JP4109011B2 - 光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、相変化型記録媒体に関し、特に書き換え可能な相変化型光ディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶相および非晶質相の可逆的相変化を用いたいわゆる相変化型記録媒体は、書き換え可能な記録媒体として世界的に普及している。そして、CD−R、CD−RW記録媒体は普及とともに、高速記録化が進んでおり、相変化型記録媒体も高速記録が必須となっている。
これらの相変化型ディスクはポリカーボネート製の透明基板にZnS−SiO2下部保護層、AgInSbTeまたはGeSbTe相変化層、ZnS−SiO2上部保護層、AlまたはAg合金反射放熱層の膜構成をとるのが一般的である。従来、相変化型光ディスクの保護層としてはZnS−SiO2が用いられてきた。酸化などの劣化から相変化膜を保護したり、記録を繰り返し行った時の熱応力に対する耐性が大きいことがその理由である。また熱伝導が小さく、ディスクの記録感度を良くできる点も利点であった。
【0003】
しかし、CD−R、CD−RW記録媒体は、普及とともに、高速記録化が進んでおり相変化記録媒体も高速記録が必須となっている。
高速記録は、記録密度が高くなるとともに、レーザー光の発光パルスのパルス周波数が高くなり、記録層の加熱、急冷をより短時間に制御する必要がある。短時間に加熱、急冷をするためにはより高い記録パワーをかけ、急冷はパルスのoff時間を長くする必要があるが、線速度がより速くなるとともに記録パワーが必要となる。また、高速記録化に応じて記録材料や相変化記録に関わる各層構成材料の開発が必要となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
高速記録でしかも繰り返し記録を行う場合、短時間に高温に加熱し、冷却をくりかえすため、記録層だけでなく、記録層と反射放熱層との間にある保護層の劣化が、より起こり易くなる。そのため、繰り返し書き換え特性の向上には保護膜の引っ張り強度や、靭性がZnS−SiO2よりさらに大きいものが求められる。
したがって本発明の目的は、上記問題点に鑑み、良好な繰り返し記録特性を有し高速記録が可能な光記録媒体を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、透明基板上に、少なくとも下部保護層と、非晶質相および結晶相の可逆的相変化をする記録層と、上部保護層と、反射放熱層とが、この順に順次積層されてなる光記録媒体であって、前記上部保護層は、化学式(ZrO2)a(Al2O3)b(MgO)c(Y 2 O 3 )dで表され、その割合(mol%)がa+b+c+d=100であることを特徴とする光記録媒体である。温度によって単斜晶、正方晶、立方晶と結晶構造が変化するZrO2の相変態は体積変化を伴うため、その温度(1000℃)付近での繰り返し温度変化では記録媒体を破壊してしまうが、少量のCeO、Y2O3などを添加して、立方晶ジルコニア中に正方晶を微細分散化して常温で不安定な正方晶ジルコニアを安定化させる、これを用いて靭性を付加させ、さらにAl2O3、MgOを添加してさらなる超塑性を付加でき、記録媒体に高い強度と靭性を持たせることができる。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1の光記録媒体において、前記下部保護層と前記記録層との間にさらに、ZrO2、Al2O3、MgO、およびX(XはY2O3およびCeOから選ばれる少なくとも1種)から選択された材料からなる下部第2保護層を有することを特徴とする。上記の上部保護層材料を、ZnSSiO2下部保護層と記録層との間に、下部第2保護層として用いた場合、繰り返し記録特性をより改善できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の光記録媒体において前記上部保護層は、化学式(ZrO2)a(Al2O3)b(MgO)c(Y 2 O 3 )dで表し、その割合(mol%)をa+b+c+d=100とした時に、30<a<50、30<b<50、10<c<30、および0.1<d<10であることを特徴とする。