この発明に係る欠陥修正方法では、カラーフィルタ基板の白欠陥部に応じた形状を有し、かつ白欠陥部よりも小さな孔をフィルムに開け、その孔を白欠陥部の中央に位置合わせし、フィルムをカラーフィルタ基板に一定の隙間を開けて対峙させる。隙間は、フィルムを支持する支点間距離やフィルムの膜厚、フィルムに与える張力によって異なるが、たとえば10〜1000μm程度とする。
この状態で、塗布手段、たとえば、先端が平坦に加工され、その周りに修正インクを付着させた塗布針を孔の上から押し付けると、フィルムが変形して、孔を含む微小範囲のフィルムがカラーフィルタ基板の白欠陥部を含む微小範囲に接触する。接触時間は、フィルムに開けた孔を塗布針が押している間であり、修正インクがフィルムとカラーフィルタ基板との隙間に毛細管現象で流れる前に、塗布手段(この場合は塗布針)をフィルムから退避させる。
塗布針を上方に退避させると、孔を含む微小範囲のフィルムはその弾性力でカラーフィルタ基板から離れる。したがって、毛細管現象によって修正インクがフィルムとカラーフィルタ基板の隙間に侵入することを防止することができ、修正インクによって欠陥部周辺の基板が汚染されるのを防止することができる。以下、この発明に係る欠陥修正方法について図面を用いて詳細に説明する。
図1は修正対象であって、液晶パネルに使用されるカラーフィルタ基板1の構成を示す平面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。図1および図2において、カラーフィルタ基板1は、ガラス基板2の表面に格子状のブラックマトリックス3を形成し、ブラックマトリックス3で囲まれる複数の矩形領域にR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の着色層4〜6を順次形成したものである。図2に示すように、ガラス基板2上に所定の膜厚T1のブラックマトリックス3を形成した後に着色層4〜6を形成するので、ブラックマトリックス3の表面に着色層4〜6の端部が重なって高さT2(>T1)の凸部7が発生する。また、着色層5の一部に、色が抜けた白欠陥部5aが発生しているものとする。
図3は、本願の基礎となる欠陥修正方法を示す図である。図3において、この欠陥修正方法では、欠陥部5aと略同じ形状および大きさの孔8aを持つフィルム8がカラーフィルタ基板1上に配置される。上述のように、ブラックマトリックス3の部位には、周りの着色層4〜6よりも高い凸部7が発生しているため、フィルム8と着色層4〜6との間に隙間が生じる。この状態で孔8aを介して白欠陥部5aに修正インクを塗布すると、孔10aの端部8bと凸部7とが接触し、そのわずかな隙間に毛細管現象で修正インクが吸い込まれ、白欠陥部5aの周辺が修正インクで汚染される場合が想定される。本願発明は、この問題を解決するものである。
図4は、この発明の一実施の形態による欠陥修正方法を示す図である。図4において、この欠陥修正方法では、白欠陥部5aに応じた形状を有し、かつ白欠陥部5aよりも小さな孔10aの開いたフィルム10をマスクとして使用する。白欠陥部5aの上方に孔10aを位置合わせした状態で、フィルム10をカラーフィルタ基板1の上面に一定の隙間Gを開けて配置する。フィルム10は、たとえば薄膜のポリイミドフィルムであり、その幅はマスクとして使用するのに十分な幅があれば良く、たとえば、5mm〜15mm程度にスリットしたロール状フィルムであり、その厚さFtは、その下が透けて見える程度のものが好ましく、たとえば10〜25μm程度である。
孔10aの開口部は、たとえば短軸長がSwで長軸長がSlの角形状である。孔10aは、レーザ照射によるレーザアブレーションで形成される。レーザとしては、YAG第3高調波レーザやYAG第4高調波レーザ、あるいはエキシマレーザなどのパルスレーザを用いる。
