JP5063436B2 - 光触媒シート、光触媒用プライマー組成物 - Google Patents

光触媒シート、光触媒用プライマー組成物 Download PDF

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本発明は、表面を高度に親水化することによって、防汚性や結露防止性等を発揮する光触媒シートに関する。
光触媒シートとは、表面に二酸化チタン等の光触媒を含む光触媒層を設けることによって、その表面を高度に親水化することで、防汚性や結露防止性等を発揮するものである。
光触媒は上記のような親水化機能の他、有機物を分解する機能を有する。したがって、光触媒シートの基材として合成樹脂基材を用いる場合、合成樹脂基材の分解を防ぐため、光触媒層と合成樹脂基材との間に中間層が設けられている。このような中間層としては、シリコーン系材料やフッ素系材料を用いたものなどがあげられる(特許文献1、2)。
特開2001−277418号公報(特許請求の範囲) 特開平7−171408号公報(特許請求の範囲)
特許文献1および2のような中間層を備えた光触媒シートは、合成樹脂基材の分解は防止できる。
しかし、中間層を設けた場合、中間層と光触媒層との収縮率の違いなどを原因として、光触媒層がひび割れるという問題が生じる場合がある。また、光触媒層が砂塵等により傷つくと中間層が露出することがあり、防汚性が低下するという問題があった。
そこで本発明は、光触媒層のひび割れを防ぎ、かつ光触媒層に若干の傷が生じても防汚性に大きな影響を与えない光触媒フィルムを提供する。
上記課題を解決する本発明の光触媒シートは、合成樹脂フィルム上に、中間層、光触媒層をこの順に有する光触媒シートにおいて、前記中間層が、(a)4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体、(b)コロイダルシリカ、および(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルを含む光触媒用プライマー組成物から形成されてなることを特徴とするものである。
また、本発明の光触媒シートは、好ましくは、前記組成物中の各成分の重量割合が、(a)4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体が40〜80重量%、(b)コロイダルシリカが5〜40重量%、(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルが5〜20重量%であることを特徴とするものである。
また、本発明の光触媒用プライマー組成物は、(a)4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体、(b)コロイダルシリカ、および(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の光触媒用プライマー組成物は、好ましくは、前記組成物中の各成分の重量割合が、(a)4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体が40〜80重量%、(b)コロイダルシリカが5〜40重量%、(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルが5〜20重量%であることを特徴とするものである。
本発明の光触媒シートは、中間層を特定の組成から構成していることから、光触媒層のひび割れが生じることなく、かつ光触媒層に若干の傷が生じても防汚性の低下を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の光触媒シートは、合成樹脂フィルム上に、中間層、光触媒層をこの順に有する光触媒シートにおいて、前記中間層が、(a)4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体、(b)コロイダルシリカ、および(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルを含む光触媒用プライマー組成物から形成されてなることを特徴とするものである。また、本発明の光触媒用プライマー組成物は、(a)4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体、(b)コロイダルシリカ、および(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルを含むことを特徴とするものである。
合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂などからなる各種の合成樹脂フィルムを用いることができる。合成樹脂フィルムの厚みは特に制限されることはないが、12〜200μm程度であることが好ましい。
中間層は、光触媒層の光触媒反応により合成樹脂フィルムが劣化するのを防止するとともに、合成樹脂フィルムと光触媒層との接着性を向上させる役割を有する。
