JP2003045426A - 正極活物質,その製造方法および非水電解液二次電池 - Google Patents
正極活物質,その製造方法および非水電解液二次電池Info
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Abstract
優れた高容量特性を維持しつつ、さらに充電時の熱安定
性を改善するとともに良好な充放電サイクル特性をも同
時に満足させることが可能な正極活物質,その製造方法
および非水電解液二次電池を提供する。 【解決手段】正極活物質は、下記一般式1および2の複
合酸化物である。 LixTyMzO2 …(1) LixCoyMzO2 …(2) (式中、Tyは遷移金属で,MはMg,Al,Si,T
i,Zn,ZrおよびSnから選択される少なくとも1
種の金属元素を示す。)この金属元素の固溶量が上記遷
移金属元素に対して10at%以下であることを特徴と
する正極活物質である。
Description
に用いられる正極活物質,その製造方法およびその活物
質を用いた非水電解液二次電池に係り、特にリチウムイ
オン二次電池の正極材として使用した場合に、高容量特
性を維持しつつ充電時の熱安定性を改善するとともに、
良好な充放電サイクル特性を実現することが可能な正極
活物質,その製造方法および非水電解液二次電池に関す
る。
タ、携帯型情報端末(PDA)、携帯電話などが急速に
普及し、モバイルコンピューティング化が進行してい
る。それに伴って、多機能化する携帯用電子機器などの
長時間稼動を可能にすることが望まれている。そこで、
携帯用電子機器をはじめとする各種電子機器の電源とし
て用いられる二次電池に対しては、小型・高容量化が強
く要求されるようになってきている。
は、例えばリチウム塩を含む非水電解液を使用したリチ
ウムイオン二次電池が知られている。リチウムイオン二
次電池では、LiCoO2やLiNiO2やLiMn2
O4などのLi含有遷移金属複合酸化物が正極活物質と
して用いられている。負極には炭素系の材料が用いら
れ、かつ非水溶媒中にLiPF6やLiBF4などのリ
チウム塩を溶解した非水電解液が用いられている。この
ようなリチウムイオン二次電池は、携帯用電子機器の電
源などとして多量に使用されている。
O4などの正極活物質は、通常、酸化コバルトや酸化ニ
ッケルと炭酸リチウムとの混合物を大気中にて900℃
程度の温度で焼成して複合酸化物化することにより製造
されている。
次電池に使用されるLiCoO2,LiNiO2,Li
Mn2O4などの正極活物質は、良好なサイクル可逆性
を有するが、特にLiCoO2なる組成の活物質を通常
の化学量論組成で作成した場合、ある充放電状態で固有
の相転移変化を生じる。この相転移変化を繰り返すこと
が、サイクル特性が劣化する主要因であることが発明者
の知見として得られている。
はあるが、充電状態に置かれることにより、熱安定性が
低下する問題がある。そのため、二次電池において、活
物質と電解液とが共存する場合、電解液を構成する有機
溶媒が酸化分解され、場合によっては発火を引き起こす
という安全上で重大な問題も潜在している。
は、正極活物質が電池性能などに大きく影響を及ぼし、
特に充放電のサイクル特性を向上させるための研究が数
多く進められている一方、充放電の熱安定性を改善すれ
ば、充放電サイクル特性が低下してしまうという傾向が
一般的であり、両特性を満足する電池は得られていな
い。
向上や正極活物質の製造上の問題などを解決するため
に、LiCoO2やLiNiO2などに対する種々の添
加材料が提案されている。
は、Sn,In,Al等の添加材料を添加することによ
り、サイクル特性などの電池特性を向上させることを試
行した例が開示されている。
ような元素を添加したときには、条件によっては十分な
電池容量を確保することが困難になり、リチウムイオン
二次電池の高容量性の利点が減殺されてしまうばかり
か、その他の電池特性までも損なわれてしまうという問
題点があった。
れたものであり、特にリチウムイオン二次電池などの非
水二次電池の優れた高容量特性を維持しつつ、さらに充
電時の熱安定性を改善するとともに良好な充放電サイク
ル特性をも同時に満足することが可能な正極活物質,そ
の製造方法および非水電解液二次電池を提供することを
目的とする。
め、本発明に係る正極活物質は、遷移金属元素を含有す
るとともに、Mg,Al,Si,Ti,Zn,Zrおよ
びSnから選択される少なくとも1種の金属元素を含有
し、この金属元素の固溶量が上記遷移金属元素に対して
10at%以下であることを特徴とする。
素を示し、MはMg,Al,Si,Ti,Zn,Zrお
よびSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、
x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.
