JP5080027B2 - 熱可塑性樹脂複合組成物及びその製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂複合組成物及びその製造方法 Download PDF

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ポリビニルブチラール系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブとを均一に分散させたポリビニルブチラール系樹脂組成物、およびその製造方法に関する。更に詳しくは、構造の規定された無機のナノチューブをフィラーとしてナノ分散させることにより、少量のフィラー添加においても、従来のポリビニルブチラール系樹脂及びその組成物に比べて効率よく耐熱性、機械特性及び柔軟性、寸法安定性を向上させたポリビニルブチラール系高弾性耐熱樹脂組成物に関する。
カーボンナノチューブは、従来にない機械的物性、電気的特性、熱的特性等を有するためナノテクノロジーの有力な素材として注目を浴び、広範な分野で応用の可能性が検討され、一部実用化が開始されている。
ポリマーコンポジットとしては、フィラーにカーボンナノチューブを用いてポリマーに添加することで、ポリマーの機械的物性、導電性、耐熱性等を改質する試みも行われている。
例えばポリアミドやポリビニルブチラールとカーボンナノチューブからなるポリマーコンポジットに関しては、多層カーボンナノチューブとの樹脂組成物による導電性、線膨張係数(特許文献1)、遮熱性または電磁波透過性(特許文献2)の改良に関する報告例(特許文献1−)が開示されている。また、カーボンナノチューブを共役系高分子で被覆することで、カーボンナノチューブの分散性を極めて高め、少ないカーボンナノチューブの量でマトリクス樹脂に高い導電性を付与するとの報告(特許文献参照)がある。
また、ポリメチルメタクリレートやポリスチレンのような側鎖構造を有するポリマーとカーボンナノチューブからなるポリマーコンポジットに関して、共役系高分子で単層カーボンナノチューブを被覆することにより、わずかな単層カーボンナノチューブ添加量であっても弾性率が飛躍的に向上するとの報告(特許文献参照)がある。
一方、カーボンナノチューブと、構造的な類似性を有する窒化ホウ素ナノチューブも、従来にない特性を有する材料として注目を浴びている(特許文献参照)。特許文献にはカーボンナノチューブの代わりに窒化ホウ素ナノチューブを使用しても良いとの記載があるが、飛躍的な効果を得るためには側鎖構造を有するポリマーに限定されておりそれ以外の主鎖型芳香族ポリマーでの具体的な報告はされていない。
一方ポリビニルブチラール系樹脂は、優れた接着性、耐寒性を有し、また無色透明で耐候性に優れているため、自動車、列車、航空機等の風防ガラスとして、また高層建築物の窓ガラスとして合わせガラスの中間膜等に幅広く使用されている。このようなポリビニルブチラール系樹脂は、ガラスとの接着性、加工性付与のために揮発性の低い可塑剤を添加して、成形加工性を改善することや、物理的性質を改良することが広く行われている。しかし、可塑剤を添加することで、一般的に力学的強度が著しく低下し、強度と柔軟性を両立させた軟質系材料を得ることは困難であった。これまで可塑剤添加によるポリビニルブチラール系樹脂の耐熱性、機械強度を改善する目的で、例えば特許文献はモンモリロナイト等の層状珪酸塩をポリビニルブチラール系樹脂に添加することによる機械特性、加工性の改良が開示されている。しかしもともとこれらの無機充填材は実質的にサイズがμmオーダー以上のバルク状固体であり、実用的にこれらをポリビニルブチラール系樹脂にナノ分散化して複合化することは非常に困難であり、層状物の配向に伴って異方性が生じ、寸法安定性が低下する他、成形品の表面外観も損なわれるばかりか、靭性が低下するという問題もある。これを避けるべく可塑剤と層状珪酸塩を予め混練することで一定の微分散効果は得られるものの、珪酸塩系のフィラー表面が混練時にプラスチックを解重合(加水分解など)し、複合材料組成物の物性を低下させる恐れもある。フィラーの効果不足や変性樹脂の物性低減などの課題を解決すべく、大きな比表面積により少量でも効果の高く、真にナノレベルで分散可能なナノフィラーの探索が望まれている。しかしながらカーボンナノチューブ並の機械特性と優れた耐熱性、化学安定性を有する窒化ホウ素ナノチューブをフィラーとして添加、成形することにより機械的物性、寸法安定性の改善された成型体を得たとの報告はこれまで無い。
特開2004−124086号公報 特開2004−075400号公報 特開2004−143238号公報 特開2004−143239号公報 特開2004−143240号公報 特開2004−002621号公報 特開2004−244490号公報 特開2000−109306号公報 特開2001−26724号公報
