JP4920840B2 - ボタン穴かがりミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボタン穴かがり縫目を形成するボタン穴かがりミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
被縫製物に対してボタン穴を形成するとともに、その周囲にかがり縫いを施すボタン穴かがり縫いミシンが知られている。ボタン穴かがり縫いミシンでは、布押え等によって保持した被縫製物を布送り機構により所定の方向に送りながら、ミシン針に通された上糸と、釜装置内のボビンに巻かれた下糸とを絡めて、縫い目を形成するようになっている。また、ボタン穴は、必要に応じて布を送りながら、メスを布に落とすことで形成した。
前記ミシンには、縫い目を形成した後に、上糸及び下糸それぞれを切断する糸切り装置が設けられている。従来の上下の糸切り装置は、布押えを上昇させる機構と連動して、糸を切断するように構成されていた。切断後はそのまま上糸及び下糸をハサミで挟んだ状態で保持し、次の縫製を開始するときに布送り機構に機械的に連動させて一定のタイミングでハサミを開き、それによって自然と縫い目の中に糸端が巻きこまれるように構成されていた。つまり、従来のボタン穴かがり縫いミシンでは、布送り機構の布送り板が縫製開始後に一定の位置まで移動すると上糸及び下糸を開放するのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
図16には上記で説明した穴かがりミシンの1例における、針9及びメス16並びに布送り板14、そして被縫製物に施したかがり縫い目を模式的に示している。針9の近傍位置にはメス16が設けられ、これらの間にすきまL1が開いている。かがり縫いは布送り板14を前後に一往復させ、針9を布に対して前→後→前と駆動しながら形成される。ボタン穴u1は、針9が後から前に戻る際に、メス16が数回落ちることで、形成される。かがり縫い目の前端の閂止め部Uがある程度長さを有していれば、針9が前端まで戻れば、メス16は所望の長さのボタン穴u1を形成することができる。しかしながら、かがり縫い目の閂止め部Uの長さが短いと(図16の状態)、かがり縫いが終了した時に、メス16が形成すべきボタン穴u1の前端部まで到達せず、ΔL分切開ができなかった。
そこで、このような場合には、わざわざ布送り板14を所定の距離だけ送った後にメス16を駆動させるようにしていた。また、布送り板14を所定の距離だけ送るためには、縦胴部3とY送り駆動手段13の干渉を防ぐため、その分布送り板の位置をずらしておく必要があった。
【0004】
しかし、布送り板の位置を変更すると、前述のように送り装置を上下の糸切りハサミに連動させたので、 次縫製の開始時にハサミの開放のタイミングがずれて、布地に残る糸端長さを制御できずに糸端を縫い目の中に巻き込む動作に不具合が生じ、縫い目が乱れることがあった。これを防ぐため、送り量に合わせて、適切なタイミングで切断するように何度も上下の糸切りハサミの調整を行なう必要があった。
このように、従来の穴かがりミシンは、送り装置を上下の糸切りハサミに連動させていたので、縫製条件によってはボタン穴の形成のために縫い目の不具合発生や、複雑な作業が必要であった。
【0005】
本発明の課題は、送り機構を他の機構とは独立させ、自在にボタン穴を形成できるボタン穴かがり縫いミシンを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、例えば図1から図15に示すように、上下動するミシン針(9)と、布を送る布送り手段(布送り板14)と、前記布送り手段を駆動するパルスモータ(Y送りパルスモータ20)と、布切りメス(16)を上下動して布にボタン穴を形成する布切り手段(布切りメス下降シリンダ19)と、上糸を切断し、切断後の上糸を保持する上糸切りハサミ(80)を有する上糸切り手段(上糸切断装置70)と、下糸を切断し切断後の下糸を保持する下糸切りハサミ(52)を有する下糸切り手段(下糸切断装置50)と上糸切りハサミによる上糸の保持解除と、下糸切りハサミによる下糸の保持解除のそれぞれを行なうためのアクチュエータ(ソレノイド76、66)と、ボタン穴かがりに関する設定データを入力する入力手段(操作パネル100)と、上糸・下糸の開放位置を設定する開放位置調整手段(CPU111)とを備えた穴かがりミシンにおいて、かがり縫い目の前端の閂止め部の長さと前記閂止め部の後端とボタン穴溝の前端との間の長さとを合わせた長さである第一の長さが、前記ミシン針と前記布切りメスに挟まれた部分の長さである第二の長さより短いと判別した場合に、前記第二の長さと前記第一の長さの差である第三の長さを演算し、縫製前に前記パルスモータにより前記第三の長さだけ前方に前記布送り手段を移動させ、縫製後に前記第三の長さだけ後方に前記布送り手段を移動させて前記布切り手段によりボタン穴を形成させるように制御するとともに、前記開放位置調整手段により設定された縫い始めからの上糸・下糸の開放位置に基づいて、前記パルスモータによる前記布送り手段の駆動とは独立して、前記アクチュエータを制御する制御手段(CPU111)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、上糸切りハサミによる上糸の保持解除と、下糸切りハサミによる下糸の保持解除のそれぞれを行うためのアクチュエータを備えていることから、上糸・下糸の保持解除は独立した駆動源により動作する。
したがって、従来では布送り板を移動させた場合に、上下の糸切ハサミが連動して動作したのに対し、請求項1記載の発明では、互いに独立して制御できる。
