この発明に係る欠陥修正方法では、描画したい形状と同形状の孔をフィルムに開け、その孔をTFT基板上に形成された配線、たとえばドレイン線の断線欠陥部に位置合わせし、TFT基板から一定距離だけ浮かせた状態でフィルムを配置する。浮かせる距離(隙間)は、フィルムを支持する支点間距離によって異なるが、たとえば10〜1000μm程度である。この状態で、塗布手段、たとえば、先端が平坦に加工された塗布針の先端部に修正ペーストを付着させ、その塗布針の先端面を孔の上からフィルムに押し付けると、フィルムが変形して、孔を含む微小範囲のフィルムがTFT基板の断線欠陥部を含む微小範囲に接触し、孔を介して断線欠陥部に修正ペーストが塗布される。
修正ペーストがフィルムと基板との隙間に毛細管現象で流れる前に、塗布針をフィルムから退避させる。塗布針を上方に退避させると、孔を含む微小範囲のフィルムはフィルムの復元力によって基板から離れる。したがって、毛細管現象によって修正ペーストがフィルムと基板の隙間に侵入することを防止することができ、修正ペーストによって欠陥部周辺の基板が汚染されるのを防止することができる。以下、この発明に係る欠陥修正方法について図面を用いて詳細に説明する。
図1(a)は、修正対象であるTFT基板1の要部を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)のIB−IB線断面図である。図1(a)(b)において、TFT基板1はガラス基板2を備える。ガラス基板2の表面に、図中の左右方向に延在するゲート線3が形成されるとともに、ゲート線3の所定位置に図中の下方向に突出するゲート電極3aが形成される。ゲート線3およびゲート電極3aの表面はゲート絶縁膜4で被覆され、ゲート絶縁膜4およびガラス基板2の表面はゲート絶縁膜5で被覆される。
ゲート絶縁膜5の表面に、複数の画素電極6が行列状に形成される。図中の上下方向に隣接する2つの画素電極6の間の領域にゲート線3が配置されている。ゲート電極3aの上方にゲート絶縁膜4,5を介して半導体膜7が形成される。図中の左右方向に隣接する2つの画素電極6の間の領域に図中の上下方向に延在するドレイン線8が形成されるとともに、ドレイン線8の所定位置に図中の左方向に突出するドレイン電極8aが形成される。このドレイン電極8aの端部は、半導体膜7の一方端部の表面まで延びている。また、半導体膜7の他方端部の表面から画素電極6の一端部の表面にかけてソース電極9が形成される。
このようにして、ゲート電極3aとドレイン電極8aとソース電極9と半導体膜7とを含むTFT10が形成される。全体が保護膜11および配向膜(図示せず)で被覆されて、TFT基板1が完成する。TFT基板1と液晶とカラーフィルタとで液晶パネルが構成される。
ここで図1(a)に示すように、ドレイン線8に断線欠陥部8bが存在するものとする。保護膜11まで形成した後に断線欠陥部8bを修正する場合、保護膜11の一部をレーザ加工により除去して断線欠陥部8bを露出させ、修正ペーストを塗布し、硬化成膜処理を行なってドレイン線8の導通を確保した後で、修正個所の上に保護膜11を再形成する必要がある。そのため、修正の手間を簡略化できるように、保護膜11を形成する前の工程で断線欠陥部8bの修正を行なう方が好ましい。たとえば、ドレイン線8の形成が終了した時点では保護膜11は無く、この時点で断線修正を行なう。
図2は、この発明の一実施の形態による欠陥修正方法を示す図である。図2において、修正対象は保護膜11が無い状態のTFT基板1であり、孔12aの開いたフィルム12をマスクとして使用する。断線欠陥部8bの上方に孔12aを位置合わせした状態で、フィルム12をTFT基板1の上面に一定の隙間Gを開けて配置する。フィルム12は、たとえば薄膜のポリイミドフィルムであり、その幅はマスクとして使用するのに十分な幅があればよく、たとえば、5mm〜15mm程度にスリットしたロール状フィルムであり、その厚さFtは、その下が透けて見える程度のものが好ましく、たとえば10〜25μm程度である。
孔12aの開口部は、たとえば短軸長がSwで長軸長がSlの角形状であり、断線欠陥部8bの両端に位置する正常なドレイン線8にも修正ペーストを塗布できるように、孔12aの長軸長Slは断線欠陥部8bよりも長く設定される。このように、正常なドレイン線8と重なるように孔12aを形成すれば、修正層と正常なドレイン線8とが重なる領域を確保できるので、修正部の抵抗値の低減化、密着性の向上などの効果が期待できる。