本発明ではこのような中間層を、(a)4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体、(b)コロイダルシリカ、および(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルを含む光触媒用プライマー組成物から形成することを特徴とする。このような特定の組成物から中間層を形成することにより、光触媒層のひび割れを防止することができる。また、このような特定の組成物から形成された中間層は親水性に優れることから、光触媒層に若干の傷が生じても防汚性の低下を抑えることができる。
(a)4官能加水分解性シランは、一般式SiX4(式中、Xはアルコキシ基またはハロゲン原子からなる群より一種又は二種以上選択されるものである)で表されるものであり、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシランがあげられる。また、4官能加水分解性シランの誘導体は、上記4官能加水分解性シランの縮合物や加水分解物があげられる。
なお、加水分解性シランは、ひび割れ抑制のため、2官能〜4官能のものを混合して用いられる場合もあるが、本発明では4官能のものを用いる。本発明では、加水分解性シランとして4官能のものを用いることにより、中間層の親水性を良好にし、光触媒層が傷ついても防汚性の低下を防止することができる。
光触媒用プライマー組成物中における4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体の重量割合(固形分)は、40〜80重量%であることが好ましく、40〜60重量%であることがより好ましい。40重量%以上とすることにより、中間層と合成樹脂フィルムとの接着性を良好にすることができ、80重量%以下とすることにより、必要以上に添加することに伴うひび割れや過度な収縮によるカールを防止することができる。
なお、加水分解性シランは2官能および3官能のものを含んでもよいが、2官能および3官能の加水分解性シラン及び/又はその誘導体は、光触媒用プライマー組成物中の5重量%以下になるようにする。
(b)コロイダルシリカは、中間層の親水性を良好にしたり、光触媒層のひび割れを生じにくくする役割を有するとともに、後述するポリエーテル変性シリコーンオイルにより中間層が軟らかくなることによって、光触媒層が傷つきやすくなるのを防止する役割を有する。コロイダルシリカとしては一般的なものを使用でき、平均粒子径は10〜100nmのものが好適に使用される。
光触媒用プライマー組成物中におけるコロイダルシリカの重量割合は、5〜40重量%であることが好ましく、20〜40重量%であることがより好ましい。5重量%以上とすることにより、中間層の親水性を良好なものとし、光触媒層のひび割れを生じにくくし、光触媒層の傷つきを防止することができる。40重量%以下とすることにより、必要以上に添加することに伴う中間層と合成樹脂フィルムとの接着性の低下を防止することができる。
(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルは、Si−H基を有するシリコーンオイルを、炭素−炭素二重結合を末端に有するポリエーテルと付加反応させる方法等により製造されるものである。このようなポリエーテル変性シリコーンオイルは、中間層に柔軟性を付与して光触媒層との収縮率差を低減することにより、光触媒層のひび割れを防止することができる。また、ポリエーテル変性シリコーンオイルは、他のシリコーンオイルのように、中間層に添加した際に親水性が低下するのを最小限に抑えることができる。
ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、1000〜100000が好ましく、2000〜50000がより好ましい。数平均分子量が1000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100000を超えると、塗膜表面にブリードしにくくなる傾向にある。
このようなポリエーテル変性シリコーンオイルの市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社、商品名)、SF8428、SH3749、BX16−034、SH8400(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社、商品名)、KF3516、KF353(以上、信越化学工業社、商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社、商品名)などがあげられる。
光触媒用プライマー組成物中におけるポリエーテル変性シリコーンオイルの重量割合(固形分)は、5〜20重量%であることが好ましい。5重量%以上とすることにより、光触媒層のひび割れを防止することができ、20重量%以下とすることにより、必要以上に添加することに伴って中間層の親水性が低下するのを防止したり、塗膜が軟らかくなることにより、光触媒層に傷が入りやすくなるのを防止することができる。
