JP3654294B2 - 光学的情報記録用媒体及び情報記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、相変化型記録媒体、光磁気記録媒体等の光学的情報記録用媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報量の増大に伴い高密度でかつ高速に大量のデータの記録・再生ができる情報記録装置及びそれに適した記録媒体が求められているが、光ディスクはまさにこうした用途に応える媒体として期待されている。
光ディスクには一度だけ記録が可能な追記型と、記録・消去が何度でも可能な書き換え型がある。書き換え型光ディスクとしては、光磁気効果を利用した光磁気記録媒体や、可逆的な結晶状態の変化に伴う反射率変化を利用した相変化型記録媒体があげられる。
【0003】
相変化型記録媒体は外部磁界を必要とせず、レーザー光のパワーを変調するだけで記録・消去が可能であり、記録・再生装置を小型化できるという利点を有する。
さらに、現在主流の800nm程度の波長での記録消去可能な媒体から特に記録層等の材料を変更することなく、短波長光源による高密度化が可能であるといった利点を有する。
【0004】
相変化型記録媒体は記録層材料としてカルコゲン系合金薄膜を用いることが多く、例えば、GeSbTe系、InSbTe系、GeSnTe系、AgInSbTe系合金があげられる。層構成は通常、保護層、記録層、保護層、反射層の4層構造をとる。
書換可能な相変化型記録媒体として現在実用化されているものは、結晶状態が未記録・消去状態であり、非晶質状態が記録状態である。
【0005】
記録、すなわち非晶質マーク形成は、記録層を融点より高い温度まで加熱し急冷することによって行う。消去、すなわち結晶化は、記録層の結晶化温度よりは高く融点よりは低い温度まで記録層を加熱して行う。
このような加熱・冷却による記録層の蒸発・変形を防ぐため、通常は、記録層の上下を耐熱性でかつ化学的にも安定な誘電体保護層で挟みサンドイッチ構造とする。保護層は、記録時の記録層からの熱拡散を促し過冷却状態を実現し、非晶質マークの形成にも寄与し、消去時は記録層を固相結晶化に十分な高温に保つ蓄熱層として働く。
【0006】
また、サンドイッチ構造の上部に金属反射層を設けて4層構造とすることで、熱拡散をさらに促し非晶質マークをより安定に形成する。
消去と再記録過程を1つの集束光ビームの強度変調のみによって行う1ビームオーバーライトが可能な相変化型記録媒体は、記録媒体の層構成およびドライブの回路構成を簡単にすることができるため、安価で高密度な大容量記録システム用媒体として注目されている。
【0007】
さて、最近、このような相変化型記録媒体を用いて、CD(Compact Disc)あるいはDVD(Digital Versatile Disc もしくは Digita Video Disc)が開発されている。
書換型CD(CD-Rewritable、CD−RW)は、反射率70%以上という現行CDの規格は達成困難であるものの、反射率15〜25%の範囲内では、CDとの記録信号および溝信号の互換性が確保でき、反射率の低いことをカバーするための増幅系を再生系に付加すれば、現行CDドライブ技術の範疇で互換性を確保できる。
【0008】
CD−RWでは溝内記録を行うが、この溝にはアドレス情報を含む蛇行(ウオブル、Wobble)を使用する。蛇行は、搬送波周波数22.05kHzをアドレス情報などで周波数変調した周波数でなされ、その振幅(Wobble Amplitude)は溝ピッチ(1.6μm)にくらべて非常に小さく30nm程度である。
蛇行を周波数変調し、あるトラックの特定の位置のアドレス情報を組み込んだものをATIP信号(Absolute Time In Pre-groove)という。
【0009】
ATIP信号は有機色素を用いた記録可能なライトワンスディスク(CD-Recordable、CD−R)で既に利用されている。ATIP信号の使用により未記録ディスクでも回転数制御が可能になり、CDの線速(1.2〜1.4m/s)の1倍速、2倍速、さらには4倍、6倍速での記録ができるようになった。
現に、市場に普及しているCD−RはCDの2倍速もしくは4倍速いずれにおいても良好な記録ができる媒体が一般的である。
【0010】
従って、相変化記録を行うCD−RWにおいてもCD線速の少なくとも2倍速(2.4〜2.8m/s)から4倍速(4.8m/s〜5.6m/s)、さらには6倍速(7.2m/s〜8.4m/s)、8倍速(9.6m/s〜11.2m/s)の範囲の線速で良好にオーバーライト可能な媒体が望まれている。
一方、同様の相変化光記録技術を用いて、さらなる高密度な書き換え型光ディスクである書き換え型DVDもさかんに開発が進められている。ここでも、CD−RWの場合と同様に、再生専用DVDの基準再生速度3.5m/sを1倍速として少なくとも2倍速(7m/s)から4倍速(14m/s)までのすべての線速範囲においてオーバーライト可能な媒体が求められている。
【0011】
すなわち、線速を変えて記録しても基準クロック周波数を線速に反比例させるだけで同じマーク長が高品質に記録できなければならない。また、記録には半導体レーザーを用いるため記録パワーをあまり大きくできず、どの線速でも概ね15mW以下で記録できるのが好ましい。
しかしながら、相変化型記録媒体では、オーバーライト時の最大線速度と最小線速度の比が2倍以上だといずれかの線速で正常な記録ができないことが多い。
【0012】
一般に、記録時の線速度を変化させると記録層を同じ温度まで昇温させるのに要する照射パワーが異なり、また、照射パワーを調整して記録層の最高到達温度を同じにしても、昇温・冷却速度や温度分布など必ずしも同じ熱履歴が達成されるわけではない。
記録時には記録層を一旦加熱溶融させたのち臨界冷却速度以上の速さで冷却して非晶質マークを形成し、消去時には記録層を加熱したのち比較的ゆっくり冷却して結晶化するが、この冷却速度は同一層構成を用いた場合線速度に依存する。つまり、高線速では冷却速度が速くなり低線速では冷却速度は遅くなる。
【0013】
すなわち、オーバーライト時には線速が速くなるにつれて融点近傍の冷却速度も速くなり非晶質化マークは形成されやすくなる。逆に、線速度が遅くなるにつれて冷却速度も遅くなり記録時の再結晶化が懸念される。
このことは、本発明者らによる以下のシミュレーション結果によっても明らかである。
【0014】
ポリカーボネート基板上にZnSとSiO2とからなる保護層を100nm、Ge2Sb2Te5からなる記録層を25nm、ZnSとSiO2とからなる保護層を20nm、Al合金からなる反射層を100nmそれぞれ形成したディスクに、記録パワー、消去パワーを照射した場合の熱拡散式を解いて熱分布シミュレーションを行った。
【0015】
パルス照射開始点から0.1μm進んだ位置で、記録層を加熱し最高到達温度1350℃ののち温度が降下する過程での、融点(600℃)近傍の冷却速度を調べたところ、線速1.4m/sでは0.9K/nsec、線速4m/sでは2.2K/nsec、線速10m/s以上では数K/nsec以上であった。
一方、消去時には、記録層を結晶化温度以上融点以下に昇温したのち一定時間結晶化温度以上に保温する必要がある。従って、線速度が速くなると光ビーム照射部分の記録層の熱分布が時間的、空間的に比較的急峻になるため、結晶化しにくく、消し残りが生じやすくなる。
【0016】
速い線速で消去を行うには、記録層を結晶化速度の速い(再結晶化しやすい)組成の合金としたり熱の逃げにくい層構成とする必要がある。遅い線速で記録を行うには、逆に、記録層を結晶化速度の遅い組成の合金としたり熱の逃げやすい層構成とする必要がある。つまり、線速度に応じて2種類の媒体を作製することになる。
【0017】
しかしながら、例えばCDの2倍速および4倍速で記録するのに別種のCD−RWディスクを用意するのは好ましいことではない。同様にDVDの2倍速、4倍速で記録するのに別種の書き換え型DVD媒体を用意するのも好ましくない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
これを解決するために、オーバーライト時のパルスストラテジー、即ち照射ビームをパルスに分割しコントロールする方式、を線速度に応じて変化させることが考えられる。
これにより1m/s程度から10m/s程度の線速範囲において良好なオーバーライト特性を得る方法については、GeTe−Sb2Te3疑似2元合金系記録層の相変化型記録媒体において本発明者らも含めいくつか報告がある。
【0019】
しかし、一般的に、パルスストラテジー可変とすることはパルス発生回路等を複雑化させドライブの製造コストを高くするので、可能ならば単一パルスストラテジーで、あるいはできるだけ単純なパルスストラテジーの変更で広い線速度範囲をカバーできることが望ましい。
本発明者らは、先に、このような問題点を解決するために米国特許出願09/048,042号において特定の膜厚及び体積抵抗率の反射層を用いること、特に銀或いは金を主体とする反射層を用いることを提案した。
【0020】
銀など高反射率・高熱伝導率の金属を主成分とする材料からなる反射層を用いることは光学的な干渉効果を高めるとともに放熱効果を高めるため好ましく、特に銀は金属中で最も熱伝導率が高く、100nm以下の比較的薄膜でも十分な放熱効果が得られる。さらに、膜形成のしやすさや経済面でも有利である。
しかし本発明者らのさらなる検討により、金や銀は誘電体との密着性があまり良くないという問題があり、特に銀は、硫黄によって腐蝕されるため、保護層が硫黄を含有する場合に特有の問題が生じることが判明した。
【0021】
また、先の出願においては保護層上にアルミニウム合金からなる第1反射層を設け、その上に銀からなる第2反射層を設ける多層の反射層も提案している。しかしこの場合には、アルミニウムと銀との間で相互原子拡散が生じ、成膜直後には良好な記録特性が得られるものの、保存安定性が悪く高温高湿下におくと正確な記録ができなくなるという問題点が生じることが分かった。
【0022】
すなわち、実際に銀を主成分とする材料を反射層として用いると、保存安定性が不十分であり、特に媒体を過酷な環境下で長期保存した後に記録を行った場合、記録感度や記録信号強度等が変化してしまうという現象が観察され問題となることが分かった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、広い線速範囲、広い照射パワー範囲にわたって良好なディスク特性を有する光学的情報記録用媒体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、保存安定性に優れた光学的情報記録用媒体を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、基板と、記録層と、硫黄原子を含有する保護層と、該保護層に接する中間層と、該中間層に接し銀を主成分とする反射層とからなり、該中間層は、銀及び硫黄との反応性が低い、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体炭化物、及びカーボンから選ばれるいずれかからなることを特徴とする光学的情報記録用媒体に存する。
【0024】
【発明の実施の形態】
