図1(a)は、修正対象であるTFT基板1の要部を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)のIB−IB線断面図である。図1(a)(b)において、TFT基板1はガラス基板2を備える。ガラス基板2の表面に、図中の左右方向に延在するゲート線3が形成されるとともに、ゲート線3の所定位置に図中の下方向に突出するゲート電極3aが形成される。ゲート線3およびゲート電極3aの表面はゲート絶縁膜4で被覆され、ゲート絶縁膜4およびガラス基板2の表面はゲート絶縁膜5で被覆される。
ゲート絶縁膜5の表面に、複数の画素電極6が行列状に形成される。図中の上下方向に隣接する2つの画素電極6の間の領域にゲート線3が配置されている。ゲート電極3aの上方にゲート絶縁膜4,5を介して半導体膜7が形成される。図中の左右方向に隣接する2つの画素電極6の間の領域に図中の上下方向に延在するドレイン線8が形成されるとともに、ドレイン線8の所定位置に図中の左方向に突出するドレイン電極8aが形成される。このドレイン電極8aの端部は、半導体膜7の一方端部の表面まで延びている。また、半導体膜7の他方端部の表面から画素電極6の一端部の表面にかけてソース電極9が形成される。
このようにして、ゲート電極3aとドレイン電極8aとソース電極9と半導体膜7とを含むTFT10が形成される。全体が保護膜11および配向膜(図示せず)で被覆されて、TFT基板1が完成する。TFT基板1と液晶とカラーフィルタとで液晶パネルが構成される。
ここで図1(a)に示すように、ドレイン線8に断線欠陥部8bが存在するものとする。保護膜11まで形成した後に断線欠陥部8bを修正する場合、保護膜11の一部をレーザ加工により除去して断線欠陥部8bを露出させ、修正ペーストを塗布し、硬化成膜処理を行なってドレイン線8の導通を確保した後で、修正個所の上に保護膜11を再形成する必要がある。そのため、修正の手間を簡略化できるように、保護膜11を形成する前の工程で断線欠陥部8bの修正を行なう方が好ましい。たとえば、ドレイン線8の形成が終了した時点では保護膜11は無く、この時点で断線修正を行なう。
図2は、この発明の基礎となる欠陥修正方法を示す図である。図2において、この欠陥修正方法では、断線欠陥部8bを含み、正常なドレイン線8に重なるように修正ペースト20を塗布し、塗布した修正ペースト20からなる修正層20Aを形成する。次に、修正層20Aにレーザ光を照射して局所的に加熱し、金属膜を析出して修正層20Aの導電性を確保する。ドレイン線8の線幅Dwは、10μm以下のものが多く、高精細化に伴って5μm以下のものも製造されている。
このように5μm以下の細いドレイン線(パターン)8からはみ出さず、略同じ幅で修正ペースト20を塗布した場合、図3に示すように、修正層20Aの膜厚Rtは、修正ペースト20とドレイン線8との接触角や濡れ性で決まり、1μm以上の膜厚Rtを得るのは難しく、膜厚Rtは0.5μm前後に留まる。修正ペースト20としては、金属ナノ粒子を分散させたペーストや金属錯体溶液が利用されるが、修正層20Aを焼成して得られる焼成層の膜厚は1/10程度に収縮するので、ドレイン線8の厚さDtに伴う段差部(エッジ)で焼成層にクラックが発生し易く、修正部の抵抗値が高くなる要因となる。
修正層20Aを焼成して得られる焼成層をより厚くするためには、欠陥部8bに塗布される修正層20Aの膜厚を厚くする必要があるが、そのための実施の形態について以下に説明する。
図4は、この発明の一実施の形態による欠陥修正方法を示す図である。図4において、修正対象は保護膜11が無い状態のTFT基板1であり、孔12aの開いたフィルム12をマスクとして使用する。断線欠陥部8bの上方に孔12aを位置合わせした状態で、フィルム12をTFT基板1の上面に一定の隙間Gを開けて配置する。フィルム12は、たとえば薄膜のポリイミドフィルムであり、その幅はマスクとして使用するのに十分な幅があれば良く、たとえば、5mm〜15mm程度にスリットしたロール状フィルムであり、その厚さFtは、その下が透けて見える程度のものが好ましく、たとえば10〜25μm程度である。
