JP5054944B2 - 車両用内装部品及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、合成樹脂製の表皮材にパーツの縫い合わせを擬似的に再現した線状溝やステッチを形成することで本皮を使用しているような外観を持たせて高級感を演出した車両用内装部品及びその製造方法に関する。
自動車の車室内には、インストゥルメントパネルやセンターコンソール、ドアパネルなどの各種車両用内装部品が取り付けられている。これらの車両用内装部品は、質感向上を図るために、所定形状に成形された基材の表面に表皮材を被着した構造とされているものが多い。ここで、車両用内装部品の表皮材としては本皮が最も高級感があるとされているが、本皮は伸縮性に劣るために、車両用内装部品の表皮材として用いるには、複数のパーツに裁断してそれらを縫合することで基材の形状に合わせる必要があり、製造コストが嵩む。また、本皮は素材自体が高価なため、車両用内装部品の表皮材として本皮を用いると、コストアップが避けられない。
このため、近年では、車両用内装部品の表皮材として、成形性に優れ、且つ、比較的安価に製造可能な合成樹脂製の表皮材を用いることが主流となっている。また、その合成樹脂製の表皮材の表面に絞模様を形成したり、基材のコーナー部などに対応する位置にパーツの縫い合わせを擬似的に再現した線状溝やステッチを形成したりすることで、本皮を使用しているような外観を持たせて高級感を演出する試みもなされている(例えば、特許文献1参照。)。
特公平7−4819号公報
ところで、本皮使用の外観を持たせるために合成樹脂製の表皮材に線状溝やステッチを形成する場合、特許文献1に記載されているように、表皮材に線状溝を先に形成して、その線状溝を目安にしながらその両脇に縫糸を縫製加工することでステッチを形成するようにしているのが一般的である。しかしながら、このような手法で表皮材にステッチを形成すると、目安となる線状溝とステッチ形成位置とが離れているために、線状溝に沿って正確にステッチを形成することが難しく、作業性が悪いことに加え、蛇行したステッチが形成されてしまう場合があり、車両用内装部品の見栄えを損なう要因となるという問題があった。
本発明は、以上のような問題を解消すべく創案されたものであって、合成樹脂製の表皮材に線状溝に沿った正確なステッチを簡便に形成できるようにして、見栄えが良く高品質な車両用内装部品を製造することができる車両用内装部品の製造方法及びその方法で製造された車両用内装部品を提供することを目的としている。
本発明に係る車両用内装部品の製造方法は、合成樹脂製の表皮材に工具の転写面を押し当てて当該転写面の形状を表皮材に転写させることで線状溝を形成し、表皮材に工具の転写面を押し当てた際に当該転写面の端縁が当接する位置に形成される加工跡をガイドとしてステッチを形成する。
また、本発明に係る車両用内装部品は、合成樹脂製の表皮材に線状溝を加工したときに形成された加工跡上に重なるようにステッチが形成されている。
本発明によれば、合成樹脂製の表皮材に線状溝に沿った正確なステッチを簡便に形成でき、見栄えが良く高品質な車両用内装部品を製造することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[車両用内装部品の構成]
図1は、本発明を適用した車両用内装部品の一部を拡大して示す斜視図である。この車両用内装部品は、質感向上のために、所定形状に成形された基材1の表面に表皮材2を被着した構造とされている。表皮材2は、例えば、パウダースラッシュ成形(粉体回転成形)、真空成形(凸・凹引き成形)、射出成形、射出プレス成形、射出圧縮成形、ブロー成形、ウレタンスプレー成形、押し出しプレス成形、革絞プレス成形など、既知の樹脂成形技術により基材1の表面形状に倣う形に成形された合成樹脂製の部材であり、基材1の表面に被着されている。
表皮材2の表面は、あたかも本皮を使用しているような高級感を演出するために、本皮の表面模様に似せた絞模様に加工されている。この表皮材2表面の絞模様は、例えば、上述した各種樹脂成形で使用する成形型の表面を絞模様を反転させた表面形状に加工しておくことにより、表皮材2の成形時に同時に加工することが可能である。
また、表皮材2には、本皮使用の場合のパーツの縫い合わせを擬似的に再現するために、パーツの境界部分に相当する線状溝3や、この線状溝3に沿ったステッチ4が形成されている。線状溝3は、詳細を後述するが、超音波加工機や高周波誘導加熱加工機などを用い、工具ホーンの転写面を表皮材2に転写させることで形成されている。また、ステッチ4は、縫製ミシンなどを用いて、線状溝3の両脇に縫糸を縫製加工することで形成されている。そして、特に本発明を適用した車両用内装部品では、このステッチ4が、線状溝3の加工時に線状溝3に沿ってその両脇に形成される加工跡をガイドとして、例えばその加工跡上に重なるように形成されている。