請求項4の発明は、請求項3の光記録媒体において、前記下部第2保護層は、化学式(ZrO 2 ) a (Al 2 O 3 ) b (MgO) c (X) d で表し、その割合(mol%)をa+b+c+d=100とした時に、30<a<50、30<b<50、10<c<30、および0.1<d<10であることを特徴とする。(ZrO2−X)−Al2O3−MgO(XはCeO、Y2O3の少なくとも1種であるが、上部保護層においてXはY 2 O 3 である。)は薄膜化しても機械強度と靭性の優れた性質がそのまま維持されており、その成分が上記の範囲にある場合、また特に相変化記録層に隣接して用いると、記録媒体の書き換え回数が向上する。
【0008】
請求項5の発明は、請求項1の光記録媒体において、前記上部保護層の膜厚が、4nmから20nmであることを特徴とする。薄すぎると感度が悪く、厚すぎると冷却速度が遅くなるため非晶質相が形成しにくかったりマークの面積が小さくなってしまうが、上記範囲は好適である。請求項6の発明は、請求項3の光記録媒体において、前記下部第2保護層の膜厚が、2nmから10nmであることを特徴とする。2nm未満であると、明確な効果が得られない。しかし、10nmを超えると放熱性が悪くなり、繰り返し特性が逆に悪化する。したがって、2nmから10nmが好ましい。
【0009】
請求項7の発明は、請求項1の光記録媒体において、前記記録層の主要構成元素が、Ge、Mn、Sb、およびTeであることを特徴とする。
相変化記録層においてはこれまでSb70に対してTe30付近の共晶組成を基本としていたが、結晶化温度を上げないためにMnが、マークの高温下での保存性のためにGeを加えて、高線速記録に対応して記録精度が高く、耐久性のある相記録媒体が提供可能となる。
【0010】
請求項8の発明は、請求項7の光記録媒体において、前記記録層は、添加元素QとしてGa、Sn、Seから選択される少なくとも1つの元素を含み、化学式QαGeβMnγSbδTeεで表わされ、α、β、γ、δ、εの各組成比(at%)が、α+β+γ+δ+ε=100とした時に、0<α≦5、1≦β<7、0<γ≦10、65≦δ<80、15≦ε≦25、かつ、γ≧αであることを特徴とする。
請求項7の構成に加え、結晶化温度を上げるがまた結晶化速度も上げる材料であるGaと、結晶化速度を上げるがそれほど結晶化温度を上げない材料としてSnと、マークの安定性を向上させるSeとから選択した1以上の材料を添加して、上記組成比で記録層を作ることによって、記録精度の高く、耐久性のある相記録媒体を提供可能となる。
【0011】
請求項9の発明は、請求項7または8の光記録媒体において、前記記録層は、昇温速度10℃/分での結晶化温度が150℃から220℃であることを特徴とする。
150℃未満であると、記録マークが極端に結晶化しやすくなり良好な保存信頼性を確保できなくなる。しかし、220℃を超えると、製膜した記録膜を初期結晶化するのが困難となる。したがって、記録層の結晶化温度は、昇温速度10℃/分で測定の場合において、150℃から220℃であることが好ましい。
【0012】
請求項10の発明は、請求項8の光記録媒体において、前記添加元素Qが、Gaであることを特徴とする。
高線速化には、Gaを含めることによって結晶化速度を高めることができる。
【0013】
請求項11の発明は、請求項1の光記録媒体において、前記反射放熱層が、Agを主要元素として有することを特徴とする。
反射率と熱伝導率の大きなAgを主成分とすることによって冷却速度を大きくでき、良好な非晶質形成を実現することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
(実施の形態)本発明の実施の形態は、図1に示すように、透明基板1上に、少なくとも下部保護層2と、非晶質相および結晶相の可逆的相変化をする記録層3と(ZrO2)a(Al2O3)b(MgO)c(Y 2 O 3 )dで表され、その割合(mol%)がa+b+c+d=100である上部保護層4と、反射放熱層5とが順次積層されてなることを特徴とする光記録媒体である(請求項1)。
【0015】
