JP3971198B2 - 光記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DVDと同等以上の記録密度を有し、DVDの5倍速(17.5m/s)程度までの高線速記録に適した光記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体レーザービーム照射により情報の記録・再生及び消去可能な光記録媒体には、磁化の反転を行い記録消去する光磁気記録方式と、結晶と非晶質の可逆的相変化を利用し記録消去する相変化記録方式がある。後者は単一ビームオーバーライトが可能であり、ドライブ側の光学系もより単純であることを特徴とし、コンピューター関連や映像音響に関する記録媒体として応用されている。
相変化型光記録媒体は基板上の記録層薄膜にレーザー光を照射することにより記録層を加熱し、記録層構造を結晶とアモルファス間で相変化させることによりディスク反射率を変えて情報を記録・消去するものである。通常は記録状態がアモルファス相、消去状態が結晶相になるようにしており、記録層、保護層などを成膜して形成された媒体は、更に、大口径レーザービーム照射等により初期結晶化された状態で使用が開始される。
記録(結晶→アモルファス)したい領域では高パワーのレーザーを照射し記録層を融点以上に加熱する。加熱された記録層は溶融後、レーザーの通過に伴いある温度プロファイルで冷却される。この冷却速度を記録層材料の持つ結晶化速度以上にすることにより記録層はアモルファス化する。
一方、消去(アモルファス→結晶)したい領域では中間的なパワーのレーザーを照射し記録層が結晶化できる温度以上に一定時間保持する。この温度で加熱された記録層はアモルファス状態からより安定な結晶状態へ相変化する。
【0003】
記録層材料としては、アモルファスを形成し易く、また、繰り返し記録によっても組成偏析が起き難いことからカルコゲナイドを中心とした材料が使用されている。実用化されているものとしては、GeTeとSbTeの混合物、及び、SbとTeのモル比が7:3であるSb0.7Te0.3近傍の組成にAgやInを添加した系がある。特に後者は結晶成長速度が速い材料として知られ、アモルファス部分の輪郭が明確であり、高密度及び高線速記録に適した材料である。
相変化記録媒体は、今後、高密度画像記録への用途が拡大すると予想され、そのためには高速オーバーライトを実現する必要がある。
そこで、本発明者らは、特願平12−289128号において高線速記録に適し、また、オーバーライト特性、保存特性に優れた記録層組成を提案した。この相変化材料は、各元素の組成比を調整することにより、結晶化速度の調整が可能であるが、結晶化速度を速い組成に調整すると初期結晶化後の反射率分布が均一になり難く、記録のジッターも大きくなってしまうという欠点があった。
【0004】
なお、Mn、Ge、Sb、Teを含む相変化記録層に関連する発明としては、特開平10−326436号公報、特開平11−238253号公報(以上、三菱化学)、特開2000−235732号公報(ソニー)が公知であるが、何れも、一般的に記録層として使用できそうな元素を羅列している中に単に上記4種類の元素が含まれているというに過ぎず、本発明で開示したような、上記4種類の元素の組み合わせが特に(選択的に)優れた特性を有する点については記載も示唆もされていない。
また、本出願人の先願に係る特願2001−4188号、及び特願2001−8607号には、GeαGaβMnγSbδTeεを相変化記録層に用いることが開示されているが、何れもGaを必須成分として含有しており、Gaを含まない本発明とは構成が相違する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、DVDと同等以上の記録密度を有し、DVDの5倍速(17.5m/s)程度までの高線速記録が可能であり、かつ、初期結晶化後の反射率分布も均一でジッターも小さくできる光記録媒体の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は次の1)〜)の発明(以下、本発明1〜という)によって解決される。
