たような第二の態様を利用する場合、つまり記録マーク
が保存中にアモルファス相から安定結晶相に相変化する
光学的情報記録用媒体を用いる場合は、消去パワーPe
をより高くするのが好ましい。安定結晶マークは記録層
を一旦溶融しないと消去(準安定結晶相への相変化)さ
れないため、消去パワーPeを記録層が溶融する程度ま
で上げることが好ましい。この場合、例えば、0.5≦
Pe/Pw≦1.0とする。
【0067】以上を組み合わせることで、アモルファス
相と準安定結晶相を形成し分けることができ、オーバー
ライト記録を行うことができる。アモルファス相を形成
する際に記録パルスとオフパルスを交互に照射する具体
例を以下に示す。長さnT(Tは基準クロック周期、n
は自然数)のマーク(アモルファス相)を形成する際に
は、時間nTを下記数式(3)のように分割する。
【0068】
【数1】 α1T、β1T、α2T、β2T、・・・、αm-1T、βm-1T、αmT、βmT …( 3) (但し、α1+β1+α2+β2+・・・αm-1+βm-1+α
m+βm=n−j、jは0以上の実数、mは1以上の整数
であり、j、mは媒体及び記録条件の組合せにより決め
られる値である。) 上記式において、αiT(1≦i≦m)なる時間に記録
パルスを照射し、βiT(1≦i≦m)なる時間にはオ
フパルスを照射して記録する。そしてマークとマークの
間の領域(準安定結晶相)においては、消去パワーPe
を有する光を照射する。これによってオーバーライト記
録を行える。
【0069】本発明の光学的情報記録用媒体への記録消
去方法として好ましいのは、上記(A)で説明した光学
的情報記録用媒体に対して、基準クロック周期Tの15
nsec以下でのみ情報信号の記録消去を行う記録消去
方法であり、記録に際しては高パワーのレーザーパルス
と低パワーのレーザーパルスが交互に照射され、該低パ
ワーのレーザーパルスがパルス幅0.9T以上のパルス
を含むものである。低パワーのレーザーパルスのパルス
幅を0.9T以上とするのは、基準クロック周期が15
nsec以下と短い高速記録においてパルス分割記録を
用いる場合には、十分な冷却速度を得るために該低パワ
ーレーザーパルスを長くすることが必要となるためであ
る。
【0070】
【実施例】以下に本発明を実施例を用いて説明するが、
その要旨の範囲を越えない限り本発明は実施例に限定さ
れるものではない。 (実施例1〜4、比較例1〜6)溝幅0.5μm、溝深
さ40nm、溝ピッチ1.6μmの案内溝を有する直径
120mm、1.2mm厚のディスク状ポリカ−ボネ−
ト基板上に、(ZnS) 80(SiO220層、Au−G
e−Sb記録層、(ZnS)80(SiO220層、Al
99.5Ta0.5合金反射層をスパッタリング法により成膜
し、相変化型光ディスクを作製した。
【0071】なお、実施例1〜4、比較例1〜6それぞ
れの膜厚構成及び記録層組成を、表−1に示す。またこ
れらの組成を(AuxSb1-x1-yGeyで表記した場合
のx、yの値も併せて表−1に記載した。尚、表−1に
おいて、実施例1の膜厚構成は、“Sub./100/
18/40/200”と記載されているが、これは、
“基板(Sub.)上の保護層(ZnS)80(Si
220層の膜厚が100nm、前記保護層上のAu−
Ge−Sb記録層の膜厚が18nm、前記記録層上の保
護層(ZnS)80(SiO220層の膜厚が40nm、
前記保護層上のAl99. 5Ta0.5合金反射層の膜厚が2
00nm”であることを意味している。これは、実施例
2〜4、比較例1〜6の膜厚構成においても同様であ
る。
【0072】
【表1】
【0073】得られたディスクのうち比較例1、2のデ
ィスクは、ディスク作製直後の反射率がそれぞれ14
%、8%で、線速度1.2〜24m/sの範囲でパワー
12mW以下のいかなるDCレ−ザ−光照射によっても
反射率は変化しなかった。従って、少なくともこの線速
度範囲においては、相変化型光ディスクの初期結晶化が
できず、相変化型光ディスクとしての使用はできなかっ
た。これは、準安定結晶相が安定に存在できず、常に安
定結晶相となっているためと考えられる。
【0074】比較例3、4のディスクは、ディスク作製
直後の反射率がそれぞれ4%、4%で、線速度1.2〜
24m/sの範囲で12mW以下のいかなるDCレ−ザ
−光照射によっても均一な反射率上昇は見られなかっ
た。従って少なくともこの線速度範囲においては、相変
化型光ディスクの初期結晶化が良好に行えず、相変化型
光ディスクとしての使用は困難であった。これは、アモ
ルファス相から準安定結晶相への相変化速度が遅いため
均一な準安定相が得られず、DCレーザー光照射によっ
ても、記録層がほとんどアモルファス相のまま変化しな
いためと考えられる。
【0075】次に実施例1〜3のディスクについて、初
期結晶化した後、レ−ザ−波長780nm、NA0.5
のピックアップを有するディスク評価装置を用い、以下
の手順で案内溝内に記録・消去を行ったのち再生してデ
ィスク特性を評価した。まず、線速度24m/s、基準
クロック周期T=11.6ns、Pw=21mW、Pe
=10.5mW、Pb=0.8mWで、EFMランダム
信号を図1に示すレーザー波形を用いて記録した。
【0076】すなわち、長さnT(Tは基準クロック周
期で、nは3〜11の自然数)のマーク(アモルファス
相)を形成する際には、時間nTの期間を上記数式
(3)のように分割し、記録パワーPwを持つ記録パル
