JP4152056B2 - 非水電解質電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極活物質を含む正極と、負極と、リチウム塩を含む非水電解質とが外装体内に収納された非水電解質電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯機器用電源として、小型、軽量で高エネルギー密度を有する電池の開発が望まれているが、そのような中、電解質に非水電解液やゲル状固体高分子を用い、リチウムの酸化、還元を利用した非水電解質電池が用いられるようになってきた。
【0003】
このような電池では、主として、コバルト酸リチウムが正極材料として用いられるのであるが、充放電を繰り返すことによって次第に充放電容量や充放電効率が低下し、十分なサイクル寿命が得られないという欠点がある。この充放電容量や充放電効率が低下する原因としては、正極活物質の結晶構造の変化に起因して、一部に活物質の非可逆的な変化が起こること、及び、正極の電位が基準値よりも高くなる充電や基準値よりも低くなる充電により電解液が分解すること等が考えられる。このため、下記に示すように、様々な金属元素を正極活物質中に部分置換することによって上記課題の解決が試みられている。
【0004】
例えば、特開平4─329267号公報及び特開平5─13082号公報に示されるように、チタン化合物をコバルト酸リチウムに固溶させたものを正極活物質として用い、又は、特開平4─319260号公報に示されるように、コバルト酸リチウムにジルコニウムを固溶させたものを正極活物質として用い、或いは特開平4─253162号公報に示されるように、コバルト酸リチウムに鉛、ビスマス、ホウ素が固溶されたもの等を正極活物質として用いた電池が提案されている。これらの正極活物質を用いた電池においては、他金属元素をコバルト酸リチウムに部分元素置換することによってサイクル特性は改善できる。しかしながら、発熱開始温度が低下するために安全性が低下したり、電解質との反応によるガス発生が著しく増加する等の問題があった。
【0005】
また、近年、携帯機器の小型化に伴って電池の薄型化とエネルギー密度の向上とが急速に進む中、外装体としてラミネート外装体を用いたイオン電池及びゲル状ポリマー電池が提案されている。このような電池においては、僅かな電池内圧の上昇によって変形するので、電池性能に加えて、充放電や高温保存時に大量のガスが発生することによる電池の膨れが大きな問題となっている。そこで、この電池の膨れを防止すべく、ガス発生を減少させる技術の開発が必要となってきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の事情に鑑みなされたものであって、サイクル特性等の電池特性を低下させることなく、安全性の向上とガス発生の低減とを図ることができる非水電解質電池の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載の発明は、正極活物質を含む正極と、負極と、リチウム塩を含む非水電解質とが外装体内に収納された非水電解質電池において、上記正極活物質として、LiCo1-x X 2 〔MはNb、Pb、Zn、Zrからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、xは0<x≦0.05である〕で示されるリチウム含有複合酸化物が用いられると共に、正極には添加剤としてのyAl2 3 〔yはLiCo1-x X 2 1モルに対するAl2 3 のモル数であり、0<y≦0.05である〕が含有されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成の如く、コバルト酸リチウムに他の金属元素Mを固溶させたものが正極活物質として用いられ、且つ正極にAl2 3 が添加されていると、サイクル特性等の電池特性において、コバルト酸リチウムに他の金属元素Mを固溶させたものを正極活物質として用いただけの場合(即ち、正極にはAl2 3 を添加しない場合)と同等の特性を得ることができ、しかも、コバルト酸リチウムに他の金属元素Mを固溶させたものを正極活物質として用いただけの場合に比べて、安全性の向上とガス発生の低減とを図ることができる。特に、LiCo1-x X 2 において、0.00001≦x≦0.05の範囲で、且つyAl2 3 において、0.0001≦y≦0.05の範囲では、上記の効果が一層発揮される。
【0009】
尚、LiCo1-x X 2 、及びyAl2 3 において、x≦0.05、y≦0.05に規制するのは、M或いはAl2 3 の量が多すぎると、正極におけるCoの量が相対的に少なくなるため、電池容量が低下するためである。一方、LiCo1-x X 2 において、x及びyの特に好ましい範囲は、0.00001≦x、0.0001≦yであるのは、これよりもM或いはAlの量が少なくなると、安全性の向上とガス発生の低減とが十分に発揮されない場合があるからである。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記LiCo1-x X 2 のMが、Nb及びZrから選択される少なくとも一種であることを特徴とする。