ここにおいて、図2に示すように前記下部保護層2と前記記録層3との間にさらに、ZrO2、Al2O3、MgO、およびX(XはY2O3およびCeOから選ばれる少なくとも1種)から選択された材料からなる下部第2保護層6を有することが望ましい(請求項3)。上部保護層材料を、ZnS−SiO2下部保護層2と記録層3との間に、下部第2保護層として用いた場合、繰り返し記録特性をより改善できる。しかし、あまりに厚くすると放熱性が悪くなるため、下部第2保護層の膜厚が、2nmから10nmが好ましい(請求項6)。
【0016】
相変化型光ディスクは相変化記録層が結晶と非晶質との相変化を繰り返すことで書き換えを行なうため、保護膜に挟まれた相変化膜は書き換えのたびに微細な体積変化を繰り返す。したがって保護膜には大きな機械的な強さと、靭性が求められる。
使用する基板は、ポリカーボネート(PC)、ポリメタアクリル酸(PMMA)などのプラスチック製基板、ガラス等の透明な基板を用いる。
ZrO2に2.5mol%のY2O3を添加した部分安定化ジルコニアは正方晶ジルコニアとも呼ばれ、セラミックとしては、大きな延性を有している。ZrO2は単斜晶、正方晶、立方晶と温度によって結晶構造が変化し、とくに1000℃付近での単斜晶と正方晶の間での相変態は、体積変化を伴うため、この温度付近での繰り返し温度変化では記録媒体を破壊してしまう。しかし、ここに少量のCeO、Y2O3などを添加すると、立方晶ジルコニア中に正方晶を微細分散化することができ、常温で不安定な正方晶ジルコニアを安定化させることができ、これを用いて靭性を付与することができる。即ち、力が加わると、分散している正方晶が膨張して単斜晶への相変態を起こして衝撃を変態として吸収するからである。しかしこれは、通常の使用中の衝撃でデータに悪影響が出るほどの程度ではない。さらにAl2O3、MgOを添加すると、バルクの多結晶体ではさらに大きな超塑性を示す。
またさらに、ジルコニアは屈折率が2程度で、光学吸収がほぼ0で、熱伝導も小さくZnS−SiO2と似ている。相変化型光ディスクの保護層として従来用いられているZnS−SiO2の性質に加え、より高い強度と靭性を備えている。
【0017】
ここで、前記上部保護層および下部第2保護層は、化学式(ZrO2)a(Al2O3)b(MgO)c(X)dで表し、その割合(mol%)をa+b+c+d=100とした時に、30<a<50、30<b<50、10<c<30、および0.1<d<10であることが好ましい(請求項2、4)。((ZrO2−X)−Al2O3−MgO(XはCeO、Y2O3の少なくとも1種であるが、上部保護層においてXはY 2 O 3 である。)は薄膜化しても機械強度と靭性の優れた性質がそのまま維持されるが、上記の範囲にない場合、本発明者らが実験を重ねて鋭意検討した結果によると、従来技術のZnS−SiO2と比較して、繰り返し特性が同等もしくは劣ってしまった。
【0018】
また、前記上部保護層の膜厚が、4nmから20nmであることが望ましい(請求項5)。
ここで下部保護層は、従来のZnS、SiO2の混合物を用い、その比はZnS:SiO2=50:50から85:15である。
この下部第2保護層の膜厚が、2nmから10nmであることが望ましい(請求項6)。
【0019】
前記記録層の主要構成元素が、Ge、Mn、Sb、およびTeであることが望ましい(請求項7)。
ここで上記記録層は、添加元素QとしてGa、Sn、Seから選択される少なくとも1つの元素を含み、化学式QαGeβMnγSbδTeεで表わされ、α、β、γ、δ、εの各組成比(at%)が、α+β+γ+δ+ε=100とした時に、0<α≦5、1≦β<7、0<γ≦10、65≦δ<80、15≦ε≦25、かつ、γ≧αであることが望ましい(請求項8)。
【0020】