図5(a)〜(d)は、この欠陥修正方法の種々の工程を示す図である。たとえば、図5(a)に示すように、レーザ部11は、観察光学系12の上部に固定され、観察光学系12の下端に固定した対物レンズ13からレーザ光が照射される。孔10aの形状および寸法は、たとえばレーザ部11に内蔵される可変スリット(図示せず)により決定され、孔10aは対物レンズ13で集光したレーザ光の断面形状に形成される。
フィルム10に孔10aを開ける工程は、白欠陥部5aの位置から離れた位置、あるいは、白欠陥部5aにレーザ光が当たらないように、フィルム10単体で加工が行われる。たとえば、フィルム10は、カラーフィルタ基板1から上方に離れた位置、あるいはカラーフィルタ基板1の外側で、左右の固定ローラ14,15により水平に支持された状態に保持され、左右の固定ローラ14,15の中央に当たるフィルム10にレーザ光を照射して孔10aを形成する。このとき、レーザアブレーションにより発生するごみがカラーフィルタ基板1上に落下しないように、カラーフィルタ基板1とフィルム10との間に遮蔽板16を配置してもよい。
このように、白欠陥部5aにフィルム10を付着、あるいは密着させた状態でレーザ照射による孔10aの加工を行なわないので、白欠陥部5aの近傍を損傷することはない。また、フィルム10を浮かした状態で孔10aを開けるので、フィルム10の裏面にレーザアブレーション時に発生する異物(ゴミ)が付着することを抑制することができる。
この例の場合、白欠陥部5aは、その幅が着色層5の幅Wに略等しく、ブラックマトリックス3に近接した状態にあり、フィルム10に開けられる孔10aの短軸幅SwはSw<Wとされる。ブラックマトリックス3と孔10aの端部10bとの距離Pは、余裕をみて大きめに設定するのが好ましい。たとえば、距離Pは4μm程度とされる。また、孔10aの長軸長Sl(図4参照)は、白欠陥部5aの長軸長L(図1参照)よりも短くする(Sl<L)ことが好ましいが、着色層5の長軸方向において凸部7と近接していなければSl=Lとしてもよく、孔10aの端部10bが凸部7に接触することを回避するように孔10aの形状および寸法が設定される。
孔10aの形成が終了した時点では、孔10aの周りのフィルム10の表面には、孔10aをレーザアブレーションした際に発生したごみが飛散しており、ごみの除去のため、孔10aを中心として、その周りの広い範囲に弱いパワーのレーザ光を照射する工程を入れてもよい。このとき、YAG第2高調波レーザに切り替えて、孔10aを中心とする広い範囲に弱いパワーのレーザ光を照射すれば、ごみのみを除去することも可能であり、新たにごみが発生することを防止することができる。図5(a)に示した構成では、フィルム10の裏面に付着したごみをレーザ光で除去できないが、フィルム反転機構を設ければ同様にフィルム10の裏面を処理することも可能となる。
フィルム10に開けた孔10aと白欠陥部5aとが画像処理結果、あるいは、それぞれの位置座標データに基づき、カラーフィルタ基板1とフィルム10との相対移動により位置決めされ、それらが一定の隙間を持って対峙した状態にされる。この工程は手動で行なっても構わない。図5(b)は、図4のVB−VB線断面図であって、孔10aと白欠陥部5aとが隙間Gを持って対峙した状態を示している。なお、観察光学系12などの機構の図示は省略されている。フィルム10は一定の張力によって張られた状態にある。隙間Gは、フィルム10を支持する支点(たとえば図5(a)に示した固定ローラ14,15)の間隔やフィルム10の厚さ、フィルム10に与える張力によって異なるが、たとえば10〜1000μm程度に設定される。少なくとも孔10aを含む微小範囲のフィルム10が、カラーフィルタ基板1とは接触しない程度の隙間Gがあればよい。たとえば、隙間Gは100μm程度に設定される。
