JP4058204B2 - 光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、相変化型の光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高密度記録が可能で、記録情報を書き換えることの可能な光記録媒体が注目されている。書き換えの可能な光記録媒体のうち相変化型光記録媒体は、レーザー光を照射して記録層の結晶状態を変化させて記録を行ない、状態変化にともなう記録層の反射率変化を検出することにより再生を行なうものである。
【0003】
相変化型光記録媒体は、単一の光ビームの強度変調によりオーバーライトが可能であり、駆動装置の光学系が単純であるために注目されている。
【0004】
相変化型光記録媒体において情報を記録する際には、記録層がその融点以上まで昇温されるパワー(記録パワー)のレーザー光を照射する。記録パワーが加えられた部分では記録層が溶融した後、急冷され、非晶質の記録マークが形成される。記録マークを消去する際には、記録層がその結晶化温度以上融点未満の温度まで昇温されるパワー(消去パワー)のレーザー光を照射する。消去パワーが加えられた記録マークは、結晶化温度以上まで加熱された後、徐冷されるため、結晶質に戻る。このように、単一のレーザービームの強度を変調することにより、オーバーライトが可能となる。
【0005】
近年、相変化型記録膜を用いた書き換え可能なデジタルビデオディスク(DVD−RAM)が注目されている。DVD−RAM Ver.1.0では、直径120mmのディスクに片面当たり2.6GBのデータを記録する。このときの記録波長は0.65μm、光ピックアップの開口数NAは0.60、トラックピッチは0.74μm、記録方式はランド・グルーブ記録、変調方式は8−16変調、最短マーク長は0.62μmである。また、光ピックアップに対するディスクの相対線速度を6m/sとすることで、データ転送レート11.06Mbpsを達成している。
【0006】
また、Jpn.J.Appl.Phys.vol.37(1998)pp.2104-2110には、DVD−RAM仕様を意識した膜構造として、ZnS−SiO2(100nm)/Interface layer(5nm)/Ge2Sb2Te5(20nm)/ZnS−SiO2(20nm)/Al−Alloy(150nm)が記載されている。なお、括弧内は厚さである。
【0007】
ところで、相変化型光記録媒体において、より高い記録密度、より速い線速度での記録を実現する方法としては、記録用レーザー光の波長の短縮化や光ピックアップのNAの増大など、媒体駆動装置に関する方法と、狭トラックピッチ化や最短マーク長の短縮など、媒体に関する方法とがある。媒体に関する方法のうち狭トラックピッチ化は、隣接トラックの記録マークを消してしまうクロスイレーズの悪化、隣接トラックの記録マークを読み出してしまうクロストークの悪化、C/N低下の原因となる。特に、トラックピッチが0.7μm未満になると、クロスイレーズが急激に増大し、ジッタの増大を招く。
【0008】
実際に本発明者らは、上記Jpn.J.Appl.Phys.vol.37(1998)pp.2104-2110に記載された膜構造を用いて、DVD−RAMと同様に記録波長650nm、NA0.60、8−16変調方式、ランド・グルーブ記録の条件下で、DVD−RAMよりも最短マーク長を短く(0.42μm)、トラックピッチを狭く(0.60μm)して記録を行ったところ、良好なジッタ特性が得られなかった。
【0009】
特開平6−338064号公報には、クロスイレーズの改善方法が記載されている。同公報に記載された情報記録媒体は、光ビームの照射により局所的に反射率が変化する記録膜を有し、あらかじめ形成された案内溝と、隣接する案内溝の間とを情報記録トラックとし、前記案内溝の深さが、情報再生用の光ビームの波長をλとしてλ/7以上λ/5以下の光学長をなし、前記案内溝の幅と前記案内溝間の幅とがほぼ等しく、情報記録用のレーザ光の前記記録膜上でのビーム径をR(Rは強度が中心の1/e2となる直径に相当する)、前記案内溝の幅をWgとすると、
0.34≦Wg/R≦1.0
を満たす。同公報では、隣接する情報トラックの記録マークの一部が消去されて再生信号の品質が悪化することがない、すなわちクロスイレーズがない、としている。
【0010】
しかし、同公報の実施例では、トラック幅を0.7μmとしており、より狭いトラックピッチにおけるクロスイレーズ抑制効果については明らかになっていない。そこで本発明者らが、同公報記載の条件は満足するがトラックピッチが0.6μmである場合について実験を行ったところ、クロスイレーズによるジッタ悪化が確認された。
