JP2004249603A - 相変化型光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】相変化型光記録媒体の構成層として、例えば基板1上に(ZnS)80(SiO2)20からなる第一耐熱保護層2、Ga、In、Sb、RhおよびSnを含む合金の相変化記録材料からなる記録層3、(ZnS)80(SiO2)20からなる第二耐熱保護層4、Ag合金からなる反射放熱層5およびアクリル樹脂からなる環境保護層6を順次設ける。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁波、特にレーザ光を照射することにより、記録層材料に光学的な変化を生じさせて、情報の記録、再生、消去および書き換えが可能な、高速で大容量の高密度記録に応用される相変化型光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電磁波、特にレーザ光等の光ビームの照射により、情報の記録、再生、消去を行い書き換えるオーバーライトが可能な光記録媒体の一つとして、結晶−非結晶相間、または結晶−結晶相間の相転移を利用する、いわゆる相変化型光ディスクが知られている。この相変化型光ディスクは、単一ビームによるオーバライトが可能であり、しかもドライブ側装置の光学系が単純なために、コンピュータやAV関連の記録媒体として使用されている。
【0003】
このような相変化型光ディスクの記録材料としては、これまでGe−Te、Ge−Te−Se、In−Sb、Ga−Sb、Ge−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te等の相変化記録材料が用いられている。
特に、Ag−In−Sb−Teは、高感度で、記録マークを形成するアモルファス部の輪郭が明確であるという特徴を有し、マークエッジ記録用材料として有用であることが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。そして、既にマークエッジ記録用材料として使用されている。また、類系のAg−Sb−Te系の記録用材料に関しても開示されている(例えば、特許文献4、特許文献5参照。)。
【0004】
しかし、上記記録材料は、CD−RW(Compact Disk−Rewritable)等の比較的低い記録密度を有する記録媒体として用いられるものであり、例えばDVD(Digital Versatile Disk)RAMやDVD−RW等に適用する場合には、記録線速が3.5m/s(1倍速)程度の低速ではオーバライトは可能であるが、2倍速以上になるとオーバライト特性が劣化するという問題が発生する。
この劣化の原因は、上記相変化記録材料からなる記録材料の結晶化速度が遅いため、高記録線速下でのオーバライトが困難になるためである。
この対策として相変化記録材料中の組成分であるSbの組成量(組成比)を増加して結晶化速度を速くすることもできるが、この場合にはSb量の増加によって結晶化温度が低下してしまい、記録媒体の保存時における特性劣化が大きくなるという問題がある。
【0005】
上記保存時における特性劣化の問題を解決する方法として、Ag−In−Ge−Sb−Te系相変化合金からなる記録材料を用いることが開示されている(例えば、特許文献6参照、特許文献7参照。)。しかし、この記録材料は、記録線速が3.0m/sから20m/sの範囲ではオーバライトが可能なものであるが、更に高記録線速の場合、例えば20m/sよりも高速の場合には対応することができない。
【0006】
一方、高記録線速化用の材料としてGa−Sb系相変化記録材料が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、このGa−Sb系は、結晶化速度が極めて速いと報告されているが、結晶化温度が350℃と非常に高いため、記録材料を未記録状態とするための初期化工程における初期結晶化が困難であるという難点がある。
【0007】
更に、GaSb系相変化記録材料にMo、W、Ta、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Tl、Si、Ge、Sn、Pd、As、Bi、S、Se、Te等を添加し、特性の向上を試みたものが開示されている(例えば、特許文献8、特許文献9参照)。しかし、これらの組成からなる相変化化合物は、高速記録におけるオーバライト特性、変調度、そして保存信頼性を同時に満足するものではない。