修正インク17の塗布は、たとえば、図5(c)に示すように、塗布針18を用いて行なわれる。塗布針18の先端は尖っているが、その先端は平坦に加工されている。平坦面18aの直径は、たとえば、30〜100μm程度であり、孔10aの大きさに合わせて最適な直径のものを選択して使用する。孔10a全体を閉蓋するような平坦面18aを有する塗布針18を選択して使用するのが好ましい。このような塗布針18であれば、1回の塗布動作で孔10aに修正インク17を充填することができる。
塗布針18の平坦面18aの周りに修正インク17が付着した状態で、孔10aの略中央に塗布針18を上方から下降させると、フィルム10は変形して孔10aの周りの微小範囲のフィルム10が白欠陥部5aの周囲に付着し、白欠陥部5aに修正インク17が充填される。この場合、白欠陥部5aよりも孔10aの面積は小さいが、修正インク17は白欠陥部5a全体に広がる。
塗布針18は、図示しないガイド(直動軸受)によって上下方向に進退可能に保持されている。塗布針18を含む可動部の自重のみでフィルム10を押す。塗布針18が下降してフィルム10が白欠陥部5aに接触した後もさらに下降させようとしても、塗布針18はガイドに沿って上方に退避するので、塗布針18の平坦面18aは過負荷とならない。塗布針18は、図示しない制御手段によって時間管理されて制御される。
孔10aを含む微小範囲のフィルム10が白欠陥部5aに接触する時間は、塗布針18がフィルム10を押している間であり、修正インク17がフィルム10とカラーフィルタ基板1(白欠陥部5a近傍)との隙間に毛細管現象で流れる前に、塗布針18を上方に退避させる。このとき、孔10aの端部10bと凸部7とは離れているので、それらの間に毛細管現象は働かず、修正インク17が凸部7に沿って吸い込まれることはない。塗布針18がフィルム10から離れれば、フィルム10の弾性で元の状態に戻り、孔10aを含む微小範囲のフィルム10は白欠陥部5aから離れる。そのため、フィルム10がカラーフィルタ基板1に接触する時間は極わずかである。
図5(d)は、塗布針18を上方に退避した状態を示し、フィルム10はカラーフィルタ基板1から離れた状態に復帰しており、白欠陥部5aには、孔10aの形状と略同形状の修正層17Aが残る。また、余分に塗布された修正インク17はフィルム10の表面に残る。このように、フィルム10をマスクとして修正を行なうので、塗布針18による塗布形状よりも微細な修正層17A(パターン)を得ることが可能となる。なお、孔10aの面積が小さくなると、塗布される修正インク17の量が少なくなって、修正膜厚が薄くなる傾向があるため、濃い目の修正インク17を使用するとよい。
高精細テレビや携帯電話などに使用される液晶表示装置のカラーフィルタ基板1の場合、画素幅は20μm前後と細くなり、塗布針方式ではみ出すことなく修正するのは難しかった。それに対して、フィルム10をマスクとしてカラーフィルタ基板1に一定の隙間を持って対峙させ、孔10aを含む微小範囲のフィルム10を塗布針18で押圧して塗布すれば、修正インク17が周りにはみ出すことも無く、容易に描画することが可能となる。また、ブラックマトリックス3上の凸部7と孔10aの端部10bとが接触しないように孔10aを形成しているので、それらの間に毛細管現象によって修正インク17が吸い込まれるのを防止することができ、白欠陥部5aのみに修正インク17を塗布することが可能となる。
修正層17Aには、修正インク17の仕様に合わせて紫外線硬化処理あるいは加熱硬化処理が施される。図5(d)の状態で硬化処理を行なってもよいし、白欠陥部5aの上方からフィルム10を除去した後で硬化処理を行なってもよい。
このような方法で白欠陥部5aの修正を行なえば、塗布された修正インク17がカラーフィルタ基板1とフィルム10との隙間に毛細管現象で吸い込まれることも無く、孔10aよりも広い範囲に渡ってカラーフィルタ基板1を汚染する心配もなくなる。また、塗布が終了した時点で、フィルム10は白欠陥部5aやカラーフィルタ基板1から完全に離れているので、その後の工程でフィルム10を除去する際には、フィルム10が修正層17Aに接触して修正層17Aを崩す心配がない。
