JP3885802B2 - 光学的情報記録用媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、書き換え可能な相変化媒体に関する。特に、コンパクトディスク及び高密度コンパクトディスクあるいはディジタルビデオディスクとの互換性を有する相変化媒体に関する。
近年、情報量の増大に伴い高密度でかつ高速に大量のデータの記録・再生ができる記録媒体が求められているが、光ディスクはまさにこうした用途に応えるものとして期待されている。書換型の光ディスクとして、光磁気効果を利用した光磁気記録媒体や、可逆的な結晶状態の変化に伴う反射率変化を利用した相変化媒体がある。
相変化媒体は外部磁界を必要とせず、レーザー光のパワーを変調するだけで記録・消去が可能であり、記録・再生装置を小型化できるという利点を有する。さらに、特に記録層等の材料を変更することなく短波長光源による高密度化が可能であるといった利点もある。
このような、相変化の記録層材料としては、カルコゲン系合金薄膜を用いることが多い。例えば、GeSbTe系、InSbTe系、GeSnTe系、AgInSbTe系合金があげられる。
現在、実用化されている書換可能な相変化媒体では、結晶状態を未記録・消去状態とし、非晶質のマークを形成する。非晶質マークは記録層を融点より高い温度まで加熱し、急冷することによって形成される。このような記録層の加熱による蒸発・変形を防ぐため、通常は記録層の上下を耐熱性でかつ化学的にも安定な誘電体保護層で挟む。
記録過程においては、この保護層は記録層からの熱拡散を促し過冷却状態を実現して非晶質マークの形成にも寄与している。
さらに、上記サンドイッチ構造の上部に金属反射層を設けた4層構造とすることで、熱拡散をさらに促し、非晶質マークを安定に形成することができる。
消去(結晶化)は、記録層の結晶化温度よりは高く、融点よりは低い温度までもしくは融点直上まで記録層を加熱して行う。この場合、誘電体保護層は、記録層を固相結晶化に十分な高温に保つ蓄熱層として働く。
近年、書換可能コンパクトディスク(CD-Rewritable 、CD−RW)が提唱されている。CD−RWは、反射率の低さを除けばCDやCD−ROMとの再生互換性を有している。また最近、CDを高密度化したDVD(Digital Video DiscもしくはDigital Versatile Discの略とされる)の書き換え可能型も提案されている。
CD−RWには、蛇行(Wobble)した溝が設けられ溝内に記録する。
蛇行の周波数は搬送波周波数22.05kHzをアドレス情報により周波数(FM)変調したものである。これはATIP信号と呼ばれる。
ATIP信号を用いることで未記録ディスクの回転数制御が可能になり、CD線速(1.2〜1.4m/s)の1倍速、2倍速、さらには4倍、6倍速での記録ができる。
この際、安価な半導体レーザーを用いるためには記録パワーは約15mW以下でなければならず、また、記録時の線速が異なっても単純に線速に反比例して基準クロック周波数Tを変えるだけで、所望のマーク長が記録できなければならない。
しかしながら、相変化媒体においては、記録時の線速の変化は非晶質マーク形成過程と再結晶化による消去過程に影響を及ぼし、最大線速と最小線速の比が2倍程度から大きいと、いずれかの線速で正常な記録ができなくなることが多い。 通常、記録可能光ディスクでは、線速が早くなると記録層を同じ温度まで昇温させるのに高めの照射パワーを要する。
しかし、照射パワーを調整して記録層の到達温度を同じにしても、線速が異なれば、必ずしも同じ熱履歴が達成されるわけではない。
非晶質マークの形成は、一旦記録パワーで溶融せしめた記録層を、臨界冷却速度以上の速さで冷却することによって行われる。この冷却速度は同一層構成を用いた場合線速に依存する。つまり、高線速では冷却速度が速くなり、低線速では冷却速度は遅くなる。
一方、非晶質マークを消去するには、記録層を結晶化温度以上融点近傍以下に一定時間保温する必要がある。
この保温時間は逆に、高線速では短く、低線速では長くなる傾向がある。
従って、線速の比較的速い記録条件では光ビームを照射した際に、その照射された部分の記録層の熱分布が時間的、空間的に比較的急峻になるため消去時の消し残りが懸念される。
かかる記録条件に対応するためには比較的短時間で結晶化すなわち消去が行えるように、記録層には結晶化速度の比較的速い組成の化合物を用いたり、熱の逃げにくい層構成にしたりする。
逆に、線速が比較的遅い記録条件では、前述のように冷却速度が遅くなるために、記録時の再結晶化が懸念される。
記録マーク形成時の再結晶化を防ぐ方法として、記録層には結晶化速度の比較的遅い組成の化合物を用いたり、熱の逃げやすい層構成にしたりする。
しかしながら、例えばCD−RWにおいてCDの2倍速および4倍速で記録するのに別種のディスクを用意するのは好ましくない。
線速に応じてパルスストラテジー(良好なピット形状を得るために照射ビームをパルス分割し、コントロールする方式)を変化させることにより、CDの1倍もしくは2倍速から10m/s程度の線速範囲において良好なオーバーライト特性を得る方法については、本発明者らも含めいくつか報告がある。しかし、一般的には、パルスストラテジーを可変とすることはパルス発生回路等を複雑化させドライブの製造コストを高くするので、同一パルスストラテジーで基準クロック周期を変更するだけで広い線速範囲をカバーできることが望ましい。
本発明においては、記録線速および記録パワーに対するマージンを大幅に改善した相変化媒体を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層をこの順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体であって、該反射層の面積抵抗率が0.2Ω/□以上0.9Ω/□以下であり、該相変化記録層が、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金薄膜からなり、該相変化記録層の膜厚が10nm以上30nm以下であることを特徴とする光学的情報記録用媒体に存する。
本発明の別の要旨は、基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層をこ
の順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体であって、該反射層の面積抵抗率が0.2Ω/□以上0.9Ω/□以下であり、該反射層がTa、Ti、Co、Cr、Si、Sc、Hf、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo、又はMnのうちの少なくとも一種を0.2原子%以上2原子%以下含むAl合金であるか、又は該反射層がTi、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo、またはMnのうちの少なくとも一種を0.2原子%以上5原子%以下含むAg合金であり、該相変化記録層が、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金薄膜からなり、該相変化記録層の膜厚が10nm以上30nm以下であることを特徴とする光学的情報記録用媒体に存する。
本発明のさらに別の要旨は、基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層をこの順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体であって、該反射層の面積抵抗率が0.2Ω/□以上0.9Ω/□以下であり、該反射層が多層からなり、全反射層膜厚の50%以上が体積抵抗率20nΩ・m以上150nΩ・m以下の1層以上の金属薄膜であり、該相変化記録層が、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金薄膜からなり、該相変化記録層の膜厚が10nm以上30nm以下であることを特徴とする光学的情報記録用媒体に存する。
本発明は、相変化媒体において、反射層の体積抵抗率を特定の範囲とすることで、記録層の冷却速度をコントロールし、記録線速および記録パワーに対するマージンを大幅に改善することができる。特に、Sb70Te30共晶点近傍組成をベースとする記録層に対して効果的である。
さらに、相変化による位相差変化を適当な値とすることにより、CD−ROM、DVD−ROM等と再生互換性の高い相変化媒体を提供できる。
本発明におけるディスクの層構成は図1に模式的に示すように、基板1上に少なくとも下部保護層2、相変化型記録層3、上部保護層4、反射層5を設けてなる。保護層2、4、記録層3、反射層5はスパッタリング法などによって形成される。記録層用ターゲット、保護層用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ターゲットを同一真空チャンバー内または連続した真空チャンバー内に設置したインライン装置で層形成を行うことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生産性の面からもすぐれている。
反射層5上に、傷防止、繰返しオーバーライトによる変形防止、耐腐食性向上のために、紫外線もしくは熱硬化性樹脂からなる保護コート層6を設けることが望ましい。保護コート層は通常スピンコート法により塗布され、1mm以上10mm以下の厚みとすることが望ましい。
本発明における記録媒体の基板1としては、ガラス、プラスチック、ガラス上に光硬化性樹脂を設けたもの等のいずれであってもよいが、コストを含む生産性の面ではプラスチックが好ましく、特にポリカーボネート樹脂が好ましい。
記録時の高温による変形を防止するため、基板表面には下部保護層2が、記録層3上には上部保護層4が設けられる。
保護層2及び4の材料としては、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができる。
これらの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効であ
る。
繰返しオーバーライト特性を考慮すると誘電体混合物がよい。より具体的にはZnSや希土類硫化物と酸化物、窒化物、炭化物等の耐熱化合物の混合物が挙げられる。これらの保護層の膜密度はバルク状態の80%以上であることが機械的強度の面から望ましい。混合物誘電体薄膜を用いる場合には、バルク密度として下式の理論密度を用いる。
ρ=Σmi ρi (1)
i :各成分iのモル濃度
ρi :単独のバルク密度
下部保護層2の膜厚は、繰返しオーバーライト時の熱ダメージによる基板変形を抑制し繰返しオーバーライト耐久性を上げるためには、厚いほうが好ましい。 下部保護層膜厚が薄いと繰返しオーバーライトの初期にジッタが悪化しやすいからである。
本発明者等の原子間力顕微鏡(AFM)による観察によれば、この初期劣化は基板表面が2〜3nm程度へこむ変形によるものであることがわかった。
基板変形を抑制するために、記録層の発熱を伝えないために熱絶縁効果があり、かつ、機械的に変形を押さえ込むような保護層膜厚が好ましいのである。例えば、CD−RWで繰返しオーバーライト1000回を達成するためには、好ましくは厚さ70nm以上、より好ましくは80nm以上がよい。
上部保護層4は記録層3と反射層5の相互拡散を防止する。
本発明の媒体の記録層3は相変化の記録層であり、その厚みは10nmから30nmの範囲が好ましい。
記録層3の厚みが10nmより薄いと十分なコントラストが得られにくい。また15nm未満では結晶化速度が遅くなる傾向があり、特に10nm未満では短時間での記録消去が困難となりやすい。
一方30nmを越すとやはり光学的なコントラストが得にくくなり、また、熱容量が大きくなるために記録感度が悪くなるので好ましくない。さらにまた、相変化に伴う記録層の体積変化は記録層が厚くなるほど大きくなり、繰返しオーバーライト時に保護層及び基板表面等に微視的な変形が蓄積され、ノイズの上昇につながる。
また、30nmより厚いと繰返しオーバーライトによる劣化が著しくなるので好ましくない。特に繰返しオーバーライト耐久性の観点からは25nm以下とすることがより望ましい。
記録層3としては本発明においては、特に、結晶・非晶質いずれの状態も安定でかつ、両状態間の高速の相転移が可能である、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする、MSbTe(MはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、S、Se、Ta、Nb、V、Bi、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh、希土類元素のうちの少なくとも1種)合金薄膜が好ましい。
前述の様に本発明の媒体の線速依存性は、第1次的には、Sb70Te30共晶点組成を基本として、Sb/Te比により左右される。
