JP5053489B2 - 正極活物質,その製造方法および非水電解液二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解液二次電池に用いられる正極活物質,その製造方法およびその活物質を用いた非水電解液二次電池に係り、特にリチウムイオン二次電池の正極材として使用した場合に、高容量特性を維持しつつ充電時の熱安定性を改善するとともに、良好な充放電サイクル特性を実現することが可能な正極活物質,その製造方法および非水電解液二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯型情報端末(PDA)、携帯電話などが急速に普及し、モバイルコンピューティング化が進行している。それに伴って、多機能化する携帯用電子機器などの長時間稼動を可能にすることが望まれている。そこで、携帯用電子機器をはじめとする各種電子機器の電源として用いられる二次電池に対しては、小型・高容量化が強く要求されるようになってきている。
【0003】
このような要求を満たす二次電池としては、例えばリチウム塩を含む非水電解液を使用したリチウムイオン二次電池が知られている。リチウムイオン二次電池では、LiCoO2やLiNiO2やLiMn2O4などのLi含有遷移金属複合酸化物が正極活物質として用いられている。負極には炭素系の材料が用いられ、かつ非水溶媒中にLiPF6やLiBF4などのリチウム塩を溶解した非水電解液が用いられている。このようなリチウムイオン二次電池は、携帯用電子機器の電源などとして多量に使用されている。
【0004】
LiCoO2,LiNiO2,LiMn2O4などの正極活物質は、通常、酸化コバルトや酸化ニッケルと炭酸リチウムとの混合物を大気中にて900℃程度の温度で焼成して複合酸化物化することにより製造されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記リチウムイオン二次電池に使用されるLiCoO2,LiNiO2,LiMn2O4などの正極活物質は、良好なサイクル可逆性を有するが、特にLiCoO2なる組成の活物質を通常の化学量論組成で作成した場合、ある充放電状態で固有の相転移変化を生じる。この相転移変化を繰り返すことが、サイクル特性が劣化する主要因であることが発明者の知見として得られている。
【0006】
また上記活物質は、高温空気中では安定ではあるが、充電状態に置かれることにより、熱安定性が低下する問題がある。そのため、二次電池において、活物質と電解液とが共存する場合、電解液を構成する有機溶媒が酸化分解され、場合によっては発火を引き起こすという安全上で重大な問題も潜在している。
【0007】
さらに、リチウムイオン二次電池においては、正極活物質が電池性能などに大きく影響を及ぼし、特に充放電のサイクル特性を向上させるための研究が数多く進められている一方、充放電の熱安定性を改善すれば、充放電サイクル特性が低下してしまうという傾向が一般的であり、両特性を満足する電池は得られていない。
【0008】
また、これらの正極活物質は、電池性能の向上や正極活物質の製造上の問題などを解決するために、LiCoO2やLiNiO2などに対する種々の添加材料が提案されている。
【0009】
例えば、特許第1989293号公報には、Sn,In,Al等の添加材料を添加することにより、サイクル特性などの電池特性を向上させることを試行した例が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような元素を添加したときには、条件によっては十分な電池容量を確保することが困難になり、リチウムイオン二次電池の高容量性の利点が減殺されてしまうばかりか、その他の電池特性までも損なわれてしまうという問題点があった。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、特にリチウムイオン二次電池などの非水二次電池の優れた高容量特性を維持しつつ、さらに充電時の熱安定性を改善するとともに良好な充放電サイクル特性をも同時に満足することが可能な正極活物質,その製造方法および非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る正極活物質は、一般式:LixCoyMzO2(式中、MはMg,AlおよびSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数である)で表されるLi含有遷移金属複合酸化物から成る正極活物質であり、その正極活物質を樹脂に分散させ、固化・研磨して断面をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による面分析で粒子内のM成分元素の均一固溶が確認されており、且つ該正極活物質を正極として二次電池に組込み、充電しLi0.4CoyMzO2なる組成とした後、分解し取り出し、その一部を切り出した試料について加熱による重量変化を測定したとき、酸素の脱離点として測定される温度が280℃以上315℃以下であることを特徴とする。
【0013】
また、上記正極活物質が、