ス、バイアスパワーPbを持つオフパルスを交互に照射
し、一部消去パワーPeを照射した。マーク間(準安定
結晶相)を形成する期間は消去パワーPeを持つ消去光
を照射した。
【0077】詳しくは、各マーク形成時はPwとPbの
パルス列を次のように照射した(Tは基準クロック周
期)。
【0078】
【表2】3Tマーク部:1.5TのPw、1.2TのP
b 4Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
0.6TのPb 5Tマーク部:1TのPw、1.35TのPb、1.5
TのPw、0.6TのPb 6Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1TのPb、1TのPw、0.6TのPb 7Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1.35TのPb、1.5TのPw、0.6TのPb 8Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1TのPb、1TのPw、1TのPb、1TのPw、
0.6TのPb 9Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1TのPb、1TのPw、1.35TのPb、1.5T
のPw、0.6TのPb 10Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのP
w、1TのPb、1TのPw、1TのPb、1TのP
w、1TのPb、1TのPw、0.6TのPb 11Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのP
w、1TのPb、1TのPw、1TのPb、1TのP
w、1.35TのPb、1.5TのPw、0.6TのP
b 以上のように記録したEFMランダム信号を、線速度
2.4m/sで再生し、マーク間部とマーク部の反射率
を測定した。結果を初期反射率として表−1に示す。な
お、マーク間部は未記録部・消去部に対応し、マーク部
は記録部に対応する。
【0079】その後105℃の環境にディスクを3時間
保ち(加速試験)、以上のように記録しておいた信号の
マーク間部とマーク部の反射率を再度測定した。結果を
加速試験後反射率として表−1に示す。実施例1では、
マーク間部の反射率は、初期及び加速試験後においてほ
とんど同等であり、加速試験によるマーク間部の反射率
低下はほとんど見られなかった。実施例2では、加速試
験後によるマーク間部の反射率低下は約7%であった。
これは、実施例2の記録層組成は、実施例1の記録層組
成に比べてAuの含有量が少ないため、準安定相の保存
安定性が多少低下していることによるものと考えられ
る。しかし、上記反射率の低下のレベルは、実使用レベ
ルから考えれば問題とはならないものである。実施例3
では、加速試験によるマーク間部の反射率低下は約9%
であった。これは、実施例1、2の記録層組成と比較し
て、実施例3の記録層組成においては、Au含有量が少
ないため、準安定相の保存安定性が低下したことによる
ものと考えられる。しかし、上記反射率の低下のレベル
は、実使用レベルから考えれば問題とはならないもので
ある。したがって、準安定相の保存安定性について、優
れているものから順に挙げれば実施例1、実施例2、実
施例3となる。
【0080】次に、実施例1〜3のディスクにおける、
記録層の相状態についてより詳細に考察する。これらの
ディスクでは、初期の記録消去において、24m/sの
線速度で消去パワー10.5mWの光照射によりマーク
部は消去可能である一方、マーク部の形成は少なくとも
17mW以上の記録パワーが必要であった。つまり、初
期のマーク部をL相、マーク間部をM相とすると、L相
からM相への相変化がM相からL相への相変化よりも低
温で起こり得るのでL相よりM相の方が安定である。
【0081】実施例1のディスクにおいては、記録層の
マーク部は、初期においては線速度2.4m/s、パワ
ー5mWのDCレ−ザ−光照射で消去可能であったのに
対し、加速試験後には、上記と同条件でDCレーザー光
照射を行っても、記録層のマーク部によっては消去され
ない部分があった。これは、初期のマーク部をL相、マ
ーク間部をM相とすると、信号記録時に形成されたマー
クのL相の一部が、105℃での加速試験後に、L相と
同程度の反射率を持ち、L相でもM相でもないN相へ相
変化したことを意味する。
【0082】実際、線速度2.4m/sで、記録層を溶
融させる程は大きくないと考えられるパワー5mWのD
Cレ−ザ−光を該ディスクに1000回照射したのち、
このディスクに再生光を照射し、オシロスコ−プで再生
信号波形を観察したところ、上記の消去されない部分
(N相)がマーク間部(M相)にも広がる傾向にあっ
た。これはマーク間部のM相が少しずつより安定なN相
に相変化していることを示している。
【0083】N相は、線速度2.4m/sで、記録層を
溶融させると考えられるパワー10mWのDCレ−ザ−
光照射により未記録状態の反射率に戻った。M相に相変
化したと考えられる。しかし6mW以下のDCレーザー
光照射ではN相はM相に相変化しなかった。これらのこ
とより、M相からN相への相変化がN相からM相への相
変化よりも低温で起こり得るのでM相よりN相の方が安
定である。
【0084】実施例2、3のディスクでも、線速度2.
