JP4104128B2 - 光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に大容量光ディスク、DVD+RWディスク等に応用される相変化型情報用光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体レーザービームの照射により情報の書換えが可能な光記録媒体には、熱を利用して磁化の反転を行ない記録・消去を行なう光磁気記録方式と、結晶と非晶質の可逆的相変化を利用して記録・消去を行なう相変化記録方式がある。後者は単一ビームオーバーライトが可能で、また、ドライブ側の光学系がより単純であることを特徴とし、コンピュータ関連や映像音響に関する記録媒体に応用され世界的に普及している。そしてCD−R、CD−RWなどの記録媒体は普及とともに、すでに高速記録化が進み、相変化光記録媒体も今後高密度画像記録などへの展望から、記録媒体の容量・密度の増加、したがって高速記録が必須となっている。
【0003】
従来の一般的な相変化光記録媒体は、透明基板上に、保護層、相変化記録層、保護層、反射層がこの順(あるいは逆順)で積層された構造をとり、通常は反射層と反対側の保護層側からレーザ照射をして記録再生を行なう。
高速記録を実現するにあたっては、このレーザ照射による記録層の加熱、急冷をより短時間に制御する必要がある。これは記録密度が高くなるとともに、基準となるクロック(T)が小さくなることから記録層に照射する発光パルスのパルス幅が狭くなり、記録層をより高い出力レベルのレーザーパワーで加熱する必要があるからである。
【0004】
しかしながら、このように高密度で高速オーバーライトを行なうと、記録層あるいは保護層が短時間で繰り返し加熱、急冷(あるいは徐冷)という熱的ストレスを受けるため、劣化が生じオーバーライト特性が低下する問題が生じる。従来保護層材料には、透光性を有し、耐熱性及び機械的強度に優れるZnSとSiO2の混合物が用いられてきたが、高速オーバーライト特性改善の面からZnS−SiO2よりも機械的強度が大きく、かつ記録特性を損なわない代替材料が望まれていた。
【0005】
こうした中、高速でのオーバーライト特性改善が期待できる発明として、耐熱性、機械的強度の極めて高いZrO2を相変化光記録媒体の保護層に用いる発明がある。
ZrO2は熱伝導率が極めて低く、低い記録パワーでも記録時における到達温度が高くなるため冷却勾配が大きくなり感度も向上する。
ZrO2を必須成分として含む保護層を用いた相変化光記録媒体に関する発明には以下のものがある。
下部保護層と記録層の間に、膜厚が0.5〜10nmの酸化ジルコニウムを主成分とする酸化物層を設けて相変化光記録媒体を構成し、これにより、オーバーライトシェルフ改善及び消去特性の劣化防止を図るもの(例えば、特許文献1参照。)がある。
また、透明基板上に、照射する光の出力に応じて非晶質又は結晶質に相変化する記録層と反射層とが設けられ、記録層の少なくとも一方の界面に、酸化ジルコニウム等の屈折率が1.5以上の酸化物と硫化亜鉛を主成分とする第1透明誘電体層及び第2透明誘電体層を積層して相変化光記録媒体を構成し、これにより、繰り返し記録・消去・再生に対する耐久性の向上、及び透明誘電体層での光の干渉効果によるエンハンスメント効果により再生時の信号強度の増大を図るもの(例えば、特許文献2参照。)がある。
しかしながら、本発明者らの知見によると、ZrO2を相変化光記録媒体の保護層に用いると、記録マーク(アモルファスマーク)の保存信頼性が保てなくなる不具合が生じる。即ち、情報を記録した媒体を80℃85%RH高温高湿の環境下におくと、記録マークが結晶化し消失してしまうのである。これはおそらくガラスの核形成材料としても知られるZrO2が記録層の結晶核生成や結晶成長を促し、マーク劣化を促進するためと考えられる。
また、上記従来技術のうち前者においては、上記したように、ZrO2を主成分とする材料を第一保護層と記録層の間に10nm以下の界面層として設置することで、消去特性の劣化防止も図っているが、本発明者らが更に詳しく調査したところ、オーバーライト改善効果はある程度達成されているものの、記録マーク(アモルファスマーク)の保存信頼性の問題が顕著となるような高線速記録用光ディスクにおいては未だ満足できるような保存信頼性が得られないことが判明した。