一般式:LixTyMzO2 ……(1)
(式中、Tは遷移金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、MはMg,Al,Si,Ti,Zn,ZrおよびSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数である)で実質的に表されるLi含有遷移金属複合酸化物から構成されることが好ましい。
【0014】
また本発明に係る正極活物質において、前記正極活物質が、
一般式:LixCoyMzO2 ……(2)
(式中、MはMg,Al,Si,Ti,Zn,ZrおよびSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数である)で実質的に表されるLi含有遷移金属複合酸化物から構成されることが好ましい。
【0015】
また上記正極活物質が、遷移金属元素を含有するとともに、Mg,Al,Si,Ti,Zn,ZrおよびSnから選択される少なくとも1種の金属元素を上記遷移金属元素に対して10at%以下含有する粒子から成ることが好ましい。
【0016】
また本発明に係る正極活物質の製造方法は、Li,Co金属成分を含む原料粉末に、平均粒径が1.0nm〜1.0μmであり、Mg,AlおよびSnから選択された少なくとも1種のM成分元素の化合物微粒子を上記金属成分粉末に対して添加し、組成式がLixCoyMzO2(式中、MはMg,Al,およびSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数である)となるように原料混合体を調製し、この原料混合体を成形後、温度900〜960℃で10〜30時間焼成してM成分元素を均一に固溶させる正極活物質の製造方法であり、この正極活物質を正極として二次電池に組込み、充電しLi0.4CoyMzO2なる組成とした後、分解し取り出し、その一部を切り出した試料について加熱による重量変化を測定したときに酸素の脱離点として測定される温度を280℃以上315℃以下とすることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明に係る非水電解液二次電池は、上記の正極活物質を含有する正極と、前記正極とセパレータを介して配置された負極と、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を収納する電池容器と、前記電池容器内に充填された非水電解液とを具備することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る正極活物質は、遷移金属元素(以下、T成分という。)を含有するとともに、Mg,Al,Si,Ti,Zn,ZrおよびSnから選択された少なくとも1種の金属元素(以下「M成分」いう。)の固溶量または含有量を上記遷移金属元素Tの含有量に対して10at%以下と微量に含有するものである。これらのM成分元素は、いずれも正極活物質の粒径を微細に制御し得る上に活物質の球状度を高くすることが可能である。
【0019】
上記M成分の含有量がT元素量に対して10at%を超えるように過大量添加するとM成分の触媒作用が活性化されて非水電解液のガス化が促進されて電池内圧の上昇を招くため好ましくない。上記M成分は、極微量の添加で、その効果を十分に発揮できる。したがってM成分の含有量は、T成分量に対して10at%以下と規定されるが、1at%以下が好ましく、さらには0.1at%以下がより好ましい。
【0020】
さらに上記M成分となる金属元素は活物質組織内に偏析せずに均一に固溶して存在することが電池特性を高める上で好ましい。二次電池のサイクル特性については、下記のような知見が得られている。すなわち、リチウムイオン二次電池の正極活物質は、充電することによりLiが結晶中から脱離し、見掛けの組成式がLixCoO2(x<1.0)となる状態に変化する。そしてx=0.5となる付近の極狭い組成領域において、本来、六方晶系構造であったLixCoO2が単斜晶へと変化する相転移が観察される。さらに充電の進行により、Liが引き抜かれていくと再び六方晶系構造に変化する反応が観察される。そして、上記相転移を境としてサイクル特性が大きく変化する。すなわち、単斜晶への相転移が、充放電サイクルの繰返しによって、多数回繰り返されることにより、結晶の崩れが生じて電池のサイクル特性の劣化が顕著になる。
【0021】
上記のようなサイクル特性の劣化を回避するために、相転移を引き起こす手前で充放電を制限して充放電深度を浅くすることが、ひとつの対策になり得ると判断された。しかしながら、そのような対策では、リチウムイオン二次電池としての十分な電池容量を確保することは困難であり、二次電池の潜在能力を十分に生かすことは困難である。
【0022】
一方、Li含有量をより過剰にしてLi>1.00である非化学量論組成を有する正極活物質を合成することも、ひとつの対策になり得る。Liが過剰でLi>1.00となる非化学量論組成で合成した場合には、もはや前記相転移が発生しないことが発明者により確認されている。
【0023】