孔12aは、レーザ照射によるレーザアブレーションで形成される。レーザとしては、YAG第3高調波レーザやYAG第4高調波レーザ、あるいはエキシマレーザなどのパルスレーザを用いる。たとえば、図3に示すように、レーザ部13は、観察光学系14の上部に固定され、観察光学系14の下端に固定した対物レンズ15からレーザ光が照射される。孔12aの形状および寸法は、たとえばレーザ部13に内蔵される可変スリット(図示せず)により決定され、対物レンズ15で集光したレーザ光の断面形状に加工される。
フィルム12に孔12aを開ける工程は、断線欠陥部8bから離れた位置、あるいは、断線欠陥部8bにレーザ光が当たらないように、フィルム12単体で行なわれる。たとえば、フィルム12は、TFT基板1から上方に離れた位置で、左右の固定ローラ16,17により水平に支持された状態に保持され、左右の固定ローラ16,17の中央に当たるフィルム12にレーザ光を照射して孔12aを形成する。このとき、レーザアブレーションにより発生するごみがTFT基板1上に落下しないように、TFT基板1とフィルム12との間に遮蔽板18を配置してもよい。
このように、断線欠陥部8bにフィルム12を付着、あるいは密着させた状態でレーザ照射による孔12aの加工を行なわないので、ドレイン線8や断線欠陥部8bの近傍を損傷することはない。また、フィルム12を浮かした状態で孔12aを開けるので、フィルム12の裏面にレーザアブレーション時に発生する異物(ゴミ)が付着することを抑制することができる。
孔12aの形成が終了した時点では、孔12a周りのフィルム12の表面には、孔12aをレーザアブレーションした際に発生したごみが飛散しており、ごみの除去のため、孔12aを中心として、その周りの広い範囲を弱いパワーでレーザ照射する工程を入れてもよい。このとき、YAG第2高調波レーザに切り替えて、弱いパワーで孔12aを中心とする広い範囲にレーザ照射すれば、ごみのみを除去することも可能であり、新たにごみが発生することを防止することができる。図3に示した装置では、フィルム12の裏面に付着したごみをレーザ照射で除去できないが、図示しないフィルム反転機構を設ければ表面と同様にフィルム12の裏面も処理することも可能となる。
フィルム12に開けた孔12aと断線欠陥部8bとが画像処理結果、あるいは、それぞれの位置座標データに基づき、TFT基板1とフィルム12との相対移動により位置決めされ、それらが一定の隙間を持って対峙した状態にする。この工程は手動で行なっても構わない。図4は、孔12aと断線欠陥部8bとが隙間Gを持って対峙した状態を示す。フィルム12は一定の張力によって張られた状態にある。隙間Gは、フィルム12を支持する支点(たとえば図3に示した固定ローラ16,17)の間隔やフィルム12の厚さによって異なるが、たとえば10〜1000μm程度に設定される。TFT基板1の表面には複数のパターンが積層されているため、凹凸形状になっているが、孔12aを含む微小範囲のフィルム12がTFT基板1と接触しない程度の隙間Gを保っていればよい。たとえば、隙間Gは200μm程度に設定される。
修正ペーストの塗布は、たとえば、図5に示すように、塗布針19を用いて行なわれる。塗布針19の先端部は尖っているが、その先端には平坦面19aが形成されている。平坦面19aの直径は、たとえば、30〜100μm程度であり、孔12aの大きさに合わせて最適な直径のものを選択して使用する。孔12a全体を閉蓋することが可能な寸法の平坦面19aを有する塗布針19を選択して使用するのが好ましい。このような塗布針19を使用すれば、1回の塗布動作で孔12aを修正ペースト20で充填することができる。
塗布針19の平坦面19aの周りに修正ペースト20が付着した状態で、孔12aの略中央に塗布針19を上方から下降させると、フィルム12は変形して孔12aの周りの微小範囲のフィルム12が断線欠陥部8bの周囲に付着し、断線欠陥部8bに修正ペースト20が充填される。塗布針19は、図示しないガイド(直動軸受)によって上下方向に進退可能に保持されており、塗布針19を含む可動部の自重のみでフィルム12を押す。塗布針19が下降してフィルム12が断線欠陥部8bの周囲に接触した後にさらに下降させようとしても、塗布針19はガイドに沿って上方に退避するので、塗布針19の平坦面19aは過負荷とならない。塗布針19は、図示しない制御手段によって時間管理されて制御される。