孔12aの開口部は、たとえば短軸長がSwで長軸長がSlの角形状であり、断線欠陥部8bの両端に位置する正常なドレイン線8にも修正ペースト20を塗布できるように、孔12aの長軸長Slは断線欠陥部8bよりも長く設定される。このように、正常なドレイン線8と重なるように孔12aを形成すれば、修正層20Aと正常なドレイン線8とが重なる領域を確保できるので、修正部の抵抗値の低減化、密着性の向上などの効果が期待できる。
孔12aは、レーザ照射によるレーザアブレーションで形成される。レーザとしては、YAG第3高調波レーザやYAG第4高調波レーザ、あるいはエキシマレーザなどのパルスレーザを用いる。たとえば、図5に示すように、レーザ部13は、観察光学系14の上部に固定され、観察光学系14の下端に固定した対物レンズ15からレーザ光が照射される。孔12aの形状および寸法は、たとえばレーザ部13に内蔵される可変スリット(図示せず)により決定され、対物レンズ15で集光したレーザ光の断面形状に加工される。
フィルム12に孔12aを開ける工程は、断線欠陥部8bから離れた位置、あるいは、断線欠陥部8bにレーザ光が当たらないように、フィルム12単体で行なわれる。たとえば、フィルム12は、TFT基板1から上方に離れた位置で、左右の固定ローラ16,17により水平に支持された状態に保持され、左右の固定ローラ16,17の中央に当たるフィルム12にレーザ光を照射して孔12aを形成する。このとき、レーザアブレーションにより発生するごみがTFT基板1上に落下しないように、TFT基板1とフィルム12との間に遮蔽板18を配置してもよい。なお、TFT基板1上に異物が飛散しないように、TFT基板1以外の上でレーザアブレーションを行なうことも可能である。
このように、断線欠陥部8bにフィルム12を付着、あるいは密着させた状態でレーザ照射による孔12aの加工を行なわないので、ドレイン線8や断線欠陥部8bの近傍を損傷することはない。また、フィルム12を浮かした状態で孔12aを開けるので、フィルム12の裏面にレーザアブレーション時に発生する異物(ゴミ)が付着することを抑制することができる。
孔12aの形成が終了した時点では、孔12a周りのフィルム12の表面には、孔12aをレーザアブレーションした際に発生したごみが飛散しており、ごみの除去のため、孔12aを中心として、その周りの広い範囲を弱いパワーでレーザ照射する工程を入れてもよい。このとき、YAG第2高調波レーザに切り替えて、弱いパワーで孔12aを中心とする広い範囲にレーザ照射すれば、ごみのみを除去することも可能であり、新たにごみが発生することを防止することができる。図5に示した装置では、フィルム12の裏面に付着したごみをレーザ照射で除去できないが、図示しないフィルム反転機構を設ければ表面と同様にフィルム12の裏面を処理することも可能となる。
フィルム12に開けた孔12aと断線欠陥部8bとが画像処理結果、あるいは、それぞれの位置座標データに基づき、TFT基板1とフィルム12との相対移動により位置決めされ、それらが一定の隙間を持って対峙した状態にされる。この工程は手動で行なっても構わない。図6は、孔12aと断線欠陥部8bとが隙間Gを持って対峙した状態を示す。フィルム12は一定の張力によって張られた状態にある。隙間Gは、フィルム12を支持する支点(たとえば図5に示した固定ローラ16,17)の間隔やフィルム12の厚さによって異なるが、たとえば10〜1000μm程度に設定される。TFT基板1の表面には複数のパターンが積層されているため、凹凸形状になっているが、孔12aを含む微小範囲のフィルム12がTFT基板1と接触しない程度の隙間Gを保っていれば良い。たとえば、隙間Gは200μm程度に設定される。
修正ペースト20の塗布は、たとえば、図7に示すように、塗布針19を用いて行なわれる。塗布針19の先端部は尖っているが、その先端には平坦面19aが形成されている。平坦面19aの直径は、たとえば、30〜100μm程度であり、孔12aの大きさに合わせて最適な直径のものを選択して使用する。孔12a全体を閉蓋することが可能な寸法の平坦面19aを有する塗布針19を選択して使用するのが好ましい。このような塗布針19を使用すれば、1回の塗布動作で孔12aを修正ペースト20で充填することができる。
