JP4047551B2 - 相変化光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ビームの照射により情報の記録・再生・消去が可能な相変化光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ビームを照射して情報の記録再生を行う光ディスクは、可搬型の大容量・高速アクセス・長寿命の記録媒体として、画像・音声ファイル、計算機用データファイル等に幅広く応用されており、今後ともその大容量化が期待されている。光ディスクの中で、相変化光記録媒体は、レーザ光照射による相変化によって生じる反射率差または反射光位相差を利用した記録消去可能な光学的情報記録媒体であり、オーバライトが容易な事、光学系の構成が単純で低価格の装置が製造しやすい事、再生専用型光ディスクとの互換性が取りやすい事、などの特長から、CD-RW,DVD-RAM,DVD-RW等として実用化されている。
【0003】
相変化媒体の基本的な層構成は、光入射側から、第一干渉層、記録層、第二干渉層、反射層からなる。干渉層と反射層は、媒体中での光の多重干渉を利用して非晶質状態と結晶状態の光学コントラストを助長する機能、記録膜の酸化を防止する機能、オーバライト繰返しによる記録膜の劣化を防止する機能を担う。この基本構成の改良版の一つとして、記録層の上下に結晶化促進層を形成する技術が開示されている(特開平10-289478)。
【0004】
相変化記録媒体の記録層材料としては、カルコゲン化合物が用いられており、Ge-Sb-Te系、Ag-In-Sb-Te系の合金薄膜等が実用化されている。Ge-Sb-Te系は、組成により金属間化合物になる場合と共晶になる場合があるのに対し、Ag-In-Sb-Te系は、いずれの組成域においても共晶のみである。両系とも共晶は、Sb-Te共晶を基本としている。このSb-Te共晶では、Sb70Te30共晶組成近傍を利用したものが数多く試みられている。しかし、共晶点近傍の組成では、結晶化速度は相分離のための原子の拡散速度によって制限されるため、拡散速度が最大となる融点直下まで加熱しないと結晶化による高速消去ができない。そのため、Ge-Sb-Te系金属間化合物であり、現在、広く利用されているGeTe-Sb2Te3擬似二元合金組成近傍の記録層に比べて、高速の結晶化が可能な温度範囲が狭く、かつ高温側に偏っている。Sb-Te共晶系の好ましい組成範囲に関しては、SbxTe1-x(0.6≦x≦0.85)と開示されており、Sbが多くなると急冷状態で析出するSbクラスタサイトが増え、結晶核生成が促進されるため非晶質-結晶相変化による記録消去を高速に行うことが可能であると考えられている。しかしながら、Sb-Te共晶組成のみでは非晶質状態の熱安定性に問題があることから、Sb-Te共晶組成に第三元素を添加し熱安定性を改善する試みが行われている(特開平9-161316)。ここで言う熱安定性とは非晶質マークの経時安定性のことである。Geを添加することでSb-Te共晶合金の非晶質状態における熱的安定性を改善できることが開示されている(特開平10-112028)。
【0005】
近年、相変化記録媒体を用いた二層ディスクの開発が行われている。二層ディスクでは、光入射側に2層の記録層があり、一層ディスクの層構成を2回繰り返したような層構成となっている。そのため、二層ディスクでは光入射側から奥にある記録層に記録・再生・消去を行う場合、手前にある記録層をレーザ光が透過する必要がある。従って、手前にある記録層はできるだけ薄くし、光透過率を高める必要がある(第12回相変化記録研究会シンポジウム講演概要集 p90-95)。しかし、一般的に記録層を薄くすると結晶核が少なくなり結晶成長が抑制され消去率が低下するという問題がある。また、記録層を薄くするとエネルギー吸収量が低下してしまうため感度の高度化が要求される。
【0006】
