JP3885802B2 - 光学的情報記録用媒体 - Google Patents
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Description
このような、相変化の記録層材料としては、カルコゲン系合金薄膜を用いることが多い。例えば、GeSbTe系、InSbTe系、GeSnTe系、AgInSbTe系合金があげられる。
さらに、上記サンドイッチ構造の上部に金属反射層を設けた4層構造とすることで、熱拡散をさらに促し、非晶質マークを安定に形成することができる。
消去(結晶化)は、記録層の結晶化温度よりは高く、融点よりは低い温度までもしくは融点直上まで記録層を加熱して行う。この場合、誘電体保護層は、記録層を固相結晶化に十分な高温に保つ蓄熱層として働く。
蛇行の周波数は搬送波周波数22.05kHzをアドレス情報により周波数(FM)変調したものである。これはATIP信号と呼ばれる。
ATIP信号を用いることで未記録ディスクの回転数制御が可能になり、CD線速(1.2〜1.4m/s)の1倍速、2倍速、さらには4倍、6倍速での記録ができる。
この際、安価な半導体レーザーを用いるためには記録パワーは約15mW以下でなければならず、また、記録時の線速が異なっても単純に線速に反比例して基準クロック周波数Tを変えるだけで、所望のマーク長が記録できなければならない。
非晶質マークの形成は、一旦記録パワーで溶融せしめた記録層を、臨界冷却速度以上の速さで冷却することによって行われる。この冷却速度は同一層構成を用いた場合線速に依存する。つまり、高線速では冷却速度が速くなり、低線速では冷却速度は遅くなる。
この保温時間は逆に、高線速では短く、低線速では長くなる傾向がある。
従って、線速の比較的速い記録条件では光ビームを照射した際に、その照射された部分の記録層の熱分布が時間的、空間的に比較的急峻になるため消去時の消し残りが懸念される。
逆に、線速が比較的遅い記録条件では、前述のように冷却速度が遅くなるために、記録時の再結晶化が懸念される。
記録マーク形成時の再結晶化を防ぐ方法として、記録層には結晶化速度の比較的遅い組成の化合物を用いたり、熱の逃げやすい層構成にしたりする。
線速に応じてパルスストラテジー(良好なピット形状を得るために照射ビームをパルス分割し、コントロールする方式)を変化させることにより、CDの1倍もしくは2倍速から10m/s程度の線速範囲において良好なオーバーライト特性を得る方法については、本発明者らも含めいくつか報告がある。しかし、一般的には、パルスストラテジーを可変とすることはパルス発生回路等を複雑化させドライブの製造コストを高くするので、同一パルスストラテジーで基準クロック周期を変更するだけで広い線速範囲をカバーできることが望ましい。
本発明においては、記録線速および記録パワーに対するマージンを大幅に改善した相変化媒体を提供することを目的とする。
本発明の別の要旨は、基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層をこ
の順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体であって、該反射層の面積抵抗率が0.2Ω/□以上0.9Ω/□以下であり、該反射層がTa、Ti、Co、Cr、Si、Sc、Hf、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo、又はMnのうちの少なくとも一種を0.2原子%以上2原子%以下含むAl合金であるか、又は該反射層がTi、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo、またはMnのうちの少なくとも一種を0.2原子%以上5原子%以下含むAg合金であり、該相変化記録層が、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金薄膜からなり、該相変化記録層の膜厚が10nm以上30nm以下であることを特徴とする光学的情報記録用媒体に存する。
本発明のさらに別の要旨は、基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層をこの順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体であって、該反射層の面積抵抗率が0.2Ω/□以上0.9Ω/□以下であり、該反射層が多層からなり、全反射層膜厚の50%以上が体積抵抗率20nΩ・m以上150nΩ・m以下の1層以上の金属薄膜であり、該相変化記録層が、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金薄膜からなり、該相変化記録層の膜厚が10nm以上30nm以下であることを特徴とする光学的情報記録用媒体に存する。
さらに、相変化による位相差変化を適当な値とすることにより、CD−ROM、DVD−ROM等と再生互換性の高い相変化媒体を提供できる。
本発明における記録媒体の基板1としては、ガラス、プラスチック、ガラス上に光硬化性樹脂を設けたもの等のいずれであってもよいが、コストを含む生産性の面ではプラスチックが好ましく、特にポリカーボネート樹脂が好ましい。
保護層2及び4の材料としては、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができる。
る。
繰返しオーバーライト特性を考慮すると誘電体混合物がよい。より具体的にはZnSや希土類硫化物と酸化物、窒化物、炭化物等の耐熱化合物の混合物が挙げられる。これらの保護層の膜密度はバルク状態の80%以上であることが機械的強度の面から望ましい。混合物誘電体薄膜を用いる場合には、バルク密度として下式の理論密度を用いる。
ρ=Σmi ρi (1)
mi :各成分iのモル濃度
ρi :単独のバルク密度
基板変形を抑制するために、記録層の発熱を伝えないために熱絶縁効果があり、かつ、機械的に変形を押さえ込むような保護層膜厚が好ましいのである。例えば、CD−RWで繰返しオーバーライト1000回を達成するためには、好ましくは厚さ70nm以上、より好ましくは80nm以上がよい。
上部保護層4は記録層3と反射層5の相互拡散を防止する。
記録層3の厚みが10nmより薄いと十分なコントラストが得られにくい。また15nm未満では結晶化速度が遅くなる傾向があり、特に10nm未満では短時間での記録消去が困難となりやすい。
一方30nmを越すとやはり光学的なコントラストが得にくくなり、また、熱容量が大きくなるために記録感度が悪くなるので好ましくない。さらにまた、相変化に伴う記録層の体積変化は記録層が厚くなるほど大きくなり、繰返しオーバーライト時に保護層及び基板表面等に微視的な変形が蓄積され、ノイズの上昇につながる。
記録層3としては本発明においては、特に、結晶・非晶質いずれの状態も安定でかつ、両状態間の高速の相転移が可能である、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする、MSbTe(MはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、S、Se、Ta、Nb、V、Bi、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh、希土類元素のうちの少なくとも1種)合金薄膜が好ましい。
そのために、上記記録層の組成はMww (Sbz Te1-z )1-w (0≦w≦0.2、0.5≦z≦0.9、MはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、N、S、Se、Ta、Nb、V、Bi、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh、希土類元素のうちの少なくとも1種)合金薄膜が好適に用いられる。
結晶化速度及び結晶化温度を微調整するために、Sbの一部をBiに置換しても良い。
In、Ga及びGe、Sn、Si、Pbは結晶化温度を上昇させて経時安定性を高める効果ある。また、In、Gaはスムースな非晶質マークと結晶領域との境界を形成し、マーク長記録、すなわち、マーク端検出におけるノイズを小さくできる。