【0011】
また、IEEE Trans.on Magn.vol.34,No.2(1998)337には、案内溝深さがλ/6、λ=680nm、NA=0.6、すなわちビーム径R=929nm、案内溝幅Wg=0.65μm、トラックピッチ0.65μm、すなわちWg/R=0.70においても、クロスイレーズによりジッタが悪化することが報告されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高密度記録時、特に記録トラックピッチが0.7μm未満である場合に、クロスイレーズを十分に抑制することができ、良好な記録再生特性が得られる相変化型光記録媒体を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、下記(1)〜(6)のいずれかにより達成される。
(1) 基体上に、第1誘電体層、相変化型の記録層、第2誘電体層および反射層をこの順で有し、グルーブおよびランドの少なくとも一方を記録トラックとして、その記録ト ラックピッチが0.7μ m 未満である光記録媒体であって、
記録層の結晶化温度が160℃以上であり、第2誘電体層の熱伝導率が第1誘電体層の熱伝導率よりも1.2倍以上高く、
前記第1誘電体層が少なくとも2層の単位誘電体層から構成され、第1誘電体層において、前記記録層に接する単位誘電体層が、酸化クロムを主成分とし、前記記録層に接する前記単位誘電体層に隣接する単位誘電体層が、硫化亜鉛と酸化ケイ素との混合物を主成分とする光記録媒体。
(2) 記録層がGe、SbおよびTeを主成分とする上記(1)の光記録媒体。
(3) 記録層が窒素を含有する上記(2)の光記録媒体。
(4) 反射層が、Al、Ag、CuおよびAuの少なくとも1種を含有する上記(1)〜(3)のいずれかの光記録媒体。
(5) 反射層が少なくとも2層から構成され、そのうち第2誘電体層と接する層が、Alを主成分とする上記(1)〜(4)のいずれかの光記録媒体。
(6) 記録層の厚さが10〜18nmである上記(1)〜(5)のいずれかの光記録媒体。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の光記録媒体は、図1に示されるように、基体2上に、第1誘電体層31、相変化型の記録層4、第2誘電体層32および反射層5をこの順で有し、反射層5上に保護層6を有する。この構造は、前記したDVD−RAM用ディスクと同様である。
【0015】
本発明では、この構造の光記録媒体において、記録層4の結晶化温度を160℃以上、好ましくは170℃以上とすると共に、第2誘電体層32の熱伝導率を第1誘電体層31の熱伝導率よりも高くする。これにより、記録トラックピッチが狭い場合、具体的には記録トラックピッチが0.7μm未満、特に0.65μm以下である場合に、クロスイレーズを著しく抑制することができる。なお、本発明は、基体に形成されたグルーブ(案内溝)を記録トラックとするグルーブ記録にも、また、隣接するグルーブの間の領域(ランド)を記録トラックとするランド記録にも、また、グルーブとランドとを記録トラックとするランド・グルーブ記録にも適用できる。
【0016】
ところで、クロスイレーズを抑制する方法としては、例えば
(1)通常の光記録媒体では、光吸収率が記録マーク(非晶質)領域においてそれ以外の領域よりも高くなるが、媒体構造を変更することにより、記録マーク領域の光吸収率をそれ以外の領域の光吸収率よりも低くする吸収率補正方法、
(2)ランド・グルーブ記録において、グルーブを深くする方法
が従来提案されている。
【0017】
上記(1)の吸収率補正方法は、例えば信学技報MR95−84(1996)に記載されている。この方法では、通常の4層構造、すなわち、第1誘電体層、記録層、第2誘電体層および反射層を設ける構造に対し、吸収率を補正するための層を新たに付加する必要がある。しかし、この層を付加すると、急冷構造にしにくくなって良質な記録マークを形成することが困難となるため、良好な記録再生特性が得られにくいという問題が生じる。
【0018】
上記(2)の方法は、例えばODS97,WB2(1997)や特開平9−245378号公報に記載されている。この方法においてクロスイレーズを効果的に抑制するためには、グルーブ深さをλ/3n(λは記録光の波長であり、nはグルーブが形成された基体の波長λにおける屈折率)とすることが好ましい。しかし、記録トラックピッチを0.7μm未満にすると、深さがλ/3nであるグルーブを有する基体を射出成形により形成することが困難となる。
