JP5059264B2 - ボタン穴かがり縫いミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボタン穴かがり縫いミシンに関し、特に下糸のボタン穴縫製可能個数に関するカウンタの制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
被縫製物に対してボタン穴を形成するとともに、その周囲にかがり縫いを施すボタン穴かがり縫いミシンが知られている。ボタン穴かがり縫いミシンでは、布押え等によって保持した被縫製物を布送り機構により所定の方向に送りながら、ミシン針に通された上糸と釜装置内のボビンに巻かれた下糸とを絡めて、縫い目を形成するようになっている。ボタン穴は、穴かがり縫い目の縫製に前後して、上側のメスを下側のメス受けに向かって下降させることで、被縫製物を切開して形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、下糸はボビンに巻いて縫製に供するため、上糸に比べて長さが限られ、縫製動作中に下糸がなくなりやすい。ボタン穴の縫製動作中に下糸がなくなり、メスでボタン穴が開口されると、ボタン穴のかがり縫いが不良になる。
このため、従来、1ボビンに満杯に巻いた下糸で縫えるボタン穴の個数を初期値としてカウンタに設定して、ボタン穴を1個縫製するたびに初期値から個数を減算して、ボタン穴をあと何個縫えるかをダウンカウントすることにより、縫製動作中に下糸がなくなるのを防止していた。
【0004】
しかしながら、被縫製物の変更によってボタン穴かがりのパターンを変更するときは、生地の種類に合わせ糸の色、種類等が変わり、上糸、下糸を組みで変えることがある。またボタン穴サイズの変更によってパターンを変更する度に、作業者が下糸のダウンカウンタの初期値を設定し直す面倒があった。
【0005】
本発明の課題は、ボタン穴かがり縫いミシンにおいて、被縫製物の変更があっても、作業者が下糸のダウンカウンタ等の初期値を設定し直さずに済み、下糸がなくなったことによる縫製不良を生じることなく、ボタン穴を縫製可能とすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、たとえば図1〜図3、図5、図6に示されるように、
布押え15で押えられた布に対して、縫い針9に挿通した上糸と釜12内ボビンに巻いた下糸とにより、複数のボタン穴かがりパターンから選択したパターンにしたがってボタン穴周囲のかがり縫いの縫い目を形成するとともに、布切りメス16により布を切断してボタン穴を形成するボタン穴かがり縫いミシン1において、
前記ボビン142に残存した下糸が所定残量となったことを検知する残量検知手段(残量センサ140)と組み合わせて構成され、前記所定残量の下糸で縫製できるボタン穴個数が初期値として設定されて、前記残量検知手段が、ボビンに残存した下糸が所定残量になったことを検出した後、ボタン穴を1個縫製するたびに初期値から個数を減算する残量検知カウンタを備え、
前記ボタン穴かがりパターンを変更したときに、前記カウンタの初期値を自動的に初期化するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ボビンに残存した所定残量の下糸で縫製できるボタン穴個数である残量検知カウンタの初期値を、下糸が所定残量になったことを検出してから減算することにより、パターンごとに持つように一度設定すれば、それ以降はパターンが変更されても、その変更の都度、作業者が下糸残量検知カウンタの初期値を設定し直す必要がない。したがって、下糸残量検知カウンタによっても、下糸の糸切れによる縫製不良を生じることなく、ボタン穴を縫製することができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、ボタン穴かがりパターンを変更したときに、カウンタの初期値を自動的に初期化するようにしたので、作業者がカウンタを初期化しないでも、パターンの変更により初期値が初期化される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の一例としてのボタン穴かがり縫いミシン1は、図1および図2に示すように、ベッド部2と縦胴部3とアーム部4とからなる。