本発明の目的は、従来のようなバルク、あるいはナノ分散困難な無機フィラーを含有するポリビニルブチラール系樹脂組成物に対して、組成物の成形性や外観に影響を与えないことが必要な用途を含め少量あるいは多量の添加であっても効率よく機械特性、耐熱性、寸法安定性を向上させたポリビニルブチラール系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、窒化ホウ素ナノチューブをポリビニルブチラール系樹脂に添加することにより、機械的物性に優れ、耐熱寸法安定性に優れた樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明は、
1.ポリビニルブチラール系樹脂100重量部と白色の窒化ホウ素ナノチューブ0.01〜100重量部とからなるポリビニルブチラール系樹脂組成物。
2.窒化ホウ素ナノチューブの平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上25000以下であることを特徴とする上記に記載のポリビニルブチラール系樹脂組成物。
3.窒化ホウ素ナノチューブが、気体状の酸化ホウ素(B )とマグネシウム蒸気とアンモニアガスとの反応により生成したものである上記に記載のポリビニルブチラール系樹脂組成物。
.上記何れかに記載のポリビニルブチラール系樹脂成形体。
5.気体状の酸化ホウ素(B )とマグネシウム蒸気とアンモニアガスとを反応させ生成した窒化ホウ素ナノチューブを、ポリビニルブチラール系樹脂を溶解させることが可能な溶媒に分散させた分散液に、ポリビニルブチラール系樹脂を添加・溶解させたのち、溶媒を除去することによる上記に記載のポリビニルブチラール系樹脂組成物の製造方法。により構成される。
本発明によりポリビニルブチラール系樹脂中に窒化ホウ素ナノチューブが均一にナノ分散している樹脂組成物が得られ、従来のポリビニルブチラール系樹脂に優れた耐熱性、高弾性等の力学特性、寸法安定性および熱伝導性を付与することが期待される。本発明のポリビニルブチラール系樹脂組成物は、溶液あるいは溶融状態からの押し出し、射出成型、熱プレス成形、カレンダー、ペースト加工成形等などの任意の成形方法により、フィルムや構造体など所望の形状に成形でき、そのような成形品は機械的特性や耐熱性等に優れる為、自動車、列車、航空機等の風防ガラスとして、また高層建築物の窓ガラスとして合わせガラスの中間膜等として有用であるが、これに限定されず、例えば、各種接着剤、各種塗料、ウオッシュプライマー、各種バインダー、繊維処理剤等に好適に使用することができる。
以下本発明を詳細に説明する。
(窒化ホウ素ナノチューブ)
本発明において、窒化ホウ素ナノチューブとは、窒化ホウ素からなるチューブ状材料であり、理想的な構造としては6角網目の面がチューブ軸に平行に管を形成し、一重管もしくは多重管になっているものである。窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は、好ましくは0.4nm〜1μm、より好ましくは0.6〜500nm、さらにより好ましくは0.8〜200nmである。ここでいう平均直径とは、一重管の場合、その平均外径を、多重管の場合はその最外側の管の平均外径を意味する。平均長さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。アスペクト比は、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。アスペクト比の上限は、平均長さが10μm以下であれば限定されるものではないが、上限は実質25000である。よって、窒化ホウ素ナノチューブは、平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上であることが好ましい。
窒化ホウ素ナノチューブの平均直径およびアスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることが出来る。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)測定を行い、その画像から直接窒化ホウ素ナノチューブの直径および長手方向の長さを測定することが可能である。また組成物中の窒化ホウ素ナノチューブの形態は例えば繊維軸と平行に切断した繊維断面のTEM(透過型電子顕微鏡)測定により把握することが出来る。
窒化ホウ素ナノチューブは、アーク放電法、レーザー加熱法、化学的気相成長法を用いて合成できる。また、ホウ化ニッケルを触媒として使用し、ボラジンを原料として合成する方法も知られている。また、カーボンナノチューブを鋳型として利用して、酸化ホウ素と窒素を反応させて合成する方法もが提案されている。本発明に用いられる窒化ホウ素ナノチューブは、これらの方法により製造されるものに限定されない。窒化ホウ素ナノチューブは、強酸処理や化学修飾された窒化ホウ素ナノチューブも使用することができる。