85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数であ
る)で実質的に表されるLi含有遷移金属複合酸化物か
ら構成されることが好ましい。
記正極活物質が、 一般式:LixCoyMzO2 ……(2) (式中、MはMg,Al,Si,Ti,Zn,Zrおよ
びSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、
x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.
85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数であ
る)で実質的に表されるLi含有遷移金属複合酸化物か
ら構成されることが好ましい。
有するとともに、Mg,Al,Si,Ti,Zn,Zr
およびSnから選択される少なくとも1種の金属元素を
上記遷移金属元素に対して10at%以下含有する粒子
から成ることが好ましい。
は、遷移金属成分粉末に平均粒径が1.0nm〜1.0
μmであり、Mg,Al,Si,Ti,Zn,Zrおよ
びSnから選択された少なくとも1種の元素の化合物微
粒子を上記遷移金属元素量に対して10at%以下の割
合で添加して原料混合体を調製し、この原料混合体を成
形後、温度900〜960℃で10〜30時間焼成する
ことを特徴とする。
は、遷移金属元素を含有するとともに、Mg,Al,S
i,Ti,Zn,ZrおよびSnから選択される少なく
とも1種の金属元素を含有し、この金属元素の固溶量が
上記遷移金属元素に対して10at%以下である粒子か
ら成る正極活物質を含有する正極と、前記正極とセパレ
ータを介して配置された負極と、前記正極、前記セパレ
ータおよび前記負極を収納する電池容器と、前記電池容
器内に充填された非水電解液とを具備することを特徴と
する。
(以下、T成分という。)を含有するとともに、Mg,
Al,Si,Ti,Zn,ZrおよびSnから選択され
た少なくとも1種の金属元素(以下「M成分」いう。)
の固溶量または含有量を上記遷移金属元素Tの含有量に
対して10at%以下と微量に含有するものである。こ
れらのM成分元素は、いずれも正極活物質の粒径を微細
に制御し得る上に活物質の球状度を高くすることが可能
である。
0at%を超えるように過大量添加するとM成分の触媒
作用が活性化されて非水電解液のガス化が促進されて電
池内圧の上昇を招くため好ましくない。上記M成分は、
極微量の添加で、その効果を十分に発揮できる。したが
ってM成分の含有量は、T成分量に対して10at%以
下と規定されるが、1at%以下が好ましく、さらには
0.1at%以下がより好ましい。
組織内に偏析せずに均一に固溶して存在することが電池
特性を高める上で好ましい。二次電池のサイクル特性に
ついては、下記のような知見が得られている。すなわ
ち、リチウムイオン二次電池の正極活物質は、充電する
ことによりLiが結晶中から脱離し、見掛けの組成式が
LixCoO2(x<1.0)となる状態に変化する。
そしてx=0.5となる付近の極狭い組成領域におい
て、本来、六方晶系構造であったLixCoO2が単斜
晶へと変化する相転移が観察される。さらに充電の進行
により、Liが引き抜かれていくと再び六方晶系構造に
変化する反応が観察される。そして、上記相転移を境と
してサイクル特性が大きく変化する。すなわち、単斜晶
への相転移が、充放電サイクルの繰返しによって、多数
回繰り返されることにより、結晶の崩れが生じて電池の
サイクル特性の劣化が顕著になる。
るために、相転移を引き起こす手前で充放電を制限して
充放電深度を浅くすることが、ひとつの対策になり得る
と判断された。しかしながら、そのような対策では、リ
チウムイオン二次電池としての十分な電池容量を確保す
ることは困難であり、二次電池の潜在能力を十分に生か
すことは困難である。
1.00である非化学量論組成を有する正極活物質を合
成することも、ひとつの対策になり得る。Liが過剰で
Li>1.00となる非化学量論組成で合成した場合に
は、もはや前記相転移が発生しないことが発明者により
確認されている。
合には、その合成時に活物質に固溶できなかった余剰の
Li成分が、主としてLi2CoO3の形態で活物質の
表面粒界に存在して、表面第二相を形成してしまうこと
になり、電池容量およびサイクル特性が著しく低下して