塗布針19の平坦面19aの周りに修正ペースト20が付着した状態で、孔12aの略中央に塗布針19を上方から下降させると、フィルム12は変形して孔12aの周りの微小範囲のフィルム12が断線欠陥部8bの周囲に付着し、断線欠陥部8bに修正ペースト20が充填される。塗布針19は、図示しないガイド(直動軸受)によって上下方向に進退可能に保持されており、塗布針19を含む可動部の自重のみでフィルム12を押す。塗布針19が下降してフィルム12が断線欠陥部8bの周囲に接触した後にさらに下降させようとしても、塗布針19はガイドに沿って上方に退避するので、塗布針19の平坦面19aは過負荷とならない。塗布針19は、図示しない制御手段によって時間管理されて制御される。
孔12aを含む微小範囲のフィルム12が断線欠陥部8bの周囲に接触する時間は、塗布針19がフィルム12を押している間であり、修正ペースト20がフィルム12とTFT基板1(断線欠陥部8b近傍)との隙間に毛細管現象で流れる前に、塗布針19を上方に退避させる。塗布針19がフィルム12から離れれば、フィルム12の弾性で元の状態に戻り、孔12aを含む微小範囲のフィルム12は断線欠陥部8bから離れる。そのため、フィルム12がTFT基板1に接触する時間は極わずかである。
図8は、塗布針19を上方に退避させた状態を示し、フィルム12はTFT基板1から離れた状態に復帰しており、断線欠陥部8bには、孔12aの形状と略同形状の修正層20Aが残る。また、余分に塗布された修正ペースト20はフィルム12の表面および孔12a内に残る。このように、フィルム12をマスクとして修正を行なうので、塗布針19による塗布形状よりも微細な修正層20A(パターン)を得ることが可能となる。
このような方法で断線欠陥部8bの修正を行なえば、塗布された修正ペースト20がTFT基板1とフィルム12との隙間に毛細管現象で吸い込まれることも無く、孔12aよりも広い範囲に渡ってTFT基板1を汚染する心配もなくなる。また、塗布が終了した時点で、フィルム12は断線欠陥部8bやTFT基板1から完全に離れているため、その後の工程でフィルム12を除去する際には、フィルム12が修正層20Aに接触して修正層20Aを崩す心配がない。
修正ペースト20の粘度が大きければ、TFT基板1とフィルム12との隙間に毛細管現象で吸い込まれる可能性は低くなるが、逆に流動性が悪くなって、孔12a全体に入らないため、断線欠陥部8bに修正ペースト20が付着しないことも想定される。それに対して、前述のように、塗布時のみ孔12a近傍のフィルム12を断線欠陥部8bの周囲に付着させるので、毛細管現象の影響を最小限に留めることができる。したがって、修正ペースト20の粘度は小さくても構わない。
使用するフィルム12の膜厚が、たとえば10μmあったとしても、フィルム12の膜厚と同じ膜厚の修正層20Aを得るのは困難である。たとえば、フィルム12の貫通孔12aはドレイン線8の線幅以下に加工されるので、ドレイン線8の線幅が5μmであれば、フィルム12の膜厚よりも小さい幅で孔12aが形成されることになる。このため、修正ペースト20が孔12a内に流れて断線欠陥部8bに付着しても、孔12aがTFT基板1から離れる際には、ほとんどの修正ペースト20が孔12a内に残り、修正層20Aの膜厚は1μm以下にとどまる。この傾向は、修正ペースト20の粘度を変えてもあまり変化はない。
修正層20Aには、局所加熱による焼成処理が施される。たとえば、断線欠陥部8bの上方からフィルム12を除去した後で連続発振のレーザ(たとえばYAG第2連続発振レーザ)で金属析出処理を行なう。この場合、レーザ部13がパルス発振と連続発振の切替えができるタイプであれば機構は簡単になるが、切替えができない場合には、レーザ部13とは別の図示しない連続発振レーザから観察光学系14を介してレーザ光を照射できるようにするとよい。あるいは、焼成用の光学系を離れた位置に設けてもよい。