そのために、上記記録層の組成はMww (Sbz Te1-z 1-w (0≦w≦0.2、0.5≦z≦0.9、MはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、N、S、Se、Ta、Nb、V、Bi、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh、希土類元素のうちの少なくとも1種)合金薄膜が好適に用いられる。
高線速に対応させるには、Sb量を増やせばよいが、あまり増やすと非晶質マークの安定性が損なわれるので、Sb量を0.5≦z≦0.9とするのが好ましく、0.6≦z≦0.8がより好ましい。
結晶化速度及び結晶化温度を微調整するために、Sbの一部をBiに置換しても良い。
In、Ga及びGe、Sn、Si、Pbは結晶化温度を上昇させて経時安定性を高める効果ある。また、In、Gaはスムースな非晶質マークと結晶領域との境界を形成し、マーク長記録、すなわち、マーク端検出におけるノイズを小さくできる。
Ag、Zn、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Cr、Co、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh、希土類元素はそれ自身もしくはそれらとSbもしくはTeとの化合物が高融点であるため、微細な分散したクラスターとして析出して結晶核となり、高速結晶化に寄与する。しかし、多すぎるとかえって非晶質マークの安定性を損なう。
O、S、SeはTeと同族であり、Teの鎖状ネットワークに入り込んで、Sb70Te30共晶合金の結晶化温度、屈折率、粘度を微調整するのに利用できる。
いずれの添加元素も20原子%を超えると、偏析・相分離を生じ易い。特に、繰返しオーバーライトにより偏析を生じ易く、安定な記録ができなくなるので好ましくない。
繰返しオーバーライト耐久性の観点からはいずれの原子も単独では10原子%以下とすることが望ましい。また、特にO、S、N、Seは5原子%を超えると結晶化速度が遅くなりすぎる傾向があるので、5原子%以下とすることがより好ましい。
より具体的で好ましい例として、MaαInβSbγTeη(ただし、MaはAgもしくはZn、0.03≦α≦0.1、0.03≦β≦0.08、0.55≦γ≦0.65、0.25≦η≦0.35、0.06≦α+β≦0.13、α+β+γ+η=1である)なる記録層があげられる。
Inは結晶化温度を上昇させて経時安定性を高める効果があり、室温での保存安定性を確保するためには少なくとも3原子%は必要である。また、スムースな非晶質マークと結晶領域との境界を形成し、マーク長記録、すなわち、マーク端検出におけるノイズを小さくできる。
8原子%以上含まれると相分離が生じ易く、繰りしオーバーライトにより偏析が起きるため好ましくない。より好ましくは、In量を5原子%以上8原子%以下とする。
Ag又はZnは成膜直後の非晶質膜の初期化を容易にするために用いられる。初期化方法にもよるが10原子%以下の添加で十分であり、多すぎるとかえって経時安定性を損ねたり、上記マーク端検出におけるジッタが悪化するので好ましくない。
また、Ag又はZnとInをあわせて13原子%以上とすることは繰返しオーバーライト時に偏析を生じ易いので好ましくない。もう一種の好適な記録層の例としてMbv Mcy (Sbx Te1-x 1-y-v (ただし、MbはAg又はZnの少なくとも1種、McはGeもしくはSnの一種であり、0.6≦x≦0.8、0.01≦y≦0.15、0.01≦v≦0.15、0.02≦y+v≦0.2である)なる組成を有する合金があげられる。
InのかわりにGeを用いることで、上記のMaInSbTe合金における低融点金属InおよびIn化合金の析出のしやすさを改善することができる。一方で、GeもしくはSnの添加とともに、急激に初期化(as−depo.膜の結晶化)に時間を要するようになる。
Inの析出しやすさとGeによる初期化のしにくさを克服するために、Mda Inb Gec Sbd Tee (ただし、MdはAgもしくはZnの少なくとも1種であり、0.01≦a≦0.1、0.001≦b≦0.1、0.01≦c≦0.1、0.5≦d≦0.7、0.25≦e≦0.4、0.03≦b+c≦0.15、a+b+c+d+e=1.0である)なる組成を有する5元記録層を用いても良い。
記録層及び保護層の厚みは、上記機械的強度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う光学干渉効果も考慮して、レーザー光の吸収効率が良く、記録信号の振幅、すなわち記録状態と未記録状態のコントラストが大きくなるように選ばれる。
本発明の要点は、とりわけ低体積抵抗率の反射層5を用いることによって、線速マージンや記録パワーマージンを改善したことにある。
特に、上部保護層4を30nm以上と比較的厚くした場合に顕著な効果が得られる。
上部保護層4は、従来、厚くなりすぎると記録層3の熱が反射層5に到達する時間が長くなり、反射層5による放熱効果が有効に作用しないとされていた。
上部保護層4を厚くした例はあるものの、具体的な応用例がピット位置記録法に限定されており、反射層への熱の拡散をむしろ抑制し、おおむね10m/s以上の高線速における記録において高感度化することを主眼としていた(USP5665520、5674649等)。
しかし、本発明者らの検討によれば、マーク長記録に適用した場合には、単に上部保護層を厚くすると、記録時に溶融された記録層の冷却速度が小さくなりすぎ、良好な非晶質マークの形成が阻害されジッタが悪化するという問題点が生じる。すなわち、再凝固時の再結晶化が促進されて、非晶質マークの周辺に粗大なグレインの帯が形成されるため、マーク位置検出ならばともかく、マークエッジを検出するマーク長記録では著しくジッタが悪化するのである。
また、上部保護層4の内部に繰返しオーバーライト時のヒートサイクルによる塑性変形が蓄積され、オーバーライト回数に伴い劣化が進みやすいという問題が生じる。これも、マーク長が短いものだけで構成されるマーク位置記録よりも、長いマークが混じるマーク長記録の場合に顕著になる。
以上で述べた問題点は、記録時の線速が10m/s以下、特に5m/s以下の低線速である場合に顕著となる。これは、記録層の冷却速度が記録に用いる集束光ビームと記録媒体との相対的な移動速度に依存し、低線速ほど冷却速度が低下するためである。冷却速度の低下は、非晶質マークの形成阻害、記録時の熱ダメージの増大という上記の問題点をより過酷なものとする。
上記先願では、使用形態として少なくとも5m/s以上であり、特に10m/s以上における記録感度改善を想定しており、このような低線速における問題点については言及していない。
本発明によれば、低線速での記録再生において、厚く設けた上部保護層4に極めて低体積抵抗率の反射層5を組み合わせることにより、相変化による位相差δを有利に利用でき、なおかつ、上部保護層の薄い従来の急冷構造よりも記録感度および線速依存性を改善できるという効果をも得られる。
従って、上部保護層膜厚は好ましくは30nm以上60nm以下、より好ましくは40nm以上60nm以下である。
位相差の効果δを積極的に利用しない場合でも、比較的厚い上部保護層と極めて低体積抵抗率の反射層5を用いることの利点はここにある。
これは、図14を用いて以下のように説明される。
記録のためにまず記録層温度を融点以上に昇温する必要があるが、熱伝導には有限の時間が必要であるから、昇温過程(初期の数十ナノ秒以下)では、平面方向の熱伝導は顕著ではなく、膜厚方向の熱伝導のみでほとんど温度分布が決まる(図14(a))。
従って、まず記録マークの先端部分を所定の温度まで昇温するときには、この膜厚方向の熱伝導が効いてくる。
一方、昇温開始後数十nsec以降になると図14(b)に示すように横方向の熱伝導による温度分布の平面的変化が重要になる。
なぜなら、膜厚方向は熱拡散距離の有効範囲が高々0.1μmであるのに対して、平面方向は熱拡散距離の有効範囲が1μmのオーダーだからである。
特に非晶質化過程を支配する記録層の冷却速度はこの平面分布に依存し、前述の冷却速度の線速依存性はまさにこの平面分布で支配されている。
低線速では光ビームの走査速度が遅いため、同一照射時間でも周辺部まで加熱しながら進むことになり、平面方向の熱伝導の影響が大きい。
また比較的長時間連続して記録光ビームが照射される長マークの後端部分でも、平面方向の熱伝導の影響が大きい。
従って、マーク長記録を記録時の最大線速と最小線速比が2倍以上になる様な広線速範囲で良好に行うためには、単に膜厚方向の温度分布や時間変化のみならず、平面方向の分布や時間変化を正確に制御する必要がある。
図14(b)において、上部保護層の熱伝導率を低くし、適度な厚みを持たせた方が反射層への熱の流れに一定の遅延効果をもたらすことができ、平面方向の温度分布を制御しやすくなるのである。
従来のいわゆる「急冷構造」は、再結晶化による粗大グレインのない非晶質マーク形成には有効であったが、上部保護層膜厚が30nm以下であり、この熱伝導の遅延効果に十分な留意を払っていなかったため、記録感度の低下をもたらしていた。
本発明において問題としている反射率の熱伝導率は、あくまで、実際に上部保護層上に形成された薄膜状態での熱伝導率である。一般には薄膜の熱伝導率はバルク状態の熱伝導率と大きく異なり、小さくなっているのが普通である。
特に40nm以下の薄膜では成長初期の島状構造の影響で熱伝導率が1桁以上小さくなる場合があり好ましくない。
さらに、成膜条件によって結晶性や不純物量が異なり、これが同じ組成でも熱伝導率が異なる要因になる。
本発明において良好な特性を示す反射層5を規定するために、反射層の熱伝導率は直接測定することも可能であるが、その熱伝導の良否を電気抵抗を利用して見積もることができる。
金属膜のように電子が熱もしくは電気伝導を主として司る材料においては熱伝導率と電気伝導率は良好な比例関係があるためである。
薄膜の電気抵抗はその膜厚や測定領域の面積で規格化された抵抗率値で表す。体積抵抗率と面積抵抗率は通常の4探針法で測定でき、JISK7194によって規定されている。
薄膜の熱伝導率そのものを実測するよりもはるかに簡便かつ再現性の良いデータが得られる。
本発明において好ましい反射層は体積抵抗率でいうと20nΩ・m以上150nΩ・m以下、好ましくは20nΩ・m以上100nΩ・m以下である。
体積抵抗率20nΩ・m以下の材料は薄膜状態では実質的に得にくい。
体積抵抗率150nΩ・mより体積抵抗率が大きい場合でも、たとえば300nm以上の厚膜とすれば面積抵抗率を下げることはできるが、本発明者らの検討によれば、このような高体積抵抗率材料で面積抵抗率のみ下げても、十分な放熱効果は得られなかった。
厚膜では単位面積当たりの熱容量が増大してしまうため、反射層自体の放熱がかえって
遅くなってしまうからと考えられる。
また、このような厚膜では成膜に時間がかかり、材料費も増えるため製造コストの観点から好ましくない。
膜厚300nm以下で面積抵抗率0.2以上0.9Ω/□以下が得られるような、低体積抵抗率材料を用いるのが特に好ましい。
上記のような低体積抵抗率を得るためには、不純物含有量2原子%以下のAl合金(純Alを含む)または不純物含有量5原子%以下のAu又はAg合金(純Au、Agを含む)膜とするのがよい。
本発明に適したAl金属材料をより具体的に述べると、Siを0.3重量%以上0.8重量%以下、Mgを0.3重量%以上1.2重量%以下含有するAl−Mg−Si系合金であることが好ましい。
この他、AlにTa、Ti、Co、Cr、Si、Sc、Hf、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo、又はMnを0.2原子%以上2原子%以下含むAl合金は、添加元素濃度に比例して体積抵抗率が増加し、また、耐ヒロック性が改善されることが知られているので、耐久性、体積抵抗率、成膜速度等考慮して用いることができる。
Al合金に関しては、添加不純物量0.2原子%以下では、成膜条件にもよるが、耐ヒロック性は不十分であることが多い。また、2原子%より多いと上記の低抵抗率が得られない。
経時安定性をより重視する場合には添加成分としてはTaが好ましい。
一方、上記反射層がAg合金薄膜である場合にはTi、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo、又はMnを0.2原子%以上5原子%以下含むものが望ましい。
経時安定性をより重視する場合には添加成分としてはTi、Mgが好ましい。
本発明者らは上記、Alへの添加元素、Agへの添加元素は、その添加元素濃度に比例して、体積抵抗率が増加することを確認している。
不純物の添加は一般的に結晶粒径を小さくし、粒界の電子散乱を増加させて熱伝導率を低下させると考えられる。
添加不純物量を調節することは、結晶粒径を大きくすることで材料本来の高熱伝導率を得るために必要である。