【0011】
コバルト酸リチウムに他の金属元素Mのみを固溶させたものを正極活物質として用いた場合、MがNb、或いはZrであると、Mがこれらの元素以外の元素である場合に比べて、サイクル特性等の電池特性は著しく向上するが、その反面、安全性が低下し、しかも電解質と反応することによるガス発生の増大を招来する。そこで、コバルト酸リチウムにNb、或いはZrを固溶させたものを正極活物質として用いると共に、正極にAl2 3 が添加されていると、コバルト酸リチウムに他の金属元素Mのみを固溶させただけの場合と同等の電池特性を維持しつつ、安全性の向上とガス発生の低減とを図ることができる。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、上記電解質がゲル状の固体高分子であることを特徴とする。
【0013】
電解質としてゲル状の固体高分子を用いた場合に、正極にAl2 3 が添加されていると、ゲル状の固体高分子の耐酸化性が優れることになるので、特に、サイクル特性等の電池特性と安全性とが向上し、しかも、電解質との反応によるガス発生を飛躍的に抑制することが可能となる。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の発明において、上記外装体として、僅かな電池内圧の上昇によって変形する外装体が用いられることを特徴とする。
【0015】
このように柔らかなラミネート外装体を用いた電池では、電池の変形による破裂や漏液を生じ易いが、上記の如くガスの発生量が著しく減少すれば破裂や漏液を抑制できる。
【0016】
また、請求項5記載の発明は、請求項1、2、3又は4記載の発明において、上記僅かな電池内圧の上昇によって変形する外装体として、アルミラミネート外装体が用いられることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の形態及び第2の形態を、以下に説明する。
【0018】
(第1の形態)
本発明の第1の形態を、図1〜図4に基づいて、以下に説明する。
【0019】
図1は第1の形態に係る非水電解質電池の正面図、図2は図1のA−A線矢視断面図、図3は第1の形態に係る非水電解質電池に用いるラミネート外装体の断面図、図4は第1の形態に係る非水電解質電池に用いる発電要素の斜視図である。
【0020】
図2に示すように、本発明の薄型電池は発電要素1を有しており、この発電要素1は収納空間2内に配置されている。この収納空間2は、図1に示すように、アルミラミネート外装体3の上下端と中央部とをそれぞれ封止部4a・4b・4cで封口することにより形成される。また、収納空間2には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等容積混合溶媒に、6フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を1モル/lの割合で溶解した電解液が注入されている。また、図4に示すように、上記発電要素1は、正極5と、黒鉛系炭素材料を活物質とする負極6と、これら両電極を離間するセパレータ(図4においては図示せず)とを偏平渦巻き状に巻回することにより作製される。上記正極5は、LiCo1-x X 2 〔MはNb、Pb、Zn、Zrからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、xは0<x≦0.05である〕で示されるリチウム含有複合酸化物が正極活物質として用いられると共に、正極には添加剤としてのyAl2 3 〔yはLiCo1-x X 2 1モルに対するAl2 3 のモル数であり、0<y≦0.05である〕を含有する。
【0021】
また、図3に示すように、上記アルミラミネート外装体3の具体的な構造は、アルミニウム層11(厚み:30μm)の両面に、各々、変性ポリプロピレンから成る接着剤層12・12(厚み:5μm)を介してポリプロピレンから成る樹脂層13・13(厚み:30μm)が接着される構造である。
【0022】
更に、上記正極5はアルミニウムから成る正極リード7に、また上記負極6は銅から成る負極リード8にそれぞれ接続され、電池内部で生じた化学エネルギーを電気エネルギーとして外部へ取り出し得るようになっている。
【0023】
ここで、上記構造の電池を、以下のようにして作製した。
【0024】
先ず、炭酸リチウムと、酸化コバルト粉末と、M〔MはNb、Pb、Zn、Zrからなる群より選択される少なくとも一種の元素である〕の金属酸化物或いは水酸化物とを、所定の割合で混合し、酸素雰囲気下で24時間焼成(850℃)することにより、LiCo1-x X 2 (0<x≦0.05)で示されるリチウム含有複合酸化物から成る正極活物質を得、このリチウム含有複合酸化物にyAl2 3 (0<y≦0.05)を添加した。このようにして合成した正極活物質と添加剤との混合物と、黒鉛、カーボンブラック及びフッ素樹脂系結着剤とを重量比で、90:3:2:5の割合で混合して正極合剤を作成した後、この正極合剤をアルミ箔の両面に塗着し、乾燥後圧延することにより、正極5を作製した。
