JP5134205B2 - 耐熱性、寸法安定性に優れた樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

耐熱性、寸法安定性に優れた樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

ポリアリレート系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブとを均一に分散させたポリアリレート系樹脂組成物、およびその製造方法に関する。更に詳しくは、構造の規定された無機のナノチューブをフィラーとしてナノ分散させることにより、少量のフィラー添加においても、従来のポリアリレート系樹脂及びその組成物に比べて効率よく耐熱性、寸法安定性が改良されたポリアリレート系樹脂組成物に関する。
カーボンナノチューブは、従来にない機械的物性、電気的特性、熱的特性等を有するためナノテクノロジーの有力な素材として注目を浴び、広範な分野で応用の可能性が検討され、一部実用化が開始されている。
ポリマーコンポジットとしては、フィラーにカーボンナノチューブを用いてポリマーに添加することで、ポリマーの機械的物性、導電性、耐熱性等を改質する試みも行われている。
例えばポリアリレートその他の熱可塑性樹脂と単層あるいは多層カーボンナノチューブとからなる導電性組成物が報告されている(特許文献1)。また、カーボンナノチューブを共役系高分子で被覆することで、カーボンナノチューブの分散性を極めて高め、少ないカーボンナノチューブの量でマトリクス樹脂に高い導電性を付与するとの報告(特許文献2参照)がある。
また、ポリメチルメタクリレートやポリスチレンのような側鎖構造を有するポリマーとカーボンナノチューブからなるポリマーコンポジットに関して、共役系高分子で単層カーボンナノチューブを被覆することにより、わずかな単層カーボンナノチューブ添加量であっても弾性率が飛躍的に向上するとの報告(特許文献3参照)がある。
一方、カーボンナノチューブと、構造的な類似性を有する窒化ホウ素ナノチューブも、従来にない特性を有する材料として注目を浴びている(特許文献4参照)。特許文献3にはカーボンナノチューブの代わりに窒化ホウ素ナノチューブを使用しても良いとの記載があるが、飛躍的な効果を得るためには側鎖構造を有するポリマーに限定されておりそれ以外の主鎖型芳香族ポリマーでの具体的な報告はされていない。
一方、ポリアリレート系樹脂は、基本構造として例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕等の二価のフェノール誘導体残基とテレフタル酸およびイソフタル酸等二価の芳香族カルボン酸の残基とからなる非晶性のエンジニアリングプラスチックとして既によく知られている。かかるポリアリレートは耐熱性が高く、衝撃強度に代表される機械的強度や寸法安定性に優れ、加えて非晶性で透明であるためにその成形品は電気・電子、自動車、機械等の分野に幅広く応用されている。また、前記のポリアリレートは、その優れた電気的特性(絶縁性、誘電特性等)を利用して、コンデンサー用のフィルムや電子写真感光体のバインダー用樹脂の様な電子材料用途への応用が行われている。しかしながら、そのような電子材料用途における耐熱性に対する要求は、ますます厳しいものになり、前記のポリアリレートでは、耐熱性が不十分な用途が生じてきている。この様な事情からさらに耐熱性に優れたポリアリレートが求められている。
耐熱性および寸法安定性の更なる向上のために、例えば剛直な芳香族ジカルボン酸モノマー成分の共重合や、液晶ポリエステル成分のブレンド等の技術が開示されているが(特許文献5−7参照)、共重合成分の性質や、ブレンド時の相分離等の要因によりポリアリレートの機械特性や電気特性などの特徴が損なわれる恐れがある。一方、ガラス繊維、炭素繊維やチタン酸カリウム繊維などの耐熱繊維を複合材として利用する技術も以前より開示されている。更にクレー、タルク、雲母、六方晶系窒化ホウ素等の鱗片状無機充填材を複合したポリアリレート系樹脂組成物も耐熱性改良の観点から実施されている(特許文献8参照)。しかし、これらの無機充填材はサイズがμmオーダー以上のバルク状固体であり、複合による一定の効果は得られるものの、繊維の配向に伴って異方性が生じ、寸法安定性が低下したり、成形品の表面外観も損なわれる恐れがある。またバルクサイズの分散体であるため十分な補強効果を得るためには多量の配合を必要とし、それによって耐衝撃性、靭性が低下するという問題もある。