以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態に用いるパネルの要部を示す分解斜視図である。パネル10は、ガラス製の前面基板21と背面基板31とを対向配置して、その間に放電空間を形成するように構成されている。前面基板21上には表示電極対28を構成する走査電極22と維持電極23とが互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極22および維持電極23を覆うように誘電体層24が形成され、誘電体層24上には保護層25が形成されている。また、背面基板31上には複数のデータ電極32が形成され、そのデータ電極32を覆うように誘電体層33が形成されている。誘電体層33上には井桁状の隔壁34が設けられている。また、誘電体層33の表面および隔壁34の側面に蛍光体層35が設けられている。そして、走査電極22および維持電極23とデータ電極32とが交差する方向に前面基板21と背面基板31とを対向配置しており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
図2は本発明の実施の形態におけるパネル10の電極配列図である。行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCiおよび維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形について説明する。本実施の形態においては、1フィールドを10のサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第10SF)に分割し、各サブフィールドはそれぞれ(1、2、3、6、11、18、30、44、60、80)の輝度重みをもつものとして説明する。ここで、輝度重みの小さいサブフィールドを下位のサブフィールド、輝度重みの大きいサブフィールドを上位のサブフィールドと呼ぶ。このように本実施の形態においては、後に配置されたサブフィールドほど輝度重みの大きい上位のサブフィールドとなるように設定されている。ただし、本発明はサブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではない。
図3は本発明の実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形を示す図である。
初期化期間では、まずその前半部において、データ電極D1〜Dmおよび維持電極SU1〜SUnを0(V)に保持し、走査電極SC1〜SCnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi1から放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn、維持電極SU1〜SUnおよびデータ電極D1〜Dm上に壁電圧が蓄積される。ここで、電極上の壁電圧とは電極を覆う誘電体層上や蛍光体層上等に蓄積した壁電荷により生じる電圧を指す。
続いて初期化期間の後半部において、維持電極SU1〜SUnを電圧Ve1に保ち、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3から電圧Vi4に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて再び微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn、維持電極SU1〜SUnおよびデータ電極D1〜Dm上の壁電圧が書込み動作に適した値に調整される。
なお、1フィールドを構成するサブフィールドのうちいくつかのサブフィールドでは初期化期間の前半部を省略してもよく、その場合には、直前のサブフィールドで維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化動作が行われる。図3には、第1SFの初期化期間では前半部および後半部を有する初期化動作、第2SF以降のサブフィールドの初期化期間では後半部のみを有する初期化動作を行う駆動波形を示した。
書込み期間では、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve2を印加する。そしてデータ電極D1〜Dmのうち1行目に発光すべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に書込みパルス電圧Vdを印加するとともに、1行目の走査電極SC1に走査パルス電圧Vaを印加する。すると、データ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間に書込み放電が起こり、この放電セルの走査電極SC1上に正の壁電圧、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積される。このようにして、1行目に発光すべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極Dh(h≠k)と走査電極SC1との交差部では書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