ここで、従来例を振り返ってみると、相変化記録層はこれまでSb70Te30付近の共晶組成を基本とした、AgInSbTe系、およびAgInSbTeGe系が記録特性が良いため用いられてきた。SbはTeに対する比率が大きくなるほど、また、Sb量が80at%を超えると、結晶化速度が高くなるが、保存性が悪く、しかも記録マークを形成しにくくなる。従って、高線速記録に対応するためのSbの好ましい量は、65at%以上、80at%より少ない方が良い。一方、Teは、15at%以上25at%以下が良い。Geは遅いにもかかわらず、記録したマークの高温環境下での保存性を向上させるので、必須の元素である。中でもGe−Te間の結合エネルギーが大きく、しかもGe添加量が増加する程、結晶化温度を高くするため、保存性が良い。しかし、あまり多く入れると結晶化温度がさらに高くなり、結晶化速度も遅くなるので限度がある。また、従来から使われているAgはマークを安定化させるが、結晶化温度はあまり増加させない。あまり多く入れると、結晶化の速度を下げてしまうため、結局多くは入れることができない。Inは、結晶化速度を上げるとともに、結晶化温度を上げるので、保存性も向上させるが、偏析しやすく、繰り返しオーバーライト特性の劣化と再生光パワーに対する劣化が起きる。従って、DVDで2倍速以上の高線速記録に対しては、AgInSbTeGe系も、AgInSbTe系も見直すことが必要であった。
【0021】
そこで、本発明において、従来良く用いられていたAg、Inに代わる元素を検討した。Inと同様の効果があるものとしはGaがある。Gaは、同量のInに比べより結晶化速度を速くするが、結晶化温度もより高くなってしまう。従って、あまり多く入れることができない。例えば、Geが5at%で、Gaが6at%以上になると結晶化温度が200℃をはるかに超えて、250℃以上にもなる。そのため、記録層を非晶質状態から結晶化させるための初期化過程において、反射率が低くなること、トラック一周の反射率分布が大きくなり、記録特性、データエラーの原因になることから、初期化が難しくなる。従って、GeGaSbTe、GeInSbTe系は十分でない。
そこで、我々は、結晶化速度を速くするが、結晶化温度を必要以上に上げない元素ということで、希土類、アルカリ土類金属、遷移金属元素を検討した結果、Mn、Snが効果的であることがわかった。特に、MnはInと同じく結晶化速度を上げる。多く入れても、オーバーライト特性を劣化させずに保存特性も良好である。結晶化温度もあげるが添加量に対する増加量は小さい。再生光劣化も小さい。SnはMnよりも結晶化速度を高くするが、あまり多く入れると、オーバーライト特性が悪くなる。
従って、GeMnSbTe系を基本とし、Sn、Gaを添加して、結晶化速度を調整できることがわかった。またさらなる検討により、マーク形成能及びマークの安定性を向上させるために、Seを微量添加することが良いとことが分かった。
【0022】
ここで、記録層の膜厚は10nm〜25nmの範囲が良く、薄すぎると、変調度、反射率が小さくなり、厚すぎると記録感度、繰り返し記録特性が悪くなる。
【0023】
ここで、前記記録層は、昇温速度10℃/分での結晶化温度が150℃から220℃であることが望ましい(請求項9)。
【0024】
また、前記添加元素Qが、Gaであることが望ましい(請求項10)。
Qの元素であるSn、Ga、Seの好ましい範囲は、1〜3at%である。Mnは、3at%から7at%が好ましい。また、これらGa、Snの量はMnよりも少ない方が良い。Seは3at%以下が良い。
ここで、高線速化に対応する上では、まず第一に結晶化速度を高めることであるので、これらQの元素のうち、Gaを添加することが最も好ましい。Gaは結晶化速度を高める効果が最も大きいからである。
上述のような保護層、記録層を的確に組み合わせ、各々の組成比を調整することにより低線速から高線速、より具体的にはDVDの1X(3.5m/s)〜5X(17.5m/s)において良好なオーバーライト特性を示し、保存特性にも優れた記録媒体を形成できる。
【0025】
ここで、前記反射放熱層が、Agを主要元素として有することが望ましい(請求項11)。
反射放熱層は、反射率を確保でき、かつ熱伝導率の非常に大きくとれる材料としてAg、またはAgを主成分とする合金が好ましい。これによって冷却速度が大きくなり、良好な非晶質形成を実現することができる。
ここで、反射放熱層の層厚は50nm以上250nm以下が望ましい。反射放熱層の放熱能力は基本的には層の厚さに比例するので、50nm未満であると、冷却速度が低下する。一方、250nmを越えると、材料コストの増大を招く。
