JP2003082284A - 光触媒性被膜、光触媒性積層体、光触媒性被膜の製造方法 - Google Patents

光触媒性被膜、光触媒性積層体、光触媒性被膜の製造方法

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JP2003082284A
JP2003082284A JP2001276542A JP2001276542A JP2003082284A JP 2003082284 A JP2003082284 A JP 2003082284A JP 2001276542 A JP2001276542 A JP 2001276542A JP 2001276542 A JP2001276542 A JP 2001276542A JP 2003082284 A JP2003082284 A JP 2003082284A
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JP
Japan
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photocatalytic
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silicon alkoxide
photocatalytic coating
less
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JP2001276542A
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English (en)
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Junji Hamana
純二 浜名
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Canon Electronics Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】低温で形成でき、十分な可とう性を有し、良好
な馴染み性を有し、可視光透過性を有する代表的な材料
と大差ない屈折率を有する光触媒性被膜を作製する。 【解決手段】熱的にプレ重合したシリコンアルコキシド
重合体を含んでなる原料に、UV−C領域の紫外線照射
し硬化して、屈折率1.75以下の光触媒性被膜を作製
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒性半導体を
含有する光触媒性被膜および光触媒性積層体に関する。
より詳しくは、有機系および無機系の基材を問わず、従
来、光触媒性被膜形成が不可能であった基材表面におい
ても、基材の物理的および化学的特性を損なうことな
く、光触媒性半導体を含有する光触媒性被膜を形成する
技術、光触媒性被膜表面の親水化された状態を永続させ
る技術に関する
【0002】
【従来の技術】表面の親水性は水との接触角によって定
量化することができ、20°以下の場合を親水性、10
°以下の場合を超親水性と呼ぶのが一般的である。そし
て、表面が超親水性の場合、微小な水滴の発生が抑制さ
れ、光の散乱が低減されるため、超親水性の表面は防曇
性に優れる。
【0003】高い耐熱性を有する基材の表面を親水化す
る技術としては、表面を、チタニア等の光触媒性半導体
を含有するシリカにより被覆することが例示される。森
崎および服部著の「界面と微生物」(1986年6月1
5日版、誠製本株式会社)の第51頁には、シリカの水
に対する接触角は0°で、超親水性であることが記載さ
れている。また、チタニア等の光触媒性半導体は紫外線
により励起され、励起された光触媒性半導体の触媒作用
により、表面に付着した撥水性有機物が分解されるた
め、親水性が持続する。更に、失活した光触媒性半導体
は紫外線により再励起できるので、紫外線を照射するこ
とにより、親水性を回復することができる。加えて、シ
リカやチタニアは高い表面硬度を有しており、低毒性
で、物理的および化学的に安定であり、安価で工業的に
入手が容易である。
【0004】シリカは、結晶性シリカと無定形シリカと
に分類される。そして、この様なシリカの基材上への一
般的な形成法としては、シリコンアルコキシド系化合物
を含む原料を基板上に塗布し、焼成することによって無
定形シリカとする方法が例示される。更に、無定形シリ
カを1050℃以上で焼成すれば、結晶性シリカが得ら
れる。
【0005】従って、シリコンアルコキシド系化合物お
よび光触媒性半導体化合物を含む原料を加熱焼成すれ
ば、光触媒性半導体を含有する被膜を形成することがで
きる。
【0006】しかしながら、以上の様な方法により、樹
脂やアルミ等の耐熱性に乏しい基材の表面を親水化する
ことは困難な場合があった。
【0007】なお、樹脂やアルミ等の表面を親水化する
技術としては、表面に紫外線を照射して、表面上に付着
している撥水性の有機物を分解する方法が一般に知られ
ている。しかしながら、この様な方法では、紫外線照射
直後において効果が認められるものの、撥水性の有機物
の付着により、短時間で表面の親水性が失われてしまう
場合があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】特許第2756474
号公報には、TiO2、ZnO、SnO2、SrTi
3、WO3、Bi23、Fe23からなる群から選ばれ
た光触媒性半導体とシリカとを含む光触媒性被膜に関し
て、光触媒性半導体を含む無定形シリカの前駆体を必要
に応じ加水分解させながら脱水縮重合に付すことによ
り、無定形シリカによって結着された光触媒性被膜を製
造することが記載されている。そして、この様にして得
られた光触媒性被膜は、光触媒性半導体の光励起に起因
する、親水性と自己浄化作用を有することが記載されて
いる。
【0009】しかしながら、当該公報における光触媒性
被膜の製法の具体例として、無定形シリカの前駆体と結
晶性チタニアゾルとの混合物を基材の表面に塗布し、必
要に応じて加水分解させてシラノールを形成した後、約
100℃以上の温度で加熱してシラノールを脱水縮重合
に付すことにより、チタニアが無定形シリカで結着され
た光触媒性コーティングを形成すると記載されている。
特に、シラノールの脱水縮重合を約200℃以上の温度
で行えば、シラノールの重合度を増し、光触媒性コーテ
ィングの耐アルカリ性能を向上させることができると記
載されている。
【0010】従って、当該公報に記載の方法では、樹脂
やアルミ等の耐熱性に乏しい基材の表面を親水化するこ
とは困難だと考えられる。
【0011】これに対し、特開平8−108066号公
報では、シリコンアルコキシド系化合物であるテトラエ
トキシシラン溶液に210nmの光を照射してプレ重合
を行い、基板に塗布後、184nmの光で硬化させるこ
とにより、殆どCH結合の無い実質的に金属酸化物から
なる非晶質無機ポリマー薄膜を、低温で熱処理すること
なく形成できることが記載されている。更に、同公報に
は、焼成によりCH結合の殆ど無い膜を形成しようとす
ると、400℃以上の加熱処理が必要であると記載され
ている。また、特開平10−314597号公報には、
電磁波の照射により、有機金属化合物の加水分解反応を
促進し、金属酸化物のプレポリマーを形成することが記
載されている。
【0012】しかしながら、これらの従来法により光触
媒性被膜を形成した場合、以下の様な不具合が生じるこ
とがあった。
【0013】第1に、得られる光触媒性被膜は高い硬度
を有するものの、緻密となり過ぎ、柔軟性が不足するた
め、樹脂などの可とう性を有している基材に光触媒性被
膜を形成した場合、基材の変形に光触媒性被膜が追随で
きず、曲げなどにより、膜に割れ及びクラックなどが発
生したり、膜が剥がれたりする場合があった。
【0014】特に、シリコンアルコキシドをUV−C領
域の紫外線によりプレ重合し、光触媒の代表的物質であ
るアナターゼ型酸化チタンを添加した光触媒性被膜の原
料を基材に塗布し、UV−C領域の紫外線照射により硬
化することで基材上に光触媒性被膜を形成する場合、光
触媒性被膜の可とう性が不足する傾向にあった。なぜな
ら、光触媒効果を十分に発揮させるためには、光触媒性
被膜中に占めるTiO 2の割合(シリコンアルコキシド
はSiO2換算質量)を少なくとも20質量%以上、好
ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以
上とすることことが一般的に必要であり、脆い材料であ
るTiO2の占める割合が増すに従い、得られる光触媒
性塗膜が更に脆い材料となり、基材が可とう性に富む場
合、安定した光触媒性塗膜の形成が困難となる傾向にあ
った。
【0015】第2に、得られる光触媒性被膜の屈折率
が、基材の屈折率と比較して高くなり過ぎるため、光触
媒性積層体の全体として、透明性が不足する場合があっ
た。
【0016】一般的な可視光透過性を有する物質の屈折
率(可視光域の中央値である550nmにおける値)
は、ポリエステル樹脂で1.55〜1.57、シリコー
ン樹脂で1.42、エポキシ樹脂で1.55〜1.6
1、塩化ビニル樹脂で1.52〜1.55、スチロール
樹脂で1.57〜1.59、メタクリル樹脂で1.48
〜1.50、ポリエチレン樹脂で1.51〜1.54、
ポリプロピレン樹脂で1.49、ポリアミド樹脂で1.