しまう難点があり、実用に供することが困難であるとい
う問題点があった。
構成する元素の一部を特定のM元素で置換することによ
り、電池のサイクル特性が大幅に改善されることを見出
した。これは正極活物質中にM元素を所定量ドープして
固溶させることによって、相転移点降下現象が得られ、
室温でのLixCoO2組成部のx=0.5付近におけ
る相転移が抑制されたためであると考えられる。
正極活物質は、通常の条件下での焼成により粒径を微細
化することができる。さらに、シャープな粒度分布が得
られる。これらによって、充放電特性や温度特性などの
電池特性を向上させることが可能となる。
M成分の含有量を極微量としていることから、電池内圧
の上昇を抑制することができる。上記M成分が存在する
場合のガス発生のメカニズムは十分には解明されていな
いが、M成分の触媒作用による電解液のガス化などが考
えられる。本発明ではM成分の含有量を極微量としてい
るため、M成分の触媒作用が抑えられ、これにより電解
液のガス化などを防ぐことが可能になると考えられる。
関して以下のような知見が得られている。すなわち、特
に一般式LixCoO2で表わされるリチウムイオン二
次電池の正極活物質は、充放電操作によってCoイオン
がCo3+とCo4+との2態様の間を可逆的に変化す
る。
れた充電状態の組成LixCoO2(x<1.0)にお
いては活物質構造体中のCo元素は主としてCo4+と
して存在している。この充電状態においては、250℃
を超える温度で急激な酸素放出が観察される。この酸素
の放出現象に際してCo4+は還元されてCo2+とな
り、Liが脱離して生成した空孔内に落ち込み、結晶が
崩れ易くなる。
(TG)にて観察すると、CoがLi層中の空孔に充填
される際に酸素が放出されるため、著しい重量減少が起
こる。さらに、この放出された酸素は電解液と共存した
電池において、電解液と激しく反応し、結果として発熱
し、電池の熱安定性が喪失される場合もある。このよう
に正極活物質の結晶構造が崩壊することにより、電池の
熱安定性が低下するのである。
の低下を回避するためには、前記サイクル特性の改善対
策でも述べたように、Liを過剰(Li>1.00)に
添加した非化学量論組成を有する正極活物質を合成する
ことも、ひとつの対策になり得る。しかしながら、前述
の通り、上記非化学量論組成の活物質では、電池容量お
よびサイクル特性の劣化が激しく実用に供することが困
難である。
元素の一部を特定のM元素で置換することで高い熱安定
性を確保している。すなわち、正極活物質中にM元素を
所定量ドープすることによって、熱重量分析(TG)に
よる活物質挙動が変化して電池の熱安定性が大きく向上
する効果を得ている。これは、M元素を活物質構造中に
置換することにより、構造内のCoパッキング力を強化
して、CoのLi層への拡散を阻害する、いわゆる“ピ
ン止め”として機能をM元素が発揮したためであると考
えられる。
Co2+に変化してLi層の空孔に落ち込んでしまうこ
とによって生じる結晶構造の崩れを抑制する効果が得ら
れ、結果的に電池に大きな熱的安定性が付与される。こ
のメカニズムは、X線吸収端微細構造(XANES)解
析の結果からも明白であり、M元素のドープがCoO 6
八面体の結晶構造に生じるひずみを緩和することに有効
であることが判明している。
素を示し、MはMg,Al,Si,Ti,Zn,Zrお
よびSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、
x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.
85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数であ
る)で実質的に表されるLi含有遷移金属複合酸化物か
ら成ることが好ましい。
酸化物において、T元素としてはCo,Ni,Mn,F
e,Vなどの各種の遷移金属を用いることができる。極
微量のM成分によるサイクル特性および熱安定性の改
善、さらには粒径の微細化は、特にT元素の少なくとも
一部としてCoを用いた場合により効果的に得られる。
びSnから選択された少なくとも1種の元素を示し、
x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.15、0.