孔12aを含む微小範囲のフィルム12が断線欠陥部8bの周囲に接触する時間は、塗布針19がフィルム12を押している間であり、修正ペースト20がフィルム12とTFT基板1(断線欠陥部8b近傍)との隙間に毛細管現象で流れる前に、塗布針19を上方に退避させる。塗布針19がフィルム12から離れれば、フィルム12の弾性で元の状態に戻り、孔12aを含む微小範囲のフィルム12は断線欠陥部8bから離れる。そのため、フィルム12がTFT基板1に接触する時間は極わずかである。
図6は、塗布針19を上方に退避させた状態を示し、フィルム12はTFT基板1から離れた状態に復帰しており、断線欠陥部8bには、孔12aの形状と略同形状の修正層20Aが残る。また、余分に塗布された修正ペースト20はフィルム12の表面に残る。このように、フィルム12をマスクとして修正を行なうので、塗布針19による塗布形状よりも微細な修正層20A(パターン)を得ることが可能となる。
修正層20Aには、修正ペースト20の仕様に合わせて紫外線硬化処理あるいは加熱硬化処理が施される。図6の状態で硬化処理を行なってもよい。また、レーザ照射による熱分解反応で金属膜を析出する必要があれば、断線欠陥部8bの上方からフィルム12を除去した後で連続発振のレーザで硬化処理(金属析出処理)を行なってもよい。この場合、レーザ部13がパルス発振と連続発振の切替えができるタイプであれば機構は簡単になるが、切替えができない場合には、レーザ部13とは別の図示しない連続発振レーザから観察光学系14を介してレーザ光を照射できるようにするとよい。
このような方法で断線欠陥部8bの修正を行なえば、塗布された修正ペースト20がTFT基板1とフィルム12との隙間に毛細管現象で吸い込まれることも無く、孔12aよりも広い範囲に渡ってTFT基板1を汚染する心配もなくなる。また、塗布が終了した時点で、フィルム12は断線欠陥部8bやTFT基板1から完全に離れているため、その後の工程でフィルム12を除去する際には、フィルム12が修正層20Aに接触して修正層20Aを崩す心配がない。
修正ペースト20の粘度が大きければ、TFT基板1とフィルム12との隙間に毛細管現象で吸い込まれる可能性は低くなるが、逆に流動性が悪くなって、孔12a全体に入らないため、断線欠陥部8bに修正ペースト20が付着しないことも想定される。それに対して、前述のように、塗布時のみ孔12a近傍のフィルム12を断線欠陥部8bの周囲に付着させるので、毛細管現象の影響を最小限に留めることができる。したがって、修正ペースト20の粘度は小さくても構わない。
1つの欠陥部8bを修正する際、1回の塗布で修正を完了する方が好ましい。その理由は、塗布回数が多くなると、孔12aに付着する修正ペースト20の量が多くなって、フィルム12とTFT基板1との隙間に修正ペースト20が吸い込まれる、あるいは修正層20Aの形状が崩れる可能性があるからである。ただし、複数回同じ位置に塗布することで修正層20Aの膜厚を厚くすることも可能である。この場合、修正層20Aを硬化処理した後でその上に再度修正層20Aを形成するのが好ましいが、積層する加工条件は、使用する修正ペースト20の仕様に合わせて決めることが望ましい。
修正ペースト20としては、金属ナノ粒子を用いた銀ペーストなどの金属ナノペーストや金属錯体溶液(たとえばパラジウム錯体溶液)、金属コロイドを用いることができる。
図7は、断線欠陥部8bの修正が完了したTFT基板1の要部を示す平面図である。図7において、ドレイン線8の断線欠陥部8b上に形成された修正層20Aは、正常なドレイン線8との重なり部を両端に持つ。
ドレイン線8上に異物があって断線欠陥となった場合には、通常はレーザ照射で異物を除去した後、その上から修正ペースト20を塗布して図7と同様に修正するが、図8に示すように、異物21があった場所を迂回してコの字形状の修正層20Bを形成してもよい。この場合、修正層20Bが他の配線と短絡する場合には、修正層20Bの周りをレーザカットして短絡を回避すればよい。
図9は、コの字形状の修正層20Bを形成する方法を示す図である。図9において、フィルム12にコの字形状の孔12bを形成し、フィルム12をTFT基板1に一定の隙間Gを開けて対峙させる。修正ペースト20を塗布する方法は、図5で示した方法と同じである。
また、図10に示すように、ドレイン線8とゲート線3が交差部22で短絡している場合は、ゲート線3の両側の2箇所でドレイン線8をレーザカット(点線部)してから、交差部22を迂回するようにコの字形状の修正層20Bを形成する。また、直線またはコの字形状以外の任意の形状の孔をフィルム12に開ければ、1回の塗布動作で任意の形状の修正層を得ることができる。