53、ポリアセタール樹脂で1.48、ポリカーボネー
ト樹脂で1.58、アセチルセルロース樹脂で1.46
〜1.50、ウレタンアイオノマー樹脂で1.51、ポ
リエステルアルキッド樹脂で1.53〜1.57、アリ
ル樹脂で1.50、セルロース樹脂で1.46〜1.5
0、ウレタン樹脂で1.50〜1.60、ポリスルフォ
ン樹脂で1.63、ポリブチレン樹脂で1.50、ポリ
メチルペンテン樹脂で1.47、汎用ガラスで1.51
と、大略1.5〜1.6の範囲にある。
【0017】これら基材表面に、例えば光の照射により
プレ重合を行いアナターゼ型酸化チタンを所定量加えて
光触媒性被膜原料を調製しておき、基材に塗布後、光硬
化して、光触媒性被膜を形成した場合、得られる光触媒
性被膜の屈折率が1.75より大きくなり、上記のよう
な可視光透過性を有する代表的な材料の屈折率と大きく
異なることがあった。
【0018】即ち、例えば、特開平8−108066号
公報に記載される方法に従い、シリコンアルコキシドを
210nm(UV−C領域の紫外線)によりプレ重合
し、アナターゼ型酸化チタンを所定量加え、光触媒性被
膜原料を調製しておき、基材に塗布後、185nmの光
により硬化すると、シリコンアルコキシドは緻密な非晶
質シリカとなり、屈折率は1.46と殆どシリカに近い
値を示すばかりでなく、添加するアナターゼ型酸化チタ
ンも2.3と非常に大きな屈折率を有しており(ルチル
型は2.7)、酸化チタンとシリカとの複合膜としての
屈折率も、可視光透過性を有する代表的な材料の屈折率
から大きくずれてくる。
【0019】当然のことながら、基材とその上に形成さ
れた膜の屈折率が等しければ、光触媒性被膜に吸収が無
い場合、基材と光触媒性被膜とからなる光触媒性積層体
の透過率と、基材の透過率とは等しいものとなる。即
ち、光触媒性被膜の形成による透過率の低下は最小限度
に抑えられ、十分な透明性を確保することができる。
【0020】更に、基材と光触媒性被膜との屈折率差が
大きくなると、np×d=λ/4(ここで、npは光触媒
性被膜の屈折率、dはその機械膜厚、λは光の波長)の
関係式が成り立つ波長のところで、透過率が最大とな
る。このため、光触媒性被膜は、ある限られた色調のみ
透過する、いわゆる、選択透過性を有する膜となり、可
視光全般にわたり等しく光が透過されることが求められ
る光学部品には使用が制限される場合あった。
【0021】第3に、金属系基材、セラミック系基材、
樹脂系基材などからなる物品の表面に、従来の光触媒性
被膜を形成した場合、使用者が物品を手に取ったり指先
で触れた際に、馴染みが悪く、製品の操作性が不十分な
場合があった。
【0022】以上の様な状況に鑑み、低温で形成でき、
十分な可とう性を有し、可視光透過性を有する代表的な
材料と大差ない屈折率を有し、皮膚との馴染みが向上す
る光触媒性被膜を提供することを、本発明の目的とす
る。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明によれば、光触媒性半導体およびシリカを含ん
でなり屈折率が1.75以下であることを特徴とする光
触媒性被膜が提供される。
【0024】上記のような光触媒性被膜は、少なくと
も、シリコンアルコキシド系化合物、水および光触媒性
半導体化合物を混合し、該シリコンアルコキシド系化合
物1モル部に対して該水が2モル部以上10モル部以下
である原料を調製する工程と、該原料を20℃以上80
℃以下の温度で加熱し、該シリコンアルコキシド系化合
物をシリコンアルコキシド重合体とする工程と、該加熱
処理された原料を基材上に塗布する工程と、該塗布され
た原料を乾燥させる工程と、該乾燥された原料に、最大
放射波長が315nm以下である紫外線(UV)を照射
して硬化させる工程と、を含むことを特徴とする方法に
より、好適に製造することができる。
【0025】上記の製造方法においては、シリコンアル
コキシド重合体および光触媒性半導体化合物を含んでな
る原料は、最大放射波長が315nm以下である紫外線
(UV)の照射により硬化される。このため、光触媒性
被膜を基材上に低温で形成できる。
【0026】また、原料を加熱によりプレ重合処理し、
シリコンアルコキシド系化合物をシリコンアルコキシド
重合体とすることにより、十分な可とう性を有している
光触媒性被膜を得ることができる。このため、樹脂など
の可とう性を有している基材に光触媒性被膜を形成する
場合においても、基材の変形に光触媒性被膜は十分に追
随でき、曲げなどにより、膜に割れ及びクラックなどが
発生することを抑制でき、膜が剥がれたりすることも抑
制できる。特に、光触媒性被膜中に占めるTiO2の割
合(シリコンアルコキシドはSiO2換算質量)が30
質量%以上の場合においっても、十分な可とう性を確保
できる。
【0027】更に、得られる光触媒性被膜の屈折率と基
材の屈折率との差を十分小さくでき、光触媒性積層体の
全体として、十分な透明性を実現できる。具体的には、
基材と光触媒性被膜との屈折率差を好ましくは0.25
以下、より好ましくは0.20以下、更に好ましくは
0.15以下とできる。
【0028】加えて、基材と光触媒性被膜との屈折率差
が十分小さいため、光触媒性積層体は可視光全般にわた
り、ほぼ等しく光を透過する。この結果、光学部品など
を含め汎用的な用途に適用することができる。
【0029】更には、金属系基材、セラミック系基材、
樹脂系基材などからなる物品の表面に、本発明の光触媒
性被膜を形成することにより、使用者が物品を手に取っ
たり指先で触れたときに、表面が汗ばむことが抑制さ
れ、皮膚に馴染み易くなる。この理由は不明であるが、
物品の表面が親水性であるため、汗などの水分が物品の
表面と指や拳との間に篭り難いという理由だけではなさ
そうである。何れにしても、物品の表面が汗ばみ難く皮
膚に対して馴染み易ければ、物品を誤って落とすような
ことが抑制され、操作性が向上する。
【0030】
【発明の実施の形態】以下に本発明を更に詳細に説明す
る。
【0031】本発明によれば、シリコンアルコキシド系
化合物と、アナターゼ型結晶性チタニア微粒子およびチ
タニアゾル等の光触媒性半導体化合物とを含んでなる光
触媒性被膜原料を、熱によるプレ重合によりシリコンア
ルコキシド系化合物をシリコンアルコキシド重合体にま
で成長させておき、基材に塗布後UV−C領域の紫外線
照射により硬化して、光触媒性被膜を形成する。
【0032】この様にして光触媒性被膜を形成した場
合、理由は明らかではないが、光触媒機能を十分発揮で
きるアナターゼ型チタニアを十分含有させた場合も、光
触媒性被膜の可視光領域の屈折率を1.75以下と小さ
くでき、また緻密性を低減でき、十分な可とう性を実現
でき、基材の変形に対し追従できる光触媒性被膜とな
る。更に、可視光透過性のある基材への成膜において
も、その透過率をほとんど変化させることなく光触媒性
積層体を形成できる。
【0033】光触媒性被膜の原料に含まれるシリコンア
ルコキシド系化合物は、UV照射により、ケイ素に1以
上4以下の水酸基が置換したシラノール類へと誘導さ
れ、このシラノール類がUV照射によって脱水反応を起
こし、光触媒性被膜が形成される。従って、加熱焼成す
ることなく光触媒性被膜が形成されるため、基材の表面
温度はUV照射により僅かに上昇するものの、好ましく
は90℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好まし
くは50℃以下と、低温に保つことができる。
【0034】このため、基材の形状(熱による変形)、
機械的特性、光学的特性、磁気的特性および電気的特性
等の物理的特性が劣化することが抑制される。また、基
材の化学的特性が劣化する、基材中に含まれる不純物が
光触媒性被膜形成時に拡散する等の化学的な不都合の発
生も抑制される。
【0035】従って、耐熱性の程度によらず、有機系お
よび無機系の汎用的な基材上に、本発明の光触媒性被膜
を形成することができる。
【0036】なお、UV硬化の技術で一般に使用されて
きたUVは、高圧水銀ランプによるUV−Aと呼ばれる
もので、その最大放射波長は365nmと長波長である
ため、低エネルギーであった。このため、硬化反応を十
分進行させるにはエネルギーが不足する場合があり、そ
の結果、UV硬化層の硬化不良、親水性不足、表面硬度
不足が発生する場合があった。
【0037】これに対し、本発明で使用されるUVは、
最大放射の波長が315nm以下、好ましくは280n
m以下である。即ち、UVは一般にスペクトルを有し、
波長の異なる複数の成分を含んでいるが、主成分の波長
が315nm以下、好ましくは280nm以下である。
【0038】従って、本発明で使用されるUVの最大放
射波長は短波長であり、高エネルギーであるため、光触
媒性被膜の硬化不良が抑制され、高い親水性、高い表面
硬度が実現される。
【0039】また、本発明で使用されるUVとしては、
高エネルギーであり、工業的使用が容易である等の理由
から、UV−Cが好ましい。
【0040】そして、UV−Cは、低圧水銀ランプやエ
キシマランプにより、工業的に好ましい形態で発生させ
ることができる。
【0041】本発明の光触媒性被膜の水との接触角は、
UV照射による硬化直後で、好ましくは20°以下、よ
り好ましくは10°以下、更に好ましくは5°以下、最
も好ましくは1°以下とすることができる。即ち、20
°以下の場合、本発明の光触媒性被膜は親水性である、
10°以下の場合、本発明の光触媒性被膜は超親水性で
あると言うことができる。
【0042】以上の様に、本発明の光触媒性被膜が優れ
た親水性を有している理由については、光触媒性被膜の
特性を解析することにより、以下の通り推察している。
【0043】まず、X線回折法により本発明の光触媒性
被膜の結晶状態を解析した結果、従来得られている無定
形シリカと同様、非晶状態であることが示唆された。し
かしながら、FT−IRを測定したところ、焼成により
得られる従来の硬化層と比較して、本発明の光触媒性被
膜中では、より多量のシラノール類が生じていることが
示唆された。このことより、本発明の光触媒性被膜中に
は、多量の水酸基が存在していると考えられる。
【0044】また、本発明による光触媒性被膜が十分な
柔軟性を有し屈折率が低い理由としては、シロキサン結
合に多くのCHやOH基の結合、水や空気(屈折率1.