【0008】
上記のように種々の相変化記録材料が報告されているが、いずれも書き換え可能な相変化型光記録媒体として要求される特性を全て満足し得るものとは云えなかった。特に、DVD−ROMと同様な高密度記録容量であり、しかも記録線速が更に高速化(〜35m/s)された場合に対応でき、オーバライト特性、変調度、そして保存信頼性を同時に満足するような書き換え可能な相変化型光記録媒体の開発が課題となっている。
【0009】
上記35m/sの高記録線速下でもオーバライトを可能とするためには、非晶相と結晶相との間の相転移を利用する記録媒体においては、レーザビーム径が1μmφとすると、レーザビームが35m/sの線速で回転するディスク(Disk)上の一点を横切る速度は約29nsecであり、このことから相変化記録媒体に要求される結晶化時間は29nsec程度であることが計算から求められる。更に高密度記録のDVDでは、使用する光学系のレーザ波長が650nmと従来の780nmより短くなるために、そのビーム径も1μmφより小さくなり、レーザビームが35m/sの線速で回転するディスク上の一点を横切る速度は29nsecより更に短くなる。例えば、ビーム径を0.7μmφとすると、一点を横切る時間は約20nsecとなり、このような短時間でオーバライト、即ち古いマークを消去(結晶化)して新しいマークを書き換えることが要求される。
前述の従来技術であるAg−In−Sb−Te系、Ga−Sb系、Ge−Sb−Te系においてもこの時間内での高速結晶化は可能であるが、保存信頼性や初期結晶化に問題があり、35m/sの線速で特性を全て満足できるような記録材料は無かった。
【0010】
【特許文献1】
特開平3−231889号公報
【特許文献2】
特開平4−191089号公報
【特許文献3】
特開平4−232779号公報
【特許文献4】
特開平4−267192号公報
【特許文献5】
特開平5−345478号公報
【特許文献6】
特開2000−322740号公報
【特許文献7】
特開2002−103810号公報
【特許文献8】
米国特許第4818666号明細書
【特許文献9】
米国特許第5072423号明細書
【非特許文献1】
デー・ジェー・ガベスティン(D.J.Gavestijn)、外4名、「フェイズ−チェンジ オプティカル データ ストレージ イン ガリウムアンチモナイド(Phase−change optical data storage in GaAs)」、(米国)、アプライド オプティックス(Applied Optics)、Vol.26、No.22115、November、1987
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的はDVD−ROM並に大記録容量で、記録線速が3.5m/sから35m/sの広範囲、かつ高速においても十分な変調度を確保し、オーバライトの繰り返し特性が良好で保存信頼性の高い相変化型光記録媒体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために記録媒体の記録層を構成する材料に着目して鋭意研究を重ねた結果、相変化記録材料としてGaと、Inと、Sbと、Rhと、Snとを含む相変化合金を用いたときに上記課題を解決することができるとともに、該相変化合金に加えて、Ag、Cu、Zn、Ge、Iの中から選ばれる一つの元素を添加することにより、Ag、Cu、Zn、Geの場合には保存信頼性を、そしてIの場合には高速結晶化が更に向上することを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、記録層を構成する材料として本発明では、GaSb合金の有する高速結晶化と、InSb合金の有する比較的低い結晶化温度に注目し、Gaと、Inと、Sbとを構成元素とすることにより、高速結晶化の課題とともに、GaSb合金における高い結晶化温度に基づく初期結晶化の困難さを解消した。
また、上記Ga−In−SbにSnを構成元素として加えることにより、25m/s以上の高線速下でのオーバーライトを容易にする更なる高速結晶化と、十分に高い変調度を獲得することができた。更に、Ga−In−Sb−SnにRhを添加することにより、保存信頼性とオーバーライトによる繰り返し特性の向上を実現することができた。