【0019】
そこで本発明では、記録層4の結晶化温度を上記したように高くすることにより、隣接トラックに記録したときの熱の影響を受けにくくし、クロスイレーズを低減する構成とした。記録層4がGe、SbおよびTeを主成分とする場合において結晶化温度を上げるためには、後述するように、GeおよびTeが比較的リッチである組成とするか、窒素を含有させるか、これら両者を併用することが効果的である。
【0020】
また、本発明では、基体2側に存在する第1誘電体層31よりも、反射層5側に存在する第2誘電体層32の熱伝導率を高くし、記録層4の熱を反射層5側により多く逃がす構成とした。この構成としたのは、クロスイレーズの主な原因が記録層4から基体2側に逃げる熱であると考えられるからである。すなわち、基体2は熱伝導率が比較的低いため、記録層4から基体2側に逃げた熱は速やかには放熱しない。そのため、この熱が隣接トラックに影響を及ぼしてクロスイレーズを生じさせると考えられる。
【0021】
クロスイレーズ抑制のために本発明で採用した上記2つの構成は、それぞれ一方だけではクロスイレーズ抑制効果は小さいが、両者を併せることでクロスイレーズは著しく低減される。なお、第2誘電体層の熱伝導率は、第1誘電体層のそれの好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上である。各誘電体層の熱伝導率は、組成を制御することにより調整することができる。
【0022】
第1誘電体層および第2誘電体層は、多層構造であってもよい。複数の単位誘電体層から構成した多層構造の誘電体層において、熱伝導率は以下のようにして求める。誘電体層の全厚をtとし、その誘電体層に含まれる単位誘電体層の数をmとし、その誘電体層の一方の側からi番目の単位誘電体層において、熱伝導率をCi、層厚をtiとすると、誘電体層全体の熱伝導率Cは
【0023】
【数1】
【0024】
で表される。
【0025】
ところで、Ge−Sb−Te系記録層に窒素を添加することは、特許第2553736号公報に開示されている。しかし、同公報記載の発明の目的は、オーバーライト特性と記録消去特性との改善であり、同公報にはクロスイレーズに関する記載はない。また、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)2098には、Ge−Sb−Te系記録層に窒素を添加することで結晶化温度が高くなるとの記載があるが、やはりクロスイレーズに関する記載はない。
【0026】
また、特許第2538046号公報には、記録膜下面の誘電体層(本発明における第1誘電体層)のほうが、記録膜上面の誘電体層(本発明における第2誘電体層)よりも熱伝導率が低い相異なる誘電体材料を用いる光学情報記録再生消去部材が記載されている。しかし、同公報に記載された発明の目的には、クロスイレーズ低減は含まれていない。
【0027】
本発明では、トラックピッチを狭めた場合に生じるクロスイレーズをさらに低減するために、記録層を薄くすることが好ましい。具体的には、記録層の厚さを10〜18nm、特に10〜16nmとすることが好ましい。記録層を薄くすることにより生じるクロスイレーズ抑制効果は、記録マークとそれ以外の領域との光吸収率の差が小さくなることによると考えられる。そこで、記録層が厚い場合と薄い場合との記録層の吸収率の違いを、シミュレーション計算により求めた。なお、以下において、第1誘電体層および第2誘電体層はZnS−SiO2、記録層はGe2Sb2Te5合金、反射層はAl−Cr合金である。各層の屈折率nおよび消衰係数kを、表1に示す。また、各層を表2に示す厚さとした場合について、記録層の結晶質部および非結晶質部における反射率、吸収率を求めた。結果を表2に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示されるように、結晶質部と非結晶質部との反射率差は、記録層が厚い構造(a)と記録層が薄い構造(b)とで同等であるが、吸収率の差は、記録層が薄い構造(b)のほうが小さくなることがわかる。これは、同じパワーの光を照射したときに、構造(b)のほうが記録マークにおける吸収率が小さく、隣接する記録マークが消去されにくく、結果としてクロスイレーズが小さくなることを意味する。
【0031】
