JP4439688B2 - 光触媒担持フィルム及びその貼り付け方法 - Google Patents

光触媒担持フィルム及びその貼り付け方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、透明又は半透明の高分子フィルム上に順に積層された接着層及び光触媒を含有する光触媒層から成る光触媒担持フィルム及びそのその貼り付け方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化チタン等の光触媒が、紫外線エネルギーによって、水の分解、脱臭、殺菌、水の浄化、排水処理等の各種の化学反応を進行させることはよく知られている(特開平2−68190等)。この紫外線エネルギーを有効に利用するために、担体の形状は光の照射面積を広く取ることが可能なシート状にすることが有利であり、光触媒を担持する担体として、透明又は半透明の高分子フィルムがよく用いられている。
【0003】
また、金属酸化物等の光触媒は一般に担体への付着力が弱いため、ニトロセルロースの反乾燥膜に酸化チタン粉末を付着させる方法(特開昭62−66861)や酸化チタン粉末を担体上に一旦固定化した後に金属酸化物のゾルを塗布乾燥して光触媒粉末を担持固定化する方法(特開平5−309267)、酸化チタンの光触媒粉末と金属酸化物のゾルとの混合液を担体に含浸、塗布等の方法により担持させてゲル化して光触媒体を得る方法(特開平5−309267)、更に光触媒と担体との接着性を高めるために担体上に接着層を設けた上に酸化チタンゾル及び金属酸化物ゾル若しくは金属水酸化物ゾルを塗布し乾燥させて光触媒担持構造体を得る方法(WO97/00134)等が開示されている。従って、光触媒を固定するために硬度や伸縮性の異なる接着層や光触媒層などをフィルム上に何層も積層することがよく行われている。
【0004】
このようなフィルムの応用例として、高層ビルや一般住宅の出窓などの窓ガラスの屋外面の清掃は非常に厄介であるのでその作業の軽減を図るため及び同時に窓ガラスの飛散防止を図るために、このような光触媒機能を持つPETフィルム等の透明高分子フィルムを窓ガラスに貼り付けることが行われている。
しかし、このようなフィルムを実際にガラスに貼り付けるときに風等によって折り曲げ癖がつく場合がある。この折り曲げ癖は貼り付けた当初は目立たないのであるが、暫く太陽光及び外気に曝しておくと、折り曲げ部位付近のフィルム上の積層部分が微細なひび割れとなって外光を乱反射し白い軌跡となって外観を損なう場合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、透明又は半透明の高分子フィルム上に順に積層された接着層及び光触媒層からなる光触媒担持フィルムにおいて、このフィルムを折り曲げた後に暫く太陽光及び外気に曝しておいても、その折り曲げ部位が微細なひび割れとなり外光を乱反射し白い軌跡となることを防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような問題の原因については、フィルムが折り曲げ等の変形をすることにより、フィルム上に積層されたいずれか及び/又はそのいくつかの層、特に硬い層に微細なひび割れが生じ、それをきっかけとして太陽光の紫外線や外気に曝されることにより、そのひび割れが徐々に拡大し目に見えるようになるものと考えれられる。従って、本発明においては、フィルム上に積層された多重層に最初のひび割れを生じさせないように、フィルムと光触媒層の中間に接着層を設け、その接着層の柔軟性を増すことによって積層された層がフィルムに追従するような機構により、この問題を解決できることを見出した。
【0007】
即ち、本発明の主題は、透明又は半透明の高分子フィルムの片面に順に積層された接着層及び光触媒層から成る光触媒担持フィルムであって、前記接着層が少なくとも2種のTgの異なるアクリルシリコン樹脂及びポリシロキサンの混合物又はその硬化物から成る光触媒担持フィルムである。この高分子フィルムと接着層との間には更に易接層を設けてもよい。
本発明の別の主題は、上記の光触媒担持フィルムの接着層及び光触媒層が積層されていない面を透明板に貼り付ける方法であって、該貼り付け時に前記接着層のゲル化分率が80%以下である光触媒担持フィルムの貼り付け方法である。