まず本発明者らは、硫黄原子を含有する保護層と銀を主成分とする反射層とを組み合わせて使用した媒体は、初期特性は問題ないものの繰返し記録や長期保存を行うと劣化が著しく、そのままでは実用的に用いるのは困難なことを見いだした。
【0025】
そしてまた、硫黄原子を含有する保護層と銀を主成分とする反射層の間に中間層として例えばアルミニウムを主成分とする層を設けると、やはり初期特性は問題がないが保存安定性が悪く耐環境試験により著しく劣化し、実用には適さないことを見いだした。
そこで、硫黄原子を含有する保護層と銀を主成分とする反射層の間に設ける中間層について様々な検討を行った結果、中間層が特定の要件を満たす場合に保存安定性及び繰返し記録特性に優れた実用的な媒体を提供できることを見いだし、本発明に至った。
【0026】
すなわち本発明においては、中間層は、反射層と接する側においては銀と化合物を形成せず、かつ、銀への該中間層元素の固溶度及び該中間層元素への銀の固溶度のいずれもが5原子%以下の元素からなり、保護層と接する側においては硫黄との反応性が低いか又はその硫化物が化学的に安定である元素からなる。あるいは、中間層は銀と完全固溶体を形成する元素からなるか、金属又は半導体の酸化物、窒化物、炭化物であるか、もしくは非晶質カーボンからなる。
【0027】
なお、東独特許第98782号公報には、ガラス基板上にZnS層、強磁性層であるMnBi層、ZnS層、銀層を積層した光磁気記録媒体が記載されているものの、硫黄原子を含有する保護層と銀を主成分とする反射層の組み合わせは繰返し記録特性や保存安定性に問題があることについて何ら記載がなく、当然上記特定の要件を満たす中間層を設けることでこれら問題が解決されることについても示唆はない。
【0028】
特開平8−329525号公報にはポリカーボネート基板上にAu50Ag50反射層、(ZnS)80(SiO220保護層、(Ge2Sb2Te590(Cr4Te510記録層、(ZnS)80(SiO220保護層、Si第1反射層、Al97Ti3第2反射層を積層した相変化型記録媒体が記載され、また第1/第2反射層材料としてAl、Au、Cu、Pt、Pd、Sb−Biやその合金等と共にAgとその合金が列挙されているが、硫黄原子を含有する保護層と銀を主成分とする反射層の組み合わせは繰返し記録特性や保存安定性に問題があることについて何ら記載がなく、当然上記特定の要件を満たす中間層を設けることでこれら問題が解決されることについても示唆はない。
【0029】
特開平9−185846号公報には、ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220保護層、(Cr4Te57(Ge2Sb2Te593記録層、(ZnS)80(SiO220保護層、Si第1反射層、タングステン拡散防止層、Al97Ti3第2反射層を積層した相変化型記録媒体が記載され、また第1/第2反射層材料としてAl、Au、Cu、Mo、Ta、W、Co、Ptやその合金等と共にAgとその合金が列挙されているが、多数の元素中の1例示にとどまり、反射層として特に銀を主成分とする材料を用いることとその有用性について記載されていない。従って硫黄原子を含有する保護層と銀を主成分とする反射層の組み合わせは繰返し記録特性や保存安定性に問題があることについても記載はなく、当然上記特定の要件を満たす中間層を設けることでこれら問題が解決されることについても示唆はない。
【0030】
本発明の光学的情報記録用媒体としては、光磁気記録媒体、相変化型記録媒体等各種の記録方式の媒体が採用できるが、好ましくは、相変化型記録媒体、特に結晶状態と非晶質状態との間の反射率の差を利用した相変化型記録媒体である。
以下、好ましい例である相変化型記録媒体について本発明を説明する。
従来の相変化型光ディスク等は基板上に保護層、記録層、保護層、反射層をこの順に主にスパッタリング法を用いて設け、さらにその上に紫外線硬化樹脂層を設けた構造が主流である。反射層を設けるのは、光学的な干渉効果をより積極的に利用して信号振幅を大きくするためと、放熱層として機能させるためであり、相変化型記録媒体の場合は非晶質マークの形成に必要な過冷却状態が得られやすいようにするためである。このため、反射層としては、一般的に、高反射率、高熱伝導率の金属が望ましく、具体的にはAu、Ag、Al等があげられる。
【0031】
膜形成のしやすさや経済面ではAgが好ましい。スパッタリングターゲットとしての値段が比較的安く、放電が安定で成膜速度が速く、空気中で安定で、しかも反射率、熱伝導度の面でも優れた特性を示すからである。もちろんAgに少量の不純物を混合した系でも同様の効果が期待できる。しかしAgと接して設ける膜がAgと相性が悪い場合も多い。たとえばAg膜内に拡散しやすい元素を含む層が接している場合は熱伝導度が大幅に小さくなる場合がある。この場合、新たに信号を記録しようとすると記録時の熱分布の違いにより記録感度が変化する、マークがきれいに形成されないため信号特性が悪い、等の現象が起こり好ましくない。
【0032】
このため従来の相変化光ディスク等ではAgを用いることはせずに、AlにTa、Ti、Cr、Mo、Mg、Zr、V、Nb等を0.5〜5原子%添加したAl合金が反射層として一般的であった。しかしその場合も過酷な環境下での保存後には程度の差はあれ同様の現象がおこる。
記録層が、Maw(SbzTe1-z1-w合金薄膜(ただし、0≦w≦0.3、0.5≦z≦0.9、MaはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、N、S、Se、Ta、Nb、V、Bi、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種)からなる場合、熱分布の違いがマーク形状に反映されやすいので特に重要である。
【0033】
Ag内に拡散しやすい元素は、たとえばAl、S等である。したがってたとえば保護層として相変化型光ディスクに用いられることの多いZnS−SiO2を用いた場合には、Ag反射層を前記の従来型構造のようにZnS−SiO2保護層に接して設けると記録特性が時間とともに変化してしまう。またAg側から顕微鏡観察で観察可能な欠陥が多数現れ、さらには時間経過していないディスクでも記録を繰り返すと100回程度で記録特性は劣化してしまうため使用可能な状態ではない。
【0034】
そこで本発明者は、Agを主成分とする反射層に対し、保護層からの拡散を防止すると同時に、熱伝導性等に実用上の支障をきたさない中間層を設けることを考えたのである。
本発明の相変化型記録媒体は、基板と相変化型記録層、保護層、反射層からなり、保護層と反射層とに接して中間層を設ける。例えば、基板上に、下部保護層、相変化型記録層、上部保護層、中間層、反射層をこの順に有する。本層構成をとり、基板を通して記録再生を行えば、基板のキズや塵埃によるエラーをかなり防ぐことができ、媒体の信頼性を高めることができる。
【0035】
又は、基板上に、反射層、中間層、保護層、相変化型記録層、保護層をこの順に有する。或いは基板の両側にこれら層構成を有しても良い。本層構成をとり、基板を通さずに記録再生を行うことで、浮上型ヘッドや接触型ヘッドを用いて光ヘッドと記録層の距離を極端に狭くすることができ、媒体の記録密度を大きく向上させることができる。
【0036】
中間層を特定の金属又は合金で形成する場合は、中間層は、反射層と接する側においては銀と化合物を形成せず、かつ、銀への該中間層元素の固溶度及び該中間層元素への銀の固溶度のいずれもが5原子%以下の元素からなり、保護層と接する側においては硫黄との反応性が低いか又はその硫化物が化学的に安定である元素からなる。
【0037】
ここにおいて、上記の中間層を形成する元素が満たすべき条件については、基本的に銀もしくは硫黄と、中間層を構成すべき元素の2元合金状態図を参照して決定される。このような2元合金状態図として権威ある出版物としては、"Constitution of Binary Alloys",(Max Hansen and Kurt Anderko, second edition (1985), Genium Publishing Corporation, New York)を挙げることができる。
【0038】
銀は100℃未満の低温においても他の金属中へ拡散しやすく、そのような拡散による固溶体や化合物の形成は、一般には、本来銀が有する高反射率、高熱伝導率を損ねるものであり好ましくない。従って、中間層の反射層に接する側は、まず銀との固溶体や化合物を形成しない元素からなる必要がある。
本発明において、ある元素が銀と固溶体を形成しないとは、銀と全く固溶体を構成しないこと、及び銀への固溶度及び銀のその元素への固溶度が5原子%以下で非常に銀に溶けにくいことである。
【0039】
ここで、固溶度は、固体状態である限りすべての温度域において最大の固溶度を参照する。上記、Hansenによる2元合金相図において、銀と固溶体を形成せず、かつ、化合物も形成しない元素としては、具体的には、ナトリウム、鉛、ビスマス、シリコン、タンタル、コバルト、クロム、タングステン及びバナジウムが挙げられる。
【0040】
このうち、ナトリウム、鉛、ビスマスは共晶温度が500℃以下の比較的低温に存在し、熱的安定性がやや劣る。すなわち相図によればそれぞれ共晶温度は、ナトリウム(97℃)、鉛(304℃)、ビスマス(262℃)、シリコン(830℃)、クロム(961℃)である。
タンタル、コバルト、タングステン、及びバナジウムについては詳細な相図は記載されていないものの、銀とは、化合物も存在せず溶融状態においてさえほとんど溶け合わないことが知られている。ニッケルは、銀中への固溶度はほとんどなく、銀のニッケル中への固溶度がわずかばかり存在するようであるが、5原子%をはるかに下回るようである。
【0041】
ナトリウムはそれ自身の大気中での不安定性からもあまり好ましくはない。
一方、ジルコニウム、マグネシウム、マンガン、インジウム、チタン、アンチモン、ゲルマニウム、テルル、亜鉛等は銀と化合物を形成するか、広範囲の濃度で固溶体を形成するので不適当である。また、アルミニウムも銀と固溶体を形成するので銀に接する側の中間層元素としては好ましくない。
【0042】
上記指針によって好ましいと考えられる元素(シリコン、タンタル、コバルト、クロム、タングステン及びバナジウム)と銀とを積層した場合の膜界面の安定性については、実際に薄膜の積層膜を形成し加速試験によって確認し、合金化に伴う熱伝導率の変化により、放熱効果が減じていないことを確認している。
これらの元素のうち、特に、タンタル、ニッケルは膜の内部応力による剥離も生じにくく最も好ましい元素である。
【0043】
ただし、銀と固溶する元素であっても、完全固溶体を形成する場合は相分離を生じないため熱伝導率に影響を及ぼすことがほどんとなく、むしろ好ましい場合がある。銀と完全固溶体を形成する好ましい例としては金、パラジウムが挙げられる。
一方、中間層は、硫黄を含有する保護層に接する側では、腐食性の高い硫黄との反応性が低い元素、すなわち、相図において硫黄との化合物を全く形成しない元素か、或いは界面に硫化物が形成されても化学的に安定で不動態として硫化物自体が拡散防止効果を有する元素からなる。
【0044】
硫化物の安定性は文献上、あるいは、実際に熱重量減少スペクトルを測定することで確認できる。上記ハンセンの相図からは、アルミニウムは硫黄と全く化合物を形成しない希少な元素であり最も好ましいことがわかる。
