JP3651824B2 - 光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ビームを照射することにより記録層材料に光学的な変化を生じさせ、情報の記録、再生を行い、かつ書換えが可能である相変化型光記録ディスクなど、相変化光記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レーザービームの照射による情報の記録、再生及び消去可能な光記録媒体の一つとして、結晶−非結晶相間、あるいは結晶−結晶相間の転移を利用する、いわゆる相変化形光記録媒体がよく知られている。これは単一ビームによるオーバーライトが可能であり、ドライブ側の光学系もより単純であることを特徴とし、コンピュータ関連や映像音響に関する記録媒体として応用されている。その記録材料としては、GeTe、GeTeSe、GeTeS、GeSeS、GeSeSb、GeAsSe、InTe、SeTe、SeAs、Ge−Te−(Sn,Au、Pd)、GeTeSeSb、GeTeSb、Ag−In−Sb−Teなどがある。また、特開昭57−208648号公報に開示されているように、記録層をSiO2等の母材中に埋め込み、記録材料の不可逆的変化を抑制する記録層も提案されている。また、Ag−In−Sb−Teは、高感度でアモルファス部分の輪郭が明確な特徴を有し、マークエッジ記録用の記録層として開発されている。(特開平2−37466号、特開平2−171325号、特開平2−415581号、特開平4−141485号各公報)。
【0003】
これらの記録層を用いる光記録媒体として、反射層、第1保護層及び第2保護層を有する多層構造のものがあるが、この光記録媒体では、繰返し記録特性の改善及び繰返し記録特性とその他の特性、例えば変調度、所定の反射率等、との両立が重要な課題となる。
この問題に関し、記録層に窒素等を添加することが記録層の流動を抑制し繰返し記録特性の向上に寄与することが、特開平4−11336号、特開平4−10980号、特開平4−10979号、特開平4−52188号、特開平4−52189号各公報に開示されている。
【0004】
しかしながら、低価格で比較的低い記録線速を有する光記録システム、あるいはCDと再生互換性のある光記録媒体(CD−E)として使用される光記録媒体においては、なお、記録層の流動、レーザー照射時の熱衝撃による膜剥がれ、あるいは反射層に使用する金属の劣化等の問題により、繰返し記録回数は数100〜100万回のレベルに留まり、コンピューターの周辺機器等で頻繁に書き替えを行う場合には問題点があった。また、更なるドライブの低価格化のためには記録感度の向上が要求されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであって、本発明の第一の目的は、10m/s以下の比較的低い記録線速における記録において、記録感度に優れた光記録媒体を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、比較的低い記録線速における記録において、記録感度、繰返し記録特性に優れた光記録媒体を提供することにある。更なる本発明の目的は、上記の記録において、変調度などの光学的性質に優れた、繰返し再生時の信頼性の向上した、あるいは長期保存時の特性安定化の向上した光記録媒体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第一に、案内溝を有する基板上に第1保護層、記録層、第2保護層及び反射放熱層を有する光記録媒体において、該記録層がレーザービームの照射による昇温・冷却プロセスにより非晶質状態から結晶状態へ可逆的に変化する性質を有し、かつAg、In、Sb、Te及び該記録層の熱伝導率を変化させる特徴を有する単数又は複数の添加元素を有し、しかも該記録層中の該添加元素の膜厚方向の濃度に分布を持たせてなることを特徴とする光記録媒体が提供される。
第二に、前記添加元素が窒素である上記第一に記載した光記録媒体が提供される。
第三に、前記記録層の第1及び/又は第2保護層との界面部分以外の窒素の濃度が2〜10at.%の範囲にある上記第二に記載した光記録媒体が提供される。
第四に、前記添加元素が酸素である上記第一に記載した光記録媒体が提供される。