また本発明の更に別の主題は、上記の光触媒担持フィルムを、その接着層及び光触媒層が積層されていない面で、少なくとも一部に貼り付けた透明板である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の光触媒担持フィルムは、高分子フィルムの片面に順に積層された接着層及び光触媒層から成る。但し、本発明のフィルムはこれら二層以外に必要に応じて様々な機能を有する層を適宜加えてもよいし、またそれらの積層中の位置についても任意である。これらの層が追加されても本発明の光触媒担持フィルムはその本来の作用効果を奏するため、本発明の光触媒担持フィルムはこのような構成のフィルムをも含むものである。
本発明で用いる高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレン、フッ化エチレン−プロピレン共重合体、フッ化エチレン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのフィルム状に成形加工したときに550nmの波長の光の直線透過率が50%以上である透明性の高い合成樹脂フィルム又はシートを挙げることができる。又、透明な担体を用いる場合には、着色剤等で着色されたものであってもよい。
【0009】
本発明の接着層は、少なくとも2種のTgの異なるアクリルシリコン樹脂及びポリシロキサンの混合物又はその硬化物から成る。この混合物中のポリシロキサンの割合は3〜60重量%が好ましい。
アクリルシリコン樹脂は、一般にアクリル樹脂のアルキロール基(−ROH)、水酸基(−OH)又はカルボン酸基(−COOH)とシリコーン樹脂のシラノール基(-SiOH)又はアルコキシシリル基(-Si−OR)とが脱水反応又は脱アルコール縮合反応することによって得られ、アクリル主鎖にシロキサン結合(Si-O-Si)の架橋点を有する。このような樹脂に適宜架橋剤や硬化触媒などを加えてもよい。例えば、アクリル樹脂の炭素原子に結合した反応性シリル基を有するアクリル系共重合体、及びアルコキシ基やアリールオキシ基に更にアルキル基やアリール基を有するシリコン化合物又はその部分加水分解縮合生成物を硬化触媒の存在下で反応させて得ることもできる。このようなアクリルシリコン樹脂は加熱により硬化するが、また常温においても経時で徐々に硬化する。またシリコン樹脂はアクリル樹脂との相溶性が高いため単にこのような樹脂を混合したものでもよい。
【0010】
本発明に用いるアクリルシリコン樹脂は、シリコンの含有量が0.5〜60重量%、好ましくは2〜10重量%で、分子量(数平均)が3000〜25000程度、ガラス転移点(Tg)が0〜100℃程度である。Tgは示差走査熱量計で測定する。アクリルシリコン樹脂のTgはその分子量や架橋度により影響され、樹脂の架橋度が高い場合又は分子量が小さい場合にはTgは高い。
本発明においては、少なくとも2種のアクリルシリコン樹脂のTgが少なくとも10℃、好ましくは10〜30℃離れていることが必要になる。
また、少なくとも2種のアクリルシリコン樹脂の混合割合には特に制限はないが、いずれのアクリルシリコン樹脂もアクリルシリコン樹脂全体に対し少なくとも5重量%含まれていることが好ましい。
【0011】
一方、本発明のポリシロキサンは、下式
SiCln1(OH)n21n3 (OR2)n4
(式中、R1は(アミノ基、カルボキシル基、または塩素原子で置換されてもよい)炭素数1〜8のアルキル基、R2は、炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基で置換された炭素数1〜8のアルキル基を表し、n1 は0から2の整数を表し、n4は2から4の整数であり、かつn1+n2+n3+n4=4である。)で表されるオルガノシラン類を共加水分解し重合して得られる三次元網状構造を有するポリマーでありる。
ポリシロキサンが炭素数1〜5のアルコキシ基を有するシリコンアルコキシドの加水分解物あるいは該加水分解物からの生成物である場合に、接着性及び耐久性がより向上した担持構造体を得ることができる。シリコンアルコキシドのアルコキシ基の炭素数が6以上であると、高価であり、しかも、加水分解速度が非常に遅いので、樹脂中で硬化させるのが困難になり、接着性や耐久性が悪くなる。
【0012】
部分的に塩素を含んだシリコンアルコキシドを加水分解したポリシロキサンを使用することもできるが、塩素を多量に含有したポリシロキサンを使用すると、不純物の塩素イオンにより、担体が腐食したり、接着性を悪くする。
