JP5051423B2 - 改変型の耐熱性RecAタンパク質、及び該タンパク質を用いた核酸増幅方法 - Google Patents

改変型の耐熱性RecAタンパク質、及び該タンパク質を用いた核酸増幅方法 Download PDF

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Description

本発明は、改変型の耐熱性RecAタンパク質、及びその利用方法に関する。詳細には、野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、核酸増幅反応系における鋳型核酸の増幅効率に寄与する能力が向上されている改変型の耐熱性RecAタンパク質、及びその利用方法に関する。
ポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」と略する場合がある。)等の核酸増幅技術は、標的とする特定のDNA領域を短時間で10万倍以上に増幅できる画期的な技術である。しかしながら、その反応を最適化することは難しく、プライマーが標的配列以外にアニールする、あるいはプライマー同士がアニールする等、プライマーのミスアニーリングにより生じる非特異的増幅により増幅効率が低下するとの問題があった。鋳型核酸に非特異的な増幅産物は、増幅精度が低下する要因となり、後の実験に支障を来たすバックグラウンドノイズとなる。そのため、非特異的増幅を抑制し、標的核酸のみを特異的に増幅できる高精度の増幅技術の確立が求められていた。
そこで、増幅サイクルの各段階でプライマーのミスアニーリングが起こらないように反応を制御するべく様々な試みが報告されている。具体的には、DNA結合タンパク質である、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来の一本鎖結合タンパク質(以下、「SSB」と略する)、大腸菌由来のSSB、バクテリオファージT4由来の遺伝子32産物(以下、「T4gp32」と略する)の存在下でPCRを行うことで核酸増幅効率を向上できることが報告されている(例えば、非特許文献1、2、3を参照のこと。)。また、二本鎖DNA結合タンパク質Sso7dが結合したDNAポリメラーゼでPCRを行うことでも核酸増幅効率を向上できることが報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献4を参照のこと)。しかしながら、これらの方法は何れも増幅精度の観点からは市場の要求を十分に満たすものではなかった。
また、最近になって、本発明者らは、高度好熱菌由来の耐熱性RecAタンパク質が、鋳型やプライマーと相互作用して、特定の鋳型配列のみに対するプライマーの結合を促進でき、それにより、プライマーのミスアニーリングを抑制できることを報告した(例えば、特許文献2、3、非特許文献5を参照のこと。)。ここで、RecAタンパク質とは、単鎖核酸に協同的に結合し、該単鎖核酸と二本鎖核酸との間で相同領域を検索し、核酸の相同組換えを行うタンパク質である。
しかしながら、本発明者らの以前報告した上述の方法においても、反応条件によっては耐熱性RecAタンパク質が有する生物学的機能が十分発揮できず非特異的増幅が生じることがあることが判明した。そのため、高精度の核酸増幅を達成すべく、核酸増幅反応を適切に制御できる技術の確立が依然として求められていた。また、核酸増幅反応は耐熱性DNAポリメラーゼ等の高価な試薬を要することから、かかる高価な試薬の使用量を節減でき安価に標的核酸を特異的に増幅できる技術の確立が求められていた。
そこで、本発明は、非特異的な増幅を抑制して、より特異的かつ効率的に所望の核酸のみを増幅できる高精度の核酸増幅を実現し、かつ安価に標的核酸を増幅できる技術の確立を目的とする。
本発明者が鋭意検討を行った結果、耐熱性RecAタンパク質のC末端側の酸性領域を構成するアミノ酸配列において、ある特定のアミノ酸に改変が生じている改変部位を有する改変型の耐熱性RecAタンパク質を構築した。かかる改変型の耐熱性RecAタンパク質を核酸増幅反応系に添加したところ、非特異的増幅が生ず、標的核酸に特異的な増幅産物が得られ、高精度の核酸増幅が達成できることを見出した。更に、検討を重ねたところ、核酸増幅反応系において耐熱性DNAポリメラーゼ等の使用量を節減できることを見出した。また、かかる改変型の耐熱性RecAタンパク質は、相同組み換え活性の向上が認められた。これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
上記目的を達成するため、下記の〔1〕〜〔14〕の構成からなる発明を提供する。
〔1〕野生型の耐熱性RecAタンパク質のC末端側の酸性領域を構成するアミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸を欠失又は置換により改変して得られる改変型の耐熱性RecAタンパク質であって、野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、核酸増幅反応系における鋳型核酸の増幅効率に寄与する能力が向上されている改変型の耐熱性RecAタンパク質。
〔2〕野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて高い相同組換え活性を有する上記〔1〕の改変型の耐熱性RecAタンパク質。
〔3〕前記野生型の耐熱性RecAタンパク質がサーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、又は、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)に由来する上記〔1〕又は〔2〕の改変型の耐熱性RecAタンパク質。
〔4〕前記改変が、野生型の耐熱性RecAタンパク質のC末端から1〜13個のアミノ酸について生じている上記〔1〕〜〔3〕のいずれかの改変型の耐熱性RecAタンパク質。
〔5〕前記改変が、酸性アミノ酸について生じている上記〔1〕〜〔4〕のいずれかの改変型の耐熱性RecAタンパク質。
〔6〕前記改変が欠失である上記〔1〕〜〔5〕のいずれかの改変型の耐熱性RecAタンパク質。
〔7〕配列表の配列認識番号4に記載されるアミノ酸配列の228番目〜240番目の少なくとも1つのアミノ酸が欠失又は置換により改変されている上記〔1〕〜〔6〕のいずれかの改変型の耐熱性RecAタンパク質。
〔8〕配列表の配列認識番号2に記載されるアミノ酸配列からなる上記〔1〕〜〔7〕のいずれかの改変型の耐熱性RecAタンパク質。
上記〔1〕〜〔8〕の構成によれば、核酸増幅反応系における鋳型核酸の増幅効率に寄与する能力が向上されている。そのため、核酸増幅系に添加することにより、改変部位を有しない野生型の耐熱性RecAタンパク質では不十分であった標的核酸に特異的、かつ、効率的な核酸増幅が可能となる。したがって、非特異的増幅を抑制でき、バックグラウンドノイズの影響を受けない標的核酸の増幅が可能となり、増幅精度の向上に寄与し得る。また、DNAポリメラーゼ等の酵素活性をも向上させることができ、かかる作用と相俟って核酸増幅精度を向上させることができる。以上の通り、様々な産業分野、特には分子生物学の分野に幅広く利用可能なタンパク質を提供できる。
特に、上記〔2〕の構成によれば、相同組換えを促進することができ、遺伝子組換え実験に際して、効率的な遺伝子導入を実現することが可能となる。例えば、トランスジェニック動物の作製にあたっての胚幹細胞への遺伝子導入に利用でき、遺伝子現象の解析等の分子生物学の分野に幅広く利用可能なタンパク質を提供できる。
〔9〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかの改変型の耐熱性RecAタンパク質をコードする核酸分子。
〔10〕配列表の配列認識番号1に記載される塩基配列を含む上記〔9〕の改変型の耐熱性RecAタンパク質をコードする核酸分子。
〔11〕上記〔9〕又は〔10〕の核酸分子を導入した形質転換体を培養し、得られた培養物からの抽出液を熱処理に付した後、疎水性クロマトグラフィー、陽イオン交換セルロースクロマトグラフィー、陽イオン交換リン酸セルロースクロマトグラフィーにて順次処理してRecA活性を有するタンパク質を回収する改変型の耐熱性RecAタンパク質の製造方法。
上記〔9〕〜〔11〕の構成によれば、遺伝子工学的手法を用いて低コストかつ工業的に大量に、上記〔1〕〜〔8〕の構成の改変型の耐熱性RecAタンパク質生産することが可能となった。
特に上記〔11〕の構成によれば、宿主由来のその他のタンパク質を容易に除去することができ、信頼性の高い酵素を大量かつ簡便に製造できるという利点がある。
〔12〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかの改変型の耐熱性RecAタンパク質を添加して核酸の増幅反応を行う核酸増幅方法。
〔13〕前記増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応に基づく反応である上記〔12〕に記載の核酸増幅方法。
上記〔12〕〜〔13〕の構成によれば、核酸増幅反応の制御が簡便に行うことが可能となり、標的核酸に特異的、かつ、効率的な核酸増幅が可能となる。したがって、非特異的増幅を抑制でき、バックグラウンドノイズの影響を受けない標的核酸の増幅が可能となり、増幅精度の向上に寄与し得る。更に、核酸増幅反応系における鋳型核酸の増幅効率に寄与する能力を向上させることから、アニーリング温度を高く設定でき、更に精度の高い核酸増幅が可能となる。また、DNAポリメラーゼ等の酵素活性を向上できることから、これら高価な試薬の使用量を低減でき、安価な核酸増幅方法を提供できる。また、添加する〔1〕〜〔8〕の構成の改変型耐熱性RecAタンパク質が耐熱性を有することから、加熱工程を含む核酸増幅反応系の全サイクルにおいて上記効果を持続発揮することができる。
〔14〕耐熱性DNAポリメラーゼと、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか改変型耐熱性RecAタンパク質、とを含む核酸を増幅するための核酸増幅用キット。
上記〔14〕の構成によれば、このように核酸増幅に必要な成分をキットして構成することにより、簡便且つ迅速な核酸増幅が可能となる
以下、具体的な本発明の実施の形態について説明するが、これはあくまでも本発明を例示するに留まり、本発明を限定するものではない。