0)などが含まれているため、緻密さが低下しているた
めだと考えられる。
【0045】特に図1に示した様に、プレ重合を光照射
により行った場合(2及び●で示した実験結果)、チタ
ニアの含有量が増加するに従い屈折率も直線的に増加し
ているのに対し、プレ重合を加熱により行った場合(1
及び○で示した実験結果)、チタニアの含有量を増加し
ても屈折率の増加は小さい。この理由は明らかではない
が、この様な特異的な挙動の結果、十分量のチタニアを
添加しても屈折率1.75以下を実現できる。同時に、
屈曲性を低下させない観点から、好ましい屈折率は1.
75以下、より好ましいのは1.70以下、更に好まし
いのは1.65以下である。
【0046】更に、本願発明の光触媒性被膜は、光触媒
性半導体を含有しており、この光触媒性半導体は、光触
媒性被膜形成時の紫外線照射により励起される。このた
め、本発明においては、光触媒性被膜の形成と同時に、
光触媒性半導体が励起される。そして、励起された光触
媒性半導体は、表面に付着した撥水性有機物を、高効率
で分解する。
【0047】以上の理由により、本発明の光触媒性被膜
は、優れた親水性を示すものと考えられる。
【0048】また、光触媒性半導体の有機物分解作用に
より、本発明の光触媒性被膜は、親水性以外にも、防汚
性、浄化性、脱臭性、抗菌性、殺菌性を示すものと考え
られる。
【0049】更に、本発明の光触媒性被膜は多量のシラ
ノール類を含有しているため、脱水反応による水も多量
に含有していると考えられる。そして、光触媒性被膜形
成の際、基材は低温に保たれるため、光触媒性被膜から
水が放出されることが抑制される。このため、光触媒性
被膜形成後の長期間で、表面から水が失われた場合にお
いても、表面から失われた水は、膜内部に存在する水に
より補給されるものと考えられる。
【0050】加えて、本願発明の光触媒性被膜は、光触
媒性半導体を含有している。光触媒性半導体はUVによ
り励起され、励起された光触媒性半導体の触媒作用によ
り、表面に付着した撥水性有機物が分解されるため、親
水性が持続すると考えられる。
【0051】以上の理由により、光触媒性被膜の優れた
親水性は、長く維持されるものと考えられる。
【0052】一方、光触媒性被膜形成後に親水性が失わ
れた場合も、光を照射することにより、シラノール類の
生成および脱水反応を進行させることができる。更に、
失活した光触媒性半導体は微弱光により再励起されるの
で、微弱光を照射することにより、光触媒性被膜の親水
性を回復することができる。即ち、水との接触角を、再
び、好ましくは20°以下、より好ましくは10°以
下、更に好ましくは5°以下、最も好ましくは1°以下
として、親水性を回復することができる。
【0053】本発明の光触媒性被膜は光触媒性半導体を
含有しているため、親水性の回復は、微弱な光の照射で
行うことができる。なお、親水性の回復の際に使用する
光としては、365nmの照度が、0.01μW/cm
2以上が好ましく、0.1μW/cm2以上がより好まし
い。
【0054】本発明においては、最大放射波長が315
nm以下の高エネルギーのUV照射により硬化反応を進
行させる。このため、得られる光触媒性被膜は、高い表
面硬度を有する。具体的には、JIS K 5400に
準じた鉛筆引掻試験において、光触媒性被膜の破損の目
視判定で決定される表面硬度を、好ましくは2B以上、
より好ましくはB以上、更に好ましくはHB以上とする
ことができる。
【0055】なお、低荷重でも変形の大きい樹脂等の基
材に光触媒性被膜が形成されている場合は、鉛筆引掻試
験の荷重を適時調整することにより、表面硬度を測定す
る。
【0056】本発明で使用されるシリコンアルコキシド
系化合物としては、テトラアルコキシシラン、テトライ
ソプロポキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テ
トラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等のシリコ
ンアルコキシド単量体を例示することができる。
【0057】また、良好な硬化性を実現する観点から
も、シリコンアルコキシド系化合物として、シリコンア
ルコキシド重合体が好ましい。シリコンアルコキシド重
合体は、上記の様なシリコンアルコキシド単量体よりシ
ラノール類を生成させ、同時に脱水縮重合を進行させる
ことにより得られるものであり、シリコンアルコキシド
重合体を含む原料は、最大放射波長が315nm以下の
UV照射により、短時間で硬化し、得られる光触媒性被
膜は可とう性を有すると同時に、十分高い表面硬度や皮
膚との良好な馴染みを有する。
【0058】シリコンアルコキシド重合体の重量平均分
子量は、得られる光触媒性被膜の特性および光触媒性被
膜作製時の作業性を大きく左右する。即ち、シリコンア
ルコキシド重合体の重量平均分子量が大きい程、光触媒
性被膜の高い親水性と表面硬度を実現でき、特に、光触
媒性被膜に光触媒性半導体が含有された場合、光触媒性
半導体がUV−C領域の紫外線を吸収してしまい、光触
媒性半導体粒子の陰にあるシリコンアルコキシドへのU
V−C照射量が低下するため、直接照射されたシリコン
アルコキシドの脱水縮合反応が先行するため、光触媒性
被膜表面は微細な凹凸となり極端の場合には光触媒性被
膜表面は白濁し可視光透過率が低下するが、分子量が大
きいほど平坦で可視光透過率の高い光触媒性被膜とな
る。
【0059】以上の様な観点から、シリコンアルコキシ
ド重合体の重量平均分子量は、1000以上が好まし
く、5000以上がより好ましく、10000以上が更
に好ましい。また、シリコンアルコキシド重合体の重量
平均分子量が小さいほど、基材に原料を良好に塗布で
き、原料の保存安定性も増すことから、1000000
以下が好ましく、900000以下がより好ましく、8
00000以下が更に好ましい。
【0060】本発明における光触媒性半導体としては、
TiO2、ZnO、SnO2、SrTiO3、WO3、Bi
23、Fe23等を例示することができる。中でも、高
活性であり、毒性が低く、化学的に安定で、安価である
等の理由により、チタニア(TiO2)が好ましい。
【0061】また、光触媒性半導体化合物とは、光触媒
性半導体、光触媒性半導体を主に含むもの、UV照射に
より光触媒性半導体を生成し得る化合物等を意味してお
り、チタニアゾル等の光触媒性半導体ゾル、結晶性チタ
ニア微粒子等の光触媒性半導体の粒子を例示することが
できる。
【0062】チタニアゾルとしては、加水分解によって
得られた含水酸化チタンの微粒子を、硝酸や塩酸で解膠
し、酸性溶液中に存在させたものが、分散性が良好で安
定である等の理由により好ましい。
【0063】結晶性チタニア微粒子としては、アナター
ゼ型およびルチル型のいづれをも使用することが、アナ
ターゼ型チタニアが、有機物の分解能が高いため好まし
い。
【0064】また、光触媒性積層体に可視光透過性が求
められる場合、本発明によるシリコンアルコキシド重合
体のUV硬化被膜の屈折率は例えば1.41、アナター
ゼ型チタニアの屈折率は例えば2.3、ルチル型チタニ
アの屈折率は例えば2.7であり、一般に使用される透
過性を有する基材の屈折率が大略1.5〜1.6の範囲
にあるため、光触媒性半導体であるチタニアを含有する
光触媒性被膜の屈折率を大略1.5〜1.6に近づける
ためには、ルチル型よりアナターゼ型チタニアの方が容
易である。
【0065】次に、本発明の光触媒性被膜の作製方法に
ついて説明する。
【0066】本発明における原料は、シリコンアルコキ
シド系化合物を適当な溶剤に溶解または均一分散して調
製される。
【0067】溶剤としては、シリコンアルコキシド系化
合物および光触媒性半導体化合物を、溶解または均一に
分散するものであれば特に限定されないが、乾燥工程に
おいて容易に気化するものが好ましい。具体的には、メ
チルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコー
ル等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエス
テル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロフォルム、ペン