O、S、SeはTeと同族であり、Teの鎖状ネットワークに入り込んで、Sb70Te30共晶合金の結晶化温度、屈折率、粘度を微調整するのに利用できる。
繰返しオーバーライト耐久性の観点からはいずれの原子も単独では10原子%以下とすることが望ましい。また、特にO、S、N、Seは5原子%を超えると結晶化速度が遅くなりすぎる傾向があるので、5原子%以下とすることがより好ましい。
Inは結晶化温度を上昇させて経時安定性を高める効果があり、室温での保存安定性を確保するためには少なくとも3原子%は必要である。また、スムースな非晶質マークと結晶領域との境界を形成し、マーク長記録、すなわち、マーク端検出におけるノイズを小さくできる。
Ag又はZnは成膜直後の非晶質膜の初期化を容易にするために用いられる。初期化方法にもよるが10原子%以下の添加で十分であり、多すぎるとかえって経時安定性を損ねたり、上記マーク端検出におけるジッタが悪化するので好ましくない。
Inの析出しやすさとGeによる初期化のしにくさを克服するために、Mda Inb Gec Sbd Tee (ただし、MdはAgもしくはZnの少なくとも1種であり、0.01≦a≦0.1、0.001≦b≦0.1、0.01≦c≦0.1、0.5≦d≦0.7、0.25≦e≦0.4、0.03≦b+c≦0.15、a+b+c+d+e=1.0である)なる組成を有する5元記録層を用いても良い。
本発明の要点は、とりわけ低体積抵抗率の反射層5を用いることによって、線速マージンや記録パワーマージンを改善したことにある。
特に、上部保護層4を30nm以上と比較的厚くした場合に顕著な効果が得られる。
上部保護層4を厚くした例はあるものの、具体的な応用例がピット位置記録法に限定されており、反射層への熱の拡散をむしろ抑制し、おおむね10m/s以上の高線速における記録において高感度化することを主眼としていた(USP5665520、5674649等)。
また、上部保護層4の内部に繰返しオーバーライト時のヒートサイクルによる塑性変形が蓄積され、オーバーライト回数に伴い劣化が進みやすいという問題が生じる。これも、マーク長が短いものだけで構成されるマーク位置記録よりも、長いマークが混じるマーク長記録の場合に顕著になる。
本発明によれば、低線速での記録再生において、厚く設けた上部保護層4に極めて低体積抵抗率の反射層5を組み合わせることにより、相変化による位相差δを有利に利用でき、なおかつ、上部保護層の薄い従来の急冷構造よりも記録感度および線速依存性を改善できるという効果をも得られる。
位相差の効果δを積極的に利用しない場合でも、比較的厚い上部保護層と極めて低体積抵抗率の反射層5を用いることの利点はここにある。
これは、図14を用いて以下のように説明される。
記録のためにまず記録層温度を融点以上に昇温する必要があるが、熱伝導には有限の時間が必要であるから、昇温過程(初期の数十ナノ秒以下)では、平面方向の熱伝導は顕著ではなく、膜厚方向の熱伝導のみでほとんど温度分布が決まる(図14(a))。
一方、昇温開始後数十nsec以降になると図14(b)に示すように横方向の熱伝導による温度分布の平面的変化が重要になる。
なぜなら、膜厚方向は熱拡散距離の有効範囲が高々0.1μmであるのに対して、平面方向は熱拡散距離の有効範囲が1μmのオーダーだからである。
低線速では光ビームの走査速度が遅いため、同一照射時間でも周辺部まで加熱しながら進むことになり、平面方向の熱伝導の影響が大きい。
また比較的長時間連続して記録光ビームが照射される長マークの後端部分でも、平面方向の熱伝導の影響が大きい。
図14(b)において、上部保護層の熱伝導率を低くし、適度な厚みを持たせた方が反射層への熱の流れに一定の遅延効果をもたらすことができ、平面方向の温度分布を制御しやすくなるのである。
本発明において問題としている反射率の熱伝導率は、あくまで、実際に上部保護層上に形成された薄膜状態での熱伝導率である。一般には薄膜の熱伝導率はバルク状態の熱伝導率と大きく異なり、小さくなっているのが普通である。
さらに、成膜条件によって結晶性や不純物量が異なり、これが同じ組成でも熱伝導率が異なる要因になる。
本発明において良好な特性を示す反射層5を規定するために、反射層の熱伝導率は直接測定することも可能であるが、その熱伝導の良否を電気抵抗を利用して見積もることができる。
薄膜の電気抵抗はその膜厚や測定領域の面積で規格化された抵抗率値で表す。体積抵抗率と面積抵抗率は通常の4探針法で測定でき、JISK7194によって規定されている。
本発明において好ましい反射層は体積抵抗率でいうと20nΩ・m以上150nΩ・m以下、好ましくは20nΩ・m以上100nΩ・m以下である。
体積抵抗率20nΩ・m以下の材料は薄膜状態では実質的に得にくい。
体積抵抗率150nΩ・mより体積抵抗率が大きい場合でも、たとえば300nm以上の厚膜とすれば面積抵抗率を下げることはできるが、本発明者らの検討によれば、このような高体積抵抗率材料で面積抵抗率のみ下げても、十分な放熱効果は得られなかった。
遅くなってしまうからと考えられる。
また、このような厚膜では成膜に時間がかかり、材料費も増えるため製造コストの観点から好ましくない。
膜厚300nm以下で面積抵抗率0.2以上0.9Ω/□以下が得られるような、低体積抵抗率材料を用いるのが特に好ましい。
上記のような低体積抵抗率を得るためには、不純物含有量2原子%以下のAl合金(純Alを含む)または不純物含有量5原子%以下のAu又はAg合金(純Au、Agを含む)膜とするのがよい。
この他、AlにTa、Ti、Co、Cr、Si、Sc、Hf、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo、又はMnを0.2原子%以上2原子%以下含むAl合金は、添加元素濃度に比例して体積抵抗率が増加し、また、耐ヒロック性が改善されることが知られているので、耐久性、体積抵抗率、成膜速度等考慮して用いることができる。
経時安定性をより重視する場合には添加成分としてはTaが好ましい。
一方、上記反射層がAg合金薄膜である場合にはTi、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo、又はMnを0.2原子%以上5原子%以下含むものが望ましい。
経時安定性をより重視する場合には添加成分としてはTi、Mgが好ましい。
不純物の添加は一般的に結晶粒径を小さくし、粒界の電子散乱を増加させて熱伝導率を低下させると考えられる。
添加不純物量を調節することは、結晶粒径を大きくすることで材料本来の高熱伝導率を得るために必要である。
なお、反射層は通常スパッタ法や真空蒸着法で形成されるが、ターゲットや蒸着材料そのものの不純物量もさることながら、成膜時に混入する水分や酸素量も含めて全不純物量を下げる必要がある。全不純物量を2原子%以下とするためには、プロセスチャンバの到達真空度は1×10-3Pa以下とすることが望ましい。
あるいは、意図的な添加元素を1原子%より多く含む場合は、成膜レートを10nm/秒以上として予期しない不純物混入を極力防ぐことが望ましい。
上記のように薄膜状態の体積抵抗率は金属材料、組成のみによっては決まらないから、
たとえばAl合金反射層材料を規定した先願(特開平3−1338、平1−169571、平1−208744、平2−128332等)もあるが本願の層構成を示唆するものではない。
反射層の多層化は、高体積抵抗率材料と低体積抵抗率材料を組み合わせて所望の膜厚で所望の面積抵抗率を得るためにも有効である。
反射層を複数の金属膜からなる多層反射層とし、全膜厚を40nm以上300nm以下、多層反射層の厚さの50%以上が体積抵抗率20nΩ・m以上150nΩ・m以下の金属薄膜層(多層であっても良い)とするのが好ましい。
具体的にはZnS、ZnO、TaS2 もしくは希土類硫化物を単独もしくは混合物として20モル%以上90モル%以下含み、他方融点もしくは分解温度が1000℃以上の耐熱性化合物からなる複合誘電体が望ましい。
より具体的にはLa、Ce、Nd、Y等の希土類の硫化物を50モル%以上90モル%以下含む複合誘電体が望ましい。
あるいは、ZnS、ZnOもしくは希土類硫化物の組成の範囲を70〜90モル%とすることが望ましい。
特にZnOと混合されるべき材料としては、Y、La、Ce、Nd等希土類の硫化物あるいは硫化物と酸化物の混合物が望ましい。