高熱伝導率を得るためには、上記のように、不純物量を少なくするのが望ましいが、一方で、AlやAgの純金属は耐食性や耐ヒロック性に劣る傾向があるため、両者のバランスを考慮して最適組成が決まる。
なお、反射層は通常スパッタ法や真空蒸着法で形成されるが、ターゲットや蒸着材料そのものの不純物量もさることながら、成膜時に混入する水分や酸素量も含めて全不純物量を下げる必要がある。全不純物量を2原子%以下とするためには、プロセスチャンバの到達真空度は1×10-3Pa以下とすることが望ましい。
また、1×10-4Paより悪い到達真空度で成膜するなら、成膜レートを1nm/秒以上、好ましくは10nm/秒以上として予期しない不純物が取り込まれるのを防ぐことが望ましい。
あるいは、意図的な添加元素を1原子%より多く含む場合は、成膜レートを10nm/秒以上として予期しない不純物混入を極力防ぐことが望ましい。
膜中の不純物組成あるいは結晶性は、スパッタに用いる合金ターゲットの製法やスパッタガス(Ar、Ne、Xe等)にも依存する。
上記のように薄膜状態の体積抵抗率は金属材料、組成のみによっては決まらないから、
たとえばAl合金反射層材料を規定した先願(特開平3−1338、平1−169571、平1−208744、平2−128332等)もあるが本願の層構成を示唆するものではない。
また、先に延べたごとく、本願は実際にディスク上に成膜された薄膜状態での熱伝導率に注目し、反射層の放熱効果を確実にするために、簡便かつ精度の高い測定が容易にできる、体積抵抗率によって反射層の高熱伝導率を担保している。単に合金組成や、バルクの熱伝導率を参照した先願にくらべ、産業上の利益ははかりしれない。また、薄膜状態の熱伝導率がバルク値とは大きくことなり、組成のみならず成膜条件にも依存することから、熱伝導率の最適範囲の単なるパラメータのおきかえでないことも明らかである。
さらなる高熱伝導と高信頼性を得るために反射層を多層化することも有効である。
反射層の多層化は、高体積抵抗率材料と低体積抵抗率材料を組み合わせて所望の膜厚で所望の面積抵抗率を得るためにも有効である。
反射層を複数の金属膜からなる多層反射層とし、全膜厚を40nm以上300nm以下、多層反射層の厚さの50%以上が体積抵抗率20nΩ・m以上150nΩ・m以下の金属薄膜層(多層であっても良い)とするのが好ましい。
本発明においては、特に30〜60nmという厚めの上部保護層による熱伝導の遅延効果を十分発揮させるために上部保護層4の材料としては、熱伝導が低い方が望ましい。
具体的にはZnS、ZnO、TaS2 もしくは希土類硫化物を単独もしくは混合物として20モル%以上90モル%以下含み、他方融点もしくは分解温度が1000℃以上の耐熱性化合物からなる複合誘電体が望ましい。
より具体的にはLa、Ce、Nd、Y等の希土類の硫化物を50モル%以上90モル%以下含む複合誘電体が望ましい。
あるいは、ZnS、ZnOもしくは希土類硫化物の組成の範囲を70〜90モル%とすることが望ましい。
これらと混合されるべき融点もしくは分解点が1000℃以上の耐熱化合物材料としては、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ho、Er、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Si、Ge、Pb等の酸化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができる。
特にZnOと混合されるべき材料としては、Y、La、Ce、Nd等希土類の硫化物あるいは硫化物と酸化物の混合物が望ましい。
従来、知られている保護層材料で、SiO2 、Ta25 、Al23 、AlN、SiN等を主成分とする薄膜は、それ自身の熱伝導率が高く好ましくない。 なお、ZnS:SiO2 からなる上部保護層の厚みを30nm以上60nm以下とし、反射層に0.5原子%以上5原子%以下の不純物を含むAl合金を用いることが記載されている例があるが(特開平7−262613)。
しかしこの出願はむしろ、高感度化のために反射層膜厚を100nm以下とすることが好ましいなど反射層への放熱を制限して高感度化を図ったものであり、本願における、冷却速度を高速に保つために薄膜状態の反射層の熱伝導率をとりわけ高いものに制限するという思想は全く見られない。
従って、反射層組成として似た例示があったとしても、低体積抵抗率の反射層については全く示唆していない。
少なくとも、本願では、該先願において対応不十分な10m/s以下における低線速域での、記録感度改善とマーク長記録における非晶質マークの良好な形成(再結晶化の抑制)を確実にするという点で、高密度マーク長記録における特性を飛躍的に改善できる。ま
た、そのために、実際の薄膜状態での熱伝導率の重要性に注目し、簡便にかつ高精度に実測可能な体積抵抗率に注目している。
これは、生産管理を容易にし、量産工程において本発明の効果を確実にするために重要なことである。さらにまた、凹凸ピットを利用した再生専用光記録媒体との互換性に留意した溝形状、位相差についても、上記先願は全く触れていない。
次に、本発明のより好ましい設計例について説明する。すなわち、光学設計の最適化によりコントラストを高くとりつつ、安定なトラッキングサーボ特性を得る。
特に、凹凸ピットにおける位相差を利用してコントラストおよびトラッキングサーボ信号を得るCDやDVDと互換性を取り易い媒体を提供することである。 本発明においてはこのコントラストを変調度によって定義する。
変調度(Modulation、以下ではModと略す)は、マーク長変調記録においてすべてのマーク長が含まれるランダムパターンを記録した際、再生信号をDCカップリング状態で観測した際のエンベロープ再生信号の振幅とその上端のレベルの比
Mod=(エンベロープ再生信号の振幅)/(エンベロープ上端レベル)(2)
によって定義される。高SN(signal to noise )比を達成するためには、この変調度を高くすることが必要である。
より具体的な例としては、CD−RWあるいは書き換え可能なDVDとしてCDもしくはDVDとの互換性を確保するためには、CDもしくはDVD規格で定められる変調度を高くとらねばならない。
CDもしくはDVDにおける変調度とは、図2に示すようにランダム信号を記録したときのDC再生信号(直流成分を含む再生信号)において、最長マーク(CDでは11T、DVDでは14T)のトップの信号強度Itop と、信号振幅I11との比I11/Itop (もしくはI14とItop の比、I14/Itop )として定義される。
信号振幅I11(もしくはI14)が上記定義のエンベロープ再生信号の振幅に相当し、Itop がその上端レベルに相当する。書換型CD、DVDでは変調度に対する規定は、再生専用そのものより若干緩和されており、おおむねMod>0.5であることが望ましい。
top は実際上、マーク間(結晶状態)の溝内での反射率に相当する。
一方、幅1μm程度より狭い溝内に記録した非晶質マークを、同程度の径の集束光ビームで読み出した場合には平面波の干渉を考慮しなければならない。
再生信号振幅I11(もしくはI14)は相変化媒体の結晶部分と非晶質部分から反射光の強度差Iref 及び位相差による反射率差Iphase の両方が問題となる。 すなわち、非晶質マークと結晶状態の反射光の間の位相差δを考慮する必要がある。結晶部と非晶質マークにおける位相の差が、ちょうどそこに深さの異なるピットが存在するのと同じ効果をもたらすからである。
この場合の信号振幅は近似的には反射率差による振幅Iref と位相差による振幅Iphase と上記の和として
11=Iref +Iphase (3)
としてあらわされる。
図3に示すように、位相差δは、前述の多層構成を有する記録媒体を、基板裏面側から再生光ビームを入射して反射光を読み取る場合の、
δ=( 結晶領域を通過した反射波の位相) −
( 非晶質領域を通過した反射波の位相) (4)
によって定義される。
δが負の場合は見かけ上非晶質マーク部で溝深さが深くなるのと同じ効果を有し、δが
正の場合は見かけ上非晶質マーク部で溝深さが浅くなるのと同じ効果を有する。ただし、位相は2πの周期で既約化できるので、−π<(位相差)<0の場合は、π<(位相差)<2πの範囲の値に置き換えても同等である(逆の置き換えも可)。
一方、溝記録を行う場合、下式で表される溝深さによる位相差が存在する。
Φ=( ランド部からの反射波の位相) −( 溝部からの反射波の位相) (5)
ここで、基板の屈折率をn、dを溝深さとすると具体的には
Φ=−4πnd/λ (6)
である。
この定義では、基板面入射光から見て、溝部のほうが近くにあるからΦ<0である。通常は、dは|Φ|<πとなるように選ばれる。すなわち、−π<Φ<0である。前述のように2πを加えても同じ結果が得られるから、π<Φ<2πとも記述できる。
光ビーム内で局所的な平面波の干渉は、この溝深さによる位相差Φと相変化による位相差δの和Δ、
Δ=δ+Φ=δ−4πnd/λ (7)
を考慮する必要がある。
従って、局所的に形成された非晶質マークは、見かけ上溝内に位相差δを有する凹凸ピットが存在する形になり、単なる結晶状態と非晶質状態の反射率差以上にコントラストすなわち変調度がとれる場合がある。すなわちIphase がI11を増大させる方向に寄与する場合がある。
このための条件、すなわち溝内記録においてIphase >0とするためには、Δが±π近傍となることが望ましい。これは、凹凸ピットの位相差のみを利用したコンパクトディスクで最も変調度がとれる条件と同じである。
(7)式より、Δが−πに近づくためには、位相差δは見かけ上非晶質部で溝が深くなるように変化することが望ましい。すなわち、
−π<δ<0 (8)
が好ましい。
さて、相変化方式の書き換え型光ディスクを再生専用のCDやDVDプレーヤーやROMドライブとでそのまま再生できるためには、記録信号品質のみならずサーボ信号にも留意する必要がある。
すなわち、これら再生専用装置は、トラッキングサーボや所定トラックへのシークのために、凹凸ピットから発生するサーボ信号を利用しているおり、必ずしも溝から発生するプッシュプル信号を効率的に検出できず、記録されたマークの位相差δを主として利用している場合がある。このため、サーボ信号にも留意して相変化による位相差δを最適化する必要がある。
ここで、問題となるサーボ信号としてはプッシュプル信号とラジアルコントラストがあげられる。
ここでラジアル・コントラストRCは以下のように定義される。
RC=2{(IL −IG )/(IL +IG )} (9)
ここで、IL 、IG はそれぞれランド部、溝部にの反射光強度である。
ラジアルコントラストは、特定トラックへのアクセスにおいて、目的トラック近傍において所定の本数のトラックを正確に移動する精密制御において用いられる。
反射光強度は図4に示すように、トラック中心に対して左右に配置された4分割の光検出器の和信号I1 +I2 =(A+C)+(B+D)ある。ここでI1 =A+C、I2 =B+Dと定義した。
実際はフォーカスサーボのみをかけて得られるトラック横断信号の溝部とランド部強度を測定する。
記録前後で定義されるが、記録後のラジアル・コントラストは記録による反射率低下部の信号強度を低域通過フィルタによって平均化した強度ILa、IGaを用いる。
記録前の溝によるプッシュプル信号PPbは
PPb=|I1 −I2 | (10)
で定義される。
記録後のプッシュプル信号PPaは、やはり、差信号の平均値(低周波フィルタ通過後の値)を用いる。いずれも一般的な定義である。
ただし、CDの規格ではPPbをIG で、PPaをItop で規格化した値を用いる。Itop に替わって記録後の溝の平均反射率IGaや(IGa+ILa)/2を用いて規格化する場合もある。
また、実際のサーボ回路で、プッシュプル信号をこれらの反射率値で割る割り算回路を付加して、記録に伴うサーボ信号の変動を小さくする工夫もある(DPP、Devided Push-pull )。
本発明では、プッシュプル信号の振幅そのものをPPbもしくはPPbで表すこととする。
さらに、CDにおいては、トラック中心から0.1μmオフセットした状態の|I1 −I2 |値を用いているが、本発明ではPPaの絶対値自体の精度を問題にしているわけではないので、特にこの点は区別して考えない。
図4においてピックアップが複数の溝を横断するときに発生する信号の模式図を図5に示す。
すなわち、フォーカスサーボのみをかけ、トラッキングサーボをはずしたときに光検出器からえられる出力である。図5において|I1 −I2 |a信号は、記録後のI1 、I2 信号の低周波通過フィルタ(LowPassFilter 、LPF)通過後の信号、すなわち平均値である。
1 、I2 はトラック横断時のゆっくりした変動に加えて、いずれのチャネルの信号も記録後には高周波成分である記録信号により図のような変動が重畳される。また、絶対値は異なるものの、和信号I=I1 +I2 も同様のパターンの信号となるから、近似的にはI1 、I2 の高周波成分の変調度はRF信号の変調度と同じとみなせる。