4m/sで5mWのDCレーザー光を1000回照射す
ることによりマーク間部反射率が低下した。これは、M
相がN相に相変化したためと考えられる。この部分は記
録層が溶融すると思われる10mWのDCレ−ザ−光照
射により未記録状態の反射率に戻ったが、6mW以下の
DCレーザー光照射では戻らなかった。つまり、実施例
2、3のディスクにおいても、M相からN相への相変化
が、N相からM相への相変化よりも低温で起こり得るの
でM相よりN相の方が安定であることがわかる。
【0085】以上のことから、実施例1、2、3におい
て、L相よりM相の方が安定であり、M相よりもN相の
方が安定である。従って、L相はA相に該当し、アモル
ファス相であると、M相はB相に該当し、準安定結晶相
であると、N相はC相に該当し、安定結晶相であると考
えられる。また、初期の消去記録においては、B相(M
相、準安定結晶相)を未記録・消去状態とし、A相(L
相、アモルファス相)を記録状態としている。そして、
実施例1、2、3のディスクにおいては、A相とB相と
の間での相変化を利用しているため、24m/sという
高線速においても記録消去ができるのである。
【0086】なお、実施例1〜3のディスクの記録層の
相状態の詳細な考察を行うための実験において、線速度
をマーク記録時の24m/sから2.4m/sに低下さ
せた理由は、レーザー照射時の冷却速度を遅くし温度が
上昇している時間を長くすることにより、最も安定なN
相への相変化を観察しやすくするためである。次に、実
施例3と同様の記録層組成で膜厚構成を多少変化させた
実施例4のディスクを用い初期結晶化後オーバーライト
ジッタ特性を測定した。
【0087】まず、線速度24m/s、基準クロック周
期T=11.6ns、Pe/Pw比=0.45、Pb=
0.8mWとし、EFMランダム信号を50回オーバー
ライト記録した。記録パワーは17〜24mWとした。
長さnT(Tは基準クロック周期で、nは3〜11の自
然数)のマーク(アモルファス相)を形成する際には、
時間nTの期間を上記数式(3)のように分割し、記録
パワーPwを持つ記録パルス、バイアスパワーPbを持
つオフパルスを交互に照射し、一部消去パワーPeを照
射した。マーク間(準安定結晶相)を形成する期間は消
去パワーPeを持つ消去光を照射した。
【0088】詳しくは、各マーク形成時はPwとPbの
パルス列を次のように照射した(Tは基準クロック周
期)。
【0089】
【表3】3Tマーク部:1.25TのPw、0.7Tの
Pb 4Tマーク部:1.1TのPw、0.85TのPb、1
TのPw、0.2TのPb 5Tマーク部:1.1TのPw、1.25TのPb、
1.3TのPw、0.2TのPb 6Tマーク部:1.1TのPw、0.85TのPb、1
TのPw、0.85TのPb、1TのPw、0.2Tの
Pb 7Tマーク部:1.1TのPw、1.25TのPb、1
TのPw、1TのPb、1.3のPw、0.2TのPb 8Tマーク部:1.1TのPw、0.85TのPb、1
TのPw、1TのPb、1TのPw、0.85TのP
b、1TのPw、0.2TのPb 9Tマーク部:1.1TのPw、1.25TのPb、1
TのPw、1TのPb、1TのPw、1TのPb、1.