特にガラス繊維やチタン酸カリウム繊維、マイカなどの酸化物系無機フィラーでは空気中の水分との相互作用で水酸基(−OH基)が現れ、これら、無機フィラーの表面が混練時にプラスチックを解重合(加水分解など)し、複合材料組成物の物性を低下させることも問題であった。フィラーの効果不足や変性樹脂の物性低減などの課題を解決すべく、大きな比表面積により少量でも効果の高く、ナノレベルで分散可能なナノフィラーの探索が望まれている。しかしながらカーボンナノチューブ並の機械特性と優れた耐熱性、化学安定性を有する窒化ホウ素ナノチューブをフィラーとして添加、成形することにより機械的物性、寸法安定性の改善された成型体を得たとの報告はこれまで無い。
特開2003−12939号公報 特開2004−2621号公報 特開2004−244490号公報 特開2000−109306号公報 特開2003−313280号公報 特開平9−124781号公報 特開平5−5054号公報 特開2003−128931号公報
本発明の目的は、従来のような多量のフィラーを含有するポリアリレート系樹脂組成物に対して、組成物の成形性や外観に影響を与えないことが必要な用途を含め少量あるいは多量の添加であっても効率よく耐熱性、寸法安定性の改良されたポリアリレート系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、窒化ホウ素ナノチューブをポリアリレート系樹脂に添加することにより、耐熱性、高温時安定性、寸法安定性に優れた樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明は、
1.ポリアリレート系樹脂100重量部と、平均直径が0.8〜200nm、アスペクト比が2460/27.6である白色の窒化ホウ素ナノチューブ(官能基化され、可溶性にされたものを除く)0.1〜35重量部とからなるポリアリレート系樹脂組成物。
2.上記記載のポリアリレート系樹脂組成物成形体。
により構成される。
本発明によりポリアリレート系樹脂中に窒化ホウ素ナノチューブが均一に分散している樹脂組成物が得られ、優れた耐熱性、寸法安定性を従来のポリアリレート系樹脂に付与することが期待される。
本発明のポリアリレート系樹脂組成物は、溶液あるいは溶融状態からの押し出し、射出成型などの任意の成形方法により、フィルムや構造体など所望の形状に成形でき、ポリアリレートの優れた特徴である電気絶縁性や誘電特性を維持すると共に従来を超える耐熱性を有するポリアリレート系樹脂を提供できる。
本発明のポリアリレート系樹脂組成物は、自動車のヘッドランプやインナーレンズ、その他ポリアリレートが従来用いられてきた各種、電子・電気機器部品、機械部品等の用途に有用である。他、コンデンサー用材料や電子写真感光体のバインダー用材料の様な要求特性が厳しい電子材料用途への樹脂成形品として好適に使用することができる。
以下本発明を詳細に説明する。
(窒化ホウ素ナノチューブ)
本発明において窒化ホウ素ナノチューブとは、窒化ホウ素からなるチューブ状材料であり、理想的な構造としては6角網目の面がチューブ軸に平行に管を形成し、一重管もしくは多重管になっているものである。窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は、好ましくは0.4nm〜1μm、より好ましくは0.6〜500nm、さらにより好ましくは0.8〜200nmである。ここでいう平均直径とは、一重管の場合、その平均外径を、多重管の場合はその最外側の管の平均外径を意味する。平均長さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。アスペクト比は、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。アスペクト比の上限は、平均長さが10μm以下であれば限定されるものではないが、上限は実質25000である。よって、窒化ホウ素ナノチューブは、平均直径が0.4nm〜1μm、アスペクト比が5以上であることが好ましい。
窒化ホウ素ナノチューブの平均直径およびアスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることが出来る。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)測定を行い、その画像から直接窒化ホウ素ナノチューブの直径および長手方向の長さを測定することが可能である。また組成物中の窒化ホウ素ナノチューブの形態は例えば繊維軸と平行に切断した繊維断面のTEM(透過型電子顕微鏡)測定により把握することが出来る。