ところで、高密度記録を行うために最短マーク長を短くすると、記録マークの検出感度が低下してくる。この低下を抑制するためには、隣接トラックに対し干渉しない範囲で記録マークをトラック幅方向にできるだけ広げることが好ましい。記録マークを広げるためには、記録光により昇温する領域を記録層面内方向(特にトラック幅方向)に広げる必要があり、このためには記録層面内方向への熱の拡散が良好である必要がある。しかし、記録層は一般的に熱導電率が比較的低い。そこで、熱伝導率の高い誘電体層を記録層に接して設ければ、記録層面内方向への熱の拡散が良好となり、記録マーク拡大による記録マーク検出感度の向上が可能となる。このような理由から、本発明では図2に示すように、第1誘電体層31を、単位誘電体層311および312からなる2層構造とし、記録層4に接する単位誘電体層312の熱伝導率を、記録層4から遠い単位誘電体層311の熱伝導率よりも高く設定することが好ましい。記録層4から遠い単位誘電体層311が硫化亜鉛と酸化ケイ素との混合物を主成分とする場合、記録層4に接する単位誘電体層312には、例えば窒化ケイ素および/または酸化ケイ素を用いることができる。ただし、本発明者らの実験では、単位誘電体層312の主成分を窒化ゲルマニウムおよび/または酸化クロムとした場合、およびこれらを窒化ケイ素および/または酸化ケイ素と併用した場合でも、同様な効果が認められた。したがって本発明において記録層4に接する単位誘電体層312は、窒化ゲルマニウム、窒化ケイ素、酸化ケイ素および酸化クロムの少なくとも1種を主成分とすることが好ましい。
【0032】
ただし、記録マークが、マーク長に影響を与えるほどトラック長さ方向に広がってしまうと正確な読み取りが不可能となるので、注意が必要である。トラック長さ方向への記録マーク拡大を抑えてトラック幅方向に記録マークを拡大することは、記録光の照射パターンを制御することにより実現できる。
【0033】
なお、第1誘電体層31を3層以上の単位誘電体層から構成してもよい。その場合でも、記録層4に接する単位誘電体層とこれに隣接する単位誘電体層との関係は、図2における単位誘電体層312と311との関係と同様とすることが好ましい。
【0034】
第1誘電体層31の厚さは、50〜280nm程度とすることが好ましい。また、第1誘電体層31において記録層4に接する単位誘電体層の厚さは、好ましくは1〜30nm、より好ましくは1〜20nmである。記録層に接する単位誘電体層が厚すぎると、記録感度が悪くなり、また、反射層5側に逃げる熱が減少してクロスイレーズが悪化する。一方、記録層に接する単位誘電体層が薄すぎると、これを設けることによる効果が実現しない。第2誘電体層32の厚さは5〜50nm程度とすることが好ましい。
【0035】
第1誘電体層31において記録層4に接するもの以外の単位誘電体層の構成材料は特に限定されず、各種誘電体を用いることができるが、好ましくは硫化亜鉛と酸化ケイ素との混合物を主成分とする誘電体、すなわち、一般にZnS−SiO2と表されるものを用いる。第2誘電体層32の構成材料も特に限定されず、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化クロム等の酸化物、窒化ゲルマニウム、窒化ケイ素等の窒化物、炭化ケイ素等の炭化物、ZnS等の硫化物、これらの混合物(ZnS−SiO2等)などのいずれであってもよい。
【0036】
記録層4は、相変化型材料から構成される。記録層の組成は特に限定されないが、記録層の組成を、以下に説明するGe−Sb−Te系組成とした場合に、本発明は特に有効である。
【0037】
Ge−Sb−Te系組成の記録層では、Ge、SbおよびTeの原子比を
式I GeaSbbTe1-a-b
で表わしたとき、
0.08≦a≦0.35、
0.12≦b≦0.40
であることが好ましい。
【0038】
式Iにおいてaが小さすぎると、記録マークが結晶化しにくくなり、消去率が低くなってしまう。aが大きすぎると、多量のTeがGeと結合することになり、その結果、Sbが析出して記録マークが形成しにくくなる。
【0039】
式Iにおいてbが小さすぎると、Teが多くなりすぎるために高温での保存時に記録マークが結晶化しやすくなって、信頼性が低くなってしまう。bが大きすぎると、Sbが析出して記録マークが形成しにくくなる。
【0040】