【0006】
我々は、先に、保護層がZrO2を必須成分として含む材料で、かつ記録層にSb3Te準安定相を有する相変化材料を用いた相変化光記録媒体(例えば、特許文献3参照。)、及び保護層が(ZrO2)100−x(SiO2)x(0<x<60mol%)で、かつ記録層がXαSbβTe100−(α+β)(式中XはAg、In、Ga、Geのうち少なくとも三つ。0<α<15、65<β<80)である相変化光記録媒体。あるいは保護層が(ZnS)x(ZrO2)y(SiO2)100−x−y(30<x<70、30<y<70mol%)で、かつ記録層がXαSbβTe100−(α+β)(式中XはAg、In、Geのうち少なくとも二つ。0<α<15、65<β<80)である相変化光記録媒体(例えば、特許文献4参照。)を提案している。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−339314号公報(請求項2、請求項4、請求項5、
第3頁3欄20〜23行目、第3頁4欄23〜29行目)
【特許文献2】
特開2000−348380号公報(請求項1、第3頁3欄40行〜42行目)
【特許文献3】
特開2002−260283号公報
【特許文献4】
特開2002−260281号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の問題点を解決し、高速・高密度記録を行なう場合であっても、良好な感度、優れた繰り返し記録特性、かつ優れた記録マーク(アモルファスマーク)保存信頼性を有する相変化光記録媒体を提供することである。即ち、両立が難しいオーバーライト特性及び保存信頼性の両特性を高めることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明の(1)「透明基板上に少なくとも第一保護層、非晶質相と結晶相の可逆的相変化をする記録層、第二保護層、反射層から構成され、前記記録層界面にZrO2を必須成分として含む界面層を設けた相変化光記録媒体であって、前記界面層は、膜厚が1〜5nmであり、ZrO2 及びTiO 2 を必須成分とし、組成式(ZrO 2 )a(TiO 2 )b(X 1 )d(但し式中、a、b及びdは各酸化物の割合(mol%)を表わし、30<a<100、0<b<60、0.1<d<10(a+b+d=100)であり、前記X1は希土類酸化物、ベリリウムを除くIIa族の酸化物から選ばれる少なくとも1種である。)で表わされる酸化物組成を有することを特徴とする相変化光記録媒体」、(2)「前記X 1 はY 2 O 3 であることを特徴とする前記第(1)項に記載の相変化光記録媒体」によって解決される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の相変化光記録媒体は、透明基板上に少なくとも第1保護層、記録層、第2保護層、反射層から構成され、記録層界面にZrO2を必須成分として含む界面層を設けるものであり、以下に、このZrO2を必須成分として含む界面層材料について述べる。
相変化型光ディスクでは、相変化記録層が結晶と非晶質の相変化を繰り返すことで書き換えが行なわれるため、保護層に挟まれた記録層は書き換えのたびに微細な体積変化を繰り返す。高線速記録の実現においては、前述のように高い出力レベルのレーザーパルスにより書き換えが行なわれるため、記録層劣化の問題が必然となる。そのため保護層としては、従来用いられているZnS−SiO2よりも高い強度と靭性をもつ代替材料が求められている。
ZrO2は機械的強度及び靭性の優れた材料であり、この性質は10nm程度の薄膜でも維持されるため、記録層界面に設置することで記録時の溶融・冷却の繰り返しにより引き起こされるダメージを抑制することができ、したがってオーバーライト特性改善に優れた効果を発揮する。またZrO2は熱伝導率が極めて低いことから、低い記録パワーでも記録時の記録層到達温度が従来のZnS−SiO2に比べて高くなりマーク形成に必要な急冷構造が実現されるため、感度の向上にも適切な材料である。
しかしながらこのZrO2は、単独で界面層として用いると記録マーク(アモルファスマーク)の保存信頼性が劣化してしまう問題が生じる。即ちオーバーライト改善効果が得られる反面、80℃程度の高温における非晶質マークの安定性が損なわれてしまうのである。これはおそらくガラスの核形成材料としても知られるZrO2が記録層の結晶核生成や結晶成長を促し、マークの劣化を促進するためと考えられる。