図9(a)(b)は、断線欠陥部8bに塗布された修正層20Aをレーザ照射により焼成する方法を示す図である。図9(a)に示すように、焼成用レーザ光を対物レンズ15によって、たとえば10μm程度のスポット径に集光し、修正層20Aの一方端から他方端までドレイン線8の延在方向にレーザ光を走査するようにして焼成を行なう。修正層20Aを焼成して得られる焼成層20AAの膜厚は、図9(b)に示すように、修正層20Aの膜厚の1/10程度に収縮する。たとえば、修正層20Aの膜厚が0.5μmであれば、焼成層20AAの膜厚は0.05μm程度となり、ドレイン線8の膜厚Dtに比べて非常に薄くなる。そのため、ドレイン線8の段差部(エッジ部)8cで断線し易くなり、修正部の抵抗値を低減できない原因となっている。
そこで、この実施の形態では、図5から図9に示した、塗布から焼成までの工程を1つの断線欠陥部8bに対して複数回行なうことにより、複数の焼成層20AAを断線欠陥部8bの上に積層する。したがって、複数の焼成層20AAからなる修正部の膜厚を厚くして修正部の抵抗値を低減させることができる。
ただし、この実施の形態では、フィルム12に形成される孔12aを複数個使用するので、孔12aと断線欠陥部8bの位置決めなどに時間が掛かり、断線欠陥部8bを修正するために必要な時間が長くなる。そこで、この問題を解決することが可能な変更例について説明する。
図10(a)〜(c)は、この実施の形態の変更例を示す断面図である。図10(a)では、図8と同じく、フィルム12の孔12aを介して断線欠陥部8bに修正ペースト20が塗布され、塗布針19は上方に退避し、フィルム12の復元力によって、フィルム12はTFT基板1から離れた状態にある。この状態を保持した状態で、修正層20A1(第1の修正層)が乾燥する間、しばらく待機する。修正層20A1は微小であり乾燥しやすい状態にあり、待機時間は、使用する修正ペースト20の種類によって異なるが、たとえば、数秒から数十秒程度とされる。乾燥を促進するため、TFT基板1を適度に加熱してもよいし、修正ぺースト20の溶媒として適度に揮発性の高いものを用いてもよいし、修正ペースト20に光硬化剤(紫外線硬化剤)を添加してもよい。また、局所送風手段から修正層20Aに送風することによって修正層20Aを乾燥させてもよい。
待機が終了した時点で、図10(b)に示すように、同じ孔12aを用いて、修正層20A1に重ねて修正ペースト20を塗布する。このとき、孔12aと断線欠陥部8bとの相対位置は変化していないので、そのまま塗布針19先端の平坦面19a周りに修正ペースト20が付着した状態で塗布すれば良い。また、孔12a内には既に修正ペースト20が充填されているので、2回目の塗布で修正ペースト20が多量に断線欠陥部8bに流入することはない。なお、2回目の塗布時には、修正ペースト20が付着していない塗布針19に変えて塗布しても構わない。
図10(c)は、2回目の塗布が完了した状態を示している。1回目の塗布で形成された修正層20A1の上に2回目の塗布で形成された修正層20A2(第2の修正層)が重なって積層されるため、修正層20Aの膜厚はより厚くなる。
この後で、図9(a)(b)で示した方法で修正層20Aが焼成され、導電性の焼成層20AAが得られる。このとき、修正層20Aの膜厚が厚いので、ドレイン線8の段差部におけるクラックの発生が防止され、焼成層20AAの抵抗値を低減することが可能となる。
この変更例では、1回目の塗布と2回目の塗布で同じ貫通孔12aをマスクとして使用するため、別々の貫通孔12aを用いて重ねて塗布するのに比べて修正時間が大幅に短縮される。また、1回目の塗布が終わった状態でも断線欠陥部8bと貫通孔12aの位置はずれないので、位置調整は不要である。