[車両用内装部品の製造方法]
次に、本発明を適用した車両用内装部品の製造方法について、本発明に特徴的な部分、つまり表皮材2に線状溝3やステッチ4を形成する方法を中心に説明する。
表皮材2は、上述したように、粉末状、粒子状、或いはシート状の樹脂材料が既知の樹脂成形技術により基材1の表面形状に倣う形に成形されることで作製される。そして、この表皮材2に対して、以下で説明する「線状溝形成工程」と「ステッチ形成工程」とにより線状溝3とステッチ4とが形成される。なお、表皮材2は単一の樹脂材料を用いた単層構造に作製されてもよいし、複数の樹脂材料を用いて多層構造に作製されていてもよい。また、以下の「線状溝形成工程」と「ステッチ形成工程」は、表皮材2を基材1に被着させる前の段階で行ってもよいし、表皮材2を基材1に被着させた後の段階、或いは基材1と表皮材2とを一体成形する場合には、その一体成形された成形物に対して行うようにしてもよい。また、シート状の樹脂材料を真空成形などで成形して表皮材2とする場合には、「線状溝形成工程」と「ステッチ形成工程」とを先に行って線状溝3とステッチ4を形成した後に、真空成形などで基材1の表面形状に倣う形状に成形するようにしてもよい。
<線状溝形成工程>
線状溝形成工程では、超音波加工機や高周波誘導加熱加工機などの工作機械を用い、例えば図2に示すような工具ホーン10の転写面10aを表皮材2に押し当てて、この工具ホーン10の転写面10aの形状を表皮材2に転写させることにより、表皮材2に線状溝3を形成する。ここで、工具ホーン10は、例えば鋼材などの金属材料が長尺のブロック状に成形されてなるものであり、その転写面10aには、表皮材2に形成する線状溝3に対応した形状の突起部11が設けられている。この工具ホーン10の具体的な寸法を例示すると、例えば、長さLが150mm、転写面10aの突起部11先端から転写面10a端縁までの距離S1,S2がともに3.25mmとされている。つまり、突起部11は、工具ホーン10の長手方向に沿って転写面10aの中央に設けられており、突起部11の先端部から転写面10aの幅方向の両端縁までの距離S1,S2が等しくされている。
表皮材2に線状溝3を形成するには、まず、図3(a)に示すように、超音波加工機や高周波誘導加熱加工機などの工作機械20に工具ホーン10を取り付け、工具ホーン10の直下に表皮材2をセットする。そして、図3(b)に示すように、工具ホーン10の転写面10aを表皮材2に押し当て、加圧した状態で、超音波加工であれば表皮材2に超音波振動をあたえることで表皮材2に内部発熱を生じさせ、また高周波誘導加熱加工であれば高周波の誘導加熱作用を利用して表皮材2内部発熱を生じさせて、工具ホーン10の転写面10aの形状を表皮材2に転写させる。その後、転写に十分な時間が経過したら、図3(c)に示すように、工具ホーン10による加圧を停止して工具ホーン10を表皮材2から離間させる。これにより、表皮材2には、工具ホーン10の転写面10aに設けられた突起部11を反転させた形状の線状溝3が形成されることになる。
以上のような手法で表皮材2に線状溝3を形成した場合、線状溝3の両脇、すなわち工具ホーン10の転写面10aを表皮材2に押し当てた際に転写面10aの幅方向の両端縁が当接する位置(上述した寸法の工具ホーン10を用いた場合は線状溝3から3.25mm離れた位置)には、図4に示すように、段差やバリなどの加工跡5が形成されることになる。この加工跡5は、線状溝3に正確に沿ったかたちで線状溝3の両脇に形成されるので、本発明では、この加工跡5を次のステッチ形成工程で表皮材2にステッチ4を形成する際のガイドとして利用する。
<ステッチ形成工程>
ステッチ形成工程では、表皮材2に形成された線状溝3の両脇に縫製ミシンなどを用いて縫糸を縫製加工することで、表皮材2にステッチ4を形成する。このとき、表皮材2の線状溝3の両脇には、上述した線状溝形成工程において工具ホーン4を表皮材2に押し当てて線状溝3を形成したことにより加工跡5が形成されているので、ステッチ4を形成する際には、図5に示すように、この加工跡5をガイドとして縫糸を縫製加工する。これにより、線状溝3に沿った正確な位置にステッチ4が形成されることになる。
ここで、ステッチ4の詳細な形成位置は、例えば加工跡5に隣接した位置など、加工跡5をガイドとしてステッチ4を形成できる位置とすればよいが、最終的に加工跡5が表皮材2の表面に残った状態となっていると車両用内装部品の美観が損なわれる場合があるので、加工跡5上に重なるようにステッチ4を形成して、ステッチ4で加工跡5を隠すようにすることが望ましい。