なお、上記のように各データ電極D1〜Dmを駆動しているのは後述するデータ電極駆動回路であるが、データ電極駆動回路から見ると各データ電極Djは容量性の負荷である。したがって書込み期間において、各データ電極に印加する電圧を接地電位0(V)から書込みパルス電圧Vdへ、あるいは書込みパルス電圧Vdから接地電位0(V)へ変化させる毎にこの容量を充放電しなければならない。そしてその充放電の回数が多いとデータ電極駆動回路の消費電力も多くなる。
続く維持期間では、維持電極SU1〜SUnを0(V)に戻し、走査電極SC1〜SCnに維持パルス電圧Vsを印加する。このとき書込み放電を起こした放電セルにおいては、走査電極SCi上と維持電極SUi上との間の電圧は維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧の大きさが加算されたものとなり放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり発光する。このとき走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。続いて走査電極SC1〜SCnを0(V)に戻し、維持電極SU1〜SUnに維持パルス電圧Vsを印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との間の電圧が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに、輝度重みに比例した数の維持パルスを印加することにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルでは維持放電が継続して行われる。なお、書込み期間において書込み放電を起こさなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保持される。こうして維持期間における維持動作が終了する。
続く第2SF〜第10SFにおいても、初期化期間および書込み期間は第1SFと同様であり、維持期間は維持パルス数を除いて第1SFの維持期間と同様の維持動作を行う。このようにして、放電セルのそれぞれをサブフィールド毎に発光または非発光となるように制御して、各サブフィールドの輝度重みを組み合わせて画像表示を行っている。
図4は本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置1の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路51、データ電極駆動回路52、走査電極駆動回路53、維持電極駆動回路54、タイミング発生回路55、データ電極用電源57、電力検出回路58、書込み制御回路59、電力予測回路61、画像変換回路62を備えている。
タイミング発生回路55は水平同期信号H、垂直同期信号Vを基にして各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。走査電極駆動回路53はタイミング信号に基づいて図3に示した駆動電圧波形を各走査電極SC1〜SCnにそれぞれ印加し、維持電極駆動回路54はタイミング信号に基づいて図3に示した駆動電圧波形を維持電極SU1〜SUnに印加する。
画像信号処理回路51は、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の放電セルの発光または非発光を示す画像データに変換する。電力予測回路61は、画像信号処理回路51から出力されたサブフィールド毎の画像データに基づきデータ電極駆動回路52の消費電力を予測する。画像変換回路62は、電力予測回路61の予測値に基づき、サブフィールド毎の画像データをデータ電極駆動回路52の消費電力の小さい画像データに変換する。データ電極駆動回路52はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し各データ電極D1〜Dmを駆動する。
データ電極用電源57はデータ電極駆動回路52に必要な電力を供給する電源である。電力検出回路58はデータ電極用電源57の供給電力を検出する。書込み制御回路59は電力検出回路58の出力に基づき、サブフィールド毎のデータ電極駆動回路52の書込み動作を制御する。
ここで、電力検出回路58と書込み制御回路59とデータ電極駆動回路52とは、データ電極駆動回路52の電力を削減するフィードバック型の制御手段を構成している。すなわち、電力検出回路58がデータ電極用電源57の供給電力を検出し、検出した電力が電力しきい値を超えたとき、データ電極駆動回路52の書込み動作を輝度重みの小さい下位のサブフィールドから順に停止させる。この制御手段を以下、「第1の電力削減手段」と略記する。
また、電力予測回路61と画像変換回路62とはデータ電極駆動回路52の電力を削減するフィードフォワード型の制御手段を構成している。すなわち、電力予測回路61が画像データに基づきデータ電極駆動回路52の電力を予測し、予測値が予測しきい値を超えたとき、画像変換回路62は画像データをデータ電極駆動回路52の消費電力の小さい画像データに変換する。この制御手段を以下、「第2の電力削減手段」と略記する。