該ミシン1は、昇降動作と左右への針振り動作を行うミシン針(縫い針)9、布(被縫製物)を押える布押え15、その下側で布を保持すると共に布送り方向(Y方向)に前後動する布送り板14、布押え15の上側で上糸を切断する上糸切断装置80、針板の下で下糸を切断する下糸切り切断装置、布を切断してボタン穴を形成する布切りメス16、各設定データ等の入力を行う入力手段としての操作パネル100(図5)、下糸のダウンカウンタ部105(図5)、下糸残量検知手段140(図6)を有する下糸の残量検知カウンタ、並びに、該ボタン穴かがり縫いミシン1を制御する制御回路110(図4)等を備えてなる。
【0014】
布押え15および布送り板14は、両者で布を挟んで保持すると共に、Y送り駆動手段13により駆動されて、前後方向(Y方向)に布を送るようになっている。図2に示すように、布押え15は、布送り部材23に連結された連結アーム24に固定される一方、布送り板14は布送り部材23に直接連結されている。この布送り部材23は、ラック22aを有する送り軸22に固定されており、Y送りパルスモータ20が回転するとピニオン20aを介して駆動されて、布押え15と布送り板14とを前後動させる。すなわち、Y送りパルスモータ20、送り軸22、布送り部材23、連結アーム24によりY送り駆動手段13が構成される。
【0015】
布押え15は、押え上げソレノイド127(図4)に連結されており、該ソレノイド127がONになると上側を向き布地を開放する状態になり、ソレノイド127がOFFになると下側を向き布地を狭持するようになっている。ソレノイドで駆動される布押え15の構成については周知であるので詳細は省略する。
【0016】
ミシン針9を昇降させる昇降機構は、図2と図3に示すように、上軸(主軸)6、ミシンモータ5、クランクカム7等から構成され、ミシンモータ5の回転駆動をクランクカム7により昇降運動に変換して針棒8に伝達することで、ミシン針9を昇降運動させる。上軸6は、傘車10a、10bを上下端に配した連結軸10を介して下軸11とリンクしており、該下軸11に連結された釜12と連動するようになっている。
【0017】
ミシン針9を左右に振る針振り機構は、ある基線を原点として所定の振り幅でミシン針9を振る主針振り機構と、この針振り幅を変更する振り幅変更機構、並びに、前記基線を左右方向に変更する基線変更機構等から構成される。
【0018】
図3に示すように、主針振り機構は、針棒揺動台18、針振り腕49、連結軸48、連結レバー47、針振りカムレバー46、三角カム35、ギヤ42a、42b等から構成され、上軸6の回転運動を三角カム35に伝達することで、針振りカムレバー46を所定の振り幅で揺動させ、この揺動を伝達して針棒揺動台18を支点18aを中心に回動させることでミシン針9を左右方向に振るようになっている。主針振り機構では、ミシン針9が一回目に降りるタイミングで針棒8を基線上にもって行き、2回目に降りるタイミングで針棒8を基線から所定の振り幅量の位置にもって行くようになっている。
【0019】
振り幅変更機構は、針振り送りパルスモータ41の回転により、リンク36、37、連結リンク45を介して、針振りカムレバー46の振り幅量を変更することでミシン針9の振り幅量を変更する。
基線変更機構は、基線送りパルスモータ40の回転により、基線変更用レバー43を支点43aを中心に回動させて、基線用レバー44の支点44aの位置を変更する。支点44aは、針振りカムレバー46の揺動運動の原点を決定しているもので、支点44aの位置が変わることで、連結リンク45を介して、針振りカムレバー46の揺動運動の原点が変わり、ミシン針9の針振りの基線位置を変更する。
【0020】
図4には、ボタン穴かがり縫いミシン1の制御回路110の概略ブロック図を示す。
制御回路110は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)111、ROM(Read Only Memory)112およびRAM(Random Access Memory)113を備える。CPU111は、RAM102の所定領域を作業領域として、ROM112に記憶されている制御プログラムに従い、操作パネル100からのデータや、接続された各種センサからの検出信号に基づいて、各ドライバを介して各駆動部の制御を行う制御手段である。