シリコン、タンタル、タングステン、ゲルマニウム及びバナジウムはそれぞれ、SiS2、TaS2、WS2、GeS2、V23を主として形成すると考えられるが、いずれも融解、分解、昇華等の熱重量変化を生じるのは500℃より高温である。
【0045】
コバルト、クロムは多数の硫化物を生成するが、相図から見てそれら硫化物自体の融点、分解温度は500℃より高温である。これら元素をZnS:SiO2保護層上に成膜して実験的に安定性を確認したが、少なくとも硫化反応の進行による腐食はみられず、反射率も変化しなかった。
銀及び銅の硫化物であるAg2SやCu2Sは、相図によれば化合物そのものは熱的に安定であるようであるが、実験的にはZnS:SiO2保護層上においてなんらかの不安定性を示した。相図において500℃以下の固相で相変態を示しており、必ずしも安定ではないためと考えられる。
【0046】
最後に、中間層が化合物からなる場合には、該中間層は金属又は半導体の酸化物、窒化物、炭化物か、もしくは非晶質カーボンからなる。これらはそれ自身が安定な化合物である。相変化媒体を記録層とする場合には融点が1000℃以上の耐熱性化合物であることが好ましい。
硫化物は銀との反応性が有るため好ましくない。
【0047】
中間層が光記録もしくは再生に用いる光源の波長に対して透明な化合物であることは銀の高反射率を有効に活用する上で望ましい。この点で、非晶質カーボンとしては、透明度の高い水素化非晶質カーボンが好ましい。
反射層は、銀を主成分とする。銀を主成分とするとは銀を70原子%以上含むことをいう。好ましくは銀を95原子%以上、さらに好ましくは98原子%以上含有する。特に好ましくは、反射層は、Ti、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo及びMnからなる群から選ばれた少なくとも一種を0.2原子%以上2原子%以下含有する銀合金、又は純銀からなる。
【0048】
一方、保護層は硫黄を含有し、好ましくは、硫化亜鉛、硫化タンタル、希土類硫化物のような硫化物を含有する。これらを20〜90mol%含有し、残部を融点または分解温度が1000℃以上の耐熱性化合物、すなわち、金属や半導体の酸化物、窒化物、弗化物、炭化物とした混合膜が特に望ましい。
中間層の厚さは、通常10Å以上、好ましくは50Å以上であり、一方、銀の高熱伝導率を有効に機能させるためには、通常1000Å以下、好ましくは500Å以下、さらに好ましくは200Å以下である。
【0049】
中間層は、1層またはそれ以上の層から構成される。中でも、中間層の好ましい態様として、以下の2つの態様を挙げることができる。
態様(1):中間層が、アルミニウムを主成分とする層とアルミニウムと銀との合金化を防止する拡散防止層との2層からなり、前者の層は保護層と接し、後者の層は反射層と接する。
態様(2):中間層を構成する元素が、銀と化合物を形成せず、かつ、銀への該中間層元素の固溶度及び中間層元素への銀の固溶度のいずれもが5原子%以下の元素からなり、さらに、硫黄との反応性が低いか又はその硫化物が化学的に安定である元素からなる。あるいは、中間層は銀と完全固溶体を形成する元素からなるか、金属又は半導体の酸化物、窒化物、炭化物であるか、もしくは非晶質カーボンからなる。
【0050】
まず態様(1)について説明する。態様(1)は、一般的には次のように表現される。保護層の上に、第1反射層、拡散防止層、体積抵抗率が20nΩ・m以上80nΩ・m以下の第2反射層を設ける。この場合、アルミニウムを主成分とする層が第1反射層に対応し、アルミニウムと銀との合金化を防止する層が拡散防止層に対応し、反射層が第2反射層に対応する。
【0051】
ここで、銀と反応して固溶体を形成してしまうアルミニウムをあえて、銀との間に拡散防止層を設けてまで用いようとする理由を以下に述べる。
本発明の目的は、銀の高熱伝導率を有効に利用しつつ、安定な光記録媒体を得ることにあるが、そのためには保護層と銀反射層との間に設ける中間層が高熱伝導率であることが望ましい。また、中間層自体が高反射率であれば、中間層と銀反射層が全体として高反射率で高熱伝導率の反射層として機能するため好ましい。
【0052】
アルミニウムは銀との反応性以外、反射率、熱伝導率、化学的安定性において最も好ましい材料であり、さらに拡散防止層を設けてでも使用する価値が高い。本構成によれば、保護層と反射層のあいだに中間層を設けても熱伝導性にほとんど支障をきたさず、広範囲の線速や広範囲のパワーに亘って良好なディスク特性を有し、かつ保存安定性にも優れた媒体を得ることができ、実用上極めて好ましい。
【0053】
以下、態様(1)については、この一般化された態様を元に説明する。
態様(1)の媒体は、図1に示すように、通常、基板1/下部保護層2/相変化型記録層3/上部保護層4/第1反射層5/拡散防止層6/第2反射層7の構成を有する。その上を紫外線もしくは熱硬化性の樹脂で被覆(保護コート層8)されていることが望ましい。
【0054】
態様(1)においては、相変化型記録層3の材料としては従来公知の様々なものが使用でき、GeSbTeやInSbTe、AgSbTe、AgInSbTe、AgGeSbTeなどが例示できるが、結晶・非晶質いずれの状態も安定でかつ両状態間の高速の相転移が可能なSb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金が最も好ましい。繰り返しオーバーライトを行った時に偏析が生じにくく、最も実用的な材料だからである。特に好ましい相変化型記録層3の組成は、Maw(SbzTe1-z1-w合金(ただし、0≦w≦0.3、0.5≦z≦0.9、MaはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、N、S、Se、Ta、Nb、V、Bi、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種)からなる。さらに好ましくは0≦w≦0.2であり、0.6≦z≦0.8である。
本発明者らの検討によれば、線速依存性は主成分であるSbとTeによって決まり、Sb70Te30共晶点近傍では、Sb/Te比が大きいほど結晶化速度が速くなる傾向がある。
【0055】
この共晶組成近傍でGeやInを添加した3元系材料は、特定の記録パルスパターンでの繰返しオーバーライトにおいて、従来から広く知られているGeTe−Sb2Te3、InTe−Sb2Te3疑似2元合金近傍材料より劣化が少ない、あるいは、マーク長記録したときのマークエッジのジッタが小さく、優れた材料である。また、結晶化温度が高く経時安定性にも優れている。
【0056】
なお、この記録層は成膜直後の状態は通常非晶質であるため、後述のように記録層全面を結晶化して初期化状態(未記録状態)とするのが好ましい。
態様(1)においては、記録時の最低線速度と最高線速度の比が少なくとも2倍以上である広線速で良好なオーバーライト可能な媒体を提供する。
より具体的な例として、CD線速の少なくとも2倍速(2.4〜2.8m/s)から4倍速(4.8m/s〜5.6m/s)あるいはDVD線速の1倍速(3.5m/s)から2倍速(7m/s)の範囲で良好なオーバーライト可能な媒体を提供する。
【0057】
このため、記録層組成はまず、10m/s近い高速で十分消去できるほど結晶化速度が速くなければならない。
前述の様に態様(1)の記録層は好ましくはSb70Te30共晶組成を基本とするが、Sb/Te比により線速依存性が左右される。このため、上記記録層の組成はMaw(SbzTe1-z1-w合金(ただし、0≦w≦0.3、0.5≦z≦0.9、MaはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、N、S、Se、Ta、Nb、V、Bi、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種)が好ましい。
【0058】
より具体的で好ましい一例として、Mbα 1Inβ 1Sbγ 1Teη 1(ただし、0.03≦α1≦0.1、0.03≦β1≦0.08、0.55≦γ1≦0.65、0.25≦η1≦0.35、0.06≦α1+β1≦0.13、α1+β1+γ1+η1=1、MbはAg又はZnの少なくとも一種)なる組成が挙げられる。
【0059】
より好ましくは、上記組成において、0.03≦α1≦0.1、0.05≦β1≦0.08、0.6≦γ1≦0.65、0.25≦η1≦0.30、0.06≦α1+β1≦0.13、α1+β1+γ1+η1=1を満たす組成である。
この組成範囲において、10m/s近くまでのオーバーライト時に十分な消去比が得られる。また、経時安定性にも優れた組成として用いることができる。
【0060】
Inは結晶化温度を上昇させて経時安定性を高める効果があり、室温での保存安定性を確保するために3原子%以上添加することが好ましいが、8原子%を超えて含まれると相分離が生じ易く、繰り返しオーバーライトにより偏析が起きやすい。より好ましくは5原子%以上8原子%以下である。
Ag又はZnは成膜直後の非晶質膜の初期化を容易にする。初期化方法にもよるが10原子%以下の添加で十分であり、多すぎるとかえって経時安定性を損ねるので好ましくない。
【0061】
また、Ag又はZnとInが合わせて13原子%を超えると繰り返しオーバーライト時に偏析を生じ易いので好ましくない。
好適な記録層の他の例として、McvGey(SbxTe1-x1-y-v(ただし、0.6≦x≦0.8、0.01≦y≦0.15、0≦v≦0.15、0.02≦y+v≦0.2、McはAg又はZnの少なくとも1種)なる組成があげられる。
【0062】
この組成によれば、前述のMbInSbTe合金における低融点金属InおよびIn化合金の析出のしやすさを改善することができる。
しかし一方で、Geの添加とともに急激に初期化プロセスに時間を要するようになる。
Inの析出しやすさとGeによる初期化のしにくさの両方を克服するために、Mdα 2Inβ 2Geδ 2Sbγ 2Teη 2(ただし、0.01≦α2≦0.1、0.001≦β2≦0.1、0.01≦δ2≦0.1、0.5≦γ2≦0.7、0.25≦η2≦0.4、0.03≦β2+δ2≦0.15、α2+β2+δ2+γ2+η2=1、MdはAg又はZnの少なくとも一種)なる組成を用いてもよい。
【0063】
相変化型記録層3の厚みは一般的には10nmから100nmの範囲が好ましい。
10nmより薄いと十分な光学的コントラストが得られ難く、また結晶化速度が遅くなる傾向があり、短時間での消去が困難となりやすい。一方100nmを越すとやはり光学的なコントラストが得にくくなり、また、クラックが生じやすくなる。
【0064】
特に、CDあるいはDVDと再生互換性をとれるほどのコントラストを得るためには10nm以上30nm以下が極めて好ましい。10nm未満では反射率が低くなりすぎ、30nmより厚いと熱容量が大きくなり記録感度が悪くなる傾向にある。
また記録層の相変化に伴う体積変化は記録層が厚いほど大きくなり、繰り返しオーバーライトによる微視的変形が蓄積しやすい。この観点からは記録層の膜厚の上限は30nm以下、より好ましくは25nm以下である。
【0065】
以上のように記録層の組成を高速オーバーライトに合わせるのが好ましい。高線速で十分消去可能な組成を用いると、低線速で記録する場合に、一旦溶融した記録層が再結晶化しやすいために、良好な非晶質マークが形成されにくいからである。