しかしこの出願はむしろ、高感度化のために反射層膜厚を100nm以下とすることが好ましいなど反射層への放熱を制限して高感度化を図ったものであり、本願における、冷却速度を高速に保つために薄膜状態の反射層の熱伝導率をとりわけ高いものに制限するという思想は全く見られない。
少なくとも、本願では、該先願において対応不十分な10m/s以下における低線速域での、記録感度改善とマーク長記録における非晶質マークの良好な形成(再結晶化の抑制)を確実にするという点で、高密度マーク長記録における特性を飛躍的に改善できる。ま
た、そのために、実際の薄膜状態での熱伝導率の重要性に注目し、簡便にかつ高精度に実測可能な体積抵抗率に注目している。
次に、本発明のより好ましい設計例について説明する。すなわち、光学設計の最適化によりコントラストを高くとりつつ、安定なトラッキングサーボ特性を得る。
変調度(Modulation、以下ではModと略す)は、マーク長変調記録においてすべてのマーク長が含まれるランダムパターンを記録した際、再生信号をDCカップリング状態で観測した際のエンベロープ再生信号の振幅とその上端のレベルの比
Mod=(エンベロープ再生信号の振幅)/(エンベロープ上端レベル)(2)
によって定義される。高SN(signal to noise )比を達成するためには、この変調度を高くすることが必要である。
CDもしくはDVDにおける変調度とは、図2に示すようにランダム信号を記録したときのDC再生信号(直流成分を含む再生信号)において、最長マーク(CDでは11T、DVDでは14T)のトップの信号強度Itop と、信号振幅I11との比I11/Itop (もしくはI14とItop の比、I14/Itop )として定義される。
Itop は実際上、マーク間(結晶状態)の溝内での反射率に相当する。
一方、幅1μm程度より狭い溝内に記録した非晶質マークを、同程度の径の集束光ビームで読み出した場合には平面波の干渉を考慮しなければならない。
この場合の信号振幅は近似的には反射率差による振幅Iref と位相差による振幅Iphase と上記の和として
I11=Iref +Iphase (3)
としてあらわされる。
δ=( 結晶領域を通過した反射波の位相) −
( 非晶質領域を通過した反射波の位相) (4)
によって定義される。
δが負の場合は見かけ上非晶質マーク部で溝深さが深くなるのと同じ効果を有し、δが
正の場合は見かけ上非晶質マーク部で溝深さが浅くなるのと同じ効果を有する。ただし、位相は2πの周期で既約化できるので、−π<(位相差)<0の場合は、π<(位相差)<2πの範囲の値に置き換えても同等である(逆の置き換えも可)。
Φ=( ランド部からの反射波の位相) −( 溝部からの反射波の位相) (5)
ここで、基板の屈折率をn、dを溝深さとすると具体的には
Φ=−4πnd/λ (6)
である。
この定義では、基板面入射光から見て、溝部のほうが近くにあるからΦ<0である。通常は、dは|Φ|<πとなるように選ばれる。すなわち、−π<Φ<0である。前述のように2πを加えても同じ結果が得られるから、π<Φ<2πとも記述できる。
Δ=δ+Φ=δ−4πnd/λ (7)
を考慮する必要がある。
従って、局所的に形成された非晶質マークは、見かけ上溝内に位相差δを有する凹凸ピットが存在する形になり、単なる結晶状態と非晶質状態の反射率差以上にコントラストすなわち変調度がとれる場合がある。すなわちIphase がI11を増大させる方向に寄与する場合がある。
(7)式より、Δが−πに近づくためには、位相差δは見かけ上非晶質部で溝が深くなるように変化することが望ましい。すなわち、
−π<δ<0 (8)
が好ましい。
さて、相変化方式の書き換え型光ディスクを再生専用のCDやDVDプレーヤーやROMドライブとでそのまま再生できるためには、記録信号品質のみならずサーボ信号にも留意する必要がある。
ここで、問題となるサーボ信号としてはプッシュプル信号とラジアルコントラストがあげられる。
RC=2{(IL −IG )/(IL +IG )} (9)
ここで、IL 、IG はそれぞれランド部、溝部にの反射光強度である。
ラジアルコントラストは、特定トラックへのアクセスにおいて、目的トラック近傍において所定の本数のトラックを正確に移動する精密制御において用いられる。
実際はフォーカスサーボのみをかけて得られるトラック横断信号の溝部とランド部強度を測定する。
記録前後で定義されるが、記録後のラジアル・コントラストは記録による反射率低下部の信号強度を低域通過フィルタによって平均化した強度ILa、IGaを用いる。
PPb=|I1 −I2 | (10)
で定義される。
記録後のプッシュプル信号PPaは、やはり、差信号の平均値(低周波フィルタ通過後の値)を用いる。いずれも一般的な定義である。
ただし、CDの規格ではPPbをIG で、PPaをItop で規格化した値を用いる。Itop に替わって記録後の溝の平均反射率IGaや(IGa+ILa)/2を用いて規格化する場合もある。
本発明では、プッシュプル信号の振幅そのものをPPbもしくはPPbで表すこととする。
さらに、CDにおいては、トラック中心から0.1μmオフセットした状態の|I1 −I2 |値を用いているが、本発明ではPPaの絶対値自体の精度を問題にしているわけではないので、特にこの点は区別して考えない。
すなわち、フォーカスサーボのみをかけ、トラッキングサーボをはずしたときに光検出器からえられる出力である。図5において|I1 −I2 |a信号は、記録後のI1 、I2 信号の低周波通過フィルタ(LowPassFilter 、LPF)通過後の信号、すなわち平均値である。
I1 、I2 はトラック横断時のゆっくりした変動に加えて、いずれのチャネルの信号も記録後には高周波成分である記録信号により図のような変動が重畳される。また、絶対値は異なるものの、和信号I=I1 +I2 も同様のパターンの信号となるから、近似的にはI1 、I2 の高周波成分の変調度はRF信号の変調度と同じとみなせる。
ピット位相差を利用する再生専用ドライブとの互換性を確保するためには、変調度とサーボ信号のバランスを考慮して、位相差が−π/2と−πの間(もしくはπ3/2と2πの間)であることが望ましい。すなわち再生専用ドライブとの互換性の観点からは
−π<Δ<−π/2+π/8 (11)
の範囲に設定することが望ましい。
+π/8の項は、厳密な−π/2からπ/8程度のぶれは許容範囲とみなせるからである。ただし、−πを越えることはプッシュプル信号の極性が反転するので好ましくない。従って−πを越えてのずれは好ましくない。
が変化するのと同等の効果が生じ、サーボ信号が記録前後で大きく変化するのでサーボが不安定になり易いという問題点が生じる。
さて、上記の説明では、非晶質状態の反射率低下を考慮しなかった。凹ピットと異なり、記録マークでは位相差のみならず、マーク内の反射率も低下するが、図3の説明において、マーク部分の反射率そのものが低下すれば、その部分からの光線の寄与は少なくなるので、干渉効果そのものは相殺される。
この場合、記録後のプッシュプル信号PPaがあまりにも小さくなりすぎてトラッキングサーボが不安定にならにようにするためには、なおさら位相差Δがプッシュプル信号を強める方向でなければいならない。すなわち、
−π/2−π/8< Δ <−π/2+π/8 (12)
になるのが望ましい。
NPPR=(PPb/IG )/(PPa/IGa)
=(PPb/PPa)(IGa/IG )
=(PPb/PPa)Itop (Itop −I11/2)/IG
=(PPb/PPa)(Itop /IG )(Itop −I11/2)
=k・Itop (PPb/PPa){1−(I11/Itop )/2)}
=k・Itop (PPb/PPa)(1−Mod/2)
(ここでk=Itop /IG ) (13)
いずれも大きくなればNPPRを小さく、すなわち記録前後での変化量を少なくできる。CD−RWにおいてはNPPRは概ね1.0程度より小さいことが好ましいとされる。Mod及びPPaの双方を大きくする観点からは(11)式、PPaを優先して大きくする観点からは(12)式が成立することが望ましい。
また、意図的にPPbを予め小さめに設定する場合には、
−π/2<Φ<−π/8 (14a)