修正インク17の粘度が大きければ、カラーフィルタ基板1とフィルム10との隙間に毛細管現象で吸い込まれる可能性は低くなるが、逆に流動性が悪くなって、孔10a全体に入らないため、白欠陥部5aに修正インク17が付着しないことも想定される。それに対して、前述のように、塗布時のみ孔10a近傍のフィルム10を白欠陥部5a近傍に押圧すれば、毛細管現象の影響を最小限に留めることができるので、修正インク17の粘度は小さくても構わない。修正インク17の流動性を高めることは、修正層17Aの平滑化に効果がある。
また、1つの白欠陥部5aを修正する際、1回の塗布で修正を完了する方が好ましい。その理由は、塗布回数が多くなると、孔10aに付着する修正インク17の量が多くなって、フィルム10とカラーフィルタ基板1との隙間に修正インク17が吸い込まれる、あるいは修正層17Aの形状が崩れる可能性も考えられるからである。ただし、複数回同じ位置に塗布することで修正層17Aの膜厚を厚くして色合いを調整することも可能である。この場合、修正層17Aを硬化処理した後でその上に再度修正層17Aを形成するようにしてもよいが、積層する加工条件は、使用する修正インク17の仕様に合わせて決めることが望ましい。
図6(a)(b)は、白欠陥部5aの位置と孔10aの形状との関係を示す図である。基本的には、ブラックマトリックス3上の凸部7から、一定の距離を開けて孔10aを形成することが必要である。図6(a)では、白欠陥部5aは着色層5の上端部に位置しているため、少なくとも、左右と上の各辺のブラックマトリックス3から一定の距離を開けるように孔10aが形成される。
図中、点線で示す四角形状は、カラーフィルタ基板1に隙間を持って対峙させるフィルム10上に形成される孔10a1を示している。この孔10a1の4辺(4つの端部)は、それぞれ白欠陥部5aの4辺よりも一定距離だけ内側に形成されている。しかし、白欠陥部5aの下辺近傍には凸部7が無いので、2点鎖線で示すように、下辺の位置が白欠陥部5aの下辺と略等しい孔10a2であってもよい。また図6(b)に示すように、1つの着色層5全体が白欠陥部5aの場合は、4辺の位置がそれぞれブラックマトリックス3の4辺から一定距離だけ離れるように孔10a3が形成される。
図7(a)(b)は、フィルム10をカラーフィルタ基板1に対して一定の隙間を持って対峙させるフィルム供給ユニット20の構成を示す断面図である。図7(a)において、図示しないフィルム供給リールから出たフィルム10は、固定ローラ21,22によって対物レンズ13とカラーフィルタ基板1との間に導かれ、固定ローラ22で反転され、さらに固定ローラ23を経由して図示しないフィルム巻き取りリールに巻き取られる。フィルム10は、左右に配置された固定ローラ22,23と、それらの間の上方に配置された固定ローラ21とにより、上下に並行に張り渡される。固定ローラ21,22の間のフィルム表面10cにレーザ光を照射して孔10aを形成する。このとき、レーザアブレーションにより発生するごみがカラーフィルタ基板1上に落下しないように、上下に並行に張り渡されたフィルム10の間に遮蔽板16を配置してもよい。あるいは、カラーフィルタ基板1から外れた位置で孔10aの形成を行なってもよい。
フィルム供給ユニット20は、図示しないXYZステージにより、XYZ方向に移動可能とされる。XYZステージは、白欠陥部5aと孔10aとの位置調整に使用される。また、フィルム供給ユニット20には、カラーフィルタ基板1に対して平行に回転する回転手段を持たせてもよい。
なお、図7(a)では、フィルム10が左右に折り返されていて、上方にあるフィルム10に孔10aを開ける際には、少し距離を置いてその下方にもフィルム10が存在するので、下方にあるフィルム10を遮蔽板16として使用できる場合には、遮蔽板16は省略可能である。