結晶化温度を160℃以上とするためには、上記式Iで表される組成範囲内において、記録層の組成を、GeTe−Sb2Te3共晶線上であって、かつ、Ge2Sb2Te5とGeTeとの間の組成とするか、または、上記共晶線からSbリッチ側もしくはTeリッチ側にずれた組成とすることが好ましい。ただし、上記共晶線上においてGeTeに近すぎる組成とした場合、または、上記共晶線から大きくSbリッチ側もしくはTeリッチ側へずれた組成とした場合には、結晶化速度が遅くなって消去が困難になる。そのため、結晶化温度を高くし、かつ、消去速度が遅くなりすぎることを防ぐためには、Ge、SbおよびTeの原子比を
式II GeaSbbTec
で表したとき、
0.23≦a≦0.32、
0.12≦b≦0.27、
0.50≦c≦0.58、
a+b+c=1
とすることが好ましい。
【0041】
また、Ge−Sb−Te系組成の記録層について、元素の構成比によらず結晶化温度を上昇させるためには、記録層に窒素を添加することが有効である。窒素添加量は、必要とされる結晶化温度に応じて決定すればよいが、通常、記録層中の窒素含有率が2〜15原子%の範囲となるように添加することが好ましい。窒素含有率が高すぎると、結晶質のときの反射率が低くなってしまう。
【0042】
反射層5は、高反射率を示し、かつ、記録層4の熱が逃げやすいように高熱伝導率を有する金属、例えばAl、Ag、CuおよびAuの少なくとも1種を含有する金属から構成すればよい。反射層の厚さは、10〜500nm程度とすることが好ましい。なお、反射層は、単層構造としてもよく、必要に応じ、組成の異なる複数の層からなる多層構造としてもよい。例えば図3に示すように、反射層を、第2誘電体層32側の第1反射層51と保護層6側の第2反射層52との積層構造としてもよい。放熱性をよくするためにはAu、AgまたはCuを主成分とする反射層が好ましいが、その場合には、高反射率が得られる光学的設計を行うことが難しくなりやすい。しかし、第1反射層51としてAlを主成分とするものを設け、第2反射層52としてAu、AgまたはCuを主成分とするものを設ければ、高放熱性に加え、高反射率を得やすい構造となる。その場合、第1反射層51の厚さは、10nm以上とすることが好ましい。なお、図3に示す構成は、反射層以外は図2と同様である。
【0043】
【実施例】
実施例1
射出成形によりグルーブを同時形成した直径120mm、厚さ0.6mmのランド・グルーブダブルスパイラルディスク状ポリカーボネート基体2の表面に、単位誘電体層311、単位誘電体層312、記録層4、第2誘電体層32、反射層5および保護層6を以下に示す手順で形成し、図2に示す構造の光記録ディスクサンプルとした。
【0044】
基体2において、グルーブ幅は0.6μm、グルーブ深さは65nm、グルーブピッチは1.2μmとした。
【0045】
単位誘電体層311は、Ar雰囲気中においてスパッタ法により形成した。ターゲットには、ZnS(80モル%)−SiO2(20モル%)を用いた。単位誘電体層311の厚さは160nmとした。記録層4に接する単位誘電体層312は、Cr2O3ターゲットを用い、Ar雰囲気中においてスパッタ法により形成した。単位誘電体層312の厚さは2nmとした。
【0046】
記録層4は、Ar+N2雰囲気中においてスパッタ法により形成した。ターゲットにはGe2Sb2Te5を用いた。記録層の厚さは18nmとした。記録層中の窒素含有率は、6原子%であった。なお、この窒素含有率は、記録層形成の際と同じ条件で形成した厚さ200nmの膜について、蛍光X線分析により測定した結果である。
【0047】
第2誘電体層32は、ターゲットにZnS(50モル%)−SiO2(50モル%)を用いて、Ar雰囲気中でスパッタ法により形成した。第2誘電体層の厚さは30nmとした。
【0048】
反射層5は、Ar雰囲気中においてスパッタ法により形成した。ターゲットにはAl−1.7原子%Crを用いた。反射層の厚さは200nmとした。
【0049】
保護層6は、紫外線硬化型樹脂をスピンコート法により塗布後、紫外線照射により硬化して形成した。硬化後の保護層厚さは5μm であった。
【0050】
このサンプルにおいて、記録層4の結晶化温度は180℃であった。この結晶化温度は、スライドガラス上に上記記録層と同条件で形成した膜を昇温速度10℃/minで昇温させながら反射率変化を測定したときに、反射率変化が最大となった温度である。
【0051】