【0025】
一方、黒鉛系炭素材料とフッ素樹脂系結着剤とを重量比で90:10の割合で混合し、負極合剤を作成した後、この負極合剤を銅箔の両面に塗着し、乾燥後圧延することにより、負極6を作製した。
【0026】
次に、このようにして作製した正負極5・6に、それぞれ正極リード7又は負極リード8を取り付けた後、正負極5・6をセパレータを介して渦巻き状に巻き取って発電要素1を作製し、更にこの発電要素1をアルミラミネート外装体3内に挿入した。最後に、アルミラミネート外装体3内に電解液を注入し、更にアルミラミネート外装体3を封口することにより、電池を作製した。尚、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等容積混合溶媒に、6フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を1モル/lの割合で溶解したものを用いた。
【0027】
(第2の形態)
電解質としてゲル状固体高分子が用いられる他は、前記第1の形態と同様にして電池を作製した。具体的には、以下の通りである。
【0028】
先ず、上記と同様にして作製した発電要素をアルミラミネート外装体内に挿入した後、アルミラミネート外装体内に、プレポリマーとしてのポリエチレングリコールジアクリレート(分子量:1000)と、EC及びDECの等容積混合溶媒にLiPF6 を1モル/lの割合で溶解したものとを、重量比で1:10の割合で混合し、これに重合開始剤としてのt−ヘキシルパーオキシピバレートを5000ppm添加したものを3ml注入した。その後、60℃で3時間加熱処理して硬化させることにより電池を作製した。
【0029】
尚、上記実施の形態においては、Mとして1種類の金属のみを用いているが、これに限定するものではなく、Mとして2種類以上の金属を用いても本発明の効果を得ることができる。
【0030】
また、僅かな電池内圧の上昇によって変形する外装体の例としてアルミラミネート外装体を例示しているが、本発明はこのような外装体に限定するものではない。
【0031】
更に、本発明に用いられる負極材料としては上記炭素材料の他、リチウム金属、リチウム合金等が好適に用いられる。更に、電解質の溶媒としては上記のものに限らず、例えばエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、2−メトキシテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の低粘度低沸点溶媒とを適度な比率で混合した溶媒を用いることができる。また、電解質の溶質としては、上記LiPF6 の他、LiN(SO2 2 5 2 、LiAsF6 、LiClO4 、LiBF4 、LiCF3 SO3 等を用いることができる。
【0032】
加えて、ゲル状固体高分子としては、ポリエチレングリコールジアクリレートの他、ポリエーテル系の固体高分子、ポリカーボネート系の固体高分子、ポリアクリロニトリル系の固体高分子、及びこれらの2種以上からなる共重合体、もしくは架橋した高分子材料、ポリフッ化ビニリデン等のようなフッ素系の固体高分子と、リチウム塩、電解液とを組み合わせて用いることもできる。
【0033】
【実施例】
参考例及び第1実施例)
参考例1〜5〕
として遷移金属元素及び周期律表IIA、IIIB、IVB、VB族の元素(但し、Alは除く)からTiを選択し、且つLiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yを、0<x≦0.05、0<y≦0.05の範囲で変えて、上記第1の形態に示す方法と同様の方法で電池を作製した。
【0034】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ参考電池A1〜A5と称する。
【0035】
また、上記電池と同一の正極と金属リチウム箔から成る負極(参照極)とを、上記電池と同一の電解液中に浸漬して、試験用電池を作製した。
【0036】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ参考電池A101〜A105と称する。
〔実施例6〜10〕
MとしてNbを用い、且つLiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yを、0<x≦0.05、0<y≦0.05の範囲で変えて、上記第1の形態に示す方法と同様の方法で電池を作製した。
【0037】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ本発明電池A6〜A10と称する。
【0038】
また、上記電池と同一の正極と金属リチウム箔から成る負極(参照極)とを、上記電池と同一の電解液中に浸漬して、試験用電池を作製した。
【0039】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ本発明電池A106〜A110と称する。
〔実施例11〜15〕