第五に、前記添加元素が酸素に更にSi、Al、Ca、及びMgの少なくとも1種を加えたものからなる上記第四に記載した光記録媒体が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の第一は、案内溝を有する基板上に第1保護層、記録層、第2保護層及び反射放熱層を有するものである。基板はポリカーボネート等の樹脂、あるいはガラスなどの透明体で、トラッキングサーボのための案内溝を有している。第1保護層、第2保護層は、ZnS・SiO2、AlN等の公知の誘電体より選択され、所定の屈折率を有している。反射放熱層は、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Pt、Fe、Cr、Ni、Si等の金属又は半導体、あるいはこれらの合金(微量のその他の添加元素を含む;例えばAl合金におけるTi、N等)等、公知の反射放熱層が使用される。
【0008】
記録層はAg−In−Sb−Te系の材料からなり、その上この記録層の熱伝導率を変化させる単数又は複数の添加元素を有している。添加元素が複数の場合、化合物あるいは固溶体の形で添加してもより。そして、この添加元素の膜厚方向の濃度に分布を持たせている。添加元素の界面部分の濃度は、その他の部分と比較して変化しており、界面付近の熱伝導率は低くなっている。添加元素の種類及び濃度は、記録層の光学的、あるいは相変化特性が許容する限り、任意である。記録層の膜厚は8〜200nmの範囲にある。本発明における界面部分の範囲は、記録層膜厚にも依存するが、少なくとも、記録層の保護層側の1nmを含む領域である。
【0009】
本発明の第二による光記録媒体は、本発明の第一において、添加元素を窒素としている。
本発明の第三による光記録媒体は、本発明の第二において、記録層の第1保護層及び/又は第2保護層との界面部分以外の窒素の濃度が2〜10at.%の範囲にある。
本発明の第四による光記録媒体は、本発明第一において、添加元素を酸素としている。
本発明の第五による光記録媒体は、本発明の第四において、酸素に加え、Si、Al、Ca又はMg、あるいは、これらの組合わせを添加元素として付加している。
【0010】
[作用]
本発明の第一による光記録媒体では、Ag−In−Sb−Te系の記録層において、記録層の熱伝導率を変化させる添加元素を用いている。このため、光学特性にあまり影響を与えずに、熱伝導率を変化させることができる。熱伝導率が変化する詳細な機構は不明であるが、バルク材としての熱伝導率を変化させる効果と、界面の熱伝導、例えば、粒界での熱伝導、あるいは、濡れ性の変化による保護層との接触面積の変化を添加元素がもたらすという効果がある。本発明における界面の熱伝導率は直接的な測定が困難な場合もあるが、記録層の添加元素により、記録感度の向上等の界面部分の熱伝導率変化に対応する光ディスク特性向上が認められる場合には、本発明に該当する。なお、濡れ性は保護層材料にも依存し変化する。
【0011】
本発明の第二による光記録媒体では、Ag−In−Sb−Te系の記録層に窒素が添加されている。保護層との界面付近の窒素濃度は、記録層内部より高い。Ag−In−Sb−Te−N系では、初期結晶化及び繰返し記録に伴うNの膜厚方向への拡散が顕著ではなく、多数回の繰返し記録においても、界面の熱伝導率を低くする効果が持続する。更に、
この添加元素は、記録層の結晶粒径の微細化という副次的効果が有り、繰返し書込みにおける粗大結晶粒の成長、あるいは特開平4−11336号、特開平4−10980号、特開平4−10979号、特開平4−52188号、特開平4−52188号各公報に開示されている記録層の流動の抑制等に寄与す。
【0012】
本発明の第三による光記録媒体では、記録層の第1及び/又は第2保護層との界面部分以外の窒素の濃度が2〜10at.%の範囲にある。この組成領域は、再生光による結晶化の抑制に効果がある。なお、記録層の界面部分はこれ以上の窒素濃度を有している。
【0013】
本発明の第四による光記録媒体では、添加元素を酸素としている。窒素の場合と同様の効果があるが、特に長期保存時の安定性に優れている。
本発明の第五による光記録媒体では、添加元素が酸素に加え、Si、Al、Ca、又はMg、あるいはこれらの組合わせを添加元素とする。これにより繰返し記録時の記録層の構造が安定化する。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により本発明を図面に沿って具体的に説明する。
【0015】
図1は、本発明の第一による光記録媒体にかかる一実施例の断面を示す概略図である。
図示されない案内溝を有するポリカーボネート基板1上に、ZnS(80mol%)・SiO2(20mol%)からなる第1保護層2がある。そして、第1保護層2上に、AgInSbTe(15:10:45:30at.%)からなる下部記録層11、AgInSbTe(15:10:45:30at.%)にAuが添加された主記録層12、AgInSbTe(15:10:45:30at.%)からなる上部記録層13が積層され、記録層10を構成している。Auを数〜30at.%添加することにより、熱伝導率は低下する。更に、この上部記録層13上に、第2保護層3、Al−Siからなる反射放熱層4が順次積層されている。また、必要に応じ、その上に環境保護層が付加される。