1) 透明基板上に少なくとも下部保護層/相変化記録層/上部保護層/硫化防止界面層/反射層がこの順又は逆順に形成され、下部保護層側からレーザー光を照射して記録層の非晶質相と結晶相との可逆的な相変化を利用して記録再生を行う光記録媒体であって、記録層が少なくともMn、Ge、Sb、Teを含み、SbとTeの原子比率が、Sb:Te=0.65:0.35〜0.85:0.15であり、上部保護層がZnSとSiO の混合物からなり、反射層がAg又はAgを主成分とする合金からなり、硫化防止界面層の膜厚が3nm以上であることを特徴とする光記録媒体。
2) 記録層のGeの原子比率が、記録層材料全体を1として、0.02〜0.07であることを特徴とする1)記載の光記録媒体。
3) 記録層のMnの原子比率が、記録層材料全体を1として、0.01〜0.1であることを特徴とする1)又は2)記載の光記録媒体。
4) 反射層は、波長650〜670nmにおける屈折率(n+ik)のnが1以下、かつkが5以下の金属からなることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の光記録媒体。
5) 硫化防止界面層が、SiC、Si、又はそれらの何れかを主成分とする材料からなることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の光記録媒体。
【0007】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
SbとTeのモル比が7:3であるSb0.7Te0.3近傍組成のSb−Teは繰り返し記録特性に優れた相変化記録材料である。SbとTeの配合比を変えることにより、結晶化速度を調整することが可能であり、Sbの比率を高くすると結晶化速度を速くすることができる。
本発明者らの実験によると、Sbが65原子%以上であれば、少なくともCDの1Xの線速(1.2m/s)で記録が可能であったが、これより少ないと1.2m/sでもオーバーライトによるジッターの上昇が大きく、良好な記録を行えなかった。Sb比を高くしていくに連れて、結晶化速度も速くなり、より高線速で良好な記録が可能になるが、85原子%を越えると結晶化速度の上昇率が急激になり、アモルファスマークの形成が殆んどできなくなってしまった。従って、Sb−Te二元系におけるSbの比率は65原子%以上、85原子%以下とすることが好ましい。換言すれば、SbとTeの原子比率を、Sb:Te=0.65:0.35〜0.85:0.15とすることが好ましい。
【0008】
しかし、Sb−Te二元系だけではアモルファス相の安定性が悪く、例えば、70〜80℃程度の高温環境化では50時間以内にアモルファスマークが結晶化してしまうという問題があるので、アモルファス相の安定性を高められるような第三元素を1種類以上添加して用いることが好ましい。
このような第三元素としてはGeが有効であり、少量の添加でも保存信頼性を飛躍的に向上できる。添加量は2原子%以上であれば、結晶化速度の速い記録層のアモルファス安定性を向上させる効果が出現し、添加量が増える程その効果は高くなるものの、添加量が多すぎると記録感度、及びオーバーライト特性の低下を招くため、7原子%以下とすることが望ましい。
高速で高い消去率を得るためにはSbの比率を大きくすればよいが、Sbの比率が大きいとアモルファスマークの安定性が悪くなるため、Geの添加量を増やす必要が生じる。しかしGeを添加すると結晶化速度が遅くなってしまい、高速で高い消去率を得るのは困難となる。即ち、Sb−TeにGeを添加しただけの系では十分な保存信頼性の確保とDVDの5倍速(17.5m/s)程度における高い消去率の両立は困難である。
【0009】
そこで、本発明者らが種々の元素を添加して記録特性を評価したところ、更にMnを添加すると結晶化速度を速くする効果があり、かつ、アモルファスマークの安定性は劣化させないのでGe添加量を増やす必要がないことが分った。即ちSb−TeにGeとMnを添加することにより十分な保存信頼性の確保とDVDの5倍速(17.5m/s)程度における高い消去率の両立が可能であることが分った。同時に、初期結晶化も容易でオーバーライトによる特性劣化も少ない優れた記録層であることが分った。