3TのPw、0.2TのPb 10Tマーク部:1.1TのPw、0.85TのPb、
1TのPw、1TのPb、1TのPw、1TのPb、1
TのPw、0.85TのPb、1TのPw、0.2Tの
Pb 11Tマーク部:1.1TのPw、1.25TのPb、
1TのPw、1TのPb、1TのPw、1TのPb、1
TのPw、1TのPb、1.3TのPw、0.2TのP
b 以上のように記録したEFMランダム信号を、線速度
2.4m/sで再生し、3Tマークジッタと3Tスペー
スジッタを測定した。結果を図2に示す。CD−RWの
規格である17.5ns以下のジッタが十分に得られて
おり、優れたオーバーライトジッタ特性を持つことがわ
かる。
【0090】つぎにAuが含まれないGeSb系に関し
て同様の測定を試みた。結晶化速度の点で上記記録条件
に適した組成と思われるGe16Sb84(比較例5)とG
17Sb83(比較例6)を試みた。しかしながら、比較
例5、6のいずれのディスクも初期結晶化後にオシロス
コープで再生波形を観察すると、結晶相(未記録状態)
の反射率レベルが一定ではなく幅を持って太い線となっ
ていた。これは、初期結晶化後において記録層が均一に
結晶化されていないためと考えられる。また、これらデ
ィスクのジッタの値は25ns以下にはならず信号振幅
も小さく、とても使用可能なディスクとはいえない。
【0091】以上より、(AuxSb1-x1-yGeyの組
成において、0.01≦x≦0.4、0<y≦0.3と
することにより、記録信号保存安定性、及び高転送レー
トオーバーライト記録時ジッタ特性に優れる光学的情報
記録用媒体を得ることができる。さらに、上記組成にお
いて、0.12≦x≦0.4、0<y≦0.3とするこ
とにより、記録信号保存安定性に特に優れる媒体を得る
ことができる。 (実施例5〜9、比較例7、8)溝幅0.5μm、溝深
さ40nm、溝ピッチ1.6μmの案内溝を有する直径
120mm、1.2mm厚のディスク状ポリカ−ボネ−
ト基板上に、(ZnS) 80(SiO220層(100n
m)、Au−Ge−Sb−Te記録層(18nm)、
(ZnS)80(SiO220層(40nm)、Al99.5
Ta0.5合金反射層(200nm)をスパッタリング法
により成膜し、相変化型光ディスクを作製した。
【0092】なお、記録層組成は表−2に示す7種類と
した。またこれらの組成を((Au xSb1-x1-y
y1-zTezで表記した場合のx、y、zの値も併せ
て表−2に記載した。
【0093】
【表4】
【0094】得られたディスクのうち、比較例7のディ
スクは、ディスク作製直後の反射率は14%で、線速度
1.2〜24m/sの範囲でパワー12mW以下のいか
なるDCレ−ザ−光照射によっても反射率は変化しなか
った。従って、少なくともこの線速度範囲においては、
相変化型光ディスクの初期結晶化ができず、相変化型光
ディスクとしての使用はできなかった。これは、準安定
結晶相が安定に存在できず、常に記録層が安定結晶相と
なっているためと考えられる。
【0095】比較例8のディスクは、ディスク作製直後
の反射率は4%で、線速度1.2〜24m/sの範囲で
12mW以下のいかなるDCレ−ザ−光照射によっても
均一な反射率上昇は見られなかった。従って、少なくと
もこの線速度範囲においては、相変化型光ディスクの初
期結晶化ができず、相変化型光ディスクとしての使用は
できなかった。これは、アモルファス相から準安定結晶
相への相変化速度が遅いため、均一な準安定相が得られ
ず、記録層がほとんどアモルファス相のままであるため
と考えられる。
【0096】これに対し、実施例5〜9の各ディスク
は、線速度1.2〜24m/sの範囲で12mW以下の
DCレ−ザ−光照射によって均一な反射率上昇が観察さ
れた。初期結晶化した実施例5〜9の各ディスクについ
て、レ−ザ−波長780nm、NA0.5のピックアッ
プを有するディスク評価装置を用い、以下の手順で案内
溝内に記録・消去を行ったのち再生してディスク特性を
評価した。
【0097】まず、線速度24m/s、基準クロック周
期T=11.6ns、Pw=21mW、Pe=10.5
mW、Pb=0.8mWで、EFMランダム信号を図1
に示すレーザー波形を用いて記録した。図1において横
軸は時間、縦軸はレーザーパワーであり、記録パワーP
w、消去パワーPe、バイアスパワーPbの3種類のパ
ワーを使用している。図1(a)は長さ3Tのマークを
記録する場合のレーザー波形を表し、図1(b)、
(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、
(i)はそれぞれ長さ4T、5T、6T、7T、8T、
9T、10T、11Tのマークを記録する場合のレーザ
ー波形を表す。
【0098】すなわち、長さnT(Tは基準クロック周
期で、nは3〜11の自然数)のマーク(アモルファス
相)を形成する際には、時間nTの期間を上記数式
(3)のように分割し、記録パワーPwを持つ記録パル
ス、バイアスパワーPbを持つオフパルスを交互に照射
し、一部消去パワーPeを照射した。マーク間(準安定
結晶相)を形成する期間は消去パワーPeを持つ消去光
を照射した。
【0099】詳しくは、各マーク形成時はPwとPbの
パルス列を次のように照射した(Tは基準クロック周
期)。
【0100】
【表5】3Tマーク:1.5TのPw、1.2TのPb 4Tマーク:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
0.6TのPb 5Tマーク:1TのPw、1.35TのPb、1.5T
のPw、0.6TのPb 6Tマーク:1TのPw、1TのPb、1TのPw、1
TのPb、1TのPw、0.6TのPb 7Tマーク:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1.35TのPb、1.5TのPw、0.6TのPb 8Tマーク:1TのPw、1TのPb、1TのPw、1
TのPb、1TのPw、1TのPb、1TのPw、0.