しかしながら、Liを過剰に含有させた場合には、その合成時に活物質に固溶できなかった余剰のLi成分が、主としてLi2CoO3の形態で活物質の表面粒界に存在して、表面第二相を形成してしまうことになり、電池容量およびサイクル特性が著しく低下してしまう難点があり、実用に供することが困難であるという問題点があった。
【0024】
これに対して、本発明では、性極活物質を構成する元素の一部を特定のM元素で置換することにより、電池のサイクル特性が大幅に改善されることを見出した。これは正極活物質中にM元素を所定量ドープして固溶させることによって、相転移点降下現象が得られ、室温でのLixCoO2組成部のx=0.5付近における相転移が抑制されたためであると考えられる。
【0025】
また、極微量のM成分を含有する本発明の正極活物質は、通常の条件下での焼成により粒径を微細化することができる。さらに、シャープな粒度分布が得られる。これらによって、充放電特性や温度特性などの電池特性を向上させることが可能となる。
【0026】
その上で、上記したような効果をもたらすM成分の含有量を極微量としていることから、電池内圧の上昇を抑制することができる。上記M成分が存在する場合のガス発生のメカニズムは十分には解明されていないが、M成分の触媒作用による電解液のガス化などが考えられる。本発明ではM成分の含有量を極微量としているため、M成分の触媒作用が抑えられ、これにより電解液のガス化などを防ぐことが可能になると考えられる。
【0027】
また本発明において、電池の高温安全性に関して以下のような知見が得られている。すなわち、特に一般式LixCoO2で表わされるリチウムイオン二次電池の正極活物質は、充放電操作によってCoイオンがCo3+とCo4+との2態様の間を可逆的に変化する。
【0028】
そして、特に、Liが結晶中から引き抜かれた充電状態の組成LixCoO2(x<1.0)においては活物質構造体中のCo元素は主としてCo4+として存在している。この充電状態においては、250℃を超える温度で急激な酸素放出が観察される。この酸素の放出現象に際してCo4+は還元されてCo2+となり、Liが脱離して生成した空孔内に落ち込み、結晶が崩れ易くなる。
【0029】
このときの活物質の状態変化を熱重量分析(TG)にて観察すると、CoがLi層中の空孔に充填される際に酸素が放出されるため、著しい重量減少が起こる。さらに、この放出された酸素は電解液と共存した電池において、電解液と激しく反応し、結果として発熱し、電池の熱安定性が喪失される場合もある。このように正極活物質の結晶構造が崩壊することにより、電池の熱安定性が低下するのである。
【0030】
このような顕著な酸素放出による熱安定性の低下を回避するためには、前記サイクル特性の改善対策でも述べたように、Liを過剰(Li>1.00)に添加した非化学量論組成を有する正極活物質を合成することも、ひとつの対策になり得る。しかしながら、前述の通り、上記非化学量論組成の活物質では、電池容量およびサイクル特性の劣化が激しく実用に供することが困難である。
【0031】
そこで本発明では、正極活物質を構成する元素の一部を特定のM元素で置換することで高い熱安定性を確保している。すなわち、正極活物質中にM元素を所定量ドープすることによって、熱重量分析(TG)による活物質挙動が変化して電池の熱安定性が大きく向上する効果を得ている。これは、M元素を活物質構造中に置換することにより、構造内のCoパッキング力を強化して、CoのLi層への拡散を阻害する、いわゆる“ピン止め”として機能をM元素が発揮したためであると考えられる。
【0032】
すなわち、高温環境下においてCo4+がCo2+に変化してLi層の空孔に落ち込んでしまうことによって生じる結晶構造の崩れを抑制する効果が得られ、結果的に電池に大きな熱的安定性が付与される。このメカニズムは、X線吸収端微細構造(XANES)解析の結果からも明白であり、M元素のドープがCoO6八面体の結晶構造に生じるひずみを緩和することに有効であることが判明している。
【0033】
また、本発明において、正極活物質は、
一般式:LixTyMzO2 ……(1)
(式中、Tは遷移金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、MはMg,Al,Si,Ti,Zn,ZrおよびSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数である)で実質的に表されるLi含有遷移金属複合酸化物から成ることが好ましい。
【0034】
(1)式で表されるLi含有遷移金属複合酸化物において、T元素としてはCo,Ni,Mn,Fe,Vなどの各種の遷移金属を用いることができる。極微量のM成分によるサイクル特性および熱安定性の改善、さらには粒径の微細化は、特にT元素の少なくとも一部としてCoを用いた場合により効果的に得られる。
【0035】
したがって、前記正極活物質を、
一般式:LixCoyMzO2 ……(2)
(式中、MはMg,Al,Si,Ti,Zn,ZrおよびSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数である)