窒化ホウ素ナノチューブは、アーク放電法、レーザー加熱法、化学的気相成長法を用いて合成できる。また、ホウ化ニッケルを触媒として使用し、ボラジンを原料として合成する方法も知られている。また、カーボンナノチューブを鋳型として利用して、酸化ホウ素と窒素を反応させて合成する方法もが提案されている。本発明に用いられる窒化ホウ素ナノチューブは、これらの方法により製造されるものに限定されない。窒化ホウ素ナノチューブは、強酸処理や化学修飾された窒化ホウ素ナノチューブも使用することができる。
窒化ホウ素ナノチューブは共役系高分子で被覆されていることが好ましい。窒化ホウ素ナノチューブを被覆する共役系高分子は、窒化ホウ素ナノチューブと相互作用が強く、マトリクス樹脂であるポリアリレート系樹脂との相互作用も強いものが好ましい。これらの共役系高分子としては、例えば、ポリフェニレンビニレン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリフェニレン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリアセチレン系高分子等が挙げられる。中でも、ポリフェニレンビニレン系高分子、ポリチオフェン系高分子が好ましい。
窒化ホウ素ナノチューブは、カーボンナノチューブに匹敵する優れた機械的物性、熱伝導性を有するだけでなく、化学的に安定でカーボンナノチューブよりも優れた耐酸化性を有することが知られている。また、ホウ素原子と窒素原子の間のダイポール相互作用により局所的な極性構造を有しており、極性構造を有する媒体への親和性、分散性がカーボンナノチューブより優れることが期待される。更に電子構造的に広いバンドギャップを有するため絶縁性であり、絶縁放熱材料としても期待できる他、カーボンナノチューブと異なり白色であることから着色を嫌う用途にも応用できるなど、媒体としてのポリマーの特徴を活かしたコンポジット創製が可能となる。
本発明の樹脂組成物においては、ポリアリレート系樹脂100重量部に対して、窒化ホウ素ナノチューブが、0.01〜50重量部の範囲内で含有される。本発明におけるポリアリレート系樹脂100重量部に対する上記窒化ホウ素ナノチューブの含有量の下限は、0.01重量部であるが、本発明においては特に、0.05重量部以上が好ましく、より好ましくは0.1重量部以上であることが好ましい。一方、ポリアリレート系樹脂100重量部に対する窒化ホウ素ナノチューブの含有量の上限は、上述したように50重量部以下であるが、本発明においては、40重量部以下であることが好ましく、35重量部以下であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、窒化ホウ素ナノチューブをポリアリレート系樹脂に均一に分散させることが可能となるからである。また、窒化ホウ素ナノチューブが過度に多い場合は、均一な樹脂組成物を得ることが困難となり好ましくない。本発明の樹脂組成物は、窒化ホウ素ナノチューブに由来する窒化ホウ素フレーク、触媒金属等を含む場合がある。
本発明で使用するポリアリレート系樹脂は繰り返し単位の主鎖が、以下に示す式(1)
Figure 0005134205
(式(1)中、Arは炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、Xは炭素数1〜15の二価の炭化水素基、スルホン基およびスルフィド基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基である。R〜Rは同一または異なり、水素、ハロゲン、または炭素数1〜5の炭化水素基である。)
で示される重合体の総称であって、上記式(1)で示される重合体の一種単独であっても、二種以上が組合わされた共重合体であってもよい。
ポリアリレート系樹脂としては公知素材が使用できる。ポリアリレート系樹脂とは、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と、二価フェノールまたはその誘導体とよりなるポリエステルであり、溶液重合、溶融重合、界面重合などの方法により製造される。