このように複雑な形状の孔の開いたフィルム12を用いて修正する場合であっても、孔全体を閉蓋可能な大きさの平坦面19aを持つ塗布針19を用いるのが好ましい。たとえば図11に示すように、コの字形状の孔12b全体を塗布針19の平坦面19aで閉蓋することが好ましい。
図12(a)(b)は、フィルム12をTFT基板1に対して一定の隙間を持って対峙させるフィルム供給ユニット25を示す図である。図示しないフィルム供給リールから出たフィルム12は、固定ローラ26〜28を経由して図示しないフィルム巻き取りリールに巻き取られる。フィルム12は、左右に配置された固定ローラ27,28と、それらの間の上方に配置された固定ローラ26とにより、左右に折り返して上下に並行に張り渡された状態にされる。図12(a)に示すように、固定ローラ26,27の間のフィルム12Aにレーザ光を照射して孔12aを形成する。このとき、レーザアブレーションにより発生するごみがTFT基板1上に落下しないように遮蔽板18を上下に並行に張り渡されたフィルム12の間に配置してもよい。
フィルム供給ユニット25は、図示しないXYZステージにより、XYZ方向に移動可能とされる。XYZステージは、断線欠陥部8bと孔12aとの位置調整に使用される。また、フィルム供給ユニット25にTFT基板1に対して平行に回転する回転手段を持たせてもよい。
なお、図12(a)では、フィルム12が左右に折り返されていて、上方にあるフィルム12に孔12aを開ける際には、少し距離を置いてその下方にもフィルム12が存在するので、下方にあるフィルム12が遮蔽板18の代用として使用可能な場合には、遮蔽板18は省略可能である。
孔12aの形成が終了した時点では、フィルム12Aの表面には、レーザアブレーションの際に発生したごみが飛散している。ごみの除去のため、孔12aを中心として、その周りの広い範囲に弱いパワーのレーザ光を照射する工程を入れてもよい。このとき、YAG第2高調波レーザに切り替えて、弱いレーザパワーで孔12aを中心とする広い範囲を照射すれば、ごみのみを除去することも可能であり、新たにごみが発生することを防止することができる。レーザ部13としては、孔12aを開けるためのレーザ光と、ごみを除去するためのレーザ光の2種類のレーザ光のうちのいずれかのレーザ光を選択的に出射できるものを使用するとよい。
このように、断線欠陥部8bにフィルム12を付着、あるいは密着させた状態でレーザ光による孔12aの加工を行なわないので、TFT基板1の断線欠陥部8b近傍をレーザ光によって損傷することはない。また、フィルム12を浮かした状態で孔12aを開けるので、フィルム12の裏面にゴミが付着することを抑制することができる。
次に、図12(b)に示すように、フィルム12を図中R方向(時計針回転方向)に巻き取り、フィルム12Aの表面が下を向くようにフィルム12を反転させる。次いで、画像処理結果に基づいてTFT基板1に対してフィルム12を相対移動させ、孔12aと断線欠陥部8bを位置合わせしてTFT基板1とフィルム12が対峙した状態にする。この工程は手動で行なっても構わない。フィルム12は一定の張力によって張られた状態にある。隙間Gは、フィルム12を支持する支点(たとえば固定ローラ27,28)の間隔やフィルム12の厚さ、フィルム12に与える張力によって異なるが、たとえば10〜1000μm程度に設定される。次いで、上下に張り渡したフィルム12の間に図示しない塗布ユニットを挿入して孔12aの上方から修正ペースト20を塗布する。
図13(a)〜(d)は、フィルム12をTFT基板1に対して一定の隙間を持って対峙させる他のフィルム供給ユニット30を示す図である。フィルム供給ユニット30には、着脱可能な図示しないフィルム供給リールおよび図示しないフィルム巻き取りリールが装着される。フィルム供給リールから供給されるフィルム12は、図13(a)に示すように、固定ローラ31〜33によって対物レンズ15とTFT基板1の間に導かれ、固定ローラ34で折り返され、固定ローラ35を介してフィルム巻き取りリールに導かれる。固定ローラ32,33は、可動部材36によって一定の範囲で上下方向に移動可能に保持される。
