JP2018119067A - 親水性コーティング剤、及びその塗布膜 - Google Patents

親水性コーティング剤、及びその塗布膜 Download PDF

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Abstract

【課題】一般に、疎水性が高い有機材料からなるフィルムの上に、親水性のコーティング膜を形成できる、親水性コーティング剤を提供する。【解決手段】有機材料からなるフィルム上に、いわゆるアンカーコートを施し、親水性膜を形成する親水性コーティング剤を提供する。特に、粒径が1nmから100nmの範囲の親水性シリカ粒子と、ウレタン樹脂と、シロキサン静電防止剤と、アクリル樹脂と、及び 有機溶剤と、を含むことを特徴とする。また、フィルム上に、このようなコーティング剤を適用した親水性コーティングを提供する。このようにすれば、親水性により、フィルムは防汚機能を備えるようになる。【選択図】なし

Description

本発明は、透明な樹脂フィルム又は樹脂基板に適用される汚れ防止用及び防曇用コーティング剤に関し、生産性に優れた親水性コーティング剤、及びその塗布膜に関する。
近年、その透明性と強度によって高く評価されているポリカーボネート系樹脂等からなる合成樹脂板が、バルコニー、サンルームの屋根材等、建築分野に多く使われているようになった。このような合成樹脂板は、多くは、表面が疎水性であるために結露し水滴を生じやすく、曇って透明性が損なわれるおそれがある。
また、例えば鉄道車両、自動車、自動販売機等の表面に貼付して用いられるマーキング用フィルムの表面保護、光沢向上、変退色・劣化防止等を目的としたオーバーレイフィルムや、車両や住宅のプラスチック製ウインドウや外装看板の表面保護用フィルム、液晶ディスプレイ反射用シート、太陽電池用バックシート等として、主として保護や変退色防止の目的で用いられる高耐候性フィルム・シートが多く用いられるようになった。
上記した高耐候性フィルム・シートは、共通して、物体を厳しい外部環境から遮断し保護することを目的としており、直射日光による紫外線暴露や大きな気温変化を受けたり、風雨に曝されるなどの環境変化に耐える必要があるが、多くは合成樹脂からなっており、表面の疎水性により結露し水滴を生じやすく、曇って透明性が損なわれるおそれがある。
そこで、合成樹脂板又は合成樹脂フィルムの表面を親水性とすることにより、防汚性に優れた合成樹脂板又は合成樹脂フィルムとすることが考えられる。例えば、合成樹脂の一種であるポリカーボネート系樹脂板の一方の面に、紫外線吸収剤を含有するポリカーボネート系樹脂またはアクリル系樹脂からなる耐候性付与層と、アルコキシシリル基を有するアクリル系樹脂からなるバインダー層と、無機コロイド物質から得られる防汚層とを順に積層してなる防汚性に優れたポリカーボネート系樹脂板が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、フッ素樹脂フィルムのような基材フィルム上に、ベーマイト粒子、5〜50nmのシリカ粒子を含み、AlとSiとの原子比(Al/Si)が、0.2〜5.0となる、多孔質の親水性塗膜とを有する農業用フィルムが提案されている(例えば、特許文献2)。
また、ポリサルフォン樹脂に、一般式(R Si(R4−n(1)、Rはメタクリロキシ基を有する有機官能基であり、Rはアルコキシル基、アセトキシル基及び塩素から選ばれる1種もしくは複数の加水分解性基であり、nは3以下の整数)で示される有機官能基を有する珪素化合物もしくはその加水分解物を含む塗布液を塗布した後、乾燥させて得られた一次被膜の上に、二酸化珪素被覆を施した液晶ディスプレイ用樹脂基板などに適した基板が提案されている(例えば、特許文献3)。
更に、テトラアルキルオルソシリケート、有機溶媒および水を混和して反応させる反応工程(ステップS100)と、その反応工程によって得られる溶液を基板に供給して膜を形成する膜形成工程(ステップS200)と、その膜形成工程によって得られる膜を40℃以下の温度で乾燥する乾燥工程(ステップS300)と、その乾燥工程によって得られる膜を水に接触させて加水分解を行う後加水分解工程(ステップS400)とを含む親水性シリカ膜の製造方法が提案されている(例えば、特許文献4)。
特開2003−39621号公報 WO2010/092990号公報 特開2001−348445号公報 WO2011/055553号公報
しかしながら、上述のような樹脂板やフィルムでは、複雑な工程が必要とされ、且つ、耐剥離性が必ずしも高いとは言えない。
そこで、比較的シンプルな構成からなり、且つ、種々の材質の基板に適用可能で対剥離性が強い、親水性コーティング剤、及びその塗布膜を提供することを目的とする。