上記技術(特開平10-112028)では、Sb/Te比を大きくし、消去率を保持したSb-Te共晶組成にGeを添加することで共晶合金の非晶質状態での熱安定性を高め、非晶質マークの経時安定性を高めている。しかし、我々の研究では、高い消去率が得られるSb/Te比の組成域は、共晶組成よりもSb/Te比の大きい組成域でしか得られない事が分かった。そのため、上述したように、記録層の薄膜化により消去率が低下した場合など、消去率の改善を必要とする場合にはSb/Te比をさらに大きくする必要がある。ところが、Sb/Te比を大きくすると非晶質マーク形成が困難となってしまい、Ge添加量を調整しても十分な非晶質マークを形成する事が不可能である。また、Sb/Te比を大きくしGe添加量を増やすと結晶化温度ならびに融点が上昇してしまい、感度が低下してしまう。この感度低下は、特に、二層ディスクなど記録膜の薄膜化が必要な際にレーザーパワーを高出力にしなければならないなど問題となる。以上説明した通り、記録膜が薄くない時は、高い消去率が得られる組成域が狭かった。さらに、記録膜が薄い時は、非晶質の安定性と消去率特性の向上、高感度化を両立するGeSbTe共晶組成は存在しなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、Sb/Te比を大きくし消去率を保持したSb-Te共晶組成にGeを添加することで共晶合金の非晶質状態での熱安定性を高め、記録マーク形成を可能にしている。しかし、我々の研究では、高い消去率が得られるSb/Te比の組成域は、共晶組成よりもSb/Te比の大きい組成域でしか得られない事が分かった。そのため、上述したように、記録層の薄膜化により消去率が低下した場合など、消去率の改善を必要とする場合にはSb/Te比をさらに大きくする必要がある。ところが、Sb/Te比を大きくすると非晶質マーク形成が困難となってしまい、Ge添加量を調整しても十分な非晶質マークを形成する事が不可能である。また、Sb/Te比を大きくしGe添加量を増やすと結晶化温度ならびに融点が上昇してしまい、感度が低下してしまう。この感度低下は、特に、二層ディスクなど記録膜の薄膜化が必要な際にレーザーパワーを高出力にしなければならないなど問題となる。以上説明した通り、記録膜が薄くない時は、高い消去率が得られる組成域が狭かった。さらに、記録膜が薄い時は、非晶質の安定性と消去率特性の向上、高感度化を両立するGeSbTe共晶組成は存在しない、という問題があった。
【0008】
例えば、特開平02-147289には、Te-Ge-SnにSbを添加して過剰のTeを化合物として固定する技術が開示されているが、これも上記問題の解決策として十分なものではない。
【0009】
この発明の目的は、上記したような事情に鑑み成されたものであって、記録層の膜厚を十分薄くしても、非晶質状態での熱安定性及び消去率特性に優れ、且つ高感度化が可能な相変化光記録媒体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために、この発明の相変化光記録媒体は、以下のように構成されている。
【0011】
この発明の相変化光記録媒体は、組成成分比がGeyMz(SbxTe1-x)1-y-z(ただし、MはSn及びPbの少なくとも一方であり、0.60≦x≦0.85、0<y+z≦0.20,y≧1/19z)である相変化型記録層を有する。
【0012】
共晶系GeSbTe合金においてGeの一部をSn及びPbの少なくとも1種で置換する事により記録膜が薄くない時は、高い消去率が得られる組成域が広がった。さらに、記録膜が薄い時は、非晶質の安定性と消去率特性の向上、高感度化の両立が可能となった。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の一例に係る相変化光記録媒体の断面を示す図である。図1に示すように、相変化光記録媒体には、基板1、第一干渉層21、記録層3、第二干渉層22、反射層4などが積層されている。基板1は、ポリカーボネート製で、通常グルーブと呼ばれる溝や情報ピットがあらかじめその表面に形成されている。また、トラックピッチは片面15GBを可能にするため0.35μmとした。第一干渉層21、第二干渉層22にはZnS-SiO2を、記録層3にはGeyMz(SbxTe1-x)1-y-z(ただし、MはSn及びPbの少なくとも1種)共晶合金を、反射膜4にはAl系よりも熱伝導率が高く、急冷可能なAg96Pd2Cu2を用いた。記録層組成はx,y,zをパラメータにして幅広い範囲で細かく変えながら作製した。また、各層の膜厚も光学的・熱的な挙動を考慮し数種類変えた。
【0015】
各層はマグネトロンスパッタリング法にて順次積層し、成膜後、対向基板と貼り合せディスクを作製した。このディスクを初期化後、光ディスク評価装置(レーザ波長405nm、NA0.65)を用いて評価を行った。マーク長は、8/16変調の11Tに相当する0.92μmとした。線速は、次世代ビデオレコーディングシステム等に十分な転送速度である48Mbpsに相当する8m/sを選んだ。評価方法は、まず0.92μmの単一周波数のマーク列を記録して45dB以上のCNR値が得られている事を確認した後、消去パワーを与えDC消去を行い消去前と消去後のキャリアレベル差(消去率:ER)を調べた。また、熱安定性についても評価を行った。