本発明に用いられるポリアリレートを構成する芳香族ジカルボン酸としては、二価フェノールと反応して重合体を与えるものであればいかなるものでも良く、1種、または2種以上混合して用いられる。好ましい芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、オルトフタル酸、ジフェン酸、4,4′−ジカルボキシジフェニルエーテル、ビス(p−カルボキシフェニル)アルカン、4,4′−ジカルボキシフェニルスルホン、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び1,4−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。この中でもイソフタル酸およびテレフタル酸またはイソフタル酸とテレフタル酸の混合物が好ましい。
本発明に用いられるポリアリレートを構成する二価フェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ハイドロキノンなどがあげられる。これらの中でも、特に、ビスフェノールAが材料の入手のしやすさ、反応性、経済性などの観点から好ましい。
これらの二価フェノールは単独で用いてもよく、また混合物であってもよい。また、これらの二価フェノールはパラ置換体であるが、他の異性体を使用してもよく、さらにこれらの二価フェノールにエチレングリコール、プロピレングリコールなどを少量併用してもよい。
(樹脂組成物の製造方法について)
本発明のポリアリレート系樹脂組成物の製造方法としては以下に示す方法で調整可能である。
樹脂組成物の製造方法として、一つにはポリアリレートその他の共重合モノマー成分をあらかじめ窒化ホウ素ナノチューブと混合した後にin situに重合することによる方法がある。この方法は大量の組成物を簡便に調整するに適している一方で、共重合モノマー安定性などの面から混合条件の制約を受けることもある。第二により一般的な方法としては樹脂をあらかじめ調整後に混合する方法がある。この方法はポリアリレート系樹脂中に窒化ホウ素ナノチューブを溶融状態にて高せん断応力下に混合、分散することによる方法、あるいはポリアリレート系樹脂、窒化ホウ素ナノチューブとポリアリレート系樹脂を溶解する溶媒からなる樹脂溶液を調整する工程と成形した後に該溶媒を除去する工程からなる方法の何れをも用いることができる。
ここで、溶液を用いる場合の窒化ホウ素ナノチューブ含有樹脂溶液の製造方法としては、A)ポリアリレート系樹脂を溶解させることが可能な溶媒に窒化ホウ素ナノチューブを分散させた分散液を調整し、ポリアリレート系樹脂を添加、溶解させてポリアリレート系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブからなる混合溶液を調整する方法、B)ポリアリレート系樹脂を溶解させることが可能な溶媒にポリアリレート系樹脂を溶解した樹脂溶液に窒化ホウ素ナノチューブを添加して分散させる方法、C)ポリアリレート系樹脂を溶解させることができる溶媒にポリアリレート系樹脂と窒化ホウ素ナノチューブを添加して調整する方法等が利用できる。本発明では何れかの方法を単独で用いるか、あるいは何れかの方法を組み合わせても良い。中でも、A)の窒化ホウ素ナノチューブ分散液にポリアリレート系樹脂を添加、溶解させる方法が好ましい。
この際に例えば窒化ホウ素ナノチューブを溶媒中でビーズミル処理することや超音波処理を施す、強力なせん断処理を施すことにより窒化ホウ素ナノチューブの分散性を向上することができる。中でも、超音波処理を施す方法が好ましい。本発明においても窒化ホウ素ナノチューブ分散液にポリアリレートを添加して、超音波処理等を施すことにより、窒化ホウ素ナノチューブの分散性が飛躍的に向上することを見出した。
上記本発明のポリアリレート系樹脂を溶解する溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、塩化メチレンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、必要に応じて溶媒を選ぶことができる。
溶解性を損なわない範囲で、メタノール、エタノール、ブタノール、キシレン、オルトクロロフェノール、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、クロロホルム、クロロベンゼン、水といった溶媒が含まれていても差し支えない。
また、共役系高分子で被覆した窒化ホウ素ナノチューブを使用する場合は、共役系高分子を窒化ホウ素ナノチューブに被覆した後、共役系高分子で被覆された窒化ホウ素ナノチューブを上記のようにポリアリレート系樹脂または該樹脂溶液に混合分散させることにより本発明の樹脂組成物を製造することができる。