以下、本発明の改変型の耐熱性RecAタンパク質を「改変型耐熱性RecAタンパク質」と略する場合がある。また、野生型の耐熱性RecAタンパク質を「野生型耐熱性RecAタンパク質」と略する場合がある。
本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質には、核酸増幅反応系における鋳型核酸の増幅効率の向上に寄与し得る機能を発現する、すべての耐熱性RecAタンパク質が含まれる。つまり、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は、野生型耐熱性RecAタンパク質と比較して核酸増幅反応系における鋳型核酸に対する特異性が向上している。さらに、好ましくは、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は、野生型耐熱性RecAタンパク質と比較して高い相同組換え活性を有する。なお、野生型耐熱性RecAタンパク質とは、自然界より分離された高度好熱菌に保持されている耐熱性RecAタンパク質のアミノ酸配列、及び耐熱性RecAタンパク質をコードする塩基配列が、意図的もしくは非意図的に改変が生じている改変部位を有していないことを意味する。
そして、改変型の基礎となる、野生型耐熱性RecAタンパク質は、高度好熱菌由来のタンパク質である。具体的には、本発明の使用に適した高度好熱菌RecAタンパク質としては、サーマス(Thermus)属、サーモコッカス(Thermococcus)属、ピロコッカス(Pyrococcus)属、サーモトーガ(Thermotoga)属等由来のRecAタンパク質が例示される。好ましくは、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のRecAタンパク質である。しかしながら、これらに限定するものではない。
ここで、上記の「核酸増幅反応において鋳型核酸の増幅効率の向上に寄与し得る機能」とは、核酸増幅反応において、鋳型核酸に関連のない非特異的増幅がほとんど認められず、かつ、鋳型核酸を高い収率で増幅できることを意味する。そして、好ましくは、鋳型核酸の増幅効率を2〜4倍向上させ得る機能を意味する。例えば、実施例にてHyper-TthRecAと称する配列認識番号2に表すアミノ酸配列を有するタンパク質が有する、鋳型核酸の増幅効率の向上に寄与し得る機能と実質的に同等であることをいう。また、核酸増幅反応とは、好適には、耐熱性ポリメラーゼによるPCRを指すが、原理の異なる他の酵素を利用した各種核酸増幅方法を排除するものではない。したがって、リガーゼ連鎖反応(以下、「LCR」と称する場合がある)、鎖置換増幅反応(以下、「SDA」と称する場合がある)、ローリングサイクル増幅反応(以下、「RCA」と称する場合がある)等の公知の核酸増幅反応を含む。
具体的には、改変型耐熱性RecAタンパク質は、野生型耐熱性RecAタンパク質のC末端側の酸性領域を構成するアミノ酸配列中において、少なくとも1以上の特定のアミノ酸に欠失又は置換による改変が生じている改変部位を有する。ここで、「少なくとも1以上のアミノ酸の欠失又は置換による改変」とは、改変の基礎となるタンパク質をコードする遺伝子に対する公知のDNA組換え技術、点変異導入方法等によって、欠失又は置換することができる程度の数のアミノ酸が、欠失又は置換されることを意味し、これらの組み合わせをも含む。このような改変は、人為的に導入することもできるし、また、自然界において非意図的に生じることもある。本発明における改変型耐熱性RecAタンパク質には、これら双方の改変型が含まれる
ここで、酸性領域とは、タンパク質のアミノ酸構造中、極端に酸性アミノ酸に富む領域であり、野生型耐熱性RecAタンパク質においてはC末端側の領域に存在する。具体的には、野生型耐熱性RecAタンパク質のC末端から1〜16個のアミノ酸からなる領域が、酸性領域として見出される。
そして、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は、野生型に比べ等電点(PI値)が上昇するように、かかる酸性領域を構成するアミノ酸配列中に改変部位を有することが好ましい。例えば、実施例にて詳細に説明するサーマス・サーモフィラス由来のRecAタンパク質においては、C末端側に酸性領域が存在し、そのC末端側のアミノ酸を欠失させる毎に等電点が上昇する〔野生型(1〜340アミノ酸):5.33、改変型(1〜339):5.46、改変型(1〜337):5.64、改変型(1〜336):5.90、改変型(1〜335):6.31、改変型(1〜327):7.60〕。本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質としては、そのような改変を有するものが好ましい。特には、等電点が1以上上昇するような改変が生じていることが好ましい。したがって、酸性領域が欠失する変異、酸性領域を構成する酸性アミノ酸が欠失、若しくは酸性アミノ酸以外のアミノ酸への置換が好ましい。
以上の通り、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は、野生型耐熱性RecAタンパク質の酸性領域のアミノ酸が欠失、若しくは置換して得られる。好ましくは、野生型耐熱性RecAタンパク質のC末端から1〜16個のアミノ酸が欠失、若しくは置換されて得られ、更に好ましくは、C末端から1〜16番目までのアミノ酸からなるアミノ酸配列が任意の箇所で切断され欠失したものである。特にC末端から1〜13番目のアミノ酸までが欠失したものが好ましく例示される。
具体的には、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質として、サーマス・サーモフィラス由来のRecAタンパク質を表す配列認識番号2の328〜340番目のアミノ酸の少なくとも1つを欠失、若しくは置換されているものが例示される。更に好ましくは、配列認識番号2の328、336、337、338、340番目の酸性アミノ酸が欠失若しくは酸性アミノ酸以外のアミノ酸に置換されて得られたものが例示される。特には、野生型のサーマス・サーモフィラス由来のRecAタンパク質を表す配列認識番号4の328〜340番目の13個のアミノ酸が欠失して得られた改変型耐熱性RecAタンパク質が好ましく例示され、そのアミノ酸配列を配列表の配列認識番号2に、かかる改変型耐熱性RecAタンパク質をコードする塩基配列を配列表の配列認識番号1に示す。
本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は公知の方法によって取得することができる。例えば、改変の基礎となる野生型耐熱性RecAタンパク質をコードするDNAに対して改変を施し、得られた改変DNAを用いて宿主細胞を形質転換し、かかる形質転換体の培養物から耐熱性RecAタンパク質を採取することによって取得することができる。
改変の基礎となる野生型耐熱性RecAタンパク質をコードするDNAは、公知の遺伝子クローニング技術を用いて取得することができる。例えば、GenBank等の公知のデータベースを検索することによって取得することができる遺伝子情報を基にしてプライマーを設計し、RecAタンパク質を産生し得る高度好熱菌から抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCRを行うことにより取得することができる。また公知の遺伝子情報に基づいて、常法のホスホルアミダイト(phosphoramidite)法等の核酸合成法により合成することによっても取得するができる。ここで、本発明の改変型の基礎として好適な耐熱性RecAタンパク質の配列情報として、野生型のサーマス・サーモフィラス由来のRecAタンパク質のアミノ酸配列を配列表の配列認識番号4に、該RecAタンパク質をコードする塩基配列を配列表の配列認識番号3に示す。
耐熱性RecAタンパク質をコードするDNAに改変を施す方法としては、特に制限はなく、当業者に公知の改変タンパク質作製のための変異導入技術を利用することができる。例えば、部位特異的突然変異誘発法、PCR法等を利用して変異を導入するPCR突然誘発法、あるいは、トランスポゾン挿入突然変異誘発法などの公知の変異導入技術を利用することができる。また、市販の変異導入用キット(例えば、QuikChange(登録商標) Site-directed Mutagenesis Kit(Stratagene社製))を利用してもよい。目的とする改変型耐熱性RecAタンパク質のアミノ酸配列が定まれば、それをコードする適当な塩基配列を決定でき、常法のホスホルアミダイト法等の核酸合成技術を利用して本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質をコードするDNAを合成することができる。
具体的には、野生型耐熱性RecAタンパク質をコードするDNAを鋳型として、所望の改変(欠失又は置換)を施した配列を含むオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行うことによって取得することができる。また、欠失改変体をコードするDNAについては、野生型耐熱性RecAタンパク質をコードするDNAの末端DNAをエキソ型ヌクレアーゼ等により分解することによっても取得することができる。
得られた改変遺伝子を用いて宿主細胞を形質転換するためには、公知の大腸菌等の宿主・発現ベクターシステムを利用することができる。例えば、改変型耐熱性RecAタンパク質を安定に増幅できるDNAベクターに連結させ、改変型耐熱性RecAタンパク質を効率的に発現できる大腸菌に導入する。そして、炭素源、窒素源その他必須の栄養素を含む培地に接種し、常法に従って培養して該改変型耐熱性RecAタンパク質を発現させる。
なお、発現ベクターは、プロモーター配列、耐熱性RecAタンパク質をコードする遺伝子を挿入できる少なくとも1つの制限酵素サイトを有するマルチクローニングサイト等の配列を含み、かつ、上記宿主細胞で発現できるものであれば、何れの発現ベクターを用いることができる。好適なプロモーターとしては、例えば、T7lacプロモーターを利用するのが好ましい。