なお、銀反射放熱層は保護層と接して設けられるが、本発明における保護層は硫黄を含まないため、銀反射放熱層が硫化しディスクに欠陥が発生するおそれがない。
【0026】
本発明の相変化型記録媒体は、記録波長が400〜780nmの範囲で記録再生が可能である。
記録密度を上げるために、対物レンズの開口率を0.60以上とし、入射光のビーム径を小さくする。波長650nm、対物レンズの開口率が0.6〜0.65の場合は、基板の厚さを0.6mmとし、基板のトラックピッチは0.74μm以下、溝の深さは15nm〜60nm、溝幅を0.2〜0.3μmとする。
本記録媒体を用いて高速、高密度で記録する場合、レーザー光をパルス幅変調させる。発光パルスのパワーのレベルが、記録、消去、バイアスの3つのレベルからなる。記録、消去パワーは、再生パワーより高く、バイアスパワーは再生パワー以下とする。バイアスパワーとは、記録パワーを照射した後のパワーであり、溶融した相変化記録膜を急冷し非晶質相を形成させるために必要である。
具体的には、このような本発明の光情報記録媒体に光記録するには、基準クロック長さn周期に相当するアモルファスを形成する場合、n周期の時間に(n−1)回のレーザーパルス照射を行う。図3は、レーザパルス照射プロファイルを示すグラフである。例えば、図3に示す基準クロック5周期相当の長さのアモルファスを形成する場合は、4回のレーザーパルスを照射する。記録線速度8.5m/sにおいて,基準クロック63.7MHzでの記録の場合(DVD、2.4倍速記録)、例えば図における、(1)レーザー照射開始遅延時間は19ns、(2)先頭パルス幅は6ns、(3)マルチパルス幅は7ns、(4)冷却パルス幅は14.5ns、(5)記録パワーは15mW、(6)消去パワーは8mW、(7)冷却パワーは0.1mWにて行う。
記録線速は、容量4.7GBのDVDの場合、最大20m/s、記録時のクロックは線密度0.267μm/bitにおいて、最大150MHzである。記録データの変調方式は(8,16)変調方式である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、後述の実施例1〜8のうち、実施例4及び8は、本発明における参考例に相当する例である。
(実施例1〜4)基板の溝ピッチを0.74μm、溝幅0.25μm、溝深さ25nm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を用い、この上にスパッタリング方式により各層を積層する。下部保護層は、ZnS:SiO2=80:20(mol%)のターゲットを使用し、膜厚を70nmとした。次に、記録層として表1に示した組成を有する記録層を膜厚17nmでそれぞれ作製した。さらに上部保護層としては、表1に示した組成の、ZrO2、Al2O3、MgO、およびX(XはY2O3およびCeOから選ばれる少なくとも1種)からなる混合物ターゲットを用いて、膜厚12nmで作成した。さらに、Ag合金を膜厚160nmとして設けた。紫外線硬化樹脂を塗布し、2μm厚として保護層とした。最後に、膜のないもう一枚の基板を紫外線硬化樹脂で貼合わせて厚さ1.2mmとし、記録媒体とした。
【0028】
その後、大口径LD(1μm×100μm)を用いて、線速3.5m/s、パワー850mWで記録層を結晶化させた。
記録再生は波長655nm、対物レンズNA0.65のピックアップヘッドを用いて、記録線速14m/sで記録密度が0.267μm/bitとなるように記録した。記録データの変調方式は(8、16)変調方式である。記録パワーは20mW、バイアスパワーは0.1mW、消去パワー6mWとする。
表1に、初回および繰り返し記録1000回後のジッターを示す。
【0029】
【表1】
【0030】
これら記録媒体を記録後80℃、85%RHの環境に300時間放置しても、ジッター劣化はほとんどなかった。
【0031】
(実施例5〜8)
基板の溝ピッチを0.74μm、溝幅0.25μm、溝深さ25nm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を用い、この上にスパッタリング方式により各層を積層する。