となるように溝形状を浅めに設定する。より好ましくは、
−π/4−π/8<Φ<−π/8 (14b)
とする。
この場合、記録による位相差変化δによる記録前後のRC及びプッシュプル信号の変化を小さくするためには、記録後の非晶質マークにおける全位相差Δが記録前の溝のみの位相差Φと−π/2に対して対称な量、すなわちΔ=−π−Φになっていれば、記録前後で
の位相差の影響はほとんど同じになる。
(−π−Φ)−π/8< Δ <(−π−Φ)+π/8 (15)
の範囲であることが望ましい。
なお、本発明をCD−RW(記録再生波長780nm)に応用する場合、CDとの互換性の観点からは、記録前後の溝信号、例えば記録前後それぞれのプッシュプル信号やラジアルコントラスト、またその比などに配慮して溝形状等を決める必要がある。
しかし、本発明者らの検討によれば、上述したような層構成においては、溝深さは20nm以上45nm以下が好ましい。これより深いと記録後のプッシュプル信号が0.1より過剰に大きくなりやすく、また、記録後のラジアルコントラスト値が0.6以上と記録前の値0.1〜0.2に比べて過剰に大きくなり、サーボの安定性に問題が生じることがわかった。
溝深さを浅くしすぎるとスタンパ製造や射出成形による溝形状形成が困難になり、あるいはラジアル・コントラストやプッシュプルの下限規格を下回る。また、溝壁による記録層閉じ込め効果が薄れ、繰返しオーバーライトによる劣化が促進される点でも好ましくない。従って、好ましくは20nmより深くし、より好ましくは30nmより深くする。
またΔを−π/2近傍とするためには、δを−0.34πから−0.14πとすればよい。
ウオブルの存在による劣化促進のメカニズムは必ずしも明らかではないが、記録用光ビームの一部が溝の側壁に照射されやすくなるためではないかと考えられる。
溝壁の蛇行があれば、光ビームが、わずかではあるが溝壁に照射されやすくなる。
薄膜の密着性が悪い溝壁部や溝角部で応力集中が起きやすい等により繰返しオーバーライト時の熱ダメージによる劣化が起きやすいと考えられるので、ここに光ビームの一部でも照射されれば、劣化は促進されると考えられる。
オブルが存在する場合、溝幅が狭すぎるとかえって上述の溝壁部の劣化現象が顕著になるため劣化が著しい。
すなわち、繰返しオーバーライト耐久性の面から溝幅に制限があり、0.6μmより広いと相変化媒体一般の現象として、また、0.4μmより狭いとウォブルの存在によるオーバーライト耐久性による劣化が著しくなるので好ましくない。CD−RWにおいてはより好ましくは0.45μm以上0.55μm以下である。
例えば、波長630〜660nm、NA=0.6〜0.65で記録再生を行う相変化DVDも提案されているが、再生専用DVDと互換性を取るためには、まず、変調度がCDと同様に少なくとも50%はあることが必要である。
つまり、凹凸ピットの位相差をCDよりさらに±πに近づけるよう、深めのピットを採用せざるを得なくなっている。実際のピット深さは再生波長が650nmまで短くなるので、現行CDとほぼ同じであり、100nm前後である。
ここで、DPD方式とは、図4に示すように、ビーム進行方向(ピット配列方向)にそって、4分割に配列された光検出器A、B、C、Dの出力を用いて(B+C)信号の位相と、(A+D)信号の位相の位相差として定義される。
あるいは、TangentialPushPullと呼ばれる量が問題となる。これは、(C+D)−(A+B)信号として定義される。
−π<Δ<−3/4π ( 16)
の範囲であることが望ましい。
DVDと再生互換性を確保するためには、溝内記録であることが望ましいが、上記のように溝自体のプッシュプル信号を小さ目にする必要があり、そのためにCD−RWと同様に溝深さを浅くして溝深さによる位相差を小さくする必要がある。記録再生波長がCD−RWの780nmに対して、630〜660nm程度となるからやや狙い目は浅めになるが、やはり25から40nmの範囲であることが望ましい。
(層構成設計例1)
第一の好ましい層構成は、波長600以上800nm以下の光ビームで記録・再生・消去を行うものであって、下部保護層の膜厚が70nm以上150nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下、相変化記録層の膜厚が15nm以上25nm以下、上部保護層の膜厚が30nm以上60nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下、反射層の膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下である。
以下の図においては、−π≦δ≦0なるδは、2πを加えて、π≦δ≦2πとなるように表示している。(8)、(11)、(12)、(14)、(15)、(16)式において、すべてこのような置き換えをすればすべての条件式がそのまま成立する。
本発明で特に好ましいとしている、Sb70Te30共晶点近傍組成に20原子%程度までの添加元素を加えた記録層では、図6〜10とほぼ類似の光学特性が発揮される。
また、Au、Ag、Alを主成分とする反射層である限り、反射率の絶対値は多少変化するものの、反射層組成にもほとんど依存しない。
例えば、Ag5 Ge5 Sb70Te20ではnc =2.61−4.43i、na =3.63−2.70iであり、Ge6 Sb69Te25ではnc =2.34−4.06i、na =3.54−2.56iである。
下部保護層依存性を見る限り、通常は振幅の反射率成分Iref 変化は小さく、変調度は分母であるItop 、すなわち結晶状態の反射率に強く依存する。
従って、Iref は結晶状態の反射率の極小点をとる膜厚より、厚めの膜厚が望ましい。なお、結晶状態反射率に対しては、通常、規格もしくはドライブ側の制限で決まる許容下限が存在するので、あまり低すぎることは好ましくない。通常は、最低でも10〜15%は必要とされる。
結晶状態の反射率が極小となる下部保護層膜厚は反射率が高い記録層であれば実質上、保護層の屈折率のみで決まる。
d1 、d2 に2.1/n(nは屈折率)を掛ければ、各屈折率における極小点膜厚がほぼ得られるが、通常n=2.0〜2.3であるから、d1 はせいぜい85nm程度である。
逆に、2.3より大とすると、極小点の反射率が低くなりすぎ10%を達成できず、フォーカスやトラッキングサーボが困難になるので好ましくない。
さて、以下では第一の反射率極小点付近における位相差δの下部保護層膜厚依存性に注目する。
図10に下部保護層95nm、上部保護層40nmの場合の記録層膜厚依存性を示した。記録層10〜20nmの付近で急激に位相差δが変化しており、(8)式の条件(ここではπ<δ<2π)を成立させるには記録層膜厚が概ね17nm以上でなければならないことがわかる。
さらにまた、上部保護層膜厚30nm以下では、記録層膜厚20〜25nm程度においては、Iref の最適範囲において、このような急激なδ変化がありうるが、製造ばらつきによって、ディスクごとの変調度や記録後のプッシュプル信号にばらつきを生じるので、製造マージンの観点から望ましくない。
以上の観点から、結晶状態反射率Rtop の下部保護層D1 依存性において、
∂Rtop /∂D1 >0 (17)
なる部分を用いることが好ましいことがわかる。
なお、生産性の観点からは下部保護層膜厚は150nm以下にとどめるのが望ましい。なぜなら、現在、誘電体保護層のスパッタ法による成膜速度は高々15nm/秒であり、その成膜に10秒以上かけることはコストを上昇させるからである。
一方、製造上膜厚分布はd0 に対して何%かで決まり、通常はd0 ±2〜3%が均一性の限度である。従って、d0 が薄いほど膜厚の変動幅Δdは小さくなり、ディスク面内あるいはディスク間の反射率変動を抑制出来るので有利である。
下部保護層膜厚を150nmをこえて厚くしないとすることのもう一つの効果は、スパッタ成膜時における発熱の抑制である。
DVDのように厚さ0.6mmのプラスチック(特にポリカーボネート)基板上に、相変化媒体を形成しようとする場合、スパッタ成膜時の発熱による基板の変形が問題となる。
また、150nmという膜厚は、特に屈折率2.0〜2.3の下部保護層を用いた場合、ちょうど1波長相当の膜厚であり、膜厚0と光学的に同等になる点でもある。光学的に同等ならば、不必要に厚膜をつけて、製造上の問題を大きくする必要はないわけである。