そのため、このようなZrO2のもつ結晶化促進効果を低減するために、ZrO2を必須成分として含む界面層材料に、更にTiO2及び/又はSiO2を添加することが望ましく、また更には希土類酸化物及び/またはベリリウムを除くIIa族の酸化物を添加することが望ましい。これはTiO2及び/又はSiO2が、ZrO2のもつオーバーライト改善効果を損なわずに保存信頼性劣化を低減することができるためであり、また界面層の熱伝導率を更に低下させ記録感度の向上にも効果的であるほか、添加量の調整によって光学特性を調整することも可能であるからである。一方、希土類酸化物又はベリリウムを除くIIa族の酸化物に関しては、ZrO2の温度に対する体積変化を小さくする効果があるため、初期化や記録時の温度変化に対する安定性を向上できることが理由である。
このような効果を得るためには、TiO2の含有量に関しては界面層材料全体に対して0以上60モル%未満とすること、SiO2の含有量に関しては0以上40モル%未満とすること、希土類酸化物又はベリリウムを除くIIa族の酸化物の含有量に関してはZrO2に対して1〜10mol%とすることが望ましい。ただし、TiO2とSiO2がともに0モル%の場合は除かれる。
混合させる割合は記録層自身の保存信頼性能とも関連し、必ずしもこの範囲に限定はされないが、記録層の保存信頼性がそれ程よくない場合でも、TiO2に関しては60mol%、SiO2に関しては40mol%を越えるとZrO2の効果が不明瞭となるため上記範囲が適している。
TiO2とSiO2を比較した場合、SiO2は屈折率が小さく混合の割合を増やすと界面層自身の屈折率が低下する恐れがあり、SiO2の使用量の上限は40mol%未満である。したがって、屈折率の低下を抑制するためには、高屈折率誘電体であるTiO2を単独で混合するか、あるいはTiO2とSiO2を併せて混合する方が望ましく、界面層を効果的に用いることができる。
また、好ましい希土類酸化物又はベリリウムを除くIIa族の酸化物としては、Y、Mg、Caなどの酸化物が挙げられる。ZrO2にY、Mg、Ca 等の酸化物を固溶させただけの界面層の場合、記録媒体の保存信頼性劣化が顕著となるため、TiO2あるいはSiO2との併用が望ましい。
一方ZrO2のもつ結晶化促進効果は、界面層の膜厚をできるだけ薄くすることでも低減できる。そのため、界面層の膜厚は8nm未満とすることが望ましい。これは膜厚を8nm以上にすると、比較例2に示すように充分な保存信頼性が得られなかったためである。一方下限は1nm程度であることが好ましい。これについては本発明者らが実際に調査したところ、記録層界面に1nmのZrO2膜を積層してもオーバーライト改善効果が現われたためである。即ち、オーバーライト特性を改善し、かつ保存信頼性を満足する構成としては、表面に均一で、できるだけ薄く積層された構成が好ましく、具体的には1〜5nm、さらに好ましくは2〜4nmの膜厚値が最適である。
このように界面層の選定と層構成を規定することで、ZnS−SiO2保護層のみを単独で用いる従来の相変化光記録媒体に比べ、オーバーライト特性が良好で、かつ、アモルファスマークの保存信頼性に優れた記録媒体を提供することができる。これは、
1.上記ZrO2を必須成分とする材料が、薄膜化しても機械的強度及び靭性の優れた性質がそのまま維持され、記録時の溶融・冷却の繰り返しによって引き起こされる記録層のダメージ、保護層の変形を抑制することができること。
2.熱伝導率が極めて低いため、低い記録パワーでも記録時における記録層の到達温度が従来のZnS−SiO2に比べ高くなり、マーク形成に必要な急冷構造が実現され、感度の向上、オーバーライト特性を向上することができること。
3.ZrO2の結晶化促進効果は、TiO2及び/又はSiO2の添加、及び8nm未満の薄膜に規定することで低減され、その結果、保存信頼性を充分確保できるようになること等の理由に依る。
【0011】
本発明においては、前記界面層の必須成分であるZrO2が部分安定化ジルコニアであることがより望ましい。