で実質的に表されるLi含有遷移金属複合酸化物から構成することが、より好ましい。このようなLi含有Co複合酸化物は、電池容量などの点からも好ましい正極活物質である。
【0036】
上記した一般式(1),(2)において、xの値は0.9〜1.15の範囲、yの値は0.85〜1.00の範囲とする。xおよびyの値が上記した範囲を外れると、いずれの場合にも十分な電池容量が得られない。
【0037】
x/y比は1以上とすることが好ましい。x/y<1であると十分な結晶性が得られないため、サイクル特性や電池容量が低下する。
【0038】
また前記一般式(1),(2)において、M成分の添加割合zは0<z≦0.1の範囲として規定されるが、好ましくは0.00001≦z≦0.1の範囲が望ましく、さらには0.0001≦z≦0.1の範囲がより好ましい。
【0039】
上記M成分の添加割合zの範囲が好ましい理由は下記の通りである。すなわち、上記規定範囲外では、固体内部に固溶できないM元素が、粒子の表面または粒界に酸化物あるいはリチウムとの化合物として多量に残留してしまうことにより電池容量およびサイクル特性を損ねる原因となるためである。さらに、M元素は粒子全体に亘って均一に固溶することが望ましい。
【0040】
上記のような均一な固溶状態を得るためには、上記M元素としては、より微細な添加元素材料を用いることが好ましい。ここで、より微細な添加元素材料とは、従来一般的に用いられてきた粒子材料よりもさらに平均粒径が小さい、サブミクロン領域の微細粒子材料を意味する。このような微細材料としては、乾式の粉末微粒子材料または湿式のゾル微粒子材料とがあり、前者はサブミクロンスケールで合成したり、あるいは微粉砕された粒子であり、後者は水またはそれ以外を分散媒としたナノ微粒子からなる酸化物もしくは水酸化物のゾルである。このような材料を使用した場合は、上記zの範囲において、活物質粒子全体に均一な固溶が得られることが確認されている。
【0041】
また、上記M成分が全く含有されていない正極活物質(z=0)では、大気中で温度約900℃に加熱するような通常の焼成法で原料を処理した場合、生成する活物質の平均粒径は10μm以上と極めて粗大になってしまう。このように粒径が粗大な正極活物質を電池に用いた場合、常温での特性については、大きな問題はないが、例えば−20℃程度の低温度で使用した場合には容量が小さくなり温度特性が悪くなる。そのため、可及的に平均粒径が小さい正極活物質とすることが電池特性を向上させる上で重要である。
【0042】
極微量のM成分を含むLi含有遷移金属複合酸化物は、微量添加されたM成分に基づいて、通常の条件下での焼成で粒径を微細化することができる。上記(1)式で表されるLi含有遷移金属複合酸化物によれば、各金属元素の出発原料(例えば酸化物や炭酸塩)を所定の比率で混合した混合物を、例えば大気中、約900〜960℃で10〜30時間焼成した場合において、M成分の添加効果により、例えば10μm以下という平均粒径(50%D値)を実現することができる。Li含有遷移金属複合酸化物(正極活物質)の平均粒径は3〜8μmの範囲とすることがさらに好ましい。
【0043】
本発明方法によって作製した正極活物質は、これまで困難とされてきたM元素添加組成においても均一な固溶化効果および活物質の粒径微細化効果が得られ、電池特性が良好な正極活物質を得ることができる。これは、合成時に結果として生成される添加元素化合物が全ての構造領域に均一に固溶し分布することになること、さらに、活物質粒子の形状が空間的に等方的に成長した球状の活物質が得られたことによる。このような正極活物質の合成は、より微細な添加元素材料を用いることにより可能となる。
【0044】
ここで、より微細な添加元素材料とは、従来用いてきた材料よりもさらに平均粒径が1nm〜1μmと小さいサブミクロン領域ないしナノサイズ領域の微細粒子材料のことである。このような材料には乾式の粉末微粒子材料または湿式のゾル微粒子材料とがあり、前者はサブミクロンスケールまたはナノスケールで合成したり、あるいは微粉砕されたものであり、後者は水またはそれ以外を分散媒とした金属化合物粒子から成るゾルである。
【0045】
上述したような微細な粒子材料を使用して製造され、M成分を均一に固溶化させ、粒径を微細化するとともに球状化したLi含有遷移金属複合酸化物(正極活物質)によれば、リチウムイオン二次電池の正極材として使用した場合に、高容量特性を維持しつつ充電時の熱安定性を改善するとともに、良好な充放電サイクル特性を実現することが可能となる。これは二次電池を使用した装置の使用可能時間および安全性の向上に大きく貢献する。
【0046】
上述した正極活物質と共に混合して正極合剤を形成する導電剤および結着剤としては、従来から非水電解液二次電池用として用いられている、種々の材料を使用することができる。導電剤としてはアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などが用いられる。結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などが用いられる。
【0047】