特に、溝深さによる位相Φと結晶と非晶質の位相差δの和Δが±πとなる近傍では、プッシュプル信号が得にくくなるので好ましくない。逆にΔがπ/2付近でプッシュプル信号は最大となる。この位相差とプッシュプル強度についての関係は、やはり、ピットの位相差のみを利用したCDでのプッシュプル信号強度と同じである。
ピット位相差を利用する再生専用ドライブとの互換性を確保するためには、変調度とサーボ信号のバランスを考慮して、位相差が−π/2と−πの間(もしくはπ3/2と2πの間)であることが望ましい。すなわち再生専用ドライブとの互換性の観点からは
−π<Δ<−π/2+π/8 (11)
の範囲に設定することが望ましい。
+π/8の項は、厳密な−π/2からπ/8程度のぶれは許容範囲とみなせるからである。ただし、−πを越えることはプッシュプル信号の極性が反転するので好ましくない。従って−πを越えてのずれは好ましくない。
一方、記録装置内部においては、記録前後においてプッシュプル信号やラジアルコントラスト値が急激に変化することは、トラッキングサーボやシーク性能を不安定にさせるので好ましくない。すなわち、あまりδの影響が大きいと記録と同時に溝形状(特に深さ)
が変化するのと同等の効果が生じ、サーボ信号が記録前後で大きく変化するのでサーボが不安定になり易いという問題点が生じる。
さて、上記の説明では、非晶質状態の反射率低下を考慮しなかった。凹ピットと異なり、記録マークでは位相差のみならず、マーク内の反射率も低下するが、図3の説明において、マーク部分の反射率そのものが低下すれば、その部分からの光線の寄与は少なくなるので、干渉効果そのものは相殺される。
非晶質マークを記録する場合、マーク反射率は数%未満になるので、実際は、干渉効果は上記説明で期待するほど顕著に表れない。したがって、プッシュプル信号の発生に必要な干渉効果が弱まり、位相差に関わらず、記録後のPPaは減少する(PPa<PPb)のが普通である。
この場合、記録後のプッシュプル信号PPaがあまりにも小さくなりすぎてトラッキングサーボが不安定にならにようにするためには、なおさら位相差Δがプッシュプル信号を強める方向でなければいならない。すなわち、
−π/2−π/8< Δ <−π/2+π/8 (12)
になるのが望ましい。
一方、記録後の反射率低下を補うためにサーボ回路側で補償する方法として、前述のように、DPPを使用する場合には、例えば、書き換え型CDの規格では、反射率で規格化したプッシュプル信号PPb/IG 、PPa/IGaを用いて、記録前後のプッシュプル変化NPPR(Normalized Push Pull Ratio)を規定している。
NPPR=(PPb/IG )/(PPa/IGa
=(PPb/PPa)(IGa/IG
=(PPb/PPa)Itop (Itop −I11/2)/IG
=(PPb/PPa)(Itop /IG )(Itop −I11/2)
=k・Itop (PPb/PPa){1−(I11/Itop )/2)}
=k・Itop (PPb/PPa)(1−Mod/2)
(ここでk=Itop /IG ) (13)
この(13)式において、位相差δ及びΔにかかわる項は、PPaとModである。
いずれも大きくなればNPPRを小さく、すなわち記録前後での変化量を少なくできる。CD−RWにおいてはNPPRは概ね1.0程度より小さいことが好ましいとされる。Mod及びPPaの双方を大きくする観点からは(11)式、PPaを優先して大きくする観点からは(12)式が成立することが望ましい。
なお、後に詳述するDPD(Differential Phase Detection)方式では、PPaの減少分を反射率IGa、(ILa+IGa)/2等で規格化するので、これらの減少効果でかえってDPP信号が記録後に大きくなりすぎることがあるので(11)式の範囲でより−πに近い方向で最適化することが望ましい場合もある。
また、意図的にPPbを予め小さめに設定する場合には、
−π/2<Φ<−π/8 (14a)
となるように溝形状を浅めに設定する。より好ましくは、
−π/4−π/8<Φ<−π/8 (14b)
とする。
なお、記録前後における反射率変化を少なくし、むしろ位相差変化のみによって、つまり、Iphase 成分を主体に変調度を得る場合も相変化媒体にはありうる。
この場合、記録による位相差変化δによる記録前後のRC及びプッシュプル信号の変化を小さくするためには、記録後の非晶質マークにおける全位相差Δが記録前の溝のみの位相差Φと−π/2に対して対称な量、すなわちΔ=−π−Φになっていれば、記録前後で
の位相差の影響はほとんど同じになる。
さらにまた、−π/2を超えて−πに近づいていれば、位相差による変調度も十分期待できる。実際には、やはり±π/8程度のぶれは許容されるので、
(−π−Φ)−π/8< Δ <(−π−Φ)+π/8 (15)
の範囲であることが望ましい。
なお、本発明をCD−RW(記録再生波長780nm)に応用する場合、CDとの互換性の観点からは、記録前後の溝信号、例えば記録前後それぞれのプッシュプル信号やラジアルコントラスト、またその比などに配慮して溝形状等を決める必要がある。
例えば特開平8−212550では、溝深さ50〜60nm、溝幅0.3〜0.6μmが好ましいとしている。
しかし、本発明者らの検討によれば、上述したような層構成においては、溝深さは20nm以上45nm以下が好ましい。これより深いと記録後のプッシュプル信号が0.1より過剰に大きくなりやすく、また、記録後のラジアルコントラスト値が0.6以上と記録前の値0.1〜0.2に比べて過剰に大きくなり、サーボの安定性に問題が生じることがわかった。
繰返しオーバーライト耐久性及び溝信号の溝深さ依存性を考慮すれば、より好ましくは30nm以上40nm以下である。40nmより深くすると、溝内反射率が低くなりすぎ規格の下限値である15%を満たしにくくなる。また、記録後のプッシュプルの振幅PPaが大きくなり過ぎ、既存の凹凸ピット再生回路ではプッシュプル検出回路のゲインが飽和してしまう。
溝深さを浅くしすぎるとスタンパ製造や射出成形による溝形状形成が困難になり、あるいはラジアル・コントラストやプッシュプルの下限規格を下回る。また、溝壁による記録層閉じ込め効果が薄れ、繰返しオーバーライトによる劣化が促進される点でも好ましくない。従って、好ましくは20nmより深くし、より好ましくは30nmより深くする。
この場合、溝深さが20〜45nmの範囲での溝による位相差Φは、−0.16πから−0.36πであるから、溝内記録において最も振幅を大きくするために(7)式のΔを−π近傍とするためには、δを−0.84πから−0.64πとなるよう層構成を調整すればよい。
またΔを−π/2近傍とするためには、δを−0.34πから−0.14πとすればよい。
なお、記録後のラジアル・コントラストの絶対値が0.6以下であるという規格値から溝幅は0.3μm以上が望ましく、ウォブルと溝形状に関したオーバーライト耐久性の観点から、特に相変化タイプの書換え可能なCDやDVDに応用する場合、0.6μm以下であることが望ましい。
ウオブルの存在による劣化促進のメカニズムは必ずしも明らかではないが、記録用光ビームの一部が溝の側壁に照射されやすくなるためではないかと考えられる。
すなわち、トラッキングサーボがかかった集束光ビームはウオブルの蛇行には追従せず溝中心部を直進して行く。
溝壁の蛇行があれば、光ビームが、わずかではあるが溝壁に照射されやすくなる。
薄膜の密着性が悪い溝壁部や溝角部で応力集中が起きやすい等により繰返しオーバーライト時の熱ダメージによる劣化が起きやすいと考えられるので、ここに光ビームの一部でも照射されれば、劣化は促進されると考えられる。
相変化媒体の溝内記録では深溝、細溝であるほど耐久性が良いという傾向があるが、ウ
オブルが存在する場合、溝幅が狭すぎるとかえって上述の溝壁部の劣化現象が顕著になるため劣化が著しい。
すなわち、繰返しオーバーライト耐久性の面から溝幅に制限があり、0.6μmより広いと相変化媒体一般の現象として、また、0.4μmより狭いとウォブルの存在によるオーバーライト耐久性による劣化が著しくなるので好ましくない。CD−RWにおいてはより好ましくは0.45μm以上0.55μm以下である。
このように、記録された非晶質マークにおける位相差の制御は、今後重要になると思われるディジタル・ビデオ・ディスク(いわゆるDVD)の書換え可能媒体(相変化媒体)でも有効であることは言うまでもない。
例えば、波長630〜660nm、NA=0.6〜0.65で記録再生を行う相変化DVDも提案されているが、再生専用DVDと互換性を取るためには、まず、変調度がCDと同様に少なくとも50%はあることが必要である。
一般的に、DVDのように最短マーク長が0.4μmといった高密度記録では、十分な再生信号振幅とそれによる良好なジッタが選られるように、プッシュプル信号振幅を小さくしてでも、Iphase 成分を有効に使用しなければならくなっている。
つまり、凹凸ピットの位相差をCDよりさらに±πに近づけるよう、深めのピットを採用せざるを得なくなっている。実際のピット深さは再生波長が650nmまで短くなるので、現行CDとほぼ同じであり、100nm前後である。
このように、プッシュプルの小さい再生専用ドライブでトラッキングサーボが安定にかかるためには、DPD(Differential Phase Detection)方式でのトラッキングサーボ信号を十分得る必要があり、やはり非晶質マークでの位相差δは式(8)に示された範囲にあることが望ましい。
ここで、DPD方式とは、図4に示すように、ビーム進行方向(ピット配列方向)にそって、4分割に配列された光検出器A、B、C、Dの出力を用いて(B+C)信号の位相と、(A+D)信号の位相の位相差として定義される。
あるいは、TangentialPushPullと呼ばれる量が問題となる。これは、(C+D)−(A+B)信号として定義される。
このような再生系との互換性を確保するためには、非晶質マークにおいても、凹凸ピット同様(7)式のΔを−πに近づけ、Iphase 成分を有効に活用すべきである。この場合は、
−π<Δ<−3/4π ( 16)
の範囲であることが望ましい。
DVDと再生互換性を確保するためには、溝内記録であることが望ましいが、上記のように溝自体のプッシュプル信号を小さ目にする必要があり、そのためにCD−RWと同様に溝深さを浅くして溝深さによる位相差を小さくする必要がある。記録再生波長がCD−RWの780nmに対して、630〜660nm程度となるからやや狙い目は浅めになるが、やはり25から40nmの範囲であることが望ましい。
以下、記録前後の反射率差及び位相差を、実際の多層構成においてどのように制御できるかを具体的構成例をもって説明する。
(層構成設計例1)
第一の好ましい層構成は、波長600以上800nm以下の光ビームで記録・再生・消去を行うものであって、下部保護層の膜厚が70nm以上150nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下、相変化記録層の膜厚が15nm以上25nm以下、上部保護層の膜厚が30nm以上60nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下、反射層の膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下である。
図6〜10に基板上に下部保護層、記録層、上部保護層、反射層を設けた種々の4層構成における反射率及び結晶と非晶質の位相差δの計算例を示した。各層の屈折率は780nmにおける実測値を用いている。
以下の図においては、−π≦δ≦0なるδは、2πを加えて、π≦δ≦2πとなるように表示している。(8)、(11)、(12)、(14)、(15)、(16)式において、すべてこのような置き換えをすればすべての条件式がそのまま成立する。
図6〜10では例として、基板の屈折率nsub =1.5、上下部保護層は屈折率2.10の(ZnS)80(SiO220、記録層は結晶、非晶質状態の屈折率がそれぞれnc =3.7−4.3i、na =4.2−2.1iのAg5 In6 Sb60Te29、反射層は屈折率2.1−6.0iのAl99Ta1 の場合をあげている。
本発明で特に好ましいとしている、Sb70Te30共晶点近傍組成に20原子%程度までの添加元素を加えた記録層では、図6〜10とほぼ類似の光学特性が発揮される。
ただし、特定の軽元素、すなわちN、S、O、Seを添加すると光学的影響が大きいので、これらの元素は単独では10原子%以上添加するのは好ましくない。
また、Au、Ag、Alを主成分とする反射層である限り、反射率の絶対値は多少変化するものの、反射層組成にもほとんど依存しない。
例えば、Ag5 Ge5 Sb70Te20ではnc =2.61−4.43i、na =3.63−2.70iであり、Ge6 Sb69Te25ではnc =2.34−4.06i、na =3.54−2.56iである。