Mnの添加量は1原子%より低いと、結晶化速度を速くする効果が明確でないため、1原子%以上添加する。また、添加量が多すぎると未記録状態(結晶状態)の反射率が低くなり過ぎてしまうため、10原子%以下とすることが望ましい。
上述のような記録層材料を用いると、各構成元素の組成比を調整することにより低線速から高線速まで、より具体的にはDVDの1X(3.5m/s)〜5X(17.5m/s)の範囲において良好なオーバーライト特性を示し保存特性も優れた記録媒体を作成できる。
また、更に記録感度を向上させるため、In、Al、Ag、Dy、Seなどの元素を添加しても良い。
【0010】
一方、反射層としては、従来からAlを主成分とした合金が使用されている。Alは反射率が高く熱伝導率も高い(従って必要に応じて放熱層としての機能を担わせることもできる)ことに加え、ディスク化した場合の経時安定性にも優れている。従って、Alを反射層として用いた場合には、ディスク基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層の4層を成膜し、樹脂層をオーバーコートするだけの簡単な構成で記録特性、経時安定性に優れた光記録媒体を形成することができ、コストを低く抑えることができる。
しかし、記録層材料の結晶化速度によっては、反射層として従来よく使用されているAl合金を用いたディスクでは、記録マークが細くなり易く、十分なモジュレーションを有する記録を行うことは困難な場合があった。
この理由としては、結晶化速度が速い場合、記録時に溶融領域の再結晶化領域が大きくなってしまい、形成されるアモルファス領域が小さくなってしまうことが挙げられる。再結晶化領域を小さくするためには、上部保護層を薄くして急冷構造とすればよいが、単純に上部保護層を薄くしただけでは、記録層が十分に昇温されず、溶融領域が小さくなってしまうため、再結晶化領域を小さくできたとしても、結局、形成されるアモルファス領域は小さくなってしまう。
本発明では、反射層や保護層等の材料や膜厚を特定することにより、記録層の十分な昇温を保ちつつも、より急冷構造を考慮した構成を実現できることを見出した。これにより、結晶化速度の速い記録層材料を用いても十分なモジュレーションを有する記録を行うことができるディスクが形成可能になった。
【0011】
本発明では、反射層として波長650〜670nmにおける屈折率(n+ik)のnが1以下、kが5以下の金属を使用する。これにより、記録層の光吸収率が向上する。n及びkの下限については、次の(i)(ii)の理由で特に限定する意味がない。
(i)後述するシミュレーション上は、0であっても効果を奏すること
(ii)殆んどの金属は、nが0.3以上、kが1以上の範囲に含まれること
図1は、基板上に下部保護層76nm、記録層16nm、上部保護層20nm、反射層140nm(以上の数値は各層の膜厚)をこの順に積層し、基板側から波長660nmのレーザー光を入射した場合の記録層(結晶相)の吸収率を光学シミュレーションにより求めた結果を示すものであり、反射層の屈折率を変化させた場合を示した。図中、左端の欄外の数字0〜7は、k=0〜7の線がどれに相当するかを示したものである。
従来用いてきたAlに1重量%のTiを添加した合金のスパッタ膜の屈折率はn=1.3、k=6.5であり、この場合の記録層の吸収率の計算値は59%となる。これに対し、nが1以下、かつkが5以下の金属であれば何れも吸収率は60%以上であり、Al合金を用いた場合よりも吸収率が向上する。記録層や保護層として何を用いるかによりそれらの屈折率も変わるので、ここで示した吸収率の値も変わってくるが、どのような記録層や保護層を用いた場合でも、反射層として波長650〜670nmにおける屈折率(n+ik)のnが1以下、かつkが5以下の金属を使用することにより、Al合金を用いた場合よりも記録層の吸収率は向上する。
【0012】
このような条件を満たす金属としては、Au、Ag、Cu、又はそれらの何れかを主成分とする合金が挙げられる。ここで、主成分とするとは、90原子%以上含有することを意味し、好ましくは95原子%以上である。
これらの純金属を用いた波長660nmにおけるスパッタ膜の屈折率の実測値、及び、熱伝導率の文献値(バルク)の値を表1に示す。
【表1】
Figure 0003971198