正極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、正極活物質80〜95質量%、導電剤3〜20質量%、結着剤2〜7質量%の範囲とすることが好ましい。正極活物質、導電剤および結着剤を含む懸濁物を塗布、乾燥させる集電体としては、例えばアルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔などが用いられる。
【0048】
セパレータ、負荷、非水電解液などの他の電池構成要素についても、従来から非水電解液二次電池用として使用されている種々の材料および構成を適用することができる。例えば、セパレータとしては合成樹脂製不織布、ポリエチレン製多孔質フィルム、ポリプロピレン製多孔質フィルムなどが用いられる。
【0049】
負極は負極活物質と結着剤とを適当な溶媒に懸濁し、この懸濁液を集電体に塗布、乾燥して薄板状とすることにより作製される。負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な、熱分解炭素類、ピッチ・コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、フェノール樹脂やフラン樹脂のような有機高分子化合物の焼成体、炭素繊維、活性炭などの炭素材料、または金属リチウム、Li−Al合金のようなリチウム合金、ポリアセチレンやポリピロールのようなポリマーなどが用いられる。結着剤には正極と同様なものが用いられる。
【0050】
負極活物質と結着剤の配合割合は、負極活物質90〜95質量%、結着剤2〜10%質量%の範囲とすることが好ましい。負極活物質および結着剤を含む懸濁物を塗布、乾燥させる集電体としては、例えば銅、ステンレス、ニッケルなどの箔、メッシュ、パンチドメタル、ラスメタルなどが用いられる。
【0051】
さらに、非水電解液は非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される。非水溶媒としては、例えばリチウムイオン二次電池の溶媒として公知の各種非水溶媒を用いることができる。非水電解液用の非水溶媒は特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどと、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタンなどとの混合溶媒などが用いられる。
【0052】
電解質としては、LiPF6,LiBF4,LiCiO4,LiAsF6,LiCF3SO3などのリチウム塩が例示される。このような電解質の非水溶媒に対する溶解量は0.5〜1.5mol/L(リットル)の範囲とすることが好ましい。
【0053】
図1は本発明の非水電解液二次電池をリチウムイオン二次電池に適用した一実施形態の構造を一部断面で示す図である。同図においては、1は例えばステンレスからなる電池容器(電池缶)である。この電池容器1の底部には絶縁体2が配置されている。電池容器1の形状としては、例えば有底円筒状や有底角筒状などが適用される。本発明は円筒形二次電池および角型二次電池のいずれにも適用可能である。
【0054】
電池容器1は負極端子を兼ねており、このような電池容器1内に発電要素として電極群3が収納されている。電極群3は、正極4、セパレータ5および負極6をこの順序で積層した帯状物を、負極6が外側に位置するように、例えば渦巻き状に巻回した構造を有している。電極群3は渦巻き型に限らず、正極4、セパレータ5および負極6をこの順序で複数積層したものであってもよい。
【0055】
電極群3が収納された電池容器1内には、非水電解液が収容されている。電池容器1内の電極群3の上方には、中央部が開口された絶縁紙7が載置されている。電池容器1の上方開口部には絶縁封口板8が配置されている。絶縁封口板8は、電池容器1の上端部付近を内側にかしめ加工することによって、電池容器1に対して液密に固定されている。
【0056】
絶縁封口板8の中央部には、正極端子9が嵌合されている。正極端子9には正極リード10の一端が安全弁11を介して接続されている。正極リード10の他端は、正極4に接続されている。負極6は図示しない負極リードを介して、負極端子である電池容器1に接続されている。これによって、非水電解液二次電池としてのリチウムイオン二次電池12が構成されている。
【0057】
上述したように本発明に係る正極活物質,その製造方法および非水電解液二次電池によれば、正極活物質中にSnなどの金属成分が固溶しているため、相移転が抑制され、結晶構造の崩壊が少なく、高容量特性を維持しつつ、充電時の熱安定性が改善されるとともに、良好な充放電サイクル特性を実現することが可能となり、二次電池の安全性や品質を高めることができる。
【0058】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について以下の実施例および比較例を参照して具体的に説明する。
【0059】
実施例1〜12および比較例1〜2