MとしてPbを用い、且つLiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yを、0<x≦0.05、0<y≦0.05の範囲で変えて、上記第1の形態に示す方法と同様の方法で電池を作製した。
【0040】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ本発明電池A11〜A15と称する。
【0041】
また、上記電池と同一の正極と金属リチウム箔から成る負極(参照極)とを、上記電池と同一の電解液中に浸漬して、試験用電池を作製した。
【0042】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ本発明電池A111〜A115と称する。
〔実施例16〜20〕
MとしてZnを用い、且つLiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yを、0<x≦0.05、0<y≦0.05の範囲で変えて、上記第1の形態に示す方法と同様の方法で電池を作製した。
【0043】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ本発明電池A16〜A20と称する。
【0044】
また、上記電池と同一の正極と金属リチウム箔から成る負極(参照極)とを、上記電池と同一の電解液中に浸漬して、試験用電池を作製した。
【0045】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ本発明電池A116〜A120と称する。
〔実施例21〕
MとしてZrを用い、且つLiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yを、x=0.01、y=0.01として、上記第1の形態に示す方法と同様の方法で電池を作製した。
【0046】
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A21と称する。
【0047】
また、上記電池と同一の正極と金属リチウム箔から成る負極(参照極)とを、上記電池と同一の電解液中に浸漬して、試験用電池を作製した。
【0048】
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A121と称する。
〔比較例1、2〕
LiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yを、それぞれx=0.1、y=0.1、及びx=0.01、y=0とする他は、上記実施例1に示す方法と同様の方法で電池を作製した。
【0049】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ比較電池X1、X2と称する。
【0050】
また、上記電池と同一の正極と金属リチウム箔から成る負極(参照極)とを、上記電池と同一の電解液中に浸漬して、試験用電池を作製した。
【0051】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ比較電池X101、X102と称する。
〔比較例3、4〕
LiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yを、それぞれx=0.1、y=0.1、及びx=0.01、y=0とする他は、上記実施例6に示す方法と同様の方法で電池を作製した。
【0052】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ比較電池X3、X4と称する。
【0053】
また、上記電池と同一の正極と金属リチウム箔から成る負極(参照極)とを、上記電池と同一の電解液中に浸漬して、試験用電池を作製した。
【0054】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ比較電池X103、X104と称する。
〔比較例5、6〕
LiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yを、それぞれx=0.1、y=0.1、及びx=0.01、y=0とする他は、上記実施例11に示す方法と同様の方法で電池を作製した。
【0055】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ比較電池X5、X6と称する。
【0056】
また、上記電池と同一の正極と金属リチウム箔から成る負極(参照極)とを、上記電池と同一の電解液中に浸漬して、試験用電池を作製した。
【0057】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ比較電池X105、X106と称する。
〔比較例7、8〕
LiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yを、それぞれx=0.1、y=0.1、及びx=0.01、y=0とする他は、上記実施例16に示す方法と同様の方法で電池を作製した。