85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足する数であ
る)で実質的に表されるLi含有遷移金属複合酸化物か
ら構成することが、より好ましい。このようなLi含有
Co複合酸化物は、電池容量などの点からも好ましい正
極活物質である。
xの値は0.9〜1.15の範囲、yの値は0.85〜
1.00の範囲とする。xおよびyの値が上記した範囲
を外れると、いずれの場合にも十分な電池容量が得られ
ない。
x/y<1であると十分な結晶性が得られないため、サ
イクル特性や電池容量が低下する。
M成分の添加割合zは0<z≦0.1の範囲として規定
されるが、好ましくは0.00001≦z≦0.1の範
囲が望ましく、さらには0.0001≦z≦0.1の範
囲がより好ましい。
理由は下記の通りである。すなわち、上記規定範囲外で
は、固体内部に固溶できないM元素が、粒子の表面また
は粒界に酸化物あるいはリチウムとの化合物として多量
に残留してしまうことにより電池容量およびサイクル特
性を損ねる原因となるためである。さらに、M元素は粒
子全体に亘って均一に固溶することが望ましい。
は、上記M元素としては、より微細な添加元素材料を用
いることが好ましい。ここで、より微細な添加元素材料
とは、従来一般的に用いられてきた粒子材料よりもさら
に平均粒径が小さい、サブミクロン領域の微細粒子材料
を意味する。このような微細材料としては、乾式の粉末
微粒子材料または湿式のゾル微粒子材料とがあり、前者
はサブミクロンスケールで合成したり、あるいは微粉砕
された粒子であり、後者は水またはそれ以外を分散媒と
したナノ微粒子からなる酸化物もしくは水酸化物のゾル
である。このような材料を使用した場合は、上記zの範
囲において、活物質粒子全体に均一な固溶が得られるこ
とが確認されている。
正極活物質(z=0)では、大気中で温度約900℃に
加熱するような通常の焼成法で原料を処理した場合、生
成する活物質の平均粒径は10μm以上と極めて粗大に
なってしまう。このように粒径が粗大な正極活物質を電
池に用いた場合、常温での特性については、大きな問題
はないが、例えば−20℃程度の低温度で使用した場合
には容量が小さくなり温度特性が悪くなる。そのため、
可及的に平均粒径が小さい正極活物質とすることが電池
特性を向上させる上で重要である。
合酸化物は、微量添加されたM成分に基づいて、通常の
条件下での焼成で粒径を微細化することができる。上記
(1)式で表されるLi含有遷移金属複合酸化物によれ
ば、各金属元素の出発原料(例えば酸化物や炭酸塩)を
所定の比率で混合した混合物を、例えば大気中、約90
0〜960℃で10〜30時間焼成した場合において、
M成分の添加効果により、例えば10μm以下という平
均粒径(50%D値)を実現することができる。Li含
有遷移金属複合酸化物(正極活物質)の平均粒径は3〜
8μmの範囲とすることがさらに好ましい。
は、これまで困難とされてきたM元素添加組成において
も均一な固溶化効果および活物質の粒径微細化効果が得
られ、電池特性が良好な正極活物質を得ることができ
る。これは、合成時に結果として生成される添加元素化
合物が全ての構造領域に均一に固溶し分布することにな
ること、さらに、活物質粒子の形状が空間的に等方的に
成長した球状の活物質が得られたことによる。このよう
な正極活物質の合成は、より微細な添加元素材料を用い
ることにより可能となる。
来用いてきた材料よりもさらに平均粒径が1nm〜1μ
mと小さいサブミクロン領域ないしナノサイズ領域の微
細粒子材料のことである。このような材料には乾式の粉
末微粒子材料または湿式のゾル微粒子材料とがあり、前
者はサブミクロンスケールまたはナノスケールで合成し
たり、あるいは微粉砕されたものであり、後者は水また
はそれ以外を分散媒とした金属化合物粒子から成るゾル
である。
製造され、M成分を均一に固溶化させ、粒径を微細化す
るとともに球状化したLi含有遷移金属複合酸化物(正
極活物質)によれば、リチウムイオン二次電池の正極材
として使用した場合に、高容量特性を維持しつつ充電時
の熱安定性を改善するとともに、良好な充放電サイクル
特性を実現することが可能となる。これは二次電池を使
用した装置の使用可能時間および安全性の向上に大きく
貢献する。
剤を形成する導電剤および結着剤としては、従来から非
水電解液二次電池用として用いられている、種々の材料
を使用することができる。導電剤としてはアセチレンブ
ラック、カーボンブラック、黒鉛などが用いられる。結
着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTF
E)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−
プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−
ブタジエンゴム(SBR)などが用いられる。
合は、正極活物質80〜95質量%、導電剤3〜20質
量%、結着剤2〜7質量%の範囲とすることが好まし
い。正極活物質、導電剤および結着剤を含む懸濁物を塗
布、乾燥させる集電体としては、例えばアルミニウム
箔、ステンレス箔、ニッケル箔などが用いられる。
電池構成要素についても、従来から非水電解液二次電池
用として使用されている種々の材料および構成を適用す
ることができる。例えば、セパレータとしては合成樹脂
製不織布、ポリエチレン製多孔質フィルム、ポリプロピ
レン製多孔質フィルムなどが用いられる。
に懸濁し、この懸濁液を集電体に塗布、乾燥して薄板状
とすることにより作製される。負極活物質としては、リ
チウムイオンを吸蔵・放出することが可能な、熱分解炭
素類、ピッチ・コークス類、グラファイト類、ガラス状
炭素類、フェノール樹脂やフラン樹脂のような有機高分
子化合物の焼成体、炭素繊維、活性炭などの炭素材料、
または金属リチウム、Li−Al合金のようなリチウム
合金、ポリアセチレンやポリピロールのようなポリマー
などが用いられる。結着剤には正極と同様なものが用い
られる。
物質90〜95質量%、結着剤2〜10%質量%の範囲
とすることが好ましい。負極活物質および結着剤を含む
懸濁物を塗布、乾燥させる集電体としては、例えば銅、
ステンレス、ニッケルなどの箔、メッシュ、パンチドメ
タル、ラスメタルなどが用いられる。
溶解することにより調製される。非水溶媒としては、例
えばリチウムイオン二次電池の溶媒として公知の各種非
水溶媒を用いることができる。非水電解液用の非水溶媒
は特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカ
ーボネート、エチレンカーボネートなどと、ジメチルカ
ーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカー
ボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエ
タン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエ
タンなどとの混合溶媒などが用いられる。
F4,LiCiO4,LiAsF6,LiCF3SO3
などのリチウム塩が例示される。このような電解質の非
水溶媒に対する溶解量は0.5〜1.5mol/L(リ
ットル)の範囲とすることが好ましい。
ウムイオン二次電池に適用した一実施形態の構造を一部
断面で示す図である。同図においては、1は例えばステ
ンレスからなる電池容器(電池缶)である。この電池容
器1の底部には絶縁体2が配置されている。電池容器1
の形状としては、例えば有底円筒状や有底角筒状などが
適用される。本発明は円筒形二次電池および角型二次電
池のいずれにも適用可能である。
ような電池容器1内に発電要素として電極群3が収納さ
れている。電極群3は、正極4、セパレータ5および負
極6をこの順序で積層した帯状物を、負極6が外側に位
置するように、例えば渦巻き状に巻回した構造を有して
いる。電極群3は渦巻き型に限らず、正極4、セパレー
タ5および負極6をこの順序で複数積層したものであっ
てもよい。
非水電解液が収容されている。電池容器1内の電極群3
の上方には、中央部が開口された絶縁紙7が載置されて
いる。電池容器1の上方開口部には絶縁封口板8が配置
されている。絶縁封口板8は、電池容器1の上端部付近
を内側にかしめ加工することによって、電池容器1に対
して液密に固定されている。
嵌合されている。正極端子9には正極リード10の一端
が安全弁11を介して接続されている。正極リード10
の他端は、正極4に接続されている。負極6は図示しな
い負極リードを介して、負極端子である電池容器1に接
続されている。これによって、非水電解液二次電池とし
てのリチウムイオン二次電池12が構成されている。
その製造方法および非水電解液二次電池によれば、正極
活物質中にSnなどの金属成分が固溶しているため、相
移転が抑制され、結晶構造の崩壊が少なく、高容量特性
を維持しつつ、充電時の熱安定性が改善されるととも
に、良好な充放電サイクル特性を実現することが可能と
なり、二次電池の安全性や品質を高めることができる。
下の実施例および比較例を参照して具体的に説明する。