さらに、この発現ベクターには他の公知の塩基配列が含まれていてもよい。他の公知の塩基配列としては特に限定されない。例えば、発現産物の安定性を付与する安定性リーダー配列、発現産物の分泌を付与するシグナル配列が挙げられる。また、ネオマイシン耐性遺伝子・カナマイシン耐性遺伝子・クロラムフェニコール耐性遺伝子・アンピシリン耐性遺伝子・ハイグロマイシン耐性遺伝子等の形質転換された宿主において表現型選択を付与することが可能なマーキング配列等をも含ませることができる。
このような発現ベクターは、市販の大腸菌用発現ベクター(例えばpETタンパク質発現システム:ノバジェン社製)を用いることが可能であり、さらに、適宜所望の配列を組み込んだ発現ベクターを作製して使用することが可能である。
また、宿主細胞としては、大腸菌に限定されず、バシラス属細菌、シュードモナス属細菌等をも利用できる。更に、原核生物に限定されず真核生物細胞を利用することが可能である。例えば、Saccharomyces cerevisiae等の酵母、Sf9細胞等の昆虫細胞、CHO細胞、COS-7細胞等の動物細胞等を好適に利用することが可能である。
このようにして得られた形質転換体の培養物からの本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の採取、及び精製は図1に示すようにして行うことができる。簡潔に説明すると、形質転換体の培養物の培養物から菌体を収集し、適当な緩衝液に懸濁させ、超音波処理等にて菌体を破砕し菌体抽出液を得る。破砕に際してはリゾチームや界面活性剤を適宜含ませた緩衝液中で行うことが好ましい。続いて、遠心分離やろ過等により上清を収集し、熱処理に付して形質転換体由来のタンパク質を失活させ、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の粗抽出液を得る。熱処理は65℃にて60分が特に好ましい。この粗抽出液を疎水性クロマトグラフィー、陽イオン交換セルロースクロマトグラフィー、陽イオン交換リン酸セルロースクロマトグラフィーにて処理する。疎水性クロマトグラフィー、陽イオン交換セルロースクロマトグラフィー、陽イオン交換リン酸セルロースクロマトグラフィーに順次処理することが好ましいが、特に順序は問わない。このとき、疎水性クロマトグラフィーは硫酸アンモニウムの存在下で行うことが好ましい。以上のように構成することによって形質転換体から本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質を精製することができる。
なお、陽イオン交換セルロースクロマトグラフィーを省略することも可能である(図2)が、他の文献公知のRecAタンパク質の精製方法では、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質を精製することはできない。これは、酸性領域の改変により核酸への結合能に改変が生じ、それにより形質転換体由来の夾雑物質、特には核酸成分から分離することが困難になったものと考えられる。したがって、かかる改変型耐熱性RecAタンパク質の製造方法も本発明の一部をなす。また、本発明の製造方法は、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質のみならず、他の形質転換体由来の夾雑物質から分離することが困難になったタンパク質の精製にも利用することができる。
そして、精製されたRecAタンパク質が所望の改変が生じている改変部位を有する本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質であるか否かの確認は、公知のアミノ酸分析法によって行うことができる。例えば、エドマン分解法に基づく自動アミノ酸決定法が利用できる。さらに、相同組み換え活性を公知のD-Loop形成アッセイ等により測定し改変部位を有しない野生型耐熱性RecAタンパク質と比較して、活性が向上しているか否かを確認することによって行うことができる。また、PCRに供して改変部位を有しない野生型耐熱性RecAタンパク質と比較して、鋳型核酸に対する特異性が向上しているか否かを確認することによって行うことができる。確認方法としては、例えば、本発明の実施例2〜7に示す方法によって行うことができる。
以上の通り、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は、核酸増幅反応系における標的核酸の増幅効率に寄与する能力が向上されている。そのため、核酸増幅反応系に適用した場合、標的核酸に特異的な、かつ、効率的な核酸増幅が可能となり、標的核酸に関連のない非特異的増幅を抑制でき、バックグラウンドノイズの影響を受けない核酸増幅が可能となる。また、DNAポリメラーゼ等の酵素活性をも向上させることができ、かかる作用と相俟って核酸増幅精度を向上させることができる。以上の通り、様々な産業分野、特には分子生物学の分野に幅広く利用可能である。
さらに、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は、相同組換えを促進することができ、遺伝子組換え実験に際して、効率的な遺伝子導入を実現することが可能となる。例えばトランスジェニック動物の作製にあたっての胚幹細胞への遺伝子導入に利用でき、遺伝子現象の解析等の分子生物学の分野に幅広く利用可能である。
本発明は更に、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質を用いた、鋳型核酸の核酸増幅方法をも提供する。本発明の核酸増幅方法は、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質を添加して核酸増幅反応を行うものである。
ここで、PCRに本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質を適用する場合にについて説明する。PCRは、耐熱性DNAポリメラーゼを用いて連鎖反応的にDNAを増幅する方法である。そしてPCRの原理は、プライマーおよび耐熱性DNAポリメラーゼの存在下で、3段階の温度変化をnサイクル繰り返すことにより増幅対象核酸(以下、標的核酸と略する場合がある。)を2n倍に増幅するものである。
詳細には、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質、標的核酸、耐熱性DNAポリメラーゼ、プライマー、dNTP、並びに適当な緩衝液を含んで調製されたPCR反応液を調製する。そして、熱変性、アニーリング、伸長反応からなる温度サイクルに供することにより行われる。また、dNTPとは別個にヌクレオチド5´−三リン酸(以下、「NTP」と称する。)を含んで調製してもよい。ここで、プライマー、dNTPは必要に応じて検出のため適当な標識物質により標識していても良い。このような標識物質は公知であるので当業者は適宜選択して使用できる。
増幅対象となる標的核酸は、その起源、長さ及び塩基配列等に対する制限なく、また、一本鎖、二本鎖を問わず、いかなる核酸であってもよい。具体的には、生物のゲノムDNAでもよく、或いは、該ゲノムDNAを物理的手段若しくは制限酵素消化により切断された断片であっても良い。更に、DNA断片をプラスミド、ファージ等に挿入したものに対しても好適に利用できる。さらに、核酸を含む可能性のある試料から調製、あるいは単離したものであってもよい。また、当該技術分野で常用されている核酸自動合成機等を使用して合成されたDNA断片、mRNAを鋳型にして合成したcDNA断片等の人工的産物等、いずれも標的核酸となり得る。
プライマーは、標的核酸の特定配列に対して相補的になるように設計されるものである。特には、増幅すべき標的配列のその両端に相補的な塩基配列を有するものであることが好ましい。もっとも単純な系ではプライマーが2つ要求されるが、マルチプレックスPCR(Multiplex PCR)等を行う場合は3つ以上でもよく、また、1のプライマーのみでの増幅反応にも好適に利用可能である。プライマーの設計は、ランダムプライマーを用いる場合を除いて、標的核酸の配列を予め調査し決定される。そして、標的核酸の塩基配列の調査には、GeneBank、EBI等のデータベースを好適に利用できる。
プライマーは、ホスホアミダイト法等に基づく化学合成法、既に標的となる核酸が取得されている場合にはその制限酵素断片等が利用可能である。化学合成法に基づきプライマーを調製する場合には、合成に先立って標的核酸の配列情報に基づいて設計される。プライマーは合成後、HPLC等の手段により精製される。また、化学合成を行う場合には市販の自動合成装置を利用することも可能である。ここで、相補的とは、プライマーと標的核酸とが塩基対合則に従って特異的に結合し安定な二重鎖構造を形成できることを意味する。したがって、完全な相補性のみならず、プライマーと標的核酸が互いに安定な二重鎖構造を形成し得るのに十分である限り、いくつかの核酸塩基のみが塩基対合則に沿って適合する部分的な相補性であっても許容される。その塩基数は、標的核酸を特異的に認識するために十分に長くなければならないが、長すぎると逆に非特異的反応を誘発するので好ましくない。したがって、適当な長さはGC含量等の標的核酸の配列情報、並びに、反応温度、反応液中の塩濃度等のハイブリダイゼーション反応条件など多くの因子に依存して決定される。好ましくは、20〜50塩基長である。
ここで、使用される耐熱性DNAポリメラーゼは、通常PCRにおいて使用できる耐熱性DNAポリメラーゼであれば、特に制限はない。例えば、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のTaqポリメラーゼ、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来のTthポリメラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus Stearothermophilus)由来のBstポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のVent ポリメラーゼ、サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)のKOD ポリメラーゼ、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来のPfuポリメラーゼ等の好熱菌由来のDNAポリメラーゼが挙げられる。