これはTiO2やSiO2が保存信頼性劣化の低減、界面層の低熱伝導率化及び光学特性の調整などに効果的である一方で、ジルコニアの一部をY2O3、MgO、CaO、Nb2O5、Al2O3、希土類酸化物等を数%添加して安定化させた部分安定化ジルコニアには酸化ジルコニウムの温度に対する体積変化を小さくする効果があり、初期化や記録時の温度変化に対する安定性を向上できるため、本発明に用いる界面層を形成する材料としては一層適切である。これら添加量(Y)は0.1<Y<10mol%の範囲にあることでその効果は最適に発揮される。
【0012】
また、本発明の相変化記録媒体の記録材料について、以下に説明する。
記録層界面にZrO2を必須成分として含む材料を設ける相変化光記録媒体では、その最適記録層材料はSb、Teを主要構成元素としこれに必須元素としてGeが含まれ、かつ他の添加元素(X2)として、Ga、In、Tl、Pb,Sn、Bi、Cd,Hg、Ag、Cu、Mn、Dyから選ばれる少なくとも1種以上の元素が添加された記録層材料であることが好ましい。
【0013】
以下に、本発明を構成する各元素の最適組成範囲について述べる。
SbとTeのモル比が7:3であるSb70Te30近傍組成のSb−Te二元系合金は、オーバーライトによる組成偏析が起こり難く繰り返し記録特性に優れた相変化記録材料である。SbとTeの配合比を変えることで結晶化限界速度を調整することが可能であり、Sb比率を高くすると結晶化限界速度が速くなり転送速度を高速にすることができる。本発明の対象となる相変化光記録媒体においては、Sbの最適組成範囲は、65≦Sb<80(at%)である。これは、Sbが65(at%)以上であれば少なくともCDの1Xの線速(1.2m/s)における記録が可能で、これより少ない場合1.2m/sでもオーバーライトによるジッター上昇が大きくなり良好な記録特性を得ることが困難となってしまうからである。また一方Sb量が過剰な場合は、結晶化速度の上昇が急激となりマーク形成が困難となるほか保存信頼性が劣化してしまうためである。
一方、GeはGaほどには結晶化温度を上げずに少量の添加で相変化光記録媒体の保存信頼性を飛躍的に向上させることができるため、必須の添加元素である。このとき添加量は2(at%)以上で結晶化速度の速い記録層のアモルファス安定性を向上させる効果が現われ、添加量が増えるに従いその効果は高くなるが、過剰の添加はオーバーライトによるジッター上昇などの弊害を招くことから上限は7(at%)とする必要がある。
【0014】
また、他の添加元素(X2)について説明する。
相変化光記録媒体は、今後高速オーバーライトの実現が望まれるが、上記Sbの組成範囲でDVD−ROM再生線速2倍(7.0m/s)以上の高線速記録材料を設計するのはもはや困難であるため、オーバーライト特性及び保存信頼性を良好に維持したまま結晶化速度の向上を図るために、Gaを更に添加する必要がある。Gaは少ない添加量で結晶化速度を速くすることができ、また、記録層材料の結晶化温度を高める効果をもつことからマークの安定性に優れた相変化光記録媒体を提供することが可能である。Gaの添加量については多すぎると逆に結晶化温度が高くなり過ぎ、生産工程で予め非晶質相を結晶相に相変化させる初期結晶化時に均一で高い反射率の結晶状態を得ることが難しくなる。そのためGaの組成範囲は、7(at%)以下であることが好ましい。InもGaと同様の効果を持つが、Gaほどには結晶化温度を高くしないので、初期化の問題を考慮した場合、Gaを補う元素として用いると有効である。Inも過剰の添加はオーバーライト特性を悪化させるため、7(at%)以下とすることが好ましい。
Ga、In以外に、更にTl、Pb、Sn、Bi、Cd、Hgにも結晶化限界速度を速くする効果がある。これらの元素を添加することにより、結晶化限界速度が速くなる理由は不明であるが、仮にSb−Te合金の結晶化が促進されることに依るならば、これらの元素の中でもSbと同じ価数を取り易いGa、In、Biはより好ましく、またSbに最も原子番号が近くSbとの親和性が高いと思われるSnも好ましい。しかし、添加量が多すぎると再生光劣化や初期ジッターの劣化を引き起すことが予想されるため、組成範囲は何れも10(at%)以下とする必要がある。
【0015】