CD−RWとして使用する場合、線速2.4m/sのオーバーライトでは30nmより記録層膜厚が厚いと、CD−RWとしての規格上1000回の耐久性が満足されず不適当であった。このため、可能な限り25nm以下、より好ましくは20nm以下の記録層膜厚で、位相差δを有利になるようにしたい。
上部保護層膜厚が厚くなるほど、この傾向は顕著であり、60nmでは16nm以上の記録層膜厚では、すべての下部保護層膜厚で、溝有利の位相差をとることがわかる。このように、本発明の一つの要件である、30nm以上と厚い上部保護層は、位相差δを有効に使用するために必要な要件であることがわかる。
また、上部保護層膜厚が60nmより厚いと、本発明の低体積抵抗率の反射層を用いても放熱効果が小さい。
15nm以下の記録層膜厚については、成膜初期の均一性等にも留意が必要で、できれば15nm以上の膜厚で最適化することが望ましい。
さて、繰返しオーバーライト耐久性を考慮した場合、記録層膜厚D2 及び上部保護層膜厚D3 は薄い方が好ましい。しかし、ただ、D2 、D3 を薄くするのでは位相差δが(8)式の範囲に入らない。
より具体的には、すでに述べた、70≦D1 ≦150nm、15≦D2 ≦20nm、30≦D3 ≦60nm、及び(17)式の制限のもとで(D3 、D2 )の組み合わせが、
−5D2 +120≦ D3 ≦−5D2 +140 (18)
の関係を満たすことが望ましい。
本層構成はとりわけ、未記録すなわち結晶状態の反射率を15〜20%に設定するCD−RWのような記録媒体において有用である。
特に、(8)、(11)、(12)、(15)式のいずれの条件で位相差を制御するかは、個々の商品設計の範囲であるが、相変化による位相差δを積極的に活用するためには、本発明要件の一つである、記録層膜厚10〜30nmに対しては、上部保護層膜厚を30nm以上、より好ましくは60nmすることが望ましいことがわかる。
図11、12は、設計例1と同様の材料を用いた場合の、波長650nmにおける計算例である。各層の屈折率は波長650nmにおける実測値を用いている。記録層は18nm、反射層は100nmで一定とした。
図11、12はそれぞれ上部保護層20nm及び40nmの場合である。650nmというDVDに対応した波長においてもやはり、上部保護層が厚い場合にはδが(8)式を満足しうることがわかる。
なお、650nmにおける計算例で用いた光学定数は、Al合金反射層1.69−5.34i、ZnS:SiO2 保護層2.12−0i、記録層(結晶状態)nc =2.8−4.1i、記録層(非晶質状態)na =3.7−2.4i、基板nsub =1.56−0iで実測値である。
設計例1においては、繰返しオーバーライト耐久性、生産性、及び位相差δの観点から、下部保護層膜厚として(17)式の領域を用いることが望ましいとした。ここでは、上部保護層が概ね40nm以上であれば記録層膜厚が20nmより薄い場合Rtop の極小点より厚い下部保護層を用いている。
しかし、上部保護層が概ね40nmより厚い場合には、どんな下部保護層膜厚であっても位相差δが(8)式を満たすような記録層膜厚が10nm以上30nm以下の範囲に存在する。
∂Rtop /∂D12<0 (19)
なる領域を有効活用するために、図13に示すように第1下部保護層2a(厚さD11)、第2下部保護層2b(厚さD12)と下部保護層を2層化する。
ここで第1下部保護層2aは、基板とほぼ同じ屈折率を有し、単に基板の熱変形を抑制する機械的・熱的保護層として機能し、光学的には基板そのものとみなせる。
第2保護層2bは光学的な保護層とみなされ、図6〜9及び図11、12における下部
保護層膜厚依存性においては、第2保護層膜厚D12のみを考慮すればよい。D12は(19)式の範囲で光学特性、すなわち反射率と位相差δを主に注目して選定すればよい。
また、2層の下部保護層全体の膜厚はやはり70nm以上150nm以下とすることが、繰返しオーバーライト耐久性、生産性の観点から好ましい。
このような下部保護層2層化は、(17)及び(18)式の条件下での層構成設計で、基板変形をさらに抑制したい場合に用いることができる。
通常用いられるガラスやプラスチック基板の屈折率は1.4〜1.6程度である。基板とほぼ同等の屈折率を有し、かつ機械的強度にすぐれる保護層材料としては、具体的にはSiC−SiO2 、SiC−SiO2 −MgF2 、ZnS−SiO2 −MgF2 混合膜である。
より具体的に、ポリカーボネート樹脂基板と同等の屈折率(1.55)を与えるものとして、(SiC)38(SiO2 )57(Y2 O3 )5 (屈折率n=1.57)や(SiC)19(SiO2 )5 (MgF2 )76(n=1.49)が挙げられる(いずれもモル%)。
なお相変化による位相差δは、上記のように層構成(各層厚み)と各層の屈折率から計算によって推定できる。また、平面において結晶状態と非晶質状態の2つが明確な境界を有して接していれば、位相差光学顕微鏡で見積もることもできる。
以下の記録方法を併せ用いることで、記録層の再凝固時の冷却速度を正確に制御し、より一層広い線速範囲および記録パワーで正確なマーク長記録を行うことができる。
本発明の相変化媒体はこれまでGeTe−Sb2 Te3 擬似2元合金系で用いられてきた記録パワーPwと消去パワーPeの2値で変調する場合よりも、オフパルス区間を設けることが望ましい。
長さnT(Tは基準クロック周期、nは自然数)のマークを形成する際には、時間nTを、以下のようにn−k個にパルス分割し、
α1 T、β1 T、α2 T、β2 T、・・・・、αm T、βm T、
(但しn−j=α1 +β1 +・・・・・+αm +βm (0≦j≦2)、
m=n−k(k=0、1、2)かつnmin −k≧1)
αi T(1≦i≦m)なる時間に記録層を溶融させるに足る記録パワーPw(>Pe)を照射し、βi T(1≦i≦m)なる時間には、0<Pb≦0.5Pe(ただし、βm Tにおいては、0<Pb≦Peとなりうる)なるバイアスパワーPbを照射してオーバーライトする。
3個に分割された分割パルスの、1番目のパルスP1と2番目のパルスP2が照射される間の位置を想定している。
図16(a)では後続の記録パルスによる加熱の影響が前方に及ぶために、1番目の記
録パルス照射後の冷却速度が遅く、かつオフパルス区間でもPeが照射されるため、オフパルス区間での温度降下で到達する最低温度TLが融点近傍に留まっている。
非晶質マークは1番目のパルス照射時に溶解し、その後のオフパルス時の急冷によって形成される。
上記のm、j、αi 、βi で規定されるパルスストラテジーを線速によって変更することなく、クロック周期Tのみをおおむね線速に反比例させて記録密度を一定に保てることが望ましい。
Pw、Pe、Pbを線速に応じて変化させることは、パルスストラテジーとは別の問題であり、適宜行われる。
なぜなら、パワーの変更は分割パルス発生回路とは無関係に行われるからである。
またバイアスパワーPbを照射する時間(オフパルス時間)はすべて0.5Tとする。
少なくとも線速2.4m/sから5.6m/sの範囲(コンパクトディスクにおける2倍速程度の速度)においてEFM変調された非晶質マークを形成する際に、マーク間では非晶質マークを再結晶化しうる消去パワーPeを照射し、長さnT(nは3〜11までの整数)のマークを形成する際には、上記パルスストラテジーにおいて、m=n−1、α1 =0.1〜1.5、αi =0.1〜0.6(2≦i≦m)、βi =0.4〜0.9(1≦i≦m)とし、αi T(1≦i≦m)なる時間には記録層を溶融させるにたる記録パワーPw(>Pe)を照射し、βi T(1≦i≦m)なる時間には0<Pb≦0.5PeなるバイアスパワーPbを照射するのがよい(ただし、i=mにおいては0<Pb≦Peもしくは0≦βm <0.5となりうる)。
すなわち、同じパルスストラテジーで2および4倍速記録ができる。
特に、4倍速においては、上記パルスストラテジーを用いた場合、各nTマーク間のマーク長をより厳密に調整するため、最後のオフパルス区間βm Tの長さのみを、各マーク長もしくは後続マーク間長または後続マーク長の組み合わせによって、微調整することも有効である。