dNTPとしては、アデニン、チミン、グアニンおよびシトシンの各塩基に夫々対応する4種類のデオキシヌクレオチドが使用される。特には、dGTP、dATP、dTTP、dCTPの混合物が好ましく使用される。更に、PCRで合成され伸長される核酸分子中に、耐熱性DNAポリメラーゼによって取り込まれ得る限りにおいては、デオキシヌクレオチドの誘導体をも含み得る。そのような誘導体として、7−デアザ−dGTP、7−デアザ−dATP等が例示され、例えば、夫々dGTP、dATPに代えて、若しくは、双方を共在させて使用することができる。したがって、核酸合成に必要なアデニン、チミン、グアニンおよびシトシンの各塩基に対応する4種類が含まれる限り、いかなる誘導体の使用を排除するものではない。
緩衝液としては、一般的には、適当な緩衝成分およびマグネシウム塩等を含んで調製される。緩衝成分としては、トリス酢酸、トリス塩酸、リン酸ナトリウム並びにリン酸カルシウム等のリン酸塩が好適に使用できる。特にはトリス酢酸の使用が好ましい。緩衝成分の最終濃度は5mM〜100mMの範囲で調製される。また緩衝液のpHは好ましくはpH6.0〜9.5、特に好ましくはpH7.0〜8.0の範囲内で調製される。また、マグネシウム塩としては特に制限はないが、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム等を適宜使用できる。特には酢酸マグネシウムが好ましい。更に、必要に応じて、KCl等のカリウム塩、DMSO、グリセロール、ベタイン、ゼラチン、Triton等を添加することができる。また、市販のPCR用耐熱性DNAポリメラーゼに添付の緩衝液を用いることができる。緩衝液の組成は、使用するDNAポリメラーゼの種類等に応じて適宜変更することができる。特には、MgCl2、KCl等のイオン強度の影響、DMSO、グリセロール等のDNAの融解温度に影響を与える各種添加物並びにそれらの濃度を勘案して、適宜設定することができる。
そして、反応液は容量100μl以下、特には、10〜50μlの範囲で調製することが好ましい。各成分の濃度として、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は好ましくは反応溶液中に0.004〜0.02μg/μlの濃度で含まれるよう使用される。本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質以外の各成分の濃度は、PCRは公知であることから、当業者は適宜設定することができる。ただし、後で詳細に説明する実施例4〜6にて確認されたように、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の添加によりDNAポリメラーゼ並びにプライマーの使用量を節減できる。したがって、DNAポリメラーゼ並びにプライマーについて従来行われているPCRにおける使用量よりも低減させて構成してもよい。例えば、1/2〜1/4量に調製してもよい。例えば、標的核酸は、好ましくは100μl当り10pg〜1μgの濃度で、プライマーDNAは好ましくは、最終濃度0.01〜10μM、特には0.1〜1μMの濃度に調製される。更に、耐熱性DNAポリメラーゼは、好ましくは100μlあたり0.1〜50unit、特には1〜5unitの範囲の濃度で使用する。そして、dNTPは、好ましくは最終濃度0.1mM〜1Mに調製する。また、マグネシウム塩は最終濃度で0.1〜50mM、特には、1〜5mMの範囲に調製することが好ましい。
PCRは、以下の工程に従って実行され、これらの工程は本発明の改変型耐熱性RecAの存在下で行なわれる。
(1)鋳型核酸の熱変性
(2)プライマーのアニーリング
(3)耐熱性ポリメラーゼによる伸長反応
上記(1)〜(3)からなる三段階の温度変化を1サイクルとする反応を、適切なサイクルを繰り返すことによって、プライマーが起点となって標的核酸を鋳型として、相補性を有するもう一本の核酸鎖の合成が開始される。その結果、nサイクルの反応で標的核酸は2n倍に増幅される。サーモサイクル数は、鋳型となる標的核酸の種類、量およびその純度等に応じて決定されるが、非特異的増幅を抑制し効率的な核酸増幅の観点から20〜40サイクル、特には、32〜36サイクルで行うことが好ましい。
以下に各工程について詳細に説明する。
(1)鋳型核酸の熱変性
二本鎖核酸を加熱により、変性させ一本鎖に解離させる。好ましくは、92〜98℃で10〜60秒行われる。また、長いDNA領域を増幅する場合には、鋳型DNAの分解を防止するため、一番初めの熱変性のみを低温度(例えば、92℃程度)に設定することができる。
(2)プライマーのアニーリング
温度を下げることにより上記(1)において熱変性され一本鎖となった鋳型核酸とプライマーとのハイブリッドを形成する。アニーリングは、好ましくは30〜60秒間行われる。また、アニーリング温度はプライマーに用いるオリゴヌクレオチドのTmを推定し、このTmをアニーリング温度として設定することが好ましい。アニーリング温度が高いとプライマーの鋳型特異的な結合能が向上するが、アニーリング温度が高すぎるとプライマーが鋳型核酸に結合しなくなることが知られている。通常は、50〜70℃で行われるが、実施例7で確認したように、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の添加により高いアニーリング温度の適用が可能である。例えば、アニーリング温度を5℃高く設定したPCR条件の適用が可能である。したがって、更に特異的な核酸増幅が可能となる。
(3)耐熱性ポリメラーゼによる伸長反応
耐熱性ポリメラーゼによりプライマーからの核酸鎖の伸長反応が3´末端において行われる。伸長反応温度は、耐熱性ポリメラーゼの種類に応じて、適宜設定されるものであるが、65〜75℃で行うことが好ましい。また、伸長時間は、標的配列が1kb以下のときは1分程度で十分であり、それより長い場合には、1kbにつき1分の割合で長くすることが好ましい。
以上、本発明の核酸増幅方法として、一般的なPCRにつき説明したが、様々なPCRの変法にも本発明の核酸増幅方法は適用できる。例えば、アダプター付加PCR、アレル特異的増幅法(MASA法)、非対称PCR、逆PCR(IPCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、一本鎖DNA高次構造多型PCR(PCR-SSCP法)、アービトラリリーポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、RACE、マルチプレックスPCR(multiplex PCR)等が挙げられる。しかしながら、これらに限定するものではなく、あらゆるPCRの変法に利用可能である。
以上のように構成する事により、発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の添加下で、核酸増幅反応を行うことにより、標的核酸に特異的な、かつ、効率的な核酸増幅が可能となる。そして、標的核酸に関連のない非特異的増幅を抑制でき、バックグラウンドノイズの影響を受けない核酸増幅が可能となる。つまり、鋳型となる標的核酸へのプライマーの配列特異性を向上した状態を維持できる。その結果、プライマーが標的配列以外にアニールする、あるいはプライマー同士がアニールする等のミスプライミングに起因する非特異的な増幅を抑制できる。これにより精度の高い核酸増幅が可能となる。また、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は、核酸増幅反応系における標的核酸の増幅効率に寄与する能力が向上に寄与し、かつDNAポリメラーゼ等の酵素活性を向上できる。そのため、本発明の核酸増幅方法によれば、耐熱性DNAポリメラーゼの使用量を節減でき、安価な核酸増幅方法をも提供できる。さらに、核酸増幅反応におけるアニーリング温度を高く設定することが可能となり、これにより更に標的核酸に特異的な核酸増幅が可能となる。そして、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は耐熱性酵素であることから、上記効果を持続して発揮することができる。その結果、加熱工程を含む核酸増幅反応系の全サイクルにおいて高精度の核酸増幅を達成できる。
また、本発明はPCRにより核酸を増幅させるための核酸増幅用キットを提供する。本発明の核酸増幅用キットは、DNAポリメラーゼ、改変型耐熱性RecAタンパク質を含んで構成される。更に、適当な緩衝液、マグネシウム塩、dNTP等のPCRに必要な成分を適宜含んで構成してもよい。また、所望の核酸をもって病原体等を検出するためのキットのような場合には、所望の核酸増幅に特異的な任意のプライマー等を含ませてもよい。このようにPCR増幅に必要な成分をキットして構成することにより、簡便且つ迅速なPCR増幅が可能となる
本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質、該タンパク質を使用した核酸増幅方法およびキットは、様々な用途に利用可能である。例えば、医療分野、生物化学分野、環境分野、食品分野等の多岐にわたる用途に利用可能である。例えば、遺伝子型分析のために、少量の試料から大量のDNAを調製するに際して、或いは、DNAシークエンシングのためのDNAの調製に際して利用可能である。さらに、動物或いは植物細胞、微生物等から抽出した少量の試料からDNAチップ固定用DNAを調製する等、種々の用途に適用できる。
具体的には、医療分野での利用として、一塩基多型性の検出をはじめとする遺伝子診断、SARS、インフルエンザ等のウイルスや細菌等の病原体の検出等が例示される。特に、一塩基多型の検出方法に本発明は好適に適用できる。本発明により、プライマーの標的核酸以外の核酸への結合並びにプライマー同士の結合等の非特異的な結合を抑制することができ、効果的にプライマーのミスプライミングを抑制できる。したがって、所望の一塩基多型を有する核酸に相補的なプライマーを用いることにより、かかる一塩基多型を有する核酸が効率的に増幅できる。その一方で、かかる一塩基多型を有しない核酸は増幅されないか、または増幅が抑制されない。その結果、かかる一塩基多型を有する核酸を特異的に増幅することが可能となる。更に、その効果は、本発明によって達成される高いアニーリング温度によって増強され、一塩基多型を感度良く、かつ、効率的に検出することができる。また、生物化学分野での利用として、個人の同定、生物種の同定が挙げられる。