このように本実施の形態においては、データ電極駆動回路52の消費電力を削減する2つの制御手段、すなわち第1の電力削減手段および第2の電力削減手段を備えている。
2つの制御手段について説明する前に、まず、画像信号処理回路51が、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する動作について説明する。説明を簡単にするために、赤、緑、青の画像信号を区別せずに単に画像信号と称し、画像信号は最小値が「0」、最大値が「255」のデジタル信号であると仮定する。図5は本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の画像信号とサブフィールド毎の画像データとの関係を示す図である。このように、入力した画像信号に対してどのサブフィールドで放電セルを発光させるかを示す関係を以下「コーディング」と略記する。図5において、最も左の列に示した数値は画像信号の値を示し、その右側には対応する輝度を表示する際に各サブフィールドで放電セルを発光させるか否かを示しており、「0」は非発光、「1」は発光を示している。例えば画像信号「1」が入力された場合には、輝度重み1をもつ第1SFのみで放電セルを発光させて「1」の輝度を表示し、画像信号「7」が入力された場合には、輝度重み1の第1SFと輝度重み6の第4SFで放電セルを発光させて「7」の輝度を表示する。また、画像信号「14」が入力された場合には、輝度重み1、2をもつ第1SF、第2SFおよび輝度重み11をもつ第5SFで放電セルを発光させて輝度「14」を表示する。なお、輝度「3」を表示する場合には、第1SFおよび第2SFで放電セルを発光させる方法と、第3SFのみ発光させる方法とがあるが、このように複数のコーディングが可能である場合には、できるだけ輝度重みの小さいサブフィールドで点灯させるコーディングを選択する。すなわち、輝度「3」を表示する場合には第1SFおよび第2SFで放電セルを発光させる。なお、上述したような画像信号を画像データに変換する回路は、ROM等を用いたデータ変換テーブルを用いて実現することができる。
次に、第1の電力削減手段についてその詳細を説明する。まずデータ用電極電源57について説明する。図6は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置のデータ電極用電源57の回路図である。データ電極用電源57は、スイッチング電源で構成されたDC電源100と、安定化回路であるDC−DCコンバータ110とで構成されている。本実施の形態におけるDC−DCコンバータ110は、スイッチング素子112、ダイオード114、インダクタ116、平滑コンデンサ118、制御部200を備えた降圧チョッパ方式コンバータである。制御部200は、発振回路202、フリップフロップ204を有し、フリップフロップ204は発振回路202から出力されるクロックに基づきスイッチング素子をオン/オフ制御するための信号を発生する。また制御部200は、出力電圧検出部120の出力が一定になるようにスイッチング素子112の導通時間を制御するためのコンパレータ206を有している。さらに制御部200は、スイッチング素子112を流れる電流を検出する電流検出回路122の出力に基づき、この電流が所定の値を超えるとスイッチング素子112の導通時間を制限するためのコンパレータ208およびORゲート210を備えている。そしてこの電流制限はクロック周期毎に動作するいわゆるパルスバイパルス制御である。
そのため、消費電力が小さい間はデータ電極用電源57の出力電圧は一定であるが、消費電力が大きくなると上述した電流制限が動作し始め、負荷に流れる電流が増加するにつれて出力電圧が低下する特性を示す。
図7(a)は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置のデータ電極用電源57の供給電流と出力電圧との関係を示す図である。本実施の形態におけるデータ電極用電源57は、供給電流が2.2(A)までは出力電圧は72(V)でほぼ一定であるが、供給電流が2.2(A)を超えると電流の増加とともに電圧が僅かに低下するように設計されている。そして供給電流が3.5(A)を超えると電源の電力供給能力を超えて出力電圧が急激に低下する。
電力検出回路58は、データ電極用電源57の供給電力を検出する。電力検出回路58はデータ電極用電源57の供給電力そのものを検出して電力値を出力する構成としてもよいが、電圧値、電流値等、電力と相関のある値を検出する構成としてもよい。本実施の形態においては、出力電圧の低下を検出することで供給電力の増加を検出している。すなわち、データ電極用電源57の出力電圧を電圧しきい値と比較し、データ電極用電源57の出力電圧が電圧しきい値以上であるか、未満であるかを示す検出信号を出力する。図8は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の電力検出回路58の回路図である。電力検出回路58は、データ電極用電源57の出力電圧と第1電圧しきい値302とを比較するコンパレータ304、データ電極用電源57の出力電圧と第2電圧しきい値306とを比較するコンパレータ308とを備えている。第1電圧しきい値302は、例えば65(V)、第2電圧しきい値306は、例えば70(V)である。図7(b)は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置のデータ電極用電源57の供給電流と電力検出回路58の検出信号との関係を示す図である。このようにデータ電極用電源57の出力電圧が第2電圧しきい値306以下になると第2の検出信号は「H」となり、第1電圧しきい値302以下になると第1の検出信号も「H」となる。