【0016】
各層の膜厚について言うと、第1保護層の膜厚範囲は30〜300nmであり、光学的な干渉を考慮にいれて最適化される。反射放熱層4、第2保護層3、下部記録層11、上部記録層13の膜厚は、所定の記録線速に対応し、適切な主記録層12の冷却速度が得られるように最適化される。また主記録層12の膜厚は、変調度が適切な膜厚範囲を選択する。例えば、記録線速2.8m/s、記録波長780nmの場合、反射放熱層4は100nm、第2保護層3は40nm、下部記録層11は5nm、主記録層12は20nm、上部記録層13は5nmである。本発明では、主記録層の熱伝導率が適度に上昇し、界面部分との熱伝導率のバランスが適切なものとなる。このため、主記録層の膜厚を20nm程度と、光学的に良好な膜厚で適切は冷却速度を得ることができる。
【0017】
図2(a)は、本発明の第二による光記録媒体の実施例(2−a)の概略を示す断面図である。CD−Eに対応するポリカーボネート基板1上に、ZnS(80mol%)・SiO2(20mol%)からなる第1保護層2がある。そして、第1保護層2上に、下部記録層11、主記録層12、上部記録層13が順次積層され、記録層10を構成している。下部記録層11及び上部記録層13にはNが添加されている。更に、この上部記録層13上に、第2保護層3、Al−Si反射放熱層4、環境保護層5が順次積層されている。各層の膜厚は、第1保護層2は200nm、反射放熱層4は100nm、第2保護層3は30nm、下部記録層11は2nm、主記録層12は15nm、上部記録層13は2nmである。成膜方法はArガス雰囲気中のスパッタ法であり、上部記録層13及び下部記録層11には成膜時に窒素ガスを導入することにより窒素が添加されている。下部記録層11及び上部記録層12形成時の窒素ガス導入量は4sccmで、膜中の窒素濃度は約10at.%である。
図2(b)及び(c)に本発明の第二にかかる実施例の別形態の概略図をそれぞれ示す。窒素導入量は上記実施例と同一であるが、図2(b)に示す実施例(2−b)では、下部記録層が無く、主記録層12の膜厚が17nmに変更されている。また、図2(c)に示す実施例(2−c)では、上部記録層13が無く、主記録層12の膜厚は17nmである。即ち、第1保護層2又は第2保護層3との界面部のみに窒素濃度が高い記録層が存在する構成と成っている。
【0018】
図3(a)、(b)に、本発明の第二にかかる3実施例によるCD−E光記録媒体の繰返し記録後(オーバーライト回数:1000回)の3Tジッタの記録パワー依存性、及び変調度の記録パワー依存性を示す。なお、記録信号はEFMランダムパターン(8.64MHz)で、記録再生線速は2.8m/sである。また、図3には比較のため、下部記録層11及び上部記録層13の無い比較用サンプル(その他は同一の作製条件)のデータが併記されている。記録線速2.8m/sでの変調度は、第1及び主記録層が無い光記録媒体と比較し、大幅に向上する。この効果は上部記録層13又は下部記録層11が無い実施例にも存在する。
なお、上記実施例では上部保護層3及び/又は下部保護層2の窒素流量は4sccmであるが、これ以外の窒素流量の範囲でもよい。ここで、上記の効果は、窒素流量の増加とともに、また、上部記録層13及び/又は下部記録層11の膜厚の増加とともに強くなる。また、上部記録層13と下部記録層11の成膜時の窒素流量を異なる値としてもよい。
【0019】
更に、記録層の第1及び/又は第2保護層との界面部分の添加元素の濃度が、15at.%以上である場合には、記録層界面部の熱伝導率の変化が特に顕著である。この結果、記録層の冷却プロファイルが改善され、変調度が向上する。そして更に、添加元素の副次的な効果により、界面部分の結晶化が特に抑制され、通常の記録・消去プロセスでは、界面部分の結晶化は抑制される。結果として、界面部分には結晶化・アモルファス化のサイクルによるダメージが緩和され、界面部分の構造は安定となる。このため、界面に沿った記録層の流動や剥離を抑制し、高度に繰返し記録特性が向上する。なお、本実施例では2層又は3層構造の記録層を使用したが、これに替わり、窒素濃度が膜厚方向に連続的に変化する記録層を使用しても良い。
【0020】
図4は、本発明の第三による光記録媒体の実施例の概略を示す断面図である。案内溝を有するポリカーボネート基板1上に、ZnS(60mol%)・ZnO(30mol%)・SiO2(10mol%)からなる第1保護層2がある。そして、第1保護層2上に、