【0021】
CPU111には、Y送りパルスモータ20、基線送りパルスモータ40、および針振り送りパルスモータ41の駆動を行うパルスモータドライバ114、115、116、上糸切りハサミアクチュエータ76(ソレノイド)を駆動する上糸切りハサミアクチュエータドライバ117、下糸切りハサミアクチュエータ66(ソレノイド)を駆動する下糸切りハサミアクチュエータドライバ118、ミシンモータ5の駆動制御を行うミシンモータドライバ119、押え上げソレノイド127を駆動制御する押え上げソレノイド126、布切りメス16を下降させる布切りメス下降シリンダ19を駆動するシリンダドライバ120が接続されている。
【0022】
上記ミシンモータドライバ119には、ミシンモータ5の他、ミシンモータ5の回転量を上軸6の回転角度としてコード化するミシンモータエンコーダ121、ミシン針9が上死点を超えて少し下がった停止位置である針上位置にあることを検出する針上位置センサ122、ミシン針9が上死点にあることを検出する針棒上死点センサ128、上軸6の回転速度を検出するTG(タコジェネレーター)発生器123等が接続されている。
さらにCPU111には、後述する操作パネル100や布押え15の上昇・下降を指示する押えスイッチ124、並びに、ミシンモータ5の駆動スタートを指示するスタートスイッチ125等が接続されている。
【0023】
ROM112には、操作パネル100からの入力処理や、操作パネル100を介して入力された各種縫製データに基づいてボタン穴かがり縫製のための制御データ(縫い始めから縫い終わりまでの全ての針落ち位置など)を演算する演算処理、演算された制御データに従って縫製動作を行わせる縫製処理等を含む制御プログラムが記憶されている。
ROM112には、図7で示すデータ項目のそれぞれに対応して、設定可能なデータ値の範囲、後述するマイナスキー103bとプラスキー103cの1操作で増減し得るデータの単位値、標準のデータ値等が、記憶されている。
さらに、ROM112には、所定の形状パターンのボタン穴かがり縫いを縫うために、図7の全てのデータ値(No.1〜No.19)について設定されているパターンが複数記憶されている。
RAM113は、CPU111の作業領域となるとともに、操作パネル100を介して入力されたボタン穴かがり縫目の各種データを記憶する記憶手段となる。
【0024】
ボタン穴かがり縫いミシン1に備わる操作パネル(入力手段)100を図5に示す。
操作パネル100は、各種の縫製データを設定入力したり、設定値の表示出力や縫製制御上のエラーの表示出力を行ったりするもので、例えば、ボタン穴かがり縫いミシン1が載置されるミシン台上に設けられる。
操作パネル100には、スタート操作部101、ナンバー操作部102、データ値入力操作部103およびモード切替操作部104が設けられている。
スタート操作部101には、作業者が縫製準備が整った旨および再設定する旨を入力するための準備キー101aと、その状態を表示するLED(Light Emitting Diode)などからなる表示部101bとが設けられている。
【0025】
ナンバー操作部102には、ナンバー表示部102a、ダウンキー102bおよびアップキー102cが設けられている。ナンバー表示部102aは、2桁の7セグメント表示器からなり、データ値を入力するデータ項目のナンバーやパターンナンバーを表示する。
ダウンキー102bおよびアップキー102cは、データ項目のナンバーやパターンナンバーを1つずつずらすキーであり、ダウンキー102bは1つ繰り下げるキー、アップキー102cは1つ繰り上げるキーである。データ項目の内容については後に詳述する。
【0026】
データ値入力操作部103には、データ値表示部103a、マイナスキー103b、プラスキー103cが設けられている。データ値表示部103aは、4桁の7セグメント表示器からなり、各データ項目のデータ値を表示する。マイナスキー103bとプラスキー103cは、データ値を所定の単位値ずつ増減させるキーである。後述するように各データ項目毎に所定の単位値と設定可能範囲とが決められており、マイナスキー103bを押すとデータ値が単位値ずつ小さくなっていき、プラスキー103cを押すとデータ値が単位値ずつ大きくなっていく。