図13(a)では、可動部材36が上方位置に固定された状態が示されている。この状態では、固定ローラ32,33に挟まれた区間L1のフィルム12と、固定ローラ34,35に挟まれた区間L2のフィルム12は一定の隙間(たとえば約2mm)を開けて略平行に張り渡されている。また、区間L1,L2のフィルム12は、TFT基板1に対しても略平行に対峙している。
この状態で、区間L1の略中央のフィルム12に、レーザ照射により断線欠陥部8bの修正形状に合わせた第1の孔12Baを形成する。この時、区間L2のフィルム12がレーザアブレーションにより発生する異物を受けるので、異物によってTFT基板1が汚染されるのを防止することができる。第1の孔12Baの形成が終了した時点では、フィルム12のレーザ照射面には、レーザアブレーションした際に発生したごみが飛散している。ごみの除去のため、第1の孔12Baを中心として、その周りの広い範囲を弱いパワーでレーザ光を照射する工程を入れてもよい。このとき、YAG第2高調波レーザに切り替えて、弱いレーザパワーで第1の孔12Baを中心とする広い範囲を照射すれば、ごみのみを除去することも可能であり、新たにごみが発生することを防止することができる。
次に、図13(b)に示すように、フィルム12をフィルム供給リールに巻き取り、第1の孔12Baを区間L2の略中央まで移動させる。次いで、図13(c)に示すように、可動部材36を下方位置に移動させて、固定ローラ32,33を固定ローラ34,35よりも下に位置させると、区間L1において上方フィルム12Aと下方フィルム12Bが上下に重ねられる。
観察光学系14で第1の孔12Baを確認した後、図13(d)に示すように、区間L1の上方フィルム12Aに、第1の孔12Baが少なくも一定の範囲で露出するように第2の孔12Aaをレーザアブレーションで開ける。なお、第2の孔12Aaは上方フィルム12Aを貫通するに留め、下方フィルム12Bまで貫通させないようにする。この場合、フィルム12Aを貫通させるのに必要なレーザショット回数、レーザパワーを予め知っていれば、下方フィルム12Bの上面を深く削ることはない。また、下方フィルム12Bには第1の孔12Baが開いているが微小であり、第2の孔12Aaが貫通した後のレーザショット回数は極力少なくなるようにセットされるため、フィルム12Bの下方に異物が落下するのを最小限に留めることができる。
なお、第2の孔12Aaを形成する際、下方フィルム12BとTFT基板1との間に図示しない遮蔽板を挿入して異物を受け止めるようにしてあってもよい。第2の孔12Aaを形成した後、YAG第2高調波レーザに切り替えて、第2の孔12Aaを中心とする広い範囲に弱いパワーのレーザ光を照射して、フィルム12Aの上面にある異物を除去してもよい。
このように、初めに開けた第1の孔12Baの位置を確認してから第2の孔12Aaを形成するので、第1の孔12Baと第2の孔12Aaの位置調整は不要となり好都合である。
第2の孔12Aaの形成が完了した時点で、断線欠陥部8bと第1の孔12Baとの位置合わせを行ない、第1の孔12Baを含む下方フィルム12B、および第2の孔12Aaを含む上方フィルム12AとがTFT基板1と一定の隙間Gを持って対峙するようにする。たとえば隙間Gは200μmに設定される。その後、図5で示したように、塗布針19を用いて修正ペースト20を塗布すれば、断線欠陥部8bの近傍を汚染することなく修正が完了する。
図13(a)〜(d)で示した方法では、固定ローラ34でフィルム12を折り返し、上方フィルム12Aと下方フィルム12Bとを重ねて配置するため、フィルム供給ユニット30の先端部(区間L2の部分)の高さHを低く抑えることが可能となる。たとえば、先端部の高さHを16mm程度とすれば、20倍対物レンズの作動距離(WD18mm)の直下に挿入できるので、図示しないレボルバの回転により、低倍率から高倍率の対物レンズ15に切り替えれば、断線欠陥部8bと第1の孔12Baとの位置合わせを高精度で行なうことが可能となる。
ここで、第2の孔12Aaは、図14(a)〜(c)に示すような形態の中から、使用する修正ペースト20の粘度やTFT基板1との濡れ性、あるいは、修正ペースト20の塗布量を考慮して適宜選択される。図14(a)では、第1の孔12Baと略同形状となるように第2の孔12Aaが形成されている。この場合、第1の孔12Baと第2の孔12Aaを別々に開けるのではなく、上方フィルム12Aと下方フィルム12Bを重ね合わせた状態で、同時に孔12Ba,12Aaを形成してもよい。