孔10aの形成が終了した時点では、フィルム10の表面10cには、レーザアブレーションの際に発生したごみが飛散している。ごみの除去のため、孔10aを中心として、その周りの広い範囲に弱いパワーのレーザ光を照射する工程を入れてもよい。このとき、YAG第2高調波レーザに切り替えて、孔10aを中心とする広い範囲に弱いパワーのレーザ光を照射すれば、ごみのみを除去することも可能であり、新たにごみが発生することを防止することができる。レーザ部11としては、孔10aを開けるためのレーザ光と、ごみを除去するためのレーザ光の2種類のレーザ光のうちのいずれかのレーザ光を選択的に出射できるものを使用するとよい。
このように、白欠陥部5aにフィルム10を付着、あるいは密着させた状態でレーザ光による孔10aの加工を行なわないので、カラーフィルタ基板1の白欠陥部5a近傍をレーザ光によって損傷することはない。また、フィルム10を浮かした状態で孔10aを開けるので、フィルム10の裏面にゴミが付着することを抑制することができる。
次に、図7(b)に示すように、フィルム10を図中R方向(時計針回転方向)に巻き取り、フィルム10の表面10cが下を向くようにフィルム10を反転させる。次いで、画像処理結果に基づいてカラーフィルタ基板1に対してフィルム10を相対移動させ、孔10aと白欠陥部5aを位置合わせしてカラーフィルタ基板1とフィルム10が対峙した状態にする。この工程は手動で行なっても構わない。フィルム10は一定の張力によって張られた状態にある。隙間Gは、フィルム10を支持する支点(たとえば固定ローラ22,23)の間隔やフィルム10の厚さ、フィルム10に与える張力によって異なるが、たとえば10〜1000μm程度に設定される。カラーフィルタ基板1のように表面に凹凸がある場合、カラーフィルタ基板1に対峙したフィルム10が、カラーフィルタ基板1とは接触しない程度の隙間Gを保ってもよいし、孔10aを含む微小範囲が、欠陥部5aやブラックマトリックス3上の凸部7と接触しないような隙間Gを保つようにしてもよい。その後、上下に張り渡したフィルム10の間に図示しない塗布ユニットを挿入して、図5(c)に示した方法と同じ方法で孔10aの上方から修正インク17を塗布する。
なお、図7(a)(b)で示した方法では、フィルム10が上下に存在するので、塗布時には、上下のフィルム10の間に塗布手段を挿入する必要があり、上下のフィルム10の間隔を狭くすることはできない。そのため、高倍率の対物レンズ13を用いて、欠陥部5aと孔10aとの位置合わせをすることが難しい。
図8(a)〜(c)は、他のフィルム供給ユニット30の構成および動作を示す断面図である。また、図9(a)(b)は、それぞれ図8(a)(b)を上方から見た図である。このフィルム供給ユニット30では、白欠陥部5aの上方に位置する上方フィルム10Aを機械的に移動させ、白欠陥部5aの上方に下方フィルム10Bのみが配置されている状態にしてから、下方フィルム10Bの孔10aを介して白欠陥部5aに修正インク17を塗布する。
すなわち、図8(a)において、フィルム供給ユニット30には、着脱可能なフィルム供給リールおよびフィルム巻き取りリール(図示せず)が装着されている。フィルム供給リールから供給されるフィルム10は、固定ローラ31〜34を経由して対物レンズ13と基板1の間に導かれ、固定ローラ34で折り返され、固定ローラ35を経由してフィルム巻き取りリールに巻き取られる。