【0027】
モード切替操作部104には、パターンナンバーの設定モードに切り替えるパターンナンバキー104aと、データ入力モードに切り替えるデータキー104bとが設けられている。パターンナンバキー104aおよびデータキー104b上には、それぞれLEDなどの表示器104c、104dが設けられており、これらの点灯によりパターンナンバー設定モードかデータ入力モードかを作業者に知らせることができるようになっている。
【0028】
作業者は、まず、パターンナンバーキー104aを操作して所望のボタン穴かがりのパターンナンバーを、図7のパターンNo.1、2、3、4・・・の中から選択する。このパターンの選択は、縫製する布の厚さや形状に基づいて決定する。ついでデータキー104bを操作して各データ項目を選択し、データ値入力操作部103においてデータ値を設定・変更する。なお、パターンナンバーを選択することで、そのパターンごとに予めデータ値が設定されているので、そのデータ値でよい場合には変更する必要はない。
【0029】
本実施の形態では、操作パネル100には、さらにボタン穴の縫製個数のカウンタ部105を設けている。このカウンタ部105は、1ボビンに巻かれた下糸で縫製できるボタン穴の個数が初期値として設定され、ボタン穴を1個縫製するたびに初期値から個数を減算するダウンカウンタになっている。つまり、現在ボビンにある下糸量でボタン穴があと何個縫製できるかのダウンカウントをするようになっている。
カウンタ部105の表面にはカウンタキー105aと、カウンタ初期化キー105cとが設けられている。カウンタキー105aを押すと、LED105bが点灯するとともに、そのカウント値がデータ値表示部103aに表示される。またカウンタLED105bが点灯しているときに、初期化キー105cを押すとカウンタに初期値がセットされる。
【0030】
また、本実施の形態では、ボビンに残存した下糸残量を検知する下糸残量検知手段(残量センサ)を備えている。図6に示すように、この下糸残量センサ140は光センサからなり、釜12(図3)内にあるボビン142を挟んで配置された発光素子140aと受光素子140bを有する。残量センサ140は、発光素子140aから出た光の受光素子140bへ至る光路140cが、ボビン142の軸142aの表面に近い位置を通るように配置されている。
【0031】
ボビン142に巻かれた下糸が多くあるうちは、光路140cが下糸に遮られるので、受光素子140bがOFFし、出力電流が減少する。ボビン142に巻かれた下糸が消費されて少なくなると、光路140cが下糸に遮られずに受光素子140bがONし、最大電流を出力する。したがって、OFF時の最小出力電流とON時の最大出力電流との間に閾値を設けて、受光素子がONしたのを検知すれば、ボビン142の下糸残量を検出することができる。下糸残量は、残量センサ140の受光素子140bからの出力信号を制御回路110に送って、そこで信号処理を受けた後、最終的にCPU111により検出される。
【0032】
本実施の形態によれば、この下糸残量センサ140は、上記と同様なカウンタと組み合わせて、そのダウンカウント機能を利用して残量検知カウンタに構成されている。残量検知カウンタは、ボビンに残存した所定残量の下糸で縫製できるボタン穴の個数が初期値として設定され、残量センサ140でボビンの下糸残量が所定量となったことを検知すると、ボタン穴を1個縫製するたびに初期値から個数を減算して、現在ボビンにある下糸残量でボタン穴があと何個縫製できるかのダウンカウントをする。
残量検知カウンタも1種のダウンカウンタであるが、これと区別するために、以下、単に「ダウンカウンタ」と称したときは、カウンタ部105のダウンカウンタを意味するものとする。
【0033】
操作パネル100は、ダウンカウンタのカウンタ部105を備えているので、この残量検知カウンタは必ずしも必要ないが、本実施の形態では、ボビン1個の下糸量により最初のボタン穴の縫製を開始してからの縫製可能ボタン穴個数をダウンカウントするダウンカウンタと、ボビンの下糸残量が所定量になった時点で縫製可能ボタン穴個数をダウンカウントする残量検知カウンタとを合わせ持っている。
【0034】