書込み制御回路59は、電力検出回路58の検出信号に基づきデータ電極駆動回路52を制御する。本実施の形態においては、第1の検出信号が「L」から「H」に変化する毎に輝度重みの小さい下位のサブフィールドの書込み期間から順にデータ電極駆動回路52の書込み動作を停止するように制御し、第2の検出信号が「H」から「L」に変化する毎に、書込み動作を停止しているサブフィールドのうち輝度重みの大きいサブフィールドから順に動作停止を解除するように制御している。
例えば図5からわかるように、第1SFでの書込み動作を停止すると、画像信号「1」に対して、その輝度は「0」となり、輝度「1」が表示できなくなる。同様に輝度「4」、「7」、「10」、・・・等が表示できなくなる。しかし、第1SFで書込み動作を行わないのでその分の消費電力を減少させることができる。第1SFに加えて第2SFでの書込み動作を停止させると、上記輝度に加えて、輝度「2」、「5」、「8」、・・・等も表示できなくなる。このように書込み動作を行わないサブフィールドを増やすと表示できる輝度の数は減るが、書込み動作のための消費電力を減少させることができる。
なお、上述したような書込み動作の停止は、サブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データの対応するビットを「0」に固定することで実現してもよいが、本実施の形態においては、データ電極駆動回路52に用いられているデータドライバICのイネーブル端子を用いて制御している。
このように、第1の電力削減手段はデータ電極用電源57の電力を直接に検出し、その電力が大きくなりデータ電極用電源57の電力供給能力を上回りそうになったことを検出して、強制的にデータ電極駆動回路52の電力を削減するものである。したがって、データ電極用電源57の電力供給量にあまり余裕を持たせる必要がなく、供給電力を最小に抑えた電源設計が可能となる。しかし強制的にサブフィールドの書込み動作を停止させるので、画像によっては表示品質の低下が目立つ場合がある。
次に、第2の電力削減手段についてその詳細を説明する。電力予測回路61は、サブフィールド毎の画像データに基づきデータ電極駆動回路52の消費電力を予測する。上述したように、データ電極32はデータ電極駆動回路52から見ると容量性の負荷であるから、データ電極32に印加する電圧が頻繁に変化すると、データ電極32のもつ容量を充放電するための消費電力が大きくなる。例えば偶数番目の走査電極SCp(p=偶数)をもつ放電セルでは書込みパルスを印加し奇数番目の走査電極SC(p+1)をもつ放電セルでは書込みパルスを印加しない場合には、対応するデータ電極Djには電圧Vdと0(V)とを交互に印加することとなり消費電力が大きくなってしまう。加えて両隣のデータ電極D(j−1)、D(j+1)が逆位相で電圧Vdと0(V)とを交互に印加する場合にはさらに消費電力が大きくなる。逆に、すべての放電セルに書込みパルスを印加しない場合には消費電力は最小となり、またすべての放電セルに書込みパルスを印加する場合も消費電力は小さい。通常の画像表示ではデータ電極駆動回路52の消費電力は画像信号に応じて変動している。そしてデータ電極に印加する電圧の変化の回数が多いとデータ電極駆動回路52の消費電力も多くなる。したがって、各データ電極に対して電圧の変化の回数を合計し、さらに各サブフィールドについてその総和を計算すると、データ電極駆動回路52の消費電力と相関の高い値が得られる。
本発明においては以下のようにしてデータ電極駆動回路52の消費電力を予測している。まず注目画素の画像データとその上下左右の画素の画像データとを比較する。そして上下の画素の画像データが注目画素の画像データと異なる場合にはそれぞれ予測値2を加算する。また、左右の画素の画像データが注目画素の画像データと異なる場合にはそれぞれ予測値1を加算する。図9は本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の電力予測回路61の動作を説明するための図である。図9(a)の例では、注目画素の上の画素の画像データが注目画素の画像データと異なるので予測値「2」、さらに注目画素の左の画素の画像データが注目画素の画像データと異なるので予測値「1」となり、この注目画素の予測値の合計は「3」となる。また、図9(b)に示した例では、注目画素に隣接する上下左右のすべての画素の画像データが注目画素の画像データと異なるので予測値は、「2」+「2」+「1」+「1」=「6」となる。このようにしてサブフィールド毎に全画素の予測値を求めてそれを合計し、さらにそのサブフィールド毎の予測値を1フィールド分合計する。こうして求めた値を電力予測値としてもよいが、本実施の形態においては、この値を時間的に平均化するために、1フィールド分の合計をさらに複数フィールド分累積加算したものを電力予測値として用いている。そのため電力予測回路61の応答速度は電力検出回路58の応答速度よりも遅い。