【0008】
このように、請求項1記載の発明によれば、例えば針と布切りメスとの位置関係に制限がある場合に、縫製前に予め布送り板を移動させた後に、メスを駆動させてボタン穴を切開する。この場合、糸の開放の駆動源と布送り板を別としたので、布送り板の位置を変更する際に、次縫製の開始時にハサミの開放のタイミングがずれて、縫い目が乱れることがない。また、これを防ぐために上下の糸切りハサミの調整を行なう必要がなく、操作が簡単である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の一例としてのボタン穴かがりミシン1は、図1および図2に示すように、ベッド部2と縦胴部3とアーム部4とを備える。該ミシン1は、昇降動作と左右への針振り動作を行うミシン針9、布(被縫製物)を押さえる布押え15、布押え15の下側で布を保持すると共に布送り方向(Y方向)に前後動する布送り板(布送り手段)14、布押え15の上側で上糸を切断する上糸切りハサミ80、針板55の下で下糸を切断する下糸切りハサミ52(図4)、布を切断してボタン穴を形成する布切りメス16、各設定データ等の入力を行う入力手段としての操作パネル100(図9)、並びに、該ボタン穴かがりミシン1を制御する制御回路110(図8)等を備えてなる。
【0011】
布押え15および布送り板14は、両者で布を挟んで保持すると共に、後述するY送り駆動手段13により駆動されて、前後方向(Y方向)に布を送るようになっている。図2に示すように、布押え15は、布送り部材23に連結された連結アーム24に固定される一方、布送り板14は布送り部材23に直接連結されている。
そして、縦胴部3内には、布送り板14及び布押え15用の電気的駆動手段であるY送りパルスモータ20が配設されている。その出力軸から布保持板14及び布押え15にかけてY送り駆動手段13が構成されている。
Y送り駆動手段13は、縦胴部3内において、Y送りパルスモータ20上の出力軸にピニオン20aが設けられている。そして、このピニオン20aに送り軸22のラック22aが噛み合っている。また、送り軸22の中間部分に、布送り板14を下端部に連結支持する布送り部材23が固定している。
以上のY送り駆動手段13によって、布送り板14及び布押え15は、Y送りパルスモータ20の駆動でピニオン20a及びラック22aの噛み合いにより前進後退動作する送り軸22から布送り部材23、連結アーム24を各々介して一体的に、ベッド部2上を移動する。
布押え15は、押え上げソレノイド127(図8参照)に連結されており、該ソレノイド127がONになると上側を向き布地を開放する状態になり、ソレノイド127がOFFになると下側を向き布地を挟持できる。
【0012】
また、アーム4の先端部上には、メス動作用の電気的駆動手段としての布切りメス下降シリンダ(布切り手段)19が設けられており、布切りメス下降シリンダ19を駆動源として、布切りメス16が上下駆動するように構成されている。
【0013】
ミシン針9を昇降させる昇降機構は、図2に示すように、上軸(主軸)6、ミシンモータ5、クランクカム7等から構成され、ミシンモータ5の回転駆動をクランクカム7により昇降運動に変換して針棒8に伝達することで、ミシン針9を昇降運動させる。上軸6は、傘車10a、10bを上下端に配した連結軸10を介して下軸11とリンクしており、該下軸11に連結された釜12と連動するようになっている。
ミシン針9を左右に振る針振り機構は、ある基線を原点として所定の振り幅でミシン針9を振る主針振り機構と、この針振り幅を変更する振り幅変更機構、並びに、前記基線を左右方向に変更する基線変更機構等から構成される。
そして、上軸6を回転運動させることで、図示しない針振りカムレバーを所定の振り幅で揺動させ、この揺動を伝達して針棒揺動台18を回動させることでミシン針9を左右方向に振るようになっている。
【0014】
また、ミシン針9と布切りメス16の位置関係は図16に示したものと同様であり、これらの間にすきまL1が開いている。送り板14には、原点位置が設定され、この位置に原点位置検出用の磁石14aが設けられ、針棒8に設けられた原点位置検出センサ8aにより送り板14の原点位置を検出するようになっている。
【0015】
ミシン針9の近傍には、上糸切断装置(上糸切り手段)70と下糸切断装置(下糸切り手段)50が設けられている。
図3〜図6に基づいて上糸切断装置70について説明する。上糸切断装置70は、上糸の切断、保持、開放を行うものである。
【0016】
上糸切断装置70は、図4に示すように、上糸切断動作を行う上糸切断部71と、上糸切断部71を駆動する上糸切断駆動部72とからなる。
上糸切断部71は、上糸切りハサミ80と、支持腕81と、軸部82とを備える。軸部82は、アーム部4下部に固定された軸支持部83、83に対して回動可能に連結している軸受け84に対して摺動及び回転自在となっている。
軸部82の先端部には、支持腕81が固定されており、該支持腕81の先端部81aには、上糸切りハサミ80が取り付けられている。
上糸切りハサミ80は、押圧板85aが取り付けられている固定刃85(図4)と、可動刃86とからなり、可動刃86には、カム当接部86aが設けられている。
【0017】
次に、上糸切断駆動部72について説明する。上糸切断駆動部72は、上糸切断部71に対して、上糸切りハサミ80を閉じる動作(上糸を切断する動作)を行わせる上糸切りハサミ閉じ手段と、上糸切りハサミ80を開く動作(上糸を放す動作)とを行わせる上糸切りハサミ開放手段とからなる。
【0018】