そして、環境分野における利用においては、環境中における細菌、ウイルス等の病原体検出等の環境測定、新規有用微生物の探索等が例示される。さらに、食品分野における利用としては、遺伝子組み換え作物含有の判定、偽ブランド食物の検定等が例示される。しかしながら、これに限定されるものではない。核酸増幅技術が適用可能な用途であれば、制限されることなく本発明の方法を適用できる。
(別実施の形態)
1.本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は、DNAライブラリーからの標的cDNAクローンの濃縮又は単離に適用することができる。詳細には、濃縮又は単離を所望する標的cDNAの一部の配列をプライマーとして使用し、DNAライブラリーを鋳型として増幅反応を行う際に、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質を適用できる。ここで、増幅反応に際しては、PCR他、公知の核酸増幅反応系等を利用することが可能である。これにより、標的cDNAと関連のない非特異的な増幅を抑制でき、標的cDNAのみを特異的に増幅可能となる。したがって、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の、DNAライブラリーからの標的DNAクローンのクローニング系への適用により、所望の標的cDNAクローンを特異的、かつ、効率的に濃縮、単離することが可能となる。特異的かつ効率的なcDNAクローニングは、遺伝子発現、発生、分化等の解析、並びに有用物質の産生の分野において大いに貢献し得る。
ここで、DNAライブラリーとしては、濃縮若しくは単離を所望する標的のDNA領域を含む、又は、含み得ることが期待されるDNAライブラリーが使用される。そして、DNAライブラリーは、ゲノムライブラリー、cDNAライブラリーのいずれでもよいが、特にはcDNAライブラリーが好ましい。なお、本明細書において、ゲノムライブラリーとは、特定の単一生物種の全ゲノムDNAを無作為にベクターに組み込んだクローン化されたDNAの集合体を意味する概念として使用した。一方、cDNAライブラリーとは、特定の組織、細胞、生物由来のmRNAを逆転写反応によってcDNA化し、ベクターに組み込んで作成したcDNA断片の集合体を意味する概念として使用した。
プライマーは、通常、標的核酸の特定配列に対して相補的になるように設計されるものである。特には、増幅すべき標的配列のその両端に相補的な塩基配列を有するものであることが好ましく、濃縮又は単離を所望する標的cDNAの一部の配列が好適に利用できる。なお、プライマーの設計は公知であり、標的となるcDNAの塩基配列に基づいて設計され、化学的合成等の公知の技術により調製することができる。
2.本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質は、RNAからDNAの逆転写反応に適用することができる。詳細には、逆転写酵素の存在下、ランダムへキサマープライマー、オリゴdTプライマー、標的遺伝子特異的プライマーを用いて、逆転写反応によりRNAからのcDNAの合成反応を行う際に本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質を適用することができる。更には、合成されたcDNAを鋳型として増幅反応を行う際にも適用することができる。ここで、増幅反応に際しては、PCRの他、公知の核酸増幅技術を利用することが可能である。これにより、標的RNAに関連のない非特異的なcDNAの合成を抑制でき、所望の標的RNAに対するcDNAの特異的な合成が可能となる。したがって、本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の逆転写反応系への適用により、所望の標的RNAに対するcDNAを特異的、かつ、効率的に合成することが可能となる。RNAからcDNAへの変換は遺伝子工学上不可欠な手法であることから、遺伝子発現検出とその定量、RNAの構造解析、cDNAクローニング等、その利用価値は高い。
ここで、RNAとしては、全RNAの他、mRNA、tRNA、rRNA等、特に制限はない。所望の遺伝子が発現若しくは発現していることが期待される細胞、組織から、公知の方法を用いて調製される。例えば、グアニジン/セシウムTFA法、塩化リチウム/尿素法、AGPC法等を利用できる。また、プライマーとして、適用される反応条件において鋳型RNAにアニールするものであれば特に制限はなく、上記したようにランダムへキサマープライマー、オリゴdTプライマー、標的遺伝子特異的プライマーを使用できる。ここで、標的遺伝子特異的プライマーとは、特定の鋳型RNAに相補的な塩基配列を有するものであり、好適には、一般的なPCR増幅系で使用されるプライマーの3´側が利用される。
以下に実施例を示し、さらに本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
下記の実施例においては、耐熱性RecAタンパク質としてサーマス・サーモフィラス由来のRecAタンパク質(以下、「TthRecAタンパク質」と称する場合がある)を例示するが、これに限定されるものではない。
(実施例1)改変型TthRecAタンパク質の調製
野生型TthRecAタンパク質のC末端の酸性アミノ酸残基が欠失した改変型TthRecAタンパク質を構築した。
(方法)
(1)遺伝子クローニング
野生型TthRecAタンパク質のC末端の13個の酸性アミノ酸残基を欠失した改変型TthRecAタンパク質(以下、「Hyper-TthRecAタンパク質」と称する。)を構築した。かかるHyper-TthRecAタンパク質の設計について図3に示す。まず、Hyper-TthRecAタンパク質をコードする遺伝子のクローニングを行った。まず、野生型TthRecAタンパク質の既知の配列情報(GenBank:ACCESSION U03058)に基づいて、以下の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを合成した。これは、野生型TthRecAタンパク質のC末端の13個の酸性アミノ酸残基を欠失させるために設計されたプライマーである。
プライマー1
5'−gctcatatggacgagagcaagcgcaa−3'
(配列認識番号5)
プライマー2
5'−cgcaagcttagcccgcggccaggacca−3'
(配列認識番号6)
(GenBank:ACCESSION U03058:
Thermus thermophilus RecA protein (recA) geneを参照。)
次いで、Thermus thermophilus HB8 genomic DNA(Takara-Bio社製)を鋳型として上記プライマー1、2を使用してPCRを行った。すなわち、PCR反応液(50 μl)は、鋳型DNAを50 ng、プライマー1、2を各0.6 μM(最終濃度)、DNAポリメラーゼを1.25 unit、dNTP混合液0.2 mM(最終濃度)を、1X PCR反応緩衝液(Takara-Bio社製)に混合することにより調製した。ここで、DNAポリメラーゼとしては、ExTaq-HS DNA polymerase(Takara-Bio社製)を使用した。PCR反応液を、98℃にて10秒、55℃にて30秒、72℃にて60秒の反応を1サイクルとした35サイクルの増幅反応後、72℃にて3分の1サイクルの最終反応に供した。
得られた増幅産物を精製した後、制限酵素Nde-IとHind-IIIで切断した。得られたDNA断片を、制限酵素Nde-IとHind-IIIで切断した発現ベクターpET22b(Novagen社製)に連結した。次いで、大腸菌BL21(DE3)pLysS(Takara-Bio社製)に形質転換してHyper-TthRecA発現クローンを得た。そして、目的の発現クローンが得られているか、配列決定を行い確認した。上記で得られた発現クローンを鋳型として、BigDye terminator(Applied Biosystems社製)を用いたサイクルシーケンス反応を行った。このとき、プライマーとして、T7 promoter配列、及びT7 terminator配列を用いた。そして、製造業者のプロトコルに従いシークエンサー(ABI 3130、Applied Biosystems社製)にて配列を決定した。その結果、目的とするHyper-TthRecAタンパク質をコードする遺伝子がクローニングされたことが確認された。
(2)タンパク質の発現および精製
上記で得たHyper-TthRecA発現クローンを、100μg/mlのアンピシリンを含むLB液体培地中で37℃にてOD600=0.6に達するまで培養した。さらに、1mMのIPTGを添加して4時間培養した。このとき、培養は大腸菌の一般的な培養方法に従って行なった。
培養後、図1に記載の方法に基づいてHyper-TthRecAタンパク質の精製を行った。集菌し凍結させた菌体50gを氷上にて200mlのTS buffer、リゾチーム(最終濃度 0.5mg/ml)、界面活性剤ポリオキシエチレンセチルエーテル(Brij58:最終濃度 0.4%)を添加した。続いて、超音波破砕処理により菌体を破砕して菌体破砕処理液を得た。超音波処理は1分間3〜5回、氷上にて行った。前記菌体破砕処理液に、EDTAを(最終濃度 5mM)、KCl(最終濃度 1mM)を、全量280mlとなるように添加した。次いで、60,000gにて60分間、4℃での遠心分離にて上清を収集し、65℃にて60分間熱処理を行った後、60,000gにて20分間の遠心分離にて上清を収集した。上清に硫酸アンモニウムを最終濃度0.8Mとなるように添加した後、200mlのTEM 0.8 AS bufferにて平衡化した疎水クロマトグラフィーカラム(Butyl Toyopearl:650M:東ソー社製)に供した。300mlのPEM 0.8 AS bufferで洗浄した後、200mlのPEM bufferで溶出させ全ピークを回収した。次に、回収した画分をPEM bufferを用いて透析を2回行った後、300mlのPEM bufferにて平衡化した陽イオン交換セルロースクロマトグラフィーカラム(CM52:Whatman社製)に供した。450mlのPEM 0.3 K bufferで洗浄した後、300mlのPEMK bufferで溶出させ全ピークを回収した。続いて、回収した画分をPEM bufferを用いて20時間透析した後、300mlのPEM bufferにて平衡化した陽イオン交換リン酸セルロースクロマトグラフィーカラム(P11:Whatman社製)に供した。450mlのPEM bufferで洗浄した後、300mlのPEMK bufferで溶出させ全ピークを回収した。そして、回収した画分をTEDG bufferを用いて20時間、4℃にて透析し、Hyper-TthRecAタンパク質を得た。次の実験に供するまで−20℃で保存した。