まず図6〜9は、反射層は100nmで一定とし、記録層は16、18、20nm、上部保護層は30、40、50、60nmとした場合の、下部保護層膜厚依存性とを計算している。光学計算においては、Al合金反射層の厚みは60nm程度より厚ければ、実質的にすべての光を反射してしまうので、100nmで一定としても問題ない。
下部保護層依存性を見る限り、通常は振幅の反射率成分Iref 変化は小さく、変調度は分母であるItop 、すなわち結晶状態の反射率に強く依存する。
また、Iref を少しでも大きくとるためには、非晶質の反射率を小さくとることが望ましい。通常、結晶状態の反射率の極小点より、厚めの膜厚で非晶質状態の反射率の極小点がくる。
従って、Iref は結晶状態の反射率の極小点をとる膜厚より、厚めの膜厚が望ましい。なお、結晶状態反射率に対しては、通常、規格もしくはドライブ側の制限で決まる許容下限が存在するので、あまり低すぎることは好ましくない。通常は、最低でも10〜15%は必要とされる。
図6〜9の計算例では第1の結晶状態反射率の極小値はd1 =60〜80nm、第2の極小値はd2 =250〜270nmで達成される。それ以上の膜厚では下部保護層膜厚に対して周期的に変化する。
結晶状態の反射率が極小となる下部保護層膜厚は反射率が高い記録層であれば実質上、保護層の屈折率のみで決まる。
1 、d2 に2.1/n(nは屈折率)を掛ければ、各屈折率における極小点膜厚がほぼ得られるが、通常n=2.0〜2.3であるから、d1 はせいぜい85nm程度である。
下部保護層屈折率が2.0よりも小さいと極小点における反射率が増加して変調度が著しく低下し、0.5以下となるのでCDやDVDと再生互換を確保するためには好ましくない。
逆に、2.3より大とすると、極小点の反射率が低くなりすぎ10%を達成できず、フォーカスやトラッキングサーボが困難になるので好ましくない。
さて、以下では第一の反射率極小点付近における位相差δの下部保護層膜厚依存性に注目する。
図6や図7では、下部保護層膜厚が0から厚くなるにつれ、位相差2π(=0)から単調に減少し、反射率の極小点近傍で、すべての位相差がπを横切って溝有利の位相差からランド有利の位相差に急激に変化している。
図10に下部保護層95nm、上部保護層40nmの場合の記録層膜厚依存性を示した。記録層10〜20nmの付近で急激に位相差δが変化しており、(8)式の条件(ここではπ<δ<2π)を成立させるには記録層膜厚が概ね17nm以上でなければならないことがわかる。
この急激な変化のポイントは、記録層膜厚が薄いほど薄い下部保護層膜厚にシフトし、上部保護層膜厚が30nm以下では、記録層膜厚25nm以下の範囲で、Iref が大きくなるd1 より厚めの膜厚範囲では、(8)式を満たすことは困難である。
さらにまた、上部保護層膜厚30nm以下では、記録層膜厚20〜25nm程度においては、Iref の最適範囲において、このような急激なδ変化がありうるが、製造ばらつきによって、ディスクごとの変調度や記録後のプッシュプル信号にばらつきを生じるので、製造マージンの観点から望ましくない。
少なくとも、目標とする下部保護層膜厚の±5%以内、より好ましくは±10%以内の範囲で、δが安定して溝有利を維持する、すなわちπ<δ<2πであることが望ましい。
以上の観点から、結晶状態反射率Rtop の下部保護層D1 依存性において、
∂Rtop /∂D1 >0 (17)
なる部分を用いることが好ましいことがわかる。
なお、生産性の観点からは下部保護層膜厚は150nm以下にとどめるのが望ましい。なぜなら、現在、誘電体保護層のスパッタ法による成膜速度は高々15nm/秒であり、その成膜に10秒以上かけることはコストを上昇させるからである。
また、膜厚変動の許容値が厳しくなるので生産上好ましくない。即ち、図8からわかるように、反射率は所望の膜厚d0 からΔdずれると、第1の極小値d1 近傍であろうが、第2の極小値d2 近傍であろうがおなじだけ変動する。
一方、製造上膜厚分布はd0 に対して何%かで決まり、通常はd0 ±2〜3%が均一性の限度である。従って、d0 が薄いほど膜厚の変動幅Δdは小さくなり、ディスク面内あるいはディスク間の反射率変動を抑制出来るので有利である。
基板自公転機構を有しない安価な静止対向タイプのスパッタ装置では、結果として大量生産可能な第1の極小値d1 近傍の膜厚を採用せざるを得ない。
下部保護層膜厚を150nmをこえて厚くしないとすることのもう一つの効果は、スパッタ成膜時における発熱の抑制である。
DVDのように厚さ0.6mmのプラスチック(特にポリカーボネート)基板上に、相変化媒体を形成しようとする場合、スパッタ成膜時の発熱による基板の変形が問題となる。
150nmという膜厚は、ちょうど反射率が極大となる膜厚付近であり、これを越えて厚い下部保護層を採用することは、反射率的にも、生産性の観点からもメリットはない。
また、150nmという膜厚は、特に屈折率2.0〜2.3の下部保護層を用いた場合、ちょうど1波長相当の膜厚であり、膜厚0と光学的に同等になる点でもある。光学的に同等ならば、不必要に厚膜をつけて、製造上の問題を大きくする必要はないわけである。
図10の記録層依存性は上部保護層60nmまでの範囲では、若干薄い記録層側にシフトする。位相差の変動が少なく、かつ、溝有利であるという面からは、記録層膜厚は20nm以上が望ましいが、本発明者らの検討によれば、記録層膜厚が20nmを越すと繰返しオーバーライト耐久性が悪化する。
CD−RWとして使用する場合、線速2.4m/sのオーバーライトでは30nmより記録層膜厚が厚いと、CD−RWとしての規格上1000回の耐久性が満足されず不適当であった。このため、可能な限り25nm以下、より好ましくは20nm以下の記録層膜厚で、位相差δを有利になるようにしたい。
図6〜9の順に、上部保護層膜厚が厚くなった場合を想定しているが、上部保護層膜厚が厚いほど、πを横切る急激な位相差変化のポイントが厚い下部保護層膜厚に移動しており、上部保護層膜厚40nmでは、記録層20nmにおいて常に溝有利なままである。
上部保護層膜厚が厚くなるほど、この傾向は顕著であり、60nmでは16nm以上の記録層膜厚では、すべての下部保護層膜厚で、溝有利の位相差をとることがわかる。このように、本発明の一つの要件である、30nm以上と厚い上部保護層は、位相差δを有効に使用するために必要な要件であることがわかる。
一方、上部保護層膜厚が60nmより厚いと、繰返しオーバーライト耐久性は悪化しやすい。上部保護層が厚くなると、保護層自体の熱膨張による体積変形量が大きくなったり、それ自体の熱容量が大きくなって、冷却速度が遅くなり、非晶質マーク形成が阻害されたり、蓄熱による熱ダメージが増大するためであると考えられる。
また、上部保護層膜厚が60nmより厚いと、本発明の低体積抵抗率の反射層を用いても放熱効果が小さい。
本発明においては、金属で最も体積抵抗率の低いAg系反射層も検討したが、記録層膜厚を10〜15nmと薄くしないと効果は得られにくかった。
15nm以下の記録層膜厚については、成膜初期の均一性等にも留意が必要で、できれば15nm以上の膜厚で最適化することが望ましい。
さて、繰返しオーバーライト耐久性を考慮した場合、記録層膜厚D2 及び上部保護層膜厚D3 は薄い方が好ましい。しかし、ただ、D2 、D3 を薄くするのでは位相差δが(8)式の範囲に入らない。
そこで、D3 を厚くしたときにはD2 を薄くすれば、繰返しオーバーライト耐久性を悪化させることなく、δを一定の値に維持した層構成設計ができることが図6〜9の計算例よりわかる。
より具体的には、すでに述べた、70≦D1 ≦150nm、15≦D2 ≦20nm、30≦D3 ≦60nm、及び(17)式の制限のもとで(D3 、D2 )の組み合わせが、
−5D2 +120≦ D3 ≦−5D2 +140 (18)
の関係を満たすことが望ましい。
そして、70≦D1 ≦150nmの範囲でδが少なくとも(8)式を満たすように選べば良い。
本層構成はとりわけ、未記録すなわち結晶状態の反射率を15〜20%に設定するCD−RWのような記録媒体において有用である。
特に、(8)、(11)、(12)、(15)式のいずれの条件で位相差を制御するかは、個々の商品設計の範囲であるが、相変化による位相差δを積極的に活用するためには、本発明要件の一つである、記録層膜厚10〜30nmに対しては、上部保護層膜厚を30nm以上、より好ましくは60nmすることが望ましいことがわかる。
この範囲の膜厚を用いれば、Iref が最大となる非晶質及び結晶状態の反射率極小点付近で、δがπ<δ<2πの領域から0<δ<πの領域に急激に位相変化することを回避でき、製造時における膜厚マージンが確保できる上に、繰返しオーバーライト耐久性にも問題ない層構成設計が可能である。なお、記録層膜厚、及び上部保護層膜厚の上限値と繰返しオーバーライト耐久性との関係については、実施例においてより具体的に述べる。
(層構成設計例2)
図11、12は、設計例1と同様の材料を用いた場合の、波長650nmにおける計算例である。各層の屈折率は波長650nmにおける実測値を用いている。記録層は18nm、反射層は100nmで一定とした。
図11、12はそれぞれ上部保護層20nm及び40nmの場合である。650nmというDVDに対応した波長においてもやはり、上部保護層が厚い場合にはδが(8)式を満足しうることがわかる。
なお、650nmにおける計算例で用いた光学定数は、Al合金反射層1.69−5.34i、ZnS:SiO2 保護層2.12−0i、記録層(結晶状態)nc =2.8−4.1i、記録層(非晶質状態)na =3.7−2.4i、基板nsub =1.56−0iで実測値である。
(層構成設計例3)
設計例1においては、繰返しオーバーライト耐久性、生産性、及び位相差δの観点から、下部保護層膜厚として(17)式の領域を用いることが望ましいとした。ここでは、上部保護層が概ね40nm以上であれば記録層膜厚が20nmより薄い場合Rtop の極小点より厚い下部保護層を用いている。
しかし、上部保護層が概ね40nmより厚い場合には、どんな下部保護層膜厚であっても位相差δが(8)式を満たすような記録層膜厚が10nm以上30nm以下の範囲に存在する。
またこの場合、図7〜9でわかるように、結晶反射率の極小点以下である程度の位相差δ(π<δ<2π)が安定的に選られるため、生産における膜厚変動でδがばらつくのを防ぐ上で好ましい状況となる。しかし、前述のようにそのように薄い下部保護層膜厚では、繰返しオーバーライトによる基板変形が著しいために、このままでは用いられない。
第3の好ましい層構成は、波長600以上800nm以下の光ビームで記録・再生・消去を行うものであって、下部保護層が2層からなり、第1下部保護層の膜厚が20nm以上70nm以下で屈折率が基板の屈折率nsub に対してnsub ±0.1の範囲にあり、第2下部保護層の膜厚が70nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下であり、相変化記録層の膜厚が15nm以上25nm以下、上部保護層の膜厚が30nm以上60nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下、反射層の膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下である。
すなわち、
∂Rtop /∂D12<0 (19)
なる領域を有効活用するために、図13に示すように第1下部保護層2a(厚さD11)、第2下部保護層2b(厚さD12)と下部保護層を2層化する。
ここで第1下部保護層2aは、基板とほぼ同じ屈折率を有し、単に基板の熱変形を抑制する機械的・熱的保護層として機能し、光学的には基板そのものとみなせる。
基板屈折率をnsub とするとき、第1保護層の屈折率はnsub の±0.1以内であること望ましく、より好ましくは±0.05以内である。
第2保護層2bは光学的な保護層とみなされ、図6〜9及び図11、12における下部
保護層膜厚依存性においては、第2保護層膜厚D12のみを考慮すればよい。D12は(19)式の範囲で光学特性、すなわち反射率と位相差δを主に注目して選定すればよい。
上部保護層膜厚D3 及び記録層膜厚D2 についてはやはり、(18)式を満たすことが繰返しオーバーライト耐久性を維持する上で好ましい。
また、2層の下部保護層全体の膜厚はやはり70nm以上150nm以下とすることが、繰返しオーバーライト耐久性、生産性の観点から好ましい。
このような下部保護層2層化は、(17)及び(18)式の条件下での層構成設計で、基板変形をさらに抑制したい場合に用いることができる。
通常用いられるガラスやプラスチック基板の屈折率は1.4〜1.6程度である。基板とほぼ同等の屈折率を有し、かつ機械的強度にすぐれる保護層材料としては、具体的にはSiC−SiO2 、SiC−SiO2 −MgF2 、ZnS−SiO2 −MgF2 混合膜である。
ここで、低屈折率化のために用いるMgF2 はCaF2 、LiF2 等で置換することも可能である。また、ZnSはZnSeや希土類の硫化物やセレン化物に置換可能である。