まず、上糸切りハサミ閉じ手段について説明する。 縦胴部3には、操作レバー87の基端部(右端部)が取り付けられている。操作レバー87には、引張バネ31が連結しており、引張バネ31の他端部はアーム部4に掛けられている。
【0019】
操作レバー87の基端部にコロ取付部88が固定されており、コロ取付部88の上端部にコロ89が設けられている。このコロ89に当接するように、揺動体28が設けられ、その基端部(右端部)が、アーム部4に取り付けられている。更に、揺動体28の後面にはカム28aが形成されており、このカム28aにコロ89が当接する。そして、揺動体28の前部が、回動腕29の上部に当接する。回動腕29の上部は、前記軸部82の後端部に固定されている。回動腕29と軸受部84との間には、圧縮バネ30が軸部82に通された状態で介設されている。
【0020】
操作レバー87の中間部には、カム部材32の右部が接続されている。カム部材32の左端部は、下糸切りレバー33の中間部に接続されている。下糸切りレバー33の上端部は、縦胴部2に取り付けられている。下糸切りレバー33の中間部には、押圧体34が固定されている。押圧体34の先端部34a近傍に係脱部材73が設けられている。
【0021】
上糸切りハサミ開放手段は、 本発明のアクチュエータであるソレノイド76と、レバー77と、レバー77を付勢する引張バネ78とを備える。
ソレノイド76は、アーム部4の下部に固定されており、ロッド76aを前後に進退させるようになっている。レバー77には引張バネ78の一端部が掛けられており引張バネ78の他端部はミシンフレーム内に掛けられている。そして、引張バネ78は、レバー77の一端部とともにロッド76aを後方に付勢する。レバー77の他端部には、開きカム部77aが形成されている。開きカム部77aの右端部には、第一カム面77bと、第二カム面77cとが形成されている。
【0022】
そして、上糸切りハサミ開放手段により次のようにハサミ80は開く。上糸切りハサミ80が閉じているとき、ソレノイド76がOff状態からOn状態となると、ロッド76aが引張バネ78に抗して前方に押し出される。これにより、レバー77が、反時計回り(図4の矢印f方向)に回転する。レバー77の回転に伴い、第二カム面77cがカム当接部86aに当接し、さらにレバー77が回転すると第一カム面77bがカム当接部86aに当接する。これにより、開きカム部77aによってカム当接部86aが押され、可動刃86が回転し(図4の矢印gの方向)、上糸切りハサミ80が開く。
【0023】
次に、下糸切断装置50の構成について図4及び図7に基づいて説明する。下糸切断装置50は、針板台51と、下糸切りハサミ52と、下糸切りハサミ閉じ手段53と、下糸切りハサミ開放手段54とを備えて構成される。
針板台51は、ベッド部2内に固定された板状の部材であり、その上面には、針板55が固定されている。
【0024】
下糸切りハサミ52は、上メス56と、下メス57と、板バネ58とを備える。
下メス57は、針板台51の下面の前部に、取り付けられる。上メス56は、下メス57に対して回動可能となるように取り付けられる。上メス56には、ピン56aが設けられている。上メス56の前部には、延出部56bが形成されている。そして、板バネ58は、下メス57に固定されている。
【0025】
次に、下糸切りハサミ閉じ手段53の構成について説明する。下糸切りハサミ閉じ手段53は、駆動腕60と、リンク部材61と、下糸切りリンク62と、ボビンからの下糸を手繰る下糸手繰腕63と、リンク部材64と、リンク部材65とを備える。
【0026】
駆動腕60の前端部はリンク部材61の左端部に連結し、リンク部材61の他端部は、下糸切りリンク62の後端部に連結している。下糸切りリンク62は、回転自在となるように、針板台51の下面に取り付けられている。
下糸切りリンク62の先端部には、下糸手繰腕63の中間部が取り付けられ、さらに下糸手繰腕63の中間部に対して回動自在になるようにリンク部材64の一端部が連結する。リンク部材64の他端部は、回動自在に下メス57に連結する。下糸手繰腕63の後端部にはリンク部材65の一端部が連結する。リンク部材65の他端部は、回動自在となるように針板台51に連結する。
【0027】
下糸切りハサミ閉じ手段53により、開いた状態の下糸切りハサミ52は、以下のようにして閉じる。 即ち図4の下糸切りハサミ52が開いた状態において、駆動腕60が回転すると、リンク部材61、下糸切りリンク62、下糸手繰腕63及びリンク部材64を介して下メス57がその基端部57aを中心に前方に向けて回転する。これにより、下メス57とともに上メス56が前方に移動し、上メス56の延出部56bが針板台51の開口部51aを画成する縁部51bに当接する。そして、上メス56の前方への移動が抑止され、下メス57が更に前方に回転することによって、上メス56の先端と下メス57の先端が合致し、下糸切りハサミ52は閉じ、ボビンから導出される下糸を切断する。更に、下糸切りハサミ52は閉じた際に、板バネ58と上メス56とにより下糸を保持する。
【0028】
下糸切りハサミ開放手段54は、前記ピン56aを押して、下糸切りハサミ52を開くものである。下糸切りハサミ開放手段54は、ソレノイド66と、リンク部材67と、作動部材68と、引張バネ69とを備える。ソレノイド66は、ベッド部2に固定されて、その出力軸であるロッド66aを前後方向に進退させるものである。ロッド66aの前端部には、リンク部材67の後端部が連結している。リンク部材67の前端部には、回動自在に作動部材68が連結する。更に、作動部材68の一端部には引張バネ69の一端部が連結している。 また作動部材68は、他端部において回動自在に針板台51に連結し、該他端部より前記ピン56aに当接可能に延出する延出ピン68aが形成されている。