ポリシロキサンのアクリルシリコン樹脂への導入方法としては、シリコンアルコキシドモノマーの状態で樹脂溶液へ混合し、接着層形成時に空気中の水分で加水分解させる方法、前もって、シリコンアルコキシドを部分加水分解した物を樹脂と混合し、更に、保護膜形成時に空気中の水分で加水分解する方法等種々あるが、樹脂と均一に混合できる方法ならどのような方法でもよい。また、シリコンアルコキシドの加水分解速度を変えるために、酸や塩基触媒を少量添加しても構わない。
【0013】
アクリルシリコン樹脂とポリシロキサンとを混合すると、アクリルシリコン樹脂中のアルキロール基、水酸基又はカルボン酸基とポリシロキサン中のシラノール基やアルコキシシリル基の加水分解基とが更に反応し架橋密度を上げる。本発明の接着層においては、少なくとも2種のTgの異なるアクリルシリコン樹脂及びポリシロキサンを混合するため、単一のTgを有する一種のアクリルシリコン樹脂及びポリシロキサンを混合した場合に比べて均一の反応が起こりにくくなり、硬化が遅くなり架橋密度が下がるものと考えられる。これは温度等の外的条件、アクリルシリコン樹脂中のアクリル樹脂やその反応基の割合、ポリシロキサン中の反応基の割合等に影響される。
【0014】
このような機構により本発明のアクリルシリコン樹脂及びポリシロキサンの混合物を含む接着層はその硬化前の状態をある期間有することになり、その期間中はある程度の柔軟性を有することになるものと考えられる。即ち、本発明のフィルムはこの期間中に折り曲げ等の変形が加わっても、接着層が柔軟性を有しているため、接着層自体に恒久的な変形が残らないばかりでなく、その他の層にも恒久的な損傷を与える可能性を少なくすることになるものと考えられる。
【0015】
この硬化が遅くなる程度は、この樹脂混合物のゲル化分率を測定することによりある程度知ることが出来る。
ゲル化分率は、ゴム状高分子の架橋密度や架橋構造を知るために有効な手段であり、その測定は以下のように行う、まず、0.1〜0.01%の老化防止剤を溶かした試験片容積の約100倍の溶媒(例えば、アセトン)に10〜20mm×5〜10mm×2mm程度の短冊形試験片を浸漬する。溶媒の温度は室温に保ち、1時間浸漬を行う。膨潤後の試料容積(V1)と測定後の乾燥容積(V2)より、下式
v=V2/V1
に従ってゴム状高分子のゲル化分率vを求める。
本発明においては、光触媒担持フィルムを透明板に貼り付ける時点で、接着層のゲル化分率が80%以下、好ましくは70%以下であると、フィルムに変形が加わった場合においても、フィルムの白化が起こりにくいことを見出した。これは、接着層が柔軟であるためフィルムを曲げた場合にフィルム上に積層された層がフィルムに追従して、積層された多重層にひび割れを生じさせないためと考えられる。
【0016】
また、接着層樹脂に光触媒作用による劣化を抑える目的で、光安定化剤及び/又は紫外線吸収剤等を混合することにより耐久性を向上させることができる。使用できる光安定化剤としては、ヒンダードアミン系が好ましいが、その他の物でも使用可能である。紫外線吸収剤としてはトリアゾール系などが使用できる。添加量は、樹脂に対して0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。なお、接着層の表面をシラン系若しくはチタン系カップリング剤で処理すると光触媒層との接着性が向上することがある。
更に、接着層樹脂には必要に応じて金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルを含ませることができる。この金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルの含有量は接着層全体に対して0.1〜25重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%である。この金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルについては後に詳説する。
【0017】
接着層を担体に担持する方法としては、樹脂溶液を印刷法、シート成形法、スプレー吹き付け法、ディップコーティング法、スピンコーティング法等でコートし、乾燥する方法が使用できる。乾燥する温度は、溶媒や樹脂の種類によっても異なるが、一般的に150℃以下が好ましい。接着層の厚さは、0.1μm以上であれば光触媒層を強固に接着し耐久性の高い光触媒担持構造体とすることが可能である。また、グラビア印刷法などの短時間で接着層を乾燥硬化させることが必要な塗布法の場合は、シリコン系などの硬化剤を接着層固形分に対し、必要な硬化速度に応じて0.1〜10重量%添加することも好ましく採用される。