また、本発明者らの種々の添加元素の調査により、MnやDyについてもInと同様の効果を奏することが判り、特にMnは結晶化速度を速め、かつ、Ge添加量をそれほど増やす必要のない保存信頼性にも優れた添加元素であることも判った。したがって、Sb−TeにGeとMn/あるいはGe、GaとMnを添加することで、充分な保存信頼性の確保、DVDの5倍速(17.5m/s)程度で高い消去率、双方の両立が可能となり、オーバーライトによる特性劣化の少ない相変化光記録媒体を提供することが可能となる。このとき最適Mn添加量は1≦Mn≦7(at%)が好ましい。これは1(at%)より低いと結晶化速度を速くする効果が現われず、また、添加量が多すぎると未記録状態(結晶状態)の反射率が低くなりすぎてしまうからである。
また、上記添加元素と共に、Cu及び/又はAuを含有させることが望ましい。これらの元素は保存信頼性に効果的な添加元素であることから、上記添加元素と共に適当に組み合わせることにより所望の高線速光記録媒体を実現し、オーバーライト特性及び保存信頼性に優れた記録材料を設計することができる。
【0016】
このように前記保護層及び記録層を的確に組み合わせ、各々の組成比を調整することで、Sbの比率が80(at%)以下の場合においても低線速から高線速、より具体的にはDVDの1X(3.5m/s)〜5X(17.5m/s)において、良好なオーバーライト特性を有し保存信頼性に優れた相変化光記録媒体を形成できる。
一方、記録層の膜厚に関しては8〜20nmの範囲が望ましい。8nmより薄いと繰り返しオーバーライトによる記録特性の劣化が著しくなる。20nmより厚いと、オーバーライトによる記録層の移動が起こりやすくジッター増加が顕著になり、また、光透過率が不充分となるため高反射率が得られず変調度も低下してしまう。好ましい記録層の膜厚は、10〜17nm、より好ましくは10〜12nmの範囲である。
【0017】
本発明における前記第一保護層及び第二保護層の構成成分としては、ZnSとSiO2の混合物を挙げることができる。すなわち、第一保護層及び第二保護層にはZrO2のような結晶化促進効果をもたず、かつ保護層に求められる耐熱性、低熱伝導率性、化学的安定性を有すZnSとSiO2の混合物を用いることが好ましい。ZnSとSiO2の混合物を用いれば、充分な保存信頼性を確保したまま安定したマーク形成を実現でき、また膜の残留応力も小さいためオーバーライトによる劣化の少ない相変化光記録媒体を提供することができる。このとき、第一保護層の膜厚は50〜200nmの範囲に、また第二保護層の膜厚は5〜20nmの範囲にあることが好ましい。第二保護層の膜厚は記録層の冷却に関し、より直接的に影響が大きいため、良好な消去特性・繰り返し耐久性を得るために5nm以上は必要である。これより薄い場合はクラック等の欠陥を生じ繰り返し耐久性が低下するほか、記録感度が悪くなるため好ましくない。また20nm以上であると記録層の冷却速度が遅くなるためマークが形成しにくくなり、マーク面積は小さくなってしまう。
【0018】
また、本発明の相変化光記録媒体を構成する反射層は、Ag、Au、Cu、Alのうち少なくとも一種以上を主成分とする金属であることが好ましい。
すなわち、相変化光記録媒体を構成する反射層は通常、記録時に発生する熱の冷却速度調整という熱伝導の観点と、干渉効果を利用して再生信号のコントラストを改善するという光学的な観点から構成されるため、高反射率、高熱伝導率の金属が望ましい。Ag、Au、Cu、Al単体、あるいはこれらのうちいずれか一種類以上を主成分とする金属(合金)は熱伝導率及び光反射性が高く、前記保護層によって記録時の到達温度がより高温になる効果と、これら反射層による急冷の効果が最適に組み合わさり、アモルファスマークの形成をより的確に行なうことができる。反射層の膜厚は薄すぎるとアモルファス化に必要な急冷効果が得られず、また反射効率も低下することから90nm以上であることが好ましく、また上限は200nm程度で充分であり、逆に厚すぎる場合生産効率の低下をもたらすことになる。
【0019】
さらに、前記反射層がAgあるいはAgを含む合金で構成され、かつ第二保護層がZnS−SiO2のような硫黄元素を含む材料で構成される場合、第二保護層と反射層との間に硫黄を含まない硫化防止層を設けることが好ましい。反射層にAgあるいはAg合金を用い、更に第二保護層にZnSとSiO2の混合物のような硫黄が含まれる材料を用いると、これに接するAg界面ではAg硫化が起こりディスク欠陥の原因となる。そのため層間に硫化防止層を設けAg硫化問題を解決する。