従来のGeTe−Sb2Te3系においては、低線速で十分な記録層の冷却速度を得るため、上部保護層4の膜厚が薄い「急冷構造」が望ましいとされ、20nm〜30nmとすることが一般的であった。
【0066】
この動向は、例えば、1991年から毎年開催されている相変化記録研究会の発表(応用物理学会相変化記録研究会主催、予稿集が発行されている。)に顕著に現れている。
その最大の理由は、反射層への放熱を有効に作用させるためである。
いわゆる急冷構造では放熱を促進し、記録層再凝固時の冷却速度を高める層構成を採用することで、再結晶化の問題を回避しつつ、高速結晶化による高消去比を実現する。
【0067】
従って上部保護層4の膜厚が厚くなりすぎると記録層3の熱が反射層に到達する時間が長くなり、反射層による放熱効果が有効に作用しないとされていた。
本発明者らは、むしろ30nm以上60nm以下と厚く設けた上部保護層4に高熱伝導率の反射膜を組み合わせることにより、従来の急冷構造よりも線速依存性をより改善できることを見いだした。より好ましくは35nm以上55nm以下とする。
【0068】
これは、図3を用いて以下のように説明される。
記録のためにまず記録層温度を融点以上に昇温する必要があるが、熱伝導には有限の時間が必要であるから、昇温過程(初期の数十ナノ秒以下)では、平面方向の熱伝導は顕著ではなく、膜厚方向の熱伝導のみでほとんど温度分布が決まる(図3(a))。
【0069】
従って、まず記録マークの先端部分を所定の温度まで昇温するときには、この膜厚方向の熱伝導が効いてくる。
一方、昇温開始後数十nsec以降になると図3(b)に示すように横方向の熱伝導による温度分布の平面的変化が重要になる。
なぜなら、膜厚方向は高々0.1μmの距離の熱拡散の問題であるのに対して、平面方向は1μmのオーダーの熱拡散の問題だからである。
【0070】
特に非晶質化過程を支配する記録層の冷却速度はこの平面分布に依存し、前述の冷却速度の線速度依存性はまさにこの平面温度分布で支配されている。
低線速では光ビームの走査速度が遅いため、同一照射時間でも周辺部まで加熱しながら進むことになり、平面方向の熱伝導の影響が大きい。
また比較的長時間連続して記録光ビームが照射される長マークの後端部分でも、平面方向の熱伝導の影響が大きい。
【0071】
従って、マーク長記録を記録時の最大線速度と最小線速度比が2倍以上になる様な広線速範囲で良好に行うためには、単に膜厚方向の温度分布や時間依存性のみならず、平面方向の分布や時間変化を正確に制御する必要がある。
図3(b)において、上部保護層の熱伝導率を低くし、適度な厚みを持たせた方が反射層への熱の流れに一定の遅延効果をもたらすことができ、平面方向の温度分布を制御しやすくなるのである。
【0072】
従来のいわゆる「急冷構造」はこの熱伝導の遅延効果に十分に留意していなかった。
本発明においては、熱伝導の遅延効果を十分発揮するために上部保護層4の材料としては熱伝導が低いものが望ましく、例えばZnS、ZnO、TaS2もしくは希土類硫化物を単独または混合物として20mol%以上90mol%以下含むのが好ましい。さらに、融点もしくは分解温度が1000℃以上の耐熱性化合物を含む複合誘電体も望ましい。
【0073】
より好ましくはLa、Ce、Nd、Y等の希土類の硫化物を50mol%以上90mol%以下含む複合誘電体や、ZnS、ZnOもしくは希土類硫化物を70〜90mol%含有する複合誘電体が望ましい。
融点もしくは分解点が1000℃以上の耐熱化合物材料としては、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ho、Er、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Si、Ge、Pb等の酸化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができる。
【0074】
特にZnOと混合されるべき材料としては、Y、La、Ce、Nd等希土類の硫化物あるいは硫化物と酸化物の混合物が望ましい。
SiO2、Ta25、Al23、AlN、SiN等を主成分とする薄膜は、それ自身の熱伝導率が高すぎて好ましくない傾向にある。特に、上部保護層は硫黄を含有するのが好ましく、特に、ZnS、TaS2、希土類硫化物等の硫化物を含有するのが好ましい。
【0075】
これらの保護層の膜密度はバルク状態の80%以上であることが機械的強度の面から望ましい。
なお、混合物誘電体薄膜を用いる場合にはバルク密度として下式の理論密度を用いる。
ρ=Σmiρi (1)
mi:各成分iのモル濃度
ρi:単独のバルク密度
上部保護層4は記録層3と反射層5の相互拡散を防止する効果もある。
【0076】
上部保護層4の膜厚は前述のように、通常30nm以上60nm以下、好ましくは35nm以上55nm以下とする。
膜厚が30nm未満では十分な熱伝導の遅延効果が得られず、60nmを超えると反射層への放熱効果が十分得られないうえ、保護層内部に繰返しオーバーライト時のヒートサイクルによる塑性変形が蓄積され、オーバーライト回数に伴い劣化が進みやすくなる傾向にある。
【0077】
態様(1)においては、上部保護層4による熱伝導の遅延効果を得る際、単に上部保護層を厚くすると、冷却速度が小さくなりすぎるので、一定の遅延時間の後は十分な急冷効果が得られるように、とりわけ高熱伝導率の反射層を用いる。しかしながら、本発明の反射層のような薄膜の熱伝導率測定はかなり困難で、再現性にも問題がある。
【0078】
一般に、薄膜の熱伝導率はバルク状態の熱伝導率と大きく異なり、小さいのが普通である。特に40nm以下の薄膜では成長初期の島状構造の影響で熱伝導率が1桁以上小さくなる場合があり好ましくない。
そこで本発明では、熱伝導率に代えて反射膜の電気抵抗を指標とする。
金属膜のように、主として電子が熱もしくは電気伝導を司る材料においては、熱伝導率と電気伝導率は良好な比例関係があるため、熱伝導の良否を電気抵抗を利用して見積もることができる。
【0079】
薄膜の電気抵抗はその膜厚や測定領域の面積で規格化された抵抗率値で表される。例えば体積抵抗率と面積抵抗率は通常の4探針法で測定でき、JIS K 7194によって規定されている。
これにより薄膜の熱伝導率そのものを実測するよりもはるかに簡便かつ再現性の良いデータが得られる。なお、体積抵抗率が低いほど熱伝導率は高い。
【0080】
態様(1)において好ましくは、反射層を、膜厚が5nm以上50nm以下のアルミニウムを主成分とする第1反射層と、膜厚が40nm以上200nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上80nΩ・m以下の銀を主成分とする第2反射層の少なくとも2層で構成する。
すなわち、少なくとも1層は上記低体積抵抗率材料として実質的に放熱効果を司り、他の層が耐食性や保護層との密着性、耐ヒロック性の改善に寄与するように構成する。
【0081】
特に、上部保護層が硫化物を含む場合、Ag等の金属に対する腐食性が高いため、このような構成とすることが望ましい。
第1反射層の厚さは好ましくは5nm以上50nm以下とする。5nm未満では保護効果が不十分で、50nmを超えると第2反射層への放熱効果が犠牲になる傾向にある。
【0082】
第2反射層の厚さは好ましくは40nm以上200nm以下とする。40nm未満では放熱効果が不十分になりやすい。また、200nmを超えるとクラックが入りやすくなったり、成膜時間が長くなり生産性が落ちる傾向にある。
なお、光学特性を向上させるために、第2反射層の上にさらに第3の反射層を設けてもよい。この場合、第3反射層は体積抵抗率が高い材料であっても全くかまわない。
【0083】
一般的に、体積抵抗率20nΩ・m以上150nΩ・m以下であれば熱伝導率の高い反射層として使用可能である。
体積抵抗率20nΩ・m未満の材料は薄膜状態では実質的に得にくい。
体積抵抗率150nΩ・mより体積抵抗率が大きい場合、たとえば300nmを超える厚膜とすれば面積抵抗率を下げることはできるが、本発明者らの検討によれば、このような体積抵抗率の高い材料では面積抵抗率のみ下げても十分な放熱効果は得られなかった。厚膜では単位面積当たりの熱容量が増大してしまうためと考えられる。
【0084】
また、このような厚膜では成膜に時間がかかり、材料費も増えるため製造コストの観点から好ましくない。
従って、膜厚300nm以下で面積抵抗率0.2以上0.9Ω/□以下であるような体積抵抗率の低い材料を用いるのが好ましい。
従って、アルミニウムを主成分とする第1反射層は耐食性や保護層との密着性、耐ヒロック性の改善の目的で設けられるが、熱伝導率があまり高いと第2反射層の放熱効果が得られにくいため、好ましくは体積抵抗率20nΩ・m以上150nΩ・m以下とする。
【0085】
密着性及び硫黄との反応性の点から、第1反射層はアルミニウムを95原子%以上、より好ましくは98原子%含有させる。特に好ましくは、Ta、Ti、Co、Cr、Si、Sc、Hf、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo及びMnからなる群から選ばれた少なくとも一種を0.2原子%以上2原子%以下含有するアルミニウム合金、又は純アルミニウムである。特に前者は添加元素濃度に比例して体積抵抗率が増加し、また、耐ヒロック性が改善されることが知られており(日本金属学会誌、第59巻(1995)、pp673〜678、J.Vac.Sci.Tech.、A14(1996)、pp2728〜2735等)、耐久性、体積抵抗率、成膜速度等考慮して用いることができる。
【0086】
添加不純物量0.2原子%未満では、成膜条件にもよるが、耐ヒロック性は不十分であることが多い。また、2原子%を超えると上記の低抵抗率が得られないことがある。
経時安定性をより重視する場合には添加成分としてはTa又はTi、特にTaが好ましい。
【0087】
また、Siを0.3重量%以上0.8重量%以下、Mgを0.3重量%以上1.2重量%以下含有するAl−Mg−Si系合金も好ましい。
態様(1)においては、銀を主成分とする第2反射層の体積抵抗率を20nΩ・m以上80nΩ・m以下とする。
体積抵抗率20nΩ・m以上80nΩ・m以下の薄膜としては、好ましくは、Ti、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo及びMnからなる群から選ばれた少なくとも一種を0.2原子%以上2原子%以下含有する銀合金、又は純銀が挙げられる。
【0088】
経時安定性をより重視する場合には添加成分としてはTi、Pd、Mgが特に好ましい。
上述のAl、Agの体積抵抗率は不純物濃度に比例して増加する。
不純物の添加は一般的に結晶粒径を小さくし、粒界の電子散乱を増加させて熱伝導率を低下させると考えられる。添加不純物量を調節することは、結晶粒径を大きくすることで材料本来の高熱伝導率を得るために必要である。
【0089】
なお、反射層は通常スパッタ法や真空蒸着法で形成されるが、ターゲットや蒸着材料そのものの不純物量もさることながら、成膜時に混入する水分や酸素量も含めて全不純物量を2原子%以下とする必要がある。
このためプロセスチャンバの到達真空度は1×10-3Pa以下とすることが望ましい。
【0090】