表1よりAu、Ag、Cuは何れもAlより熱伝導率が高いことが分る。従って、これらの金属を反射層として用いると、記録層の光吸収率を向上させ、記録層の温度を上昇させて溶融領域を大きくする効果があると同時に、冷却速度も向上させるため冷却時の再結晶化領域が小さくなり、Al合金を用いた場合よりも大きなアモルファス領域を形成することが可能になる。
【0013】
更に、記録層が結晶相の場合とアモルファス相の場合の反射率の光学シミュレーションから変調度を求め、図2に示したが、反射層としてnが1以下、かつkが5以下の金属を用いると、単純に光学的な変調度もAl合金を用いた場合よりも大きくなることが分る。図中、左端の欄外の数字0〜7は、図1の場合と同様に、k=0〜7の線がどれに相当するかを示したものである。
記録マークの変調度は光学的な変調度とマークの大きさによって決まり、光学的な変調度が大きくマークが大きい程大きくなる。従って、記録層として、結晶化速度が速い材料を用いて、高線速記録を行う場合でも、上記特定の金属からなる反射層を用いると、吸収率が大きく冷却速度が速いことから大きな記録マークが形成でき、また、結晶とアモルファスの反射率差も大きいことから変調度の大きい記録が可能になる。
上述したAu、Ag、Cu及びそれらの何れかを主成分とする合金の中でも、特に、Ag及びAg合金は比較的安価であり、また、同様に安価なCu及びCu合金に比べて酸化し難いため、経時安定性に優れた媒体を形成することができ、反射層として好ましい。但し硫化には弱いため、後述するように、上部保護層にSを含むような材料を用いる場合には、硫化防止界面層が必要となる。
図3に、反射層としてAgを用い、その膜厚を変えた媒体の反射率と透過率の計算値を示した。この図から、膜厚が90nm以上であれば透過率は1%以下となり光を効率的に利用できることが分る。
【0014】
上部保護層は、溶融凝固を繰り返す記録層が流動等により膜厚変化を起したり、或いは何らかの反応により膜質変化を起したりしないようにするという記録層を保護する役割の他、記録層が吸収した熱を反射層へ逃がす時間を遅らせて記録層の温度を高める役割を担う。従って、耐熱性があり熱伝導率が低いという性質が要求される。このような性質を持つ材料としては、種々の酸化膜、窒化膜、硫化膜などが提案されており、よく知られている材料として、モル比が8:2近傍のZnSとSiOの混合物がある。
本発明者らは、何種類かの保護膜を用いてディスクを作成し、記録特性や保存特性を確認した。その結果、記録特性においてはZnSとSiOの混合物よりも優れている膜が幾つかあったが、保存特性においてはZnSとSiOの混合物が最もアモルファスマークの安定性に優れていた。これはZnSとSiOの混合物は結晶性を示さないので、アモルファスマークの安定化に有利に作用するためと考えられる。従って、上部保護層としては、ZnSとSiOの混合物を使用することが好ましい。
【0015】
上部保護層は、膜厚が薄すぎると記録層の昇温が不十分となり、十分な大きさのマークを形成できなくなる。また、厚すぎても冷却速度が不十分となって再結晶化領域が大きくなり、十分な大きさのマークが形成できない。比較的結晶化速度の遅い記録層を用いた場合には、上部保護層を厚めにすると初回記録のジッターは良好であり、変調度も大きい。しかし、温度が上がり過ぎるため、オーバーライトによる膜劣化が進み易い。また、再生光によっても温度上昇が大きくなってしまうため、再生光安定性も悪い。
反射層として、波長650〜670nmにおける屈折率(n+ik)のnが1以下で、kが5以下の材料を用いた場合には、記録層の光吸収率が大きくなるために、同じ記録パワーや線速で記録した場合、上部保護層の最適膜厚が、Al合金を用いた場合よりも薄くなる。上部保護層膜厚が薄くなると、冷却速度は速くなるので再結晶化領域を小さくすることができ、結晶化速度の速い記録層材料を用いた場合には、一層有利となる。
【0016】
上部保護層の最適膜厚は、記録条件や硫化防止界面層に使用する材料、膜厚等により異なるが、波長660nm、NA0.65のピックアップヘッドを用いて0.7mW、3.5m/sで再生する場合の再生光安定性を考慮すると、反射層にAgを用いた場合には、3〜20nmとすることが好ましい。