【0016】
本発明の記録層の組成範囲を図2に示す。記録層として図2の組成範囲を用いて、上記の方法でディスクを作製、光ディスク評価を行った結果を説明する。記録層の膜厚は5nmとした。
【0017】
まず、Geの一部をSnで置換した時の結果を説明する。図3,4は、それぞれGe,Sn組成を一定とした時の11T-CNR,ERのSb/Te依存性を評価したものである。図3は、Ge0.15Sn0.05(SbxTe1-x)0.8のxを変化させた時、つまりSb/Te比を変えたときの11T-CNRとERの結果である。0.60≦x≦0.85において11T-CNR,ERともに良好な値が得られている。しかし、Sb/Te比が増えるに従って、熱的に不安定になりCNRが低下した。x>0.85ではその傾向が顕著となり、十分な非晶質マークを形成する事ができなかった。x<0.60の時には、Sbクラスターの数が不足し、Snで置換してもERの改善が見られなかった。図4は、Ge0.03Sn0.02(SbxTe1-x)0.95のxを変化させた時、つまりSb/Te比を変えたときの11T-CNRとERの結果であるが、こちらも図3同様に0.60≦x≦0.85において11T-CNR,ERともに良好な値が得られている。x>0.85では、十分な非晶質マークを形成する事ができず、x<0.60の時には、Snで置換してもERの改善が見られなかった。
【0018】
図5〜8は、それぞれの組成においてGeの一部をSnで置換し、その置換量を変化させた時の11T-CNR,ERの結果である。図5は、Sb/Te比が5.67(85/15)であるGe0.2(Sb0.85Te0.15)0.8を基準に、GeをSnで置換した場合の、置換量z(Ge0.2-zSnz(Sb0.85Te0.15)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。Geを置換していない組成を記録膜に使用した時には、図5のSn置換量0at%のようにCNRは高い値を示しているもののERは低くなっている。Geの一部をSnで置換していくと置換量1at%でERがかなり改善され、置換量を2at%とすると良好な結果が得られた。また、Sn置換量を3at%以上に増やすとより一層の改善が見られた。しかし、置換量を多くしすぎると、CNRは高い値を示すものの融点が下がり、Sn置換量が19at%を越えるとCNRが減少してしまった。y+z>0.2の時は、結晶化温度及び融点が高くなり、十分な非晶質マークを形成する事ができなかった。図6は、Sb/Te比が5.67(85/15)であるGe0.05(Sb0.85Te0.15)0.95を基準に、GeをSnで置換した場合の、置換量z(Ge0.05-zSnz(Sb0.85Te0.15)0.95)とCNRおよびERの関係を示す図である。図5同様に、Geを置換していない組成を記録膜に使用した時には、図6のSn置換量0at%のようにCNRは高い値を示しているもののERは低くなっている。Geの一部をSnで置換していくと置換量1at%でERがかなり改善され、良好な結果が得られた。しかし、Sn置換量が5at%付近になるとERは高い値を示すものの図5同様、融点が下がり、CNRが減少してしまった。図7は、Sb/Te比が1.5であるGe0.2(Sb0.6Te0.4)0.8を基準に、GeをSnで置換した場合の、置換量z(Ge0.2-zSnz(Sb0.6Te0.4)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。Geを置換していない組成を記録膜に使用した時には、図7のSn置換量0at%のようにCNRは高い値を示しているもののERは低くなっている。Sb/Te比が4.0の時と同様の結果が得られ、Geの一部をSnで置換していくと置換量1at%でERがかなり改善され、置換量を2at%とすると良好な結果が得られた。また、Sn置換量を3at%以上に増やすとより一層の改善が見られた。しかし、置換量を多くしすぎると、CNRは高い値を示すものの融点が下がり、Sn置換量が19at%を越えるとCNRが減少してしまった。図8は、Sb/Te比が1.5であるGe0.05(Sb0.6Te0.4)0.8を基準に、GeをSnで置換した場合の、置換量z(Ge0.05-zSnz(Sb0.6Te0.4)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。Sb/Te比が5.67の時と同様の傾向が見られ、Geを置換していない組成を記録膜に使用した時には、図8のSn置換量0at%のようにCNRは高い値を示しているもののERは低くなっている。Geの一部をSnで置換していくと置換量1at%でERがかなり改善され、良好な結果が得られた。しかし、Sn置換量が5at%付近になるとERは高い値を示すものの図5同様、融点が下がり、CNRが減少してしまった。