また、1×10-4Pa以下で成膜する場合、成膜レートを1nm/秒以上、好ましくは10nm/秒以上として不純物が取り込まれるのを防ぐことが望ましい。
あるいは意図的な添加元素を1原子%より多く含む場合は、成膜レートを10nm/秒以上として付加的な不純物混入を極力防ぐことが望ましい。
【0091】
成膜圧力などの条件も結晶粒径に影響を及ぼす場合もある。
例えば、AlにTaを2原子%程度添加した合金膜は結晶粒の間に非晶質相が混在するが、結晶相と非晶質相の割合は成膜条件に依存する。低圧でスパッタするほど結晶部分の割合が増え、体積抵抗率が下がるのである(熱伝導率は増加する)。
【0092】
スパッタに用いる合金ターゲットの製法やスパッタガス(Ar、Ne、Xe等)も、膜中の不純物組成あるいは結晶性に影響する。
従って、反射層材料として上記Al合金組成が開示されていても(特開平3−1338号公報、特開平1−169571号公報、特開平1−208744号公報等)、必ずしも本願に示す体積抵抗率層構成を示すとは限らない。
【0093】
高熱伝導率を得るためには、上記のように、不純物量を少なくするのが望ましいが、一方で、AlやAgの純金属は耐食性や耐ヒロック性に劣る傾向があるため、両者のバランスを考慮して最適組成が決まる。
しかし、この2層反射層の媒体は、このままでは保存安定性が悪いという問題があることが分かった。高温高湿下におくと全く記録ができなくなるのである。
【0094】
オージェデプスプロファイルをとると、両反射層が合金化していることが分かった。
前述のように、金属は不純物を添加すると熱伝導率が低下する。AlとAgの合金化が起こると、熱伝導率は急激に悪化してしまうため、非晶質マークの形成に必要な急激な冷却速度が得られなくなり、記録が不可能となったのである。
【0095】
そこで、態様(1)では、第1反射層としてアルミニウムを主成分とする材料を用いかつ第2反射層として銀を主成分とする材料を用いるので、拡散防止層としては、アルミニウムと銀との拡散を防止する層であるのが好ましい。
拡散防止層の材料としては、金属、半導体、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体炭化物、カーボン等を用いることができる。拡散防止層として使用できる金属としては、Ta,Ni,Co,Cr,Si,W,Vからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。中でもTa及び/又はNiが好ましい。
【0096】
拡散防止層として使用できる、金属又は半導体の酸化物、窒化物又は炭化物としては、酸化ケイ緊、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウムからなる群から選ぱれる少なくとも一種が挙げられる。拡散防止層として使用できる非晶質カーボンとしては、特に非晶質の水素化カーボンを挙げることができる。特に好ましい材料は、第1反射層や第2反射層に用いられる材料と酸素及び/又は窒素との化合物である。また、タンタルも特に好ましい材料である。特に好ましい態様として、第1反射層にアルミニウムを主成分とする材料を用い第2反射層に銀を主成分とする材料を用いかつ拡散防止層として酸化アルミニウム又はタンタルからなる材料を用いる。
【0097】
拡散防止層は、通常のスパッタによって形成させることもできるが、好ましくは、以下のような方法で形成させる。
第1反射層を成膜後インライン真空を一度破り、大気解放することでディスクの第1反射層上に大気中の酸素(または水分)と第1反射層材料との自然酸化膜が形成される。その後、再び真空引きした中にディスクを戻し、スパッタリング等の成膜により第2反射層を成膜する。これにより容易に拡散防止層を設けることができる。大気中での自然酸化を促進して短時間で十分な拡散防止層膜厚を得るためには、大気中でオゾン処理することも有効である。
【0098】
このようにして拡散防止層を設けると、第1反射層と第2反射層の拡散を界面層である酸化物層が抑制し、80℃、85%RH下、1000時間放置してもディスク特性が成膜直後のまま保存される。
あるいは、第1反射層の成膜終了後、または成膜終了直前に、意図的に成膜装置内真空中に酸素あるいは窒素を導入し、酸化物または窒化物の層を極く薄くスパッタ成膜しても良い。この方法は真空を破る必要がないため、作業工程上好ましい。
【0099】
いずれにせよ拡散防止層はそれ自身が熱抵抗として邪魔にならないよう、通常200Å以下、好ましくは100Å以下、さらに好ましくは50Å以下とする。最も好ましくは0.1〜5nm程度である。これだけでも十分アルミニウムと銀の相互拡散が防止できることは同じオージェデプスプロファイルで確認できる。以上述べたことは、本発明の極めて限定的かつ具体的な応用例である低反射率ながらCD互換のCD−RWについて述べたが、本発明は相変化型記録媒体一般のマーク長記録における線速度依存性及び記録パワー依存性を改善するのに有効であり、特にこのCD−RWに限定されるものではない。現在提案がなされている、書き換え可能タイプの高密度のディジタル・ビデオ・ディスク(いわゆるDVD)にも有効であると考えられる。
【0100】
また、本発明により線速マージンが広がったことで、いわゆるCAV(constant angular velocity)やZCAV(zoned CAV)といった回転速度一定で使用されるディスクの内外周における線速差で生じる、記録特性差の問題をも克服できる。
以下、図1を参照して本発明光記録媒体の他の設計要素について述べる。
【0101】
図1の基板1は、樹脂、ガラス、あるいは金属を用いることができる。基板側から光を入射させる場合は透明樹脂あるいは透明ガラスが用いられ、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、透明ガラスを用いることができる。なかでもポリカーボネート樹脂はCDにおいて最も広く用いられている実績もあり、安価でもあるので最も好ましい。
【0102】
なお、基板を通さずに記録再生を行う場合は不透明な樹脂、ガラス、あるいは金属も用いることができ、樹脂としては、アクリル系樹脂、ノルボルネン系などのポリオレフィン樹脂、液晶ポリマー、ポリカーボネート等が挙げられ、例としてポリメチルメタクリレート(PMMA)、ARTON(日本合成ゴム社 ノルボルネン系エステル置換環状オレフィン開環重合体水添物)、ZEONEX(日本ゼオン社 ノルボルネン系環状オレフィン開環重合体水添物)、芳香族ポリエステル系液晶ポリマー、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0103】
下部保護層2は記録時の高温による変形を防止するために設ける。
下部保護層2の材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができる。その他、上部保護層に使用できる各種の材料を使用できる。
【0104】
これらの酸化物、硫化物、窒化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり混合して用いることも有効である。
繰り返し記録特性を考慮すると誘電体混合物がよい。より具体的にはZnSや希土類硫化物と酸化物、窒化物、炭化物等の耐熱化合物の混合物が挙げられる。これらの保護層の膜密度は上部保護層と同様、バルク状態の80%以上であることが機械的強度の面から望ましい。
【0105】
下部保護層の厚さは通常10〜500nmである。下部保護層の厚さが薄すぎると基板や記録膜の変形防止効果が不十分であり、保護層としての役目をなさない傾向がある。また厚すぎると誘電体自体の内部応力や基板との弾性特性の差が顕著になって、クラックが発生しやすくなる傾向がある。特に、下部保護層は、熱による基板変形を抑制する役割があるため通常は50nm以上である。あまりに薄いと、繰り返しオーバーライト中に微視的な基板変形が蓄積され、再生光が散乱されてノイズ上昇が著しくなることがある。
【0106】
下部保護層の厚みの上限は、成膜時間の観点から通常200nm程度が実質的に上限となるが、あまり厚いと記録層面で見た溝形状が変わってしまうことがある。すなわち、溝深さが基板表面で意図した形状より浅くなったり、溝幅がやはり、基板表面で意図した形状より狭くなってしまうことがある。従って、より好ましくは150nm以下である。
【0107】
なお、態様(1)のアルミニウムを主成分とする第1反射層、拡散防止層、銀を主成分とする第2反射層という層構成は、全体として高反射率の光反射機能と高熱伝導率の放熱機能を有し、かつ、経時的に安定である。従って、これらを硫黄を含まない保護層上に設けても、非常に優れた光情報記録用媒体が得られる。特に、第1反射層を0.1〜2原子%のタンタル含むアルミニウム合金とし、拡散防止層をタンタル、第2反射層を純銀とした層構成は、相互の合金化もなくかつ第1反射層内部のタンタルの析出も少なく、極めて長期にわたって安定な反射率及び熱伝導率が得られる。
【0108】
態様(2)では、中間層は、銀と化合物を形成せず、かつ、銀への該中間層元素の固溶度及び該中間層元素への銀の固溶度のいずれもが5原子%以下の元素からなり、さらに硫黄との反応性が低いか又はその硫化物が化学的に安定である元素からなる。あるいは、中間層は銀と完全固溶体を形成する元素からなるか、金属又は半導体の酸化物、窒化物、炭化物であるか、もしくは非晶質カーボンからなる。
【0109】
その結果、単層の中間層を形成するだけで記録特性の経時変化が抑えられる。態様(2)において中間層に使用できる材料としては、前記態様(1)において拡散防止層の材料として例示した各種の材料と同じものが使用できる。即ち、金属、半導体、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体炭化物、非晶質カーボン等各種の化合物を例示することができる。
【0110】
例えば、Ta,Ni,Co,Cr,Si,W,Vからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。中でもTa及び/又はNiが好ましいく、特に好ましくはTaである。本中間層としては銀と合金化しやすいアルミニウムやゲルマニウムは単層ではもちいることができない。
また、金属又は半導体の酸化物、窒化物又は炭化物としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0111】
拡散防止層として使用できる非晶質カーボンとしては、非晶質の水素化カーボンが挙げられる。
特に好ましい材料は金属又はカーボンである。
また、酸化タンタルは、拡散防止層と誘電体保護層の両方の役割を果たすことも可能である。相変化型記録媒体においては、酸化タンタルは数少ない優れた保護層材料であるため特に好ましい。
【0112】
中間層としてTa、Niのようなレーザー光を吸収する材料を用いる場合には光学的に不利になるため記録された信号の強度が多少小さくなる場合がある。そのため保護層としてZnS−SiO2層を用い、かつ生産性、経済性に優れたAgを反射層として用いたい場合にはZnS−SiO2上に薄いAl合金層、本発明の中間層、Ag層をこの順で設けることが有効となる。
【0113】
尚、この中間層には、その機能を実用上阻害しない範囲で他の元素を添加してもよい。