6TのPb 9Tマーク:1TのPw、1TのPb、1TのPw、1
TのPb、1TのPw、1.35TのPb、1.5Tの
Pw、0.6TのPb 10Tマーク:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1TのPb、1TのPw、1TのPb、1TのPw、1
TのPb、1TのPw、0.6TのPb 11Tマーク:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1TのPb、1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1.35TのPb、1.5TのPw、0.6TのPb 以上のように記録したEFMランダム信号を、線速度
2.4m/sで再生し、マーク間部とマーク部の反射率
を測定した。結果を初期反射率として表−2に示す。な
お、マーク間部は未記録部・消去部に対応し、マーク部
は記録部に対応する。
【0101】実施例5〜9の初期状態では、マーク間部
(未記録部・消去部)は準安定相であり、マーク部(記
録部)はアモルファス相であると推定される。また、一
般的にアモルファス相は1種しかなく他は結晶相である
ことから、準安定相は準安定結晶相であると推定され
る。その後105℃の環境にディスクを3時間保ち(加
速試験)、以上のように記録しておいた信号のマーク間
部とマーク部の反射率を再度測定した。結果を加速試験
後反射率として表−2に示す。
【0102】実施例5、6のディスクでは、初期と加速
試験後でマーク間部の反射率低下はほとんど見られず、
相変化型光ディスクとして良好な性能を示していること
がわかる。また、実施例7のディスクは、加速試験後に
おけるマーク間部の反射率の低下率は、約7%であっ
た。これは、実施例5、6のディスクに比べて、実施例
7の光ディスクの記録層中に含有されるAu量が少ない
ため準安定相の保存安定性が多少低下しているためと考
えられる。しかし、上記反射率の低下のレベルは、実使
用レベルから考えれば問題とはならないものである。
【0103】実施例8、9のディスクでは、マーク間部
反射率の低下は見られず良好な保存安定性を示す。一
方、マーク部においては、上記加速試験によりその反射
率が若干上昇する結果となった。これは、加速試験によ
り、アモルファスマークが未記録状態の準安定相に相変
化するためと考えられる。次に、実施例5〜7での記録
層の相状態についてより詳細に考察する。
【0104】これらのディスクでは初期の記録消去にお
いて、24m/sの線速度で消去パワー10.5mWの
光照射によりマーク部は消去可能である一方、マーク部
の形成は少なくとも17mW以上の記録パワーが必要で
あった。つまり、初期のマーク部をL相、マーク間部を
M相とすると、L相からM相への相変化がM相からL相
への相変化よりも低温で起こり得るのでL相よりM相の
方が安定である。
【0105】実施例5、6では、マーク部は初期には線
速度2.4m/s、パワー5mWのDCレ−ザ−光照射
で消去可能であったのに対し、加速試験後にはマーク部
に同条件で消去されない部分が生じていた。つまり、初
期のマーク部をL相、マーク間部をM相とすると、信号
記録時に形成されたマークのL相の一部が、105℃で
の加速試験後に、L相と同程度の反射率を持ち、L相で
もM相でもないN相へ相変化した。
【0106】実際、線速度2.4m/sで、照射により
記録層が溶融しないと思われるパワー5mWのDCレ−
ザ−光を該ディスクに1000回照射した後、ディスク
に再生光を照射してオシロスコ−プで再生信号波形を観
察したところ、上記の消去されない部分(N相)がマー
ク間部(M相)にも広がる傾向にあった。これはマーク
間部のM相が少しずつより安定なN相に相変化している
ことを示している。
【0107】N相となる領域は、実施例5より実施例6
のディスクでより多く観察された。また、N相は、線速
度2.4m/sで、記録層が溶融すると思われるパワー
10mWのDCレ−ザ−光照射により未記録状態の反射
率に戻った。N相がM相に相変化したと考えられる。し
かし6mW以下のDCレーザー光照射ではN相はM相に
相変化しなかった。
【0108】これらのことより、M相からN相への相変
化がN相からM相への相変化よりも低温で起こり得るの
でM相よりN相の方が安定である。実施例7のディスク
でも、線速度2.4m/sで5mWのDCレーザー光を
1000回照射することによりマーク間部反射率が低下
した。M相がN相に相変化したと考えられる。この部分
は、記録層が溶融すると思われる10mWのDCレ−ザ
−光照射により未記録状態の反射率に戻ったが、6mW
以下のDCレーザー光照射では未記録状態の反射率に戻
らなかった。M相からN相への相変化がN相からM相へ
の相変化よりも低温で起こり得るのでM相よりN相の方
が安定である。
【0109】以上のことから、実施例5〜7の各ディス
クにおいて、L相はアモルファス相、M相は準安定相
(準安定結晶相)、N相は安定相(安定結晶相)である
と考えられる。なお、実施例5〜7のディスクの記録層
の相状態の詳細な考察を行うための実験において、線速
度をマーク記録時の24m/sから2.4m/sに低下
させた理由は、レーザー照射時の冷却速度を遅くし温度
が上昇している時間を長くすることにより、最も安定な
N相への相変化を観察しやすくするためである。 (実施例10〜13、比較例9〜11)溝幅0.5μ
m、溝深さ40nm、溝ピッチ1.6μmの案内溝を有
する直径120mm、1.2mm厚のディスク状ポリカ
−ボネ−ト基板上に、(ZnS) 80(SiO220