タン、ヘキサン、シクロヘキサン等の有機溶剤等を例示
することができる。
【0068】また、溶剤としては、2−メトキシエタノ
ールが、スプレーコート法により均一な塗膜を形成でき
るため好ましい。
【0069】また、必要に応じて、原料には、シラノー
ル類生成反応触媒、シラノール類脱水反応触媒、光触媒
性半導体の生成反応触媒、UV硬化触媒、界面活性材、
安定剤、乾燥制御剤(フォルムアミド、ジメチルフォル
ムアミド)等が添加される場合もある。
【0070】原料のプレ重合条件は、得られる光触媒性
被膜の特性を大きく左右するため、注意深く決定する。
【0071】先ず、プレ重合は加熱により行う。加熱温
度は、十分な反応の進行を確保する観点から、20℃以
上が好ましく、反応が進行し過ぎるために得られる光触
媒性被膜が緻密となる過ぎることを抑制する観点から、
80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、6
0℃以下がより好ましい。
【0072】加熱法によりプレ重合することで、一度に
多量の原料を処理できるだけでなく、可とう性を有する
基材の変形に追従できる光触媒性被膜を形成でき、更に
は、基材の可視光透過性を変化させること無く光触媒性
積層体を作製できる。
【0073】また、所望の重量平均分子量のシリコンア
ルコキシド重合体を得るために、シリコンアルコキシド
系化合物(単量体)等を主成分とする原料に添加する水
の量、具体的にはr=[水]/[シリコンアルコキシド
系化合物(単量体)](但し、[]はモル濃度を示す)
を、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、一方、
好ましくは10以下、より好ましく8以下、更に好まし
く6以下、最も好ましくは5以下としてプレ重合するこ
とで、屈折率の小さい屈曲性のある光触媒性被膜を得る
ことができる。
【0074】r値を2以上とすることで、十分な表面硬
度を有する光触媒性被膜を形成できる。一方、r値を1
0以下とすることにより、屈折率が低く十分な可とう性
を有する光触媒性被膜を形成できる。
【0075】特に、r値が4以上5以下の場合、シリコ
ンアルコキシド系化合物の重合は特徴的な挙動をすると
考えられる。r値が4以下の場合、線状高分子が生成し
ていると考えられ、5以上の場合は3次元塊状高分子が
生成していると考えられる。この様な観点から、4≦r
≦5の領域では、高分子同士の結合が更に増え、強度的
にも高く、かつ、可とう性基材への追随性も良くなると
考えられる。
【0076】なお、一般的な熱焼成法による硬化では、
r<2の領域でも硬化するが、UV−C照射では、r値
を2以上とすることにより、プレ重合されたシリコンア
ルコキシド重合体を確実に硬化できる。
【0077】また、特開平5−72512号公報にはr
=72、特開平8−108066号公報にはr=4、特
開平8−293495号公報にはr=1の場合が、それ
ぞれ記載されているが、これらの例では、UV−C領域
の紫外線照射により原料をプレ重合し、基材に塗布後、
UV−C領域の紫外線照射により光触媒性被膜を形成し
ている。この結果、得られた光触媒性被膜は緻密性が高
く、熱によるプレ重合とは異なる反応が起こっていると
予想される。
【0078】シリコンアルコキシド系化合物の原料全体
に占める割合は、シリコンアルコキシド系化合物を完全
に脱水反応した場合に生じるSiO2の量(SiO2
算)として表すことができる。そして、光触媒性被膜が
十分な層厚を有し、十分な親水性と表面硬度を実現する
ために、シリコンアルコキシド系化合物の原料全体に占
める割合は、SiO2換算で0.01質量%以上が好ま
しく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%
以上が更に好ましくしい。また、ゲル化を抑制して、プ
レ重合を適度な速度で進行させるために、30質量%以
下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質
量%以下が更に好ましい。
【0079】更に、プレ重合工程において、メチルアル
コール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のア
ルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、クロロフォルム、ペンタン、
ヘキサン、シクロヘキサン等の有機溶剤等;塩酸、硫
酸、硝酸、有機酸等の酸性触媒;アンモニア、TEA、
ピリジン、DMAP等の塩基性触媒等を添加する場合も
ある。
【0080】加えて、プレ重合工程において、重合中の
シリコンアルコキシド重合体が臨界分子量以上となる
と、急速に重合反応が進行し、反応系がゲル化する場合
がある。この場合、プレ重合工程の前半では、高濃度の
シリコンアルコキシド系化合物(単量体)を高温で反応
させ、シリコンアルコキシド重合体の分子量が所望の値
となった時点で、希釈によりシリコンアルコキシド重合
体の濃度を低下させ、反応温度も低下させて、反応系が
ゲル化することを抑制することができる。
【0081】以上のプレ重合工程により、シリコンアル
コキシド重合体を生成した後、光触媒性半導体化合物を
混合して、原料を調製する。
【0082】また、予め光触媒性半導体化合物を混合し
ておき、これをプレ重合することにより、原料を調製す
ることもできる。
【0083】なお、光触媒性半導体化合物の含有量は、
SiO2の場合と同様に、光触媒性半導体の量で表すこ
とができる。そして、そして、光触媒性被膜の十分な光
触媒性や親水性を確実なものとするには、SiO2およ
び光触媒性半導体の総量に占める光触媒性半導体の割合
は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質
量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。ま
た、光触媒性被膜の柔軟性や、可視光透過性を確保する
ためには、85質量%以下が好ましく、80質量%以下
がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。
【0084】以上の様にして得られた原料は、ディップ
コート法(浸漬法)、スプレーコート法、スピンコート
法、フローコート法、ロールコート法、メニスカス法等
により、基材上に塗布される。
【0085】塗布量については、最終的に所望の層厚の
光触媒性被膜が得られるように調整する。光触媒性被膜
の厚みは、十分な親水性と表面硬度を実現するために、
1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましい。ま
た、層が厚くなりすぎ、基材表面近傍の光触媒性被膜に
十分なUVが到達せず、クラックや剥離が発生すること
を抑制するために、1000nm以下が好ましく、50
0nm以下がより好ましい。
【0086】本発明で使用される基材は特に制限されな
いが、従来の焼成法では光触媒性被膜を形成することが
困難であった様な、耐熱性が低く可とう性に富む基材も
使用することができる。また、基材が組成物よりなり、
基材を構成しているマトリックスは十分な耐熱性を有し
ていても、基材に含まれる、安定剤、可塑材、塩等の低
分子化合物が加熱により基材外に拡散する場合において
も、本発明の光触媒性被膜を形成することができる。
【0087】以上のような基材やマトリックスの例とし
ては、アルミ等の低融点金属系材料;ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、
ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリビニル
アルコール、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、不飽和
ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリ
ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ
エステル樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポ
リフェニレンスルフィド、ポリサルフォン、ポリアリレ
ート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、
ポリエーテルケトン、液晶ポリエステル、ポリイミド、
ポリアミドイミド等の樹脂;スチレンラバー、ブタジエ
ンラバー、天然ゴム等のエラストマー;低融点ガラス、
青板ガラス等の網目修飾イオンを含むガラス;フェライ
ト等の低キューリー点磁性材料;木綿、紙、木材、皮革
等の可燃性材料等を挙げることができる。
【0088】また、ガラス、セラミック、陶器、充填剤
を多量に含む樹脂等の昇温や冷却により熱破損し易い基
材に、従来の焼成法により、光触媒性被膜を形成した場
合、基材に熱破損が生じる場合があった。これに対し、
本発明によれば、熱破損し易い基材の場合においても、
光触媒性被膜を良好に形成することができる。
【0089】本発明においては、UV照射の条件は、得
られる光触媒性被膜の特性を大きく左右することから、
注意深く至適化される。即ち、適当な工程時間で、光触
媒性被膜の十分な親水性と表面硬度を実現するために、
254nmの照度は、0.01mW/cm2以上が好ま
しく、0.1mW/cm2以上がより好ましく、1mW
/cm2以上が更に好ましい。また、UV照射中に基材
の温度が上昇したり、基材の劣化や変色等を抑制するた
めに、254nmの照度は、50mW/cm2以下が好
ましく、30mW/cm2以下がより好ましく、15m
W/cm2以下が更に好ましい。
【0090】加えて、UVの照射時間は、光触媒性被膜
の十分な親水性と表面硬度を実現するために、1秒以上
が好ましく、5秒以上がより好ましく、10秒以上が更
に好ましい。また、UV照射中に基材の温度が上昇する
ことを抑制するために、30分以下が好ましく、20分
以下がより好ましく、10分以下が更に好ましい。
【0091】特に、基材の温度上昇を厳密に抑制する必
要がある場合は、熱線カットフィルターやコールドミラ
ー等を、紫外線光源部に設ける場合もある。
【0092】更に、従来の加熱による焼成法とは異な
り、本発明においてはUV照射により硬化工程が行われ
る。このため、たとえUV照射により基材の温度が上昇
したとしても、UVを消灯することにより、急速に基材
を冷却することができる。従って、本発明においては、
UV照射を間歇的に行うことにより、特に効果的に基材
の温度上昇を抑制できる。なお、間歇的にUV照射を行
う場合のUV照射時間とは、UV点灯時間の総和を意味
する。
【0093】加えて、本発明においてはUV照射により
硬化工程が行われるため、硬化と同時に、冷媒を用いて
基材を冷却することもできる。この場合も、効果的に基
材の温度上昇を抑制することができる。
【0094】本発明の光触媒性積層体は、図2に示す様
に、基材3上に光触媒性被膜4を形成することにより作
製することができる。また、光触媒性被膜4以外にも、
必要に応じて、他の機能層を設けることができる。
【0095】例えば、図9に示す様に、基材3と光触媒
性被膜4との間に、基材保護膜18を形成する。基材保
護膜18は、基体3が光触媒性被膜4の光触媒作用によ
り劣化することを抑制する。
【0096】この様な基材保護膜は、2モル部以上10
モル部以下の水の存在下でシリコンアルコキシド系化合
物1モル部を20℃以上80℃以下の温度で熱重合する
ことにより得られるシリコンアルコキシド重合体を含ん
でなる原料に、最大放射波長が315nm以下である紫
外線(UV)を照射し、原料を硬化して形成することが
できる。また、基材保護膜の場合も光触媒性被膜の場合
と同様の理由から、シリコンアルコキシド重合体の重量
平均分子量が、1000以上1000000以下である
ことが好ましい。
【0097】なお、基材保護膜の原料として、シリコン
アルコキシド重合体にルチル型チタニアを10〜60質
量%の範囲で添加することで、光触媒作用の無い、基材
に近い屈折率の基材保護層を形成することができる。
【0098】また、基材保護膜以外に、接着層、触媒層
等の下地層を形成することもできる。下地層の具体例と
しては、光触媒性被膜と基材との間の良好な接着性を実
現するため、シランカップリング剤の塗布層等を挙げる
ことができる。
【0099】また、他の具体例としては、基材からの不
純物の拡散を抑制するために、拡散防止層として、下地
層を形成することもできる。この場合、光触媒性被膜の
形成中において、基材は低温に保たれるため、基材に含
まれる不純物が拡散することが抑制される。このため、
光触媒性被膜中の光触媒化合物が不純物により失活する
ことが抑制されため、好ましい。
【0100】本発明の光触媒性被膜の好ましい用途例と
しては、接眼レンズ、眼鏡レンズ、ゴーグル、OHPシ
ート、ベルト、ゴムブレード、ゴムローラー、プラスチ
ック表示面、歯科用口内鏡等、光触媒の有機物分解作用
や防曇性、更には、可視光透過性の要求される材料を挙
げることができる。
【0101】また、皮膚との馴染みが良いとの観点から
は、受話器、ハンディーターミナル、携帯電話、カメ
ラ、VTRカメラ、双眼鏡などのボディー、事務機器の
操作パネル、車のハンドル、キーボード、マウス等の指
や皮膚が接触する物品を挙げることができる。
【0102】
【実施例】以下に実施例によって本発明を更に詳細に説
明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではな
い。なお、以下特に明記しない限り、試薬等は市販の高
純度品を用いた。
【0103】(評価方法) (ア)接触角:水との接触角は、接触角測定装置(協和
界面科学社製CA−D)を用いて測定した。なお、測定
可能な接触角の最低値は1°であり、これ以下の場合、
接触角は0°とした。
【0104】(イ)表面硬度:表面硬度の指標として、
JIS K 5400に準じて鉛筆引掻試験を行い、鉛
筆硬度を測定した。
【0105】(ウ)重量平均分子量:100質量部倍の
テトラヒドロフランに試料を溶解し、東ソー株式会社製
HLG−8120を用いて、GPCによりポリスチレン
換算の重量平均分子量を測定した。
【0106】(エ)赤外スペクトル(IR):ポリエチ
レンのシート上にフィルムを作製し、ポリエチレンのシ
ートをバックグランドとして、Nicolet社製74
0を用い、フーリエ変換赤外スペクトル(FT−IR)
を測定した。
【0107】(オ)X線回折:ガラス板上で試料を調製
し、得られた固形物をガラス板上から掻き落として、粉
末法により30°から90°の範囲で、理学電機社製G
eiger flexを用いて測定した。
【0108】(カ)屈折率:ジー・エー・ウーラム・ジ
ャパン社製の分光エリプソメータVASEを用いて測定
した。
【0109】(キ)透過率:380〜720nmの可視
光域において、紫外可視分光光度計(日立製作所製 U
−3210)を用いて計測した。
【0110】(ク)表面粗さRy(nm):表面粗さ計
(小坂研究所製、Surfcorder SE−3C、
縦倍率100000倍)を用いて隣り合う面の高低差を
計測し、凹凸差として最大高さ(Ry)を計測した。
【0111】(原料の調製)テトラエトキシシラン(以
下TEOS)、水、石原産業製アナターゼ型チタニアゾ
ルSTS−01(商品名)、加水分解触媒として硝酸、
溶剤としてエチルアルコールを用意した。これらを使っ
て、以下の原料を調製した。なお、STS−01は硝酸
解謬によるもので、アナターゼ型酸化チタン30.0質
量%、水68.0質量%、硝酸1.82質量%を含有し
ている。
【0112】原料1:SiO2換算固形分が4質量%と
なるよう、また、[水]/[TEOS]=r=10.
1、[HNO3]/[TEOS]=0.077となるよ
う、TEOS、水、硝酸およびエチルアルコールを混合
した。なお、原料1は、後で述べる原料3の組成からチ
タニアを除いたものと同じである。
【0113】原料2:TiO2及びSiO2固形分中のT
iO2含有量が30.8質量%(25モル%)となるよ
う、また、全固形分が9質量%となるよう、TEOS、
水およびSTS−01を混合した。この時、r=3.4
である。
【0114】原料3:TiO2及びSiO2固形分中のT
iO2含有量が57.1質量%(50モル%)となるよ
う、また、全固形分が9質量%となるよう、TEOS、
水およびSTS−01を混合した。この時、r=10.