固定ローラ32,33は、可動部材36に固定され、一定範囲で上下方向に移動可能とされる。図8(a)では、可動部材36は上方の位置に固定された状態にある。この状態では、固定ローラ32,33によって支持され、それらに挟まれた区間L1の上方フィルム10Aと、固定ローラ34,35に挟まれた区間L2の下方フィルム10Bとは、一定の間隔、たとえば約10mm前後を保って略平行に張られた状態にあり、また、基板1に対しても略平行に対峙する。フィルム供給ユニット30の区間L2の部分(フィルム配置部30a)は、対物レンズ13の下方に挿入されてフィルム10をマスクとした修正に使用される。
また、区間L1の上方フィルム10Aの下方には、上方フィルム10Aを移動させるためのフック37が配置されている。フック37は、フィルム10よりも若干広い幅の平板部材と、平板部材の一方側(図中前側)の端部に所定の間隔で立設された2本の爪37aとを含み、基板1に対して略平行で上方フィルム10Aと直交する方向(幅方向)に移動可能に設けられている。図8(a)では、フック37は上方フィルム10Aとは接触しておらず、それらの間には一定の隙間が確保されている。
図9(a)に示すように、固定ローラ31,34,35は支持台40に固定され、可動部材36と支持台40との間には直動案内部材41が介在している。一方端部が可動部材36に固着されたピン42の他方端部にはアーム43が固定されていて、アーム43はエアシリンダ44の出力軸に固定されている。エアシリンダ44の出力軸を上下に移動させることで可動部材36を上下に移動させることができる。また、フック37はエアシリンダ45の出力軸に固定され、エアシリンダ45の出力軸を基板1に対して略水平方向に移動させることで、フック37はフィルム10の送り方向とは略垂直な方向に移動可能とされる。
この状態で、区間L1の略中央の上方フィルム10A上に、レーザ光を照射して白欠陥部5aの形状に応じた形状を有し、かつ白欠陥部5aよりも小さな貫通孔10aを形成する。このとき、フック37の平板部材が遮蔽板として機能し、レーザアブレーションにより発生する異物(ごみ)を受けるので、基板1が汚染されることを防止することができる。フック37の平板部材の上面にごみを受ける凹部を形成してあってもよい。孔10aの形成が終了した時点では、フィルム10のレーザ照射面には、レーザアブレーションした際に発生したごみが飛散している。ごみの除去のため、孔10aを中心として、その周りの広い範囲に弱いパワーでレーザ光を照射する工程を入れてもよい。このとき、YAG第2高調波レーザに切り替えて、弱いレーザパワーで孔10aを中心とする広い範囲を照射すれば、ごみのみを除去することも可能であり、新たにごみが発生することを防止することができる。
次に、図8(b)に示すように、フィルム10をフィルム巻き取りリールによって巻き取りながら、孔10aを区間L2の下方フィルム10Bの略中央まで移動させる。次いで、フック37を後方に移動させると、図示しないフィルム巻き取りリール側はフィルム10が後戻りしないようになっているので、図示しないフィルム供給リールからフィルム10が供給されながら図9(b)に示すように、上方フィルム10Aはフック37の爪37aに引っ張られて後方に移動し、孔10aを含む下方フィルム10Bが上方から見て露出する。なお、エアシリンダ45の出力軸と、可動部材36との干渉を避けるため、可動部材36にはU字切り欠き部36aが設けられている。
図9(b)では、フック37で上方フィルム10Aが基板1に対してそのままの形状で平行移動しているように記載されているが、実際には、フック37内のフィルム10は2つ折りになったり、基板1に対して垂直に立つようになるが、機能上問題はない。
この状態から、図8(c)に示すように、可動部材36を下降させて、可動部材36に固定された固定ローラ32,33が、固定ローラ34,35よりも下方に位置するようにする。こうすることで、下方フィルム10Bは固定ローラ32,33の間で基板1に対して略平行に対峙する。なお、フィルム10には一定の張力が常に掛かった状態にあり、また、固定ローラ34,35の間の下方フィルム10Bを固定ローラ32,33で下方に押し込む方向なので、フィルム10が撓むこともなく、また、上方フィルム10Aが機械的に横移動したことによるフィルム10の捻れの影響は、固定ローラ32,33間の下方フィルム10Bには及ばない。