(80nm)、Au−Ge−Sb−Sn記録層(15n
m)、(ZnS)80(SiO220層(30nm)、A
99.5Ta0.5合金反射層(200nm)をスパッタリ
ング法により成膜し、相変化型光ディスクを作製した。
【0110】なお、記録層組成は表−3に示した。また
これらの組成を((AuxSb1-x 1-yGey1-zSnz
で表記した場合のx、y、zの値も併せて表−3に記載
した。これらのディスクは、レ−ザ−波長780nm、
NA0.5のピックアップを有するディスク評価装置を
用い、2.4m/s、10mWのDCレーザー光を照射
することにより初期結晶化を試みた。
【0111】
【表6】
【0112】得られたディスクのうち比較例11のディ
スクは、前記の初期化操作による均一な反射率上昇は見
られなかった。また初期化操作後のディスクの反射率は
7%と低かった。つまり、記録層の初期結晶化をするこ
とができなかった。従って相変化型光ディスクとしての
使用は困難である。これは、アモルファス相から準安定
結晶相への相変化速度が遅いため均一な準安定相が得ら
れないため、またはAu−Sb系準安定相のような構造
が安定に存在し得なくなったためと考えられる。
【0113】比較例10のディスクは、ディスク作製直
後の反射率は10%で、前記の初期化操作による反射率
変化はみられなかった。つまり、記録層を初期結晶化を
することができなかった。従ってこの組成では相変化型
光ディスクとしての使用はできない。これは、準安定結
晶相が安定に存在できず、記録層が常に安定結晶相とな
っているためと考えられる。
【0114】比較例9のディスクは、前記の初期化操作
による均一な反射率上昇は見られなかった。従って、こ
の組成では相変化型光ディスクの初期結晶化が良好に行
えず、相変化型光ディスクとしての使用は困難であっ
た。このディスクの記録層は、初期化操作によって結晶
化はするものの、このディスクの再生波形をオシロスコ
ープで観察すると、結晶相の反射率レベルが一定ではな
く幅を持って太い線となっていた。これは、均一な結晶
化ができていないためである。このように均一な結晶化
ができない理由は、Au−Sb系準安定相が形成されな
いためと思われる。
【0115】実施例10〜13のディスクは、初期化操
作により、記録層が均一に初期結晶化した。つまり、上
記比較例9〜11の各ディスクと比較して、良好な相変
化型光ディスクを得ることができた。さらに、実施例1
0〜13の各ディスクではAs−depoアモルファス
状態の反射率は6%以下であり、結晶状態の反射率との
差は良好であった。
【0116】実施例10〜13の各ディスクは、上記測
定の後、105℃の環境に保持された後(加速試験)、
初期結晶化部とAs−depo部反射率を再度測定し
た。結果を表−3に示す。また、((初期結晶部反射
率)−(加速試験後結晶部反射率))/(初期結晶部反
射率)で定義した反射率低下率も記載した。Snの含有
量の増加と共に反射率低下率が小さくなっていくことが
わかる。 (実施例14〜18、比較例12〜16)溝幅0.5μ
m、溝深さ40nm、溝ピッチ1.6μmの案内溝を有
する直径120mm、1.2mm厚のディスク状ポリカ
−ボネ−ト基板上に、(ZnS) 80(SiO220
(100nm)、Au−Sb−Ge−In記録層(18
nm)、(ZnS)80(SiO220層(40nm)、
Al99.5Ta0.5合金反射層(200nm)をスパッタ
リング法により成膜し、さらにその上に紫外線硬化樹脂
層を設けた相変化型光ディスクを作製した。
【0117】なお、記録層組成は表−4に示す10種類
とした。またこれらの組成を((AuxSb1-x1-y
y1-zInzで標記した場合のx、y、zの値も併せ
て表―4に示した。
【0118】
【表7】
【0119】各ディスクの初期結晶化は良好に行うこと
ができた。初期結晶化した後、レ−ザ−波長780n
m、NA0.5のピックアップを有する光ディスク評価
装置を用いて、以下の手順で基板を通して案内溝内にD
Cレーザー光を照射するレーザー照射試験を行った。レ
ーザー照射試験とは、線速度を2.4m/sとし、10
mWのDC光を100回、9mWのDC光を100回、
8mWのDC光を100回、7mWのDC光を100
回、6mWのDC光を100回、5mWのDC光を10
0回、4mWのDC光を100回、3mWのDC光を1
00回この順に照射する試験である。そして、レーザー
照射試験前後の反射率を測定し、反射率低下を測定し
た。結果を表−4に示す。尚、反射率低下率は、((初
期反射率)−(レーザー照射試験後反射率))/(初期
反射率)として定義した。
【0120】レーザー照射試験は、初期結晶状態よりも
安定な相が存在する場合にこの安定相への相変化が起こ
りやすい状況を作っている。理由は以下の通りである。
つまり、常温で複数の相が存在する場合、すべての相は
最も安定な相に相変化する傾向にあるが、温度を適度に
上昇させることによりこの相変化速度は速くなる。10
mWのDC光を照射するとトラック中心部は溶融する
が、ビーム中心から離れるにつれレーザー光の強度は小
さくなるため、トラック中心からある程度離れた位置で
は安定相への相変化速度が相対的に速くなるような温度
範囲になる。100回のDC光照射をおこなうのはこの
温度に保たれる累積時間を長くするためである。次にレ
ーザーパワーを9mWにすると、安定相への相変化速度
が相対的に速くなるような温度範囲になる位置は10m
Wのときより多少トラック中心に近くなる。このとき、
10mWのDC光照射により安定相に変化した部分はそ