1である 原料4:TiO2及びSiO2固形分中のTiO2含有量
が80.0質量%(75モル%)となるよう、また、全
固形分が9質量%となるよう、TEOS、水およびST
S−01を混合した。この時、r=30.2である。
【0115】原料5:テトラエトキシチタン(以下TE
OT)10質量部、エチルアルコール90質量部、3
5.5%塩酸1質量部を混合した。
【0116】(比較例1)以上で調製した原料1を50
℃に加熱し、所定の時間ごとに原料の一部を採取し室温
に戻した。一方、基材として白板スライドガラスと0.
18mm厚ポリエチレンテレフタレート樹脂に、ディッ
プ法にて硬化後の膜厚が150nmになるように両面成
膜を行い、センエンジニアリング社製200W低圧水銀
灯を用いて、254nmの照度8mW/cm2で40秒
毎3回繰り返し硬化を行った。この時の基材温度を表面
温度計で測定したところ、全て50℃以下であった。更
に、あわせて分子量測定も行った。
【0117】(実施例1〜3)また、同様にして原料2
〜4を硬化し、光触媒性被膜を形成した。
【0118】なお、50℃の加熱により、原料1及び3
は26日目で、原料2は20日目で、原料4は39日目
で、それぞれゲル化し使用できなくなった。しかし、ゲ
ル化の1日前であっても、原料を常温に戻し、溶剤で希
釈し濃度を低下させることでゲル化を回避することがで
きた。
【0119】(参考例)また、原料5を白板ガラスにデ
ィップして、600℃で焼成したものと、900℃で焼
成したものを作製し、その硬化物のX線回折および屈折
率の測定を行ったところ、それぞれ、アナターゼ型酸化
チタンで屈折率は2.30、ルチル型酸化チタンで屈折
率は2.71であった。
【0120】(比較例2〜5)一方、原料1〜4に上記
の低圧水銀ランプを照射し、液粘度を10mPa・sと
した。これに、上記の白板ガラスとポリエチレンテレフ
タレート樹脂を基材としてディップを行い、上記と同様
条件で低圧水銀ランプの照射により硬化を行った。
【0121】(屈折率評価)以上で形成した被膜の屈折
率を測定し、アナターゼ型酸化チタンの含有量による屈
折率の変化として、結果を図1に示した。ここで、1の
曲線は実施例1〜3および比較例1の結果を内挿をした
ものでプレ重合を加熱により行ったものである。また、
2の直線は比較例2〜5の結果を内挿をしたものでプレ
重合を光照射により行ったものである。
【0122】50℃のプレ重合により得られたシリコン
アルコキシド重合体の重量平均分子量は分子は1000
0〜800000の範囲であり、シリコンアルコキシド
重合体の重量平均分子量がこの範囲であれば、屈折率の
測定結果は1の曲線に乗ることが分かった。
【0123】また、図1より、プレ重合を加熱により行
うことにより光触媒であるアナターゼ型酸化チタンの含
有量を多くし、その効果を高めても屈折率の上昇を抑制
でき、具体的には屈折率を1.75以下とできて、一般
的な光学基材の屈折率1.5〜1.6との差を0.25
以下とできることが分かった。
【0124】なお、参考例で使用したTEOTもUV−
C硬化性を有しているため、UV−C照射により硬化す
ることで、熱を加えることなく光触媒の結着材とするこ
とができる。しかし、そのUV−C硬化物の屈折率は
1.9と大きく、2.3の屈折率の結着材とする光学的
な使用においては、本発明のシリコンアルコキシド系化
合物の屈折率1.41に比べ、不向きの材料である。
【0125】(可視光域透過率評価)図3には、可視光
域(波長:400nm〜700nm)における透過率の
測定結果を示す。5は白板ガラスの透過率、6は原料3
を22日間50℃で加熱し白板ガラスに被膜を形成した
ものについて、7は原料3をUV−Cによりプレ重合し
白板ガラスに被膜を形成したものについて、8は原料5
を白板ガラスに成膜600℃焼成した結果を、それぞれ
示している。
【0126】図3より、6の場合が可視光域における透
過率に優れていることが分かった。なお、この時の屈折
率は、白板ガラスが1.51、6の場合1.57、7の
場合1.95、8の場合2.30であり、白板ガラスと
の屈折率差は、6の場合0.06、7の場合0.44、
8の場合0.79であった。
【0127】(曲げ耐久評価)原料1〜4を加熱により
プレ重合しポリエチレンテレフタレートを被膜して得ら
れた積層体と、原料1〜4を光照射によりプレ重合しポ
リエチレンテレフタレートを被膜して得られた積層体と
を、直径200mm及び50mmの円筒に巻き付け、被
膜の変化を顕微鏡観察した。直径200mmの円筒に巻
いた場合と、直径50mmの円筒に巻いた場合との結果
を、それぞれ表1および表2に示した。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】ここで、○:全く変化なし、△:僅かに割
れ発生、×:全体に細かな割れ発生、とした。
【0131】以上の評価の結果から、原料を熱的にプレ
重合する方法が、光触媒性被膜および光触媒積性層体に
とって、光学的にも、また、機械的な曲げ耐久に対して
も優れていることが分かった。
【0132】更に、各測定結果を内挿することにより、
r値が4以上5以下の場合、特に性能に優れることが分
かった。
【0133】(水との接触角評価1)図4には、原料1
を50℃で加熱し、TEOSの加水分解と脱水縮重合を
促進してプレ重合を行い、これをガラス基材にディップ
し、UV−C照射により硬化、その後の水との接触角を
放置時間との関係を示した。図中、▲はシリコンアルコ
キシド重合体の重量平均分子量が700(12日目)の
場合、●は1500(15日目)の場合、○は9800
(19日目)の場合、△は23000(22日目)の場
合、×は120000(25日目)の場合の結果を、そ
れぞれ示している。
【0134】(鉛筆硬度)また、これらの硬化上がりで
の鉛筆硬度は、12日目は未硬化のため測定不可、15
日目は2H、19日目は3H、22及び25日目は5H
であった。
【0135】(UV硬化状態のIR評価)更に、プレ重
合22日目について、ポリエチレン製シートに、100
℃焼成、UV−C照射および常温乾燥により原料を硬化
し、IRスペクトルを測定し、結果を図5に示した。そ
れぞれを比べてみると、図5において、1467cm-1
及び720cm-1における吸収ピークは、いずれもTE
OS中のエチレン基の運動に由来するもので、ベースに
対する吸収量は、l1、l2、l3の順に、また、h
1、h2、h3の順に小さくなり、エチレン基が少ない
ながら依然存在しているものの、実験事実より、加熱焼
成と比較してUV−C照射により、より多くエトキシ基
が水酸基に置換されていると推察され、このため、被膜
は高い親水性を示すものと考えられる。
【0136】また、水酸基が多数生じていることは、多
量のシラノール類が生成していることを示竣している。
このため、UV−C硬化の際には、シラノールの脱水反
応により、多量の水が生じていると考えられ、特に、加
熱焼成が行われないため、シラノールの脱水反応で生じ
た水分子が気化することもなく、被膜中に包埋されると
考えられる。従って、被膜には多量の水が保持されてい
ると考えられ、この結果、高い親水性が実現され、それ
が維持されるものと推察される。
【0137】また、X線回折した結果は、散乱強度は角
度により明確のピークのない非晶質状態であることが分
かった。
【0138】以上の結果より、UV硬化による被膜は、
非晶質状態であるにもかかわらず、焼成硬化層で確認さ
れた従来の無定形シリカとは異なる化学および固体状態
であることが分かった。
【0139】(水との接触角の評価2)原料3を50℃
で加熱し、原料1と増粘の挙動が大略同様なことから、
同一加熱日数でプレ重合を終了し、白板ガラス基材にU
V−Cにより硬化したものを、暗中保管し、光触媒の励
起による効果を除いた状態で、硬化後の時間経過に対す
る接触角の変化を測定した。結果を図6に示したが、プ