図7に、操作パネル100から入力可能なデータ項目のデータテーブルを示す。図8に、図7のテーブルのデータNo.1〜11のデータ項目が、ボタン穴かがり縫いのどの部分を表すかを説明する図を示す。図8のボタン穴かがり縫い目u0の各データ項目名にはデータNo.をカッコ書で加えた。
【0035】
データNo.1は、ボタン穴の長さである布切り長さデータ(ボタン穴溝u1の長さ)、データNo.2、3は、メス溝右幅データ(ボタン穴溝u1と右側縫い部u2の左端との距離)およびメス溝左幅データ(ボタン穴溝u1と左側縫い部u2の右端との距離)、データNo.4は、かがり幅データ(側縫い部u2の左右幅長)、データNo.5は、閂止め長さデータ(閂止め部u3の縦長さ)、データNo.6、7は、すきま長さデータであるすきまデータ(上閂止め部u3の下端とボタン穴溝u1の上端との距離)および第2すきまデータ(下閂止め部u3の上端とボタン穴溝u1の下端との距離)、データNo.8は、平行部ピッチデータ(側縫い部u2の2針間の縦方向の距離)、データNo.9は、閂止め部ピッチデータ(閂止め部u3の2針間の縦方向の距離)、データNo.10、11は、閂止め幅右補正データ(閂止め部u3の右端と右側縫い部u2の右端とのずれ長さ)および閂止め幅左補正データ(閂止め部u3の左端と左側縫い部u2の左端とのずれ長さ)である。
【0036】
データNo.12、13は、左平行部張力データ(左側縫い部u2の縫製時の糸張力)および右平行部張力データ(右側縫い部u2の縫製時の糸張力)、データNo.14、15は、第1閂止め部張力データ(上閂止め部u3の縫製時の糸張力)および第2閂止め部張力データ(下閂止め部u3の縫製時の糸張力)、データNo.16は、最高速制限データ(ミシン回転数の最高制限数)である。
【0037】
データNo.17〜19は、本発明において特徴的なデータ項目である。
データNo.17は、前記したダウンカウンタ(操作パネル100のカウンタ部105)の初期値データで、1ボビンに巻いた下糸で縫製できる、すなわち下糸が完全になくならない前に縫製できるボタン穴の縫製個数を設定することができる。このカウンタの初期値は0〜9999の範囲で設定でき、1刻みずつ変更可能となっている。
本実施の形態では、穴かがりパターンが変更される度に、作業者がカウンタの初期値を設定し直す面倒をなくすために、このダウンカウンタの初期値を穴かがりパターンごとに設定可能とした。これにより、カウンタ初期値をパターンごと持つように一度設定すれば、それ以降はパターンが変更されても、その変更の都度、作業者がカウンタの初期値を設定し直す必要がなくなる。したがって、下糸がなくなったことによる縫製不良を生じることなく、最後までボタン穴を縫製することが可能となる。
また作業者がカウンタの初期値を初期化をしないでも、ボタン穴かがりパターンの変更により初期値が初期化されるように、カウンタの初期値は、パターンを変更したときに自動的に初期化するようにした。
【0038】
またデータNo.18は、前記した下糸残量検知カウンタの初期値データで、ボビンに所定量残存した時点以降に、残存下糸で縫製できるボタン穴の個数を設定することができる。ボビンに残存した下糸が所定残量になったことは、前記したように残量センサ140で検知される。この下糸残量検知カウンタの初期値は0〜20の範囲で設定でき、1刻みずつ変更可能とした。
本実施の形態では、穴かがりパターンが変更される度に、作業者が残量検知カウンタの初期値を設定し直す面倒をなくすために、この残量検知カウンタの初期値を穴かがりパターンごとに設定可能とした。これにより、カウンタ初期値をパターンごと持つように一度設定すれば、それ以降はパターンが変更されても、その変更の都度、作業者がカウンタの初期値を設定し直す必要がなくなる。したがって、残量検知カウンタによっても、下糸がなくなったことによる縫製不良を生じることなく、最後までボタン穴を縫製することが可能となる。
また作業者がカウンタの初期値を初期化をしないでも、ボタン穴かがりパターンの変更により初期値が初期化されるように、カウンタの初期値は、パターンを変更したときに自動的に初期化するようにした。
【0039】
データNo.19は、ダウンカウンタと下糸残量検知カウンタの選択に関し、たとえば表示パネル100上のカウンタ部105でダウンカウンタを選択する場合は「1」、ダウンカウンタでないカウンタ、すなわち下糸残量検知カウンタを選択する場合は「0」を入力する。