【0018】
本発明の光触媒層は、光触媒を含めば特に制限はないが、酸化チタンの光触媒粉末と金属酸化物のゾルとの混合液を担体に含浸、塗布等の方法により担持させてゲル化して得られる光触媒層(特開平5−309267)や、光触媒と担体との接着性を高めるために担体上に接着層を設けた上に酸化チタンゾル及び金属酸化物ゾル若しくは金属水酸化物ゾルを塗布し乾燥させて得られる光触媒層(WO97/00134)等が好ましい。
【0019】
本発明に使用される光触媒は、粉末状、ゾル状、溶液状など、光触媒層の乾燥温度で乾燥した時に、接着層と固着して光触媒活性を示すものであればいずれも使用可能である。ゾル状の光触媒を使用する場合、粒子径が20nm以下、好ましくは10nm以下のものを使用すると、光触媒層の透明性が向上し、直線透過率が高くなるため、透明性を要求されるプラスチックフィルムに塗布する場合に特に好ましい。また下地の担体に色や模様が印刷されたものの場合にこうした透明な光触媒層を塗布すると下地の色や柄を損なうことがない。
【0020】
光触媒層中の光触媒としては、TiO2 、ZnO、SrTiO3 、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO3 、KNbO3 、Fe23 、Ta25 、WO3 、SnO2 、Bi23 、NiO、Cu2O、SiC、SiO2 、MoS2 、InPb、RuO2 、CeO2 などあるが、酸化チタンが好ましい。また、これらの光触媒に、Pt、Rh、RuO2 、Nb、Cu、Sn、Ni、Feなどの金属及びそれらの金属の酸化物を添加したものが使用することができる。また、これらの光触媒に光触媒還元作用を利用してPt、Rh、RuO2 、Nb、Cu、Sn、Ni、Feなどの金属を添加したものなども全て使用可能である。光触媒層中の光触媒の含有量は、多量なほど触媒活性が高くなるが、接着性の点から好ましくは75重量%以下である。
【0021】
本発明においては、光触媒層が金属酸化物ゲルもしくは水酸化物ゲルを含んでもよく、これらは光触媒粉末を固着し、接着層と強固に接着させる効果を有しており、この光触媒担持構造体は接着性、長期耐久性や耐候性に優れたものとなる。この金属酸化物ゲルもしくは水酸化物ゲルは多孔質であることから吸着性を持っており、光触媒活性を高める効果もある。この金属酸化物ゲルもしくは金属水酸化物ゲルの光触媒層中での含有量は、25〜95重量%が好ましい。25重量%未満では、接着層との接着が不十分となり、95重量%を超えると、光触媒活性が不十分となる。
また、金属酸化物ゲルもしくは金属水酸化物ゲルの比表面積が好ましくは150℃で乾燥後50m2 /g以上、更に好ましくは100m2 /g以上あると、接着性はより強固になり、触媒活性も向上する。
【0022】
金属成分としては、珪素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タンタラム、タングステン、錫等の金属の酸化物ゲルもしくは水酸化物ゲルを好ましく例示することができる。
また、金属成分として、珪素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、ニオビウムの中から選ばれた2種以上の金属を含有する酸化物もしくは水酸化物ゲルを使用することにより、沸騰水に浸漬した後の光触媒層の付着性を高めることが可能である。耐沸騰水性に優れた金属成分の組み合わせの例としては、珪素−アルミニウム、珪素−チタニウム、珪素−ジルコニウム、珪素−ニオビウム、アルミニウム−チタニウム、アルミニウム−ジルコニウム、アルミニウム−ニオビウム、アルミニウム−タンタラム、チタニウム−ジルコニウム、チタニウム−ニオビウム、チタニウム−タンタラム、珪素−アルミニウム−ジルコニウム、珪素−アルミニウム−チタニウムなどが好ましく、更に好ましくは、珪素−アルミニウム、珪素−チタニウム、珪素−ジルコニウム、珪素−チタニウム−アルミニウム、珪素−アルミニウム−ジルコニウムなどの酸化物ゲルもしくは水酸化物ゲル等を挙げることができる。
【0023】
これらの酸化物ゲルもしくは水酸化物ゲルの比表面積が50m2 /g以上あると、接着性が高く、触媒活性も向上し、沸騰水中に浸漬した後でも優れた接着性を有している。また、実際の使用に当たっては、ゲルを形成させるためのゾルを混合し乾燥して得られるゲルでも、共沈法などの方法で作られる複合酸化物ゲルを使用してもよい。光触媒との複合化には、ゲルとなる前のゾルの状態で均一混合するか、もしくは、ゾルを調製する前の原料の段階で混合するのが望ましい。