下部保護層は、ZnS:SiO2=80:20(mol%)のターゲットを使用し、膜厚を60nmとした。次に、表2に示すような組成で、下部第2保護層(膜厚8nm)と、所定の記録線速で記録可能な記録層(膜厚17nm)とを順に成膜した。上部保護層としては、ZrO2、Al2O3、MgO、およびX(XはY2O3、CeOから選ばれる少なくとも1種)からなる混合物層を膜厚12nmで成膜した(表2)。さらにAgを膜厚160nmで反射放熱層として作成した。
【0032】
【表2】
【0033】
そして、紫外線硬化樹脂を塗布し、2μm厚として保護層とし、最後に、膜のないもう一枚の基板を紫外線硬化樹脂で貼合わせて厚さ1.2mmとし、記録媒体とした。
【0034】
その後、大口径LD(1μm×100μm)を用い、線速3.5m/s、パワー850mWで記録層を結晶化させた。
記録再生は波長655nm、対物レンズNA0.65のピックアップヘッドを用いて、記録線速17m/sで記録密度が267μm/bitとなるように記録した。消去パワーは6mWとした。
表2に、初回、および繰り返し記録1000回後のジッターを示す。実施例5〜8はいずれも、1000回繰り返し記録時のジッターは9%台であり、実施例1〜4より改善していた。これより、下部第2保護層を設けることにより、繰り返し記録特性を改善できることがわかる。
【0035】
(比較例1〜4)比較例では、本発明による実施の形態1から、本発明にかかる上部保護層と下部第2保護層とを取り除いたものである。(上部保護層および下部第2保護層は、既述のようにともに、ZrO2、Al2O3、MgO、およびX(XはY2O3およびCeOから選ばれる少なくとも1種であるが、上部保護層においてXはY 2 O 3 である。)から選択された材料からなっている。)
基板の溝ピッチを0.74μm、溝幅0.25μm、溝深さ25nm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を用い、この上にスパッタリング方式により各層を積層する。下部保護層は、ZnS:SiO2=80:20(mol%)のターゲットを使用し、膜厚を70nmとした。記録層の組成は、表3に示すとおり、実施例1〜4、実施例5〜8、および比較例1〜4がそれぞれ順に同じ組成をなしている。そして、記録層は、所定の記録線速で記録可能な記録層を膜厚17nmとして作製し、実施例1〜4の記録層をそれぞれ比較例1〜4に用いた。上部保護層はZnS:SiO2=80:20(mol%)混合物層を膜厚12nmで作成した。
【0036】
次に、硫化防止層としてSiCを膜厚4nmで設けた。硫化防止層を設けた後、Agを膜厚160nmとして反射放熱層とした。さらに、紫外線硬化樹脂を塗布し、2μm厚として保護層とした。最後に、膜のないもう一枚の基板を紫外線硬化樹脂で貼合わせて厚さ1.2mmとし、記録媒体とした。
その後、大口径LD(1μm×100μm)を用い、線速3.5m/s、パワー750mWで記録層を結晶化させた。
記録再生は波長655nm、対物レンズNA0.65のピックアップヘッドを用いて、記録線速14m/sで記録密度が0.267μm/bitとなるように記録した。
【0037】
比較例の媒体の特性を実施例の場合と比較した。その結果、初回記録時のジッターは実施例1〜4は7%台だったが、比較例1〜4は9%台だった。そして、1000回繰り返し記録時のジッターは、実施例1〜4では10%台に抑えられているの対して、比較例1〜4では12%を越えており、実施例は繰り返し特性が優れていることが確認された。
【0038】
【表3】
【0039】
また、初回記録時の記録パワー依存性を評価したところ、ジッターを10%未満とするためには、実施例1〜4ではパワーが13mW以上であれば十分であったのに対して、比較例1〜4では14mW以上にする必要があり、実施例は感度が良いことが確認された。
またさらに、比較例においては、硫化防止層を設けるために製膜装置を改造し、あらたに真空チャンバーを設ける必要があった。このため、媒体1枚あたりの製造コストが上昇した。
また、比較例においては、記録媒体を記録後80℃、85%RHの環境に300時間放置したところ、製造した媒体のうち1%くらいの割合で、反射面に欠陥が生じる不良媒体が出た。
【0040】
【発明の効果】