【0058】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ比較電池X7、X8と称する。
【0059】
また、上記電池と同一の正極と金属リチウム箔から成る負極(参照極)とを、上記電池と同一の電解液中に浸漬して、試験用電池を作製した。
【0060】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ比較電池X107、X108と称する。
〔比較例9〕
LiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yを、それぞれx=0、y=0とする他は、上記実施例1に示す方法と同様の方法で電池を作製した。
【0061】
このようにして作製した電池を、以下、比較電池X9と称する。
【0062】
また、上記電池と同一の正極と金属リチウム箔から成る負極(参照極)とを、上記電池と同一の電解液中に浸漬して、試験用電池を作製した。
【0063】
このようにして作製した電池を、以下、比較電池X109と称する。
〔比較例10〕
LiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yを、それぞれx=0.01、y=0とする他は、上記実施例21に示す方法と同様の方法で電池を作製した。
【0064】
このようにして作製した電池を、以下、比較電池X10と称する。
【0065】
また、上記電池と同一の正極と金属リチウム箔から成る負極(参照極)とを、上記電池と同一の電解液中に浸漬して、試験用電池を作製した。
【0066】
このようにして作製した電池を、以下、比較電池X110と称する。
〔実験1〕
上記参考電池A101〜A105及び本発明電池A106〜A120及び比較電池X101〜X109を用いて、正極活物質における単位重量当たりの充電容量を調べたので、その結果を、表1及び表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
上記表1及び表2から明らかなように、LiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yの値の合計が大きくなるにしたがって、単位重量当たりの充電容量が小さくなっていることが認められ、この結果重量エネルギー密度も小さくなっていく。これは、x、yの値の合計が大きくなると、Co量が少なくなるということに起因するものと考えられる。
【0069】
したがって、重量エネルギー密度の観点からは、LiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yは、x≦0.05、y≦0.05であることが望ましいことがわかる。
〔実験2〕
上記参考電池A1〜A5及び本発明電池A〜A20及び比較電池X1〜X9を用いて、下記に示す条件でサイクル特性、高温保存特性及び安全性を調べたので、その結果を、上記表1及び表2に併せて示す。
・サイクル特性
充電電流500mAで充電終止電圧が4.2Vまで充電した後、放電電流500mAで放電終止電圧が3.1Vまで放電するという条件で、500サイクル充放電を行った。そして、初期放電容量と、500サイクル後の放電容量と、容量残存率〔500サイクル後の放電容量/初期放電容量×100(%)〕とを調べた。
・高温保存特性
各電池を80℃で96時間保存した後に、電池内でのガス発生量を調べた。
・安全性
4.2Vまで充電した正極活物質5mgとEC(エチレンカーボネート)2mgとを所定の容器に密封してDSC測定し、発熱開始温度と発熱量とを調べた。
【0070】
上記表1及び表2から明らかなように、コバルト酸リチウムに他の元素Mを固溶した比較電池X1、X3、X5、X7は、コバルト酸リチウムに他の元素Mを固溶していない比較電池X9に比べて、サイクル特性が向上し、さらに表1及び表2には示していない低温特性等の電池特性も向上する(特に、LiCo1-x X 2 におけるxの値がx≧0.00001のとき)。ところが、比較電池X1、X3、X5、X7は比較電池X9に比べて、高温保存後のガス量が多く、しかも発熱開始温度が低く且つ発熱量が多いので安全性が低下していることが認められる。
【0071】
これに対して、コバルト酸リチウムに他の元素Mを固溶し、且つ正極にAl23 を添加した参考電池A1〜A5及び本発明電池A6〜A20では、比較電池X9と略同等のサイクル特性を有し、しかも、比較電池X1、X3、X5、X7に比べて、高温保存後のガス量が少なく、更に発熱開始温度が高く且つ発熱量が少ないので安全性が向上していることが認められる(特に、yAl2 3 におけるyの値がy≦0.0001のとき)。
【0072】
以上、実験1及び実験2の結果から、LiCo1-x X 2 及びyAl2 3におけるx、yが、0<x≦0.05、0<y≦0.05の範囲であれば、正極容量やサイクル特性の低下を抑制しつつ、高温保存時等のガス量を減少させ、且つ安全性を向上させることができる。特に、0.00001≦x≦0.05、0.0001≦y≦0.05の範囲であれば、上記の効果が一層発揮される。
〔実験3〕