ここで使用した緩衝液の組成を以下の表に示す。
また、ここでは、詳細には示さないが、陽イオン交換セルロースクロマトグラフィーでの精製を省略した場合(図2)にも、収率は低下するもののHyper-TthRecAタンパク質を精製することができた。しかしながら、野生型TthRecAタンパク質の精製を開示する、Masui R他著、Biochemistry. 1998年10月20日、第37巻、第42号、第14788〜14797頁等に記載の方法では、本発明のタンパク質を精製することができなかった。
(実施例2)Hyper-TthRecAタンパク質の性質確認−1
実施例1で取得したHyper-TthRecAタンパク質が、PCRの反応精度に与える影響を、野生型TthRecAと比較検討した。具体的には、PCRにおける増幅産物量を比較することにより行った。
(方法)
PCR反応液(25 μl)は、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを25 ng、Hyper-TthRecAタンパク質[Storage buffer : 50 mM Tris-HCl (pH7.5)、1.0 mM EDTA、0.5 mM DTT、50% w/v Glycerol]を0.4μg、プライマーを各0.8 μM(最終濃度)、DNAポリメラーゼを2.0 unit、dNTP混合液0.2 mM(最終濃度)を、10 mM Tris-HCl Buffer (pH8.3)、50 mM KCl、1.5 mM MgCl2に混合することにより調製した。
本実施例においては、ヒトゲノムDNAとしてPromega社より購入した「Human Genomic DNA」を、DNAポリメラーゼとしてrTaq DNA polymerase(Takara-Bio社製)を使用した。
ここで、プライマーとしては、以下の4種類のプライマーセットを夫々使用してPCR反応液を調製した。
プライマーセットA
プライマー3
5'−acaatgggctcactcaccc−3' (配列認識番号7)
プライマー4
5'−ctaagaccaatggatagctg−3' (配列認識番号8)
プライマーセットB
プライマー5
5'−gctcagcatggtggtggcataa−3' (配列認識番号9)
プライマー6
5'−cctcataccttcccccccattt−3' (配列認識番号10)
プライマーセットC
プライマー7
5'−gactactctagcgactgtccatctc−3' (配列認識番号11)
プライマー8
5'−gacagccaccagatccaatc−3' (配列認識番号12)
プライマーセットD
プライマー9
5'−aacctcacaaccttggctga−3' (配列認識番号13)
プライマー10
5'−ttcacaacttaagatttggc−3' (配列認識番号14)
上記で調製した各PCR反応液を同一の条件下でPCRを行い、増幅産物を得た。PCRは、92℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて10秒、55℃にて30秒、68℃にて60秒の反応を1サイクルとした35サイクルの増幅反応後、68℃にて3分からなる1サイクルの最終反応によって行った。
増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を添加して撹拌し、半量を分取して1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、Hyper-TthRecA タンパク質に代えて、野生型TthRecAタンパク質[Storage buffer: 1.5 M KCl、50 mM Tris-HCl (pH7.5)、1.0 mM EDTA、0.5 mM DTT]を添加したものについても上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供した。野生型TthRecAタンパク質は、Masui R, Mikawa T, Kato R, Kuramitsu S.著、Characterization of the oligomeric states of RecA protein: monomeric RecA protein can form a nucleoprotein filament., Biochemistry. 1998年10月20日、第37巻、第42号、第14788〜14797頁の記載を参照して本発明の発明者が調製したものを使用した。
また、Hyper-TthRecA タンパク質、野生型TthRecAの何れをも添加せず、上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供し、これをコントロールとした。
(結果)
結果を図4に示す。
図4中、レーン1〜4は、コントロールであり、夫々、プライマーセットA、B、C、Dでの増幅結果を示す。
図4中、レーン5〜8は、野生型TthRecAタンパク質存在下での増幅結果を示し、夫々、プライマーセットA、B、C、Dでの結果を示す。
図4中、レーン9〜12は、Hyper-TthRecAタンパク質存在下での増幅結果を示し、夫々、プライマーセットA、B、C、Dでの結果を示す。
図4の結果より、Hyper-TthRecAの添加下でPCRを行った場合には、今回検討した全てプライマーセットにおいて増幅産物を確認した(レーン9〜12)。一方、野生型TthRecAの添加下でPCR増幅を行った場合、およびコントロールにおいては、プライマーセットBによっては、増幅産物は確認できなかった(レーン2、及び6)。以上の結果から、Hyper-TthRecAの添加により鋳型核酸の増幅効率が向上する、つまりPCRの反応精度が向上することが判明した。
(実施例3)Hyper-TthRecAタンパク質の性質確認−2
実施例1で取得したHyper-TthRecAタンパク質の相同組換え活性を、D-Loop形成反応により野生型TthRecAタンパク質と比較検討した。
(方法)
二本鎖標的DNAとしてpBR322 DNA(Takara-Bio社製)と、その部分配列を有する150-merのオリゴヌクレオチド(5'_tgttgtgcaaaaaagcggttagctccttcggtcctccgatcgttgtcagaagtaagttggccgcagtgttatcactcatggttatggcagcactgcataattctcttactgtcatgccatccgtaagatgcttttctgtgactggtgagt?3':配列認識番号15)を準備した。200ngの標的DNA、各1pmolの標識オリゴヌクレオチド1と標識オリゴヌクレオチド2、3.0 μgのHyper-TthRecAタンパク質、4.8 mMのATP-γSとを、30 mMの酢酸トリス(pH7.2)、20 mMの酢酸マグネシウム中で、37℃で0〜90分間保温した。反応後に、0.5 % (W/Vol)のSDS、及び0.7 mg/mlのプロティナーゼKを加え、37℃で30分間保温することにより、除タンパク処理を行った。その半量を1%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色しDNAのバンドを可視化し、D-Loopの形成を確認した。
そして、野生型TthRecAタンパク質についても上記と同様の手順でD-Loopの形成を確認した。
また、高熱菌由来でない大腸菌由来のRecAタンパク質(ロシュ・ダイアグノスティックス社から購入)についても上記と同様に活性の測定を行い、コントロールとした。
(結果)
結果を図5に示す。矢印によりD-Loop生成物のバンドを示す。
図5中、レーン1〜7は、コントロールの結果を示し、高度好熱菌由来でないRecAタンパク質の相同組換え活性を、夫々、0、5、10、15、30、60、90分間のD-Loop形成反応により確認したものである。
図5中、レーン8〜14は、野生型TthRecAタンパク質の相同組換え活性を、夫々、0、5、10、15、30、60、90分間のD-Loop形成反応により確認したものである。
図5中、レーン15〜21は、Hyper-TthRecAタンパク質の相同組換え活性を、夫々、0、5、10、15、30、60、90分間のD-Loop形成反応により確認したものである。
図5の結果より、Hyper-TthRecAタンパク質が、野生型TthRecAタンパク質、およびコントロールと比較してより多くのD-Loop形成が認められた(レーン15〜21と、レーン1〜14の比較)。以上の結果から、Hyper-TthRecAタンパク質は、野生型TthRecAタンパク質より高い相同組換え活性を有することが判明した。
(実施例4)Hyper-TthRecAタンパク質の性質確認−3
実施例1で取得したHyper-TthRecAタンパク質のPCRにおけるDNAポリメラーゼへの影響を、野生型TthRecAタンパク質と比較検討した。本実施例においては、Thermus aquaticus由来のDNAポリメラーゼについて検討した。
(方法)
2.0、1.0、0.5、0.25、0.13unitの各濃度のThermus aquaticus由来のDNAポリメラーゼであるrTaq DNA polymerase(Takara-Bio社製)にてPCRを行うことにより検討した。具体的には、PCR反応液(25 μl)を、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを25 ng、Hyper-TthRecAタンパク質を0.4 μg、プライマーを各0.8 μM(最終濃度)、2.0、1.0、0.5、0.25、0.13unitに調製したrTaq DNAポリメラーゼ(Takara-Bio社製)、dNTP混合液を0.2 mM(最終濃度)を、10 mM Tris-HCl Buffer (pH8.3), 50 mM KCl, 1.5 mM MgCl2に混合することにより調製した。ここで、ヒトゲノムDNAは実施例2で使用したものと同じヒトゲノムDNAを使用した。