これは図15においてn−jを前後のマーク長やマーク間長に応じて微調整することを意味する。
極端なケースとして最後のβm =0とする場合もある。
以下の実施例において、溝形状は、光学回折法を用い、U溝近似により求めた。もちろ
ん、走査型電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡で溝形状を実測しても良い。この場合、溝幅は、溝深さの半分の位置における溝幅とする。
各層組成は蛍光X線分析、原子吸光分析、X線励起光電子分光法等を組み合わせて確認した。膜厚は、蛍光X線強度を、触針計で測定した膜厚で校正して求めた。
反射層の面積抵抗率は4探針法抵抗計{Loresta FP(商品名)、三菱油化(現ダイアインスツルメント)社製}で測定した。
反射層の抵抗率は、ディスク基板に下部保護層、記録層、上部保護層、反射層を形成したのち測定した。あるいは、ガラスもしくはポリカーボネート製ディスク基板に反射層を成膜して測定した。ガラス、ポリカーボネートや誘電体保護層は絶縁物であるため、抵抗率測定に影響はない。また、ディスク基板は直径120mmで、本測定においては実質的に無限大の面積とみなせる。
抵抗値Rから、下記式に基づいて面積抵抗率ρS及び体積抵抗率ρVを計算した。
ρS=F・R (20)
ρV=ρS・t (21)
成膜直後の記録層は非晶質であり、バルクレーザーで初期化を行った。すなわち、長軸約70μm、短軸約1.3μmに集光した波長830nmのレーザービームをパワー500〜600mW、線速3.5m/sで照射して全面結晶化させ初期状態(未記録状態)とした。このパワーでは、記録層はいったん溶融して再凝固する再に結晶化していると考えられる。
2倍速でのクロック周期は115nsecであり、線速切り替え時にはクロック周期Tを線速に反比例させた。
再生速度は2倍速であり、ジッタの許容値はCD規格で定められた17.5nsecとした。
オーバーライト耐久性の評価は、2倍速で繰返しオーバーライトしたときに3Tマークのジッタが17.5nsec以下に保たれる回数を目安とした。
基板上に、下部保護層(ZnS)80(SiO2 )20を100nm、記録層Ag5 In5 Sb61.5Te28.5を18nm、上部保護層(ZnS)80(SiO2 )20を50nm、反射層Al99Ta1 合金を200nm設けた。
すべての膜はスパッタ法で真空を解除せずに作成した。基板は厚さ1.2mmのポリカーボネート基板で、特に断らない限り、射出成形により1.6μmピッチで幅0.53μm、深さ32nmの溝が形成されている。記録はこの溝内に行った。
酸素、窒素等の不純物はX線励起光電子分光での検出感度以下であった。全部あわせてもほぼ1原子%以下であると見なせる。
保護層の膜密度は3.50g/cm3 で理論的バルク密度3.72g/cm3 の94%であった。
Pe/Pw=0.5で一定とし、Pwと線速を変化させて3Tマークジッタを測定した。なお、記録は図17に示すパルスストラテジーを用いたが、線速2.8m/s以上ではβm TにおいてPb=Peとしている。
また、媒体はあらかじめEFMランダム信号を10回オーバーライトしたのち、本測定に用いた。
図18において、線速2.4m/s、記録パワー12mWを中心に線速4.8m/sまで広いマージンが確保できているのがわかる。
なお、線速1.2m/sで急激にジッタが悪化したが、パルスストラテジーにおいて記録パルス幅が1T、0.5T、0.5T、…(先頭パルスのみ1Tで2番目以降のパルス0.5T)となっているのを、1T、0.2T、0.2T、…(ただし、各記録パルスの先頭位置は同じ)と変更することで、良好なジッタが得られた。
また、媒体はあらかじめ所定の条件で10回オーバーライトしたのち、本測定に用いた。
4倍速においてPe/Pw=0.5とし、βm =0とした場合の測定結果を図21に示す。
2倍速、4倍速において、変調度、3Tマークジッタともに広い記録パワーマージンを有することがわかる。
なお、4倍速でのジッタが高めであるが、これは、本発明者らが使用したEFM信号発生信号源の高周波数での特性が悪いためで、それを差し引くとさらに、3〜5nsec良好なジッタが得られることがわかっている。
実施例1の基板及び層構成において、記録層組成をAg5 In5 Sb61Te29、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5、Ag5 In5 Sb62Te28の3種類とし、反射層を厚さ80nmの純Al(純度99.99%)として同様にディスクを作成した。
反射層は、到達真空度2×10-4Pa以下、Ar圧0.54Pa、成膜レート1.4nm/秒でスパッタ成膜した。体積抵抗率は46nΩ・m、面積抵抗率は0.58Ω/□であった。
バルクイレーザで初期化を行った。
図22(a)、(b)、(c)にそれぞれ記録層組成Ag5 In5 Sb61Te29、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5、Ag5 In5 Sb62Te28の3Tマークジッタの等高線図を示す。
Sb/Te比が大きくなるにつれて最小のジッタが得られる最適線速は高線速側にシフトするものの、広線速範囲、広記録パワー範囲において良好なジッタが得られている。
Sb/Te比をさらに増やして10m/s程度の高線速記録に対応させてもこの傾向は同じで、最高線速/最低線速の比2倍以上のジッタマージンが得られる。
反射層を厚さ80nmの純Agとした以外は実施例1と同様にディスクを作成した。
反射層は、到達真空度3×10-4Pa以下、Ar圧1.0Pa、成膜レート20nm/秒でスパッタ成膜した。体積抵抗率は32nΩ・m、面積抵抗率は0.4Ω/□であった。
本媒体に対し、記録線速マージンおよび記録パワーマージンを評価した。
図23に3Tマークジッタの等高線図を示した。
ジッタマージンの中心そのものは低線速側に移ったが、1倍速から3倍速にかけて広範なマージンを有することがわかる。
実施例1の基板及び層構成において、反射層をAl99Ta1 とAgの2層とし、記録層膜厚、上部保護層膜厚を種々組み合わせて、以下の4種の層構成を用意した。AlTa及びAg反射層の成膜条件はそれぞれ、実施例1及び実施例3と同じである。
(a)下部保護層(ZnS)80(SiO2 )20を110nm、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5記録層を16nm、上部保護層(ZnS)80(SiO2 )20を50nmとし、反射層は厚さ21nmのAl99Ta1 合金反射層と厚さ90nmの純Agの2層とした。
(c)下部保護層(ZnS)80(SiO2 )20を110nm、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5記録層を18nm、上部保護層(ZnS)80(SiO2 )20を50nmとし、反射層は厚さ21nmのAl99Ta1 合金反射層と厚さ90nmの純Agの2層とした。
(d)下部保護層(ZnS)80(SiO2 )20を90nm、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5記録層を18nm、上部保護層(ZnS)80(SiO2 )20を40nmとし、反射層は厚さ21nmのAl99Ta1 合金反射層と厚さ50nmの純Agの2層とした。
いずれにおいても、2〜4倍速で広範な線速マージン及び記録パワーマージンが得られた。
なお、Ag単層反射層では繰返しオーバーライト耐久性が1000回程度であったのが、この2層構成反射層を用いると5000回程度まで改善された。
反射層を厚さ180nmの、Siを0.66%(重量%)、Cuを0.34%、Mgを0.9%、Crを0.08%含有するAl合金とした以外は実施例1と同様にディスクを作成した。
反射層は、到達真空度4×10-4Pa以下、Ar圧1.0Pa、成膜レート20nm/秒でスパッタ成膜した。体積抵抗率は88nΩ・m、面積抵抗率は0.48Ω/□であった。
バルクイレーザで初期化を行った。
本媒体においても、実施例1と同様の線速・記録パワーマージンが確保できた。
反射層をAl98Ta2 とし膜厚400nmとした以外は実施例1と同様にディスクを作成した。
(比較例1)