【0014】
上記のようなGaと、Inと、Sbと、Rhと、Snとを含む相変化記録材料(相変化合金)の高速結晶化、高い変調度、良好なオーバライトと保存特性の達成理由は、次ぎのように想定される。先ず、高速結晶化については、前述のようにGaSbがその機能を担っていると考えられる。即ち、GaSb化合物の最隣接原子間距離は、結晶と非結晶の間でほぼ同じであるため、わずかな原子の移動でアモルファス相から結晶相に転移ができるものと考えられる。
また、Inは、Gaと同族の元素であるため、GaSbと同様にInSbも高速結晶化が可能であると同時に、結晶化温度が130℃前後と低い。このため、Inを加えることによってGaSbの結晶化温度(300℃以上)を低下させることができる。更に、Snの添加により、Ga−In−Sb系記録材料の結晶化速度を一層向上させ、同時に高い変調度を得ることができる。Sn添加により高速結晶化が発現する原因は明確ではないが、Snの原子半径が比較的大きいことによるものと思われる。また、Snの添加により変調が度向上する理由については、今のところ詳細は不明である。
一方、Rhの添加により、保存信頼性とオーバーライト特性が向上するが、この保存信頼性向上の理由としては、Rhの添加によって不動態を形成し、これによって酸化反応が抑制されるためであると考えられる。また、オーバーライト特性の向上に関しては、Rhの融点が高く、これによってオーバーライト時における物質流動が抑止されるためであると考えられる。
以下、上記相変化記録材料を記録層に用いた本発明について具体的に説明する。
【0015】
請求項1の発明は、基板上に構成層として少なくとも相変化記録材料からなる記録層を設け、該記録層に電磁波を照射して可逆的相変化を起生し、情報の記録、再生、消去、書き換えを行う相変化型光記録媒体において、前記相変化記録材料が、Gaと、Inと、Sbと、Rhと、Snとを含む合金であることを特徴とする相変化型光記録媒体である。
【0016】
請求項1の構成によれば、DVD−ROM並に大記録容量で記録線速が3.5m/sから35m/sの広範囲、かつ高速においても十分な変調度特性と良好なオーバライト、およびその繰り返し特性を示し、高い保存信頼性を有する相変化型光記録媒体の提供が可能となる。
【0017】
請求項2の発明は、前記相変化記録材料の組成式をGaαInβSbγRhδSnε(但し、α+β+γ+δ+ε=100(原子%)である。)とするとき、各元素の組成比α、β、γ、δ、εがそれぞれ;6≦α≦35、5≦β≦46、45≦γ≦85、1≦δ≦5、1≦ε≦6の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の相変化型光記録媒体である。
【0018】
請求項2の構成によれば、大容量、高記録線速への対応と、十分な変調度特性、良好なオーバライトとその繰り返し特性、高い保存信頼性とを両立した相変化型光記録媒体の提供が可能となる。
【0019】
請求項3の発明は、前記相変化記録材料が更にAg、Cu、Zn、Ge、Iの中から選ばれる一つの元素を含有する合金であることを特徴とする請求項1または2に記載の相変化型光記録媒体である。
【0020】
請求項4の発明は、前記Ag、Cu、Zn、Ge、Iの中から選ばれる一つの元素を含有する合金の組成式をGaαInβSbγRhδSnεXκ(但し、式中のXはAg、Cu、Zn、Ge、Iの中から選ばれる一つの元素を表し、α+β+γ+δ+ε+κ=100(原子%)である。)とするとき、各元素の組成比α、β、γ、δ、ε、κがそれぞれ;6≦α≦35、5≦β≦46、45≦γ≦85、1≦δ≦5、1≦ε≦6、1≦κ≦5の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の相変化型光記録媒体である。
【0021】
請求項3および4の構成によれば、XがAg、Cu、Zn、Geの場合には保存信頼性が一層向上し、そしてIの場合には高速結晶化が一層向上させた相変化型光記録媒体の提供が可能となる。
【0022】
請求項5の発明は、前記構成層として、基板上に相変化記録材料からなる記録層と反射放熱層とが順に備えられ、該基板と該記録層との間および/または該記録層と該反射放熱層との間に耐熱保護層を順次設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の相変化型光記録媒体である。