n,Al,Si,Zn,Mgのいずれか一種の元素)の
組成を有し、このM元素の添加量zが,表1の組成式に
示す比率(z=0は比較例1である。)となるように、
コバルト化合物原料とリチウム化合物原料と平均粒径が
1.0μm以下であるM成分の添加材料粉末とを配合し
て十分に混合した後に、成形し、空気雰囲気中で表1に
示す熱処理条件で焼成することにより、それぞれLi含
有遷移金属複合酸化物粒子から成る正極活物質をそれぞ
れ調製した。なお、比較例2においては熱処理時間が5
時間と短い。
成分の添加形態として、ナノ微粒子から成り、水または
それ以外を分散媒とした金属の酸化物または水酸化物微
粒子ゾル溶液を所定量添加した場合についても同様に表
1に示す処理条件に従って各実施例の正極活物質を調製
した。
活物質を電子顕微鏡で観察したところ、リチウム−遷移
金属複合酸化物の粒子形状は、いずれも立体的にほぼ等
方的形状を有する一次粒子または一次粒子が集合した二
次粒子からなり、その中心粒径は1〜10μmであるこ
とが判明した。
び比較例に係る正極活物質についてX線回折法(XR
D)により結晶構造解析を実施した。ここで、X線回折
模様の測定は、理学電気株式会社製のRINT2000
を用いた。X線線源にCu−Kα1(波長 1.540
5Å)を用いて以下の機器条件で行った。管電圧と電流
は各々40kV、40mA、発散スリット0.5°、散
乱スリット0.5°、受光スリット幅0.15mm、さ
らにモノクロメーターを使用した。測定は走査速度2°
/分、走査ステップ0.01°で走査軸は2θ/θの条
件で行った。その結果、得られた正極活物質を、CuK
α線による粉末X線回折法により測定したところ、いず
れもR3−mに属する層状のLiCoMzO2またはL
iCoO2の回折パターンとほぼ一致した。
下に示す要領で行ったところ、Li 1Co1MzO2と
表1に示す組成を有していることが確認された。なお、
Coは試料を塩酸で分解し、EDTA溶液を添加した
後、亜鉛溶液を用いて逆滴定を行って定量した。Liお
よびM成分は、試料を塩酸で分解し、ICP測定を行う
ことにより定量した。
gずつ採取して100mLの水中で撹拌し、さらに超音
波分散を100W,3minの条件で実施した。この懸
濁液について、LEEDS&NORTHRUP社製のM
ICROTRAC II PARTICLE−SIZE
ANALYZER TYPE7997−10を使用し
て粒度分布を測定し、これから各活物質の平均粒径(5
0%D値)をそれぞれ求めた。測定結果を表1に示す。
る正極活物質におけるM成分元素の粒子内部での固溶状
態を確認する目的で、作製した正極活物質の表面残留種
を取り除くために、水を用いて正極活物質表面の洗浄を
行った。すなわち、各正極活物質を水に浸漬し、室温で
72時間撹拌して洗浄した。その後、ろ過・乾燥し、得
られた正極活物質を樹脂に分散させ、固化・研磨して正
極活物質断面をエネルギー分散型X線分析装置(ED
X)により観察した。
ED−2140を用い、加速電圧40kVの条件で電子
ビームを試料上で二次元走査して面分析を行った。二次
元面を多数の画素として信号をコンピュータ処理し、カ
ラー化して成分分布を精密に表示させるマッピング手法
により面分析を行い、粒子内のM成分元素の均一固溶を
観察し、さらに定量分析を行った。その結果、各実施例
に係る正極活物質においては、いずれもM元素の均一な
固溶が確認でき、また、長時間熱処理を施すことにより
固溶量が増加することが確認できた。一方、熱処理時間
が短い比較例2に係る活物質においてはM成分の固溶量
が不十分であった。
として用い、この正極活物質90質量%と導電剤として
グラファイト6質量%と結着剤としてポリフッ化ビニリ
デン4質量%とを混合して正極合剤を調製した。この正
極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラ
リー状とし、これをアルミニウム箔に塗布し、乾燥させ
た。これをローラープレス機で圧縮成形した。得られた
圧縮成形体を所定のサイズに裁断することによって、シ
ート状の正極を得た。
ポリフッ化ビニリデン7質量%とを混合して負極合剤を
調製した。この負極合剤を用いる以外は、正極と同様に
してシート状の負極を作製した。
ピレンフィルムからなるセパレータとシート状の負極を
この順序で積層し、この積層物を負極が外側に位置する
ように渦巻き状に巻回することにより電極群を作製し
た。この電極群にリードを取り付けて有底円筒状の電池
容器(電池缶)に収容した。さらに、電池容器内に非水
電解液を注入した後、これを封入することにより、図1
に示すような円筒形非水電解液二次電池を組み立てた。