【0024】
光触媒層を形成するには、上記の接着層を形成するのと同様のコート法でコートすることができる。金属酸化物ゾルもしくは金属水酸化物ゾルの前駆体溶液の状態で光触媒を分散し、コート時に加水分解や中和分解してゾル化もしくはゲル化させてもよい。ゾルを使用する場合には、安定化のために、酸やアルカリの解膠剤等が添加されていてもよい。また、ゾル懸濁液中に光触媒に対し、5重量%以下の界面活性剤やシランカップリング剤などを添加して、接着性や操作性を良くすることもできる。光触媒層形成時の乾燥温度としては、担体材質及び接着層中の樹脂材質によっても異なるが、50℃以上200℃以下が好ましい。
【0025】
光触媒層の厚さは、厚い方が活性が高いが、5μm以上になるとほとんど変わらなくなる。5μm以下でも、高い触媒活性を示し、しかも、透光性を示すようになり、光触媒層が目立たなくなり好ましい。しかし、厚さが、0.1μm未満になると透光性はよくなるものの、光触媒が利用している紫外線をも透過してしまうために、高い活性は望めなくなる。光触媒層の厚さを0.1μm以上5μm以下にし、しかも、結晶粒子径が40nm以下の光触媒粒子および比表面積100m2 /g以上の金属酸化物ゲルもしくは金属水酸化物ゲルを用いると、光触媒層と接着層の合計の波長550nmの全光線透過率は70%以上になる。
【0026】
また、既に説明したように、本発明の高分子フィルム上に接易層を設けてもよい。この接易層は接着力補強のため高分子フィルムと接着層との間に位置する。この接易層を構成する樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セルロイド、セロファン、アセチルセルロース等の天然高分子系プラスチック、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グアナミン樹脂、ケトン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン(超低密度、低密度、中密度、高密度)、アイオノマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−α−オレフィン共重合体等の熱可塑性樹脂、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリパラピルフェノール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩素化ポリエチレン−アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ノルボネン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリルアミン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエチルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミノビスマレイミド、超高分子ポリエチレン、アイソタクチックポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアクコキシビニルエーテ共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、クロロトエリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフロライド、ポリビニルフロライド等の熱可塑性プラスチック等が挙げられる。
【0027】
この中で、透明性及び層間密着性に優れるアクリル系樹脂が好ましい。かかるアクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ〉アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独重合体又は他の重合性モノマーとの共重合体を挙げることができる。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0028】