【0023】
請求項6の発明は、前記反射放熱層の表面に環境保護層を設けたことを特徴とする請求項5に記載の相変化型光記録媒体である。
【0024】
請求項5および6の構成によれば、大容量、高記録線速下における、変調度確保、オーバライトの繰り返し特性維持、保存信頼性保持が達成された相変化型光記録媒体の提供が可能となる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の相変化型光記録媒体においては、基板上に構成層として記録層の他、耐熱保護層、反射層、環境保護層等を設けることができ、目的や要求特性に応じて構成層の形態が選ばれる。本発明の相変化型光記録媒体を図面を参考にして説明する。
本発明の相変化型光記録媒体は、例えば図1〜図4に示したような構成を有するものである。すなわち、基板1上に第一耐熱保護層2、記録層3、第二耐熱保護層4、反射放熱層5が順次設けられた構成(図1)とするか、あるいは図1の構成の反射放熱層5上に、更に環境保護層6が設けられた構成(図2)とすることができる。また、耐熱保護層は必ずしも記録層3の両側に設ける必要はないが、基板1がポリカーボネート樹脂のように耐熱性が低い材料の場合には、図3、図4に示すように、基板1と記録層3との間に第一耐熱保護層2を設け、記録層3と反射放熱層5との間の構成層(図1、図2における第二耐熱保護層4)を省いた構成とすることもできる。なお、これらの構成は実施の形態を説明するための例であって他の構成でもよいが、通常図2に示す構成形態が好ましい。
以下に各構成層について説明する。
【0026】
基板1に用いられる材料としては、一般にガラス、セラミックスまたは樹脂が用いられるが、樹脂製基板が、成形性、コストの点から望ましい。
樹脂の代表例としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられるが、加工性、光学特性等の点からポリカーボネート樹脂が好ましい。また、基板1の形状は、ディスク状、カード状またはシート状のいずれであってもよい。
【0027】
耐熱保護層(第一耐熱保護層2または第二耐熱保護層4)に用いられる材料としては、SiO2、ZnO、ZrO2等の金属酸化物、AlN、Si3N4、TiN等の窒化物、ZnS、In2S3、TaS3等の硫化物、SiC、TiC、ZrC等の炭化物等が挙げられる。また、耐熱保護層の形成には、各種気相成膜法(真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、光CVD、イオンプレーティング等)が用いられる。例えば、(ZnS)・(SiO2)を用いてスパッタリング法により膜形成を行うことにより耐熱保護層、すなわち誘電体層が形成される。
この誘電体層は、耐熱保護層としての機能と、光干渉層としての機能を有することから、これらの機能が最大限に発揮されるように層形成することが必要である。そのためには、膜厚を200〜3000Å、特に350〜2000Åとすることが好ましい。200Å未満の場合には耐熱保護層としての機能が失われ、一方3000Åを超えると界面剥離が生じやすくなるので好ましくない。
【0028】
記録層3に用いられる本発明の相変化記録材料は、前記のように組成式をGaαInβSbγRhδSnε(但し、α+β+γ+δ+ε=100(原子%)である。)とするとき、各元素の組成比α、β、γ、δ、εがそれぞれ;6≦α≦35、5≦β≦46、45≦γ≦85、1≦δ≦5、1≦ε≦6の範囲である。
【0029】
ここで実験によれば、αが6原子%より少ない場合、あるいはγが45原子%より少ない場合には、結晶化速度が低下し、35m/sの記録線速下でオーバライトが困難となる。一方、αが35原子%よりも多い場合、あるいはγが85原子%よりも多い場合には、オーバライトの繰り返し回数が低下する。また、βが5原子%より少ないと結晶化温度が低くならず初期結晶化が困難となり、46原子%よりも多いと保存信頼性が低下する。更に、δが1原子%より少ないと保存信頼性とオーバライト特性が低下し、5原子%より多いと反射率が低下する。そして、εが1原子%より少ないと高速結晶化に余裕がなくなり、更に変調度の確保が困難となる。εが6原子%より多くなると極めて結晶化しやすくなり保存信頼性が低下する。
【0030】