のまま安定相として留まる。このように次第にDC光の
パワーを小さくしていくことにより安定相となる領域が
広くなっていくと考えられる。
【0121】表−4に見られるように、実施例14〜1
8の各ディスクのレーザー照射試験での反射率の低下率
は、比較例12〜16の各ディスクのそれよりも小さか
った。比較例のすべてのディスクで、レーザー照射試験
による反射率の低下率は55%を越える大きなものであ
った。これは、比較例12〜16の各ディスクの記録層
は、実施例14〜18の各ディスクの記録層と比較し
て、記録消去には使用しない初期結晶相より安定な結晶
相により相変化しやすいことを意味している。尚、表−
4においては、比較例16のディスクの「レーザー照射
試験後反射率」、「反射率低下率」の欄には反射率のデ
ータが記載されていない。これは、比較例16のディス
クにおいては、レーザー照射試験後は反射率が低くなり
すぎて再生が不可能となったためである。
【0122】実施例14〜18のディスクでは、反射率
の低下が明らかに抑えられており、安定結晶相への相変
化が起こりにくくなっていることがわかる。特に、実施
例18のディスクの結果と実施例14〜17のディスク
の結果とを比較してわかるように、記録層組成を、Au
−Sb系合金にGe、さらにはInを含有させる組成と
することにより、安定結晶相への相変化がさらに起こり
にくくなる。
【0123】比較例12〜16の各ディスクと比較例
5、6及び9の各ディスクとは、記録層にAuを含有し
ない点で共通するが、比較例12〜16の各ディスク
は、比較例5、6及び9の各ディスクよりも、ディスク
の初期結晶化を良好に行うことができる点で優れてい
る。これは、Auを含まない記録層組成においてもS
b、Ge、及びInの含有量を制御することにより、初
期結晶化が可能となるようなディスクを得ることができ
ることを意味する。しかしながら、初期結晶化が良好に
行えるような比較例12〜16の各ディスクにおいて
も、これらディスクは記録層にAuを含有していないた
め、レーザー照射試験により安定結晶相への相変化が起
こりやすくなり、結果として記録層の反射率の低下が大
きくなる。
【0124】一方、本発明の光学的情報記録用媒体の記
録層は、Auを所定量含有することを必須とする。これ
は、前にも説明した通り、Auを所定量含有するからこ
そ準安定結晶が安定に存在し、安定結晶相への相変化が
抑制されるからである。そしてこのことは、上記実施例
14〜18の各ディスクのレーザー照射試験の結果から
も明らかである。
【0125】また、実施例14〜18及び比較例12〜
16のいずれのディスクにおいても、レーザー照射試験
後に5mW以下のレーザーを照射しても反射率に変化は
なかったが、10mWのDC光を1回照射するとほぼ初
期の反射率に戻った。これは、5mW以下のレーザーで
は記録層は溶融しないが、10mWのDC光照射で記録
層が溶融し、準安定相に相当する結晶相に相変化するた
めと考えられる。尚、表―4に示す比較例12〜16の
結果より、In−Sb−Ge系合金を記録層に用いた場
合とIn−Sb系合金を記録層に用いた場合とでは、I
nとSbの含有量比においてInが多くなると反射率の
低下が大きく安定結晶相に相変化しやすい傾向があるこ
とがわかる。
【0126】次に、実施例15のディスクの初期結晶化
部に記録線速度24m/sでEFMランダム信号を10
回オーバーライト記録した後、線速度を2.4m/sと
して3Tマークジッタを測定した。記録時は、基準クロ
ック周期T=11.6ns、Pw=22mW、Pe=7
mW、Pb=0.8mWで、EFMランダム信号を図1
に示すレーザー波形とした。
【0127】すなわち、長さnT(Tは基準クロック周
期で、nは3〜11の自然数)のマーク(アモルファス
相)を形成する際には、時間nTの期間を上記数式
(3)のように分割し、記録パワーPwを持つ記録パル
ス、バイアスパワーPbを持つオフパルスを交互に照射
し、一部消去パワーPeを照射した。マーク間(結晶
相)を形成する期間は消去パワーPeを持つ消去光を照
射した。
【0128】詳しくは、各マーク形成時はPwとPbの
パルス列を次のように照射した(Tは基準クロック周
期)。
【0129】
【表8】3Tマーク部:1.5TのPw、1.2TのP
b 4Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
0.6TのPb 5Tマーク部:1TのPw、1.35TのPb、1.5
TのPw、0.6TのPb 6Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1TのPb、1TのPw、0.6TのPb 7Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1.35TのPb、1.5TのPw、0.6TのPb 8Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1TのPb、1TのPw、1TのPb、1TのPw、
0.6TのPb 9Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのPw、
1TのPb、1TのPw、1.35TのPb、1.5T
のPw、0.6TのPb 10Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのP
w、1TのPb、1TのPw、1TのPb、1TのP
w、1TのPb、1TのPw、0.6TのPb 11Tマーク部:1TのPw、1TのPb、1TのP