レ重合を12日行った結果を▲で、15日の結果を●
で、19日の結果を○で、22日の結果を△で、25日
の結果を×で示した。
【0140】図6から分かるように、元来保有している
テトラエトキシシランのUV硬化物の親水性は、アナタ
ーゼ型酸化チタンの添加により、更に高まることが分か
る。また、不図示であるが、ポリエチレンテレフタレー
トに形成した被膜の表面の親水性は、50℃で22日目
および25日目プレ重合しUV−C硬化したものでは、
60日を超えても0°を維持していた。このことは、ガ
ラスに比べプラスチック基材からの水分補給により親水
性がさらに持続されることを示している。
【0141】(鉛筆硬度)なお、硬化上がりでの鉛筆硬
度は、12日目で未硬化のため測定不可、15日目で3
H、19日目で4H、22日25日目で5Hであった。
【0142】(表面粗さ評価)図7には、原料3を12
日、15日、19日、22日および25日間50℃でプ
レ重合し、被膜をUV−C照射で白板ガラス上に形成
し、表面粗さを100000倍で測定した結果を示し
た。図中、9はガラス基材表面の表面粗さを、10〜1
4はプレ重合12〜22日の場合の結果を、それぞれ示
す。これより、プレ重合期間が長いほど表面の平坦度が
増してくることが分かった。
【0143】なお、プレ重合12日目の原料をガラスに
塗布、200℃焼成した場合は、厚み方向に均一に硬化
するため、平坦度は13と同程度であり、シリコンアル
コキシド重合体の分子量の違いによる平坦度の差は現れ
ないことが分かった。
【0144】特に、UV−Cにより硬化を行う場合は、
酸化チタンなどの粒子がシリコンアルコキシド系化合物
中に分散されていると、UV−C照射により粒子の背後
にあるシリコンアルコキシド系化合物の反応が遅れ、直
接照射されたところとが先行して脱水縮重合により収縮
し、微細な凹凸が存在する表面となる。この様な場合、
被膜には透明感がなくなり透過率も低下する。このよう
な不具合を防ぐためにも、UV−C硬化には、熱による
プレ重合が好ましい。
【0145】(実施例4)ゴーグルへの適用 光触媒性被膜の原料として、原料3を22日間50℃で
プレ重合したものを用意した。
【0146】一方、2mm厚のメタクリル樹脂(屈折率
1.50)をゴーグルレンズ形状に切断したものを用意
した。これに、上記の原料をディップ法にて塗布し、溶
剤揮発後、実施例1と同様に低圧水銀ランプを用いて硬
化し、150nmの光触媒性被膜を形成した。得られた
積層体の透過率の波長依存性を図8の16に示した。ま
た、15は被膜が形成されていないメタクリル樹脂の透
過率を示している。
【0147】これより、光触媒性被膜と、メタクリル樹
脂と屈折率差は0.07と小さく、可視光域の透過率に
悪影響を与えていないことが確認された。
【0148】また、積層体を実際にゴーグルホルダーに
取りつけ、被膜を形成してから1ヶ月後、スキー場にて
フィールドテストを行なった。その結果、−5℃のゲレ
ンデでスキーをした後、ゴーグルを付けたまま15℃の
レストハウスに入っても、光触媒性積層体は全く曇りを
生ずることなく、明瞭な視野を確保することができた。
それに対して、被膜を形成していないメタクリル樹脂で
は、白く曇り、全く視界を確保できなかった。
【0149】更に、光触媒性積層体を、夜間のみ365
nmの光がおおよそ1μW/cm2で6時間照射される
条件で、一般家庭の居間のガラス戸棚に保管し、1年後
にゴーグルを使用しても、防曇性は全く失われていなか
った。
【0150】(実施例5)ゴムワイパーへの適用 自動車のフロントグラス用ゴムワイパーに、原料1を5
0℃で22日間プレ重合したものをゴム基材保護膜の原
料としてディップ塗布し、実施例1の低圧水銀ランプを
使い同様の条件で硬化し、300nm膜厚のゴム基材保
護膜を形成した。その上に、原料3を50℃で22日間
プレ重合し、光触媒性被膜の原料としてディップ法によ
り塗布、実施例1と同様の条件で光触媒性被膜を形成し
た。
【0151】得られたワイパーとガラスウインドーとの
摩擦係数を測定したところ0.12であったのに対し、
被膜を形成していないワイパーの場合、0.34と大き
く、被膜を形成することにより、雨量が少ないときワイ
パーの駆動モーターへの負荷を軽減できることが分かっ
た。
【0152】また、ワイパーの汚れは光触媒性被膜の形
成により低減され、加えて保護膜の働きにより、基材の
劣化も抑制されることが分かった。
【0153】(実施例6)眼鏡用ガラスレンズへの適用 ガラスレンズのモデルとして白板ガラスを使用した。こ
れに、光触媒性被膜の原料として、原料3を50℃で2
2日間プレ重合したものをディップ法により両面塗布
し、実施例1と同様の方法でUV−C照射を行い、ガラ
スに光触媒性被膜を150nm膜厚で形成したものを2
つ作製した。
【0154】1つは、更に、200℃で焼成し膜の鉛筆
硬度、屈折率、可視光域における透過率を測定した。
【0155】膜の鉛筆硬度は、5Hが7Hへと上昇し、
また、屈折率は1.57から1.61とほとんど上昇す
ることもないのに対し(基材との屈折率差は、0.06
から0.10に若干広がったものの)、可視光域の透過
率は図3の破線17に示すように、白板ガラスの透過率
に極めて接近してくることが分かる。
【0156】即ち、UV−C硬化後加熱することでほと
んど屈折率を高めることなく、光触媒性被膜の強度を高
めることができる。このことは、UV−C照射により、
さほど緻密でないシロキサン骨格が形成されれば、その
後の熱焼成により若干は収縮し結合も増えるものの、厚
みも殆ど変わることもなく、CH基のみ放出されること
により膜の透明性が増し、透過率と強度が向上したもの
と考えられる。
【0157】当然、UV−C硬化後の加熱は、300℃
が限度であって、それ以上になると緻密な膜となり、屈
折率が上昇し脆くなってしまう。
【0158】なお、UV硬化後の加熱焼成は、基材が十
分な耐熱性を有する場合に有効である。
【0159】(実施例7)柔軟性膜の調製 TEOS、水、石原産業製アナターゼ型チタニア粉末S
T−01(商品名)、硝酸、エチルアルコールを用意
し、以下の光触媒性被膜の原料を調製した。なお、ST
−01は平均粒径7nmの微粉である。
【0160】原料6:SiO2の換算固形分が4質量%
となるよう、また、r=1.5、[HNO3]/[TE
OS]=0.1となるよう、TEOS、水、硝酸、エチ
ルアルコールを混合した。
【0161】原料7:r=2.5とした以外は、原料6
と同様に調製した。
【0162】原料8:r=3.5とした以外は、原料6
と同様に調製した。
【0163】原料9:r=4.5とした以外は、原料6
と同様に調製した。
【0164】原料10:r=5.5とした以外は、原料
6と同様に調製した。
【0165】原料11:r=6.5とした以外は、原料
6と同様に調製した。
【0166】これらの原料を50℃でプレ重合し、シリ
コンアルコキシド重合体の重量平均分子量が20000
なったところでプレ重合を終了した。
【0167】得られた原料を0.25mm厚のポリエチ
レンテレフタレート樹脂にディップ法で塗布し、その
後、実施例1と同様の条件で低圧水銀ランプを照射し、
硬化した。
【0168】これら表面の水との接触角を、硬化20時
間後に求めた。また、鉛筆硬度も評価した。更に、直径
10mmの円筒を用いて、上述の方法で膜の柔軟性も評
価した。
【0169】得られた結果を表3に示した。
【0170】
【表3】
【0171】ここで、○:全く変化なし、△:僅かに割
れ発生、×:全体に細かな割れ発生、とした。
【0172】以上より、r値が4以上5以下の場合、性
能が優れていることが分かった。
【0173】(実施例8)基材の屈折率に近い基材保護
膜 原料9にルチル型酸化チタンを実施例1の固形分組成と
同様になるよう(アナターゼ型酸化チタンをルチル型酸
化チタンに変え)、ルチル型酸化チタンの比率を30.