但し、反射層としてAg又はAg合金を用いる場合には、ZnSとSiOの混合物のように上部保護層にSが含まれていると、Agが硫化して欠陥を生じてしまうので、反射層と上部保護層との間に硫化防止機能を持つ界面層を設けることが好ましい。界面層の膜厚は、3nm以上あれば、スパッタにより形成された膜がほぼ均一になり、硫化防止機能を発揮する。これより薄いと、部分的に欠陥を生じる確率が急に高くなってしまう。また、膜厚の増加に伴い反射率が低下するため上限は20nm程度である。
界面層の材料に要求される性質としては、Sを含まないこと、Sを透過しないこと等が挙げられる。本発明者らが、種々の酸化膜や窒化膜等を用いて界面層を形成し、記録特性や保存信頼性の評価を行ったところ、SiC、Si、又はそれらの何れかを主成分とする材料が界面層として優れた機能を持つことが分った。ここで、主成分とするとは、材料中にSiC又はSiを90モル%以上含有することを意味し、好ましくは95モル%以上である。
表2に、SiC、Si、及びZnS−SiOからなるスパッタ膜の屈折率の実測値と熱伝導率の文献値(バルク)を示したが、SiC及びSiは、ZnS−SiOよりも1桁以上熱伝導率が高いことが分る。
【0017】
【表2】
Figure 0003971198
【0018】
図4に、界面層の膜厚を変えた場合の記録層(結晶)の吸収率変化に関する光学シミュレーションの結果を示した。即ち、基板上に下部保護層76nm、記録層16nm、上部保護層10nm、界面層2〜20nm、反射層140nm(以上の数値は各層の膜厚)をこの順に積層し、基板側から波長660nmのレーザー光を入射した場合のシミュレーションの結果である。
なお、比較のために、ZnS−SiOを界面層と同様にして上部保護層上に成膜したと想定した場合の結果も示した。
図4から分るように、SiCはZnS−SiOとほぼ同様の結果であり(図4では二つの線がほぼ重なっている)、膜厚が20nmまでの範囲では、同じ膜厚であれば、Siの方がSiCやZnS−SiOよりも吸収率が高い。
しかも、界面層にSiCやSiを用いると、熱伝導率が大きいため、単に上部保護層であるZnS−SiOを同程度の厚さに成膜した場合よりも、記録層の吸収率を保ちつつ、急冷構造とすることができる。更に、Siの方が、膜厚が薄くても吸収率が高いため、記録層を充分昇温し、かつ、急冷構造とするには一層有利である。
【0019】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、何れの場合も、直径12cm、厚さ0.6mm、トラックピッチ0.74μmの案内溝付きポリカーボネートディスク基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層、(界面層)、反射層をこの順にスパッタにより成膜し、更に、反射層上にスピンコートにより形成された有機保護膜を介して、直径12cm、厚さ0.6mmのポリカーボネートディスクを接着したものを、大口径LDにより反射率が飽和するような条件で初期結晶化して試料として用いた。記録再生は、基板側から波長660nmのレーザー光を照射して行った。
【0020】
実施例1、比較例1〜2
下部保護層として(ZnS)80モル%(SiO)20モル%を65nm、記録層を16nm、上部保護層材料として(ZnS)80モル%(SiO)20モル%を8nm、硫化防止界面層としてSiを4nm、反射層としてAgを140nm(以上の数値は各層の膜厚)という層構成のディスクを作成した。
記録層には、MnGeSb73Te18(実施例1)、GeSb78Te15(比較例1)、GeSb79Te17(比較例2)を用いた。
各記録層組成は、転移線速の大きさが同等になるようにしたもので、12mWの連続光を照射したとき約15m/sである。ここで、転移線速について説明すると、ディスクの回転速度を変えて記録用のピックアップヘッドでディスクにあるパワーの連続光を照射したとき、線速が低い場合には、記録層が一端溶融したのち全て再結晶化するので反射率が高くなり、線速が速い場合には、冷却速度も速くなるため溶融した記録層の全てを再結晶化することはできず、一部アモルファス部分が残るので反射率は低くなる。このときの高反射率と低反射率の境界の線速を転移線速という。