なお、非水電解液は、エチレンカーボネート(EC)と
メチルエチルカーボネート(MEC)の1:1混合溶媒
に、1mol/Lの濃度でLiPF6を溶解して調製し
た。
二次電池としてのリチウムイオン二次電池の充放電サイ
クル特性,相移転点挙動および熱安定性を、以下のよう
にして測定、評価した。
用いて調製した二次電池の充放電サイクル特性は、下記
の条件で測定した。すなわち、放電電流値は、1Cと
し、1Cで初放電容量Cap(Initial)と30
0サイクル後の放電容量Cap(300cycle)と
の比をもってサイクル容量維持率とした。なお、Cは放
電率で、時間率(h)の逆数、つまりC=1/hで表さ
れる。なお基準放電電流は、公称容量を定められた時間
率(h)で除したものであり、例えば、1Cは、公称容
量を1時間で放電させるための放電率である。ここで
は、便宜的に、1時間で放電を終了する放電電流を1C
とした。
施し、[Cap(300cycle)/Cap(Ini
tial)]×100の算式により得られる容量維持率
を充放電サイクル特性として測定し、表1に示す結果を
得た。また実施例2および比較例1に係る二次電池にお
けるサイクル数と容量維持率との関係を図2に示す。
分元素を所定量固溶化させた正極活物質を使用した実施
例2に係る二次電池における容量維持率は94.3%で
あり、M成分を含有していない従来の比較例1に係る二
次電池の容量維持率である81.8%と比較して、充放
電サイクル特性が大幅に改善されることが判明した。
に、M成分を添加しない比較例1の場合(z=0)に
は、活物質の平均粒径が粗大化し、容量維持率が低下し
て電池のサイクル特性が悪化してしまう。
池の正極活物質の相移転挙動について下記のように調査
した。LiCoO2は六方晶構造であるが、充電により
Liイオンを引き抜いていくと、ある充電状態を境界に
単斜晶に移転すること、およびこのような相移転に付随
する熱現象が観測されることが判明している。この熱挙
動を調査するために、双子型熱量計(C80−22、S
ETARAM)を用いて充放電時の熱測定を行った。
いて実施した。電池の充電状態は、実測容量から規定
し、LixCoMO2においてx=0.4を満充電状態
とした。0.02Cの放電レートで放電させながら熱挙
動を調査した。表1に、各測定温度における、この発熱
ピークの発生発熱量ΔPを示す。
ら明らかなように、LixCoO2なる組成を有する比
較例1に係る正極活物質においては、室温(25℃)で
x=0.5付近になると、六方晶から単斜晶への相移転
が起こり、この相移転に対応して鋭い発熱ピークが観測
される。
定量のM成分を固溶させた各実施例に係る正極活物質で
は、40℃から室温(25℃)までの範囲では、比較例
1のような顕著な熱挙動が観測されず、10℃まで温度
を降下させたときに、初めて単斜晶への移転に付随する
熱挙動が現われており、各実施例において明らかに相移
転点降下が生じていることが確認できる。
池の正極活物質の熱安定性を以下の手順で測定した。す
なわち、正極活物質の熱安定性は、Thermal G
ravimetric Analyzer(TG)を用
いて熱重量分析を行い、熱重量変化を調査した。Lix
CoO2(x=0.4)の充電状態にしたリチウムイオ
ン二次電池をドライボックス中で分解し、正極を取り出
して約10mgを切り出し測定試料とした。TGは試料
に外部から熱を加え、徐々に温度を上昇させながら試料
を引き起こす固有の重量変化を測定する方法である。こ
の重量変化は主として正極活物質から酸素が脱離する重
量減少に基づく。リチウムイオン二次電池の電解液中に
この酸素濃度が増加すると異常発熱の原因となる。した
がって、この酸素の脱離点が高いほど熱安定性に優れて
いることになり、安全上好ましい。
定される。すなわち、正極活物質試料を一定の昇温速度
で加熱した場合の重量減少曲線において、試料重量が漸
減する曲線部を第1直線として近似する一方、試料重量
が急激に低下する曲線部を第2直線として近似し、その
第1直線と第2直線との交点に対応する加熱温度として
上記酸素の脱離点が得られる。各実施例および比較例に
係る正極活物質の酸素の脱離点の測定結果を表1に示す
とともに、実施例2および比較例1に係る正極活物質に
ついての加熱温度と重量減少との関係を図3に示す。
らかなように、各実施例に係る正極活物質においては、
比較例1に係る従来の正極活物質と比較して、酸素脱離
に起因する重量減少の開始温度が大幅に上昇しており、
正極活物質に対するM成分元素の部分的置換が熱安定性
の向上に大きく寄与していることが判明した。
行するため、電解液との急激な反応が緩和されることと