また、熱伝導率は、単位誘電体層311において0.6W/m・K、単位誘電体層312において3.0W/m・K、第1誘電体層全体としては0.63W/m・Kであり、第2誘電体層32においては1.0W/m・Kであった。この熱伝導率は、各誘電体層形成の際と同じ条件で基板表面に形成した厚さ1μmの誘電体膜について、迅速熱伝導率計(Kemtherm QTM-500)により測定した結果である。この迅速熱伝導率計による計測方法は、QTM法と呼ばれるもので、熱伝導率が既知である基材の表面に加熱線と熱電対とを配置したプローブを用い、このプローブの前記表面に測定対象を密着させて測定する方法である。具体的には、厚さ1μmの前記誘電体膜を形成した基板と、前記誘電体膜を形成しない基板とについてそれぞれ測定を行い、これらの結果から前記誘電体膜の熱伝導率を求めた。
【0052】
このようにして作製したサンプルをバルクイレーザーにより初期化した後、光記録媒体評価装置を用い、下記条件で特性評価を行った。
【0053】
レーザー光波長:634nm、
開口数:0.6、
相対線速度:8.2m/s、
変調方式:8−16変調、
記録波形[図4(a)、図4(b)に例示するパルスパターン]、
記録パワーPw:このサンプルにおける最適値、
消去パワーPe:このサンプルにおける最適値、
ボトムパワーPb:このサンプルにおける最適値
【0054】
特性評価は、まず、評価トラックにランダム信号を10回記録した後、隣接トラックにランダム信号を0、1、10または100回記録し、次いで、隣接トラックの記録信号を消去し、次いで、評価トラックの再生信号をタイム・インターバル・アナライザにより測定し、ウインドウ幅をTとして
σ/T(%)
によりジッタ(クロックジッタ)を算出することにより行った。なお、この評価は、ランド・グルーブ記録(記録トラックピッチ0.6μm)において、グルーブを評価トラックとした場合およびランドを評価トラックとした場合の両方について行った。クロスイレーズが大きい場合、評価トラックの記録マークが影響を受け、ジッタが大きくなる。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3から、このサンプルでは、隣接トラックへの記録によるジッタの悪化がほとんど認められず、クロスイレーズがよく抑えられていることがわかる。
【0057】
実施例2
図3に示すように反射層を2層構造としたほかは実施例1と同様にして、光記録ディスクサンプルを作製した。第1反射層51は、厚さを50nmとしたほかは実施例1と同様にして形成した。第2反射層52は、ターゲットにAuを用いてAr雰囲気中でスパッタ法により形成した。第2反射層52の厚さは200nmとした。
【0058】
このサンプルについて、実施例1と同様な特性評価を行った。結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
表4では、ジッタの悪化が表3よりもさらに抑えられており、クロスイレーズがさらに抑制されていることがわかる。
【0061】
比較例1
記録層4をAr+N2雰囲気中ではなくAr雰囲気中でのスパッタにより形成したほかは実施例1と同様にして、光記録ディスクサンプルを作製した。このサンプルでは、記録層4の結晶化温度が150℃であった。
【0062】
このサンプルについて、実施例1と同様な特性評価を行った。結果を表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
表5では、隣接トラックへの記録回数の増加に伴ってジッタが増大しており、クロスイレーズの抑制が不十分であることがわかる。
【0065】
比較例2
第2誘電体層32の組成を、記録層4から遠い単位誘電体層311の組成と同じとしたほかは実施例1と同様にして、光記録ディスクサンプルを作製した。このサンプルにおける熱伝導率は、第1誘電体層において0.63W/m・K、第2誘電体層において0.6W/m・Kとなり、第1誘電体層のほうが高くなる。
【0066】
このサンプルについて、実施例1と同様な特性評価を行った。結果を表6に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
表6では、隣接トラックへの記録回数の増加に伴ってジッタが増大しており、クロスイレーズの抑制が不十分であることがわかる。
【0069】
実施例3、4、5、比較例3、4
以下に示す手順で、図2に示す構造の光記録ディスクサンプルを作製した。
【0070】
基体2には、実施例1と同じものを用いた。単位誘電体層311は、実施例1と同じ厚さとし、実施例1と同様にして形成した。単位誘電体層312は、厚さ10nmとし、ターゲットとしてGeを用い、Ar+N2雰囲気中でスパッタ法により形成した。単位誘電体層312の熱伝導率は1.5W/m・Kであった。したがって、第1誘電体層の熱伝導率は、0.65W/m・Kとなる。