中間層の厚みは特に制限されることはないが、合成樹脂フィルムの劣化防止性という観点から、0.05〜2.0μm程度であることが好ましい。
中間層表面での純水に対する接触角は、光触媒層が傷ついた際に親水性を付与し、防汚性が低下するのを防止するため、50°以下とすることが好ましく、30°以下とすることがより好ましい。このような接触角は、上記光触媒用プライマー組成物中の各成分の重量割合を、上述した範囲とすることにより達成できる。
光触媒層は、紫外線や可視光線の照射を受けて光触媒反応を起こし、表面を高度に親水化することにより、防汚性や結露防止性等を発揮するものである。このような光触媒層は、光触媒とバインダーからなる。
光触媒としては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化第二鉄、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム等があげられる。これらの中でもアナターゼ型酸化チタンが好適に使用される。
バインダーとしては、無機系バインダーを主成分とするものであることが好ましい。この無機系バインダーとしては、珪素系化合物からなるバインダー、ジルコニウム系化合物からなるバインダー、アルミニウム系化合物からなるバインダー、チタン系化合物からなるバインダーを用いることができる。これらのバインダーの中でも、中間層との接着性を向上させるという観点から、シリカ系、シリコーン系等の珪素系化合物からなるバインダーからなるものであることが好ましい。
光触媒層中のバインダーと光触媒との含有比は特に制限されることはないが、バインダー100重量部に対し、光触媒が50〜200重量部であることが好ましい。光触媒の量を50重量部以上とすることにより、防汚性等を十分に発揮することができ、200重量部以下とすることにより、中間層との密着不良を防止することができる。
光触媒層の厚みは特に制限されることはないが、0.02〜0.2μmが好ましく、0.04〜0.1μmがより好ましい。0.02μm以上とすることにより光触媒活性を十分なものとすることでき、0.2μm以下とすることにより、光触媒層のひび割れを防止しやすくすることができる。
このような光触媒層は、結露防止性を十分なものとするために、紫外線照射時の光触媒層の表面での純水に対する接触角を30°以下とすることが好ましく、10°以下とすることがより好ましい。
合成樹脂フィルムの中間層および光触媒層との反対側の面には、接着層を有していてもよい。接着層を構成する接着剤としては、アクリル系感圧接着剤、ゴム系感圧接着剤などがあげられる。
上述した中間層、光触媒層、接着層中には、レベリング剤などの添加剤を添加してもよい。
以上のような中間層、光触媒層、接着層を合成樹脂フィルムの表面に設ける方法としては、各層を構成する材料を、適宜必要に応じて添加剤や希釈溶剤等を加えて塗布液として調整して、当該塗布液を従来公知のコーティング方法により塗布、乾燥することなどにより設けることができる。
なお、本発明の光触媒シートの接着層上には、光触媒シートの取り扱い性を損なわないようにセパレータを貼り合わせておくことが好ましい。セパレータとしては、上述した合成樹脂フィルムに微粘着層を施したものなどを使用することができる。
以上説明した本発明の光触媒シートは、主として、窓ガラス、鏡、アーケード、表示板、ショーケースなどに使用される。
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
[実施例1〜8、比較例1〜3]
厚み100μmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4100:東洋紡績社)の一方の面に、表1の割合で混合した光触媒用プライマー組成物を溶剤で希釈してなる中間層塗布液を、乾燥後の厚みが0.1μmとなるように塗布乾燥して中間層を形成した。次いで、中間層上に、光触媒用酸化チタンコーティング剤(TKC−304:テイカ社)を溶剤で希釈してなる光触媒層塗布液を乾燥後の厚みが0.1μmとなるように塗布乾燥して光触媒層を形成し、実施例1〜8、および比較例1〜4の光触媒シートを得た。
Figure 0005063436
実施例1〜8および比較例1〜4で得た光触媒シートについて、下記項目の評価を行った。結果を表2に示す。
(1)光触媒層のひび割れ
実施例1〜8および比較例1〜4で得られた光触媒シートの光触媒層を、光学顕微鏡にて観察した結果、ひび割れがないものを「○」、若干ひび割れが発生しているものを「△」、明らかにひび割れが発生しているものを「×」とした。
(2)中間層および光触媒層の接触角
実施例1〜8および比較例1〜4の光触媒シートの光触媒層を形成していない中間層だけを形成したシートを用意し、接触角測定器により中間層の純水に対する接触角を測定した。また同様に、実施例1〜8および比較例1〜4の光触媒シートの光触媒層の純水に対する接触角を測定した。
(3)光触媒層の濡れ性
実施例1〜8および比較例1〜4の光触媒シートの光触媒層を、目視で同じような傷がつく程度にアクリル製ブラシで10〜30回擦った。次いで、紫外線を照射し光触媒層を十分に活性化させた後、光触媒層に霧吹きで水を吹きかけて、水の濡れ広がり具合を目視で観察した。水が濡れ広がるものを「○」、水が濡れ広がらず、玉になったものを「×」とした。