窒化ホウ素ナノチューブを共役高分子で被覆する方法として特に限定はされないが、1)窒化ホウ素ナノチューブを溶融している共役高分子に添加して混合する無溶媒で行う方法2)窒化ホウ素ナノチューブと共役高分子を、共役高分子を溶解する溶媒中で分散混合する方法等が挙げられる。2)の方法においては窒化ホウ素ナノチューブを分散させる方法として超音波や各種攪拌方法を用いることができる。攪拌方法としては、ホモジナイザーのような高速攪拌やアトライター、ボールミル等の攪拌方法も使用することができる。
本発明のポリアリレート系樹脂組成物とは、このようなポリアリレート系樹脂を重合、窒化ホウ素ナノチューブと複合した後、任意の成型を行う前の塊状やペレット状などのいわゆる成型前ポリマーを意味する。このようなポリアリレート系樹脂組成物は、調整した後に更に湿式、乾-湿式、あるいは乾式工程を経てフィルム状に成型するか、もしくは溶融成形を経てフィルム状に成形することができる。例えば、前述の窒化ホウ素ナノチューブ含有樹脂溶液を成形したのち、溶媒を除去することからなる成形体の製造方法を包含する。例えばフィルムの場合、ガラス、金属といった基板上にキャストして成形したのち、乾式製膜あるいは湿式製膜、乾式製膜と湿式製膜の併用によりフィルムを作製することが可能である。また溶融後に射出成型などにより任意の形状に加工することも可能である。これらの成型工程において、流動配向、せん断配向、又は延伸配向させる事によりポリアリレート系樹脂および窒化ホウ素ナノチューブの配向を高め機械特性を向上させる事が出来る。
尚、本発明の目的を逸脱しない範囲で、他の熱可塑性樹脂、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等の熱可塑性樹脂、或いは難燃剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、離型剤、発泡剤、架橋剤、着色剤、充填剤等の添加剤を加えても差し支えない。
本発明によりポリアリレート系樹脂中に窒化ホウ素ナノチューブが均一に分散している樹脂組成物が得られ、従来のポリアリレート系樹脂に優れた耐熱性、力学特性、寸法安定性および熱伝導性を付与することが期待される。特にポリマー主鎖末端にカルボキシル基やヒドロキシル基といったドナー性原子団から構成された官能基を有するポリアリレート系樹脂は、極性かつナノレベルで構造の規定された窒化ホウ素ナノチューブと分子レベルで静電的に相互作用することが可能である。特に熱安定性などはポリマー分子鎖末端の構造、濃度によるものが大きく、極性を有する窒化ホウ素ナノチューブが無機フィラーとしてのこのような末端と相互作用することでポリマーを熱的、化学的に安定化せしめることが期待される。これらのことから、ポリマーとナノチューブ間の特異的な相互作用の結果として得られたポリアリレート系樹脂組成物においては、少量のフィラー添加においても従来のポリアリレート系樹脂及びその組成物に比べて効率のよい耐熱性、機械特性の改良が可能であり、バルクの無機フィラーを添加したポリアリレートの範囲を超える高性能を発現することも期待される。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
(1)ガラス転移温度
ガラス転移温度は、TAインストルメント製TA2920を用いて窒素雰囲気下、30〜300℃の範囲で昇温速度10℃/分にて測定し、セカンドスキャンのピーク値よりガラス転移温度を計算した。
(2)ポリマー重量減少温度
ポリマー重量減少温度は、Rigaku製TG 8120を用いて空気雰囲気下、30〜800℃の範囲で昇温速度10℃/分にて測定し、5%重量減少時のピーク値より算出した。
(3)熱膨張係数
熱膨張係数は、TAインストルメント製TA2940を用いて空気雰囲気下、30〜80℃の範囲で昇温速度10℃/分にて測定し、セカンドスキャンの値を熱膨張係数とした。
[参考例1 窒化ホウ素ナノチューブの製造]
窒化ホウ素製のるつぼに、1:1のモル比でホウ素と酸化マグネシウムを入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉で1300℃に加熱した。ホウ素と酸化マグネシウムは反応し、気体状の酸化ホウ素(B)とマグネシウムの蒸気が生成した。この生成物をアルゴンガスにより反応室へ移送し、温度を1100℃に維持してアンモニアガスを導入した。酸化ホウ素とアンモニアが反応し、窒化ホウ素が生成した。1.55gの混合物を十分に加熱し、副生成物を蒸発させると、反応室の壁から310mgの白色の固体が得られた。続いて得られた白色固体を濃塩酸で洗浄、イオン交換水で中性になるまで洗浄後、60℃、30mmHgにて減圧乾燥を行い窒化ホウ素ナノチューブ(以下、BNNTと略すことがある)を得た。得られたBNNTは、平均直径が27.6nm、平均長さが2460nmのチューブ状であった。