中間層の膜厚については、通常1nm以上、好ましくは5nm以上であり、また通常100nm以下、好ましくは50nm以下、特に好ましくは20nm以下である。1nmより薄いと中間層としての効果がなくなり、100nmを越えると反射層の放熱層としての効果が薄れる傾向にあるからである。また膜の応力により基板が変形したりクラックが入る場合もある。生産コスト、タクトの面でも悪くなる。
【0114】
態様(2)の光学的情報記録用媒体の構造の他の部分について説明する。態様(2)においても基本的な層構成は態様(1)と同様である。
基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィンなどの透明樹脂、あるいはガラスを用いることができる。中でも実績もあり安価でもあるポリカーボネートが好ましい。
【0115】
ただし、浮上型ヘッドや接触型ヘッドなどを用い、ヘッドを媒体に近接させて記録再生する場合は、基板の剛性や耐熱性のより高い樹脂又はガラス、金属を用いても良い。
また、基板を通して記録再生を行わない場合は基板は透明である必要はない。
記録層は、通常その上下を保護層で被覆されている。
【0116】
保護層の材料としては、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができる。これらの酸化物、硫化物、窒化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。繰り返し記録特性を考慮すると誘電体混合物がよい。より具体的にはZnSや希土類硫化物と酸化物、窒化物、炭化物等の耐熱化合物の混合物が挙げられる。たとえばZnSとSiO2の混合物は相変化型光ディスクの保護層に用いられる場合が多い。
【0117】
記録層の反射層側に設けられる上部保護層は硫黄を含有し、好ましくはZnS、TaS2、希土類硫化物等の硫化物を含有する。その他上下の保護層の材料としては態様(1)において例示した具体的な材料が使用できる。
これらの保護層の膜密度はバルク状態の80%以上であることが機械的強度の面から望ましい(Thin Solid Films、第278巻(1996年)、74〜81ページ)。
【0118】
保護層の厚みは通常10〜500nmである。薄すぎると、基板や記録膜の変形防止効果が不十分であり、保護層としての役目をなさない傾向がある。また厚すぎると誘電体自体の内部応力や基板との弾性特性の差が顕著になって、クラックが発生しやすくなる傾向にある。特に、下部保護層は、熱による基板変形を抑制する必要があり、通常は50nm以上である。あまり薄いと、繰り返しオーバーライト中に微視的な基板変形が蓄積され、再生光が散乱されてノイズ上昇が著しくなることがある。
【0119】
下部保護層の厚みの上限は、成膜時間の観点から通常200nm程度が実質的に上限となるが、あまりに厚いと記録層面で見た溝形状が変わってしまうことがある。すなわち、溝深さが基板表面で意図した形状より浅くなったり、溝幅がやはり、基板表面で意図した形状より狭くなってしまうことがある。従って、より好ましくは150nm以下である。
【0120】
一方、上部保護層は、記録層の変形抑制のためには通常5nm以上、好ましくは10nm以上とする。また、あまりに厚いと、上部保護層内部に繰り返しオーバーライト中に微視的な塑性変形が蓄積されやすく、これが、また再生光を散乱させノイズを増加させる。上限値としては通常60nm、好ましくは50nmである。
【0121】
記録層としては公知の相変化型光記録層が使用でき、例えばGeSbTeやInSbTe、AgSbTe、AgInSbTeといった化合物がオーバーライト可能な材料として選ばれる。
なかでも、{(Sb2Te31-x(GeTe)x1-ySby合金(0.2<x<0.9、0≦y<0.1)、またはMaw(SbzTe1-z1-w合金(ただし、0≦w≦0.3、0.5≦z≦0.9、MaはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、N、S、Se、Ta、Nb、V、Bi、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種)を主成分とする薄膜は、結晶・非晶質いずれの状態も安定でかつ、両状態間の高速の相転移が可能である。
【0122】
さらに、繰り返しオーバーライトを行った時に偏析が生じにくいといった利点があり、最も実用的な材料である。
記録層は相変化型の場合、通常その厚みは10nm以上、100nm以下である。
記録層の厚みが薄すぎると十分なコントラストが得られ難く、また結晶化速度が遅くなる傾向があり、短時間での記録消去が困難となりやすい。
【0123】
一方あまりに厚いとやはり光学的なコントラストが得にくくなり、また、クラックが生じやすくなる。そして特に好ましくは10nm以上、30nm以下である。
10nm未満では反射率が低くなりすぎ、30nmより厚いと熱容量が大きくなり記録感度が悪くなりやすい傾向にある。
【0124】
上記記録層は合金ターゲットを不活性ガス、特にArガス中でスパッタして得られることが多い。
なお、記録層および保護層の厚みは、上記機械的強度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う光学的干渉効果も考慮して、レーザー光の吸収効率が良く、記録信号の振幅すなわち記録状態と未記録状態のコントラストが大きくなるように選ばれる。
【0125】
前述のように記録層、保護層層、反射層はスパッタリング法などによって形成される。記録膜用ターゲット、保護膜用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ターゲットを同一真空チャンバー内に設置したインライン装置で膜形成を行うことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生産性の面からも優れている。
【0126】
態様(2)において反射層に使用する、銀を主成分とする材料は前記態様(1)において第2反射層として使用する銀を主成分とする材料と同様の物を使用できる。また、その厚さは通常30〜300nm、好ましくは40〜200nmである。厚すぎると反射層自体の熱容量が大きくなりすぎて記録感度が低下したり、また、クラックも生じ易い。薄すぎると光を透過してしまい十分な反射率が得られない。また、銀反射層本来の放熱効果も得られない。
【0127】
【実施例】
以下、実施例を示すが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
各元素の固溶度は“Constitution of Binary Alloys",(Max Hansen and Kurt Anderko, second edition(1985), Genium Publishing Corporation, New York)の値を用いた。
【0128】
各層組成は蛍光X線分析、原子吸光分析、X線励起光電子分光法等を組み合わせて確認した。
保護層膜の密度は基板上に数百nm程度に厚く成膜した時の、重量変化から求めた。膜厚は蛍光X線強度を触針計で測定した膜厚で校正して用いた。
反射層の面積抵抗率は4探針法抵抗計(三菱油化(現ダイアインスツルメント)社製Loresta FP )で測定した。抵抗測定は、絶縁物であるガラスもしくはポリカーボネート樹脂基板上に成膜した反射層、あるいは、図1の4層構成(紫外線硬化樹脂保護コート前)成膜後、最上層となる反射層で測定した。
【0129】
上部保護層が誘電体薄膜で絶縁物であるため、面積抵抗率測定に影響はない。また、実質的に無限大の面積とみなせる、直径120mmのディスク基板形状のまま測定している。
得られた抵抗値Rを以下の式にあてはめ、面積抵抗率rS及び体積抵抗率rVを計算した。ただし、tは膜厚、Fは測定する薄膜領域の形状で決まる補正係数であって4.3〜4.5の値をとる。ここでは、4.4とした。
【0130】
rS=F・R (2)
rV= rS・t (3)
以下特に断らない限り次の条件でディスク特性を評価した。
記録再生評価にはパルステック製DDU1000評価機を用い、記録線速を1.2m/sから4.8m/sとし、再生速度はCDの2倍速(2.4m/s)とした。光ヘッドの波長は780nm、NAは0.55である。
【0131】
図2に示したパルスストラテジーを用いて、EFM(Eight-Fourteen modulation)ランダムパターンを記録した。クロック周期Tとし、記録マーク形成部においては記録パルス区間で記録パワーPwを、オフパルス区間でバイアスパワーPbを交互に照射し、マーク間部には消去パワーPeを印加する。ただし、線速2.8m/s以上でマーク最後端のオフパルス区間においてPb=Peとした場合がある。Pbはすべての線速度において0.8mWで一定とした。
【0132】
CDの2倍速(2.4m/s)でのクロック周期は115nsecであり、線速切り替え時にはクロック周期Tを線速に反比例させた。再生速度は2倍速であるから、ジッタの許容値はCD規格では17.5nsecになる。
成膜直後の記録層は非晶質であり、長軸約70μm、短軸約1.3μmに集光した波長830nmのレーザー光ビームにより線速3.5m/sで初期化パワー500〜600mWを照射して全面結晶化させ初期(未記録)状態とした。
【0133】
このパワーでは記録層はいったん溶融して再凝固する際に結晶化していると考えられる。
基板は厚さ1.2mmのポリカーボネート基板で、特に断らない限り、射出成形により1.6μmピッチで幅0.53μm、深さ32nmの溝が形成されている。記録はこの溝内に行った。
【0134】
なお、溝形状は、U溝近似の光学回折法を用いて測定した。もちろん、走査型電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡で溝形状を実測しても良い。この場合、溝深さの半分の位置における溝幅を用いる。
参考例1
ポリカーボネート基板に、下部保護層(ZnS)80(SiO220を95nm、Ag5In5Sb61.5Te28.5記録層を17.5nm、上部保護層(ZnS)80(SiO220を38nmを成膜し、さらに第1反射層として膜厚40nmのAl99Ta1合金、第2反射層
として膜厚60nmのAgを成膜した。
下部保護層から第1反射層までは真空を解除することなくスパッタ法で作成し、第1反射層を成膜後大気解放し5時間放置後、再び真空にてスパッタ法により第2反射層を成膜した。
【0135】
第2反射層成膜後、スピンコート法により紫外線硬化樹脂をオーバーコート層として4μm積層した。
第1反射層の成膜は到達真空度2×10-4Pa以下、Ar圧0.54Pa、成膜レート1.3nm/秒で行った。体積抵抗率は92nΩ・mであった。酸素、窒素等の不純物はX線励起光電子分光での検出感度以下で、全部併せてもほぼ1原子%未満であると見なせた。
【0136】
第2反射層の成膜は到達真空度2×10-4Pa以下、Ar圧0.54Pa、成膜レート1.3nm/秒で行った。体積抵抗率は32nΩ・mであった。酸素、窒素等の不純物はX線励起光電子分光での検出感度以下で、全部併せてもほぼ1原子%未満であると見なせた。
(ZnS)80(SiO220保護層の膜密度は3.50g/cm3で理論的バルク密度3.72g/cm3の94%であった。
【0137】