【0029】
そして、下糸切りハサミ開放手段54により、ハサミ52は次のように下糸を開放する。ソレノイド66がOff状態からOn状態になると、ロッド66aが押し出される。これによって、作動部材68が引張バネ69に抗して反時計回りに回転し、作動部材68の延出ピン68aがピン56aを押す。延出部56bと縁部51bの当接していない状態で、ピン56aが押されると、上メス56が下メス57に対して前方に回転する。これによって、下糸切りハサミ52は開くとともに、保持していた下糸を放す。そして、ソレノイド66がOn状態からOff状態になると、引張バネ69の付勢力によって作動部材68は時計回りに回転する。
【0030】
上記構成を有する上糸切断装置70及び下糸切断装置50の動作を説明する。ミシンの縫製中、上糸切断装置70及び下糸切断装置50は図6の実線で示す初期状態である。
【0031】
ボタン穴かがり縫いを終了した後に作業者が操作レバー87を操作すると、操作レバー87がその基端部を中心に反時計回り(図4の矢印d方向)に回転し、図6のB位置まで回転する。この動きの間に、上糸切断装置70は以下のように動作する。即ち、操作レバー87の反時計回りに回転によって、コロ89が揺動体28のカム28aに沿って移動すると、揺動体28が前方に向けて回転する。これにより、揺動体28が回動腕29とともに軸部82を前方に押す。軸部82の前方への移動により、上糸切りハサミ80は前方に向けて移動する。なお、作業者に代わり自動的にCPU(開放位置調整手段)111により、操作できるようにしても良い。
【0032】
一方、操作レバー87の回転によって、カム部材32はその左端部を中心に図7における時計回りに回転する。カム部材32の回転によって、下糸切りレバー33がその上端部を中心に時計回りに回転するとともに、カム部32bがコロ74を右方に押す。
下糸切りレバー33の回転に伴い、押圧体34が係脱体73bを下方に押圧する。一方、コロ74が右方に押されることによって、回動腕29とともに軸部82は図7の反時計回りに回転する。ここで、押圧体34が係脱体73bを下方に押圧することによって、係脱体73bが係止爪29aの動きを干渉しなくなる。そして、コロ74がカム部材32の角部32cに当接するまで、軸部82は反時計回りに回転する。軸部82の反時計回りの回転によって、上糸切りハサミ80は右方の切断位置へと移動する。
【0033】
上糸切りハサミ80が第1の待機位置から切断位置に向かって移動し始めると、可動刃86のカム当接部86aが閉じ板25に当接し、カム当接部86aが閉じ板25によって相対的に押される。これにより、可動刃86が固定刃85に対して上から見て反時計方向に回転する。可動刃86の回転によって、上糸切りハサミ80が閉じて上糸を切断するとともに、ミシン針9に連なる上糸を保持する。
【0034】
さらに操作レバー87がBの位置からCの位置まで操作されると、上糸切断装置70は以下のように動作する。即ち、コロ89が揺動体28のカム28aの山を越えてしまい、揺動体28は前方に押されなくなる。これにより、圧縮バネ30の付勢力によって軸部82及び回動腕29が後方に戻るとともに、上糸切りハサミ80は、閉じた状態のまま後方に向けて移動する。
一方、操作レバー87の回転によって、カム部材32は時計回りに回転する。カム部材32の回転によって、下糸切りレバー33は更に時計回りに回転するとともに、角部32cに当接するコロ74はカム部32aに当接するようになる。コロ74がカム部32aに当接すると、引張バネ75の付勢力によって回動腕29とともに軸部82は正面視して時計回りに回転する。軸部82の時計回りの回転によって、上糸切りハサミ80は閉じた状態で左方へと若干移動する。
【0035】
ここで、操作レバー87がAの位置からCの位置までに移動する間に、下糸切断装置50は以下のように動作する。
前述のように、操作レバー87の回転によって、下糸切りレバー33がその上端部を中心に時計回りに回転する。
駆動腕60が図7においてその中間部を中心に時計回りに回転する。駆動腕60の時計回りの回転によって、リンク部材61を介して下糸切りリンク62が、その中間部を中心に反時計回りに回転し、下糸手繰腕63が、その中間部を中心に反時計回りに回転する。下糸手繰腕63は、反時計回りへの回転によってボビンから導出される下糸を手繰る。一方、下糸切りリンク62の反時計回りの回転によって、下メス57が、その基端部を中心に時計回りに回転する。下メス57が回転している際に、上メス56の延出部56bが針板台51の縁部51bに当接し、上メス56の回転は止まり、一方下メス57は回転し続ける。これにより、下糸切りハサミ52は下糸手繰腕63によって手繰られた下糸を切断する。そして、閉じた状態の下糸切りハサミ52は、切断後にボビンに連なる下糸を保持する。
【0036】
そして、作業者が操作レバー87を放すと、引張バネ31の付勢力によって、操作レバー87はAの位置まで戻る。このとき、上糸切断装置70は以下のように動作する。
操作レバー87の回転によって、コロ89が初期位置に戻る。これにより、揺動体28が初期状態に戻る。この揺動体28の回転に伴って、軸部82及び回動腕29も初期状態に戻る。従って、上糸切りハサミ80の前後の位置関係は第1の待機位置と同じになる。
【0037】
一方、 操作レバー87の戻りによって、 カム部材32は反時計回りに回転し、下糸切りレバー33がその基端部を中心に反時計回りに回転する。これに伴い、押圧体34は係脱体73bへの押圧を解除し、係脱体73bは初期状態に戻る。