なお、同じ断線欠陥部8bに対して、同じ孔12aを用いて修正ペースト20を塗布する回数を増やせば、修正層16Aの膜厚を厚くして、ドレイン線8の段差部8cにおける焼成層16AAのクラックの発生を回避することができる。したがって、修正部の低抵抗化を図るためには、修正ペースト20の塗布回数を増やすことが好ましい。ただし、塗布回数が多くなると、それに応じて断線欠陥部8bに供給される修正ペースト20の液量が多くなり、修正層20Aの形状が崩れる場合も想定されるので、塗布回数は状況を見て適時決められる。通常、2回程度の塗布回数でも低抵抗化に効果がある。
以下、上記実施の形態および変更例を実行するための種々の装置について説明する。図11(a)(b)は、フィルム12をTFT基板1に対して一定の隙間を持って対峙させるフィルム供給ユニット25を示す図である。図示しないフィルム供給リールから出たフィルム12は、固定ローラ26〜28を経由して図示しないフィルム巻き取りリールに巻き取られる。フィルム12は、左右に配置された固定ローラ27,28と、それらの間の上方に配置された固定ローラ26とにより、左右に折り返して上下に並行に張り渡された状態にされる。図11(a)に示すように、固定ローラ26,27の間のフィルム12Aにレーザ光を照射して孔12aを形成する。このとき、レーザアブレーションにより発生するごみがTFT基板1上に落下しないように遮蔽板18を上下に並行に張り渡されたフィルム12の間に配置してもよい。
フィルム供給ユニット25は、図示しないXYZステージにより、XYZ方向に移動可能とされる。XYZステージは、断線欠陥部8bと孔12aとの位置調整に使用される。また、フィルム供給ユニット25にTFT基板1に対して平行に回転する回転手段を持たせて、ドレイン線8と貫通孔12aの傾きの微調整を可能にしてもよい。
なお、図11(a)では、フィルム12が左右に折り返されていて、上方にあるフィルム12に孔12aを開ける際には、少し距離を置いてその下方にもフィルム12が存在するので、下方にあるフィルム12が遮蔽板18の代用として使用可能な場合には、遮蔽板18は省略可能である。
孔12aの形成が終了した時点では、フィルム12Aの表面には、レーザアブレーションの際に発生したごみが飛散している。ごみの除去のため、孔12aを中心として、その周りの広い範囲に弱いパワーのレーザ光を照射する工程を入れてもよい。このとき、YAG第2高調波レーザに切り替えて、弱いレーザパワーで孔12aを中心とする広い範囲を照射すれば、ごみのみを除去することも可能であり、新たにごみが発生することを防止することができる。レーザ部13としては、孔12aを開けるためのレーザ光と、ごみを除去するためのレーザ光の2種類のレーザ光のうちのいずれかのレーザ光を選択的に出射できるものを使用するとよい。
このように、断線欠陥部8bにフィルム12を付着、あるいは密着させた状態でレーザ光による孔12aの加工を行なわないので、TFT基板1の断線欠陥部8b近傍をレーザ光によって損傷することはない。また、フィルム12を浮かした状態で孔12aを開けるので、フィルム12の裏面にゴミが付着することを抑制することができる。なお、TFT基板1以外の位置でフィルム12にレーザ照射を行なう方法であれば、TFT基板1の異物汚染を防止することができる。
次に、図11(b)に示すように、フィルム12を図中R方向(時計針回転方向)に巻き取り、フィルム12Aの表面が下を向くようにフィルム12を反転させる。次いで、画像処理結果に基づいてTFT基板1に対してフィルム12を相対移動させ、孔12aと断線欠陥部8bを位置合わせしてTFT基板1とフィルム12が対峙した状態にする。この工程は手動で行なっても構わない。フィルム12は一定の張力によって張られた状態にある。隙間Gは、フィルム12を支持する支点(たとえば固定ローラ27,28)の間隔やフィルム12の厚さ、フィルム12に与える張力によって異なるが、たとえば10〜1000μm程度に設定される。次いで、上下に張り渡したフィルム12の間に図示しない塗布ユニットを挿入して孔12aの上方から修正ペースト20を塗布する。
また、図12(a)〜(c)は、フィルム12をTFT基板1上に配置する他のフィルム供給ユニット35の構成および動作を示す断面図である。また、図13(a)(b)は、それぞれ図12(a)(b)を上方から見た図である。このフィルム供給ユニット35を備えた欠陥修正装置では、断線欠陥部8bの上方に位置する上方フィルム12Aを機械的に移動させ、断線欠陥部8bの上方に下方フィルム12Bのみが配置されている状態にしてから、下方フィルム12Bの孔12aを介して断線欠陥部8bに修正ペースト20を塗布する。