【0040】
本実施の形態では、ボタン穴かがり縫い時に、以上のような下糸による縫製可能なボタン穴個数のダウンカウント制御を行う。本実施の形態におけるボタン穴かがり縫いの処理工程のフローチャートを図9に示す。
図9のフローは、例えばボタン穴かがり縫いミシン1の電源がONした際に開始する。まず、ステップS1において操作パネル設定処理が行われる。操作パネル設定処理は、作業者がボタン穴の縫製にあたって、操作パネル100によりボタン穴かがり縫いのパターンナンバー、縫いデータを設定する処理で、図10に示すフローにしたがって行われる。
【0041】
図10において、まず、ステップS11で、作業者により操作パネル100のキーが押されたか否かを判定し、押されていなければそのまま処理を終了する。つぎにステップS12で、作業者が操作パネル100のキー、つまりパターンナンバーキー104aが押されたときに、パターンNo.を表示する。
ついでステップS13で、データキー104bが押されたときに、データNo.及びデータ値を表示する(データキー処理)。
【0042】
つぎにステップS14でカウンタキー処理を行う。このカウンタキー処理では、前述したように、カウンタ部105のカウンタキー105aを押すことにより、カウンタLED105bが点灯し、ボタン穴の縫製可能個数のカウント値がデータ値表示部103に表示される。LED105bの点灯中、初期化キー105cを押すと、カウンタの初期値が初期化される。
【0043】
上記のパターンナンバー、データーナンバーは、ステップS12、13でそれぞれ選択されたときに、操作パネル100のアップキー102c、ダウンキー102bを押すことにより、切り替えることができる(UPキー処理、DOWNキー処理)。
アップキー処理(UPキー処理)は、図11(a)に示すように、アップキーが押されたら、データが選択されているときはデータNo.をプラス1(+1)し、パターンが選択されているときはパターンNo.をプラス1する。いずれも、設定範囲を超えたときは、選択されている項目の最小値を入れる。
同様に、ダウンキー処理(DOWNキー処理)は、図11(b)に示すように、ダウンキーが押されたら、データが選択されているときはデータNo.をマイナス1し(−1)、パターンが選択されているときはパターンNo.をマイナス1する。いずれも、設定範囲を超えたときは、選択されている項目の最大値を入れる。
【0044】
データーNo.1〜19のデータ値は、ステップS13で選択されたときで、操作パネル100のプラスキー103c、マイナスキー103bを押すことにより、切り替えることができる(+キー処理、−キー処理)。
プラスキー処理(+キー処理)は、図12(a)に示すように、プラスキーが押されたら、選択されているデータ値に変更単位分をプラスする。設定範囲を超えたときは、それぞれ選択されている項目の最小値を入れる。同様に、マイナスキー処理(−キー処理)は、図12(b)に示すように、マイナスキーが押されたら、選択されているデータ値に変更単位分をマイナスする。設定範囲を超えたときは、それぞれ選択されている項目の最大値を入れる。
【0045】
ついでステップS19で、カウント値初期化処理を行う。カウント値初期化処理は、図13のフローにしたがって行われる。
なお、残量検知カウンタは、残量検知センサ140に操作パネル100のカウンタ部105を組み合わせて、そのダウンカウント機能を利用して構成したので、図13のフローのステップで、「ダウンカウンタか?」の判断でNOは下糸残量検知カウンタを実行することを意味する。
【0046】
図13において、ステップS21で、押されたキーはカウント値初期化キーか否かを判定し、カウント値初期化キーならばステップS23に進む。ステップS21で押されたキーがカウント値初期化キーでないときは、ステップS22でパターンNo.は変更されたか否かを判定し、パターンNo.が変更された場合は、同じくステップS23に進み、そうでないときは、カウント値初期化処理を終了する。
ステップS23では、押されたカウント値初期化キーはダウンカウンタか否かを判定し、ダウンカウンタならば、ステップS24で、選択されているパターンNo.に対して設定されたデータNo.17の設定値をダウンカウンタの初期値とする。ステップS23で、押されたカウント値初期化キーがダウンカウンタでないときは、下糸残量検知カウンタが選択されていることになるので、ステップS25で、選択されているパターンNo.に対して設定されたデータNo.18の設定値を下糸残量検知カウンタの初期値とする。