【0020】
この硫化防止層の構成材料としては、特に限定されるものではないが、SiあるいはSiCを主成分とする材料が望ましい。すなわち、硫化防止層に要求される材料の性質としては、Sを含まないこと及びSを透過しないこと、かつ記録特性を損なわないことが前提となる。本発明者らがこのような性質をもつ、材料として様々な酸化膜、窒化物等を含め検討した結果、SiあるいはSiCが硫化防止層として最適であることが判り、これによって記録感度を損なわず、かつ硫化防止機能を持ち合わせた優れた相変化光記録媒体を提供することができる。このとき、膜厚は2〜8nmの範囲にあることが最も有効である。
【0021】
以下、本発明の相変化光記録媒体の構造を図面に基づいて説明する。
図1、2は本発明における実施形態の構造の一例を示すものである。
この相変化光記録媒体では、基板(1)の上に、第一保護層(2)、相変化記録層(3)、第二保護層(4)、硫化防止層(5)、反射層(6)の他、記録層界面にZrO2必須成分として含む界面層(7)が設けられ、さらに樹脂保護層(8)を介し貼り合せ用基板(9)が設けられている。
本発明の本質は記録層界面に、低熱伝導率で耐熱性・化学的安定性を有し、機械的強度に優れた酸化ジルコニウムを必須成分として含み、これにさらにTiO2及び/又はSiO2、並びに希土類酸化物及び/又はベリリウムを除くIIa族の酸化物から選ばれる少なくとも一種を所定割合で含有するバリア層を設けたことにある。それ故、成膜の順序が逆になる表面記録型の相変化光記録媒体であっても、本発明の本質は全く同様に適用できる。
また、本発明の相変化光記録媒体は、DVD系の相変化光記録媒体に見られるように、貼り合せ用基板に代えて樹脂保護層を介し同一又は異なる光記録媒体が互いに2枚貼り合わされた構造であってもよい。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
いずれの場合も、直径12cm、厚さ0.6mm、トラックピッチ0.74μmの案内溝付きポリカーボネート基板上に、スパッタリング法にて第一保護層、ZrO2を必須成分として含む界面層、相変化記録層、第二保護層、硫化防止層、反射層をこの順(図1に示したディスク構成の場合。図2に示すディスク構成の場合は、界面層を相変化記録層と第二保護層の間で成膜)に成膜し、さらに、反射層上にスピンコートにより形成された樹脂保護層を介して直径12cm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を接着シートで貼り合せ、ディスクを作製した。
【0023】
繰り返し記録特性の評価は、このディスクを大口径LDにより初期結晶化後、光ディスク評価装置(波長660nm、NA0.65)を用いて記録線速14.0m/s、線密度0.267μm/bitのもと、EFM+変調方式でランダム信号の繰り返し記録(1000回)を行ない、再生線速3.5m/s、パワー0.7mWの条件でジッター(ここでジッターとは、data to clock jitterσを検出窓幅Twで規格化した値をジッターと呼ぶ。)を測定した(図3参照)。
また、保存信頼性の評価は、前記記録方法により1000回オーバーライトした後のディスクを80℃85%RHの高温高湿環境下に保存し、100時間毎のジッター値を測定することで行なった(図4参照)。
【0024】
実施例1
第一保護層がZnS(80mol%)−SiO2(20mol%):65nm、記録層がGe5Sb77Te18:17nm、界面層がZrO2(−8mol%Y2O3)−TiO2(20mol%):2nm、第二保護層がZnS(80mol%)−SiO2(20mol%):11nm、硫化防止層がSi:4nm、反射層がAg:140nmで構成されたディスクの、繰り返し記録特性及び保存信頼性評価を行なった。
図3及び4の結果から明きらかなように、繰り返し記録特性は後述の比較例1に比べ改善され、保存信頼性も良好な結果が得られた。(比較例1と同等の保存信頼性を得ることができた。)
【0025】
実施例2
実施例1の層構成において実施例2では、第一保護層と記録層の間にZrO2(−8mol%Y2O3)−TiO2(20mol%)を2nm設けたディスクの特性評価を行なった。
図3及び図4の結果から明らかなように、実施例1と同様に良好な繰り返し記録特性及び保存信頼性を得ることができた。