一方、カム部材32の反時計方向への回転に従い、コロ74がカム部32aから角部32cそしてカム部32bへと移りながら、回動腕29が引張バネ75の付勢力により時計方向に回転する。これに伴い軸部82を介して上糸切りハサミ80は左方に移動する。
【0038】
以上のように、操作レバー87がCの位置からAの位置に戻った際には、上糸切りハサミ80の前後の位置関係は第1の待機位置に戻るが、左右の位置関係は戻らない。この位置は、上述してきた切断終了後の第2の待機位置である。第2の待機位置にある上糸切りハサミ80は、閉じて上糸を保持した状態である。
【0039】
ここで、操作レバー87がCの位置からAの位置へ回転するまでの間に、下糸切断装置50は以下のように動作する。
前述のように操作レバー87の回転によって、下糸切りレバー33が反時計回りに回転する。これに伴い、駆動腕60が反時計回りに回転し、リンク部材61を介して下糸切りリンク62が、時計回りに回転する。下糸切りリンク62の時計回りの回転によって、下糸手繰腕63が、時計回りに回転し、初期状態に戻る。一方、下糸切りリンク62の時計回りの回転によって、下メス57が、上メス56ごとその基端部を中心に反時計回りに回転し、上メス56の延出部56bと針板台51の縁部51bとの当接が解除される。これにより、下糸切りハサミ52は、閉じた状態で初期位置に戻る。
【0040】
次いで、作業者によってスタートスイッチ125が操作されることによって、ミシンは次サイクルの縫製を開始する。ミシンの縫製開始後、上糸切断装置70及び下糸切断装置50は以下のように動作する。
上糸切断装置70においては、ソレノイド76がOff状態からOn状態となり、レバー77が反時計回り(図4のf方向)に回転する。レバー77の回転に伴い、第二カム面77cがカム当接部86aに当接し、カム当接部86aはついには第一カム面77bに当接する。これにより、上糸切りハサミ80が開くとともに、上糸切りハサミ80は保持していた上糸を放す。上糸切りハサミ80が開いた後にソレノイド76がOff状態となることによって、ロッド76a及びレバー77は元の状態に戻るが、上糸切りハサミ80は開いた状態のままである。
【0041】
その後、ソレノイド79がOff状態からOn状態となり、ロッド79aが左方(図4のe方向)に引かれる。これにより、押圧体91が回動し係脱体73bを下方に向けて押圧し、係止爪29aと係脱体73bとの係止が解除される。これにより、引張バネ75の付勢力によって回動腕29が時計回りに回転する。回動腕29の回転とともに軸部82が回転し、上糸切りハサミ80が左方に移動し、ついには第1の待機位置に戻る。上糸切りハサミ80が第1の待機位置に戻った後に、ソレノイド79はOff状態になり、押圧体91による下方への押圧が解除される。
【0042】
また、縫製が開始すると、下糸切断装置50においては、ソレノイド66がOff状態からOn状態になり、ロッド66aが前方に押し出される。これによって作動部材68が図7の反時計方向に回転し、作動部材68の延出ピン68aがピン56aを押す。これによって、上メス56は下メス57に対して時計方向に回転し、閉じた状態の下糸切りハサミ52が開くとともに下糸を放す。下糸切りハサミ52が開いた後、ソレノイド66はOff状態になり、作動部材68がバネ69により時計回りに回転し、作動部材68が初期状態に戻る。
【0043】
図8には、ボタン穴かがり縫いミシン1の制御回路110の概略ブロック図を示す。
制御回路110は、図8に示すように、CPU(Central Processing Unit)111、ROM(Read Only Memory)112、RAM(Random Access Memory)113、各パルスモータの駆動を行うY送りパルスモータドライバ114、基線送りパルスモータドライバ115、および針振り送りパルスモータドライバ116、上糸切りハサミアクチュエータ(ここではソレノイド76、79)を駆動する上糸切りハサミアクチュエータドライバ117、下糸切りハサミアクチュエータ(ここではソレノイド66)を駆動する下糸切りハサミアクチュエータドライバ118、ミシンモータ5の駆動制御を行うミシンモータドライバ119、押え上げソレノイド127を駆動制御する押え上げソレノイドドライバ126、布切りメス16を下降させる布切りメス下降シリンダ19を駆動するシリンダドライバ120等から構成される。
【0044】
上記ミシンモータドライバ119には、ミシンモータ5の他、ミシンモータ5の回転量を上軸6の回転角度としてコード化するミシンモータエンコーダ121、ミシン針9が上方位置にあることを検出する針上位置センサ122、本発明における検出手段であって上軸6の回転速度を検出するTG(タコジェネレーター)発生器123等が接続されている。
さらにCPU111には、後述する操作パネル100や布押え15の上昇・下降を指示する押えスイッチ124、並びに、ミシンモータ5の駆動スタートを指示するスタートスイッチ125などが接続されている。
【0045】
CPU111は、RAM102の所定領域を作業領域として、ROM112に記憶されている制御プログラムに従い、操作パネル100からのデータや、接続された各種センサーからの検出信号に基づいて、各ドライバを介して各駆動部の制御を行う制御手段である。
ROM112には、操作パネル100からの入力処理や、操作パネル100を介して入力された各種縫製データに基づいてボタン穴かがり縫製のための制御データ(縫い始めから縫い終わりまでの全ての針落ち位置など)を演算する演算処理、演算された制御データに従って縫製動作を行わせる縫製処理等が含まれる制御プログラムが記憶されている。