すなわち、図12(a)において、フィルム供給ユニット35には、着脱可能なフィルム供給リールおよびフィルム巻き取りリール(図示せず)が装着されている。フィルム供給リールから供給されるフィルム12は、固定ローラ36〜38を経由して対物レンズ15とTFT基板1の間に導かれ、固定ローラ39で折り返され、固定ローラ40を経由してフィルム巻き取りリールに巻き取られる。
固定ローラ37,38は、可動部材41に固定され、一定範囲で上下方向に移動可能とされる。図12(a)では、可動部材41は上方の位置に固定された状態にある。この状態では、固定ローラ37,38によって支持され、それらに挟まれた区間L1の上方フィルム12Aと、固定ローラ39,40に挟まれた区間L2の下方フィルム3Bとは、一定の間隔、たとえば約10mm前後を保って略平行に張られた状態にあり、また、TFT基板1に対しても略平行に対峙する。フィルム供給ユニット35の区間L2の部分(フィルム配置部35a)は、対物レンズ15の下方に挿入されてフィルム12をマスクとした修正に使用される。
また、区間L1の上方フィルム12Aの下方には、上方フィルム12Aを移動させるためのフック42が配置されている。フック42は、フィルム12よりも若干広い幅の平板部材と、平板部材の一方側(図中前側)の端部に所定の間隔で立設された2本の爪42aとを含み、TFT基板1に対して略平行で上方フィルム12Aと直交する方向(幅方向)に移動可能に設けられている。図12(a)では、フック42は上方フィルム12Aとは接触しておらず、それらの間には一定の隙間が確保されている。
図13(a)に示すように、固定ローラ36,39,40は支持台43に固定され、可動部材41と支持台43との間には直動案内部材44が介在している。可動部材41に固着されたピン45の他端部にはアーム46が固定されていて、アーム46はエアシリンダ47の出力軸に固定されている。エアシリンダ47の出力軸を上下に移動させることで可動部材41を上下に移動させることができる。また、フック42はエアシリンダ48の出力軸に固定され、エアシリンダ48の出力軸をTFT基板1に対して略水平方向に移動させることで、フック42はフィルム12の送り方向とは略垂直な方向に移動可能とされる。
この状態で、区間L1の略中央の上方フィルム12A上に、レーザ光を照射して断線欠陥部8bの形状に応じた形状の貫通孔12aを形成する。このとき、フック42の平板部材が遮蔽板として機能し、レーザアブレーションにより発生する異物(ごみ)を受けるので、TFT基板1が汚染されることを防止することができる。フック42の平板部材の上面にごみを受ける凹部を形成してあってもよい。孔12aの形成が終了した時点では、フィルム12のレーザ照射面には、レーザアブレーションした際に発生したごみが飛散している。ごみの除去のため、孔12aを中心として、その周りの広い範囲に弱いパワーでレーザ光を照射する工程を入れてもよい。このとき、YAG第2高調波レーザに切り替えて、弱いレーザパワーで孔12aを中心とする広い範囲を照射すれば、ごみのみを除去することも可能であり、新たにごみが発生することを防止することができる。
次に、図12(b)に示すように、フィルム12をフィルム巻き取りリールによって巻き取りながら、孔12aを区間L2の下方フィルム12Bの略中央まで移動させる。次いで、フック42を後方に移動させると、図示しないフィルム巻き取りリール側はフィルム12が後戻りしないようになっているので、図示しないフィルム供給リールからフィルム12が供給されながら図13(b)に示すように、上方フィルム12Aはフック42の爪42aに引っ張られて後方に移動し、孔12aを含む下方フィルム12Bが上方から見て露出する。なお、エアシリンダ48の出力軸と、可動部材41との干渉を避けるため、可動部材41にはU字切り欠き部41aが設けられている。