【0026】
実施例3
実施例1の層構成において記録層にGe4Sb72Te20Ag1In3を用いた他は、実施例1と同様のディスクを作製し評価を行なった。
その結果、実施例1に比べジッター値が全体的に約1%低い良好な繰り返し記録特性が得られ、また高温高湿環境下500時間経過後も、マークの劣化は見られなかった。
【0027】
実施例4
実施例1の層構成において記録層にGe5Sb72Te18Mn5を用いた他は、実施例1と同様のディスクを作製し評価を行なった。
その結果、実施例4においては、記録線速17.5m/sにおいても実施例1と同様の良好な繰り返し記録特性が得られ、保存信頼性も非常に良好であった。
【0028】
比較例1
実施例1及び2の層構成において、ZrO2を主成分とする界面層を設けないディスクを作製し、特性評価を行なった。
その結果、保存信頼性は良好であったが、繰り返し記録特性は悪かった。
【0029】
比較例2
実施例1の層構成において、ZrO2を主成分とする界面層を8nm設けたディスクの特性評価を行なった。
その結果、繰り返し記録特性は良好であったが、このディスクを80℃85%RH高温高湿環境下に保存したところ、300時間でマークの劣化が始まった。
【0030】
以下の表1−1、表1−2に上記実施例1、2及び比較例1、2における記録媒体の各層の構成材料組成及びその厚さを示す。
【0031】
【表1−1】
【0032】
【表1−2】
【0033】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明より明らかなように、本発明は、記録層界面に、低熱伝導率で耐熱性・化学的安定性を有し、機械的強度に優れた酸化ジルコニウムを必須成分として含み、これにさらにTiO2及び/又はSiO2、並びに希土類酸化物及び/又はベリリウムを除くIIa族の酸化物から選ばれる少なくとも1種を所定割合で含有するバリア層を設けたことにより、高線速・高密度記録において、高感度で、オーバーライト特性及びアモルファスマークの保存信頼性に優れた相変化光記録媒体を提供できる。
また、本発明においては、上記界面層との組み合わせにおいて、最も好ましい組成の記録層を構成したことにより、さらに高速記録が可能でかつオーバーライト特性及び保存信頼性により優れた相変化光記録媒体を提供することが可能となり、また、最適材料により反射放熱層を構成したことにより、マーク形成がより安定して形成できるほか、保護層にZnSとSiO2に使用する場合において、反射層と該保護層との間に硫化防止層を設けることにより、反射層の硫化を防止デイスク特性の劣化を防止し得るという効果を奏する。したがって、本発明によれば、極めて高性能な相変化型光記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の相変化光記録媒体の層構成の一例を示した図である。
【図2】本発明の相変化光記録媒体の層構成の他の例を示した図である。
【図3】本実施例における記録媒体の繰り返し記録特性を示した図である。
【図4】本実施例における記録媒体の保存信頼性を示した図である。
【符号の説明】
1 基板
2 第一保護層
3 相変化記録層
4 第二保護層
5 硫化防止層
6 反射層
7 ZrO2とを主成分とする界面層
8 樹脂保護層
9 貼り合せ用基板
Claims (2)
- 透明基板上に少なくとも第一保護層、非晶質相と結晶相の可逆的相変化をする記録層、第二保護層、反射層から構成され、前記記録層界面にZrO2を必須成分として含む界面層を設けた相変化光記録媒体であって、前記界面層は、膜厚が1〜5nmであり、ZrO2 及びTiO 2 を必須成分とし、組成式(ZrO 2 )a(TiO 2 )b(X 1 )d(但し式中、a、b及びdは各酸化物の割合(mol%)を表わし、30<a<100、0<b<60、0.1<d<10(a+b+d=100)であり、前記X1は希土類酸化物、ベリリウムを除くIIa族の酸化物から選ばれる少なくとも1種である。)で表わされる酸化物組成を有することを特徴とする相変化光記録媒体。
- 前記X 1 はY 2 O 3 であることを特徴とする請求項1に記載の相変化光記録媒体。
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