8質量%、57.1質量%、80.0質量%となるよう
添加し、ボールミルで15時間混合し、白板ガラスに塗
布後、実施例1の方法条件で、硬化して膜厚150nm
の基材保護膜を形成した。
【0174】得られた基材保護膜の屈折率を測定し、結
果は図10に示した。これより、一般的な可視光透過性
を有する材料の屈折率1.5〜1.6の範囲に近づける
には、僅かな量のルチル型酸化チタンの添加が有効であ
ることが分かる。
【0175】更に、光触媒の分解力評価として、原料3
を実施例1と同様にして白板ガラスに成膜、UV−C硬
化し膜厚150nmの光触媒性被膜としたものと、原料
9にルチル型酸化チタンを57.1質量%加えたものと
に、メチレンブルーを吸着させ光触媒性能評価装置PC
C−1(真空理工製)を用い、その吸光度(△Abs)
の変化を測定した。
【0176】その結果を、図11に示す。19はアナタ
ーゼ型の吸光度の変化を、20はルチル型の吸光度の変
化を、それぞれ示す。これより、アナターゼ型はメチレ
ンブルーを顕著に分解しているのに対し、ルチル型は殆
ど分解していないことが分かった。
【0177】このことは、基材保護膜として大切な性質
であり、また、これの添加により屈折率を基材に近づ
け、光触媒性積層体の透過率を低下させないためにも有
効である。
【0178】(実施例9)パーソナルコンピューター用
マウスへの適用 原料3(r=10.1、固形分9質量%)を50℃で2
2日間反応し、3容量倍の2−メトキシエタノールに混
合して、塗料を調製した。一方、ABS樹脂製のマウス
を3個用意し、その内の1個にスプレーコート法により
得られた塗料を塗布した。その後、溶剤を揮発させ、実
施例1と同様に低圧水銀ランプを用いて硬化し、150
nmの光触媒性被膜を形成した(マウス1)。
【0179】また、原料3に低圧水銀ランプを照射し液
粘度を10mPa・sとした後、3容量倍の2−メトキ
シエタノールに混合して、塗料を調製した。そして、得
られた塗料をABS樹脂製のマウスに塗布し、溶剤を揮
発させ、実施例1と同様に低圧水銀ランプを用いて硬化
し、150nmの光触媒性被膜を形成した(マウス
2)。
【0180】以上の様にして被膜が形成されたマウス
(マウス1及びマウス2)と、被膜が形成されていない
マウス(マウス3)とを、被験者に見えない状態で触れ
させ、30分後の接触感触を調査した。その結果、マウ
ス1は汗ばむこともなく拳に馴染み易かったのに対し、
マウス3はマウス表面が汗ばみ拳に馴染み難く、マウス
2に付いてはマウス表面は汗ばまないものの拳には馴染
み難かった。
【0181】
【発明の効果】以上で説明した様に、熱的にプレ重合し
たシリコンアルコキシド重合体を含んでなる原料にUV
−C領域の紫外線照射をすることで、可視光透過性が高
く、柔軟性があり、良好な馴染み性を有する光触媒性被
膜を形成でき、光触媒効果や高い親水性を持続できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】屈折率とのチタニア含有量との関係を示す図で
ある。
【図2】光触媒性積層体を説明するための模式的断面図
である。
【図3】透過率との波長との関係を示す図である。
【図4】水との接触角と放置時間との関係を示す図であ
【図5】IRスペクトルである。
【図6】水との接触角と放置時間との関係を示す図であ
【図7】表面粗さを示す図である。
【図8】透過率との波長との関係を示す図である。
【図9】光触媒性積層体を説明するための模式的断面図
である。
【図10】屈折率とのチタニア含有量との関係を示す図
である。
【図11】ΔAbsと評価時間との関係を示す図であ
る。
【符号の説明】
3 基材 4 光触媒性被膜 18 基材保護膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B32B 27/16 B32B 27/16 C03C 17/30 C03C 17/30 A C09D 5/00 C09D 5/00 Z Fターム(参考) 4F100 AA20A AA21A AK52A AK52C AT00B BA02 BA03 BA07 BA10A BA10B BA13 EH462 EJ08A EJ08C EJ082 EJ42A EJ42C EJ48 EJ54A EJ542 EJ862 GB41 JA07A JA07C JA20A JK12 JK14 JK17B JL08A JM02A JN08 JN18 JN18A YY00A YY00C 4G059 AA01 AA11 AC21 EA04 FA09 FA22 FA27 FB05 4G069 AA03 AA08 BA02A BA02B BA04A BA04B BA27A BA27B BA48A BE06A BE06B CA10 CA11 DA06 EA08 ED02 FA02 FB23 4J038 DL031 HA446

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光触媒性半導体およびシリカを含んでな
    り屈折率が1.75以下であることを特徴とする光触媒
    性被膜。
  2. 【請求項2】 シリコンアルコキシド重合体および光触
    媒性半導体化合物を含んでなる原料に、最大放射波長が
    315nm以下である紫外線(UV)を照射し、該原料
    を硬化して得られることを特徴とする請求項1記載の光
    触媒性被膜。
  3. 【請求項3】 前記シリコンアルコキシド重合体は、2
    モル部以上10モル部以下の水の存在下でシリコンアル
    コキシド系化合物1モル部を重合して得られることを特
    長とする請求項2記載の光触媒性被膜。
  4. 【請求項4】 前記シリコンアルコキシド重合体は、2
    0℃以上80℃以下の温度によりシリコンアルコキシド
    系化合物を熱重合して得られることを特長とする請求項
    2又は3記載の光触媒性被膜。
  5. 【請求項5】 前記シリコンアルコキシド重合体の重量
    平均分子量は、1000以上1000000以下である
    ことを特徴とする請求項2乃至4何れかに記載の光触媒
    性被膜。
  6. 【請求項6】 前記光触媒性半導体化合物は、チタニア
    ゾルであることを特徴とする請求項2乃至5何れかに記
    載の光触媒性被膜。
  7. 【請求項7】 前記光触媒性半導体化合物は、結晶性チ
    タニア微粒子であることを特徴とする請求項2乃至5何
    れかに記載の光触媒性被膜。
  8. 【請求項8】 前記UVは、UV−Cであることを特徴
    とする請求項2乃至7何れかに記載の光触媒性被膜。
  9. 【請求項9】 前記光触媒性半導体はチタニアであり、
    該チタニアが該チタニア及び前記シリカの合計に占める
    割合は20質量%以上85質量%以下であることを特徴
    とする請求項1乃至8何れかに記載の光触媒性被膜。
  10. 【請求項10】 基材上に請求項1乃至9何れかに記載
    の光触媒性被膜が少なくとも形成されており、該基材の
    屈折率と該光触媒性被膜の屈折率との差が0.25以下
    であることを特徴とする光触媒性積層体。
  11. 【請求項11】 前記光触媒性被膜の膜厚は、1nm以
    上1000nm以下であることを特徴とする請求項10
    記載の光触媒性積層体。
  12. 【請求項12】 前記基材と前記光触媒性被膜との間に
    は、基材保護膜が形成されていることを特徴とする請求
    項10又は11記載の光触媒性積層体。
  13. 【請求項13】 前記基材保護膜は、2モル部以上10
    モル部以下の水の存在下でシリコンアルコキシド系化合
    物1モル部を20℃以上80℃以下の温度で熱重合する
    ことにより得られるシリコンアルコキシド重合体を含ん
    でなる原料に、最大放射波長が315nm以下である紫
    外線(UV)を照射し、該原料を硬化して形成されるこ
    とを特徴とする請求項12記載の光触媒性積層体。
  14. 【請求項14】 前記シリコンアルコキシド重合体の重
    量平均分子量は、1000以上1000000以下であ
    ることを特徴とする請求項13記載の光触媒性積層体。
  15. 【請求項15】 前記基材は可とう性樹脂部材であるこ
    とを特徴とする請求項10乃至14何れかに記載の光触
    媒性積層体。
  16. 【請求項16】 少なくとも、シリコンアルコキシド系
    化合物、水および光触媒性半導体化合物を混合し、該シ
    リコンアルコキシド系化合物1モル部に対して該水が2
    モル部以上10モル部以下である原料を調製する工程
    と、該原料を20℃以上80℃以下の温度で加熱し、該
    シリコンアルコキシド系化合物をシリコンアルコキシド
    重合体とする工程と、該加熱処理された原料を基材上に
    塗布する工程と、該塗布された原料を乾燥させる工程
    と、該乾燥された原料に、最大放射波長が315nm以
    下である紫外線(UV)を照射して硬化させる工程と、
    を含むことを特徴とする光触媒性被膜の製造方法。
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