上記本発明電池A121及び比較電池X110を用いて、正極活物質における単位重量当たりの充電容量を調べ、且つ、上記本発明電池A21及び比較電池X10を用いて、サイクル特性、高温保存特性及び安全性を調べたので、その結果を、下記表3に示す。尚、サイクル特性、高温保存特性及び安全性における条件は、上記実験2と同様の条件であり、また表3においては、参考電池A3、A103、本発明電池A8、A108、A13、A113、A18、A118及び比較電池X1、X101、X3、X103、X5、X105、X7、X107の結果についても併せて示している。
【0073】
【表3】
表3から明らかなように、コバルト酸リチウムに他の元素M(Ti、Nb、又はZr)を固溶した比較電池X1、X3、X10は、コバルト酸リチウムに他の元素M(Pb、又はZn)を固溶した比較電池X5、X7に比べて、サイクル特性が向上し、さらに表3には示していない低温特性等の電池特性も向上する。その反面、比較電池X1、X3、X10は比較電池X5、X7に比べて、高温保存後のガス量が多く、しかも発熱開始温度が低く且つ発熱量が多いので安全性が低下していることが認められる。
【0074】
これに対して、コバルト酸リチウムに他の元素M(Ti、Nb、又はZr)を固溶し、且つ正極にAl2 3 を添加した参考電池A3及び本発明電池A8、A21では、比較電池X1、X3、X10と略同等のサイクル特性を有し、しかも、比較電池X1、X3、X10に比べて、高温保存後のガス量が大幅に少なく、更に発熱開始温度が格段に高く且つ発熱量が極めて少ないので安全性が飛躍的に向上していることが認められる。したがって、コバルト酸リチウムに他の元素Mを固溶し、且つ正極にAl2 3 を添加して高温保存後のガス量を低減し、安全性を向上させるという効果は、他の元素MとしてNb、又はZrを用いた場合に顕著であるということがわかる。
【0075】
(第2実施例)
〔参考例1〜5及び実施例6〜21〕
参考例1〜5及び実施例〜20に示す電池は、前記第2の形態に示す方法と同様の方法で作製した。尚、Mの種類、及びLiCo1-x X 2 及びyAl2 3におけるx、yの値は上記第1の実施例および参考例における参考例1〜5および実施例〜21に対応している(例えば、第2実施例の実施例は第1実施例の実施例とMの種類及びx、yの値が同じである)。
【0076】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ本発明電池B1〜B21と称する。
〔比較例1〜9〕
Mの種類、及びLiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yの値は上記第1の実施例における比較例1〜9に対応させる(例えば、第2実施例の比較例1は第1実施例の比較例1とMの種類及びx、yの値が同じである)他は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。
【0077】
このようにして作製した電池を、以下、それぞれ比較電池Y1〜Y9と称する。
〔実験1〕
上記参考電池B1〜B5及び本発明電池B〜B20及び比較電池Y1〜Y9を用いて、サイクル特性、高温保存特性及び安全性を調べたので、その結果を、下記表4及び表5に示す。尚、サイクル特性と高温保存特性とは前記第1実施例の実験2と同様の条件で行い、また安全性については、以下の条件で行った。
・安全性
4.2Vまで充電した正極活物質5mgとゲル状ポリマー電解質2mgとを所定の容器に密封してDSC測定し、発熱開始温度と発熱量とを調べた。
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
上記表4及び表5から明らかなように、コバルト酸リチウムに他の元素Mを固溶した比較電池Y1、Y3、Y5、Y7は、コバルト酸リチウムに他の元素Mを固溶していない比較電池Y9に比べて、サイクル特性が向上し、さらに表4及び表5には示していない低温特性等の電池特性も向上する(特に、LiCo1-x X 2 におけるxの値がx≧0.00001のとき)。ところが、比較電池Y1、Y3、Y5、Y7は比較電池Y9に比べて、高温保存後のガス量が多く、しかも発熱開始温度が低く且つ発熱量が多いので安全性が低下していることが認められる。
【0080】
これに対して、コバルト酸リチウムに他の元素Mを固溶し、且つ正極にAl23 を添加した参考電池B1〜B5及び本発明電池B〜B20では、Y1、Y3、Y5、Y7と略同等のサイクル特性を有し、しかも、比較電池Y1、Y3、Y5、Y7に比べて、高温保存後のガス量が少なく、更に発熱開始温度が高く且つ発熱量が少ないので安全性が向上していることが認められる(特に、yAl2 3 におけるyの値がy≦0.0001のとき)。
【0081】
一方、上記表4及び表5には示していないが、ゲル状ポリマー電解質を用いた電池でも、LiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yの値の合計が大きくなるにしたがって、単位重量当たりの充電容量が小さくなっていることが認められ、この結果重量エネルギー密度も小さくなっていくことがわかった。したがって、重量エネルギー密度の観点からは、LiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yは、x≦0.05、y≦0.05であることが望ましいことがわかる。