[実施例1]
0.15重量部の参考例1で得られた窒化ホウ素ナノチューブを100重量部のジメチルアセトアミドに添加して、超音波バスにて4時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。上記窒化ホウ素ナノチューブ分散液にポリアリレート(ユニチカ製U−100)0.15重量部を添加して超音波バスにて30分処理を行ったところ、飛躍的に窒化ホウ素ナノチューブの分散性が向上した。続いて同様のポリアリレート14.85重量部を続けて添加して60℃でポリアリレートが溶解するまで攪拌した。得られた窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリアリレート溶液をガラス基板上に200μmのドクターブレードを使用してキャストした後、80℃で1時間、130℃で1時間乾燥させた。続いて、乾燥したフィルムをイオン交換水中に投入しフィルムをガラス基板上より剥離し、1時間洗浄を行った。得られたフィルムを金枠に固定して30mmHgにて80℃で1時間、130℃で1時間減圧乾燥を実施した。フィルムの厚みは23μm、ガラス転移温度は183.2℃、熱膨張係数は63.4ppm/℃、5%ポリマー重量減少温度は426.4℃であった。
参考例2
(共役系高分子で被覆した窒化ホウ素ナノチューブの作製)
0.1重量部の参考例1で得られた窒化ホウ素ナノチューブを100重量部のジクロロメタンに添加して超音波バスにて2時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。続いて0.1重量部のアルドリッチ製ポリ(m−フェニレンビニレン−co−2,5−ジオクトキシ−p−フェニレンビニレン)を添加して超音波処理を1時間実施した。得られた分散液をミリポア製オムニポアメンブレンフィルター0.1μでろ過し、大量のジクロロメタンで洗浄後、60℃減圧乾燥を2時間行うことで黄色の共役系高分子で被覆された窒化ホウ素ナノチューブを得た。窒化ホウ素ナノチューブ上に被覆された共役系高分子の量は窒化ホウ素ナノチューブに対して4.2重量%であった。
(窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリアリレート系樹脂の作製)
上記で作製の共役系高分子で被覆された窒化ホウ素ナノチューブ0.18重量部を100重量部のジメチルアセトアミドに添加して、超音波バスにて2時間処理を行い、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調整した。続いて15重量部のポリアリレート(ユニチカ製U−100)を添加して室温で樹脂が溶解するまで攪拌した。得られた窒化ホウ素ナノチューブ含有ポリアリレート樹脂溶液をガラス基板上に200μmのドクターブレードを使用してキャストした後、80℃で1時間、130℃で1時間乾燥させた。続いて、乾燥させたフィルムをイオン交換水中に投入しフィルムをガラス基板上より剥離し、1時間洗浄を行った。得られたフィルムを金枠に固定して30mmHgにて80℃で1時間、130℃で1時間減圧乾燥を実施した。フィルムの厚みは26μm、ガラス転移温度は182.9℃、熱膨張係数は63.9ppm/℃、5%ポリマー重量減少温度は423.5℃であった。
[比較例1]
窒化ホウ素ナノチューブを含有しない以外は、実施例1と同様にポリアリレート(ユニチカ製U−100)のフィルムを作製した。フィルムの厚みは27μm、ガラス転移温度は179.8℃、熱膨張係数は68.3ppm/℃、5%ポリマー重量減少温度は406.7℃であった。

Claims (2)

  1. ポリアリレート系樹脂100重量部と、平均直径が0.8〜200nm、アスペクト比が2460/27.6である白色の窒化ホウ素ナノチューブ(官能基化され、可溶性にされたものを除く)0.1〜35重量部とからなるポリアリレート系樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載のポリアリレート系樹脂組成物成形体。
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