転移線速が速い程、結晶化速度は速いと見なすことができ、高線速における消去率が高い。
【0021】
表3に、これらのディスクの初期結晶化後の反射率の均一性、並びに保存前及び70℃85%RHに1000時間保存後の、線密度0.267μm/bit、EFM+変調方式でランダムパターンを17.5m/sで記録したときのジッターの初回記録の値とDOW(ダイレクト・オーバーライト=direct overwrite)1000回後の値の初期特性を示した。
初期結晶化後の反射率の均一性に関しては、反射率が高い部分と低い部分の差が1.5%以下であるときは均一性が良いものとして○で示し、それより大きいときは×とした。
表3から分るように、実施例1の場合は、DOW1000回後でも約10%と良好な特性を示しており、保存によるジッターの上昇率も小さい。
これに対し、比較例1の場合は、初回から11%以上になってしまい、DOWにより更に大きくジッターが上昇してしまった。これは、初期結晶化後の反射率の均一性が悪いことも影響していると考えられる。しかし、保存後のジッター上昇は比較的小さい。
比較例2の場合は、初期特性は比較例1より良いものの、保存によるジッターの上昇率が大きくなってしまった。これは、実施例1に比べてSb量が多いため、Geの量は同じであってもアモルファスの安定性が悪くなってしまったものと推察される。
【0022】
【表3】
Figure 0003971198
【0023】
実施例1〜4(実施例1は前述の実施例1と同じ)、比較例3〜6
下部保護層として(ZnS)80モル%(SiO)20モル%を65nm、記録層としてMnGeSb73Te18を16nm、上部保護層材料として(ZnS)80モル%(SiO)20モル%、反射層140nm(以上の数値は各層の膜厚)という基本的層構成を有し、上部保護層の膜厚、界面層材料及び膜厚、反射層の材料を表4に示す通りとしたディスクを作成した。なお、比較例3、4のディスクには界面層を設けなかった。
その結果、何れのディスクも反射率の均一性に優れた状態に初期結晶化することができた。
これらのディスクに対し、線密度0.267μm/bit、EFM+変調方式で、ランダムパターンを17.5m/sで記録したときのジッター及び変調度の初期特性を表4に示した。
【0024】
表4から分るように、実施例1〜4及び比較例5〜6については、何れの場合もオーバーライト1000回目までのジッターは11%以下、変調度は60%以上と、良好な記録特性を示した。
比較例3は反射層にAlを用い、上部保護層も20nmと比較的厚い場合の例であるが、変調度は50%程度しかとれず、ジッターも11%以下にすることはできなかった。これは、記録層に結晶化速度の速い材料を用いているため、再結晶化領域が大きいためである。
比較例4は反射層にAlを用いた場合に、再結晶化領域を小さくする目的で上部保護層を薄くして急冷構造とした場合であるが、比較例3よりも更に変調度が小さく、ジッターも悪くなってしまった。単純に上部保護層を薄くして急冷構造としたため、記録層の昇温が不十分となり溶融領域が小さくなって大きなマークを形成することができなかったものと考えられる。
【0025】
次に、保存特性について、70℃85%RH環境下に1000時間保存した後のジッターと変調度の変化を調べたところ、実施例1〜4の場合のジッターの上昇は、何れも保存前に比べて初回記録で1%以内、オーバーライト1000回後でも2%以内であった。変調度の変化は何れの場合も2%以内であり、良好な保存特性を示した。また、ディスク欠陥は発生しなかった。
一方、比較例5〜6は界面層の厚さが薄い場合であるが、70℃85%RH環境下に1000時間保存した後には、目視でも判るような点状の欠陥がディスクの一部に纏まって現れた。これは、ディスク内の膜厚分布により部分的に界面層の膜厚の薄い所ができてしまい、薄くなった部分のAg反射膜が硫化して欠陥となって見えているものと考えられる。
【0026】
【表4】
Figure 0003971198
【0027】
【発明の効果】
本発明1によれば、DVDと同等以上の記録密度を有し、DVDの5倍速(17.5m/s)程度までの高線速記録が可能であり、かつ、初期結晶化後の反射率分布も均一でジッターも小さくでき、更にオーバーライト特性、記録特性、保存信頼性、反射層の硫化に対する安定性に優れ、コストが安く酸化に対する経時安定性に優れた光記録媒体を提供できる。