(4)光触媒層の傷つき防止性
実施例1〜8および比較例1〜4の光触媒シートの光触媒層を、発泡ウレタンスポンジで擦ったときの傷つき易さを目視で観察した。傷がつかないものを「○」、傷がつきにくいものを「△」、容易に傷がつくものを「×」とした。
Figure 0005063436
実施例1〜8の光触媒シートは、中間層が、(a)テトラエトキシシラン加水分解物、(b)コロイダルシリカ、および(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルを含む光触媒用プライマー組成物から形成されてなるものである。また、組成物中の各成分の重量割合が、(a)テトラエトキシシラン加水分解物が40〜80重量%、(b)コロイダルシリカが5〜40重量%、(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルが5〜20重量%であるものである。そのため、中間層と光触媒層との収縮率の違いなどによる光触媒層のひび割れを防止することができるものであった。また、光触媒層に若干の傷が生じても、光触媒層の濡れ性が良好で、防汚性が低下しないものとなった。
(b)コロイダルシリカの割合が比較的少ない実施例1および実施例2の光触媒シートは、中間層がほかの実施例のものと比べてやわらかいため、積層された光触媒層は、ほかの実施例のものと比べて傷つきを防止することができなかった。
比較例1の光触媒シートは、中間層が(a)4官能の加水分解性シランの代わりに、2官能のジメチルジエトキシシランを含む光触媒用プライマー組成物から形成されているものである。光触媒層が積層されているときには、濡れ性が良好であるが、中間層に2官能の加水分解性シランを用いたことにより、光触媒層に傷が生じた場合に、光触媒層の濡れ性が低下し、防汚性が低下してしまうものとなった。また、コロイダルシリカの量が実施例3の光触媒シートと同じであるが、中間層に2官能のジメチルジエトキシシランを用いていることから、中間層がやわらかく、実施例3より傷つきやすいものとなった。
比較例2の光触媒シートは、中間層が(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルを含まない光触媒用プライマー組成物から形成されているものである。ポリエーテル変性シリコーンオイルを含まないため、中間層と光触媒層との収縮率の違いなどによる光触媒層のひび割れを防止できないものとなった。
比較例3の光触媒シートは、中間層が(b)コロイダルシリカを含まない光触媒用プライマー組成物から形成されているものである。コロイダルシリカを含まないため、中間層と光触媒層との収縮率の違いなどによる光触媒層のひび割れを若干起こすものとなった。また、中間層にコロイダルシリカを含まないため、中間層がやわらかく、光触媒層が容易に傷つくものとなった。
比較例4の光触媒シートは、中間層が(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルの代わりに、エポキシ変性シリコーンオイルを含む光触媒用プライマー組成物から形成されているものである。光触媒層が積層されているときには、濡れ性が良好であるが、接触角の低い中間層ではないため、光触媒層に傷が生じた場合に、光触媒層の濡れ性が低下し、防汚性が低下してしまうものとなった。

Claims (2)

  1. 合成樹脂フィルム上に、中間層、光触媒層をこの順に有する光触媒シートにおいて、前記中間層が、(a)4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体、(b)コロイダルシリカ、および(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルを含む光触媒用プライマー組成物から形成されてなり、前記組成物中の各成分の重量割合が、(a)4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体が40〜80重量%、(b)コロイダルシリカが5〜40重量%、(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルが5〜20重量%であることを特徴とする光触媒シート。
  2. (a)4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体、(b)コロイダルシリカ、および(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルを含み、前記組成物中の各成分の重量割合が、(a)4官能加水分解性シラン及び/又はその誘導体が40〜80重量%、(b)コロイダルシリカが5〜40重量%、(c)ポリエーテル変性シリコーンオイルが5〜20重量%であることを特徴とする光触媒用プライマー組成物。
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