図14(b)では、第1の孔12Baよりも大きな第2の孔12Aaが形成され、第1の孔12Baがすべて露出している。また、図14(c)では、第1の孔12Baと略中央で直交するように第2の孔12Aaが形成され、第1の孔12Baの中央部のみが露出している。第1の孔12Baと第2の孔12Aaとの交差領域37のみが、上方フィルム12Aと下方フィルム12Bの両方を貫通する。この場合、修正ペースト20の粘度が高く、第1の孔12Baに流れ難い場合には、第2の孔12Aaを複数本形成してもよい。
図15は、図13(d)の状態から、塗布針19先端の平坦面19aの周りに修正ペースト20が付着した状態で、平坦面19aで孔12Aaの開口部を閉蓋するようにして塗布針19を上方から押し付けた様子を示す。この場合、平坦面19aが第1の孔12Ba全体を覆うことが可能な塗布針19を用いる。また、第2の孔12Aaも平坦面19aに収まるように形成してあってもよいし、第2の孔12Aaが平坦面9aからはみ出るような大きさであってもよい。
塗布針19がフィルム12A,12Bを上方から下方に押し付けると、フィルム12A,12Bが変形して第1の孔12Baの周りの微小範囲のフィルム12Bが断線欠陥部8bの周囲に付着し、断線欠陥部8bに修正ペースト20が充填される。このとき、上方フィルム12Aと下方フィルム12Bとの隙間は極わずかとなり、毛細管現象により上方フィルム12Aと下方フィルム12Bとの隙間に修正ペースト20が吸い込まれる。したがって、第1の孔12Baに修正ペースト20が過剰に流れるのを抑制することができ、パターンが大きく膨らんだり、下方フィルム12BとTFT基板1との隙間に修正ペースト20が吸い込まれてTFT基板1を汚染することを抑制することができる。
断線欠陥部8bが長くなると、前述したようにそれに合わせて塗布針19の平坦面19aの面積が大きなものを使用して、第1の孔12Ba全体を押圧する必要があり、この場合、1回で塗布される修正ペースト20はより多くなる。たとえば、平坦面19aの直径が50μmから100μmに変わった場合、平坦面19aの面積は半径の2乗に比例して増大するので、4倍を超える量の修正ペースト20が塗布される。このため、必要以上の修正ペースト20が第1の孔12Ba内部に送り込まれて、描画パターンが膨らむことが想定される。しかし、上方フィルム12Aと下方フィルム12Bとの隙間に余分な修正ペースト20が吸い込まれるので、修正ペースト20の液量を適正にすることができる。
図16(a)は、図13(d)のXVIA−XVIA線断面図であって、断線欠陥部8bに修正ペースト20を塗布する塗布ユニット41の構成を示す図である。図16(a)において、断線欠陥部8bとフィルム12A,12Bが一定の隙間を持って対峙し、かつ、断線欠陥部8bと孔12Baとが位置合わせされた状態にあり、塗布ユニット41は、対物レンズ15の直下で、かつ、断線欠陥部8bの真上に挿入された状態にある。このとき、塗布ユニット41が対物レンズ15の下方に挿入されるが、挿入スペースを確保するため、対物レンズ15を低倍率のものに切り換えることが望ましい。たとえば、10倍の対物レンズ15の作動距離WDは30mm程度あり、塗布ユニット41の高さを低く設計すれば容易に挿入可能である。
塗布ユニット41は、その底に第1の孔42aが開口され、修正ペースト20が注入された容器42と、第2の孔43aが開口され、容器42を密封する蓋43と、第1および第2の孔42a,43aと略同じ径を有する塗布針19とを含む。塗布針19の先端の平坦面19aは、第2の孔43aを貫通して修正ペースト20内に浸漬される。第1および第2の孔42a,43aの径は、それらに貫通する塗布針19の径よりも少し大きいが微小であるので、修正ペースト20の表面張力や容器42の撥水・撥油性により、第1の孔42aからの修正ペースト20の漏れはほとんど無い。
容器42に形成され、修正ペースト20を注入するための穴は、孔42aに近づくに従って断面積が小さくなるテーパ形状を有する。したがって、少ない修正ペースト20でも塗布針19の平坦面19aを浸漬することができ、経済的である。修正ペースト20の量は、たとえば20μl(マイクロリットル)である。修正ペースト20は日持ちしないものもあり、容器42は定期的に交換する。あるいは、使用済み容器42を洗浄後、再利用することも可能である。容器42の着脱を簡単にするため、手でつかみ易い構造にし、かつ、磁石による吸引を用いた着脱方法にすれば使い勝手は向上する。