請求項1または3の発明によると、保護層材料を限定することにより、高い線速で記録しても記録特性が優れた相変化型記録媒体を提供することができる。請求項2、4の発明によると、保護層材料の組成比を限定することにより、高い線速で記録しても記録特性が優れた相変化型記録媒体を提供することができる。請求項5または6の発明によると、構成する層の膜厚を限定することにより、高密度で高い線速で記録しても、記録特性、保存特性に優れた相変化型記録媒体を提供することができる。請求項7乃至11の発明によると、相変化記録材料を用いることにより、高い線速で記録しても、記録特性、保存特性に優れた相変化型記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による光記録媒体の一例を説明する模式的断面図である。
【図2】本発明の実施の形態による光記録媒体の別例を説明する模式的断面図である。
【図3】レーザパルス照射プロファイルを示すグラフである。
【符号の説明】
1……基板
2……下部保護層
3……記録層
4……上部保護層
5……反射放熱層
6……下部第2保護層。
Claims (11)
- 透明基板上に、少なくとも下部保護層と、非晶質相および結晶相の可逆的相変化をする記録層と、上部保護層と、反射放熱層とが、この順に順次積層されてなる光記録媒体であって、
前記上部保護層は、化学式
(ZrO2)a(Al2O3)b(MgO)c(Y 2 O 3 )d
で表され、その割合(mol%)がa+b+c+d=100であることを特徴とする光記録媒体。 - 前記上部保護層は、化学式
(ZrO2)a(Al2O3)b(MgO)c(Y 2 O 3 )d
で表し、その割合(mol%)をa+b+c+d=100とした時に、
30<a<50
30<b<50
10<c<30
0.1<d<10
であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。 - 前記下部保護層と前記記録層との間にさらに、ZrO2、Al2O3、MgO、およびX(XはY2O3およびCeOから選ばれる少なくとも1種)から選択された材料からなる下部第2保護層を有することを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
- 前記下部第2保護層は、化学式
(ZrO2)a(Al2O3)b(MgO)c(X)d
で表し、その割合(mo1%)をa+b+c+d=100とした時に、
30<a<50
30<b<50
10<c<30
0.1<d<10
であることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。 - 前記上部保護層の膜厚が、4nmから20nmであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
- 前記下部第2保護層の膜厚が、2nmから10nmであることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
- 前記記録層の主要構成元素が、Ge、Mn、Sb、およびTeであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
- 前記記録層は、添加元素QとしてGa、Sn、Seから選択される少なくとも1つの元素を含み、化学式
QαGeβMnγSbδTeε
で表わされ、α、β、γ、δ、εの各組成比(at%)が、α+β+γ+δ+ε=100とした時に、
0<α≦5
1≦β<7
0<γ≦10
65≦δ<80
15≦ε≦25
かつ、γ≧αであることを特徴とする請求項7に記載の光記録媒体。 - 前記記録層は、昇温速度10℃/分での結晶化温度が150℃から220℃であることを特徴とする請求項7または8に記載の光記録媒体。
- 前記添加元素Qが、Gaであることを特徴とする請求項8に記載の光記録媒体。
- 前記反射放熱層が、Agを主要元素として有することを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
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