表1に示すように、LiCoMzO2(但し、MはSn,Al,Si,Zn,Mgのいずれか一種の元素)の組成を有し、このM元素の添加量zが,表1の組成式に示す比率(z=0は比較例1である。)となるように、コバルト化合物原料とリチウム化合物原料と平均粒径が1.0μm以下であるM成分の添加材料粉末とを配合して十分に混合した後に、成形し、空気雰囲気中で表1に示す熱処理条件で焼成することにより、それぞれLi含有遷移金属複合酸化物粒子から成る正極活物質をそれぞれ調製した。なお、比較例2においては熱処理時間が5時間と短い。
【0060】
また、実施例11〜12で示すように、M成分の添加形態として、ナノ微粒子から成り、水またはそれ以外を分散媒とした金属の酸化物または水酸化物微粒子ゾル溶液を所定量添加した場合についても同様に表1に示す処理条件に従って各実施例の正極活物質を調製した。
【0061】
上記のように調製した各実施例に係る正極活物質を電子顕微鏡で観察したところ、リチウム−遷移金属複合酸化物の粒子形状は、いずれも立体的にほぼ等方的形状を有する一次粒子または一次粒子が集合した二次粒子からなり、その中心粒径は1〜10μmであることが判明した。
【0062】
また、上記のように調製した各実施例および比較例に係る正極活物質についてX線回折法(XRD)により結晶構造解析を実施した。ここで、X線回折模様の測定は、理学電気株式会社製のRINT2000を用いた。X線線源にCu−Kα1(波長 1.5405Å)を用いて以下の機器条件で行った。管電圧と電流は各々40kV、40mA、発散スリット0.5°、散乱スリット0.5°、受光スリット幅0.15mm、さらにモノクロメーターを使用した。測定は走査速度2°/分、走査ステップ0.01°で走査軸は2θ/θの条件で行った。その結果、得られた正極活物質を、CuKα線による粉末X線回折法により測定したところ、いずれもR3−mに属する層状のLiCoMzO2またはLiCoO2の回折パターンとほぼ一致した。
【0063】
また、得られた複合酸化物の組成分析を以下に示す要領で行ったところ、Li1Co1MzO2と表1に示す組成を有していることが確認された。なお、Coは試料を塩酸で分解し、EDTA溶液を添加した後、亜鉛溶液を用いて逆滴定を行って定量した。LiおよびM成分は、試料を塩酸で分解し、ICP測定を行うことにより定量した。
【0064】
また、調製した各正極活物質試料を0.5gずつ採取して100mLの水中で撹拌し、さらに超音波分散を100W,3minの条件で実施した。この懸濁液について、LEEDS&NORTHRUP社製のMICROTRAC II PARTICLE−SIZE ANALYZER TYPE7997−10を使用して粒度分布を測定し、これから各活物質の平均粒径(50%D値)をそれぞれ求めた。測定結果を表1に示す。
【0065】
また、上記のように調製した各実施例に係る正極活物質におけるM成分元素の粒子内部での固溶状態を確認する目的で、作製した正極活物質の表面残留種を取り除くために、水を用いて正極活物質表面の洗浄を行った。すなわち、各正極活物質を水に浸漬し、室温で72時間撹拌して洗浄した。その後、ろ過・乾燥し、得られた正極活物質を樹脂に分散させ、固化・研磨して正極活物質断面をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により観察した。
【0066】
EDXは日本電子データム株式会社製のJED−2140を用い、加速電圧40kVの条件で電子ビームを試料上で二次元走査して面分析を行った。二次元面を多数の画素として信号をコンピュータ処理し、カラー化して成分分布を精密に表示させるマッピング手法により面分析を行い、粒子内のM成分元素の均一固溶を観察し、さらに定量分析を行った。その結果、各実施例に係る正極活物質においては、いずれもM元素の均一な固溶が確認でき、また、長時間熱処理を施すことにより固溶量が増加することが確認できた。一方、熱処理時間が短い比較例2に係る活物質においてはM成分の固溶量が不十分であった。
【0067】
次に、得られた各複合酸化物を正極活物質として用い、この正極活物質90質量%と導電剤としてグラファイト6質量%と結着剤としてポリフッ化ビニリデン4質量%とを混合して正極合剤を調製した。この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状とし、これをアルミニウム箔に塗布し、乾燥させた。これをローラープレス機で圧縮成形した。得られた圧縮成形体を所定のサイズに裁断することによって、シート状の正極を得た。
【0068】
次に、炭素材料93質量%と結着剤としてポリフッ化ビニリデン7質量%とを混合して負極合剤を調製した。この負極合剤を用いる以外は、正極と同様にしてシート状の負極を作製した。
【0069】
上述したシート状の正極と微孔性ポリプロピレンフィルムからなるセパレータとシート状の負極をこの順序で積層し、この積層物を負極が外側に位置するように渦巻き状に巻回することにより電極群を作製した。この電極群にリードを取り付けて有底円筒状の電池容器(電池缶)に収容した。さらに、電池容器内に非水電解液を注入した後、これを封入することにより、図1に示すような円筒形非水電解液二次電池を組み立てた。なお、非水電解液は、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)の1:1混合溶媒に、1mol/Lの濃度でLiPF6を溶解して調製した。