塗布針19の基端部は塗布針固定板44に固着され、塗布針固定板44は図示しないガイド(直動部材)により上下動可能に支持される。この状態から、図16(b)に示すように、塗布針19の平坦面19aを容器42の底面に設けた第1の孔42aから突出させると、塗布針19の平坦面19aには修正ペースト20が付着する。さらに塗布針19を下降させ、平坦面19aで孔12Aaまたは孔12Baの開口部を閉蓋するようにフィルム12Aを押圧すると、フィルム12A,12Bが変形して孔12Baの周りの微小範囲のフィルム12Bが断線欠陥部8bの周囲に付着し、断線欠陥部8bに修正ペースト20が充填される。
塗布針固定板44は、図示しないガイド(直動軸受)によって上下方向に進退可能に支持されており、塗布針19を含む可動部の自重のみでフィルム12A,12Bを押す。塗布針19が下降してフィルム12BをTFT基板1に接触させた後もさらに下降させようとしても、塗布針19がガイドに沿って上方に退避するので、塗布針19の平坦面19aは過負荷とならない。塗布針19の駆動手段(図示せず)は、制御手段(図示せず)により、時間管理されて制御される。たとえば、フィルム12BがTFT基板1に接触する時間は1秒以下である。
この塗布方法では、塗布針19を断線欠陥部8bと容器(インクタンクまたはペーストタンク)との間を往復動させる工程が省略されるため、欠陥修正に要する時間が短縮される。
また、修正ペースト20は孔42a,43aを除いて密閉された容器42内に入っており、塗布針19は容器42の蓋43の孔43aに微小な隙間を持って常に挿入された状態にあるため、修正ペースト20が大気に直接触れる面積は少ない。したがって、修正ペースト20の希釈液(溶媒)の蒸発を防止することができ、修正ペースト20の使用可能な日数(交換周期)を長くすることが可能となり、欠陥修正装置の保守の手間が軽減化される。
また、塗布動作の待機状態において塗布針19の平坦面19aを修正ペースト20の中に浸けているため、塗布針19の平坦面19aに付着した修正ペースト20の乾燥を防ぐことができ、塗布針19の洗浄工程も省略可能となる。
このように、塗布ユニット41を小型にできるので、平坦面19aの径が異なる複数の塗布ユニット41を用意しておき、断線欠陥部8bの大きさに応じて塗布針19を選択して使用することも可能である。
また、フィルム12にレーザ光を照射して孔を開けると、孔はレーザ照射面(フィルム表面)から貫通面(フィルム裏面)に近づくにつれて先細りとなるテーパ状になる。このことはレーザ加工の特徴でもある。
前述の例では、フィルム12の孔12Baはレーザアブレーションにより形成され、孔12Baの形成が完了した後、レーザ照射面がTFT基板1に対峙するように、固定ローラ34で反転される。このとき、孔12Baの断面形状は、上方に近づくにつれて先細りとなるテーパ状、つまりハの字形状となる。
この状態で、塗布針19でフィルム12A,12BをTFT基板1側に押し付けて、孔12Baと断線欠陥部8bとを接触させると、孔12Ba内の修正ペースト20には、孔12Baの先端が細くなる上方に毛細管現象の力が働き、修正ペースト20を上方に引き上げる力と修正ペースト20の自重との釣り合いで、孔12Ba内の修正ペースト20は中央が膨らんで垂れ下がった状態になる。したがって、フィルム12とTFT基板1との隙間に修正ペースト20が吸い込まれることを抑制することができる。
なお、レーザ光を照射して孔12Baを形成する際、図17(a)に示すように孔12Baのみを形成するだけでなく、図17(b)に示すように、孔12Baの周りに隔壁12Bcを残して溝12Bbを形成してもよい。また、図17(c)に示すように、フィルム12のTFT基板1に対峙する面に凹部12Bdを形成し、凹部12Bdの略中央に孔12Baを形成し、凹部10Bd内において孔12Baを囲むようにして溝10Bbを形成してもよい。凹部10Bdの幅や深さは、フィルム12が塗布時に変形して、孔12Baを含む微小範囲のフィルム12が、欠陥部8bに付着可能な範囲に設定される。たとえば、12.5μm厚のフィルム12であれば、幅は100μm〜300μm前後、深さは1μm〜5μm程度である。凹部12Bdは、予めフィルム12に加工してあってもよく、加工手段としては、レーザや、機械的な手段(たとえば金型の転写)を用いる。なお、凹部12Bdはフィルム12の延在方向に連続して形成してもよいし、断続的に形成しても構わない。