この媒体に、図2に示すパルスストラテジーを用いPe/Pw=0.5として2倍速(2.4m/s)記録を行った場合の3Tマークジッタおよび3Tスペースジッタの記録パワー依存性を図4に初期値として示した。
同様に、図2のパルスストラテジーでクロック周期のみ半分とし、Pe/Pw=0.5として4倍速(4.8m/s)記録を行った場合の記録パワー依存性を図5に初期値として示した。この場合には最後のオフパルス区間を0とした。
【0138】
いずれの場合も所定の条件で10回オーバーライト後、測定は2倍速(2.4m/s)で行っている。
図4及び図5より、2倍速、4倍速において3Tマークジッタ、3Tスペースジッタともに広いパワーマージンを有することがわかる。
このディスクを80℃、80%RHの高温高湿下に500時間放置した後、2倍速及び4倍速記録部を再生したところ、図4及び図5に加速試験後の値として示すように、通常使用する記録パワーの範囲においてジッタには全く劣化がみられなかった。
【0139】
以上のように、2〜4倍速で広範な線速及び記録パワーマージンが得られた。
また、繰り返しオーバーライトは5000回程度まで可能であった。
また、加速試験前のディスクのCD規格におけるブロックエラーレートは平均10個/秒、最大30個/秒以下で、500時間加速試験後もほとんど増加しなかった。
【0140】
本ディスクをオージェデプスプロファイルにて分析したところ第1反射層と第2反射層の界面に酸素の存在を示すピークがあり、界面にAgやAlの酸化物層が形成されていることを確認した。
比較参考例1
層構成および成膜条件は参考例1と全く同じとした。ただし、下部保護層から第2反射層までのすべての薄膜はスパッタ法で真空を解除せずに成膜した。
【0141】
第1反射層、第2反射層の成膜条件も参考例1と同じであり、同様の体積抵抗率を示した。
2倍速、4倍速において、3Tマークジッタ、3Tスペースジッタともに広いパワーマージンを測定したところ参考例1とほぼ同等の特性を示した。
また、繰り返しオーバーライトは5000回程度まで可能であった。
【0142】
しかし、成膜後80℃、85%RHの高温高湿度の条件下に50時間放置し再生したところジッタが大きく悪化した。また、平均ブロックエラーレートは100個/秒以上に増加した。このディスクに2倍速記録しようとしたが、全く非晶質マークが形成されなくなっていた。
このディスクを反射層側から目視にて観察すると、成膜直後の時点では表面が銀色に見えていたが、上記500時間加速試験後はやや青みを帯びて変質していた。これについてオージェデプスプロファイルを測定したところ、Al合金である第1反射層とAgである第2反射層が相互拡散により完全に合金化していることがわかった。
すなわち反射層の合金化が起こって熱伝導率が低くなってしまい、記録ができなくなったものと考えられる。
【0143】
なお、AlのAgとの固溶度は42at%であった。
比較例1
ポリカーボネート基板に、下部保護層(ZnS)80(SiO220を95nm、Ag5In5Sb61.5Te28.5記録層を17.5nm、上部保護層(ZnS)80(SiO220を38nm、反射層Agを50nm成膜した。
【0144】
すべての薄膜はスパッタ法で反射層まで真空を解除せずに成膜した。
反射層成膜後、スピンコート法により紫外線硬化樹脂をオーバーコート層として4μm積層した。
反射層の成膜は到達真空度2×10-4Pa以下、Ar圧0.54Pa、成膜レート1.3nm/秒で行った。その体積抵抗率は32nΩ・mであった。酸素、窒素等の不純物はX線励起光電子分光での検出感度以下で、全部併せてもほぼ1原子%未満であると見なせた。
【0145】
(ZnS)80(SiO220保護層の膜密度は3.50g/cm3で理論的バルク密度3.72g/cm3の94%であった。
本ディスクを評価したところ、2倍速、4倍速において3Tマークジッタ、3Tスペースジッタともに広いパワーマージンを有することがわかった。
しかし、繰り返しオーバーライトは1000回程度しか得られなかった。
【0146】
このディスクを反射層側から目視にて観察すると、成膜直後の時点では表面が銀色に見えていたが、500時間加速試験後は変色していた。Agが上部保護層中の硫化物の硫黄と反応したものと考えられる。
成膜後室温にて数日放置した媒体にも同様のAg膜の変色が見られた。
実施例1
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(105nm)、A
5In5Sb62Te28記録層(17nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(4
0nm)、Ta25中間層(10nm)、Ag反射層(90nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。このディスクを初期結晶化した後、溝内に非晶質マークを形成して記録を行った。
【0147】
この媒体に、図2に示すパルスストラテジーを用い、Pe/Pw=0.5、記録パワー10mWとして2倍速記録を行った。
その後このディスクを80℃、80%RHの環境に500時間保った後、同様の記録を再度行なった。(以降では、80℃、80%RHの環境に500時間保つ操作を加速試験と記す。)加速試験前後の記録で3Tスペースジッタはそれぞれ12.5nsec、14.3nsecで劣化は小さかった。上部保護層と中間層の合計の膜厚を変えないように中間層(酸化タンタル層)の膜厚を10〜50nmまで変化させたディスクも結果はほぼ同様だった。信号強度も十分に大きく劣化もほとんど見られなかった。
【0148】
参考例2
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In5Sb62Te28記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Ta中間層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。実施例1と同様の記録、評価をしたところ、加速試験前後の記録で3Tスペースジッタはそれぞれ15.0nsec、17.4nsecで劣化は小さかった。中間層(Ta層)の膜厚を10〜40nmまで変化させたディスクも結果はほぼ同様だった。信号強度は実施例1のものよりは小さかったが、問題ないレベルであった。
【0149】
なお、TaのAgとの固溶度は0at%と考えられる。
参考例3
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In5Sb62Te28記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Ni中間層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。実施例1と同様の記録、評価をしたところ、加速試験前後の記録で3Tスペースジッタはそれぞれ15.0nsec、15.0nsecで劣化は小さかった。中間層(Ni層)の膜厚を10〜40nmまで変化させたディスクも結果はほぼ同様だった。信号強度は実施例1のものよりは小さかったが、問題ないレベルであった。
【0150】
なお、NiのAgへの固溶度は0at%であり、AgのNiへの固溶度は2at%以下であると考えられる。
比較例2
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In5Sb62Te28記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。実施例1と同様の耐環境試験をおこなったところ、Ag側から顕微鏡観察で観察可能な欠陥が多数現れ、さらには加速試験前のディスクでも記録を繰り返すと100回程度で記録特性は劣化してしまった。
【0151】
比較参考例2
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In5Sb62Te28記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Al合金反射層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。実施例1と同様の記録、評価をしたところ、加速試験後は記録マークが書けず測定できないほどに劣化した。オージェ電子分光法により加速試験後のディスクの解析を行ったところAlとAgが相互拡散していることを確認した。
【0152】
比較参考例3
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(105nm)、A
5In5Sb62Te28記録層(17nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(5
0nm)、Al99Ta1合金反射層(220nm)の構成をスパッタ法により作成し、こ
の上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。実施例1と同様の記録、評価をしたところ、加速試験前後の記録で3Tスペースジッタはそれぞれ11.7nsec、30.1nsecで劣化が大きかった。
【0153】
比較参考例4
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In5Sb62Te28記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Ti層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。実施例1と同様の記録、評価をしたところ、加速試験後は記録マークが書けず測定できないほどに劣化した。TiとAgが相互拡散し、合金化したためと考えられる。
【0154】
なお、TiのAgとの固溶度は、共晶点の850℃において約5at%であった。しかしながら、TiとAgは化合物TiAgを形成する。
比較参考例5
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In5Sb62Te28記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Zr層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。実施例1と同様の加速試験をおこなったところ目視で観察可能な多数の欠陥が現れた。
【0155】
なお、ZrとAgとは固溶体は形成しないものの、ZrはAgと化合物ZrAg、おそらくZr2Ag、Zr3Agを形成する。
比較参考例6
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In6Sb63Te26記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Ge層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。実施例1と同様の加速試験をおこなったところ目視で反射膜の色が試験前は白銀色だったものが、赤同色がかって変色しているのが分かった。2倍速の通常の記録条件では全く非晶質マークが記録できなくなっていた。4倍速の線速で、信号を通常よりも短いパルスで記録したところアモルファスマークが記録できた。
【0156】