【0019】
また、非晶質状態での熱安定性についても評価を行った。評価方法は、上記の光ディスク評価装置を用いて3T非晶質マークを形成し、同一部分を1 トラックジャンプ(track jump)により連続1000回再生し、その前後でCNRの劣化を測定した。なお、読み出し時のレーザーパワーPrは0.8mWとした。記録層には熱安定性が問題となるSb/Te比が大きな組成を用い、膜厚は、5nmとした。比較した組成は、Ge0.15Sn0.05(Sb0.85Te0.15)0.08,Ge0.04Sn0.01(Sb0.85Te0.15)0.95,Ge0.2(Sb0.85Te0.15)0.08,Ge0.05(Sb0.85Te0.15)0.95である。GeをSnで置換したディスクでは、読み出し前後でCNRに殆ど変化は見られなかったのに対し、Snで置換していないディスクでは、1000回読み出し後に十分なCNRを得る事ができなかった。
【0020】
次に、Geの一部をPbで置換した時の結果を説明する。図9,10は、それぞれGe,Pb組成を一定とした時の11T-CNR,ERのSb/Te依存性を評価したものである。図9は、Ge0.15Pb0.05(SbxTe1-x)0.8のxを変化させた時、つまりSb/Te比を変えたときの11T-CNRとERの結果である。0.60≦x≦0.85において11T-CNR,ERともに良好な値が得られている。しかし、Sb/Te比が増えるに従って、熱的に不安定になりCNRが低下した。x>0.85ではその傾向が顕著となり、十分な非晶質マークを形成する事ができなかった。x<0.60の時には、Sbクラスターの数が不足し、Pbで置換してもERの改善が見られなかった。図10は、Ge0.03Pb0.02(SbxTe1-x)0.95のxを変化させた時、つまりSb/Te比を変えたときの11T-CNRとERの結果であるが、こちらも図9同様に0.60≦x≦0.85において11T-CNR,ERともに良好な値が得られている。x>0.85では、十分な非晶質マークを形成する事ができず、x<0.60の時には、Pbで置換してもERの改善が見られなかった。
【0021】
図11〜14は、それぞれの組成においてGeの一部をPbで置換し、その置換量を変化させた時の11T-CNR,ERの結果である。図11は、Sb/Te比が5.67(85/15)であるGe0.2(Sb0.85Te0.15)0.8を基準に、GeをPbで置換した場合の、置換量z(Ge0.2-zPbz(Sb0.85Te0.15)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。Geを置換していない組成を記録膜に使用した時には、図5同様にCNRは高い値を示しているもののERは低くなっている。Geの一部をPbで置換していくと置換量1at%でERがかなり改善され、置換量を2at%とすると良好な結果が得られた。また、Pb置換量を3at%以上に増やすとより一層の改善が見られた。しかし、置換量を多くしすぎると、CNRは高い値を示すものの融点が下がり、Pb置換量が19at%を越えるとCNRが減少してしまった。図12は、Sb/Te比が5.67(85/15)であるGe0.05(Sb0.85Te0.15)0.95を基準に、GeをPbで置換した場合の、置換量z(Ge0.05-zPbz(Sb0.85Te0.15)0.95)とCNRおよびERの関係を示す図である。図5同様に、Geを置換していない組成を記録膜に使用した時には、CNRは高い値を示しているもののERは低くなっている。Geの一部をPbで置換していくと置換量1at%でERがかなり改善され、良好な結果が得られた。しかし、Pb置換量が5at%付近になるとERは高い値を示すものの、融点が下がり、CNRが減少してしまった。