窒化ホウ素ナノチューブは共役系高分子で被覆されていることが好ましい。窒化ホウ素ナノチューブを被覆する共役系高分子は、窒化ホウ素ナノチューブと相互作用が強く、マトリクス樹脂であるポリビニルブチラール系樹脂との相互作用も強いものが好ましい。これらの共役系高分子としては、例えば、ポリフェニレンビニレン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリフェニレン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリアセチレン系高分子等が挙げられる。中でも、ポリフェニレンビニレン系高分子、ポリチオフェン系高分子が好ましい。
窒化ホウ素ナノチューブは、カーボンナノチューブに匹敵する優れた機械的物性、熱伝導性を有するだけでなく、化学的に安定でカーボンナノチューブよりも優れた耐酸化性を有することが知られている。また、ホウ素原子と窒素原子の間のダイポール相互作用により局所的な極性構造を有しており、極性構造を有する媒体への親和性、分散性がカーボンナノチューブより優れることが期待される。更に電子構造的に広いバンドギャップを有するため絶縁性であり、絶縁放熱材料としても期待できる他、カーボンナノチューブと異なり白色であることから着色を嫌う用途にも応用できるなど、ポリマーの特徴を活かしたコンポジット創製が可能となる。
本発明の樹脂組成物においては、ポリビニルブチラール系樹脂100重量部に対して、窒化ホウ素ナノチューブが、0.01〜100重量部の範囲内で含有されるものである。本発明におけるポリビニルブチラール系樹脂100重量部に対する上記窒化ホウ素ナノチューブの含有量の下限は、0.01重量部であるが、本発明においては特に、0.05重量部以上が好ましく、より好ましくは0.1重量部以上であることが好ましい。一方、ポリビニルブチラール系樹脂100重量部に対する窒化ホウ素ナノチューブの含有量の上限は、上述したように100重量部以下であるが、本発明においては、80重量部以下であることが好ましく、50重量部以下であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、窒化ホウ素ナノチューブをポリビニルブチラール系樹脂に均一に分散させることが可能となるからである。また、窒化ホウ素ナノチューブが過度に多い場合は、均一な樹脂組成物を得ることが困難となり好ましくない。本発明の樹脂組成物は、窒化ホウ素ナノチューブに由来する窒化ホウ素フレーク、触媒金属等を含む場合がある。
特にポリマー主鎖骨格内にアセタール結合等の極性構造を有するポリビニルブチラール系樹脂は、ナノレベルで構造の規定された極性窒化ホウ素ナノチューブと分子レベルで静電的に相互作用することが可能である。ポリマーとナノチューブ間の特異的な相互作用の結果として得られたポリビニルブチラール系樹脂組成物においては、少量のフィラー添加においても、従来のポリビニルブチラール系樹脂及びその組成物に比べて効率のよい耐熱性、機械特性の改良が可能であり、バルクの無機フィラー添加ポリビニルブチラールの範囲を超える高性能を発現することも期待される。
本発明で使用するポリビニルブチラール系樹脂としては通常のものが用いられる。ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコールのアルコール部分をブチルアルデヒドでアセタール化した樹脂であり、一般的に下記式(1)の繰り返し単位を主として含む熱可塑性樹脂である。
Figure 0005080027
ポリビニルブチラール樹脂の製造方法としては、従来公知のいかなる方法を用いても良い。通常は水溶液中のポリビニルアルコールとブチルアルデヒドを酸触媒の存在下で反応させ、生成するポリビニルブチラール樹脂のスラリーをアルカリで中和し、溶媒と分離後、さらに洗浄・脱水ののち乾燥することにより粉末状の樹脂を製造する方法が一般的である。その分子量(本明細書で分子量とはポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する)は40,000〜250,000であるが、機械特性や溶剤との相溶性の点から40,000〜120,000のものを用いるのが好ましい。
ブチラール樹脂には水酸基が残存しており、通常は水酸基10〜20%、ブチラール基80〜90%であるが、素材物性及び成形性のバランスから水酸基10〜15%、ブチラール基85〜90%のものを用いるのが好ましい。
(樹脂組成物の製造方法について)
本発明のポリビニルブチラール系樹脂組成物の製造方法としては以下に示す方法で調整可能である。
樹脂組成物の製造方法として、ポリビニルブチラール系樹脂中に窒化ホウ素ナノチューブを溶融状態にて高せん断応力下に混合、分散することによる方法、あるいはポリビニルブチラール系樹脂、窒化ホウ素ナノチューブとポリビニルブチラール系樹脂を溶解する溶媒からなる樹脂溶液を調整する工程と成形した後に該溶媒を除去する工程からなる方法の何れをも用いることができる。