画像変換回路62は、電力予測値が所定の予測しきい値を超えた場合に、画像データをデータ電極駆動回路52の消費電力が小さくなる画像データに変換する。図10は本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の画像変換回路62の構成を示す回路ブロック図である。画像変換回路62は、加算回路621、遅延回路622、623、比較回路624、下位サブフィールドデータ変換回路(以下、「下位SF変換回路」と略記する)625を有する。
加算回路621は、下位SF変換回路625から出力される誤差データを画像データに加算する。遅延回路622は画像データを1H(1水平走査期間)の時間だけ遅延して1H遅れた画像データを出力する。遅延回路623は1H遅れた画像データをさらに1Hの時間だけ遅延して2H遅れた画像データを出力する。
下位SF変換回路625は、2H遅れた画像データを1H遅れた画像データと比較し、2H遅れた画像データが1H遅れた画像データよりも所定のしきい値以上大きいとき、2H遅れた画像データの下位サブフィールドのデータを1H遅れた画像データの下位サブフィールドのデータに置き換える。このとき、置き換える前の画像データと置き換えた後の画像データとの差を誤差データとして加算回路621に出力する。また、データを置き換える下位サブフィールドの数は比較回路624の出力に依存して制御する。
比較回路624は電力予測値を複数の予測しきい値と比較して、下位SF変換回路625で画像データの置き換えを行う下位サブフィールドの数を決定する。例えば電力予測値が最も小さい予測しきい値未満の場合には画像データの置き換えは行わない。電力予測値が最も小さい予測しきい値以上の場合にはデータの置き換えを行う下位サブフィールドの数は「1」、すなわち第1SFで置き換えを行う。また電力予測値が、最も小さい予測しきい値の次に小さい予測しきい値以上の場合にはデータの置き換えを行う下位サブフィールドの数は「2」、すなわち第1SFおよび第2SFで置き換えを行う。以下、電力予測値が大きくなるにつれてデータの置き換えを行う下位サブフィールドの数を増やしてゆく。
図11および図12は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の画像変換回路62の動作を説明するための模式図であり、画像信号sigの一例を示している。図11(a)の数値は各画素の輝度を示しており、輝度が「2」と「10」との市松模様のパターンを含む画像である。このとき図5に示したコーディング表を参照すると、第1SFに対する画像データは図11(b)、第2SFに対する画像データは図11(c)、第3SFに対する画像データは図11(d)、第4SFに対する画像データは図11(e)となることがわかる。すると、第1SF〜第4SFの書込みパターンも市松模様となり、このまま書込み動作を行うとデータ電極駆動回路52の消費電力が大きくなってしまう。しかし本実施の形態においては、画像変換回路62が、画像データをデータ電極駆動回路52の消費電力が小さくなる画像データに変換する。動作の説明のために、図11に示した画素を上から1行目、2行目、・・・と呼び、左から1列目、2列目、・・・と呼ぶ。またデータの置き換えを行う下位サブフィールドの数が2であると仮定しておく。以下に1列目の動作について説明する。
まず、下位SF変換回路625は、1行目の画像データ「2」を2行目の画像データ「10」と比較する。すると1行目の画像データのほうが小さいので1行目の画像データ「2」をそのまま出力する。次に、2行目の画像データ「10」を3行目の画像データ「2」と比較する。すると3行目の画像データのほうが小さいので2行目の画像データ「10」の第1SFと第2SFのデータのそれぞれを3行目の画像データ「2」の第1SFと第2SFのデータのそれぞれに置き換える。その結果、2行目の画像データ「10」は「11」に置き換わる。この置き換えにより誤差「−1」が発生するが、この誤差は加算回路621によって4行目の画像データ「10」に加算される。すなわち4行目の画像データは「9」になる。次に下位SF変換回路625は、3行目の画像データ「2」を4行目の画像データ「9」と比較する。すると3行目の画像データのほうが小さいので3行目の画像データ「2」をそのまま出力する。次に、4行目の画像データ「9」を5行目の画像データ「2」と比較する。すると5行目の画像データのほうが小さいので4行目の画像データ「9」の第1SFと第2SFのデータのそれぞれを3行目の画像データ「2」の第1SFと第2SFのデータのそれぞれに置き換える。その結果、2行目の画像データ「9」は「8」に置き換わる。この置き換えにより誤差「−1」が発生するが、この誤差は加算回路621によって6行目の画像データに加算される。