【0070】
このようにして作製した円筒形非水分解液二次電池としてのリチウムイオン二次電池の充放電サイクル特性,相移転点挙動および熱安定性を、以下のようにして測定、評価した。
【0071】
すなわち、各実施例および比較例の電極を用いて調製した二次電池の充放電サイクル特性は、下記の条件で測定した。すなわち、放電電流値は、1Cとし、1Cで初放電容量Cap(Initial)と300サイクル後の放電容量Cap(300cycle)との比をもってサイクル容量維持率とした。なお、Cは放電率で、時間率(h)の逆数、つまりC=1/hで表される。なお基準放電電流は、公称容量を定められた時間率(h)で除したものであり、例えば、1Cは、公称容量を1時間で放電させるための放電率である。ここでは、便宜的に、1時間で放電を終了する放電電流を1Cとした。
【0072】
そして、300サイクルの充放電試験を実施し、[Cap(300cycle)/Cap(Initial)]×100の算式により得られる容量維持率を充放電サイクル特性として測定し、表1に示す結果を得た。また実施例2および比較例1に係る二次電池におけるサイクル数と容量維持率との関係を図2に示す。
【0073】
図2に示す結果から明らかなように、M成分元素を所定量固溶化させた正極活物質を使用した実施例2に係る二次電池における容量維持率は94.3%であり、M成分を含有していない従来の比較例1に係る二次電池の容量維持率である81.8%と比較して、充放電サイクル特性が大幅に改善されることが判明した。
【0074】
一方、図2に示す結果から明らかなように、M成分を添加しない比較例1の場合(z=0)には、活物質の平均粒径が粗大化し、容量維持率が低下して電池のサイクル特性が悪化してしまう。
【0075】
また、各実施例および比較例に係る二次電池の正極活物質の相移転挙動について下記のように調査した。LiCoO2は六方晶構造であるが、充電によりLiイオンを引き抜いていくと、ある充電状態を境界に単斜晶に移転すること、およびこのような相移転に付随する熱現象が観測されることが判明している。この熱挙動を調査するために、双子型熱量計(C80−22、SETARAM)を用いて充放電時の熱測定を行った。
【0076】
測定は、10℃、25℃、40℃定温において実施した。電池の充電状態は、実測容量から規定し、LixCoMO2においてx=0.4を満充電状態とした。0.02Cの放電レートで放電させながら熱挙動を調査した。表1に、各測定温度における、この発熱ピークの発生発熱量ΔPを示す。
【0077】
表1の各測定温度におけるピーク発熱量から明らかなように、LixCoO2なる組成を有する比較例1に係る正極活物質においては、室温(25℃)でx=0.5付近になると、六方晶から単斜晶への相移転が起こり、この相移転に対応して鋭い発熱ピークが観測される。
【0078】
一方、LixCoMO2なる組成を有し所定量のM成分を固溶させた各実施例に係る正極活物質では、40℃から室温(25℃)までの範囲では、比較例1のような顕著な熱挙動が観測されず、10℃まで温度を降下させたときに、初めて単斜晶への移転に付随する熱挙動が現われており、各実施例において明らかに相移転点降下が生じていることが確認できる。
【0079】
さらに各実施例および比較例に係る二次電池の正極活物質の熱安定性を以下の手順で測定した。すなわち、正極活物質の熱安定性は、Thermal Gravimetric Analyzer(TG)を用いて熱重量分析を行い、熱重量変化を調査した。LixCoO2(x=0.4)の充電状態にしたリチウムイオン二次電池をドライボックス中で分解し、正極を取り出して約10mgを切り出し測定試料とした。TGは試料に外部から熱を加え、徐々に温度を上昇させながら試料を引き起こす固有の重量変化を測定する方法である。この重量変化は主として正極活物質から酸素が脱離する重量減少に基づく。リチウムイオン二次電池の電解液中にこの酸素濃度が増加すると異常発熱の原因となる。したがって、この酸素の脱離点が高いほど熱安定性に優れていることになり、安全上好ましい。
【0080】
上記酸素の脱離点は、図3に示すように測定される。すなわち、正極活物質試料を一定の昇温速度で加熱した場合の重量減少曲線において、試料重量が漸減する曲線部を第1直線として近似する一方、試料重量が急激に低下する曲線部を第2直線として近似し、その第1直線と第2直線との交点に対応する加熱温度として上記酸素の脱離点が得られる。各実施例および比較例に係る正極活物質の酸素の脱離点の測定結果を表1に示すとともに、実施例2および比較例1に係る正極活物質についての加熱温度と重量減少との関係を図3に示す。
【0081】
表1および図3に示すTG分析結果から明らかなように、各実施例に係る正極活物質においては、比較例1に係る従来の正極活物質と比較して、酸素脱離に起因する重量減少の開始温度が大幅に上昇しており、正極活物質に対するM成分元素の部分的置換が熱安定性の向上に大きく寄与していることが判明した。
【0082】