ここで、溶融混合による樹脂組成物の製造における混合方法としては特に制限はないが、例えば一軸あるいは二軸押し出し機、ニーダー、ラボプラストミル、バンバリーミキサーあるいはミキシングロールなどを用いて混練するプロセスを好ましく実施することができる。一方、溶剤を用いる場合の窒化ホウ素ナノチューブ含有樹脂溶液の製造方法としては、A)ポリビニルブチラール系樹脂を溶解させることが可能な溶媒に窒化ホウ素ナノチューブを分散させた分散液を調整し、ポリビニルブチラール系樹脂を添加、溶解させてポリビニルブチラール系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブからなる混合溶液を調整する方法、B)ポリビニルブチラール系樹脂を溶解させることが可能な溶媒にポリビニルブチラール系樹脂を溶解した樹脂溶液に窒化ホウ素ナノチューブを添加して分散させる方法、C)ポリビニルブチラール系樹脂を溶解させることができる溶媒にポリビニルブチラール系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブを添加して調整する方法等が利用できる。本発明では何れかの方法を単独で用いるか、あるいは何れかの方法を組み合わせても良い。中でも、A)の窒化ホウ素ナノチューブ分散液にポリビニルブチラール系樹脂を添加、溶解させる方法が好ましい。
この際に例えば窒化ホウ素ナノチューブを溶媒中でビーズミル処理することや超音波処理を施す、強力なせん断処理を施すことにより窒化ホウ素ナノチューブの分散性を向上することができる。中でも、超音波処理を施す方法が好ましい。本発明においても窒化ホウ素ナノチューブ分散液にポリビニルブチラールを添加して、超音波処理等を施すことにより、窒化ホウ素ナノチューブの分散性が飛躍的に向上することを見出した。
本発明においてポリビニルブチラール系樹脂を溶解させることが可能な溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;エタノール、プロパノール及びブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素類;あるいはクロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及びブロムクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジオキソランなどが挙げられるがこれらに限定されるものではなく必要に応じて溶媒を選ぶことができる。
溶解性を損なわない範囲で、酢酸エチル、メチレンクロライド、メタノール、クロロトルエン、オルトクロロフェノール、o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、水といった溶媒が含まれていても差し支えない。
本発明のポリビニルブチラール系樹脂組成物には、成型加工性向上の目的で可塑剤として従来公知の剤や炭化水素樹脂を添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでも差し支えない。可塑剤としては2−エチルヘキシル酸以外の脂肪族カルボン酸とモノ/ジ/ポリ(3〜20)エチレングリコールとより得られるエーテルエステル系可塑剤、あるいは、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレートなどのフタレート系可塑剤、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペートなどのアジペート系可塑剤、トリメリテート系可塑剤、ピロメリテート系可塑剤、ビフェニルテトラカルボキシレート系可塑剤、ホスフェート系可塑剤、ポリエステル系可塑剤や塩素化パラフィン系可塑剤などがあげられる。また天然樹脂系ではロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができ、ロジン誘導体としてロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いてもよい。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネンなどのテルペン系樹脂のほか、テルペンフェノール樹脂を用いることができる他、天然樹脂としてダンマル、コーバル、シェラックを用いても差し支えない。一方、その他の石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂が好適に用いられる。その他フェノール系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂及びキシレン系樹脂が好適に用いられるが、特にフェノール系樹脂としてアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができ、キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を好適に用いることができる。これら上記炭化水素樹脂の添加量は本発明のポリビニルブチラール系樹脂組成物の特性を減ずることのない範囲で、目的に応じて適宜選択されるが、上記ポリマー100重量部に対して0〜200重量部であり、1〜200重量部が好ましく、より好ましくは5〜150重量部である。