また、本発明の高分子フィルムの接着層及び光触媒層が積層されていない面に、透明板との接着を確実にするため、粘着層を設けてもよい。この粘着層はフィルム層表面に粘着加工を施すことにより形成することができる。ここで粘着加工とは、フィルムを何らかの基材上に固定しやすくするために、粘着剤をフィルム上に設ける工程をいう。
粘着剤としては、アクリル系、シリコン系、ゴム系、紫外線硬化型又はホットメルト型等を具体的に例示することができるが、特にアクリル系粘着剤を用いるのが好ましい。アクリル系粘着剤としては、例えば、溶剤型、エマルジョン型等を例示することができ、いずれも便用可能である。更に粘着剤としては、架橋タイプと非架橋タイプがあり、両者とも使用可能であるが、特に、アクリル系粘着剤においては、適当な性能を得るため架橋剤を添加する2液以上の架橋タイプを用いるのが好ましい。
粘着加工の方法としては、具体的には、ロールリバースコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、マイヤーバーコーター、ファウンテンダイコーター、エアーナイフコーター等のコーティング装置でコーティングする方法を例示することができる。
【0029】
本発明の高分子フィルムに粘着層を設けた場合には、粘着層上に剥離層を設けることが好ましい。剥離材としては、例えば、剥離紙、剥離フィルム等を例示することができる。剥離紙として、具体的には上質紙、クラフト紙、グラシン紙等にアンカーコートしたもの、又は、前記の紙等にポリエチレンをラミネートし、その上にシリコーン樹脂等の剥離剤をコーティングしたもの等を具体的に例示することができる。剥離フィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチックフィルム、又は前記プラスチックフィルム上にシリコーン樹脂等の剥離剤をコーティングしたものを例示することができる。
【0030】
また、本発明のフィルムの被貼着体である透明板は、例えばガラス板やアクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂製の高分子透明板であり、これらは完全に透明でなくてもよく、光をある程度透過させれば、半透明でもまた図柄文字等が印刷されているものでもよい。
透明板に本発明の光触媒担持フィルムを貼り付ける方法については特に制限はなく、通常のフィルムを板に貼る公知のいかなる方法でも行うことが出来る。但し、光触媒担持フィルムを透明板に貼り付ける時点で、接着層のゲル化分率が80%以下であるとよく、この場合にはフィルムに変形が加わった場合においても、フィルムの折り曲げ白化が起こりにくい。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例にて例証するが、本発明を制限することを意図したものではない。
実施例1〜5
アクリル樹脂主剤溶液(アクリディックA−817、大日本インキ化学社製)100gに紫外線吸収剤5g(チヌビン884、日本チバガイギー社製)とポリイソシアネート硬化剤溶液(パーノックDN−950、大日本インキ化学社製)2.4gを混合した溶液を膜厚0.4μmで塗布した膜厚50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。
二酸化ケイ素換算でシリコン含有量が2重量%のアクリルシリコン樹脂(ガラス転移温度20℃)とテトラメトキシシランの部分加水分解生成物であり重合度が3〜6であるオリゴマー(メチルシリケート51、コルコート社製)を固形分重量比65:35(メチルシリケートは二酸化ケイ素に換算した重量)に混合し、エタノール−酢酸エチル混合溶媒で固形分濃度が15重量%になるように希釈した溶液(A)と、アクリルシリコン樹脂YC5920(鐘淵化学(株)製:ガラス転移点52℃)をエタノール−酢酸エチル混合溶媒で固形分濃度が15重量%になるように希釈した溶液(B)を、表1に示す重量比(A:B)で混合し、接着層形成用塗布液を調整した。
【0032】
また、光触媒ゾル(石原産業(株)製、商品番号:STS−01、固形分濃度30重量%、平均粒径7nm)、テトラメトキシシランの部分加水分解生成物であり重合度が3〜6であるオリゴマー及びコロイダルシリカ(粒子径20nm)を固形分重量比2:1:4に混合し、エタノール及び水を用いて固形分3重量%になるように希釈して光触媒層形成用塗布液を調整した。