本発明によれば、有機溶媒にナノレベルのコロイダルシリカを安定的に分散させたコロイド溶液、ウレタン樹脂、薄膜(Si−O−Si のシロキサン結合)を形成するシロキサン静電防止剤、及び、アクリル樹脂を混合することにより、ナノシリカガラス分散親水性防汚コーティング剤を準備し、これを樹脂基板又は樹脂フィルムに塗布し、乾燥することにより、親水性層を備える樹脂基板又は樹脂フィルムを得ることができる。
特に、以下のようなものを提供する。
(1)粒径が1nmから100nmの範囲の親水性シリカ粒子と、 ウレタン樹脂と、 シロキサン静電防止剤と、 アクリル樹脂と、及び 有機溶剤と、を含むことを特徴とする樹脂フィルム用親水性コーティング剤。
(2)前記シリカ粒子の粒径が、10nmから15nmであることを特徴とする上記(1)に記載の親水性コーティング剤。
(3)前記ウレタン樹脂が、加水分解性を持たないエーテル系であり、湿気硬化型かつ一液型であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の親水性コーティング剤。
(4)前記シロキサン静電防止剤が、硬化後に水酸基が表面に形成されることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の親水性コーティング剤。
(5)前記アクリル樹脂が、水酸基価が40以上になるようにカルボキシル基を有していることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の親水性コーティング剤。
(6)樹脂フィルムと、 その上に、粒径が1nmから100nmの範囲の親水性シリカ粒子、ウレタン樹脂、シロキサン静電防止剤、及びアクリル樹脂からなる親水性膜とを含む、親水性樹脂フィルム。
(7)前記フィルムと、前記親水性膜との間に、アンカーコートを備える上記(6)に記載の親水性樹脂フィルム。
(8)前記アンカーコートは、加水分解性を持たないエーテル系であり、湿気硬化型かつ一液型ウレタン樹脂と表面水酸基を有するシロキサン静電防止剤とカルボキシル基を有するアクリル樹脂の混合物からなることを特徴とする上記(7)に記載の親水性樹脂フィルム。
ここで、上記コロイド溶液は、トルエン分散シリカゾルであり、一次粒子の粒径が1nmから100nm、より望ましくは、10nmから15nmの範囲の親水性シリカを含む。溶媒は、コロイダルシリカが十分に分散されるならば、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジメチルアセトアミド等のアミド類、メチルエチルケトン等のケトン類等、他の有機溶媒であってもよい。
このようなシリカゾルの一例として、オルガノシリカMEK−STや、IPA−ST(日産化学工業株式会社製)を挙げることができる。前者は、疎水性溶媒に分散したシリカゾルであり、具体的には、トルエン分散シリカゾルである。SiOが40重量%であり、シリカの粒子径は、10〜15nmで、溶液全体の粘度は、1.0〜6.0mPa・sであるが、含有水分は、0.1%以下である。一方、後者は、親水性溶媒に分散したシリカゾルであり、具体的には、イソプロピルアルコールに分散されたシリカゾルである。SiOが30重量%であり、シリカの粒子径は、10〜15nmである。これらは、有機溶媒にナノレベルのコロイダルシリカを安定的に分散させたコロイド溶液でもある。このような溶液に樹脂等を添加する場合は、オルガノシリカゾルを先に入れ、攪拌しながら、溶媒、樹脂、添加剤等を加えるのが一般的である。
上記ウレタン樹脂は、ポリウレタンとも言い、ウレタン結合を有する重合体の総称で、通常イソシアネート基と水酸基を有する化合物の重付加により生成される。ここで、ウレタン(−NH・CO・O−)が介する結合をウレタン結合と言う。抗張力や耐摩耗性、耐油性に優れるが、耐熱性や耐水性は他の合成ゴムに比べ低い。水分による加水分解や空気中の窒素酸化物(NOx)、塩分、紫外線、熱、微生物などの影響で、徐々に分解される。通常、グリコールを主とするポリオールと、主として2官能のイソシアネートである、ジイソシアネートを反応させて合成する。カルボキシ基、アミノ基などの官能基も併用することができる。ウレタン樹脂1としては、エーテル系,エステル系,ポリカーボネート系,アクリル系のものが使用可能であるが、コスト及び耐久性の点でエーテル系のウレタン樹脂が好適である。エーテル系のものがエステル系に比べて加水分解性をもたず耐久性に優れる。