この組成ではほとんどの成膜条件において150nΩ・m以上の高い体積抵抗率であった。
特に、成膜レート2nm/秒以下では、非晶質成分が多く含まれ、体積抵抗率が増加し170〜220nΩ・mとなった。
体積抵抗率190nΩ・mであった。
面積抵抗率は0.48Ω/□で、平面方向の放熱効果は十分であると考えられるが、記録感度が1〜2mW悪くなった。単位面積当たりの反射層の熱容量が大きくなりすぎ、その加熱に余分なエネルギーが消費されるためと考えられる。
また、線速4.8m/sでもジッタは改善されなかった。
同じ反射層で膜厚160nm(比較例2)としたところ、同等の記録感度が得られ、また、4.8m/sではジッタが改善された。しかし、今度は面積抵抗率が大きく、平面方向の放熱が不十分で2.4m/sにおける再結晶化が著しく、非晶質マークの形成が不十分であった。
なお、図25(a)、(b)に反射層膜厚が400nm(比較例1)と160nm(比較例2)の場合の3Tジッタ等高線図を示した。
いずれの場合も2倍速でのボトムジッタが実施例1に比較して2〜4nsec高めである。
この理由は、上述のように、特に、低線速において、十分な記録層冷却速度が得られておらず、非晶質マークの一部が再結晶化されるため、信号振幅が低下したり、歪んだりしているためである。
反射層膜厚200nmにおいて線速2.4m/sでは記録パワー10〜16mWにおいて良好なジッタが得られた。
しかし、今度は線速4.8m/sでの消去が不十分で、10回オーバーライト後にはほとんどの記録パワーでジッタが17.5nsec以上あった。
実施例1の層構成において下部保護層膜厚を80nm、記録層を20nmのAg5 In5 Sb59.5Te30.5、上部保護層膜厚を30nm、反射層を160nmのAl98Ta2 とし(比較例4)、線速マージン及び記録パワーマージンを評価した。
上部保護層を薄くしたことによる反射率増加を相殺し、光学的に同等の干渉構造を得るために、下部保護層膜厚を若干薄めにした。この程度の下部保護層膜厚の差は熱的にはなんら変化をもたらさず、実質的に上部保護層膜厚の差が熱拡散を支配している。
かる。
また、比較例4において記録層組成をAg5 In5 Sb61.5Te28.5として4倍速での消去特性を改善した媒体を作製した(比較例5)が、再結晶化のため2倍速での非晶質マーク形成が不十分であった。
実施例1の層構成において下部保護層膜厚を100nm、記録層を18nmのAg9 Ge6 Sb67Te18、上部保護層膜厚を40nm、反射層を250nmのAl99Ta1 とし、ディスクを作成した。各層の成膜条件は実施例1と同様である。
図27に3Tマークジッタの等高線図を示す。実施例1とほぼ同様の広い線速及び記録パワーマージンが得られた。
記録層を厚さ18nmのAg5 Sn6 Sb66Te23、反射層をAl99.5Ta0.5 とした以外は、実施例6と全く同様の層構成でディスクを作成した。反射層の体積抵抗率は55nΩ・mであった。
図28に3Tマークジッタの等高線図を示す。1〜4倍速にかけて幅広い線速・記録パワーマージンが得られた。
(a)実施例1の層構成において下部保護層膜厚を100nm、記録層を20nmのAg5 In3 Ge2 Sb68Te28、上部保護層膜厚を30nm、反射層を160nmのAl99Ta1 とし、ディスクを作成した。各層の成膜条件は実施例1と同様である。
(b)実施例1の層構成において下部保護層膜厚を103nm、記録層を16nmのAg5 In3 Ge2 Sb64Te26、上部保護層膜厚を42nm、反射層を200nmのAl99.5Ta0.5 とし、ディスクを作成した。各層の成膜条件は実施例1と同様である。
図29(a)、(b)に3Tマークジッタの等高線図を示す。1〜4倍速にかけて幅広い線速・記録パワーマージンが得られた。
上部保護層膜厚が厚い(b)のほうが(a)より広い線速マージンが得られた。
表−1に示す層構成を有するディスクを作製した。基板は実施例1と同じものを用いた。反射層はAl99Ta1 で膜厚160nmとした。参考として上部保護層38nmの場合も記載した。
変調度は記録パワーに対してあるパワー以上でほぼ一定になる(ex.図19)。そこで、記録パワー依存性において変調度がほぼ一定になり、ジッタが最小となる記録パワー(最適記録パワー)での変調度を比較した。
変調度、Itop 、PPb/PPa、NPPR、及び計算上の位相差δを同表中にまとめた。また、表−1において、2.4m/sにおける最適記録パワーでの繰返しオーバーライト耐久性を測定した。
上部保護層30nmの場合には繰返しオーバーライト耐久性に有利な80nm以上の下部保護層膜厚で、記録によるプッシュプルの変化が大きく、PPb/PPa>1.6あるいは、NPPR>1.0となり、記録後のサーボ特性が不安定であった。
上部保護層が38nmの時には、特に記録層膜厚が25nmより厚いと繰返しオーバーライト特性の劣化が比較的早く、記録層膜厚35nmでは500回以下で著しく劣化した。
本発明の媒体にCDとの互換性を持たせるためには、トラックピッチ1.6μm程度、溝幅0.4〜0.5μm、溝間幅1.2〜1.1μmとし、この溝内に記録を行う。
この場合、溝間における非晶質マークの幅が若干広めになり、見かけ上反射率起因の変調度が大きくなりうる。この非対称性を打ち消して、なおかつ溝内記録の変調度が溝間記録の変調度より大きくなるほど、非晶質マークが溝内記録に有利な位相差δを有することになる。
ModG −ModL >0 (22a)
ModG >0.5 (22b)
であれば、δは(8)式を満足していると考えられる。
ここで変調度は実施例6のように、記録パワーに対して飽和してほぼ一定となり、ジッタが最小となる記録パワー(最適記録パワー)での測定値を用いた。
溝内と溝間での最適記録パワーの差は極めて小さく、同一の記録パワーにて比較を行う。
さらに、変調度の絶対値そのものは振幅の反射率差成分Iref 及び再生系に依存するが、変調度の差
ModR =(ModG −ModL )/(ModG +ModL ) (23)
に注目して規格化すれば再生系及び反射率差に依存せず、位相差の影響を把握できる。
溝幅0.5μm、溝深さ35nmとした。溝による位相差Φ=0.28πである。
本実施例において上下の保護層は(ZnS)80(SiO2 )20、記録層はAg5 In5 Sb60Te30であり、反射層はAl99Ta1 (40nm)/純Ag(60nm)の2層構成を用いた。各層成膜条件は実施例4と同じである。
下部保護層(D1 )、記録層(D2 )、及び上部保護層(D3 )膜厚だけを種々変化させたので、その膜厚だけを表−2に示した。
本実施例においては、非晶質状態の反射率が最も低くなる付近を利用して、(3)式のIref 成分を有効に活用できる層構成を利用している。したがって、層構成設計例1において∂Rtop /∂D2 >0の領域を利用することになる。
図30に計算上のδ(図6〜10の計算例の範囲)とModR の規格化変調度の差の相関を示した。δがπ付近から大きくなるにつれ(図中“a”から“b”点への矢印)、ModR が大きくなり3π/2近傍で最大値をとり、さらにδが大きくなる(図中“b”から“c”点への矢印)とModR は再び小さくなる。厳密に言うと、ModR が0である、すなわち、δ=πもしくは2πとなる点(図中でそれぞれ“a”、“c”で表示)、及びModR が最大となる、すなわちδ=3π/2となる点(図中で“b”で表示)は若干すれている。
同表には、記録前後のプッシュプル比PPb/PPaや規格化されたプッシュプル比NPPRも合わせて掲載している。概ねPPb/PPa≦1.6、もしくはNPPR≦1.0であれば、記録前後で安定したサーボ信号を得ることができる。すなわち、PPb/PPa>1.6もしくはNPPR>1.0となって、記録によりサーボが不安定になる傾向がある。
一方、表−2には、線速2.4m/sにおいて最適記録パワーにおける繰返しオーバーライトテストを行い、CD規格に照らして、1000回後のジッタが15nsec以下の場合を○、15〜18nsecを△、18nsec以上を▲で表した。特に、500回以下で20nsec以上となるような場合を×とした。○、もしくは△の耐久性を達成するためには、上部保護層を50nmと厚くした場合、記録層を薄くする必要があり、(18)式の範囲であれば良いことがわかる。