上記PETフィルム表面に、表1に示す組成を有する接着層形成用塗布液を、バーコーターにより成膜し、80℃で1時間乾燥し(膜厚3μm)、接着層を形成した。その後、接着層上に先に調整した光触媒形成用塗布液を同様の方法で成膜し、100℃で1時間乾燥(膜厚0.3μm)を行い、実施例1〜5の光触媒担持構造体を作成した。
比較例 1
接着層形成用塗布液として塗布溶液Aのみを用いる以外、実施例1〜5と同様にして光触媒構造体を形成した。
【0033】
【表1】
Figure 0004439688
【0034】
作成した試料を屋外暴露の前後で試験した。試験項目及び試験方法を下記に示す。屋外暴露は、試料(光触媒担持構造体)20x20cmを30度の傾斜を有する板上に張り付け日中日のあたる屋外7.5ヶ月間暴露して行った。
セロテープ剥離試験
各試料にセロテープを貼り付け複数回指の腹で擦り付けその後、テープを引き剥がした際、フィルム上の膜が剥離しているかを目視により観察した。
評価○: 剥離しない
評価△: テープの糊が膜表面に付着する
評価×: 剥離する
フェルト磨耗試験
フェルトで膜表面を10往復擦り、その後表面の状態を目視により確認した。
評価○: 剥離・傷なし
評価△: 僅かに傷あり
評価×: 剥離、傷あり
【0035】
全光線透過率及び直線透過率
接着層及び光触媒層を形成する前の担体をリファレンスとして、試料の550nmの全光線透過率、直線透過率、ヘイズ率をヘイズメーター(日本電色工業(株)製、NDH−300A型)で測定した。
耐溶剤性試験
試料をエタノールに5時間浸漬した後、膜の外観を目視により観察した。
評価○: 外観変化なし
評価×: 外観変化あり
【0036】
折り曲げ白化試験
屋外暴露前に各フィルムを人差し指大に巻き、抑えたり曲げたりして癖を付けた。屋外暴露前の試験においては、この試料を80℃のオーブンで3時間加熱硬化させた後、外観を目視で観察した。屋外暴露後の試験においては、屋外暴露後の試料の外観を目視で観察した。
評価○: 外観変化なし
評価×: 外観変化あり
親水性
各試料の表面層をエタノールで洗浄後、60℃で80分乾燥し、親水性測定の試料とした。試料に20Wの紫外線光源(三共電気製、ブラックライトブルー(BLB)蛍光灯)を用いて、2mW/cm2の紫外線強度で紫外線を2時間照射し、その試料上に、マイクロシリンジから試料表面に水滴を滴下した後、80秒後に、接触角測定器(エルマ(株)製、360S型)を用いて試料表面の接触角を測定した。
【0037】
ひび割れ
目視により表面の状態を観察した。
評価○: ひび割れなし
評価×: ひび割れあり
干渉色
評価○: 干渉色なし
評価×: 干渉色あり
流滴性
試料を45度の傾斜した透明板に張り付け、水をかけた後、表面に水滴が残るかどうかを目視で観察した。
評価○: 水滴が残らない
評価×: 水滴が残る
【0038】
試験結果を表2に示す。
【表2】
Figure 0004439688
【0039】
【発明の効果】
このように本発明の光触媒担持フィルムは、このフィルムを折り曲げた後に太陽光及び外気に曝しておいても、白化現象が生ずることなく、高品質を保っていることが分かる。

Claims (5)

  1. 透明又は半透明の高分子フィルムの片面に順に積層された接着層及び光触媒層から成り、該接着層及び光触媒層が積層されていない面で貼り付ける光触媒担持フィルムであって、前記接着層が、少なくとも2種の、各々のTgが0〜100℃であって、各々のTgが少なくとも10℃離れたアクリルシリコン樹脂及びポリシロキサンの混合物又はその硬化物から成り、いずれのアクリルシリコン樹脂もアクリルシリコン樹脂全体に対し少なくとも5重量%含まれ、前記貼り付け時に前記接着層のゲル化分率が80%以下である、光触媒担持フィルム。
  2. 前記高分子フィルムと前記接着層との間に更に易接層を設けてなる請求項1に記載の光触媒担持フィルム。
  3. 前記光触媒層が金属酸化物ゲル又は金属水酸化物ゲルを25〜95重量%含む光触媒粒子複合体である請求項1又は2に記載の光触媒担持フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒担持フィルムの接着層及び光触媒層が積層されていない面を透明板に貼り付ける方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光触媒担持フィルムを、その接着層及び光触媒層が積層されていない面で、少なくとも一部に貼り付けた透明板。
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