このような動作をすべての画素に対して行うことにより、画像変換回路62は、図11(a)に示した画像データを図12(a)に示した画像データに変換する。そして第1SF、第2SF、第3SF、第4SFに対する画像データはそれぞれ図12(b)、図12(c)、図12(d)、図12(e)となり、データ電極駆動回路52の消費電力の小さい画像データに変換されたことがわかる。
加えて画像変換回路62は、変換に伴う誤差を下側の行の画像データに加算するので、変換した領域での輝度の平均値を保つことができる。また上述の説明では、下位SF変換回路625は、1H遅れた画像データと2H遅れた画像データとの差にかかわらず下位サブフィールドのデータの置き換えを行うものとして説明した。しかし、1H遅れた画像データと2H遅れた画像データとの差が大きい領域でのみデータの置き換えを行うようにすると、このような領域ではデータの置き換えが視覚的に認識されにくいので、画像表示品質を大きく損なうことがない。
比較回路624は、本実施の形態においては8つの予測しきい値をもち、第1の予測しきい値を超えると上述した下位サブフィールドの数として「1」出力し、第2の予測しきい値を超えると下位サブフィールドの数として「2」出力し、以下同様に、第nの予測しきい値を超えると下位サブフィールドの数として「n」出力する。
このように、第2の電力削減手段はデータ電極駆動回路52の消費電力を予測し、画像データを消費電力の小さい画像データに変換する。電力予測回路61により求められた電力予測値は実際の電力を正確に表すものではないが、比較的簡単な方法により、データ電極駆動回路52の電力を削減することができる。また、画像変換回路62は画像表示品質をできるだけ損なわないように画像データを変換する。
次に第1の電力削減手段および第2の電力削減手段の詳細な動作について説明する。図13および図14は本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の動作の一例を示す図であり、図13はデータ電極駆動回路52の消費電力がゆっくりと変化した場合のデータ電極用電源57の供給電力および出力電圧の変化の一例を示す図である。画像信号sigが変化して電力予測回路61の予測値が増加して第1の予測しきい値を超えると、画像変換回路62は画像データの第1SFを置き換え、データ電極駆動回路52の消費電力が減少する(図13の時刻t11)。さらに画像信号sigが変化して電力予測回路61の予測値が増加して第2の予測しきい値を超えると、画像変換回路62は画像データの第1SFおよび第2SFを置き換え、データ電極駆動回路52の消費電力がさらに減少する(図13の時刻t12)。このようにデータ電極駆動回路52の消費電力がゆっくりと変化する場合には第2の電力削減手段が作動して、データ電極駆動回路52の消費電力を抑制する。しかし画像変換回路62の消費電力削減効果があまり大きくなく、データ電極駆動回路52の消費電力がさらに増加し、データ電極用電源57の出力電圧が第1電圧しきい値未満になったことを電力検出回路58が検出すると、書込み制御回路59はデータ電極駆動回路52の第1SFの書込み動作を停止させる(図13の時刻t13)。
第2の電力削減手段は第1の電力削減手段の動作に依存せずに動作するので、図13に示すように、さらに画像信号sigが変化して電力予測回路61の予測値が増加し第3の予測しきい値を超えると、画像変換回路62は画像データの第1SF、第2SFに加えて第3SFも置き換え、データ電極駆動回路52の消費電力が減少する(図13の時刻t14)。逆に、データ電極駆動回路52の消費電力が減少して、データ電極用電源57の出力電圧が第2電圧しきい値以上になったことを電力検出回路58が検出すると、書込み制御回路59はデータ電極駆動回路52の第1SFの書込み禁止を解除する(図13の時刻t15)。さらに、画像信号sigが変化して電力予測回路61の予測値が減少し第3の予測しきい値を下回ると、画像変換回路62は画像データの置き換えを第1SFおよび第2SFのみに戻す(図13の時刻t16)。
このようにデータ電極駆動回路52の消費電力がゆっくりと変化する場合には第2の電力削減手段が作動して、データ電極駆動回路52の消費電力を抑制する。そしてデータ電極用電源57の供給電力を超えてデータ電極駆動回路52の消費電力が増加するおそれのある場合には、第1の電力削減手段が作動して強制的に、データ電極駆動回路52の消費電力を低下させる。
一方、データ電極駆動回路52の消費電力が急に増加した場合には、図14に示すように、データ電極用電源57の出力電圧が第1電圧しきい値未満になったことを電力検出回路58が検出する。すると、書込み制御回路59はデータ電極駆動回路52の第1SFにおける書込み動作を停止させる。するとデータ電極駆動回路52の消費電力が減少するため、データ電極用電源57の出力電圧が上昇する。しかしデータ電極用電源57の出力電圧が第1電圧しきい値以上に戻らない場合には、書込み制御回路59は第1SFに加えて第2SFにおいても書込み動作を停止させる。このようにデータ電極用電源57の出力電圧が第1電圧しきい値未満になったことを電力検出回路58が検出すると第1の電力削減手段が動作して、速やかにデータ電極用電源57の出力電圧が第1電圧しきい値以上になるまで輝度重みの小さいサブフィールドから順にデータ電極駆動回路52の書込み動作を停止させる(図14の時刻t21)。