また、共役系高分子で被覆した窒化ホウ素ナノチューブを使用する場合は、共役系高分子を窒化ホウ素ナノチューブに被覆した後、共役系高分子で被覆された窒化ホウ素ナノチューブを上記のようにポリビニルブチラール系樹脂または該樹脂溶液に混合分散させることにより本発明の樹脂組成物を製造することができる。
窒化ホウ素ナノチューブを共役高分子で被覆する方法として特に限定はされないが、1)窒化ホウ素ナノチューブを溶融している共役高分子に添加して混合する無溶媒で行う方法2)窒化ホウ素ナノチューブと共役高分子を、共役高分子を溶解する溶媒中で分散混合する方法等が挙げられる。2)の方法においては窒化ホウ素ナノチューブを分散させる方法として超音波や各種攪拌方法を用いることができる。攪拌方法としては、ホモジナイザーのような高速攪拌やアトライター、ボールミル等の攪拌方法も使用することができる。
本発明のポリビニルブチラール系樹脂組成物とは、このようなポリビニルブチラール系樹脂を重合、窒化ホウ素ナノチューブと複合した後、任意の成型を行う前の塊状やペレット状などのいわゆる成型前ポリマーを意味する。このようなポリビニルブチラール系樹脂組成物は、調整した後に更に湿式、乾-湿式、あるいは乾式工程を経てフィルム状に成型したり、もしくは溶融成形を経てフィルム状に成形することができる。例えば、前述の窒化ホウ素ナノチューブ含有樹脂溶液を成形したのち、溶媒を除去することからなる成形体の製造方法を包含する。例えばフィルムの場合、ガラス、金属といった基板上にキャストして成形したのち、乾式製膜あるいは湿式製膜、乾式製膜と湿式製膜の併用によりフィルムを作製することが可能である。また該組成物と上述の添加剤とを均一に溶融混合し、押出機、ロール等で混練した後、これをカレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により任意の形状に加工することも可能である。これらの成型工程において、流動配向、せん断配向、又は延伸配向させる事によりポリビニルブチラール系樹脂および窒化ホウ素ナノチューブの配向を高め機械特性を向上させる事ができる。
更に、本発明のポリビニルブチラール系樹脂組成物には、目的に応じて、顔料や染料、充填剤、熱安定剤、エポキシ化安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性化剤、光安定剤、シランカップリング剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、離型剤、加工助剤、防曇剤、塩基性物質、硼酸エステル、チオ尿素誘導体及び帯電防止剤等の添加剤を添加しても差し支えない。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。また使用したポリビニルブチラールは和光純薬工業(株)製のポリビニルブチラール樹脂(平均重合度2000、水酸基濃度は約20%、分子量は約245000)である。
(1)引張弾性率測定
引張弾性率は、50mm×10mmのサンプルを用い、引張り速度5mm/分で行いオリエンテックUCT−1Tによって測定した。
(2)ガラス転移温度
ガラス転移温度は、TAインストルメント製TA2920を用いて窒素雰囲気下、30〜300℃の範囲で昇温速度10℃/分にて測定し、セカンドスキャンのピーク値よりガラス転移温度を計算した。
(3)熱膨張係数
熱膨張係数は、TAインストルメント製TA2940を用いて空気中30〜80℃の範囲で昇温速度10℃/分にて測定し、セカンドスキャンの値を熱膨張係数とした。
(4)ポリマー重量減少温度
ポリマー重量減少温度は、Rigaku製TG 8120を用いて空気中、30〜800℃の範囲で昇温速度10℃/分にて測定し、5%重量減少時のピーク値より算出した。
[参考例1 窒化ホウ素ナノチューブの製造]
窒化ホウ素製のるつぼに、1:1のモル比でホウ素と酸化マグネシウムを入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉で1300℃に加熱した。ホウ素と酸化マグネシウムは反応し、気体状の酸化ホウ素(B)とマグネシウムの蒸気が生成した。この生成物をアルゴンガスにより反応室へ移送し、温度を1100℃に維持してアンモニアガスを導入した。酸化ホウ素とアンモニアが反応し、窒化ホウ素が生成した。1.55gの混合物を十分に加熱し、副生成物を蒸発させると、反応室の壁から310mgの白色の固体が得られた。続いて得られた白色固体を濃塩酸で洗浄、イオン交換水で中性になるまで洗浄後、60℃で減圧乾燥を行い窒化ホウ素ナノチューブ(以下、BNNTと略すことがある)を得た。得られたBNNTは、平均直径が27.6nm、平均長さが2460nmのチューブ状であった。
[実施例1]