なり、電解液を構成する有機溶媒の激しい酸化分解に伴
う発火現象を軽減でき、二次電池の操作の安全性を大幅
に改善できることが判明した。
よびそれを用いた二次電池の製造条件および各特性値を
下記表1にまとめて示す。
Sn,Mg,Al,Si,Zn等のM成分元素を所定量
含有させた原料成形体を12時間熱処理して調製した正
極活物質と24時間熱処理して調製した正極活物質とを
比較すると、24時間と、より長時間熱処理した正極活
物質の方が電池特性が優れていることが確認できる。こ
れは、長時間熱処理することにより、活物質粒子表面に
M成分元素による第2相が形成されず、より多くの割合
でM成分元素が活物質固体内に均一に固溶したためであ
る。
合には、熱安定性は向上する反面、サイクル特性は若干
犠牲になる結果が得られた。一方、Siを選択した場合
にはサイクル特性と熱安定性とを同時に十分に向上させ
るには至っていない。また、Znを選択した場合には、
サイクル特性は良好であるものの、熱安定性の向上が不
十分であった。さらに、Alを選択した場合には、上記
両特性に向上が見られたが、Sn添加による効果には及
ばないことが判明した。したがって、本実施例において
各種M成分元素の中でも、特にM成分としてのSnを添
加した場合の効果が非常に大きく、二次電池特性を効果
的に改善できることが判明した。
質,その製造方法および非水電解液二次電池によれば、
正極活物質中にSnなどの金属成分が固溶しているた
め、相移転が抑制され、結晶構造の崩壊が少なく、高容
量特性を維持しつつ、充電時の熱安定性が改善されると
ともに、良好な充放電サイクル特性を実現することが可
能となり、二次電池の安全性や品質を高めることができ
る。
してのリチウムイオン二次電池の構造を示す半断面図。
おけるサイクル数と容量維持率との関係を示すグラフ。
についての加熱温度と重量減少との関係を示すグラフ。
Claims (6)
- 【請求項1】 遷移金属元素を含有するとともに、M
g,Al,Si,Ti,Zn,ZrおよびSnから選択
される少なくとも1種の金属元素を含有し、この金属元
素の固溶量が上記遷移金属元素に対して10at%以下
であることを特徴とする正極活物質。 - 【請求項2】 前記正極活物質が一般式:LixTyM
zO2(式中、Tは遷移金属から選ばれる少なくとも1
種の元素を示し、MはMg,Al,Si,Ti,Zn,
ZrおよびSnから選択された少なくとも1種の元素を
示し、x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.1
5、0.85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足す
る数である)で実質的に表されるLi含有遷移金属複合
酸化物から成ることを特徴とする請求項1記載の正極活
物質。 - 【請求項3】 前記正極活物質が、一般式:LixCo
yMzO2(式中、MはMg,Al,Si,Ti,Z
n,ZrおよびSnから選択された少なくとも1種の元
素を示し、x,yおよびzはそれぞれ0.9≦x≦1.
15、0.85≦y≦1.00、0<z≦0.1を満足
する数である)で実質的に表されるLi含有遷移金属複
合酸化物から成ることを特徴とする請求項1記載の正極
活物質。 - 【請求項4】 前記正極活物質が遷移金属元素を含有す
るとともに、Mg,Al,Si,Ti,Zn,Zrおよ
びSnから選択される少なくとも1種の金属元素を上記
遷移金属元素に対して10at%以下含有する粒子から
成ることを特徴とする請求項1記載の正極活物質。 - 【請求項5】 遷移金属成分粉末に平均粒径が1.0n
m〜1.0μmであり、Mg,Al,Si,Ti,Z
n,ZrおよびSnから選択された少なくとも1種の元
素の化合物微粒子を上記遷移金属元素量に対して10a
t%以下の割合で添加して原料混合体を調製し、この原
料混合体を成形後、温度900〜960℃で10〜30
時間焼成することを特徴とする正極活物質の製造方法。 - 【請求項6】 遷移金属元素を含有するとともに、M
g,Al,Si,Ti,Zn,ZrおよびSnから選択
される少なくとも1種の金属元素を含有し、この金属元
素の固溶量が上記遷移金属元素に対して10at%以下
である粒子から成る正極活物質を含有する正極と、前記
正極とセパレータを介して配置された負極と、前記正
極、前記セパレータおよび前記負極を収納する電池容器
と、前記電池容器内に充填された非水電解液とを具備す
ることを特徴とする非水電解液二次電池。
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