ここで、プライマーとしては、実施例2、4で使用したプライマーセットA(プライマー3、4:配列認識番号7、8)を用いてPCR反応液を調製した。
プライマーセットA
プライマー3
5‘−acaatgggctcactcaccc−3' (配列認識番号7)
プライマー4
5'−ctaagaccaatggatagctg−3' (配列認識番号8)
上記で調製した各PCR反応液をPCRに供し、増幅産物を得た。PCRは、92℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて10秒、55℃にて30秒、68℃にて60秒の反応を1サイクルとした35サイクルの増幅反応後、68℃にて3分の1サイクルの最終反応によって行った。
増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を加えて撹拌し、その半量を分取し、1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、Hyper-TthRecAタンパク質に代えて、野生型TthRecAタンパク質を添加したものについても上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供した。
また、Hyper-TthRecAタンパク質、野生型TthRecAタンパク質の何れをも添加せず、上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供し、これをコントロールとした。
(結果)
結果を図6に示す。
図6中、レーン1〜5は、コントロールの結果を示し、夫々、rTaq DNA polymeraseを2.0、1.0、0.5、0.25、0.13 unitによりPCRを行った結果である。
図6中、レーン6〜10は、野生型TthRecAタンパク質添加下で、夫々、rTaq DNA polymeraseポリメラーゼ2.0、1.0、0.5、0.25、0.13 unitによりPCRを行った結果を示す。
図6中、レーン11〜15は、Hyper-TthRecAタンパク質添加下で、夫々、rTaq DNA polymeraseを2.0、1.0、0.5、0.25、0.13 unitによりPCRを行った結果を示す。
図6の結果より、Hyper-TthRecAタンパク質の添加下でPCRを行った場合、0.25 unitまでのrTaq DNA polymeraseにより増幅産物が確認できた(レーン11〜15)。一方、野生型TthRecAタンパク質の添加下でPCRを行った場合には、0.5 unitまでのrTaq DNA polymeraseにより増幅産物が確認できたが(レーン6〜8)、0.25、0.13 unitでは増幅産物を確認することができなかった(レーン9〜10)。また、コントロールにおいては、1.0 unitまでのrTaq DNA polymeraseにより増幅産物が確認できたが(レーン1〜2)、0.5 unit以下では増幅産物を確認することができなかった(レーン3〜4)。以上の結果から、Hyper-TthRecAタンパク質の添加によりPCRにおいて、従来よりも少量のrTaq DNA polymeraseによっても良好に反応が進むことが判明した。つまり、Hyper-TthRecAタンパク質は、rTaq DNA polymeraseの反応効率を向上させる機能を有することが判明した。
(実施例5)Hyper-TthRecAタンパク質の性質確認−4
実施例4に続いて、Hyper-TthRecAタンパク質のPCRにおけるDNAポリメラーゼへの影響を、野生型TthRecAタンパク質と比較検討した。本実施例においては、サーモコッカス・コダカラエンシス由来のDNAポリメラーゼについて検討した。
(方法)
PCRは、2.0、1.0、0.5、0.25、0.13unitの各濃度のサーモコッカス・コダカラエンシス由来のDNAポリメラーゼであるr KOD DNA polymerase(TOYOBO社製)にてPCRを行うことにより検討した。具体的には、PCR反応液(25 μl)を、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを25 ng、実施例1で取得したHyper-TthRecAタンパク質を0.4 μg、プライマーを各0.8 μM(最終濃度)、2.0、1.0、0.5、0.25、0.13unitに調製したrKOD DNAポリメラーゼ(TOYOBO社製)、dNTP混合液を0.2 mM(最終濃度)を、1×PCR反応緩衝液(TOYOBO社製)に混合することにより調製した。ここで、プライマーは実施例4で使用したプライマーセットA(プライマー3、4:配列認識番号7、8)を、ヒトゲノムDNAは実施例2、4で使用したものと同じヒトゲノムDNAを使用した。
上記で調製した各PCR反応液をPCRに供し、増幅産物を得た。PCRは、92℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて10秒、55℃にて30秒、68℃にて60秒の反応を1サイクルとした35サイクルの増幅反応後、68℃にて3分の1サイクルの最終反応によって行った。
増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を加えて撹拌し、その半量を分取し、1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、Hyper-TthRecA タンパク質に代えて、野生型TthRecAタンパク質を添加したものについても上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供した。
また、Hyper-TthRecA タンパク質、野生型TthRecAの何れをも添加せず、上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供し、これをコントロールとした。
(結果)
結果を図7に示す。
図7中、レーン1〜5は、コントロールの結果を示し、夫々、r KOD DNA polymeraseを2.0、1.0、0.5、0.25、0.13 unitによりPCRを行った結果である。
図7中、レーン6〜10は、野生型TthRecAタンパク質添加下で、夫々、r KOD DNA polymeraseを2.0、1.0、0.5、0.25、0.13 unitによりPCRを行った結果を示す。
図7中、レーン11〜15は、Hyper-TthRecAタンパク質添加下で、夫々、r KOD DNA polymeraseを2.0、1.0、0.5、0.25、0.13 unitによりPCRを行った結果を示す。
図7の結果より、Hyper-TthRecAタンパク質の添加下でPCRを行った場合、0.25 unitまでのr KOD DNA polymeraseにより増幅産物が確認できた(レーン11〜15)。一方、野生型TthRecAタンパク質の添加下でPCRを行った場合には、0.5 unitまでのr KOD DNA polymeraseにより増幅産物が確認できたが(レーン6〜8)、0.25、0.13 unitでは増幅産物を確認することができなかった(レーン9〜10)。また、コントロールにおいては、1.0 unitまでのr KOD DNA polymeraseにより増幅産物が確認できたが(レーン1〜2)、0.5 unit以下では増幅産物を確認することができなかった(レーン3〜5)。以上の結果から、Hyper-TthRecAタンパク質の添加によりPCRにおいて、従来よりも少量のr KOD DNA polymeraseによっても良好に反応が進むことが判明した。つまり、Hyper-TthRecAタンパク質は、r KOD DNA polymeraseの反応効率を向上させる機能を有することが判明した。実施例5との結果と共に、Hyper-TthRecAタンパク質は、DNAポリメラーゼの種類を問わず、その機能を向上させることができることが理解される。
(実施例6)Hyper-TthRecAタンパク質の性質確認−5
実施例4、5に続いて、Hyper-TthRecAタンパク質のPCRにおけるDNAポリメラーゼへの影響を、野生型TthRecAと比較検討した。本実施例においては、実施例5と同様、サーモコッカス・コダカラエンシス由来のDNAポリメラーゼについて検討を行い、特にプライマー濃度に関して検討した。
(方法)
1.28、0.64、0.32、0.16、0.08、0.04、0.02μMの各濃度のプライマーにより検討を行った。具体的には、PCR反応液(25 μl)を、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを25 ng、実施例1で取得したHyper-TthRecAタンパク質を0.4 μg、1.28、0.64、0.32、0.16、0.08、0.04、0.02μM(最終濃度)の各濃度に夫々調製したプライマー、r KOD DNA polymerase(TOYOBO社製)を2.0 unit、dNTP混合液を0.2 mM(最終濃度)を、1×PCR反応緩衝液(TOYOBO社製)に混合することにより調製した。ここで、ヒトゲノムDNAは実施例2、4〜5で使用したものと同じヒトゲノムDNAを使用した。
ここで、プライマーとしては、実施例2で使用したプライマーセットD(プライマー9、10:配列認識番号13、14)を用いてPCR反応液を調製した。
プライマーセットD
プライマー9
5'−aacctcacaaccttggctga−3' (配列認識番号13)
プライマー10
5'−ttcacaacttaagatttggc−3' (配列認識番号14)
上記で調製した各PCR反応液をPCRに供し、増幅産物を得た。PCRは、92℃にて30秒の熱変性の後、94℃にて10秒、55℃にて30秒、68℃にて60秒の反応を1サイクルとした35サイクルの増幅反応後、68℃にて3分からなる1サイクルの最終反応によって行った。
増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を加えて撹拌し、その半量を分取し、1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、Hyper-TthRecAタンパク質に代えて、野生型TthRecAタンパク質を添加したものについても上記と同様の手順でPCRを行なった後、電気泳動に供した。
(結果)
結果を図8に示す。