その後、第1の電力削減手段の動作とは独立に、少し遅れて第2の電力削減手段が動作を始める。すなわち、電力予測回路61の予測値が第1の予測しきい値を超え、画像変換回路62は画像データの第1SFを置き換えてデータ電極駆動回路52の消費電力が減少する(図14の時刻t22)。このときデータ電極用電源57の出力電圧が第2電圧しきい値以上になったとすると、書込み制御回路59はデータ電極駆動回路52の第2SFの書込み禁止を解除する(図14の時刻t23)。
電力予測回路61は第1の電力削減手段の動作と関係なく動作し、予測値が第2の予測しきい値を超える。すると画像変換回路62は画像データの第1SFおよび第2SFを置き換え、データ電極駆動回路の消費電力が減少する(図14の時刻t24)。このときデータ電極用電源57の出力電圧が第2電圧しきい値以上になったとすると、書込み制御回路59はデータ電極駆動回路52の第1SFの書込み禁止も解除する(図14の時刻t25)。
さらに電力予測回路61の予測値は画像信号sigに対応する値まで増加し、第3の予測しきい値を超えると、画像変換回路62は画像データの第1SF、第2SFおよび第3SFを置き換え、データ電極駆動回路52の消費電力が減少する(図14の時刻t26)。
本実施の形態における電力検出回路58の検出応答速度は電力予測回路61の予測応答速度より早いので、このようにデータ電極駆動回路52の消費電力が急激に増加した場合には、まず第1の電力削減手段が速やかに作動し、データ電極用電源57の出力電圧が第1電圧しきい値以上になるまで輝度重みの小さいサブフィールドから順にデータ電極駆動回路52の書込み動作を停止させる。そして、第2の電力削減手段が作動して画像信号処理回路51がデータ電極駆動回路52の消費電力の小さい画像信号に変換する。それとともに、第1の電力削減手段はデータ電極駆動回路52の書込み動作を再開するように動作する。
このように本実施の形態においては、第1の電力削減手段および第2の電力削減手段を用いてデータ電極駆動回路52の消費電力を抑制することにより、画像表示品質を大きく損なうことなく、データ電極用電源57の電力供給量を抑えた設計を可能としている。
なお、本実施の形態においては、フィードバック型の制御である第1の電力削減手段を安定して動作させるために、電力検出回路58に2つの電圧しきい値を用いてヒステリシス特性を持たせた。しかし本発明はこれに限定するものではない。例えば、電力検出回路58が1つの電圧しきい値しか持たない構成であっても、2つの電力削減手段の動作を関連付けることにより、安定した電力削減を行うことが可能である。
図15はこのような本発明の他の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の動作の一例を示す図である。電力検出回路58はデータ電極用電源57の出力電圧と電圧しきい値とを比較し出力電圧が電圧しきい値よりも低くなったときには、書込み制御回路59はデータ電極駆動回路52の書込み動作を停止させるサブフィールドの数を増加させる。するとデータ電極駆動回路52の消費電力が減少してデータ電極用電源57の出力電圧が上昇するが、このときの電圧が電圧しきい値よりも高くなると書込み制御回路59は書込み動作を停止させるサブフィールドの数を減少させる。すると再びデータ電極駆動回路52の消費電力が増加してデータ電極用電源57の出力電圧が電圧しきい値よりも低くなり、書込み制御回路59はデータ電極駆動回路52の書込み動作を停止させるサブフィールドの数を増加させる。図15に示したように、データ電極駆動回路52の書込み動作を停止させるサブフィールドの数が増減を繰り返した場合には、書込み制御回路59は、一旦、書込み動作を停止させるサブフィールドの数を減少させないように制御する。そして、データ電極用電源57の出力電圧が電圧しきい値よりも高く、かつ、電力予測回路61の予測値が所定の値以上減少した場合に書込み動作を停止させるサブフィールドの数を減少させることにより、電力削減手段を安定して動作させることができる。
データ電極駆動回路52の書込み動作を停止させるサブフィールドの数の増減は、専用の回路を設けなくともマイコン等を用いて電力検出回路58の出力を監視することで可能である。そしてその結果および電力予測回路61の出力を書込み制御回路59へ供給することにより、上述の制御が可能となる。
なお、本実施の形態においては、データ電極用電源がパルスバイパルス制御を行うDC−DCコンバータであるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。また供給電力の増加に伴い出力電圧が低下する特性をもつ電源であれば、電圧を検出することにより供給電力を知ることができる。
また、本実施の形態において用いた具体的な各数値は、単に一例を挙げたに過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。