dR *100=6.77)を比較した場合、ModR が大きく、位相差の寄与が大きいと考えられる105/18/50の場合のほうが、Itop が高いわりには変調度が高く、かつ、記録前後のサーボ信号の変化(PPb/PPaもしくはNPPR)が小さく、記録後のプッシュプル信号も大きい。初期特性という面からは105/18/50の方が好ましい。
比較例4において、反射層を200nmのAl99Ta1 とした。
2倍速での低パワー側の再結晶化は改善が見られたが、高パワー側の再結晶化は改善されなかった。また、記録感度が1〜2mW悪化した。
上部保護層膜厚を65nm、反射層を200nmのAl99Ta1 とした以外は実施例1と同様にディスクを作成した。
2倍速における初期特性は、実施例1とほとんど同じであった。しかし、2倍速において繰返しオーバーライトしたところ、記録パワー10〜15mWにおいて、1000回後の3Tジッタが20〜25nsecにまで増加した。ジッタが17.5nsec以下なのは繰返しオーバーライト500回以下であった。
なお、繰返しオーバーライト耐久性は、上部保護層が60nmより厚くなると悪化する傾向があった。
2 下部保護層
2a 第1下部保護層
2b 第2下部保護層
3 相変化型記録層
4 上部保護層
5 反射層
6 保護コート層
Claims (15)
- 基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層をこの順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体であって、
該反射層の面積抵抗率が0.2Ω/□以上0.9Ω/□以下であり、
該相変化記録層が、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金薄膜からなり、
該相変化記録層の膜厚が10nm以上30nm以下であることを特徴とする光学的情報記録用媒体。 - 基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層をこの順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体であって、
該反射層の面積抵抗率が0.2Ω/□以上0.9Ω/□以下であり、
該反射層がTa、Ti、Co、Cr、Si、Sc、Hf、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo、又はMnのうちの少なくとも一種を0.2原子%以上2原子%以下含むAl合金であるか、又は
該反射層がTi、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo、またはMnのうちの少なくとも一種を0.2原子%以上5原子%以下含むAg合金であり、
該相変化記録層が、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金薄膜からなり、
該相変化記録層の膜厚が10nm以上30nm以下であることを特徴とする光学的情報記録用媒体。 - 基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層をこの順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体であって、
該反射層の面積抵抗率が0.2Ω/□以上0.9Ω/□以下であり、
該反射層が多層からなり、全反射層膜厚の50%以上が体積抵抗率20nΩ・m以上150nΩ・m以下の1層以上の金属薄膜であり、
該相変化記録層が、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金薄膜からなり、
該相変化記録層の膜厚が10nm以上30nm以下であることを特徴とする光学的情報記録用媒体。 - 上部保護層の膜厚が30nm以上60nm以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
- 反射層が不純物含有量が2原子%以下のAl合金(純Alを含む)または不純物含有量が5原子%以下のAu又はAg合金(純Au、Agを含む)である請求項1に記載の光学的情報記録用媒体。
- 反射層の体積抵抗率が20nΩ・m以上100nΩ・m以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
- 上部保護層が、ZnS、ZnO、TaS2又は希土類硫化物のうちの少なくとも一種が2
0モル%以上90モル%以下と、融点又は分解点が1000℃以上の耐熱性化合物との混合物である請求項1ないし6のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。 - 基板上に溝を設け、該溝内に光ビームを照射し情報の記録を行い、基板裏面から光ビームを照射して反射光を読み取り情報を再生する光学的情報記録用媒体であって、δを
δ=( 結晶領域を通過した反射光の位相) −( 非晶質領域を通過した
反射光の位相)
とするとき、
−π< δ <0
である請求項1ないし7のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。 - 請求項8において、再生光ビームの波長λ、波長λにおける基板の屈折率n、基板の溝深さdとし、ΦおよびΔを
Φ=( ランド部からの反射光の位相) −( 溝部からの反射光の位相)
=−4πnd/λ
Δ=δ+Φ
とするとき、
−π/2< Φ <−π/8
−π< Δ <−π/2+π/8
である光学的情報記録用媒体。 - 請求項9において、
−π/2−π/8< Δ <−π/2+π/8
である光学的情報記録用媒体。 - 溝が蛇行しており、溝深さを20nm以上45nm以下、溝幅を0.3μm以上0.6μmとする請求項8ないし10のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
- 下部保護層の膜厚が70nm以上150nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下、相変化記録層の膜厚が15nm以上25nm以下、上部保護層の膜厚が30nm以上60nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下であり、波長600以上800nm以下の光ビームで記録・再生・消去を行う請求項1ないし3のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
- 下部保護層膜厚D1nm、記録層膜厚D2nm、上部保護層膜厚D3nm、結晶領域からの
反射光RtopのD1依存性∂Rtop/∂D1とするとき、
∂Rtop/∂D1 >0
15≦ D2 ≦20
30≦ D3 ≦60
−5D2+120≦ D3 ≦−5D2+140
である請求項12に記載の光学的情報記録用媒体。 - 下部保護層が2層からなり、第1下部保護層の膜厚が20nm以上70nm以下で屈折率が基板の屈折率nsubに対してnsub±0.1の範囲にあり、第2下部保護層の膜厚が70nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下であり、相変化記録層の膜厚が15nm以上25nm以下、上部保護層の膜厚が30nm以上60nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下であり、波長600以上800nm以下の光ビームで記録・再生・消去を行う請求項1ないし3のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
- 下部保護層の全膜厚が70nm以上150nm以下であり、第2下部保護層膜厚D12nm、記録層膜厚D2nm、上部保護層膜厚D3nm、結晶領域からの反射光RtopのD12依存
性∂Rtop/∂D12とするとき、
∂Rtop/∂D12 <0
15≦ D2 ≦20
30≦ D3 ≦60
−5D2+120≦ D3 ≦−5D2+140
である請求項14に記載の光学的情報記録用媒体。
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