次に、白欠陥部5aと孔10aとの位置合わせを行ない、孔10aを含む下方フィルム10Bと基板1とが一定の隙間Gを持って対峙するようにする。その後、図5(c)で示したように、塗布針18で修正インク17を塗布すれば、欠陥部5aの近傍を汚染することなく修正が完了する。
なお、図9(b)に示す状態、すなわち、上方フィルム10Aをフック37で横移動させた状態で下方フィルム10Bに孔10aを形成することも可能である。
図8(a)〜(c)および図9(a)(b)で示した方法では、固定ローラ34でフィルム10を折り返し、上方フィルム10Aと下方フィルム10Bとが一定の間隔で上下に配置された状態で、上方フィルム10Aを機械的に横移動させて下方フィルム10B1枚で修正を行なうため、欠陥部5aと孔10aとの位置合わせが容易になる。
また、下方フィルム10Bの孔10aの上方には物が無いので、作動距離が短い高倍率の対物レンズ(たとえば、20倍)に切り替えて、位置合わせを行なうことが可能である。また、塗布手段と上方フィルム10Aとの干渉を回避できるので、上方フィルム10Aと下方フィルム10Bとの間隔を狭くすることが可能となり、高倍率の対物レンズへの切り替えが容易になる。なお、高倍率の対物レンズ直下では、焦点深度が狭いため、欠陥部5aと孔10aを同時に観察することはできない。そのため、欠陥部5aに焦点を合わせた状態で欠陥位置を把握した後、孔10aに焦点を合わせて、孔位置が欠陥位置に合うように位置調整する。
また、フィルム供給リールと、フィルム巻き取りリールを同じ側に配置することができることと、フィルム供給リールとフィルム巻き取りリールの回転軸を平行に配置できるので、装置の構造が簡単になる。
図10(a)〜(c)は、塗布針18を用いて修正インク17を塗布する塗布ユニット50の構成および動作を示す断面図である。図10(a)〜(c)において、塗布ユニット50は、その底に第1の孔51aが開口され、修正インク17が注入された容器51と、第2の孔52aが開口され、容器51を密封する蓋52と、第1および第2の孔51a,52aと略同じ径を有する塗布針18とを含む。塗布針18の先端の平坦面18aは、第2の孔52aを貫通して修正インク17内に浸漬される。第1および第2の孔51a,52aの径は、それらに貫通する塗布針18の径よりも少し大きいが微小であるので、修正インク17の表面張力や容器51の撥水・撥油性により、第1の孔51aからの修正インク17の漏れはほとんど無い。
容器51に形成され、修正インク17を注入するための穴は、孔51aに近づくに従って断面積が小さくなるテーパ形状を有する。したがって、少ない修正インク17でも塗布針18の平坦面18aを含む先端部を浸漬することができ、経済的である。修正インク17の量は、たとえば20μl(マイクロリットル)である。修正インク17は日持ちしないものもあり、容器51は定期的に交換する。あるいは、使用済み容器51を洗浄後、再利用することも可能である。容器51の着脱を簡単にするため容器5を手でつかみ易い構造とし、かつ、磁石の吸引力を用いて容器51を着脱自在に保持すれば使い勝手は向上する。
塗布針18の基端部は塗布針固定板53に固着され、塗布針固定板53は図示しないガイド(直動部材)により上下動可能に支持される。この状態から、図10(b)に示すように、塗布針18の平坦面18aを容器51の底面に設けた第1の孔51aから突出させると、塗布針18の平坦面18aには修正インク17が付着する。この状態でも既に塗布可能であるが、この状態のまま一定時間待機して、塗布針18の平坦面18aに付着した修正インク17の量を減らすように調整してもよい。待機時間が経過とともに、塗布針18の先端部に付着した修正インク17は表面張力によって上方に引き上げられていくので、塗布針18の平坦面18aの修正インク17の膜厚が薄くなり、結果として、孔10aに注入される修正インク17の量を制御することが可能となる。