このようなウレタン樹脂としては、例えば、東洋モートン株式会社製のNCO末端ポリウレタン系接着剤のAD333Eが挙げられる。このAD333Eには、約68%のNCO末端ポリウレタン系樹脂と、約2.0%のメチレンビス(4、1−フェニレン)=ジイソシアネート(略名MDI)と、約30%の酢酸エチルとを含む。一般に、ウレタン樹脂系接着剤は、ウレタン基−NHCOO−を持つ接着剤の総称であり、広義にはイソシアネート基(NCO基)やヒドロキシ基(OH基)から誘導され化合する接着剤を含む。
また、シロキサン静電防止剤は、処理表面にガラス様物質のシリカ薄膜(Si−O−Si のシロキサン結合)を形成するためのもので、このシリカ薄膜は、多数の水酸基(−OH)が存在し非常に優れた吸湿性を持っており、空気中の水分を吸着する事によって表面の電気漏洩抵抗を下げて静電気の帯電を防止する。溶媒に、2−プロパノール(IPA)、1−ブタノール等を用い、常温乾燥により、膜が形成できるものが好ましい。この膜の表面抵抗が、10〜10Ωになるものが好ましい。ここで、シロキサンはケイ素(Si)と酸素(O)が交互に結合してポリマーを形成している材料の総称である。一般式は、RSiO−(RSiO)−SiRである。このようなシロキサン静電防止剤をフィルムの表面に塗布すると、フィルムに密着しつつ、表面には、水酸基を多く有しており、その結果吸湿性が高くなる。言うなれば、表面に水を多く含んだような状態となるので、乾燥状態よりも静電気が起こり難くなる。その為静電防止剤の機能を発現する。例えば、フィルムがPETのようなポリエステルである場合、このような水酸基が直接PETの基板にも強固に結合し強固な密着性を実現できると考えられる。
このようなシロキサン静電防止剤としては、例えば、コルコート株式会社製のシロキサン静電防止剤コルコートN−103Xが挙げられる。
また、上記アクリル樹脂は、一般に、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体で、透明性の高い非晶質の合成樹脂である。特にポリメタクリル酸メチル樹脂(Polymethyl methacrylate)。略称PMMA)による透明固体材はアクリルガラスとも呼ばれる。ポリカーボネートなどと共に有機ガラスとも呼ばれる。メタクリル酸エステル重合体(ポリマー)は透明度の最も高いものの一つで、屈折率も1.49と高く、熱可塑性で複雑な形状に加工することが可能なために光学材料の素材として汎用されている。クロロホルムやアセトンなど種々の有機溶媒に可溶であり、非晶質プラスチックで80−100℃程度で軟化変形し始める。
本発明におけるアクリル樹脂としては、荒川化学工業株式会社製のアクリル樹脂アラキード9103を例として挙げることができる。これには、不揮発分が59〜62%あり、溶剤として、キシレン・酢酸ブチルが用いられる。酸価が1〜3であり、水酸基価が55〜65であり、乾性・硬度・耐候性・耐薬品性が良好である。特に、材料選択の一つの基準として水酸基価が重要であると考えられ、40以上、更には、50以上が好ましいと考えられる。また、樹脂の耐久性を考慮すれば、高すぎるのも避けることが好ましいと考えられる。例えば、1000よりは小さいことが好ましい。一般には、水酸基価は、試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg量であり、一定量の原料中にどれだけの水酸基があるかを示しているものである。
また、親水性膜が形成される基材となるフィルムとしては、限定されることなく、あらゆる種類の合成樹脂の板又はフィルムを用いることができる。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂等の透光性を有する樹脂が用いられる。ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)等も使用できる。このように、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ミラノール系樹脂等も用いることができる。そして、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)或いは低密度ポリエチレン(LDPE)等のようなポリエチレン、及びポリプロピレン等の熱可塑性樹脂も使用可能である。また、ポリエステル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、セルロース樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、塩化ビニル系樹脂、フッ素樹脂なども使用できる。
本発明の樹脂フィルとして、例えば、ポリエステルフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタラートフィルム(具体的には、テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム等)を挙げることができる。