図8中、レーン1〜7は、野生型TthRecAタンパク質の添加下で、夫々、1.28、0.64、0.32、0.16、0.08、0.04、0.02μMの各濃度のプライマーによりPCRを行った結果を示す。
図8中、レーン8〜16は、Hyper-TthRecAタンパク質の添加下で、夫々、1.28、0.64、0.32、0.16、0.08、0.04、0.02μMの各濃度のプライマーにより行った結果を示す。
図8の結果より、Hyper-TthRecAタンパク質の添加下でPCRを行った場合、0.04μMまでのプライマーにより増幅産物が確認できた(レーン8〜13)。一方、野生型TthRecAタンパク質の添加下でPCRを行った場合には、0.08 μM までのプライマーにより増幅産物が確認できたが(レーン1〜5)、0.04、0.02 μMでは増幅産物を確認することができなかった(レーン6〜7)。以上の結果から、Hyper-TthRecAタンパク質の添加によりPCRにおいて、従来よりも少量のプライマーによっても良好にPCRが進行することが判明した。つまり、つまり、Hyper-TthRecAタンパク質は、DNAポリメラーゼの反応効率を向上させる機能を有することが判明した。かかる結果は、実施例4〜5の結果とも合致する。
(実施例7)Hyper-TthRecAタンパク質の性質確認−6
Hyper-TthRecAタンパク質のPCRにおけるDNAポリメラーゼのアニーリング温度への影響を、野生型TthRecAと比較検討した。
(方法)
PCR反応液(25 μl)は、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを25 ng、実施例1で取得したHyper-TthRecAタンパク質を0.4 μg、プライマーを各0.6 μM(最終濃度)、r KOD DNA Porymerase(TOYOBO社製)を2.0 unit、dNTP混合液0.2 mM(最終濃度)を、1×KOD-Plus-反応緩衝液(TOYOBO社製)に混合することにより調製した。ここで、ヒトゲノムDNAは実施例2、4〜6で使用したものと同じヒトゲノムDNAを使用した。
ここで、プライマーとしては、以下の5種類のプライマーセットを夫々使用してPCR反応液を調製した。
プライマーセットE
プライマー11
5'−taataaacttgttcccagat−3' (配列認識番号16)
プライマー12
5'−aggagaaagagcagtgggag−3' (配列認識番号17)
プライマーセットF
プライマー13
5'−gataagtggaactttagtgt−3' (配列認識番号18)
プライマー14
5'−cataagcattacactgcgca−3' (配列認識番号19)
プライマーセットG
プライマー15
5'−atacctaaggctctactgca−3' (配列認識番号20)
プライマー16
5'−aggcaatggcggcacccatc−3' (配列認識番号21)
プライマーセットH
プライマー17
5'−atttctggcctccaacgtta−3' (配列認識番号22)
プライマー18
5'−ccagaaatgcaggcaattgt−3' (配列認識番号23)
プライマーセットI
プライマー19
5'−tgagccccatcctgaattcc−3' (配列認識番号24)
プライマー20
5'−cagaatggttgtgtagcgca−3' (配列認識番号25)
上記で調製した各PCR反応液につき、以下の2つの条件でのPCRに供することで、夫々における増幅産物を得た。反応条件Iはアニーリング温度が58℃であり、反応条件IIは
アニーリング温度が63℃である点で相違する。
反応条件I
(92℃にて30秒)×1サイクル
(94℃にて10秒−58℃にて30秒−68℃にて60秒)×35サイクル
(68℃にて3分)×1サイクル
反応条件II
(92℃にて30秒)×1サイクル
(94℃にて10秒−63℃にて30秒−68℃にて60秒)×35サイクル
(68℃にて3分)×1サイクル
増幅後、各増幅反応液に電気泳動緩衝液を加えて撹拌し、その半量を分取し、1.2%アガロースゲル電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをエチジウムブロミドで染色し、DNAのバンドを可視化した。
そして、Hyper-TthRecAタンパク質に代えて、野生型TthRecAタンパク質を添加したものについても上記と同様のPCRを行なった後、電気泳動に供した。
(結果)
結果を図9に示す。
図9中、レーン1〜5は、野生型TthRecAタンパク質存在下でアニーリング温度58℃での結果を示し、夫々プライマーセットE、F、G、H、IにてPCRを行った結果である。
図9中、レーン6〜10は、Hyper-TthRecAタンパク質存在下でアニーリング温度58℃での結果を示し、夫々プライマーセットE、F、G、H、IにてPCRを行った結果である。
図9中、レーン11〜15は、野生型TthRecAタンパク質存在下でアニーリング温度63℃での結果を示し、夫々プライマーセットE、F、G、H、IにてPCRを行った結果である。
図9中、レーン16〜20は、Hyper-TthRecAタンパク質存在下でアニーリング温度63℃での結果を示し、夫々プライマーセットE、F、G、H、IにてPCRを行った結果である。
図9の結果より、Hyper-TthRecAタンパク質の添加下でPCRを行った場合、高いアニーリング温度においても増幅産物が確認できた(レーン16〜20)。特に、58℃のアニーリング温度では増幅産物が確認できなかったプライマーセットEでのPCRにおいても、アニーリング温度を上げることにより増幅産物が確認できた点は注目される(レーン6と16の比較)。一方、野生型TthRecAタンパク質の添加下でPCRを行った場合には、アニーリング温度を63℃まで上げると増幅産物は確認できなかった。(レーン11〜15)。以上の結果から、Hyper-TthRecAタンパク質の添加により、従来よりも高いアニーリング温度でのPCRが可能となることが判明した。PCRにおいて、アニーリング温度が高いとプライマーの鋳型特異的な結合能が向上するが、アニーリング温度が高すぎるとプライマーが鋳型核酸に結合しなくなることが知られている。
したがって、本発明の改変型RecAタンパク質の添加により、アニーリング温度を高く設定できることから、プライマーのミスアニーニング反応が低減し、PCRの精度を向上できることが理解される。
医療分野、生物化学分野、環境分野、食品分野等において有用な核酸の増幅方法を提供する。
本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の調製方法(実施例1)を示す図 本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の調製方法を示す図 本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の設計の1例を示す図 本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の性質を検討した実施例2(反応特異性)の結果を示す図 本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の性質を検討した実施例3(相同組換え活性)の結果を示す図 本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の性質を検討した実施例4(DNAポリメラーゼの使用量)の結果を示す図 本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の性質を検討した実施例5(DNAポリメラーゼの使用量)の結果を示す図 本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の性質を検討した実施例6(プライマーの使用量)の結果を示す図 本発明の改変型耐熱性RecAタンパク質の性質を検討した実施例7(アニーリング温度)の結果を示す図

Claims (9)

  1. 改変型の耐熱性RecAタンパク質であって、
    配列認識番号4のアミノ酸配列のうち、配列認識番号4の328番目〜340番目の少なくとも1つのアミノ酸が欠失又は他のアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含み、
    ここで、ポリメラ−ゼ連鎖反応(PCR)DNA増幅条件下において、配列認識番号4の野生型の耐熱性RecAタンパク質に比べて、鋳型核酸に対するヌクレオチドのミスアニーリングを低減させる機能を有する、改変型の耐熱性RecAタンパク質。
  2. 配列認識番号4の328番目〜340番目のアミノ酸が欠失されている請求項1に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質。
  3. 配列認識番号4の328番目〜340番目の1の酸性アミノ酸が置換、又は欠失されている請求項1に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質。
  4. 配列認識番号2のポリペプチドからなる請求項に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質をコードする核酸分子。
  6. 配列認識番号1の塩基配列を含む請求項に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質をコードする核酸分子。
  7. 請求項5又は6に記載の核酸分子を導入した形質転換体を培養し、得られた培養物からの抽出液を熱処理に付した後、疎水性クロマトグラフィー、陽イオン交換セルロースクロマトグラフィー、陽イオン交換リン酸セルロースクロマトグラフィーにて処理してRecA活性を有するタンパク質を回収する改変型の耐熱性RecAタンパク質の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質を添加してポリメラ−ゼ連鎖反応(PCR)DNA増幅反応を行う核酸増幅方法。
  9. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の改変型の耐熱性RecAタンパク質と、耐熱性DNAポリメラ−ゼとを含む、核酸増幅を増幅するための核酸増幅キット。
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