本発明によれば、更にアモルファスマークの保存安定性に優れた光記録媒体を提供できる。
本発明によれば、更に十分な反射率を有する光記録媒体を提供できる。
本発明によれば、記録層の光吸収率が高いために、結晶化速度の速い相変化記録層を用いて急冷構造とした場合でも十分な到達温度を確保でき、十分な変調度を有する記録が可能である高線速記録に適した光記録媒体を提供できる。
本発明によれば、反射層の硫化に対する安定性が特に優れ、記録層の光吸収率を高く保ったまま冷却速度を速くできる光記録媒体を提供できる。また、Si又はSiを主成分とする材料を用いた場合には、記録層の光吸収率を高く保ったまま冷却速度を速くするのに一層有利なため、より結晶化速度の速い相変化記録層を使用しても十分な変調度を有する記録が可能な光記録媒体を提供できる。
【0028】
なお、本発明の好ましい実施態様として、反射層にAu、Ag、Cu、又はそれらの何れかを主成分とする材料を用いれば、記録層の光吸収率が高く、かつ、放熱特性にも優れた高線速記録に適した光記録媒体を提供できる。中でもAg又はAgを主成分とする材料を用いた場合には、コストが安く酸化に対する経時安定性にも優れた光記録媒体を提供できる。
また、反射層の膜厚を90nm以上とすれば、光の利用効率の高い光記録媒体を提供できる。
また、上部保護層の膜厚を3〜20nmとすれば、再生光安定性、オーバーライト特性に特に優れた光記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】反射層の屈折率を変化させた場合の、記録層(結晶相)の吸収率を光学シミュレーションにより求めた結果を示す図。
【図2】反射層の屈折率を変化させた場合の、記録層(結晶相)の変調度を光学シミュレーションにより求めた結果を示す図。
【図3】反射層としてAgを用い、その膜厚を変えた媒体の反射率と透過率の計算値を示す図。
【図4】界面層の膜厚を変えた場合の記録層(結晶)の吸収率変化に関する光学シミュレーションの結果を示す図。
【符号の説明】
n 屈折率(n+ik)の実数部分の数値
k 屈折率(n+ik)の虚数部分の数値
1 屈折率(n+ik)の虚数部分の数値
2 屈折率(n+ik)の虚数部分の数値
3 屈折率(n+ik)の虚数部分の数値
4 屈折率(n+ik)の虚数部分の数値
5 屈折率(n+ik)の虚数部分の数値
6 屈折率(n+ik)の虚数部分の数値
7 屈折率(n+ik)の虚数部分の数値

Claims (5)

  1. 透明基板上に少なくとも下部保護層/相変化記録層/上部保護層/硫化防止界面層/反射層がこの順又は逆順に形成され、下部保護層側からレーザー光を照射して記録層の非晶質相と結晶相との可逆的な相変化を利用して記録再生を行う光記録媒体であって、記録層が少なくともMn、Ge、Sb、Teを含み、SbとTeの原子比率が、Sb:Te=0.65:0.35〜0.85:0.15であり、上部保護層がZnSとSiO の混合物からなり、反射層がAg又はAgを主成分とする合金からなり、硫化防止界面層の膜厚が3nm以上であることを特徴とする光記録媒体。
  2. 記録層のGeの原子比率が、記録層材料全体を1として、0.02〜0.07であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  3. 記録層のMnの原子比率が、記録層材料全体を1として、0.01〜0.1であることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体。
  4. 反射層は、波長650〜670nmにおける屈折率(n+ik)のnが1以下、かつkが5以下の金属からなることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の光記録媒体。
  5. 硫化防止界面層が、SiC、Si、又はそれらの何れかを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光記録媒体。
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