【0047】
図9に戻って、ステップS1についでステップS2において、準備キー101aが操作されたか否か判定され、操作されていればステップS3に移行し、操作されていなければステップS1に戻る。
ステップS3では、操作パネル100で設定されたデータに基づいて、針落ち位置を演算する処理を行い、ついでステップS4において、準備キー101aが押されたか否か判定する。ここで、準備キー101aが再度押されていれば、再びステップS1に戻って、操作パネル100による設定を可能にする。
ステップS4で、準備キー101aが再度押されていなければ、ステップS5で、作業者が縫製物を針板上にセットし、これを受けて、ステップS6で、スタートスイッチ125がONになったか否か判定する。作業者の操作により、スタートスイッチがONになれば、ステップS7に移行し、ここで、かがり縫い、ボタン穴開け、糸切りなどを含む縫製処理が行われる。ステップS6でスタートスイッチ125がONになっていないと判定すれば、ステップS4に戻り、ステップS4以下を繰り返す。
【0048】
そしてボタン穴の縫製が1個終わるたびに、ステップS8においてカウンタ処理を行う。カウンタ処理は、図14に示すフローにしたがって行われる。
図14において、まず、ステップS31で、選択されたのがダウンカウンタか否かを判定し、ダウンカウンタと判定されたときは、ステップS32で、ダウンカウンタの現在のカウント値をマイナス1し(−1)、その値をRAM113に入れてカウント値を更新する。ついでステップS33でカウント値が0か否かを判定し、カウント値=0であれば、それ以上ボタン穴を1個縫うだけの下糸がなくなっているので、ステップS34でカウントアウトの警告を出力して、カウンタ処理を終了する。
ステップS33でカウント値が0でなければ、1個以上のボタン穴を縫うことができるので、ステップS34を経ることなくカウンタ処理を終了する。
【0049】
ステップS31で、選択されたのがダウンカウンタでなければ、残量検知カウンタが実行され、ステップS35で下糸残量検知処理を行う。ステップS36で、下糸残量検知処理の検知結果に基づき、設定された個数のボタン穴を縫う量の下糸しか下糸が無いか否かを判断して、下糸無しと判断されたときは、上記のダウンカウンタのときと同様にされる。
すなわち、ステップS32に行って、残量検知カウンタの現在のカウント値をマイナス1し、その値をRAM113に入れてカウント値を更新し、ステップS33でカウント値が0か否かを判定し、カウント値=0であれば、ステップS34でカウントアウトの警告を出力して、カウンタ処理(残量検知カウンタ処理)を終了する。カウント値が0でなければ、ステップS34を経ることなくカウンタ処理を終了する。
【0050】
なお、以上では、ダウンカウンタは縫い個数で行っているが、データNo.17の個数を針数としてもよい。この場合は、縫製中にミシンモータが1回転するたびに入ってくる針上位置センサからの信号を利用し、針数のカウントごとに1ずつ減算させることで行われる。また初期値は、パターンの針数×縫い個数で求められる。
さらに、ボタン穴かがり縫いミシンでだけでなく、各パターンごとに張力データや縫いサイズ、針数が異なる閂止めミシンや、ボタン付けミシン、ポケット付けミシンなどパターンを切り換えて使用するミシンにおいても同様に、各パターンごとにカウンタの初期値を持たせることで有効となる。
【0051】
本実施の形態のボタン穴かがり縫いミシンは以上のように構成されるので、つぎのような作用効果を奏する。
(1)ボビンに巻かれた下糸で縫製できるボタン穴個数であるダウンカウンタの初期値を、ボタン穴かがりパターンごとに設定できるようにしたので、ダウンカウンタの初期値をパターンごとに持つように一度設定すれば、それ以降はパターンが変更されても、その変更の都度、作業者がカウンタの初期値を設定し直す必要がない。したがって、下糸がなくなったことによる縫製不良を生じることなく、ボタン穴を縫製することができる。