図17(b)(c)のようなフィルム12をマスクとして修正すれば、断線欠陥部8bに孔12aを接触させた状態であっても、溝12Bbによって修正ペースト20の侵入を防止することができる。
以上の実施の形態に示したように、断線欠陥部8bを修正する場合、直線形状のパターンで修正する以外にもコの字形状などのような複雑な形状のパターンを1回の修正で描画することが可能であり、断線欠陥部8bの形状に応じた孔12a,12Baをフィルム12,12Bに開ければ修正可能であることは言うまでもない。
また、孔12a,12Baの寸法は、短軸長Swとフィルム12の厚さFtの関係を、Ft>Swの関係にすれば、孔12a,12Ba内に入った修正ペースト20を孔12a,12Ba内に留める力(付着力)が強くなり、フィルム12とTFT基板1との隙間に作用する毛細管現象による吸引力に負けなくなる。したがって、修正ペースト20がフィルム12とTFT基板1との隙間に吸い込まれるのを防止することができる。
上記寸法は、修正ペースト20の表面張力や粘度、TFT基板1やフィルム12の濡れ性に依存し、修正の安定性を増すためには、Ft/2>Swのようにする方がより好ましい。この式は、孔12a,12Baの形状が、L字やコの字形状のような複雑なものであっても適用される。
図18(a)は欠陥修正装置50の全体構成を示す正面図であり、図18(b)は図18(a)のXVIIIB−XVIIIB線断面図である。図18(a)(b)において、定盤51にはガントリ型のXYステージ52が搭載されている。XYステージ52は、図18(a)の左右方向に移動するX軸ステージ52aと、紙面に対して垂直方向に移動可能な門型形状のY軸ステージ52bとを含む。また、X軸ステージ52aには、上下に移動可能なZ軸ステージ53が固定台54を介して固定される。Z軸ステージ53には、レーザ部13、観察光学系14、対物レンズ15、XYZステージ55が固定され、XYZステージ55には塗布ユニット41が搭載されている。定盤51上にはチャック56が固定されていて、チャック56上にはTFT基板1が固定される。
また、固定台54にはXYZステージ57が固定されていて、フィルム供給ユニット25をXYZ方向に移動可能としている。フィルム供給ユニット25は、フィルム供給リール58やフィルム巻き取りリール59を支持するベース板25aと、固定ローラ26〜28を固定する可動部材25bとを含み、可動部材25bは直動軸受60を介してベース板25aに上下方向に移動可能に保持されている。通常、固定ローラ27,28はTFT基板1に接触しないようにされるが、仮に固定ローラ27,28がTFT基板1に接触したとしても、直動軸受60に案内されて上方に退避するので、TFT基板1に衝撃を与えないようになっている。
塗布ユニット41は、XYZステージ55を含めて制御手段により制御され、フィルム12の孔12aを、短時間のみTFT基板1の断線欠陥部8bに押圧する。また、フィルム供給ユニット25は、XYZステージ57により、対物レンズ15直下にある断線欠陥部8b上に孔12aを位置決めするとともに、断線欠陥部8bとフィルム12とが隙間を持って対峙するように駆動される。なお、フィルム供給ユニット25を図13のフィルム供給ユニット30で置換してもよいことは言うまでもない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 TFT基板、2 ガラス基板、3 ゲート線、3a ゲート電極、4,5 ゲート絶縁膜、6 画素電極、7 半導体膜、8 ドレイン線、8a ドレイン電極、8b 断線欠陥部、9 ソース電極、10 TFT、11 保護膜、12,12A,12B フィルム、12a,12b,12Aa,12Ba 孔、12Bb 溝、12Bc 隔壁、12Bd 凹部、13 レーザ部、14 観察光学系、15 対物レンズ、16,17,26〜28,31〜35 固定ローラ、18 遮蔽板、19 塗布針、19a 平坦面、20 修正ペースト、20A,20B 修正層、21 異物、22 交差部、25,30 フィルム供給ユニット、25a ベース板、25b,36 可動部材、37 交差領域、41 塗布ユニット、42 容器、42a 孔、43 蓋、43a 孔、44 塗布針固定板、50 欠陥修正装置、51 定盤、52 XYステージ、52a X軸ステージ、52b Y軸ステージ、53 Z軸ステージ、54 固定台、55,57 XYZステージ、56 チャック、58 フィルム供給リール、59 フィルム巻き取りリール、60 直動軸受。