参考例1で得られた0.30重量部の窒化ホウ素ナノチューブを100重量部のテトラヒドロフランに添加して、超音波バスにて4時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。上記窒化ホウ素ナノチューブ分散液にポリビニルブチラール0.30重量部を添加して超音波バスにて30分処理を行ったところ、飛躍的に窒化ホウ素ナノチューブの分散性が向上した。続いてポリビニルブチラール14.70重量部を続けて添加して40℃でポリビニルブチラールが溶解するまで攪拌した。得られた窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリビニルブチラール溶液をガラス基板上に200μmのドクターブレードを使用してキャストした後、50℃で1時間、80℃で1時間乾燥させた。続いて、乾燥したフィルムをイオン交換水中に投入しフィルムをガラス基板上より剥離し、1時間洗浄を行った。得られたフィルムを金枠に固定して30mmHgにて80℃で1時間、100℃で1時間減圧乾燥を実施した。フィルムの厚みは34μm、ガラス転移温度は89.1℃、熱膨張係数は52.6ppm/℃、引張弾性率は2.31Gpaであった。また、5%ポリマー重量減少温度は297.8℃であった。
参考例2]
(共役系高分子で被覆した窒化ホウ素ナノチューブの作製)
参考例1で得られた0.1重量部の窒化ホウ素ナノチューブを100重量部のジクロロメタンに添加して超音波バスにて2時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。続いて0.1重量部のアルドリッチ製ポリ(m−フェニレンビニレン−co−2,5−ジオクトキシ−p−フェニレンビニレン)を添加して超音波処理を1時間実施した。得られた分散液をミリポア製オムニポアメンブレンフィルター0.1μでろ過し、大量のジクロロメタンで洗浄後、60℃減圧乾燥を2時間行うことで黄色の共役高分子で被覆された窒化ホウ素ナノチューブを得た。窒化ホウ素ナノチューブ上に被覆された共役系高分子の量は窒化ホウ素ナノチューブに対して4.2重量%であった。
(窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリビニルブチラール系樹脂の作製)
上記で作製した共役系高分子で被覆された窒化ホウ素ナノチューブ0.30重量部を、100重量部のテトラヒドロフランに添加して、超音波バスにて2時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。続いて15重量部のポリビニルブチラールを添加して室温で樹脂が溶解するまで攪拌した。得られた窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリビニルブチラール樹脂溶液をガラス基板上に200μmのドクターブレードを使用してキャストした後、80℃で1時間、130℃で1時間乾燥させた。続いて、乾燥したフィルムをイオン交換水中に投入しフィルムをガラス基板上より剥離し、1時間洗浄を行った。得られたフィルムを金枠に固定して30mmHgにて80℃で1時間、100℃で1時間にて減圧乾燥を実施した。フィルムの厚みは31μm、ガラス転移温度は90.2℃、熱膨張係数は51.5ppm/℃、引張弾性率は2.35Gpaであった。また、5%ポリマー重量減少温度は298.0℃であった。
[比較例1]
窒化ホウ素ナノチューブを含有しない以外は、実施例1と同様にポリビニルブチラールのフィルムを作製した。フィルムの厚みは24μm、ガラス転移温度は83.9℃、熱膨張係数は78.5ppm/℃、引張弾性率は2.11Gpaであった。また、5%ポリマー重量減少温度は272.0℃であった。

Claims (5)

  1. ポリビニルブチラール系樹脂100重量部と白色の窒化ホウ素ナノチューブ0.01〜100重量部とからなるポリビニルブチラール系樹脂組成物。
  2. 窒化ホウ素ナノチューブの平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上25000以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリビニルブチラール系樹脂組成物。
  3. 窒化ホウ素ナノチューブが、気体状の酸化ホウ素(B )とマグネシウム蒸気とアンモニアガスとの反応により生成したものである請求項1または2記載のポリビニルブチラール系樹脂組成物。
  4. 求項1〜3の何れかに記載のポリビニルブチラール系樹脂組成物からなる成形体。
  5. 気体状の酸化ホウ素(B )とマグネシウム蒸気とアンモニアガスとを反応させ生成した窒化ホウ素ナノチューブを、ポリビニルブチラール系樹脂を溶解させることが可能な溶媒に分散させた分散液に、ポリビニルブチラール系樹脂を添加・溶解させたのち、溶媒を除去することによる請求項3記載のポリビニルブチラール系樹脂組成物の製造方法。
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