[実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、合成樹脂製の表皮材2に工具ホーン10の転写面10aを押し当てて、転写面10aの形状を表皮材2に転写させることで転写面10aに設けられた突起部11を反転させた形状の線状溝3を表皮材2に形成し、その後、線状溝3の加工時に線状溝3の両脇に形成された加工跡5をガイドとして表皮材2にステッチ4を形成するようにしているので、表皮材2に線状溝3に沿った正確なステッチ4を簡便に形成することができ、見栄えが良く高品質な車両用内装部品を製造することができる。また、ステッチ4を加工跡5上に重なるように形成することにより、加工跡5をステッチ4で隠して、車両用内装品の美観を向上させることができる。
[応用例]
以上、本発明の一適用例としての実施形態を例示したが、本発明を適用するにあたっては、以下に示すような様々な応用が可能である。
<応用例1>
上述した実施形態の説明では、「線状溝形成工程」において、表皮材2に押し当てる工具ホーン10として長尺のブロック状に成形されたものを用いているが、このようなブロック状の工具ホーン10に代えて、図6に示すようなローラタイプの工具30を用いるようにしてもよい。このローラタイプの工具30は、ローラ周面が転写面30aとされており、この転写面30aに突起部31が設けられている。そして、この突起部31が設けられた転写面30aを表皮材2に押し当てて加圧した状態で、ローラタイプの工具30を表皮材2に対して相対移動させることで、その移動軌跡に沿って表皮材2に線状溝3が形成されることになる。
このローラタイプの工具30を用いて表皮材2に線状溝3を形成するようにした場合には、直線的な線状溝3だけでなく曲線的な線状溝3の形成も可能となり、様々なデザインの車両用内装部品に対応することができる。また、ローラタイプの工具30を用いて線状溝3を形成した場合にも、線状溝3の両脇に加工跡5が形成されるので、この加工跡5をガイドとしてステッチ4を形成すれば、線状溝3に沿った正確なステッチ4を簡便に形成することができる。
<応用例2>
また、「線状溝形成工程」では、上述したように、工具ホーン10の転写面10aの形状を表皮材2に転写させることで表皮材2に線状溝3を形成するようにしているので、例えば図7に示すように、工具ホーン10の転写面10aに所望の模様40を予め形成しておくことにより、表皮材2に線状溝3を形成するのと同時に、工具ホーン10の転写面10aが押し当てられた部分を、他の部分の表面模様(上述した例では本皮の表面模様に似せた絞模様)とは異なる表面模様に加工することが可能となる。この場合、表皮材2の表面模様が変化する境界部分に線状溝3加工時の加工跡5が形成されるので、「ステッチ形成工程」においてこの加工跡5上に重ねてステッチ4を形成すれば、表面模様が変化する境界部分に正確にステッチ4を形成することができ、さらなる美観の向上を図ることができる。
<応用例3>
また、「線状溝形成工程」では、上述したように、工具ホーン10の転写面10aを表皮材2に押し当てて加圧するので、例えば図8に示すように、工具ホーン10の転写面10aに所望の色の塗料50を塗布しておくことにより、表皮材2に線状溝3を形成するのと同時に、工具ホーン10の転写面10aが押し当てられた部分を、他の部分とは異なる色に着色することが可能となる。この場合も、表皮材2の色が変化する境界部分に線状溝3加工時の加工跡5が形成されるので、「ステッチ形成工程」においてこの加工跡5上に重ねてステッチ4を形成すれば、色が変化する境界部分に正確にステッチ4を形成することができ、さらなる美観の向上を図ることができる。
<応用例4>
また、「線状溝形成工程」では、上述したように、工具ホーン10の転写面10aを表皮材2に押し当てて加圧するので、例えば図9に示すように、工具ホーン10の転写面10aに所望のホットスタンプ用転写フィルム箔60などを貼付しておくことにより、表皮材2に線状溝3を形成するのと同時に、工具ホーン10の転写面10aが押し当てられた部分に転写フィルム箔60を転写させて、他の部分とは異なる外観に加工することが可能となる。この場合も、表皮材2の外観が変化する境界部分に線状溝3加工時の加工跡5が形成されるので、「ステッチ形成工程」においてこの加工跡5上に重ねてステッチ4を形成すれば、外観が変化する境界部分に正確にステッチ4を形成することができ、さらなる美観の向上を図ることができる。
<その他>