ROM112には、図11で示すデータ項目のそれぞれに対応して、設定可能なデータ値の範囲、後述するマイナスキー103bとプラスキー103cの1操作で増減し得るデータの単位値、標準のデータ値等が、記憶されている。
さらに、ROM112には、所定の形状パターンのボタン穴かがり縫いを縫うために、図11の全てのデータ値(No.1〜No.17)について設定されているパターンが複数記憶されている。
RAM113は、CPU111の作業領域となるとともに、操作パネル(入力手段)100を介して入力されたボタン穴かがり縫目の各種データを記憶する。
【0046】
図10には、ボタン穴かがり縫いミシン1に備わる操作パネル100を示す。
操作パネル100は、各種の縫製パラメーターを設定入力したり、設定値の表示出力や縫製制御上のエラーの表示出力を行ったりするもので、例えば、ボタン穴かがり縫いミシン1が載置されるミシンテーブル上に設けられる。
操作パネル100には、スタート操作部101、ナンバー操作部102、データ値入力操作部103、及びモード切替操作部104が設けられている。
スタート操作部101には、オペレータが縫製準備が整った旨及び再設定する旨を入力するための準備キー101aと、その状態を表示するLED(Light Emitting Diode)などからなる表示部101bとが設けられている。
【0047】
ナンバー操作部102には、ナンバー表示部102a、ダウンキー102bおよびアップキー102cが設けられている。ナンバー表示部102aは、2桁の7セグメント表示器からなり、データ値を入力するデータ項目のナンバーやパターンナンバーを表示する。
ダウンキー102bおよびアップキー102cは、データ項目のナンバーやパターンナンバーを1つずつずらすキーであり、ダウンキー102bは1つ繰り下げるキー、アップキー102cは1つ繰り上げるキーである。データ項目の内容については後に詳述する。
【0048】
データ値入力操作部103には、データ値表示部103a、マイナスキー103b、プラスキー103cが設けられている。データ値表示部103aは、4桁の7セグメント表示器からなり、各データ項目のデータ値を表示する。マイナスキー103bとプラスキー103cは、データ値を所定の単位値ずつ増減させるキーである。後述するように各データ項目毎に所定の単位値と設定可能範囲とが決められており、マイナスキー103bを押すとデータ値が単位値ずつ小さくなっていき、プラスキー103cを押すとデータ値が単位値ずつ大きくなっていく。
【0049】
モード切替操作部104には、パターンナンバーの設定モードに切り替えるパターンナンバキー104aと、データ入力モードに切り替えるデータキー104bとが設けられている。パターンナンバキー104aおよびデータキー104b上には、それぞれLEDなどの表示器104c、104dが設けられており、これらの点灯によりパターンナンバー設定モードかデータ入力モードかをオペレータに知らせることが出来るようになっている。
作業者は、まず、パターンナンバーキー104aを操作して所望のパターンナンバーを、図11のパターンNo.1、2、3、4…の中から選択し、次いでデータキー104bを操作して各データ項目を選択し、データ値入力操作部103においてデータ値を設定・変更する。なお、パターンナンバーを選択することで、そのパターンごとに予めデータ値が設定されているので、そのデータ値でよい場合には変更する必要はない。
【0050】
ここで、操作パネル100から入力可能で、ボタン穴かがり縫目の形状・大きさなどを決定する縫製データの種類と内容について説明する。
図11には、操作パネルから入力可能なデータ項目を示すデータテーブルを、図10には、図11の各データ項目が、ボタン穴かがり縫いのどの部分の長さを表すかを説明する図を示す。図10には、ボタン穴かがり縫目u0の各部に、データ項目名とデータナンバーを記載している。
【0051】
ボタン穴かがり縫目u0に関して、操作パネル100から入力可能なデータ項目は、図11のデータテーブルに示すとおりである。
即ち、データナンバー1〜16は、ボタン穴の長さである布切り長さデータ(ボタン穴溝u1の長さ)、メス溝右幅データ(ボタン穴溝u1と右側縫い部u4の左端との距離)、メス溝左幅データ(ボタン穴溝u1と左側縫い部u2の右端との距離)、かがり幅データ(側縫い部u2、u4の左右幅長)、閂止め長さデータ(閂止め部u3、u5の縦長さ)、すきま長さデータであるすきまデータ(第1閂止め部u3の下端とボタン穴溝u1の上端との距離)および第2すきまデータ(第2閂止め部u5の上端とボタン穴溝u1の下端との距離)、平行部ピッチデータ(側縫い部u2、u4の2針間の縦方向の距離)、閂止め部ピッチデータ(閂止め部u3、u5の2針間の縦方向の距離)、閂止め幅右補正データ(閂止め部u3、u5の右端と右側縫い部u4の右端とのずれ長さ)、閂止め幅左補正データ(閂止め部u3、u5の左端と左側縫い部u2の左端とのずれ長さ)、左平行部張力データ(左側縫い部u2の縫製時の糸張力)、右平行部張力データ(右側縫い部u4の縫製時の糸張力)、第1閂止め部張力データ(第1閂止め部u3の縫製時の糸張力)、第2閂止め部張力データ(第2閂止め部u5の縫製時の糸張力)、最高速制限データ(ミシン回転数の最高制限数)等の各項目である。
【0052】
また、本発明では、図16に示すように、被縫製物にかがり縫い目を施す場合に、かがり縫い目の前端の閂止め部U(図10のu5)の長さが短い場合には布送り板14を所定の距離ΔL分だけ送るようにした。