図13(b)では、フック42で上方フィルム12AがTFT基板1に対してそのままの形状で平行移動しているように記載されているが、実際には、フック42内のフィルム12は2つ折りになったり、TFT基板1に対して垂直に立つようになるが、機能上問題はない。
この状態から、図12(c)に示すように、可動部材41を下降させて、可動部材41に固定された固定ローラ37,38が、固定ローラ39,40よりも下方に位置するようにする。こうすることで、下方フィルム12Bは固定ローラ37,38の間でTFT基板1に対して略平行に対峙する。なお、フィルム12には一定の張力が常に掛かった状態にあり、また、固定ローラ39,40の間の下方フィルム12Bを固定ローラ37,38で下方に押し込む方向なので、フィルム12が撓むこともなく、また、上方フィルム12Aが機械的に横移動したことによるフィルム12の捻れの影響は、固定ローラ37,38間の下方フィルム12Bには及ばない。
次に、断線欠陥部8bと孔12aとの位置合わせを行ない、孔12aを含む下方フィルム12BとTFT基板1とが一定の隙間Gを持って対峙するようにする。その後、図10(b)で示したように、塗布針19で修正ペースト20を塗布すれば、断線欠陥部8bの近傍を汚染することなく、塗布膜厚を確保した修正が完了する。
なお、図13(b)に示す状態、すなわち、上方フィルム12Aをフック42で横移動させた状態で下方フィルム12Bに孔12aを形成することも可能である。
図12(a)〜(c)および図13(a)(b)で示した方法では、固定ローラ39でフィルム12を折り返し、上方フィルム12Aと下方フィルム12Bとが一定の間隔で上下に配置された状態で、上方フィルム12Aを機械的に横移動させて下方フィルム12B1枚で修正を行なうため、断線欠陥部8bと孔12aとの位置合わせが容易になる。
また、下方フィルム12Bの孔12aの上方には物が無いので、作動距離WDが短い高倍率の対物レンズ(たとえば、20倍)に切り替えて、位置合わせを行なうことが可能である。また、塗布手段と上方フィルム12Aとの干渉を回避できるので、上方フィルム12Aと下方フィルム12Bとの間隔を狭くすることが可能となり、高倍率の対物レンズへの切り替えが容易になる。
また、前述の例では、レーザ部13でフィルム12に1つの孔12aを形成して、それをマスクとして微細パターンを描画していたが、固定ローラ26,27(あるいは37,38)で支持される間のフィルム12上に、複数の孔12aを間隔を開けて形成し、その孔12aを順次選択して、修正に使用すれば、フィルム12の使用量を削減できるとともに、修正のタクトタイムを短縮できる。この方法は、特に、フィルム12を上下に折り返して配置する装置において効果を発揮する。
また、塗布手段の一例として、図14(a)(b)に示す塗布ユニット49がある。塗布ユニット49は、その底に第1の孔50aが開口され、修正ペースト20が注入された容器50と、第2の孔51aが開口され、容器50を密封する蓋51と、第1および第2の孔50a,51aと略同じ径を有する塗布針19とを含む。塗布針19の先端の平坦面19aは、第2の孔51aを貫通して修正ペースト20内に浸漬される。第1および第2の孔50a,51aの径は、それらに貫通する塗布針19の径よりも少し大きいが微小であるので、修正ペースト20の表面張力や容器50の撥水・撥油性により、第1の孔50aからの修正ペースト20の漏れはほとんど無い。
容器50に形成され、修正ペースト20を注入するための穴は、孔50aに近づくに従って断面積が小さくなるテーパ形状を有する。したがって、少ない修正ペースト20でも塗布針19の平坦面19aを含む先端部を浸漬することができ、経済的である。修正ペースト20の量は、たとえば20μl(マイクロリットル)である。修正ペースト20は日持ちしないものもあり、容器50は定期的に交換する。あるいは、使用済み容器50を洗浄後、再利用することも可能である。容器50の着脱を簡単にするため、手でつかみ易い構造し、かつ、磁石による吸引を用いた着脱方法にすれば使い勝手は向上する。