更に、本発明のナノシリカガラス分散親水性防汚コーティング剤に用いられる粒径が1nmから100nmの範囲の親水性シリカは、例えば、シリコンウェハーや光ファイバーの副生成物を利用したヒュームドシリカやゾル−ゲル法にて合成された水溶性のナノシリカ、更にもみ殻から抽出したバイオシリカなど、比較的安価に入手することができ、また、圧力差によるせん断応力を利用した粉砕・分散技術等を使用することにより、安定した一次粒子の分散液を得ることができ、本発明の親水性コーティング剤は、安価で生産性良く、提供することができる。
親水性コーティング剤の調製工程を示すフローチャートである。 親水性膜が基材フィルムに形成される工程を示すフローチャートである。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明者は、前記した課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、粒径が1nmから100nmの範囲の親水性シリカ粒子と、 ウレタン樹脂と、 シロキサン静電防止剤と、 アクリル樹脂と、及び 有機溶剤と、を含むことを特徴とする樹脂フィルム用のナノシリカガラス分散親水性防汚コーティング剤を用いて、基材となるフィルムにコーティングすると、容易に、親水性膜付きのフィルムができることを見出した。特に、予め、基材となるフィルムに、アンカーコートを施すと、密着性が高くなり、より好ましい。
以下、本発明の親水性コーティング剤の各成分について詳しく説明する。
(親水性シリカ)
まず、本発明の粒径が1nmから100nmの範囲の親水性シリカは、例えば、ケイ素塩化物を気化し高温の水素炎中において気相反応によって得られたヒュームドシリカを、粉砕・再分散して粒径が1nmから100nmの範囲にした親水性非晶質シリカ、ゾル−ゲル法にて合成された水溶性のナノシリカ、更にもみ殻から抽出したバイオシリカなど好適に用いることができ、これらを単独で又は2種以上を、ビーズミルや圧力差によるせん断応力を利用した粉砕・分散技術を用いて、粉砕・再分散させることにより、安定したスラリーが得られる。
ヒュームドシリカとしては、特にシリコンウェハーや光ファイバーの副生成物として得られるヒュームドシリカが安価に、入手することができ、好ましい。
市販されているヒュームドシリカとしては、例えばアエロジル90、アエロジル130、アエロジル150、アエロジル200、アエロジル300及びアエロジル380(以上、商品名であり、日本アエロジル社製である。)、レオロシールQS−10、レオロシールQS−20、レオロシールQS−30及びレオロシールQS−40(以上、商品名であり、トクヤマ社製である。)等が挙げられる。
また、光ファイバーの基となるスート製造時にでるヒュームドシリカを、用いることもできる。
前記ゾル−ゲル法にて合成された水溶性のナノシリカとしては、スノーテックス−XS、スノーテックス−NXS、スノーテックス−OXS、スノーテックス−30、スノーテックス−N、スノーテックス−O、スノーテックス−50、スノーテックス−N−40、スノーテックス−O−40、スノーテックス−30L、スノーテックス−OL、スノーテックス−ZL、スノーテックス−OZL−35(以上、商品名であり、日産化学社製である。)等が挙げられる。
特に、平均粒径が4〜6nmのスノーテックス−XSや、これをイオン交換したスノーテックス−OXSが好適に用いられる。
前記バイオシリカは、米などのもみ殻に含まれる親水性シリカで、もみ殻を焼却したり、もみ殻から薬品で抽出して製造される。現在の主流としては、焼却法によるものであるが、焼却温度をコントロールすることにより、300nm以下のナノシリカを製造することができる。これらは、開発・研究中の商品であるため、今後、期待されるナノシリカである。
前記ヒュームドシリカやバイオシリカは、二次凝集しているため、ロールミル、ビーズミル、及び圧力差によるせん断応力を利用した粉砕・分散機で、一次粒子が、1nmから100nmの範囲、より好ましくは2nmから50nmの範囲にすることができる。
特に、圧力差によるせん断応力を利用した粉砕・分散機から得られた分散液(スラリー)は、再凝集しにくいという特徴がある。
前記親水性シリカの粒子径が、100nmを超えた場合、水の接触角が大きくなるおそれがあり、親水性の塗膜が得られ難いと考えられる。また、可視光域の光透過性も低下するおそれもある。一方、親水性シリカの粒子径が、1nm未満にする場合、生産性が低下するおそれがある。
