JP5054314B2 - 熱安定性に優れたポリエーテルスルホン系樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

熱安定性に優れたポリエーテルスルホン系樹脂組成物及びその製造方法 Download PDF

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Description

ポリエーテルスルホン系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブとを均一に分散させたポリエーテルスルホン系樹脂組成物、およびその製造方法に関する。更に詳しくは、、耐熱性、寸法安定性、および機械的強度に優れ、機械部品、電気・電子部品、自動車部品など広範囲な工業用途に好適なポリエーテルスルホン系樹脂組成物、およびその製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、従来にない機械的物性、電気的特性、熱的特性等を有するためナノテクノロジーの有力な素材として注目を浴び、広範な分野で応用の可能性が検討され、一部実用化が開始されている。
ポリマーコンポジットとしては、フィラーにカーボンナノチューブを用いてポリマーに添加することで、ポリマーの機械的物性、導電性、耐熱性等を改質する試みも行われている。
例えば、ビスフェノールAやポリカーボネートを化学結合で表面修飾したカーボンナノチューブを用いることでポリカーボネートの力学的特性が向上するとの報告がある。(特許文献1参照)
また、カーボンナノチューブを共役系高分子で被覆することで、カーボンナノチューブの分散性を極めて高め、少ないカーボンナノチューブの量でマトリクス樹脂に高い導電性を付与するとの報告(特許文献2参照)がある。
また、ポリメチルメタクリレートやポリスチレンのような側鎖構造を有するポリマーとカーボンナノチューブからなるポリマーコンポジットに関して、共役系高分子で単層カーボンナノチューブを被覆することにより、わずかな単層カーボンナノチューブ添加量であっても弾性率が飛躍的に向上するとの報告(特許文献3参照)がある。
近年、カーボンナノチューブと構造的な類似性を有する窒化ホウ素ナノチューブも、従来にない特性を有する材料として注目を浴びている(特許文献4参照)。窒化ホウ素ナノチューブは、カーボンナノチューブに匹敵する優れた機械的物性、熱伝導性を有するだけでなく、化学的に安定でカーボンナノチューブよりも優れた耐酸化性を有することが知られている。また、絶縁性であるため、絶縁放熱材料としても期待できる。特許文献3にはカーボンナノチューブの代わりに窒化ホウ素ナノチューブを使用しても良いとの記載があるが、飛躍的な効果を得るためには側鎖構造を有するポリマーに限定されておりそれ以外の主鎖型芳香族ポリマーでの具体的な報告はされていない。
一方、芳香族ポリエーテルスルホン樹脂は、その卓越した耐熱性、機械的特性、電気的特性、成形加工性により射出成形回路基板や光ディスク、磁気ディスク等のディスク用支持板、電気絶縁性保護膜、集積回路用層間絶縁膜などの電気、電子部品、自動車部品、航空機部品、医療用機器部分などに数多く用いられている。更に耐熱特性や熱寸法安定性の向上によりこれらの用途の拡大のみならず、宇宙工学部品等の新用途への展開も進むものと期待される。従来、ポリエーテルスルホン系樹脂に窒化ホウ素ナノチューブを添加して成形することにより耐熱特性などの改善された成型体を得たとの報告はない。
特開2004−323738号公報 特開2004−2621号公報 特開2004−244490号公報 特開2000−109306号公報
本発明の目的は、ポリエーテルスルホン樹脂単体に比較して、耐熱性、寸法安定性が向上した窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリエーテルスルホン樹脂組成物および成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、窒化ホウ素ナノチューブをポリエーテルスルホン系樹脂に添加することにより、耐熱性、および熱的寸法安定性に優れたポリエーテルスルホン系樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明は、
1.ポリエーテルスルホン系樹脂100重量部と窒化ホウ素ナノチューブ(官能基化され可溶性にされたものを除く)0.01〜50重量部とからなるポリエーテルスルホン系樹脂組成物。
2.平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上である窒化ホウ素ナノチューブであることを特徴とする上記記載のポリエーテルスルホン系樹脂組成物。
3.上記記載のポリエーテルスルホン系樹脂組成物の成形体。
により構成される。