また、本発明では、Gaと、Inと、Sbと、Rhと、Snとからなる相変化合金に、Ag、Cu、Zn、Ge、Iの中から選ばれる一つの元素を加えることで、更なる保存信頼性の向上あるいは結晶化速度の向上が達成される。即ち、Ag、Cu、Zn、Geを加えた場合には、更なる保存信頼性の向上が図られ、Iを加えた場合には、結晶化速度を更に向上させて35m/sでの高線速下でも余裕のあるオーバライトが可能となる。
上記Ag、Cu、Zn、Ge、Iの中から選ばれる一つの元素を含有する合金の組成式をGaαInβSbγRhδSnεXκ(但し、式中のXはAg、Cu、Zn、Ge、Iの中から選ばれる一つの元素を表し、α+β+γ+δ+ε+κ=100(原子%)である。)とするとき、各元素の組成比α、β、γ、δ、ε、κは、それぞれ;6≦α≦35、5≦β≦46、45≦γ≦85、1≦δ≦5、1≦ε≦6、1≦κ≦5の範囲である。
この組成式において、κが1原子%より少ないと、Ag、Cu、Zn、Geの場合には更なる保存特性の向上は望めず、Iの場合には更なる高速の結晶化は難しい。また、κが5原子%より多いと、Ag、Cu、Zn、Geの場合には記録感度が低下し、またIの場合には保存信頼性が大きく低下する。
【0031】
また、本発明の前記相変化化合物を含有する記録層3は、前記気相成膜法、例えばスパッタリング法により膜形成が行われ、その膜厚は、100〜1000Å、好ましくは200〜350Åである。100Åより薄いと光吸収能が低下し、記録層としての機能を失い、1000Åより厚いと透過光が少なくなるため、干渉効果が期待できなくなる。
【0032】
反射放熱層5に用いられる材料としては、高速記録に対応できる高熱伝導性のAg、Au、Cu等の金属や合金、中でも例えばAg合金が用いられ、その膜形成は前記各種気相成膜法、例えばスパッタリング法により行うことができる。膜厚は、500Å〜2000Å、好ましくは700Å〜1500Åである。
【0033】
環境保護層6に用いられる材料としては、作業性が良く、均一な薄膜形成が可能であり、記録媒体用としての機能を満足する耐環境性の優れた材料であれば制約はないが、スピンコート等の手法によって薄膜が形成できるエポキシ樹脂やアクリル樹脂等の樹脂材料が好ましい。
【0034】
前記のように、本発明の相変化記録材料からなる記録層は、電磁波を照射することによって可逆的相変化を起生し、この相変化に伴う光学定数の変化を利用して情報の記録、再生、消去、書き換えを行うことができる。このような本発明の相変化型光記録媒体の記録、再生、消去、書き換えに用いる電磁波として、可視光、紫外線、赤外線、電子線等が使用できるが、光学系の搭載性、小型化などから特に半導体レーザ光等の光ビームが好適である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、これら実施例によって、本発明は何ら限定されるものではない。
実施例1
前記図2に示す層構成と同じにして、トラックピッチ0.7μm、溝深さ400Å、厚さ0.6mm、直径120mmφのポリカーボネート製基板1上に、第一耐熱保護層2、記録層3、第二耐熱保護層4、反射放熱層5をスパッタリング法により順次設けた。更に、反射放熱層5の上には、スピンコート法によりアクリル樹脂からなる環境保護層6を設けた。
即ち、第一耐熱保護層2として(ZnS)80(SiO2)20を厚さ700Åに、記録層3としてGa8In9Sb78Rh3Sn2を厚さ150Åに、第二耐熱保護層4として(ZnS)80(SiO2)20を厚さ300Åに、反射放熱層5としてAg合金を厚さ950Åにそれぞれ制御してスパッタリング法により各層を積層した。得られた積層構成最上層の反射放熱層5上にアクリル樹脂をスピンコートして環境保護層6を設け、評価用相変化型光記録媒体を作製した。表1に上記実施例1で作製した評価用相変化型光記録媒体の各構成層の材料組成と膜厚をまとめて示す。
【0036】
実施例2〜8
実施例1において、記録層3として用いたGa8In9Sb78Rh3Sn2に代えて、Ga24In8Sb64Rh2Sn2(実施例2)、Ga7In25Sb64Rh2Sn2(実施例3)、Ga8In8Sb78Rh3Sn2Ag1(実施例4)、Ga8In8Sb78Rh3Sn2Cu1(実施例5)、Ga8In8Sb78Rh3Sn2Zn1(実施例6)、Ga8In8Sb78Rh3Sn3Ge1(実施例7)、Ga8In8Sb78Rh3Sn2I1(実施例8)とした以外は、各構成層の材料組成と膜厚を実施例1とまったく同じにしてそれぞれの評価用相変化型光記録媒体を作製した。