前記親水性シリカの粒子径を、2nmから50nmの範囲にすることにより、水の接触角が小さくなり易く、ガラス板等に付着した油汚れを落とすことがより容易となると考えられる。
(有機溶媒)
有機溶媒は、親水性シリカ粒子が分散でき、更に後述する樹脂等を混合できるものであれば、特に種類は限られない。
本発明に用いられる有機溶剤は、前記シリカの溶剤として用いられ、以下の添加樹脂等の混合用の溶媒として、さらに本発明の親水性コーティング剤の印刷性向上のために、用いられる。
具体的には、トルエンをはじめとして、キシレン等のような芳香族炭化水素を用いることができる。
また、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール類やメトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノール(カルビトールとも言う)、ブトキシエトキシエタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、及びこれらの酢酸エステル類が用いられる。
更に、これらのアルコール及び/又はエーテル系溶剤は、親水性コーティング剤の不揮発分を下げ、薄膜化にも貢献し、本発明の親水性コーティング剤中に、40〜90部含有することが望ましい。
更にまた、本発明の親水性コーティング剤の保存安定性向上のため、凝集防止剤や沈降防止剤などの公知慣用の添加剤を配合することができる。
また、機能性向上のため、本発明の目的である透明性を低下させない範囲で、抗菌作用のある銀、過酸化銀や、白金、酸化チタンのナノ粒子を配合することができる。
(ウレタン樹脂)
ここで、添加されるウレタン樹脂は、親水性膜中に親水性シリカ粒子を分散された状態で固定するものであるならば、特に種類は限定されない。加水分解性を持たないエーテル系であることが好ましい。また、湿気硬化型かつ一液型ウレタン樹脂が好ましい。
(シロキサン静電防止剤)
ここで、シロキサン静電防止剤は、処理表面にガラス様物質のシリカ薄膜(Si−O−Si のシロキサン結合)を形成するものであれば、特に種類は限定されない。このシリカ薄膜のフィルム上の形成により、フィルムとシリカ粒子の密着性が向上する。一般には、RSiO−(RSiO)−SiRと表されるかもしれない。
(アクリル樹脂)
ここで、添加されるアクリル樹脂は、親水性膜中に親水性シリカ粒子を分散された状態で固定するものであり、又は、フィルムとの密着性をあげるものであるならば、特に種類は限定されない。上述したように水酸基価が重要である。
(親水性コーティング剤の調製)
図1に示すように、有機溶媒中に親水性シリカ粒子が分散されたものに、ウレタン樹脂、シロキサン静電防止剤、アクリル樹脂を添加混合し(S10)、ナノシリカガラス分散親水性防汚コーティング剤(以下、「親水性コーティング剤」)を準備した。ここで、シロキサン静電防止剤は、硬化剤として機能してよい。このように混合された、ウレタン樹脂、シロキサン静電防止剤、アクリル樹脂は、得られた親水性コーティング剤に混合した状態であっても、基材表面へのアンカーコートとして機能すると考えられる。即ち、アンカーコートを事前に塗布し形成させてもよいが、このように1回の塗布で、アンカーコート及び親水性コーティング膜を同時に適用することができる。
(フィルムの準備)
本発明のフィルムは、適用分野において、有用な材料であれば、特に限定されない。特に、PETのようなポリエステルは、用途が広く好ましい。また、ポリカーボネートのようなアクリル樹脂も好ましい。
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10nm〜150μmの範囲で適宜選択されてもよい。
プラスチックフィルム上に成膜した後、さらに、膜の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、膜の表面に剥離可能なカバーフィルム(保護フィルム)を積層することができる。
このようにして、基材となるフィルムを準備する(図2、S100)。
(アンカーコートの作成)
任意選択で、アンカーコートを基材となるフィルムに作成することができる(図2、S110及びS120)。このようなアンカーコートを付けると、その上に塗布する親水性膜の密着性が向上し、好ましい。具体的には、アンカーコートとしては、加水分解性を持たないエーテル系であり、湿気硬化型かつ一液型ウレタン樹脂と表面水酸基を有するシロキサン静電防止剤とカルボキシル基を有するアクリル樹脂の混合物から構成されるコート剤、及び、それにより構成される被膜又は処理表面が好ましい。
(親水性膜のコーティング)