w、1TのPb、1TのPw、1TのPb、1TのP
w、1.35TのPb、1.5TのPw、0.6TのP
b 以上のように10回オーバーライト記録したEFMラン
ダム信号を、線速度2.4m/sで再生し、3Tマーク
ジッタを測定したところ17.4nsであった。すなわ
ち、17.5ns以下というCD−RW規格(オレンジ
ブックパート3)を満たした。実施例15のディスク
は、記録層組成を多少変化させて結晶化速度を変えるこ
とや、記録時のパルスストラテジの改善等によりさらな
る記録特性の改善が期待できる。ここで、実施例15の
ディスクについてのみ記録特性を評価した理由は、実施
例15のディスクが上記記録条件に比較的適した結晶化
速度を示したからである。尚、他の実施例のディスクは
異なった記録条件に適した組成になっているものと思わ
れる。
【0130】ここで、Ge、In、Auの含有量を多く
することにより結晶化速度が遅くなった。従って、例え
ばIn含有量を少なくしGe含有量を多くすることによ
り、同程度の結晶化速度を有し異なった組成の記録層を
得ることも可能である。ディスクの未記録状態におい
て、再生光を照射し、オシロスコープで再生波形を観察
したところ、従来から知られている記録層組成であるG
5Sb79Te16等で見られるような、結晶相(未記録
状態)の反射率レベルが一定ではなく幅を持って太い線
となって見える現象は、実施例15のディスクでは見ら
れず、ノイズが小さい良好なディスクが得られているこ
とがわかった。
【0131】
【発明の効果】本発明によれば、相変化速度が速く、高
速記録消去が可能で保存安定性の高い光学的情報記録用
媒体を得ることができる。特に、記録部(マーク部)お
よび未記録・消去部(マーク間部)の保存安定性、高転
送レートオーバーライト記録時ジッタ特性に優れる光学
的情報記録用媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるパルス分割方法の概略
【図2】本発明の実施例における記録パワーと3Tマー
クジッタ及び3Tスペースジッタとの関係を示すグラフ
フロントページの続き Fターム(参考) 2H111 EA04 EA23 EA36 EA39 FB05 FB06 FB09 FB12 FB17 FB21 FB30 5D029 JA01 JC17 JC20 5D090 AA01 BB05 CC06 CC14 DD02 EE01 EE05 FF21 KK05

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に、少なくとも2つの異なる相を
    取りうる相変化型記録層を設けた光学的情報記録用媒体
    であって、該相変化型記録層が下記一般式(1)で表さ
    れる組成を主成分とすることを特徴とする光学的情報記
    録用媒体。 【化1】 (AuxSb1-x1-yGey (1) ただしx、yは、それぞれ0.01≦x≦0.4、0<
    y≦0.3を満たす数である。
  2. 【請求項2】 相変化型記録層が下記一般式(2)で表
    される組成を主成分とする請求項1に記載の光学的情報
    記録用媒体。 【化2】 ((AuxSb1-x1-yGey1-zM2z (2) ただし、x、y、zは、0.01≦x≦0.4、0<y
    ≦0.3、0≦z≦0.4を満たす数である。また、元
    素M2は、Te、In、及びSnで表される少なくとも
    一つの元素である。
  3. 【請求項3】 基準クロック周期Tが15nsec以下
    でのみ記録信号の記録消去が行われる請求項1又は2に
    記載の光学的情報記録用媒体。
  4. 【請求項4】 基準クロック周期Tが15nsec以下
    でのみ情報信号の記録消去が行われる光学的情報記録用
    媒体であって、記録に際しては高パワーのレーザーパル
    スと低パワーのレーザーパルスが交互に照射され、該低
    パワーのレーザーパルスがパルス幅0.9T以上のパル
    スを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の光学的情報
    記録用媒体。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載の光学
    的情報記録用媒体に対して、該相変化型記録層の2つの
    異なる相をそれぞれ記録状態及び未記録・消去状態とす
    る記録消去方法であって、該相変化型記録層がA相、B
    相、C相の少なくとも3つの相を取り得、A相よりB相
    が安定であり、B相よりC相が安定であるとき、該B相
    を記録状態または未記録・消去状態とすることを特徴と
    する記録消去方法。
  6. 【請求項6】 少なくともA相を記録状態としB相を未
    記録・消去状態とする、又はA相を未記録・消去状態と
    しB相を記録状態とする請求項5に記載の記録消去方
    法。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至4のいずれかに記載の光学
    的情報記録用媒体に対して、基準クロック周期Tが15
    nsec以下でのみ情報信号の記録消去を行う記録消去
    方法であって、記録に際しては高パワーのレーザーパル
    スと低パワーのレーザーパルスとが交互に照射され、該
    低パワーのレーザーパルスがパルス幅0.9T以上のパ
    ルスを含む記録消去方法。
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