図13は、Sb/Te比が1.5であるGe0.2(Sb0.6Te0.4)0.8を基準に、GeをPbで置換した場合の、置換量z(Ge0.2-zPbz(Sb0.6Te0.4)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。Geを置換していない組成を記録膜に使用した時には、CNRは高い値を示しているもののERは低くなっている。Sb/Te比が1.5の時と同様の結果が得られ、Geの一部をPbで置換していくと置換量1at%でERがかなり改善され、置換量を2at%とすると良好な結果が得られた。また、Pb置換量を3at%以上に増やすとより一層の改善が見られた。しかし、置換量を多くしすぎると、CNRは高い値を示すものの融点が下がり、Pb置換量が19at%を越えるとCNRが減少してしまった。図14は、Sb/Te比が1.5であるGe0.05(Sb0.6Te0.4)0.8を基準に、GeをPbで置換した場合の、置換量z(Ge0.05-zPbz(Sb0.6Te0.4)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。Sb/Te比が5.67の時と同様の傾向が見られ、Geを置換していない組成を記録膜に使用した時には、CNRは高い値を示しているもののERは低くなっている。Geの一部をPbで置換していくと置換量1at%でERがかなり改善され、良好な結果が得られた。しかし、Pb置換量が5at%付近になるとERは高い値を示すものの図8同様、融点が下がり、CNRが減少してしまった。
【0022】
また、非晶質状態での熱安定性についても評価を行った。評価方法は、Sn添加と同様である。記録層には熱安定性が問題となるSb/Te比が大きな組成を用い、膜厚は、5nmとした。比較した組成は、Ge0.15Pb0.05(Sb0.85Te0.15)0.08,Ge0.04Pb0.01(Sb0.85Te0.15)0.95,Ge0.2(Sb0.85Te0.15)0.08,Ge0.05(Sb0.85Te0.15)0.95である。GeをPbで置換したディスクでは、読み出し前後でCNRに殆ど変化は見られなかったのに対し、Pbで置換していないディスクでは、1000回読み出し後に十分なCNRを得る事ができなかった。
【0023】
以上、Geの一部をSnあるいはPbで置換し、記録層の膜厚を5nmとした時の結果を示したが、Geの一部をSn,Pb両元素で置換した場合も同様の結果が得られた。また、記録層の膜厚を10nm,15nm,20nmとした時も同様の結果が得られた。
【0024】
このような効果が得られた理由は、Sn,PbはGeと同族であり、両元素とも非晶質の安定化に効果がある事、また、非晶質マークを結晶化させる際には、Sn-Te相あるいはPb-Te相がいち早く生成しこれらが結晶の核となり、結晶成長が起こり非常に高速の消去が可能になったためである。このため、共晶系GeSbTe合金においてGeの一部をSnあるいはPbの少なくとも1種で置換する事により記録膜が薄くない場合には高い消去率が得られる組成域が広がった。さらに、記録膜が薄い場合も非晶質の安定性と消去率特性の向上、高感度化の両立が可能となった。
【0025】
本発明は、干渉層としてはZnS-SiO2使用したが、Ta-O,Si-N,Al-O,Al-N等を使用する事も可能である。反射膜もAgPdCu以外にAlTi,AlMo等を用いても本発明を適用すれば同等の効果が得られる。
【0026】
また、本発明では特に媒体各層の膜厚を限定していないが、記録時に結晶成長の起こる温度帯を速やかに通過すると共に、消去時に核生成の起こる温度帯に長く保持される上では、光入射面側からの順番で、記録膜厚が5-30nm、第二干渉膜厚が40nm以下とするのが良い。この様にする事で特に記録時の過度な結晶成長を効率良く防止する事が出来る。さらに好ましくは、記録膜厚が5-20nm、第二干渉膜厚を5-40nmとするのが良く、この様にする事で効率良く核生成温度帯での保持時間を長くでき、EERを高い値に保持可能となる。これにより、例えば、5-10nmのような極めて薄い記録膜厚のものを実用化できる。
【0027】
本発明は、基本的に相変化記録媒体の好適な記録層の組成範囲を規定するものであり、上記実施例では記録層以外には、干渉層と反射層とを具備する実施形態について説明したが、これらの他に、結晶化を促進させる為の層、吸収率比を調整する為の層などが付与されていても構わない。
【0028】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0029】
【発明の効果】