表1に上記実施例2〜8で作製した評価用相変化型光記録媒体それぞれの各構成層の材料組成と膜厚をまとめて示す。
【0037】
【表1】
【0038】
比較例1〜8
実施例1において、記録層3として用いたGa8In9Sb78Rh3Sn2に代えて、Ga50Sb50(比較例1)、In50Sb50(比較例2)、Ga12Sb88(比較例3)、In32Sb68(比較例4)、Ga10In15Sb75(比較例5)、Ga9In14Sb74Rh3(比較例6)、Ga9In14Sb75Sn2(比較例7)、Ag1In3Ge2Sb78Te16(比較例8)とした以外は各構成層の材料組成を実施例1と同様にしてそれぞれの評価用相変化型光記録媒体を作製した。なお、記録層3、第二耐熱保護層4および反射放熱層5の膜厚は比較例により異なる。
表2に比較例1〜8で作製した評価用相変化型光記録媒体それぞれの各構成層の材料組成と膜厚をまとめて示す。
【0039】
【表2】
【0040】
上記実施例1〜8および比較例1〜8で得られた評価用相変化型光記録媒体は非晶質であり、評価に際して記録媒体を初期結晶化して未記録状態とした。なお、実施例1〜8および比較例2、4、5、6、7、8の各評価用相変化型光記録媒体については、高出力半導体レーザを用い、出力700mWで初期結晶化(初期化)した。比較例1および3の場合には、同レーザによる出力700mWでは初期化はうまく行かず、そのため1100mWの条件で初期化した。、
初期化の後、各評価用相変化型光記録媒体の再生信号特性、保存特性を下記により評価した。
【0041】
評価に際しては、記録線速、記録パワーをそれぞれ3.5m/s(10mW)、15m/s(16mW)、25m/s(26mW)、35m/s(36mW)に設定して行った。また、記録用レーザの波長を650nmとし、EFM(Eight Fourteen Modulation)ランダムパターンでオーバライトの繰り返しを行い、再生信号特性の評価は3T信号のジッタ値と、14T信号の変調度で行った。また、保存特性は1000回オーバライトした記録媒体を80℃、85%の温湿下で300時間保持した後の、オーバライト1000回目における3T信号のジッタ値と14T信号の変調度で評価した。実施例1〜8の評価結果を表3に、比較例1〜8の評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
表3、4から明らかなように、本発明の相変化記録材料であるGa−In−Sb−Rh−Sn系相変化合金を用いた実施例1、2および3は、いずれもオーバライト特性が良好で十分な変調度を維持し、しかも保存信頼性に優れ、初期結晶化も容易に行うことができる。このGa−In−Sb−Rh−Snの相変化記録材料に、それぞれAg、Cu、Zn、Geを加えた実施例4、5、6、7は、実施例1、2および3に比較して更に保存信頼性が向上している。また、Ga−In−Sb−Rh−Sn相変化記録材料に、Iを加えた実施例8は、3.5m/sから35m/sの広い範囲の記録速度で、極めて良好なジッタ値を有し、高線速下での相変化がうまく機能していることを示している。
【0045】
上記本発明に対して、従来技術である比較例の場合、すなわち、Ga50Sb50(比較例1)と、In50Sb50(比較例2)の化合物組成、あるいはGa12Sb88(比較例3)、In32Sb68(比較例4)の共晶組成を記録材料として用いた記録媒体は、3.5m/sから35m/sの記録速度下でのオーバライトは可能であるが、本発明の記録媒体と比較して、ジッタ値、変調度、保存信頼性、そしてオーバライト特性が劣っている。また、GaSb系は、初期結晶化が難しい。
Ga−In−Sb系(比較例5)は、Ga−Sb系の短所である初期結晶化の難しさと、In−Sb系の短所である保存信頼性を向上させるが、本発明の相変化記録材料と比較すると、全ての特性で劣っている。
また、Ga−In−Sb系にRhを添加した系(比較例6)は、オーバライト特性、保存信頼性が大きく改善されるが、高記録速度下でのジッタ値と、変調度に問題がある。
更に、Ga−In−Sb系にSnを添加した系(比較例7)は、高記録速度下でのジッタ値および変調度が大幅に改善されているが、オーバライト特性と保存信頼性が劣っている。また、Snを加えることによって初期結晶化は極めて容易となる。