【0082】
以上、実験1の結果から、LiCo1-x X 2 及びyAl2 3 におけるx、yが0<x≦0.05、0<y≦0.05の範囲であれば、正極容量やサイクル特性の低下を抑制しつつ、高温保存時等のガス量を減少させ、且つ安全性を向上させることができる。特に、0.00001≦x≦0.05、0.0001≦y≦0.05の範囲であれば、上記の効果が一層発揮される。
【0083】
加えて、電解液を用いた参考電池A1〜A5及び本発明電池A〜A21に比べて、ゲル状ポリマー電解質を用いた参考電池B1〜B5及び本発明電池B〜B21は、高温保存後ガス発生量が更に少なくなっている(例えば、電解液を用いた本発明電池A1では3.8mgであるのに対して、ゲル状ポリマー電解質を用いた参考電池B1では3.0mgである)ことが認められる。したがって、本発明をゲル状ポリマー電解質を用いた電池に適用すれば、その効果は更に発揮される。
〔実験2〕
上記本発明電池B21及び比較電池Y10を用いて、サイクル特性、高温保存特性及び安全性を調べたので、その結果を、下記表6に示す。尚、サイクル特性、高温保存特性及び安全性における条件は、上記実験1と同様の条件であり、また表6においては、参考電池B3および本発明電池B8、B13、B18及び比較電池Y1、Y3、Y5、Y7の結果についても併せて示している。
【0084】
【表6】
表6から明らかなように、コバルト酸リチウムに他の元素M(Ti、Nb、又はZr)を固溶した比較電池Y1、Y3、Y10は、コバルト酸リチウムに他の元素M(Pb、又はZn)を固溶した比較電池Y5、Y7に比べて、サイクル特性が向上し、さらに表6には示していない低温特性等の電池特性も向上する。その反面、比較電池Y1、Y3、Y10は比較電池Y5、Y7に比べて、高温保存後のガス量が多く、しかも発熱開始温度が低く且つ発熱量が多いので安全性が低下していることが認められる。
【0085】
これに対して、コバルト酸リチウムに他の元素M(Ti、Nb、又はZr)を固溶し、且つ正極にAl2 3 を添加した参考電池B3及び本発明電池B8、B21では、比較電池Y1、Y3、Y10と略同等のサイクル特性を有し、しかも、比較電池Y1、Y3、Y10に比べて、高温保存後のガス量が大幅に少なく、更に発熱開始温度が格段に高く且つ発熱量が極めて少ないので安全性が飛躍的に向上していることが認められる。したがって、ゲル状ポリマー電解質を用いた電池においても、コバルト酸リチウムに他の元素Mを固溶し、且つ正極にAl2 3 を添加して高温保存後のガス量を低減し、安全性を向上させるという効果は、他の元素MとしてNb、又はZrを用いた場合に顕著であるということがわかる。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、サイクル特性等の電池特性を低下させることなく、安全性の向上とガス発生量の低減とを図ることができるという優れた効果がある。特に、アルミラミネート外装体を用いた電池では、ガス発生量の低減により、外装体の変形や破裂を抑制することができるので、その効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の形態に係る非水電解質電池の正面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】第1の形態に係る非水電解質電池に用いるラミネート外装体の断面図。
【図4】第1の形態に係る非水電解質電池に用いる発電要素の斜視図。
【符号の説明】
1:発電要素
2:収納空間
3:ラミネート外装体
5:正極
6:負極

Claims (5)

  1. 正極活物質を含む正極と、負極と、リチウム塩を含む非水電解質とが外装体内に収納された非水電解質電池において、
    上記正極活物質として、LiCo1-x X 2 MはNb、Pb、Zn、Zrからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、xは0<x≦0.05である〕で示されるリチウム含有複合酸化物が用いられると共に、
    正極には添加剤としてのyAl2 3 〔yはLiCo1-x X 2 1モルに対するAl2 3 のモル数であり、0<y≦0.05である〕が含有されている
    ことを特徴とする非水電解質電池。
  2. 上記LiCo1-x X 2 のMが、Nb及びZrから選択される少なくとも一種である、請求項1記載の非水電解質電池。
  3. 上記電解質がゲル状固体高分子である、請求項1又は2記載の非水電解質電池。
  4. 上記外装体として、僅かな電池内圧の上昇によって変形する外装体が用いられる、請求項1、2又は3記載の非水電解質電池。
  5. 上記僅かな電池内圧の上昇によって変形する外装体として、アルミラミネート外装体が用いられる、請求項4記載の非水電解質電池。
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