即ち、図11のデータテーブルに示すようにデータナンバー17に、針・メスすきま長さデータ(図16に示すL1)を入力可能とした。そして、CPU(ボタン穴判別手段)111にて、図11のデータナンバー5の閂止め長さデータとデータナンバー7の第2すきまデータとを合わせた長さが演算され、この長さと針・メスすきま長さデータが比較される。閂止め長さデータと第2すきまデータとを合わせた長さが針・メスすきま長さデータより短いと判別された場合は、それらの差(ΔL)が演算される。そして、CPU(布送り制御手段)111にて送り板14を制御しつつ、原点位置から所定の距離ΔLだけ縫製前に移動させるようにした。
【0053】
図12〜図15に、上記構成を有するボタン穴かがり縫いミシン1においてCPU111の制御の下で行われる各処理のフローチャートを示した。
図12には、ボタン穴かがり縫いのゼネラルフローを示した。
図12のフローは、例えばミシン1の電源がONした際に開始する。まず、ステップS1において、作業者により操作パネル100の設定処理が行われる。ステップS2において、準備キー101aが操作されたか否か判定され、操作されていればステップS3に移行し、操作されていなければステップS1に戻る。
ステップS3では、操作パネル100を介して設定されたデータに基づいて、針落ち位置を演算する処理を行う。また、後で詳述するように、縫製前に予め布送り板14を移動させる場合は、ここで移動する。 次いでステップS4において、準備キー101aが押されたか否か判定する。ここで、準備キー101aが押されていれば、再びステップS1に戻り再設定可能になる。ステップS4で準備キー101aが押されていなければ、ステップS5に移行し、ここで作業者によって縫製物がセットされる。次いで、ステップS6において、スタートスイッチ125がONになったか否か判定する。作業者の操作により、スタートスイッチ125がONになれば、ステップS7に移行し、ここで、かがり縫い、ボタン穴開け、糸切りなどを含む縫製処理が行われる。ステップS6でスタートスイッチ125がONになっていないと判定すれば、ステップS4に戻る。
次のステップS8では、縫い位置は0か否かを判定する。即ち、布送り板14を移動させずに、そのままの位置でボタン穴を形成できる場合は、縫い位置は0と判定され上記したように縫製途中にてボタン穴開けが終了している。この場合、ステップS4に戻り、次のボタン穴の形成の準備を行なう。逆に、ステップS3で、布送り板14が原点位置から所定の距離だけ移動した場合には、縫い位置は0ではないと判定され、次のステップS9に進み、縫い終わり後にメス駆動処理を行なう。そして、ボタン穴開けを行ないボタン穴が完成する。次いで、ステップS4に戻り、次のボタン穴の形成の準備に入る。
【0054】
図13は針落ち位置演算(ステップS3)のサブルーチンを示したものである。
図13で示す、針落ち位置演算では、まずステップS31にて布送り板14の調整のための縫い位置判断処理を行なう。この縫い位置判断処理(ステップS31)のサブルーチンを図14に示したものである。
まず、ステップS311にて、図11で示したデータNo.5の閂止め長さデータ及びNo.7の第2スキマデータを加算した値(A)がRAM113にセットされ、また、データNo.17の針・メスすきま長さデータ(B)がRAM113にセットされる。 次いでステップS312に進み、A≧Bか否か判定する。A≧Bである場合は、ステップS313にて縫い位置が0と判定され、次のステップS315にて布送り板14は移動しない。逆に、A≧Bでないと判定された場合は、ステップS314にてB−A(図16で示すΔL)が演算される。そして次のステップS315にて、B−Aの長さだけ、布送り板14を後ろの縫い位置まで移動させる処理を行い、この処理を終了し、図13のステップS32に戻る。
次のステップS32からステップS37までは、縫い始め位置演算(ステップS32)、左平行部演算(ステップS33)、第1閂止め部演算(ステップS34)、右平行部演算(ステップS35)、第2閂止め部演算(ステップS36)、縫い終わり演算(ステップS37)の針落ち位置の演算を行なう。
【0055】
なお、前述したように、布送り板14が所定の距離(ΔL)だけ、移動している場合は、図10で示す縫い始め位置であるP1は、移動しない場合と比較してΔLだけ後ろ側に位置することになる。
他の針落ち地点も同様に、ΔLだけそれぞれ針落ち位置が移動する。
【0056】
図15は、図12で示す縫い終わり後のメス駆動処理(ステップS9)のサブルーチンを示したものである。図12で示すステップS8において、縫い位置が0ではないと判定された場合には、予め布送り板14を移動させ、かがり縫目を形成した後に、メス16を駆動させてボタン穴を形成する。
すなわち、ステップS91では、ΔLの長さだけ布送り板14を移動させる。次に、ステップS92でメス16を駆動させる。その後、ステップS93にて一定時間経過後、メス16の駆動を停止し、メス16が初期位置に戻ったことを確認してから、縫い始め位置まで布送り板14を移動させる。
【0057】
以上のボタン穴かがり縫いミシン1によれば、閂止め長さと第2スキマ長さを合わせた長さが、針とメスに挟まれた部分の長さより短い場合には、予め布送り板14を算定された値に基づいて移動させる。 そして、かがり縫い目の縫製が終了後に、ボタン穴を形成するようにした。したがって、閂止め長さが短く、針9とメス16に挟まれた部分にボタン穴の一部が形成される場合でも、布送り板14を移動させて切開することができる。
【0058】