なお、GeのAgへの固溶度は共晶点651℃において約9at%であった。
参考例4
0.6mm厚のポリカーボネート基板に、下部保護層(ZnS)80(SiO220を2
05nm、Ag5In6Sb63Te26記録層を18nm、上部保護層(ZnS)80(SiO220を20nmを成膜し、さらに第1反射層として膜厚40nmのAl99.5Ta0.5合金、第2反射層として膜厚70nmのAgを成膜した。
【0157】
下部保護層から第1反射層までは真空を解除することなくスパッタ法で作成し、第1反射層を成膜後大気解放し3日間放置後、再び真空にてスパッタ法により第2反射層を成膜した。
第2反射層成膜後、スピンコート法により紫外線硬化樹脂をオーバーコート層として4μm積層した。出来たディスクは2枚をオーバーコート層が向かい合うように貼り合わせた。
【0158】
第1反射層の成膜は到達真空度4×10-4Pa以下、Ar圧0.55Paで行った。体積抵抗率は55nΩ・mであった。酸素、窒素等の不純物はX線励起光電子分光での検出感度以下で、全部併せてもほぼ1原子%未満であると見なせた。
第2反射層の成膜は到達真空度4×10-4Pa以下、Ar圧0.35Paで行った。体積抵抗率は32nΩ・mであった。酸素、窒素等の不純物はX線励起光電子分光での検出感度以下で、全部併せてもほぼ1原子%未満であると見なせた。
【0159】
この媒体に、光源波長635nm、NA0.60の評価機を使用して、線速3.5m/s、8ー16変調、0.266μm/bit(3T=0.4μm)、図6に示すパルスストラテジーを用いPe/Pw=0.5として2倍速記録を行った場合のジッター、反射率、及び変調度のPw依存性を図7に初期値(Time
0)として示した。
【0160】
本媒体に図6に示すパルスストラテジーを多少変更したパルスストラテジーを用いて線速度3.5m/s、記録パワー13mWで記録を行ったところ、ジッターは10%以下であった。
このディスクを80℃、80%RHの高温高湿下に100時間放置した後、同様に7m/sで記録を行ったところ図7(Time 100h)に示すように全く劣化がみられなかった。
【0161】
参考例5
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In6Sb62Te27記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40
nm)、Al99.5Ta0.5合金第1反射層(40nm)、Ta中間層(40nm)、Ag
第2反射層(80nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。参考例1と同様の記録、評価を行った場合のジッター、反射率、及び変調度のPw依存性を図8及び図9に初期値(Time 0)として示した。
【0162】
このディスクを80℃、80%RHの高温高湿下に100時間放置した後、同様に記録を行ったところ図8及び図9(Time 100h)に示すように劣化がみられなかった。
なお、TaのAgとの固溶度は0at%と考えられる。
実施例2
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5
In6Sb63Te26記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、非晶質カーボン中間層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。実施例1と同様の記録、評価をしたところ、加速試験前後の記録で3Tスペースジッタは変化が見られなかった。
【0163】
なお、CのAgとの固溶度は0at%であった。
参考例6
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In6Sb63Te26記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Co中間層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。実施例1と同様の記録、評価をしたところ、加速試験前後の記録で3Tスペースジッタは変化が見られなかった。
【0164】
なお、CoのAgとの固溶度は0at%であった。
参考例7
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In6Sb63Te26記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Cr中間層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。実施例1と同様の記録、評価をしたところ加速試験前後の記録で3Tスペースジッタは変化が見られなかった。
【0165】
なお、CrのAgとの固溶度は0at%であった。
参考例8
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In6Sb63Te26記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Si中間層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。加速試験後に反射膜の合金化は見られず、実施例1と同様の記録、評価をしたところ、反射率に変化が見られたが記録は可能であった。
【0166】
なお、SiのAgとの固溶度は0at%であった。
参考例9
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In6Sb63Te26記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、W中間層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。加速試験後に反射膜の合金化は見られなかった。
【0167】
なお、WのAgとの固溶度は0at%であった。
参考例10
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In6Sb63Te26記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、V中間層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。加速試験後に反射膜の合金化は見られなかった。
【0168】
なお、VのAgとの固溶度は0at%と考えられる。
参考例11
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In6Sb63Te26記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Au中間層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。加速試験後に反射膜の合金化が見られたものの、実施例1と同様の記録、評価をしたところ、加速試験前後の記録で3Tスペースジッタは変化が見られなかった。
【0169】
加速試験後、AuとAgとは固溶体を形成していたかもしれないが、AuとAgは完全
固溶体を形成するため、反射率や熱伝導性を大きく変化させるような相分離は生じなかったと考えられる。
参考例12
ポリカーボネート基板上に(ZnS)80(SiO220下部保護層(95nm)、Ag5In6Sb63Te26記録層(18nm)、(ZnS)80(SiO220上部保護層(40nm)、Pd中間層(40nm)、Ag反射層(70nm)の構成をスパッタ法により作成し、この上にさらに紫外線硬化樹脂からなる保護コートを行った。加速試験後に反射膜の合金化が見られたものの、実施例1と同様の記録、評価をしたところ、加速試験前後の記録で3Tスペースジッタは変化が見られなかった。
【0170】
加速試験後、PdとAgとは固溶体を形成していたかもしれないが、PdとAgは完全固溶体を形成するため、反射率や熱伝導性を大きく変化させるような相分離は生じなかったと考えられる。
【0171】
【発明の効果】
本発明によれば、広範囲の線速、広範囲のパワーに亘って良好なディスク特性を有し、かつ保存安定性にも優れた光学的情報記録用媒体を得ることができる。また、光ヘッドと本媒体を用いることにより小型で高密度・高速記録再生可能な情報記録装置を得ることができ、さらに浮上型ヘッドまたは接触型ヘッドと組み合わせることによりさらに高密度で記録可能な情報記録装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光学的情報記録用媒体の一例の説明図
【図2】 本発明に用いる記録パルスストラテジーの一例の説明図
【図3】 記録層の熱拡散の状態を説明する説明図
【図4】 参考例1の2.4m/sでのジッタの記録パワー依存性を示すグラフ
【図5】 参考例1の4.8m/sでのジッタの記録パワー依存性を示すグラフ
【図6】 本発明に用いる記録パルスストラテジーの他の一例の説明図
【図7】 参考例4のジッタ、反射率及び変調度の記録パワー依存性を示すグラフ
【図8】 参考例5のジッタの記録パワー依存性を示すグラフ
【図9】 参考例5の反射率及び変調度の記録パワー依存性を示すグラフ

Claims (7)

  1. 基板と、記録層と、硫黄原子を含有する保護層と、該保護層に接する中間層と、該中間層に接し銀を主成分とする反射層とからなり、該中間層は、銀及び硫黄との反応性が低い、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体炭化物、及びカーボンから選ばれるいずれかからなることを特徴とする光学的情報記録用媒体。
  2. 前記カーボンが非晶質カーボンである請求項1に記載の光学的情報記録用媒体。
  3. 誘中間層が酸化タンタルからなる請求項1又は2に記載の光学的情報記録用媒体。
  4. 反射層における銀の含有量が95原子%以上である請求項1乃至3のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  5. 反射層が、Ti、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo及びMnからなる群から選ばれた少なくとも一種を0.2原子%以上2原子%以下含有する銀合金、又は純銀からなる請求項4に記載の光学的情報記録用媒体。
  6. 保護層が硫化物を含有する請求項1乃至5のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  7. 記録層が、Maw(SbzTe1-z1-w合金薄膜(ただし、0≦w≦0.3、0.5≦z≦0.9、MaはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、N、S、Se、Ta、Nb、V、Bi、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種)からなる請求項1乃至6のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
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