この発明によれば、記録層の膜厚を十分薄くしても、非晶質状態での熱安定性及び消去率特性に優れ、且つ高感度化が可能な相変化光記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例に係る相変化光記録媒体の断面を示す図である。
【図2】本発明の一例に係る相変化光記録媒体の記録層の組成範囲を示す図である。
【図3】 Ge0.15Sn0.05(SbxTe1-x)0.8のxを変化させた時、つまりSb/Te比を変えたときの11T-CNRとERの結果を示す図である。
【図4】 Ge0.03Sn0.02(SbxTe1-x)0.95のxを変化させた時、つまりSb/Te比を変えたときの11T-CNRとERの結果を示す図である。
【図5】 Sb/Te比が5.67(85/15)であるGe0.2(Sb0.85Te0.15)0.8を基準に、GeをSnで置換した場合の、置換量z(Ge0.2-zSnz(Sb0.85Te0.15)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。
【図6】 Sb/Te比が5.67(85/15)であるGe0.05(Sb0.85Te0.15)0.95を基準に、GeをSnで置換した場合の、置換量z(Ge0.05-zSnz(Sb0.85Te0.15)0.95)とCNRおよびERの関係を示す図である。
【図7】 Sb/Te比が1.5であるGe0.2(Sb0.6Te0.4)0.8を基準に、GeをSnで置換した場合の、置換量z(Ge0.2-zSnz(Sb0.6Te0.4)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。
【図8】 Sb/Te比が1.5であるGe0.05(Sb0.6Te0.4)0.8を基準に、GeをSnで置換した場合の、置換量z(Ge0.05-zSnz(Sb0.6Te0.4)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。
【図9】 Ge0.15Pb0.05(SbxTe1-x)0.8のxを変化させた時、つまりSb/Te比を変えたときの11T-CNRとERの結果を示す図である。
【図10】 Ge0.03Pb0.02(SbxTe1-x)0.95のxを変化させた時、つまりSb/Te比を変えたときの11T-CNRとERの結果を示す図である。
【図11】 Sb/Te比が5.67(85/15)であるGe0.2(Sb0.85Te0.15)0.8を基準に、GeをPbで置換した場合の、置換量z(Ge0.2-zPbz(Sb0.85Te0.15)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。
【図12】 Sb/Te比が5.67(85/15)であるGe0.05(Sb0.85Te0.15)0.95を基準に、GeをPbで置換した場合の、置換量z(Ge0.05-zPbz(Sb0.85Te0.15)0.95)とCNRおよびERの関係を示す図である。
【図13】 Sb/Te比が1.5であるGe0.2(Sb0.6Te0.4)0.8を基準に、GeをPbで置換した場合の、置換量z(Ge0.2-zPbz(Sb0.6Te0.4)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。
【図14】 Sb/Te比が1.5であるGe0.05(Sb0.6Te0.4)0.8を基準に、GeをPbで置換した場合の、置換量z(Ge0.05-zPbz(Sb0.6Te0.4)0.8)とCNRおよびERの関係を示す図である。
【符号の説明】
1…基板
21…第一干渉層
3…記録層
22…第二干渉層
4…反射層
Claims (2)
- 組成成分比がGeyMz(SbxTe1-x)1-y-z(ただし、MはSnであり、0.60≦x≦0.85,0<y+z≦0.20,y≧1/19z)である相変化型記録層を有し、
前記相変化型記録層の膜厚を5nm〜10nmに設定したことを特徴とする相変化記録媒体。 - 組成成分比がGeyMz(SbxTe1-x)1-y-z(ただし、MはPbであり、0.60≦x≦0.85、0<y+z≦0.20,y≧1/19z)である相変化型記録層を有し、
前記相変化型記録層の膜厚を5nm〜10nmに設定したことを特徴とする相変化記録媒体。
Priority Applications (1)
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