より具体的に、ポリカーボネート樹脂基板と同等の屈折率(1.55)を与えるものとして、(SiC)38(SiO257(Y235 (屈折率n=1.57)や(SiC)19(SiO25 (MgF276(n=1.49)が挙げられる(いずれもモル%)。
これらの材料は、混合比を調整することで、屈折率のさらなる微調整が可能である。
なお相変化による位相差δは、上記のように層構成(各層厚み)と各層の屈折率から計算によって推定できる。また、平面において結晶状態と非晶質状態の2つが明確な境界を有して接していれば、位相差光学顕微鏡で見積もることもできる。
次に、本発明の媒体に用いる好ましい記録法について説明する。
以下の記録方法を併せ用いることで、記録層の再凝固時の冷却速度を正確に制御し、より一層広い線速範囲および記録パワーで正確なマーク長記録を行うことができる。
本発明の相変化媒体はこれまでGeTe−Sb2 Te3 擬似2元合金系で用いられてきた記録パワーPwと消去パワーPeの2値で変調する場合よりも、オフパルス区間を設けることが望ましい。
2値変調のオーバーライトも可能ではあるが、本発明においては図15に示すような3値変調方式を用いることで、パワーマージン、記録時線速マージンを広げることができる。
長さnT(Tは基準クロック周期、nは自然数)のマークを形成する際には、時間nTを、以下のようにn−k個にパルス分割し、
α1 T、β1 T、α2 T、β2 T、・・・・、αm T、βm T、
(但しn−j=α1 +β1 +・・・・・+αm +βm (0≦j≦2)、
m=n−k(k=0、1、2)かつnmin −k≧1)
αi T(1≦i≦m)なる時間に記録層を溶融させるに足る記録パワーPw(>Pe)を照射し、βi T(1≦i≦m)なる時間には、0<Pb≦0.5Pe(ただし、βm Tにおいては、0<Pb≦Peとなりうる)なるバイアスパワーPbを照射してオーバーライトする。
図16に(a)Pb=Peとした場合と、(b)Pb=0(極端な場合)とした場合の記録層の温度変化を模式的に示した。
3個に分割された分割パルスの、1番目のパルスP1と2番目のパルスP2が照射される間の位置を想定している。
図16(a)では後続の記録パルスによる加熱の影響が前方に及ぶために、1番目の記
録パルス照射後の冷却速度が遅く、かつオフパルス区間でもPeが照射されるため、オフパルス区間での温度降下で到達する最低温度TLが融点近傍に留まっている。
一方、図16(b)では、オフパルス区間のPbがほとんど0のため、TLは融点から十分下がった点まで下がり、かつ、途中の冷却速度も大きい。
非晶質マークは1番目のパルス照射時に溶解し、その後のオフパルス時の急冷によって形成される。
上記のm、j、αi 、βi で規定されるパルスストラテジーを線速によって変更することなく、クロック周期Tのみをおおむね線速に反比例させて記録密度を一定に保てることが望ましい。
このパルスストラテジーを一定にして、少なくとも記録可能な線速の最低値と最大値が2倍以上は確保するできるのが本発明の付加的な効果である。
Pw、Pe、Pbを線速に応じて変化させることは、パルスストラテジーとは別の問題であり、適宜行われる。
なぜなら、パワーの変更は分割パルス発生回路とは無関係に行われるからである。
特に、本発明の具体的な応用例としてのCD−RWにおいては、図17に示すように、nTマーク(n=3〜11の整数)の記録に際して、n−1個の記録パルスに分割し、1番目の記録パルスを1.0Tとし、後続の記録パルスをすべて0.5Tとする。
またバイアスパワーPbを照射する時間(オフパルス時間)はすべて0.5Tとする。
特に、本発明記録層に対してはオフパルス時のバイアスPbを0<Pb≦0.5Peなるように十分低くとることが必要である。
少なくとも線速2.4m/sから5.6m/sの範囲(コンパクトディスクにおける2倍速程度の速度)においてEFM変調された非晶質マークを形成する際に、マーク間では非晶質マークを再結晶化しうる消去パワーPeを照射し、長さnT(nは3〜11までの整数)のマークを形成する際には、上記パルスストラテジーにおいて、m=n−1、α1 =0.1〜1.5、αi =0.1〜0.6(2≦i≦m)、βi =0.4〜0.9(1≦i≦m)とし、αi T(1≦i≦m)なる時間には記録層を溶融させるにたる記録パワーPw(>Pe)を照射し、βi T(1≦i≦m)なる時間には0<Pb≦0.5PeなるバイアスパワーPbを照射するのがよい(ただし、i=mにおいては0<Pb≦Peもしくは0≦βm <0.5となりうる)。
なお、このパルスストラテジーは後述の実施例に示されているように、本発明層構成を用いることにより、2〜4倍速でもオーバーライト可能な互換性の高いCD−RW媒体が得られる。
すなわち、同じパルスストラテジーで2および4倍速記録ができる。
特に、4倍速においては、上記パルスストラテジーを用いた場合、各nTマーク間のマーク長をより厳密に調整するため、最後のオフパルス区間βm Tの長さのみを、各マーク長もしくは後続マーク間長または後続マーク長の組み合わせによって、微調整することも有効である。
これは図15においてn−jを前後のマーク長やマーク間長に応じて微調整することを意味する。
極端なケースとして最後のβm =0とする場合もある。
以下に実施例により本発明を説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、溝形状は、光学回折法を用い、U溝近似により求めた。もちろ
ん、走査型電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡で溝形状を実測しても良い。この場合、溝幅は、溝深さの半分の位置における溝幅とする。
各層組成は蛍光X線分析、原子吸光分析、X線励起光電子分光法等を組み合わせて確認した。膜厚は、蛍光X線強度を、触針計で測定した膜厚で校正して求めた。
保護層の膜密度は、基板上に数百nm程度に厚く設けた場合の重量変化から求めた。
反射層の面積抵抗率は4探針法抵抗計{Loresta FP(商品名)、三菱油化(現ダイアインスツルメント)社製}で測定した。
反射層の抵抗率は、ディスク基板に下部保護層、記録層、上部保護層、反射層を形成したのち測定した。あるいは、ガラスもしくはポリカーボネート製ディスク基板に反射層を成膜して測定した。ガラス、ポリカーボネートや誘電体保護層は絶縁物であるため、抵抗率測定に影響はない。また、ディスク基板は直径120mmで、本測定においては実質的に無限大の面積とみなせる。
抵抗値Rから、下記式に基づいて面積抵抗率ρS及び体積抵抗率ρVを計算した。
ρS=F・R (20)
ρV=ρS・t (21)
ここで、tは膜厚、Fは測定する薄膜領域の形状で決まる補正係数であり、4.3〜4.5の値をとる。ここでは、4.4とした。
成膜直後の記録層は非晶質であり、バルクレーザーで初期化を行った。すなわち、長軸約70μm、短軸約1.3μmに集光した波長830nmのレーザービームをパワー500〜600mW、線速3.5m/sで照射して全面結晶化させ初期状態(未記録状態)とした。このパワーでは、記録層はいったん溶融して再凝固する再に結晶化していると考えられる。
記録再生の評価にはパルステック製DDU1000評価機を用いた。光ヘッドの波長は780nm、NAは0.55である。記録線速は1.2〜4.8m/sとし、再生速度は2.4m/sとした。なお、1倍速、2倍速、3倍速、4倍速とはそれぞれ1.2m/s、2.4m/s、3.6m/s、4.8m/sを指す。
記録には図17に示したパルスストラテジーを用いた。ただし、線速2.8m/s以上では、マーク最後端のオフパルス区間βm TにおいてPb=Peとした場合がある。Pbはすべての線速において0.8mWで一定とした。
2倍速でのクロック周期は115nsecであり、線速切り替え時にはクロック周期Tを線速に反比例させた。
再生速度は2倍速であり、ジッタの許容値はCD規格で定められた17.5nsecとした。
オーバーライト耐久性の評価は、2倍速で繰返しオーバーライトしたときに3Tマークのジッタが17.5nsec以下に保たれる回数を目安とした。
(実施例1)
基板上に、下部保護層(ZnS)80(SiO220を100nm、記録層Ag5 In5 Sb61.5Te28.5を18nm、上部保護層(ZnS)80(SiO220を50nm、反射層Al99Ta1 合金を200nm設けた。
すべての膜はスパッタ法で真空を解除せずに作成した。基板は厚さ1.2mmのポリカーボネート基板で、特に断らない限り、射出成形により1.6μmピッチで幅0.53μm、深さ32nmの溝が形成されている。記録はこの溝内に行った。
反射層は、到達真空度2×10-4Pa以下、Ar圧0.54Pa、成膜レート1.3nm/秒で成膜した。体積抵抗率は92nΩ・m、面積抵抗率は0.46Ω/□であった。
酸素、窒素等の不純物はX線励起光電子分光での検出感度以下であった。全部あわせてもほぼ1原子%以下であると見なせる。
保護層の膜密度は3.50g/cm3 で理論的バルク密度3.72g/cm3 の94%であった。
本媒体に対し、記録線速マージンおよび記録パワーマージンを評価した。
Pe/Pw=0.5で一定とし、Pwと線速を変化させて3Tマークジッタを測定した。なお、記録は図17に示すパルスストラテジーを用いたが、線速2.8m/s以上ではβm TにおいてPb=Peとしている。
また、媒体はあらかじめEFMランダム信号を10回オーバーライトしたのち、本測定に用いた。
結果を図18に示した(以後このような図を等高線図と呼ぶ)。低ジッタの領域が広いほど、線速マージンと記録パワーマージンが広いことを意味する。
図18において、線速2.4m/s、記録パワー12mWを中心に線速4.8m/sまで広いマージンが確保できているのがわかる。
なお、線速1.2m/sで急激にジッタが悪化したが、パルスストラテジーにおいて記録パルス幅が1T、0.5T、0.5T、…(先頭パルスのみ1Tで2番目以降のパルス0.5T)となっているのを、1T、0.2T、0.2T、…(ただし、各記録パルスの先頭位置は同じ)と変更することで、良好なジッタが得られた。
次に、2倍速、4倍速における変調度と3Tマークジッタの記録パワー依存性を評価した。この評価では、図17に示すパルスストラテジーを厳密に用いて記録し、2倍速で再生し測定を行った。
また、媒体はあらかじめ所定の条件で10回オーバーライトしたのち、本測定に用いた。
2倍速においてPe/Pw=0.5とした場合の測定結果を図19に、4倍速においてPe=8mWで一定とした場合の測定結果を図20に示す。
4倍速においてPe/Pw=0.5とし、βm =0とした場合の測定結果を図21に示す。
2倍速、4倍速において、変調度、3Tマークジッタともに広い記録パワーマージンを有することがわかる。
なお、4倍速でのジッタが高めであるが、これは、本発明者らが使用したEFM信号発生信号源の高周波数での特性が悪いためで、それを差し引くとさらに、3〜5nsec良好なジッタが得られることがわかっている。
(実施例2)
実施例1の基板及び層構成において、記録層組成をAg5 In5 Sb61Te29、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5、Ag5 In5 Sb62Te28の3種類とし、反射層を厚さ80nmの純Al(純度99.99%)として同様にディスクを作成した。
反射層は、到達真空度2×10-4Pa以下、Ar圧0.54Pa、成膜レート1.4nm/秒でスパッタ成膜した。体積抵抗率は46nΩ・m、面積抵抗率は0.58Ω/□であった。
バルクイレーザで初期化を行った。
本媒体に対し、記録線速マージンおよび記録パワーマージンを評価した。
図22(a)、(b)、(c)にそれぞれ記録層組成Ag5 In5 Sb61Te29、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5、Ag5 In5 Sb62Te28の3Tマークジッタの等高線図を示す。
Sb/Te比が大きくなるにつれて最小のジッタが得られる最適線速は高線速側にシフトするものの、広線速範囲、広記録パワー範囲において良好なジッタが得られている。
Sb/Te比をさらに増やして10m/s程度の高線速記録に対応させてもこの傾向は同じで、最高線速/最低線速の比2倍以上のジッタマージンが得られる。
(実施例3)
反射層を厚さ80nmの純Agとした以外は実施例1と同様にディスクを作成した。
反射層は、到達真空度3×10-4Pa以下、Ar圧1.0Pa、成膜レート20nm/秒でスパッタ成膜した。体積抵抗率は32nΩ・m、面積抵抗率は0.4Ω/□であった。
バルクイレーザで初期化を行った。
本媒体に対し、記録線速マージンおよび記録パワーマージンを評価した。
図23に3Tマークジッタの等高線図を示した。
ジッタマージンの中心そのものは低線速側に移ったが、1倍速から3倍速にかけて広範なマージンを有することがわかる。
(実施例4)