一方、Ag−In−Sb−Te系(比較例8)は、記録線速が25m/s、35m/sにおいて、オーバライトが不可能であった。
【0046】
更に、比較例としては示していないが、GaSb系およびInSb系に、Cu、Ag、Zn、Ge、Sn、Ni、Ti、Pd、Au、Pt、Cr、Mn、V、Zrを加えた系についても実験し、その再生信号評価および保存信頼性評価を行ったが、本発明の相変化記録材料のように記録線速が、3.5m/sから35m/sの広い範囲で、良好な信号特性と優れた保存信頼性を両立した相変化記録材料を見出すことはできなかった。
【0047】
【発明の効果】
基板上に構成層として少なくとも相変化記録材料からなる記録層を設け、該記録層に電磁波を照射して可逆的相変化を起生し、該相変化に伴う光学定数の変化を利用して情報の記録、再生、消去、書き換えを行う相変化型光記録媒体の該相変化記録材料として、Gaと、Inと、Sbと、Rhと、Snとを含む合金を用いることにより、DVD−ROM並みに大記録容量で、かつ記録線速が3.5m/sから35m/sの広範囲にあり、しかも高速記録においても十分な変調度を確保し、オーバライトの繰り返し特性が良好で、保存信頼性に優れた相変化型光記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における本発明の相変化型光記録媒体を説明するための構成層例を示す概略断面図である。
【図2】実施の形態における本発明の相変化型光記録媒体を説明するための他の構成層例を示す概略断面図である。
【図3】実施の形態における本発明の相変化型光記録媒体を説明するための別の構成層例を示す概略断面図である。
【図4】実施の形態における本発明の相変化型光記録媒体を説明するための更に別の構成層例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 第一耐熱保護層
3 記録層
4 第二耐熱保護層
5 反射放熱層
6 環境保護層
Claims (6)
- 基板上に構成層として少なくとも相変化記録材料からなる記録層を設け、該記録層に電磁波を照射して可逆的相変化を起生し、情報の記録、再生、消去、書き換えを行う相変化型光記録媒体において、前記相変化記録材料が、Gaと、Inと、Sbと、Rhと、Snとを含む合金であることを特徴とする相変化型光記録媒体。
- 前記相変化記録材料の組成式をGaαInβSbγRhδSnε(但し、α+β+γ+δ+ε=100(原子%)である。)とするとき、各元素の組成比α、β、γ、δ、εがそれぞれ;6≦α≦35、5≦β≦46、45≦γ≦85、1≦δ≦5、1≦ε≦6の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の相変化型光記録媒体。
- 前記相変化記録材料が更にAg、Cu、Zn、Ge、Iの中から選ばれる一つの元素を含有する合金であることを特徴とする請求項1または2に記載の相変化型光記録媒体。
- 前記Ag、Cu、Zn、Ge、Iの中から選ばれる一つの元素を含有する合金の組成式をGaαInβSbγRhδSnεXκ(但し、式中のXはAg、Cu、Zn、Ge、Iの中から選ばれる一つの元素を表し、α+β+γ+δ+ε+κ=100(原子%)である。)とするとき、各元素の組成比α、β、γ、δ、ε、κがそれぞれ;6≦α≦35、5≦β≦46、45≦γ≦85、1≦δ≦5、1≦ε≦6、1≦κ≦5の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の相変化型光記録媒体。
- 前記構成層として、基板上に相変化記録材料からなる記録層と反射放熱層とが順に備えられ、該基板と該記録層との間および/または該記録層と該反射放熱層との間に耐熱保護層を順次設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の相変化型光記録媒体。
- 前記反射放熱層の表面に環境保護層を設けたことを特徴とする請求項5に記載の相変化型光記録媒体。
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2003
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