上述のように得られた親水性コーティング剤は、前記有機溶媒で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で基材上に均一な厚さに塗布し(図2、S130)、90℃以上で、2〜30分間乾燥して膜を得ることができる(図2、S140)。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10nmから500nm、好ましくは20nmから100nmの範囲で適宜選択される。
ここで、図2の右側フローでは、アンカーコートの形成を、親水性膜の形成に先立って行う塗布方法を述べたが、実際の方法においては、これらの工程を同時に行うことができる(図2、左側のS110−130)。例えば、親水性コーティング剤の中に、予め、アンカーコートとなるに好ましい材料を混合する(例えば、加水分解性を持たないエーテル系であり、湿気硬化型かつ一液型ウレタン樹脂と表面水酸基を有するシロキサン静電防止剤とカルボキシル基を有するアクリル樹脂の混合物(図1はそのような例を示す。))。このようにすれば、実際にはこの混合された親水性コーティング剤を塗布するだけで、アンカーコートも同時に形成することができ、生産性が高くなる。
このように、90℃以上で熱乾燥することにより、前記非プロトン性カチオン樹脂(II)が、ホフマン分解し、水に不溶な塗膜が得られ、さらに樹脂中の不対電子対がナノシリカと配位結合することにより、塗膜硬度、耐摩耗性に優れた強固な塗膜が得られると推測される。
熱乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法や、ノズルより支持体に吹き付ける方式)などを用いて行うことができる。
さらに必要に応じて、過剰に塗布された親水性コーティング剤を除去するため、仮乾燥(80℃以下)後、水で洗浄することもできる。
以下、実施例等を示して本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
(親水性コーティング剤の準備)
オルガノシリカMEK−ST(日産化学工業株式会社製)のSiO相当量、ウレタン樹脂AD333E(東洋インキ工業株式会社製)の樹脂相当量、シロキサン静電防止剤コルコートN−103X(コルコート株式会社製)の不揮発成分相当量、アクリル樹脂アラキード9103(荒川化学工業株式会社製)の樹脂相当分を表1に示した重量比で混合し、必要に応じて、トルエンを添加し、親水性コーティング剤を準備した。
(基材となるフィルムの準備及び親水性膜の形成)
基材となるポリエステルフィルム(東レ株式会社社製、ルミラーS10)を準備した。フィルムの厚みは、75μmであり、そこから、5cm四方に切り出し、基材としてた。基材は、洗浄液イソプロピルアルコールに浸漬して、洗浄し、80℃で温風乾燥を行った。上述のようにして得られたナノシリカガラス分散親水性防汚コーティング溶液をKハンドコーターNo.3(松尾産業株式会社)で、この洗浄済のポリエステルフィルム上に成膜した。
(接触角の測定)
上記手法で得られた親水性防汚コート膜付きポリエステルフィルムを、協和界面科学社製接触角度径(DMs−401)を用いて、水との接触角度を測定した。また、コーティングしていないポリエステルフィルムの接触角度は65.5度であった。
(鉛筆硬度の測定)
上記手法で得られた親水性防汚コート膜付きポリエステルフィルムを、JIS KS5400の試験方法に基づいて、鉛筆硬度を測定した。
(可視光透過性の測定)
上記手法で得られた親水性防汚コート膜付きポリエステルフィルムを、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計(V650)を用いて、波長400〜800nmにおける可視光線透過率を測定した。
(密着性の評価)
上記手法で得られた親水性防汚コート膜付きポリエステルフィルムを、JIS D0202−1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を用い、指の腹でフィルムに密着させた後剥離した。判定は、剥離が全くない状態を○、一部剥離した状態を△、剥離したものを×と評価した。
以上の測定結果を表1にまとめる。
Figure 2018119067
オルガノシリカIPA−ST(日産化学工業株式会社製)の不揮発成分相当量、ウレタン樹脂AD333E(東洋インキ工業株式会社製)の樹脂相当量、シロキサン静電防止剤コルコートN−103X(コルコート株式会社製。常温乾燥型(溶媒:2−プロパノール(IPA)、1−ブタノール)。)の不揮発成分相当量、アクリル樹脂アラキード9103(荒川化学工業株式会社製)の樹脂相当分を表2に示した重量比で混合し、必要に応じて、トルエンを添加し、親水性コーティング剤を準備した。