実施例1の基板及び層構成において、反射層をAl99Ta1 とAgの2層とし、記録層膜厚、上部保護層膜厚を種々組み合わせて、以下の4種の層構成を用意した。AlTa及びAg反射層の成膜条件はそれぞれ、実施例1及び実施例3と同じである。
(a)下部保護層(ZnS)80(SiO220を110nm、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5記録層を16nm、上部保護層(ZnS)80(SiO220を50nmとし、反射層は厚さ21nmのAl99Ta1 合金反射層と厚さ90nmの純Agの2層とした。
(b)下部保護層(ZnS)80(SiO220を120nm、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5記録層を14nm、上部保護層(ZnS)80(SiO220を60nmとし、反射層は厚さ21nmのAl99Ta1 合金反射層と厚さ110nmの純Agの2層とした。
(c)下部保護層(ZnS)80(SiO220を110nm、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5記録層を18nm、上部保護層(ZnS)80(SiO220を50nmとし、反射層は厚さ21nmのAl99Ta1 合金反射層と厚さ90nmの純Agの2層とした。
(d)下部保護層(ZnS)80(SiO220を90nm、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5記録層を18nm、上部保護層(ZnS)80(SiO220を40nmとし、反射層は厚さ21nmのAl99Ta1 合金反射層と厚さ50nmの純Agの2層とした。
図24(a)、(b)、(c)、(d)にそれぞれ実施例4(a)、(b)、(c)、(d)の3Tマークジッタの等高線図を示す。
いずれにおいても、2〜4倍速で広範な線速マージン及び記録パワーマージンが得られた。
なお、Ag単層反射層では繰返しオーバーライト耐久性が1000回程度であったのが、この2層構成反射層を用いると5000回程度まで改善された。
(実施例5)
反射層を厚さ180nmの、Siを0.66%(重量%)、Cuを0.34%、Mgを0.9%、Crを0.08%含有するAl合金とした以外は実施例1と同様にディスクを作成した。
反射層は、到達真空度4×10-4Pa以下、Ar圧1.0Pa、成膜レート20nm/秒でスパッタ成膜した。体積抵抗率は88nΩ・m、面積抵抗率は0.48Ω/□であった。
バルクイレーザで初期化を行った。
本媒体においても、実施例1と同様の線速・記録パワーマージンが確保できた。
(比較例1、2、3)
反射層をAl98Ta2 とし膜厚400nmとした以外は実施例1と同様にディスクを作成した。
(比較例1)
この組成ではほとんどの成膜条件において150nΩ・m以上の高い体積抵抗率であった。
特に、成膜レート2nm/秒以下では、非晶質成分が多く含まれ、体積抵抗率が増加し170〜220nΩ・mとなった。
体積抵抗率190nΩ・mであった。
面積抵抗率は0.48Ω/□で、平面方向の放熱効果は十分であると考えられるが、記録感度が1〜2mW悪くなった。単位面積当たりの反射層の熱容量が大きくなりすぎ、その加熱に余分なエネルギーが消費されるためと考えられる。
また、厚い反射層が冷却されるのに時間がかかるため、線速約3m/s以下での冷却が不十分で再結晶化が著しく、良好な非晶質マークが形成できず信号振幅も小さくなってしまった。
また、線速4.8m/sでもジッタは改善されなかった。
同じ反射層で膜厚160nm(比較例2)としたところ、同等の記録感度が得られ、また、4.8m/sではジッタが改善された。しかし、今度は面積抵抗率が大きく、平面方向の放熱が不十分で2.4m/sにおける再結晶化が著しく、非晶質マークの形成が不十分であった。
膜厚をさらに薄くしても2.4m/sでの再結晶化は抑制できなかった。
なお、図25(a)、(b)に反射層膜厚が400nm(比較例1)と160nm(比較例2)の場合の3Tジッタ等高線図を示した。
いずれの場合も2倍速でのボトムジッタが実施例1に比較して2〜4nsec高めである。
この理由は、上述のように、特に、低線速において、十分な記録層冷却速度が得られておらず、非晶質マークの一部が再結晶化されるため、信号振幅が低下したり、歪んだりしているためである。
次に、線速2.4m/sで非晶質マークが得られるよう、比較例1において記録層組成をAg5 In5 Sb59.5Te30.5とSb/Te比を低くし結晶化速度を落とした媒体(比較例3)を用意した。
反射層膜厚200nmにおいて線速2.4m/sでは記録パワー10〜16mWにおいて良好なジッタが得られた。
しかし、今度は線速4.8m/sでの消去が不十分で、10回オーバーライト後にはほとんどの記録パワーでジッタが17.5nsec以上あった。
(比較例4、5)
実施例1の層構成において下部保護層膜厚を80nm、記録層を20nmのAg5 In5 Sb59.5Te30.5、上部保護層膜厚を30nm、反射層を160nmのAl98Ta2 とし(比較例4)、線速マージン及び記録パワーマージンを評価した。
上部保護層を薄くしたことによる反射率増加を相殺し、光学的に同等の干渉構造を得るために、下部保護層膜厚を若干薄めにした。この程度の下部保護層膜厚の差は熱的にはなんら変化をもたらさず、実質的に上部保護層膜厚の差が熱拡散を支配している。
図26に3Tマークジッタの等高線図を示す。4倍速では全くマージンがないことがわ
かる。
また、比較例4において記録層組成をAg5 In5 Sb61.5Te28.5として4倍速での消去特性を改善した媒体を作製した(比較例5)が、再結晶化のため2倍速での非晶質マーク形成が不十分であった。
(実施例6)
実施例1の層構成において下部保護層膜厚を100nm、記録層を18nmのAg9 Ge6 Sb67Te18、上部保護層膜厚を40nm、反射層を250nmのAl99Ta1 とし、ディスクを作成した。各層の成膜条件は実施例1と同様である。
図27に3Tマークジッタの等高線図を示す。実施例1とほぼ同様の広い線速及び記録パワーマージンが得られた。
(実施例7)
記録層を厚さ18nmのAg5 Sn6 Sb66Te23、反射層をAl99.5Ta0.5 とした以外は、実施例6と全く同様の層構成でディスクを作成した。反射層の体積抵抗率は55nΩ・mであった。
図28に3Tマークジッタの等高線図を示す。1〜4倍速にかけて幅広い線速・記録パワーマージンが得られた。
(実施例8)
(a)実施例1の層構成において下部保護層膜厚を100nm、記録層を20nmのAg5 In3 Ge2 Sb68Te28、上部保護層膜厚を30nm、反射層を160nmのAl99Ta1 とし、ディスクを作成した。各層の成膜条件は実施例1と同様である。
(b)実施例1の層構成において下部保護層膜厚を103nm、記録層を16nmのAg5 In3 Ge2 Sb64Te26、上部保護層膜厚を42nm、反射層を200nmのAl99.5Ta0.5 とし、ディスクを作成した。各層の成膜条件は実施例1と同様である。
図29(a)、(b)に3Tマークジッタの等高線図を示す。1〜4倍速にかけて幅広い線速・記録パワーマージンが得られた。
上部保護層膜厚が厚い(b)のほうが(a)より広い線速マージンが得られた。
(実施例9)
表−1に示す層構成を有するディスクを作製した。基板は実施例1と同じものを用いた。反射層はAl99Ta1 で膜厚160nmとした。参考として上部保護層38nmの場合も記載した。
Figure 0003885802
実施例1と同様に図17の記録パルスストラテジーで2.4m/sにおいて記録を行った。
変調度は記録パワーに対してあるパワー以上でほぼ一定になる(ex.図19)。そこで、記録パワー依存性において変調度がほぼ一定になり、ジッタが最小となる記録パワー(最適記録パワー)での変調度を比較した。
変調度、Itop 、PPb/PPa、NPPR、及び計算上の位相差δを同表中にまとめた。また、表−1において、2.4m/sにおける最適記録パワーでの繰返しオーバーライト耐久性を測定した。
CD規格に基づいて、1000回後のジッタが15nsec以下の場合を○、15〜18nsecを△、18nsec以上を▲、特に500回以下で20nsec以上となるような場合を×で表した。
上部保護層30nmの場合には繰返しオーバーライト耐久性に有利な80nm以上の下部保護層膜厚で、記録によるプッシュプルの変化が大きく、PPb/PPa>1.6あるいは、NPPR>1.0となり、記録後のサーボ特性が不安定であった。
図6に示すように、下部保護層膜厚が75nmから95nmに増加するに伴い、δが急激に変化し0<δ<πの領域に入るためである。
上部保護層が38nmの時には、特に記録層膜厚が25nmより厚いと繰返しオーバーライト特性の劣化が比較的早く、記録層膜厚35nmでは500回以下で著しく劣化した。
(実施例10)
本発明の媒体にCDとの互換性を持たせるためには、トラックピッチ1.6μm程度、溝幅0.4〜0.5μm、溝間幅1.2〜1.1μmとし、この溝内に記録を行う。
この場合、溝間における非晶質マークの幅が若干広めになり、見かけ上反射率起因の変調度が大きくなりうる。この非対称性を打ち消して、なおかつ溝内記録の変調度が溝間記録の変調度より大きくなるほど、非晶質マークが溝内記録に有利な位相差δを有することになる。
すなわち、再生信号の変調度を(2)式のように規定し、ModG およびModL をそれぞれ溝記録及び溝間記録における変調度とするとき、
ModG −ModL >0 (22a)
ModG >0.5 (22b)
であれば、δは(8)式を満足していると考えられる。
ここで変調度は実施例6のように、記録パワーに対して飽和してほぼ一定となり、ジッタが最小となる記録パワー(最適記録パワー)での測定値を用いた。
溝内と溝間での最適記録パワーの差は極めて小さく、同一の記録パワーにて比較を行う。
なお、トラックピッチにかかわらず、おおむね溝幅≦溝間幅なる溝形状を有する場合に、溝内記録の変調度>溝間記録の変調度であれば、位相差δが溝幅記録に有利であると判定できる。
さらに、変調度の絶対値そのものは振幅の反射率差成分Iref 及び再生系に依存するが、変調度の差
ModR =(ModG −ModL )/(ModG +ModL ) (23)
に注目して規格化すれば再生系及び反射率差に依存せず、位相差の影響を把握できる。
以下では、本発明の媒体において各層厚みを表−2のように種々変化させて図6〜9で計算されるような範囲で、位相差δを変化させる実験を行った。
溝幅0.5μm、溝深さ35nmとした。溝による位相差Φ=0.28πである。
Figure 0003885802
記録再生にはパルステック社製DDU1000のNA=0.5、波長780nmのシステムを用いた。図17のパルスストラテジーで、線速2.4m/sでPw/Pe=13mW/6.5mWとし、EFMランダムパターンの記録を行った。
本実施例において上下の保護層は(ZnS)80(SiO220、記録層はAg5 In5 Sb60Te30であり、反射層はAl99Ta1 (40nm)/純Ag(60nm)の2層構成を用いた。各層成膜条件は実施例4と同じである。
熱的には実施例4とほとんど同等であり、いずれの場合も図18に相当する広い線速、記録パワーマージンが得られた。
下部保護層(D1 )、記録層(D2 )、及び上部保護層(D3 )膜厚だけを種々変化させたので、その膜厚だけを表−2に示した。
本実施例においては、非晶質状態の反射率が最も低くなる付近を利用して、(3)式のIref 成分を有効に活用できる層構成を利用している。したがって、層構成設計例1において∂Rtop /∂D2 >0の領域を利用することになる。
さらにまた、非晶質マークからの反射光による寄与が少ないことから、記録後のサーボ信号を考慮して、特に、Δを±π/2近傍としてプッシュプル信号が大きく取れる層構成設計を意図している。
図30に計算上のδ(図6〜10の計算例の範囲)とModR の規格化変調度の差の相関を示した。δがπ付近から大きくなるにつれ(図中“a”から“b”点への矢印)、ModR が大きくなり3π/2近傍で最大値をとり、さらにδが大きくなる(図中“b”から“c”点への矢印)とModR は再び小さくなる。厳密に言うと、ModR が0である、すなわち、δ=πもしくは2πとなる点(図中でそれぞれ“a”、“c”で表示)、及びModR が最大となる、すなわちδ=3π/2となる点(図中で“b”で表示)は若干すれている。
しかし、計算と実測値の差、すなわち、(計算例)における計算は、平面波近似であり、集束光での測定値ではある程度のずれが生じること、膜厚測定値のばらつきが記録層で2nm程度、保護層で3〜5nm程度あることを考慮すればおおむね良好な対応がとれていると考えられる。
同表には、記録前後のプッシュプル比PPb/PPaや規格化されたプッシュプル比NPPRも合わせて掲載している。概ねPPb/PPa≦1.6、もしくはNPPR≦1.0であれば、記録前後で安定したサーボ信号を得ることができる。すなわち、PPb/PPa>1.6もしくはNPPR>1.0となって、記録によりサーボが不安定になる傾向がある。