また、この酸素の脱離が比較的緩やかに進行するため、電解液との急激な反応が緩和されることとなり、電解液を構成する有機溶媒の激しい酸化分解に伴う発火現象を軽減でき、二次電池の操作の安全性を大幅に改善できることが判明した。
【0083】
各実施例および比較例に係る正極活物質およびそれを用いた二次電池の製造条件および各特性値を下記表1にまとめて示す。
【0084】
【表1】
【0085】
上記表1に示す結果から明らかなように、Sn,Mg,Al,Si,Zn等のM成分元素を所定量含有させた原料成形体を12時間熱処理して調製した正極活物質と24時間熱処理して調製した正極活物質とを比較すると、24時間と、より長時間熱処理した正極活物質の方が電池特性が優れていることが確認できる。これは、長時間熱処理することにより、活物質粒子表面にM成分元素による第2相が形成されず、より多くの割合でM成分元素が活物質固体内に均一に固溶したためである。
【0086】
また、M成分元素としてMgを選択した場合には、熱安定性は向上する反面、サイクル特性は若干犠牲になる結果が得られた。一方、Siを選択した場合にはサイクル特性と熱安定性とを同時に十分に向上させるには至っていない。また、Znを選択した場合には、サイクル特性は良好であるものの、熱安定性の向上が不十分であった。さらに、Alを選択した場合には、上記両特性に向上が見られたが、Sn添加による効果には及ばないことが判明した。したがって、本実施例において各種M成分元素の中でも、特にM成分としてのSnを添加した場合の効果が非常に大きく、二次電池特性を効果的に改善できることが判明した。
【0087】
【発明の効果】
以上説明の通り本発明に係る正極活物質,その製造方法および非水電解液二次電池によれば、正極活物質中にSnなどの金属成分が固溶しているため、相移転が抑制され、結晶構造の崩壊が少なく、高容量特性を維持しつつ、充電時の熱安定性が改善されるとともに、良好な充放電サイクル特性を実現することが可能となり、二次電池の安全性や品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る非水電解液二次電池の一実施例としてのリチウムイオン二次電池の構造を示す半断面図。
【図2】本発明の実施例および比較例に係る二次電池におけるサイクル数と容量維持率との関係を示すグラフ。
【図3】本発明の実施例および比較例に係る正極活物質についての加熱温度と重量減少との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1 電池容器(電池缶)
2 絶縁体
3 電極群
4 正極
5 セパレータ
6 負極
7 絶縁紙
8 絶縁封口板
9 正極端子
10 正極リード
11 安全弁
12 非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)
13 正極活物質粒子
14 偏析・凝集部
Claims (3)
- 一般式:LixCoyMzO2(式中、MはMg,AlおよびSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数である)で表されるLi含有遷移金属複合酸化物から成る正極活物質であり、その正極活物質を樹脂に分散させ、固化・研磨して断面をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による面分析で粒子内のM成分元素の均一固溶が確認されており、且つ該正極活物質を正極として二次電池に組込み、充電しLi0.4CoyMzO2なる組成とした後、分解し取り出し、その一部を切り出した試料について加熱による重量変化を測定したとき、酸素の脱離点として測定される温度が280℃以上315℃以下であることを特徴とする正極活物質。
- Li,Co金属成分を含む原料粉末に、平均粒径が1.0nm〜1.0μmであり、Mg,AlおよびSnから選択された少なくとも1種のM成分元素の化合物微粒子を上記金属成分粉末に対して添加し、組成式がLixCoyMzO2(式中、MはMg,Al,およびSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数である)となるように原料混合体を調製し、この原料混合体を成形後、温度900−960℃で10〜30時間焼成してM成分元素を均一に固溶させる正極活物質の製造方法であり、この正極活物質を正極として二次電池に組込み、充電しLi0.4CoyMzO2なる組成とした後、分解し取り出し、その一部を切り出した試料について加熱による重量変化を測定したときに酸素の脱離点として測定される温度を280℃以上315℃以下とすることを特徴とする正極活物質の製造方法。
- 請求項1記載の正極活物質を含有する正極と、前記正極とセパレータを介して配置された負極と、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を収納する電池容器と、前記電池容器内に充填された非水電解液とを具備することを特徴とする非水電解液二次電池。
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