(基材となるフィルムの準備及び親水性膜の形成)
実施例1で使用したものと同様なポリエステルフィルムに、上述のようにして得られたナノシリカガラス分散親水性防汚コーティング溶液をKハンドコーターNo.3(松尾産業株式会社)で、成膜した。得られた膜付きフィルムにつき、実施例1と同様に評価し、その結果を表2にまとめる。
Figure 2018119067
表1及び2にまとめるように、実験番号1から3及び6から8では、ウレタン樹脂、シロキサン静電防止剤、又は、アクリル樹脂のいずれかが、欠けていたので、密着性が悪く、親水性膜付フィルムを構成することができなかった。しかしながら、実験4、5、9、10では、これらの3つの成分が入っており、硬度、密着性、及び透過率では、十分な性能が得られた。一方、接触角では、実験4及び5では、13.6度及び14.4度であり、実験9及び10では、31.8度及び31.4度であった。これは、オルガノシリカが、親水性の溶媒に分散したシリカゾルであり、樹脂成分であるウレタン樹脂及び/又はアクリル樹脂がシリカ全体を覆ってしまうからであると推定される。このため、密着性は極めて良好であった。しかし、実験例4及び5では、若干密着性が劣るものの、接触角は15度以下と親水性が高かった。これらは、疎水性溶媒に分散したシリカゾルを使用しており、シリカが樹脂から出て多く表面に露出するからと考えられる。たがって、周囲を覆う樹脂成分が少なくなってしまって密着性が低下しまうと考えられる。
尚、ここで、実験番号1、2、4〜7、9、10において、オルガノシリカに対するシロキサン静電防止剤の重量比は1であるが、1/10から10の範囲内であってもよい。また、実験番号1から10において、オルガノシリカに対するアクリル樹脂の重量比は、それぞれ、0、0.02、0.02、0.02、0.12、0、0.04、0.04、0.04、0.12であるが、アクリル樹脂の効果が発揮できる技術的に可能な最低限の量以上であることが好ましく、例えば、0.0001以上とすることもできる。また、多くなりすぎると、親水性が低下する恐れがあるので、1以下とすることもできる。また、実験番号1から10において、オルガノシリカに対するウレタン樹脂の重量比は、それぞれ、0.02、0、0.02、0.02、0.06、0.02、0、0.02、0.02、0.06であるが、ウレタン樹脂の効果が発揮できる技術的に可能な最低限の量以上であることが好ましく、例えば、0.0001以上とすることもできる。また、多くなりすぎると、親水性が低下する恐れがあるので、1以下とすることもできる。
本発明の親水性コーティング剤は、低コストで、フィルムの防汚効果やくもり防止効果があり、大量生産が可能であるために、建物のバルコニーやサンルーフ、並びに、自動車等の窓ガラスなどのマーキング用フィルム等に適用することで、美観の維持につなげられる。

Claims (8)

  1. 粒径が1nmから100nmの範囲の親水性シリカ粒子と、
    ウレタン樹脂と、
    シロキサン静電防止剤と、
    アクリル樹脂と、及び
    有機溶剤と、
    を含むことを特徴とする樹脂フィルム用親水性コーティング剤。
  2. 前記シリカ粒子の粒径が、10nmから15nmであることを特徴とする請求項1に記載の親水性コーティング剤。
  3. 前記ウレタン樹脂が、加水分解性を持たないエーテル系であり、湿気硬化型かつ一液型であることを特徴とする請求項1又は2に記載の親水性コーティング剤。
  4. 前記シロキサン静電防止剤が、硬化後に水酸基が表面に形成されるであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の親水性コーティング剤。
  5. 前記アクリル樹脂が水酸基価が40以上になるようにカルボキシル基を有していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の親水性コーティング剤。
  6. 樹脂フィルムと、
    その上に、粒径が1nmから100nmの範囲の親水性シリカ粒子、ウレタン樹脂、シロキサン静電防止剤、及びアクリル樹脂からなる親水性膜とを含む、
    親水性樹脂フィルム。
  7. 前記フィルムと、前記親水性膜との間に、アンカーコートを備える、請求項6に記載の親水性樹脂フィルム。
  8. 前記アンカーコートは、加水分解性を持たないエーテル系であり、湿気硬化型かつ一液型ウレタン樹脂と表面水酸基を有するシロキサン静電防止剤とカルボキシル基を有するアクリル樹脂の混合物からなることを特徴とする請求項7に記載の親水性樹脂フィルム。
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