図31には、(13)式からわかるように位相差δ及び位相差δ(したがってΔ)に最も影響されるNPPR値{図31(a)}や、PPb/PPa{図31(b)}、さらにPPa/Itop 値{図31(c)}とModR の関係を示した。NPPRやPPaといった位相差δに強く依存する量がModR と極めて良い正または負の相関を示すことがわかる。記録前後のサーボ信号の変化が少ないという点で記録システムにとって都合がよく、かつ記録後のプッシュプル信号PPa/Itop が大きいという点で再生専用システムにとっても都合が良いのはModR が大きい場合、すなわちδ=π・3/2である。
このように、ModR は直接測定困難な位相差Δもしくはδに替わって実験的に位相差を有効に活用できる層構成を検討する上で有効な指標であり、同一の溝形状であれば、ModR >0であることはもちろんのこと、0.03以上の大きな値を取るように選択することが望ましい。
一方、表−2には、線速2.4m/sにおいて最適記録パワーにおける繰返しオーバーライトテストを行い、CD規格に照らして、1000回後のジッタが15nsec以下の場合を○、15〜18nsecを△、18nsec以上を▲で表した。特に、500回以下で20nsec以上となるような場合を×とした。○、もしくは△の耐久性を達成するためには、上部保護層を50nmと厚くした場合、記録層を薄くする必要があり、(18)式の範囲であれば良いことがわかる。
より詳細に考察すれば、同じ変調度0.71〜0.72が得られる105/15/50の層構成(ModR *100=−1.09)場合と、105/18/50の層構成(Mo
R *100=6.77)を比較した場合、ModR が大きく、位相差の寄与が大きいと考えられる105/18/50の場合のほうが、Itop が高いわりには変調度が高く、かつ、記録前後のサーボ信号の変化(PPb/PPaもしくはNPPR)が小さく、記録後のプッシュプル信号も大きい。初期特性という面からは105/18/50の方が好ましい。
しかし、繰返しオーバーライト耐久性の面からは105/15/50の方が好ましい。どちらを優先するかは当業者の選択の範囲であるが、例えば、両者のバランスを考慮すれば、105/17/50(ModR *100=3.60)といった層構成が選ばれる。
(実施例11)
比較例4において、反射層を200nmのAl99Ta1 とした。
2倍速での低パワー側の再結晶化は改善が見られたが、高パワー側の再結晶化は改善されなかった。また、記録感度が1〜2mW悪化した。
(実施例12)
上部保護層膜厚を65nm、反射層を200nmのAl99Ta1 とした以外は実施例1と同様にディスクを作成した。
2倍速における初期特性は、実施例1とほとんど同じであった。しかし、2倍速において繰返しオーバーライトしたところ、記録パワー10〜15mWにおいて、1000回後の3Tジッタが20〜25nsecにまで増加した。ジッタが17.5nsec以下なのは繰返しオーバーライト500回以下であった。
なお、繰返しオーバーライト耐久性は、上部保護層が60nmより厚くなると悪化する傾向があった。
本発明の光学的情報記録用媒体における層構成の模式図 信号の変調度の説明図 反射光の位相差の説明図 光検出系の説明図 再生信号の説明図 反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図 反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図 反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図 反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図 反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図 反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図 反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図 本発明の光学的情報記録用媒体における層構成の模式図 本発明の光学的情報記録用媒体の記録層の熱拡散の状態を説明する説明図 本発明の光学的情報記録用媒体への光記録時のレーザーパワーの照射パターンの一例を示す説明図 記録層の温度プロファイルの説明図 記録パルスの説明図 実施例1の3Tマークジッタの等高線図 実施例1の2倍速での変調度、記録パワー依存性を示すグラフ 実施例1の4倍速での変調度、記録パワー依存性を示すグラフ 実施例1の4倍速での変調度、記録パワー依存性を示すグラフ 実施例2の3Tマークジッタの等高線図 実施例3の3Tマークジッタの等高線図 実施例4の3Tマークジッタの等高線図 比較例1、2の3Tマークジッタの等高線図 比較例4の3Tマークジッタの等高線図 実施例6の3Tマークジッタの等高線図 実施例7の3Tマークジッタの等高線図 実施例8の3Tマークジッタの等高線図 実施例10の層構成におけるModR の実測値と計算上のΔとの相関 実施例10の層構成におけるNPPR、PPb/PPa、及びPPa/Itop とModR の相関
符号の説明
1 基板
2 下部保護層
2a 第1下部保護層
2b 第2下部保護層
3 相変化型記録層
4 上部保護層
5 反射層
6 保護コート層

Claims (15)

  1. 基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層をこの順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体であって、
    該反射層の面積抵抗率が0.2Ω/□以上0.9Ω/□以下であり、
    該相変化記録層が、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金薄膜からなり、
    該相変化記録層の膜厚が10nm以上30nm以下であることを特徴とする光学的情報記録用媒体。
  2. 基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層をこの順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体であって、
    該反射層の面積抵抗率が0.2Ω/□以上0.9Ω/□以下であり、
    該反射層がTa、Ti、Co、Cr、Si、Sc、Hf、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo、又はMnのうちの少なくとも一種を0.2原子%以上2原子%以下含むAl合金であるか、又は
    該反射層がTi、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo、またはMnのうちの少なくとも一種を0.2原子%以上5原子%以下含むAg合金であり、
    該相変化記録層が、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金薄膜からなり、
    該相変化記録層の膜厚が10nm以上30nm以下であることを特徴とする光学的情報記録用媒体。
  3. 基板上に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層をこの順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体であって、
    該反射層の面積抵抗率が0.2Ω/□以上0.9Ω/□以下であり、
    該反射層が多層からなり、全反射層膜厚の50%以上が体積抵抗率20nΩ・m以上150nΩ・m以下の1層以上の金属薄膜であり、
    該相変化記録層が、Sb70Te30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする合金薄膜からなり、
    該相変化記録層の膜厚が10nm以上30nm以下であることを特徴とする光学的情報記録用媒体。
  4. 上部保護層の膜厚が30nm以上60nm以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  5. 反射層が不純物含有量が2原子%以下のAl合金(純Alを含む)または不純物含有量が5原子%以下のAu又はAg合金(純Au、Agを含む)である請求項1に記載の光学的情報記録用媒体。
  6. 反射層の体積抵抗率が20nΩ・m以上100nΩ・m以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  7. 上部保護層が、ZnS、ZnO、TaS2又は希土類硫化物のうちの少なくとも一種が2
    0モル%以上90モル%以下と、融点又は分解点が1000℃以上の耐熱性化合物との混合物である請求項1ないし6のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  8. 基板上に溝を設け、該溝内に光ビームを照射し情報の記録を行い、基板裏面から光ビームを照射して反射光を読み取り情報を再生する光学的情報記録用媒体であって、δを
    δ=( 結晶領域を通過した反射光の位相) −( 非晶質領域を通過した
    反射光の位相)
    とするとき、
    −π< δ <0
    である請求項1ないし7のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  9. 請求項8において、再生光ビームの波長λ、波長λにおける基板の屈折率n、基板の溝深さdとし、ΦおよびΔを
    Φ=( ランド部からの反射光の位相) −( 溝部からの反射光の位相)
    =−4πnd/λ
    Δ=δ+Φ
    とするとき、
    −π/2< Φ <−π/8
    −π< Δ <−π/2+π/8
    である光学的情報記録用媒体。
  10. 請求項9において、
    −π/2−π/8< Δ <−π/2+π/8
    である光学的情報記録用媒体。
  11. 溝が蛇行しており、溝深さを20nm以上45nm以下、溝幅を0.3μm以上0.6μmとする請求項8ないし10のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  12. 下部保護層の膜厚が70nm以上150nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下、相変化記録層の膜厚が15nm以上25nm以下、上部保護層の膜厚が30nm以上60nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下であり、波長600以上800nm以下の光ビームで記録・再生・消去を行う請求項1ないし3のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  13. 下部保護層膜厚D1nm、記録層膜厚D2nm、上部保護層膜厚D3nm、結晶領域からの
    反射光RtopのD1依存性∂Rtop/∂D1とするとき、
    ∂Rtop/∂D1 >0
    15≦ D2 ≦20
    30≦ D3 ≦60
    −5D2+120≦ D3 ≦−5D2+140
    である請求項12に記載の光学的情報記録用媒体。
  14. 下部保護層が2層からなり、第1下部保護層の膜厚が20nm以上70nm以下で屈折率が基板の屈折率nsubに対してnsub±0.1の範囲にあり、第2下部保護層の膜厚が70nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下であり、相変化記録層の膜厚が15nm以上25nm以下、上部保護層の膜厚が30nm以上60nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下であり、波長600以上800nm以下の光ビームで記録・再生・消去を行う請求項1ないし3のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  15. 下部保護層の全膜厚が70nm以上150nm以下であり、第2下部保護層膜厚D12nm、記録層膜厚D2nm、上部保護層膜厚D3nm、結晶領域からの反射光RtopのD12依存
    性∂Rtop/∂D12とするとき、
    ∂Rtop/∂D12 <0
    15≦ D2 ≦20
    30≦ D3 ≦60
    −5D2+120≦ D3 ≦−5D2+140
    である請求項14に記載の光学的情報記録用媒体。
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