主記録層12、上部記録層13が順次積層され、記録層10を構成している。主記録層12の窒素濃度は上部記録層13の窒素濃度より低いが、2at.%以上である。更に、この上部記録層13上に、AlNからなる第2保護層3、Al−Ti反射放熱層4、環境保護層5が順次積層されている。主記録層中の窒素濃度が2at.%を上回る領域でAg−In−Sb−Te−N記録膜の結晶化が適度に抑制され、読み取り時のレーザービーム照射による記録状態の劣化を効果的に抑制することができる。なお、窒素濃度が過大な場合には、記録時の消去(結晶化)が困難となる。更に、初期結晶化という観点からは、主記録層は結晶化容易であることが好ましく、初期化の生産性を維持する上で、この窒素濃度は低濃度であることが好ましい。このため、適度な窒素濃度は2at.%以上、10at.%以下の範囲にある。なお、主記録層の窒素添加は、この熱伝導率の変化を適度にもたらす。
【0021】
図5は、本発明の第四による光記録媒体の実施例の概略を示す断面図である。案内溝を有するポリカーボネート基板1上に、ZnS(80mol%)・SiO2(20mol%)からなる第1保護層2がある。そして、第1保護層2上に、主記録層12、上部記録層13が順次積層され、記録層10を構成している。主記録層及び上部記録層には、Oが添加されている。この上部記録層13上に、AlNからなる第2保護層3、Al−Ti反射放熱層4、環境保護層5が順次積層されている。下部記録層11中の酸素の効果により、熱伝導率が低下する。詳細な理由は不明であるが、酸素の効果により長期保存時の記録性が安定化する。更にまた、Si、Al、Ca又はMg、あるいはこれらの組合わせを添加元素とすれば、繰返し記録時の膜の、膜厚方向の構造が安定化する。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、前記第一に記載した構成によれば、比較的低い記録線速における記録において、記録感度、繰返し記録特性に優れた光記録媒体が得られる。
更に、前記第二に記載した構成によれば、前記第一に記載した構成から得られる光記録媒体に、更に変調度などの光学特性が向上するという効果が加わる。
更に、前記第三に記載した構成によれば、前記第二に記載した構成から得られる光記録媒体に、更に繰返し再生時の信頼性が向上するという効果が加わる。
更にまた、前記第四に記載した構成によれば、前記第一に記載した構成から得られる光記録媒体に、更に長期保存時の特性が安定化するという効果が加わる。
更にまた、前記第五に記載した構成によれば、前記第四に記載した構成から得られる光記録媒体に、更に繰返し記録特性が向上し、かつ長期保存時の特性が安定化するという効果が加わる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一の光記録媒体の一実施例を示す概略断面図である。
【図2】 (a)〜(c)は本発明の第二の光記録媒体の三実施例を示す概略断面図である。
【図3】 本発明の第二の光記録媒体の三実施例及び一比較例についての、(a)は繰返し記録後
の3Tジッタの、(b)は変調度の、それぞれの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図4】 本発明の第三の光記録媒体の一実施例を示す概略断面図である。
【図5】 本発明の第四の光記録媒体の一実施例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 第1保護層
3 第2保護層
4 反射放熱層
5 環境保護層
10 記録層
11 下部記録層
12 主記録層
13 上部記録層
Claims (5)
- 案内溝を有する基板上に第1保護層、記録層、第2保護層及び反射放熱層を有する光記録媒体において、該記録層がレーザービームの照射による昇温・冷却プロセスにより非晶質状態から結晶状態へ可逆的に変化する性質を有し、かつAg、In、Sb、Te及び該記録層の熱伝導率を変化させる特徴を有する単数又は複数の添加元素を有し、しかも該記録層中の該添加元素の膜厚方向の濃度に分布を持たせてなることを特徴とする光記録媒体。
- 前記添加元素が窒素である請求項1記載の光記録媒体。
- 前記記録層の第1及び/又は第2保護層との界面部分以外の窒素の濃度が2〜10at.%の範囲にある請求項2記載の光記録媒体。
- 前記添加元素が酸素である請求項1記載の光記録媒体。
- 前記添加元素が酸素に更にSi、Al、Ca、及びMgの少なくとも1種を加えたものからなる請求項4記載の光記録媒体。
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