本発明によりポリエーテルスルホン系樹脂中に窒化ホウ素ナノチューブが均一に分散している樹脂組成物が得られ、優れた耐熱性、寸法安定性を従来のポリエーテルスルホン系樹脂に付与することができ、また優れた熱伝導性を付与することが期待される。また本発明のポリエーテルスルホン系樹脂組成物は、溶液、溶融成形などの任意の成形方法により、所望の形状に成形でき、機械部品などの樹脂成形品、・産業資材、電気電子用途などの成形体として好適に使用することができる。
以下本発明を詳細に説明する。
(窒化ホウ素ナノチューブ)
本発明において、窒化ホウ素ナノチューブとは、窒化ホウ素からなるチューブ状材料であり、理想的な構造としては6角網目の面がチューブ軸に平行に管を形成し、一重管もしくは多重管になっているものである。窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は、好ましくは0.4nm〜1μm、より好ましくは0.6〜500nm、さらにより好ましくは0.8〜200nmである。ここでいう平均直径とは、一重管の場合、その平均外径を、多重管の場合はその最外側の管の平均外径を意味する。平均長さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。アスペクト比は、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。アスペクト比の上限は、平均長さが10μm以下であれば限定されるものではないが、上限は実質25000である。よって、窒化ホウ素ナノチューブは、平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上であることが好ましい。
窒化ホウ素ナノチューブの平均直径およびアスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることが出来る。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)測定を行い、その画像から直接窒化ホウ素ナノチューブの直径および長手方向の長さを測定することが可能である。また組成物中の窒化ホウ素ナノチューブの形態は例えば繊維軸と平行に切断した繊維断面のTEM(透過型電子顕微鏡)測定により把握することが出来る。
窒化ホウ素ナノチューブは、アーク放電法、レーザー加熱法、化学的気相成長法を用いて合成できる。また、ホウ化ニッケルを触媒として使用し、ボラジンを原料として合成する方法も知られている。また、カーボンナノチューブを鋳型として利用して、酸化ホウ素と窒素を反応させて合成する方法もが提案されている。本発明に用いられる窒化ホウ素ナノチューブは、これらの方法により製造されるものに限定されない。窒化ホウ素ナノチューブは、強酸処理や化学修飾された窒化ホウ素ナノチューブも使用することができる。
窒化ホウ素ナノチューブは共役系高分子で被覆されていることが好ましい。窒化ホウ素ナノチューブを被覆する共役系高分子は、窒化ホウ素ナノチューブと相互作用が強く、マトリクス樹脂であるポリエーテルスルホン系樹脂との相互作用も強いものが好ましい。これらの共役系高分子としては、例えば、ポリフェニレンビニレン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリフェニレン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリアセチレン系高分子等が挙げられる。中でも、ポリフェニレンビニレン系高分子、ポリチオフェン系高分子が好ましい。
本発明の樹脂組成物においては、ポリエーテルスルホン系樹脂100重量部に対して、窒化ホウ素ナノチューブが、0.01〜50重量部の範囲内で含有されるものである。本発明におけるポリエーテルスルホン系樹脂100重量部に対する上記窒化ホウ素ナノチューブの含有量の下限は、0.01重量部であるが、本発明においては特に、0.05重量部以上が好ましく、より好ましくは0.1重量部以上であることが好ましい。一方、ポリエーテルスルホン系樹脂100重量部に対する窒化ホウ素ナノチューブの含有量の上限は、上述したように50重量部以下であるが、本発明においては、40重量部以下であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、窒化ホウ素ナノチューブをポリエーテルスルホン系樹脂に均一に分散させることが可能となるからである。また、窒化ホウ素ナノチューブが過度に多い場合は、均一な樹脂組成物を得ることが困難となり好ましくない。本発明の樹脂組成物は、窒化ホウ素ナノチューブに由来する窒化ホウ素フレーク、触媒金属等を含む場合がある。
本発明で使用されるポリエーテルスルホン樹脂とは主鎖が芳香族ビスフェノールとジハロゲノアリールスルホンの縮合構造で結ばれた高分子の総称であるが、これらの化合物を塩基性触媒の存在下に溶液あるいは溶融重合法等の公知の方法で重縮合させて得ることができる。