塗布針19の基端部は塗布針固定板52に固着され、塗布針固定板52は図示しないガイド(直動部材)により上下動可能に支持される。この状態から、図14(b)に示すように、塗布針19の平坦面19aを容器50の底面に設けた第1の孔50aから突出させると、塗布針19の平坦面19aには修正ペースト20が付着する。さらに塗布針19を下降させ、平坦面19aで孔12aの開口部を閉蓋するようにフィルム12上を押圧すると、フィルム12が変形して孔12aの周りの微小範囲のフィルム12が断線欠陥部8bの周囲に付着し、断線欠陥部8bに修正ペースト20が充填される。
塗布針固定板52は、図示しないガイド(直動軸受)によって上下方向に進退可能に支持されており、塗布針19を含む可動部の自重のみでフィルム12を押す。塗布針19が下降してフィルム12をTFT基板1に接触した後もさらに下降させようとしても、塗布針19がガイドに沿って上方に退避するので、塗布針19の平坦面19aは過負荷とならない。塗布針19の駆動手段(図示せず)は、制御手段(図示せず)により、時間管理されて制御される。
この塗布方法では、塗布針19を断線欠陥部8bと容器(インクタンクまたはペーストタンク)との間を往復動させる工程が省略されるため、欠陥修正に要する時間が短縮される。
また、修正ペースト20は孔50a,51aを除いて密閉された容器50内に入っており、塗布針19は容器50の蓋51の孔51aに微小な隙間を持って常に挿入された状態にあるため、修正ペースト20が大気に直接触れる面積は少ない。したがって、修正ペースト20の希釈液(溶媒)の蒸発を防止することができ、修正ペースト20の使用可能な日数(交換周期)を長くすることが可能となり、パターン修正装置の保守が軽減化される。
また、塗布動作の待機状態において塗布針19の平坦面19aを含む先端部を修正ペースト20の中に浸けているため、塗布針19の平坦面19aに付着した修正ペースト20の乾燥を防ぐことができ、塗布針平坦面19aの洗浄工程も省略可能となる。
このように、塗布ユニット49を小型にできるので、平坦面19aの径が異なる複数の塗布ユニット49を用意しておき、断線欠陥部8bの大きさに応じて塗布針19を選択して使用することも可能である。
また、図14(a)(b)に示すように、塗布ユニット49を、対物レンズ15の直下で、かつ、断線欠陥部8bの真上に挿入することも可能となる。このとき、挿入スペースを確保するため、対物レンズ15は低倍率に切り換えることが望ましい。たとえば、10倍の対物レンズ15の作動距離WDは30mm程度あり、塗布ユニット49の高さを低く設計すれば容易に挿入可能である。
今まで説明してきた方法は、細線パターンを容易に、かつ、修正膜厚を厚く形成することができるため、たとえば、液晶パネルのTFT(薄膜トランジスタ)パネルの電極修正のように、10μm以下のパターン形成と、修正部の低抵抗化が必要な場所に適用可能となる。また、電極以外では、液晶カラーフィルタのブラックマトリックスは高精細化に伴い線幅が20μmを切っており、1回の塗布では膜厚を確保できない場合にも適用可能となる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 TFT基板、2 ガラス基板、3 ゲート線、3a ゲート電極、4,5 ゲート絶縁膜、6 画素電極、7 半導体膜、8 ドレイン線、8a ドレイン電極、8b 断線欠陥部、9 ソース電極、10 TFT、11 保護膜、12,12A,12B フィルム、12a 孔、13 レーザ部、14 観察光学系、15 対物レンズ、16,17,26〜28,36〜40 固定ローラ、18 遮蔽板、19 塗布針、19a 平坦面、20 修正ペースト、20A 修正層、20AA 焼成層、25,35 フィルム供給ユニット、35a フィルム配置部、41 可動部材、41a U字切り欠き部、42 フック、42a 爪、43 支持台、44 直動案内部材、45 ピン、46 アーム、47,48 エアシリンダ、49 塗布ユニット、50 容器、50a 第1の孔、51 蓋、51a 第2の孔、52 塗布針固定板。