特にボタン穴かがり縫いミシンでは、縫製物によりかがり縫いサイズ、上糸張力が大きく異なるため、下糸の消費量の変化が大きい。たとえばパール縫いとウィップ縫いとは、アクティブテンションによる上糸の張力調整で縫いの切り替えを行うことができるが、上糸の張力を強くするパール縫いでは、下糸が大きく引き出され消費量が多い。したがって、ボタン穴かがりパターンごとにダウンカウンタの初期値を設定できることは非常に有効である。
(2)ボビンに残存した所定残量の下糸で縫製できるボタン穴個数である残量検知カウンタの初期値を、ボタン穴かがりパターンごとに設定できるようにしたので、残量検知カウンタの初期値をパターンごとに持つように一度設定すれば、それ以降はパターンが変更されても、その変更の都度、作業者が下糸残量検知カウンタの初期値を設定し直す必要がない。したがって、下糸残量検知カウンタによっても、下糸の糸切れによる縫製不良を生じることなく、ボタン穴を縫製することができる。
(3)ボタン穴かがりパターンを変更したときに、カウンタの初期値を自動的に初期化するようにしたので、作業者がカウンタを初期化をしないでも、パターンの変更により初期値が初期化される。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のボタン穴かがり縫いミシンによれば、被縫製物の変更があっても、作業者が、ボビンの下糸で縫製できるボタン穴個数をダウンカウントするダウンカウンタや下糸残量検知カウンタの初期値を設定し直さずに済み、下糸がなくなったことによる縫製不良を生じることなく、ボタン穴を縫製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例としてのボタン穴かがり縫いの外観を示す斜視図である。
【図2】図1のミシンの布送り機構と針の昇降機構を主に示す透視図である。
【図3】図1のミシンの針の昇降機構と針振り機構を主に示す透視図である。
【図4】図1のミシンの制御回路を示すブロック図である。
【図5】図1のミシンの操作パネルを示す正面図である。
【図6】図1のミシンに設置された下糸残量センサを示す図である。
【図7】図5の操作パネルから入力可能な縫製データを示すデータテーブルである。
【図8】図5の各データ項目とボタン穴かがり縫いとの対応を説明する図である。
【図9】本発明の一実施の形態におけるボタン穴かがり縫いの処理工程を示すフローチャートである。
【図10】図9の処理における操作パネル処理を示すフローチャートである。
【図11】図10の操作パネル処理におけるキー処理を示す図で、アップキー処理のフローチャート(a)とダウンキー処理のフローチャート(b)である。
【図12】操作パネル処理におけるキー処理を示す図で、プラスキー処理のフローチャート(a)とマイナスキー処理のフローチャート(b)である。
【図13】図11の処理におけるカウント値初期化処理を示すフローチャートである。
【図14】図9の処理におけるカウンタ処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ボタン穴かがり縫いミシン
9 針
15 布押え
16 布切りメス
100 操作パネル
105 カウンタ部
110 制御回路
111 CPU
112 ROM
113 RAM
140 下糸残量センサ
142 ボビン

Claims (1)

  1. 布押えで押えられた布に対して、縫い針に挿通した上糸と釜内ボビンに巻いた下糸とにより、複数のボタン穴かがりパターンから選択したパターンにしたがってボタン穴周囲のかがり縫いの縫い目を形成するとともに、布切りメスにより布を切断してボタン穴を形成するボタン穴かがり縫いミシンにおいて、
    前記ボビンに残存した下糸が所定残量となったことを検知する残量検知手段と組み合わせて構成され、前記所定残量の下糸で縫製できるボタン穴個数が初期値として設定されて、前記残量検知手段が、ボビンに残存した下糸が所定残量になったことを検出した後、ボタン穴を1個縫製するたびに初期値から個数を減算する残量検知カウンタを備え、
    前記ボタン穴かがりパターンを変更したときに、前記カウンタの初期値を自動的に初期化するようにしたことを特徴とするボタン穴かがり縫いミシン。
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