ここで用いられる芳香族ビスフェノールとしては、例えばヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3、3、5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2、2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2、2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、9、9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9、9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1、3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1、4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1、1、1−3、3、3−ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。また用いられるジハロゲノ化合物としては、例えば、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、ビス(4−ブロモフェニル)スルホン、4−クロロ−4’−(p−クロロフェニル)ジフェニルスルホン、4−フルオロ−4’−(p−フルオロフェニル)ジフェニルスルホン、4−ブロモ−4’−(p−ブロモフェニル)ジフェニルスルホン、ビス(4’−クロロビフェニル)スルホン、ビス(4’−フルオロビフェニル)スルホン、ビス(4’−ブロモビフェニル)スルホン、ビス(6−クロロビナフチル)スルホン、ビス(6−フルオロビナフチル)スルホン、ビス(6−ブロモビナフチル)スルホン、ビス(4−クロロ−3−メチルフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロ−3−メチルフェニル)スルホン、ビス(4−ブロモ−3−メチルフェニル)スルホン、ビス(3−フェニル−4−クロロフェニル)スルホン、ビス(3−フェニル−4−フルオロフェニル)スルホン、ビス(3−フェニル−4−ブロモフェニル)スルホン、ビス(4−クロロ−3−t−ブチルフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロ−3−t−ブチルフェニル)スルホン、ビス(4−ブロモ−3−t−ブチルフェニル)スルホン等を挙げることができる。
これらの中でも特にビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンをビスフェノール成分とし、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホンまたはビス(4−ブロモフェニル)スルホンをジハロゲノアリールスルホン成分として縮合重合せしめることで得られる芳香族ポリエーテルスルホンを物性、コストの面から好ましく挙げることができる。これらのジヒドロキシ化合物及び/又はジハロゲノアリールスルホンは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いて共重合ポリエーテルスルホンとしても良い。また主鎖の一部や末端基にアミノ基、カルボキシル基、カルボニル基およびそれらのアミド、エステル誘導体構造を導入し変性せしめて使用したり、モノマーの一部をジアリールケトンやジアリールスルフィド骨格として共重合することも可能である。
本発明で用いられるポリエーテルスルホン樹脂の分子量は、その粘度平均分子量で、8000〜200000の範囲である。粘度平均分子量が8000より小さいと該樹脂組成物においても成形物は極めて脆くなり好ましくない。また、200000を超えると溶融流動性が悪くなりがちで、良好な成形物が得にくくなりがちとなる。より好ましくは10000〜100000の範囲である。なお粘度平均分子量は、ポリエーテルスルホンの塩化メチレン溶液中で求めた固有粘度を、マーク−ホウインク−桜田の式に代入して計算した。この際の各種係数は、例えばポリマーハンドブック第3改訂版 ワイリー社(1989年)(Polymer Handbook 3rd Ed. Willey,1989)の7〜23ページに記載されている。
本発明のポリエーテルスルホン系樹脂組成物の製造方法としては以下に示す方法で調整可能である。
(樹脂組成物の製造方法について)
本発明において組成物の製造方法としては、特に限定はされない。例えば、ポリエーテルスルホン系樹脂に窒化ホウ素ナノチューブを溶融混合させる方法が好ましく利用できる。溶融混合の方法は特に制限はないが、一軸あるいは二軸押し出し機、ニーダー、ラボプラストミルなどを用いて混練する事により得られる。
また、組成物の製造方法としてあるいはポリエーテルスルホン系樹脂を溶解させることが可能な溶媒に窒化ホウ素ナノチューブを分散させた分散液を調整し、ポリエーテルスルホン系樹脂を添加、溶解させてポリエーテルスルホン系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブからなる混合溶液を調整し、溶媒を除去する方法が好ましく利用できる。