カラーフィルタ基板1の着色層5が白く抜けた白欠陥部5aを修正する場合、孔10aの1辺の長さがはフィルム10の膜厚よりも大きくなるように孔10aを形成することが多いため、孔10aから白欠陥部5aに流れる修正インク17の量が多くなる傾向がある。しかし、待機期間を設けて修正インク17の量を調整すれば、白欠陥部5a以外への修正インク17のはみ出しや、ブラックマトリックス3の上の凸部7に沿って修正インク17が広がるのを抑制することができる。待機時間は、使用する修正インク17や基板1との濡れ性によっても異なるが、数msから数秒の間で設定する。
さらに塗布針18を下降させ、平坦面18aで孔10aの開口部を閉蓋するようにフィルム10上を押圧すると、図10(c)に示すように、フィルム10が変形して孔10aの周りの微小範囲のフィルム10がブラックマトリックス3の上の凸部7や欠陥部5aの周囲に付着し、欠陥部5aに修正インク17が充填される。
塗布針固定板53は、図示しないガイド(直動軸受)によって上下方向に進退可能に支持されており、塗布針18を含む可動部の自重のみでフィルム10を押す。塗布針18が下降してフィルム10を基板1に接触した後もさらに下降させようとしても、塗布針18がガイドに沿って上方に退避するので、塗布針18の平坦面18aは過負荷とならない。塗布針18の駆動手段(図示せず)は、制御手段(図示せず)により、時間管理されて制御される。
この塗布方法では、塗布針18を白欠陥部5aと容器(インクタンクまたはペーストタンク)との間で往復動させる必要がないので、欠陥修正に要する時間が短縮される。
また、修正インク17は孔51a,52aを除いて密閉された容器51内に入っており、塗布針18は容器51の蓋52の孔52aに微小な隙間を持って常に挿入された状態にあるため、修正インク17が大気に直接触れる面積は少ない。したがって、修正インク17の溶媒の蒸発を防止することができ、修正インク17の使用可能な日数(交換周期)を長くすることが可能となり、修正装置の保守が軽減化される。
また、塗布動作の待機状態において塗布針18の平坦面18aを含む先端部を修正インク17の中に浸けているため、塗布針18の平坦面18aに付着した修正インク17の乾燥を防ぐことができ、塗布針平坦面18aの洗浄工程も省略可能となる。
このように、塗布ユニット50を小型にできるので、塗布針18先端の平坦面18aの径が異なる複数の塗布ユニット50を用意しておき、白欠陥部5aの大きさに応じて塗布針18を選択して使用することも可能である。
今まで説明してきた方法は、修正箇所の周りに凸部があっても細線パターンを容易に形成することができるため、たとえば、液晶パネルのTFT(薄膜トランジスタ)パネルの電極修正のように、表面に突起状の電極がある場所での欠陥修正にも適用可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 カラーフィルタ基板、2 ガラス基板、3 ブラックマトリックス、4〜6 着色層、5a 白欠陥部、7 凸部、8,10,10A,10B フィルム、8a,10a 孔、11 レーザ部、12 観察光学系、13 対物レンズ、14,15,21〜23,31〜35 固定ローラ、16 遮蔽板、17 修正インク、17A 修正層、18 塗布針、18a 平坦面、20,30 フィルム供給ユニット、30a フィルム配置部、36 可動部材、36a U字切り欠き部、37 フック、37a 爪、40 支持台、41 直動案内部材、42 ピン、43 アーム、44,45 エアシリンダ、50 塗布ユニット、51 容器、51a 第1の孔、52 蓋、52a 第2の孔、53 塗布針固定板。