【0071】
記録層4は、Ge2Sb2Te5ターゲットとGeTeターゲットとを用いてAr雰囲気中で同時スパッタを行うことにより形成した。ただし実施例5では、Ar+N2雰囲気中でスパッタを行った。記録層の組成は、各ターゲットに対する放電時間を制御することにより調整した。記録層の厚さはいずれも14nmとした。
【0072】
第2誘電体層32は、単位誘電体層312と同様にして形成した。ただし比較例4における第2誘電体層32は、単位誘電体層311と同様にして形成した。第2誘電体層の厚さは30nmとした。
【0073】
蛍光X線分析により測定した記録層の組成(Ge+Sb+Teに対するGe、SbおよびTeの各比率ならびに記録層中のN量)、記録層の結晶化温度(Tx)、第1誘電体層の熱伝導率および第2誘電体層の熱伝導率を、それぞれ表7に示す。また、実施例1と同様にして測定した初期ジッタ(評価トラックのみに記録したときのジッタ)と、評価トラックに記録した後、それに隣接するトラックにランダム信号を10回記録し、次いで、前記隣接するトラックの記録信号を消去した後における評価トラックのジッタとの差を、表7に示す。なお、ジッタの測定は、グルーブを評価トラックとして行った。
【0074】
【表7】
【0075】
表7において、記録層の結晶化温度および誘電体層間の熱伝導率の関係が本発明範囲内にある実施例3〜5では、ジッタの差が小さい。すなわち隣接トラックへの記録によるクロスイレーズの影響が小さい。これに対し、結晶化温度および熱伝導率の関係のいずれか一方が本発明範囲を外れる比較例3、4では、ジッタの差が著しく大きい。
【0076】
以上の実施例および比較例の結果から、記録層の結晶化温度を所定値以上とし、かつ、第2誘電体層の熱伝導率を第1誘電体層の熱伝導率よりも高くすることによる効果が明らかである。
【0077】
【発明の効果】
本発明では、記録層の結晶化温度を160℃以上とすると共に、第2誘電体層の熱伝導率を第1誘電体層の熱伝導率よりも1.2倍以上高くし、さらに第1誘電体層31を単位誘電体層311および312からなる2層構造とすると共に、記録層4に接する単位誘電体層312の主成分を酸化クロムとし、記録層4に接する単位誘電体層312に隣接する(つまり記録層4から遠い)単位誘電体層311の主成分を硫化亜鉛と酸化ケイ素との混合物としたことにより、単位誘電体層312の熱伝導率が単位誘電体層311の熱伝導率よりも高くなるため、高密度記録時、特にグルーブおよびランドの少なくとも一方を記録トラックとして、そのトラックピッチが0.7μm未満である場合に、クロスイレーズを十分に抑制することができる結果、良好な記録再生特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光記録媒体の断面図である。
【図2】 本発明の光記録媒体の断面図である。
【図3】 本発明の光記録媒体の断面図である。
【図4】 (a)および(b)は、記録波形の模式図である。
【符号の説明】
2 基体
31 第1誘電体層
311、312 単位誘電体層
32 第2誘電体層
4 記録層
5 反射層
51 第1反射層
52 第2反射層
6 保護層
Claims (6)
- 基体上に、第1誘電体層、相変化型の記録層、第2誘電体層および反射層をこの順で有し、グルーブおよびランドの少なくとも一方を記録トラックとして、その記録トラックピッチが0.7μ m 未満である光記録媒体であって、
記録層の結晶化温度が160℃以上であり、第2誘電体層の熱伝導率が第1誘電体層の熱伝導率よりも1.2倍以上高く、
前記第1誘電体層が少なくとも2層の単位誘電体層から構成され、第1誘電体層において、前記記録層に接する単位誘電体層が、酸化クロムを主成分とし、前記記録層に接する前記単位誘電体層に隣接する単位誘電体層が、硫化亜鉛と酸化ケイ素との混合物を主成分とする光記録媒体。 - 記録層がGe、SbおよびTeを主成分とする請求項1の光記録媒体。
- 記録層が窒素を含有する請求項2の光記録媒体。
- 反射層が、Al、Ag、CuおよびAuの少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかの光記録媒体。
- 反射層が少なくとも2層から構成され、そのうち第2誘電体層と接する層が、Alを主成分とする請求項1〜4のいずれかの光記録媒体。
- 記録層の厚さが10〜18nmである請求項1〜5のいずれかの光記録媒体。
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