本発明においてポリエーテルスルホン系樹脂を溶解するのに使用される溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
この際に例えば窒化ホウ素ナノチューブを溶媒中でビーズミル処理することや超音波処理を施す、強力なせん断処理を施すことにより窒化ホウ素ナノチューブの分散性を向上することができる。
さらにこのようにして作成されたポリエーテルスルホン系樹脂組成物にはさらに分散性を高める目的で、溶融混練処理を行ってもよい。混練方法は特に特定はしないが、一軸ルーダー、ニ軸のルーダーおよびニーダーを使用して行う事ができる。溶融混練処理温度は、樹脂成分の軟化、流動する温度より5℃〜100℃高い温度である。高温過ぎると樹脂の分解や異常反応を生じ好ましくない。また、混練処理時間は少なくとも30秒以上15分以内、好ましくは1〜10分である。
また、共役系高分子で被覆した窒化ホウ素ナノチューブを使用する場合は、共役系高分子を窒化ホウ素ナノチューブに被覆した後、共役系高分子で被覆された窒化ホウ素ナノチューブを上記のようにポリエーテルスルホン系樹脂または該樹脂溶液に混合分散させることにより本発明の樹脂組成物を製造することができる。
窒化ホウ素ナノチューブを共役高分子で被覆する方法として特に限定はされないが、1)窒化ホウ素ナノチューブを溶融している共役高分子に添加して混合する無溶媒で行う方法2)窒化ホウ素ナノチューブと共役高分子を、共役高分子を溶解する溶媒中で分散混合する方法等が挙げられる。2)の方法においては窒化ホウ素ナノチューブを分散させる方法として超音波や各種攪拌方法を用いることができる。攪拌方法としては、ホモジナイザーのような高速攪拌やアトライター、ボールミル等の攪拌方法も使用することができる。
本発明において共役高分子を溶解するのに使用される溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また本発明のポリエーテルスルホン系樹脂組成物は、その成形物、物性を損なわない範囲で各種充填剤の添加は可能であり、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、電気的性質の性能に優れた成形品を得るためには配合することが好ましい。
尚、本発明の目的を逸脱しない範囲で、他の熱可塑性樹脂、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、天然ゴム、合成ゴム等の熱可塑性樹脂、或いは難燃剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、離型剤、発泡剤、架橋剤、着色剤等の添加剤を加えても差し支えない。
前述の窒化ホウ素ナノチューブ含有樹脂組成物を作製したのち、成形することによりフィルム、シートといった成形体を製造することができる。
成形方法については特に制限はないが、例えば溶融状態にある窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリエーテルスルホン系樹脂組成物をダイより押し出し成形する押し出し成形、射出成形、インフレーション成形等によりフィルム、シートを製造することができる。
または樹脂組成物溶液を支持体に流延し、特定の厚みにキャストした後、溶媒を除去する等の方法によりフィルム、シートを製造することができる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
(1)ガラス転移温度
ガラス転移温度は、TAインストルメント製TA2920を用いて30〜300℃の範囲で測定し、セカンドスキャンのピーク値よりガラス転移温度を計算した。
(2)熱膨張係数
熱膨張係数は、TAインストルメント製TA2940を用いて30〜80℃の範囲で測定し、セカンドスキャンの値を熱膨張係数とした。
[参考例1 窒化ホウ素ナノチューブの製造]
窒化ホウ素製のるつぼに、1:1のモル比でホウ素と酸化マグネシウムを入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉で1300℃に加熱した。ホウ素と酸化マグネシウムは反応し、気体状の酸化ホウ素(B)とマグネシウムの蒸気が生成した。この生成物をアルゴンガスにより反応室へ移送し、温度を1100℃に維持してアンモニアガスを導入した。酸化ホウ素とアンモニアが反応し、窒化ホウ素が生成した。1.55gの混合物を十分に加熱し、副生成物を蒸発させると、反応室の壁から310mgの白色の固体が得られた。続いて得られた白色固体を濃塩酸で洗浄、イオン交換水で中性になるまで洗浄後、60℃で減圧乾燥を行い窒化ホウ素ナノチューブ(以下、BNNTと略すことがある)を得た。得られたBNNTは、平均直径が27.6nm、平均長さが2460nmのチューブ状であった。