また、布送り板14の移動距離は、予め操作パネル100で入力された設定データに基づいて、CPU110で移動距離が算定され移動するので、布送り板14を短時間で所定の位置に正確に移動させることができる。
【0059】
また、上糸切りハサミ80による上糸の開放をソレノイド76により行い、下糸切りハサミ52による下糸の開放をソレノイド66により行うように構成した。つまり、上糸・下糸の保持解除は、従来のように布送り板14と連動せず、独立した駆動源を用いた。
従って、布送り板14を移動させた際に、上下の糸切りハサミ52、80が連動して作動しない。したがって、ハサミの開放タイミングがずれてかがり縫い目の縫製途中で、巻き込み不良が発生したりせず、その都度上下の糸切りハサミ52、80の調整を行なう必要がない。
【0060】
なお、以上の実施例によれば、針9と布切りメス16とが、図16に示すような位置関係にある場合について説明したが、このような制限がある場合に限らず、布送り板14を自由に移動させながら、ボタン穴かがり縫目を形成することができる。このため、多種多様なデザインや縫製方法に対応することができるようになる。
【0061】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、上糸切りハサミによる上糸の保持解除と、下糸切りハサミによる下糸の保持解除のそれぞれを行うためのアクチュエータを備えていることから、上糸・下糸の保持解除は独立した駆動源により動作する。
したがって、従来では布送り板を移動させた場合に、上下の糸切ハサミが連動して動作したのに対し、請求項1記載の発明では、互いに独立して制御できる。
【0062】
このように、請求項1記載の発明によれば、かがり縫い目前端の閂止め部の長さが短い場合、布送り板を移動させた後に、メスを駆動させてボタン穴を切開する。この場合、糸の開放の駆動源と布送り板を別としたので、布送り板の位置を変更する際に、次縫製の開始時にハサミの開放のタイミングがずれて、縫い目が乱れることがない。また、これを防ぐために上下の糸切りハサミの調整を行なう必要がなく、操作が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例としてのボタン穴かがりミシンの外観を示す斜視図である。
【図2】図1のボタン穴かがりミシンの布送り機構と針の昇降機構を主に示す透視図である。
【図3】上糸切断装置を示す平面図である。
【図4】上糸切断装置及び下糸切断装置の分解斜視図である。
【図5】上糸切断装置を示す側面図である。
【図6】上糸切断装置及び下糸切断装置の動作を説明するための概略図である。
【図7】下糸切断装置を示す底面図である。
【図8】図1のボタン穴かがりミシンの制御回路を示すブロック図である。
【図9】操作パネルの正面図である。
【図10】図11の各データ項目と、ボタン穴かがり縫いとの対応を説明する図である。
【図11】操作パネルから入力可能なパラメータを示すデータテーブルである。
【図12】操作パネル上でのパラメータの入力からボタン穴の形成までを示すフローチャートである。
【図13】図12の針落ち位置演算を示す図である。
【図14】図12の縫い位置判断処理を示す図である。
【図15】図12の縫い終わり後のメス駆動処理を示す図である。
【図16】被縫製物をミシンにセットした状態を示した図である。
【符号の説明】
1 ボタン穴かがりミシン
9 ミシン針
13 Y送り駆動手段
14 布送り板(布送り手段)
16 布切りメス
19 布切りメス下降シリンダ(布切り手段)
50 下糸切り手段(下糸切断装置)
52 下糸切りハサミ
66 アクチュエータ(ソレノイド)
70 上糸切断装置(上糸切り手段)
76 アクチュエータ(ソレノイド)
80 上糸切りハサミ
100 操作パネル(入力手段)
110 制御回路
111 CPU(開放位置調整手段、ボタン穴判別手段、布送り制御手段)112 ROM
113 RAM

Claims (1)

  1. 上下動するミシン針と、
    布を送る布送り手段と、
    前記布送り手段を駆動するパルスモータと、
    布切りメスを上下動して布にボタン穴を形成する布切り手段と、
    上糸を切断し、切断後の上糸を保持する上糸切りハサミを有する上糸切り手段と、
    下糸を切断し、切断後の下糸を保持する下糸切りハサミを有する下糸切り手段と、
    上糸切りハサミによる上糸の保持解除と、下糸切りハサミによる下糸の保持解除のそれぞれを行なうためのアクチュエータと、
    ボタン穴かがりに関する設定データを入力する入力手段と、
    縫い始めからの上糸・下糸の開放位置を設定する開放位置調整手段とを備えた穴かがりミシンにおいて、
    かがり縫い目の前端の閂止め部の長さと前記閂止め部の後端とボタン穴溝の前端との間の長さとを合わせた長さである第一の長さが、前記ミシン針と前記布切りメスに挟まれた部分の長さである第二の長さより短いと判別した場合に、前記第二の長さと前記第一の長さの差である第三の長さを演算し、縫製前に前記パルスモータにより前記第三の長さだけ前方に前記布送り手段を移動させ、縫製後に前記第三の長さだけ後方に前記布送り手段を移動させて前記布切り手段によりボタン穴を形成させるように制御するとともに、前記開放位置調整手段により設定された縫い始めからの上糸・下糸の開放位置に基づいて、前記パルスモータによる前記布送り手段の駆動とは独立して、前記アクチュエータを制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とするボタン穴かがりミシン。
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