なお、以上の説明は、線状溝3の加工時に工具ホーン10の転写面10aの端縁が当接する位置に形成される加工跡5をガイドとして表皮材2にステッチ4を形成することを前提としているが、例えば図10に示すように、工具ホーン10の転写面10aをその端縁が若干隆起した形状としておけば、線状溝3の加工時に形成される加工跡5を目立たせて明確なステッチガイドとすることができ、線状溝3に沿ったステッチ4の形成をより簡便に行うことが可能となる。
また、このようなステッチガイドは、表皮材2の表面だけでなく裏面にも形成されていることが望ましく、表皮材2の裏面にもステッチガイドを形成しておけば、表皮材2の裏側から縫製加工を行ってステッチ4を形成する必要がある複雑な形状の車両用内装部品を製造する際にも、表皮材2に正確なステッチ4を簡便に形成することが可能となる。なお、表皮材2の裏面にステッチガイドを形成するには、例えば、表皮材2を成形する成形型の所定箇所、具体的には線状溝3の加工時に加工跡5が形成される位置に対応した箇所に突起などを形成しておけばよい。
本発明を適用した車両用内装部品の一部を拡大して示す斜視図である。 表皮材に線状溝を形成する際に用いられる工具ホーンの一例を示す斜視図である。 線状溝形成工程を説明する図であり、(a)は工具ホーンを工作機械に取り付けた状態を示す模式図、(b)は工具ホーンの転写面を表皮材に押し当てて加圧した状態を示す模式図、(c)は転写が完了して工具ホーンを表皮材から離間させた状態を示す模式図である。 線状溝の加工に伴って表皮材に加工跡が形成された様子を拡大して示す図である。 線状溝の加工時に形成された加工跡をガイドとしてステッチを形成する様子を示す斜視図である。 ローラタイプの工具を示す図である。 工具ホーンの転写面に所望の模様を予め形成した様子を示す模式図である。 工具ホーンの転写面に所望の色の塗料を塗布した様子を示す模式図である。 工具ホーンの転写面に所望の転写フィルム箔を貼付した様子を示す模式図である。 工具ホーンの転写面の端縁を若干隆起させておき、線状溝の加工時に形成される加工跡を目立たせて明確なステッチガイドとする様子を示す模式図である。
符号の説明
2 表皮材
3 線状溝
4 ステッチ
5 加工跡
10 工具ホーン
10a 転写面
11 突起部

Claims (5)

  1. 合成樹脂製の表皮材(2)にパーツの縫い合わせを擬似的に再現した線状溝(3)及びステッチ(4)が形成されてなる車両用内装部品の製造方法であって、
    前記表皮材(2)に工具(10)の転写面(10a)を押し当てて当該転写面(10a)の形状を前記表皮材(2)に転写させることで前記線状溝(3)を形成する線状溝形成工程と、
    前記表皮材(2)に前記工具(10)の転写面(10a)を押し当てた際に当該転写面(10a)の端縁が当接する位置に形成される加工跡(5)をガイドとして前記ステッチ(4)を形成するステッチ形成工程とを有することを特徴とする車両用内装部品の製造方法。
  2. 前記ステッチ形成工程において、前記ステッチ(4)を前記加工跡(5)上に重ねて形成することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造方法。
  3. 前記線状溝形成工程において、前記表皮材(2)に工具(10)の転写面(10a)を押し当てて当該転写面(10a)の形状を前記表皮材(2)に転写させることで、前記線状溝(3)の形成と同時に、前記表皮材(2)の前記転写面(10a)が押し当てられた部分を他の部分とは異なる表面模様に加工することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造方法。
  4. 前記線状溝形成工程において、前記工具(10)の転写面(10a)に塗料(50)を塗布して当該塗料(50)が塗布された転写面(10a)を前記表皮材(2)に押し当てることで、前記表皮材(2)の前記転写面(10a)が押し当てられた部分を他の部分とは異なる色に着色することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造方法。
  5. 前記線状溝形成工程において、前記工具(10)の転写面(10a)に転写フィルム箔(60)を貼付して当該転写フィルム箔(60)が貼付された転写面(10a)を前記表皮材(2)に押し当てることで、前記表皮材(2)の前記転写面(10a)が押し当てられた部分を他の部分とは異なる外観に加工することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造方法。
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