[参考例2 ポリエーテルスルホンの製造例]
4,4’−ヒドロキシジフェニルスルホン25.0部、ビス(4ークロロフェニル)スルホン28.7部、トルエン70部、炭酸カリウム17.25部を、窒素導入口と排出口を持った3つ口フラスコに入れ、これをディーン・スタークス・トラップに誘導し窒素置換を行い、110℃で6時間加熱環流を行った。反応に伴う水の流出が終了したのを確認後、トルエンを留去し、新たにN,N−ジメチルアセトアミド150部を加え、フラスコ内を窒素置換後、160℃で15時間加熱撹拌し、反応せしめた。得られたポリマーをロ別し、水−メタノール、水の順でよく洗浄した後、残存塩を除去するために沸騰水中で1時間還流した。生成物をロ別後、30mmHg減圧下100℃乾燥することでポリマーを得たした。500mgのポリマーをN,N−ジメチルアセトアミド溶媒10mlに溶解させ、還元粘度を測定したところ2.75であった。
[実施例1]
0.18重量部の参考例1で得られた窒化ホウ素ナノチューブを100重量部のN−メチル−2−ピロリジノンに添加して、超音波バスにて2時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。続いて参考例2にて調整したポリエーテルスルホン15重量部を添加して室温でポリエーテルスルホンが溶解するまで攪拌した。得られた窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリエーテルスルホン溶液をガラス基板上に200μmのドクターブレードを使用してキャストした後、80℃で60分、次いで130℃で60分放置した。得られたフィルムをガラス板より剥離し、金枠に固定して30mmHgに減圧下80℃で10分、130℃で1時間乾燥させた。フィルムの厚みは30μm、ガラス転移温度は227.2℃、熱膨張係数は50.0ppm/℃であった。
[比較例1]
窒化ホウ素ナノチューブを含まない以外は実施例1と同様にして窒化ホウ素ナノチューブを含有しないポリエーテルスルホンフィルムを作製した。フィルムの厚みは22μm、ガラス転移温度は220.1℃、熱膨張係数は55.4ppm/℃であった。
参考例2]
(共役系高分子で被覆した窒化ホウ素ナノチューブの作製)
0.1重量部の参考例1で得られた窒化ホウ素ナノチューブを100重量部のジクロロメタンに添加して超音波バスにて2時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。続いて0.1重量部のアルドリッチ製ポリ(m−フェニレンビニレン−co−2,5−ジオクトキシ−p−フェニレンビニレン)を添加して超音波処理を1時間実施した。得られた分散液をミリポア製オムニポアメンブレンフィルター0.1μでろ過し、大量のジクロロメタンで洗浄後、60℃減圧乾燥を2時間行うことで黄色の共役系高分子で被覆された窒化ホウ素ナノチューブを得た。窒化ホウ素ナノチューブ上に被覆された共役系高分子の量は窒化ホウ素ナノチューブに対して4.2重量%であった。
(窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリエーテルスルホン系樹脂の作製)
18重量部の窒化ホウ素ナノチューブを含む上記で作製した共役系高分子で被覆された窒化ホウ素ナノチューブを100重量部のN−メチル−2−ピロリジノンに添加して、超音波バスにて2時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。続いて参考例2で調整した15重量部のポリエーテルスルホンを添加して室温でポリエーテルスルホンが溶解するまで攪拌した。得られた窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリエーテルスルホン溶液をガラス基板上に200μmのドクターブレードを使用してキャストした後、80℃で60分、次いで130℃で60分放置した。得られたフィルムをガラス板より剥離し、金枠に固定して30mmHgに減圧下80℃で10分、130℃で1時間乾燥させた。フィルムの厚みは28μm、ガラス転移温度は226.7℃、熱膨張係数は50.6ppm/℃であった。

Claims (3)

  1. ポリエーテルスルホン系樹脂100重量部と窒化ホウ素ナノチューブ(官能基化され可溶性にされたものを除く)0.01〜50重量部とからなるポリエーテルスルホン系樹脂組成物。
  2. 平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上である窒化ホウ素ナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載のポリエーテルスルホン系樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載のポリエーテルスルホン系樹脂組成物の成形体
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