JP5515373B2 - 改良された耐熱性dnaポリメラーゼ - Google Patents

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Description

本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における増幅効率の向上した耐熱性DNAポリメラーゼ及びその製法に関する。更には、該耐熱性DNAポリメラーゼを用いた核酸の増幅方法、並びに該耐熱性DNAポリメラーゼを含有する試薬に関する。
従来から、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の核酸を増幅する技術に用いる耐熱性DNAポリメラーゼに関する研究が多くなされている。
PCR反応に用いられる耐熱性DNAポリメラーゼは、主としてサーマス・サーモフィラス(Thermusthermophilus) 由来のDNAポリメラーゼ(Tthポリメラ−ゼ) やサーマス・アクアチカス(Thermus aquaticus) 由来のDNAポリメラ−ゼ(Taqポリメラーゼ)などが用いられてきた。しかしながら、これらの耐熱性DNAポリメラ−ゼは、核酸の取り込みの際の正確性に欠ける、増幅効率が低い、などの問題がある。
また、超好熱始原菌由来のDNAポリメラーゼ、たとえばパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus) 由来の耐熱性DNAポリメラーゼ(Pfuポリメラーゼ、特許文献1、特許文献2参照)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来の耐熱性DNAポリメラ−ゼ(Tliポリメラーゼ、特許文献3参照)、サーモコッカス (Thermococcus)sp.KOD1由来の耐熱性DNAポリメラーゼ(KOD DNAポリメラーゼ、特許文献4参照)なども知られている。
WO92/09689 特開平5−328969 特開平6−7160 特開平7−298879 特開平10−42871 特開2005−65540
Journal of Biological Chemistry, vol.268, 1965−1975(1993) J. Biol. Chem., 264(11), 6447−6458(1989) Nucleic Acid Res., 21 (2), 259−265(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 5577−5581(1992) Nature, 324 (6093), 13−19(1986) Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 91, 2216−2220(1994) Ann.Rev.Biochem.,63, 777−822(1994)
しかしながら、従来のα型DNAポリメラーゼを用いたPCR増幅においては、その増幅効率が十分でないなどの問題が存在している。また、これらα型DNAポリメラーゼには、PCRの反応時間、酵素量及びプライマー濃度等の至適条件の幅が狭いものが多い。
α型DNAポリメラーゼにおけるPCR増幅における上記問題点の原因として、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性の強さが関与していることが考えられる。すなわち、PCR時にプライマーなどがその3’−5’エキソヌクレアーゼ活性によって削られることにより、PCRにおける増幅効率が低下すると考えられている。また、α型DNAポリメラーゼは単一タンパク質内に3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を示す領域と、DNAポリメラーゼ活性を示す領域が存在するため、両活性はお互いに相互作用しており、それぞれの領域の核酸への親和性などの違いなどもPCR増幅に影響を及ぼしていると考えられる。しかしながら、エキソヌクレアーゼ活性を欠失又は1万分の1以下に低減させることにより、α型DNAポリメラーゼの特徴であるDNA複製時の正確性も同時に失われるという問題が存在した。
また、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性をもつDNAポリメラーゼのアミノ酸配列中には、高度に保存されたアミノ酸領域(EXO I,EXO II,EXO III)が存在し、そのうち、エキソI(EXOI)領域にはXDXEXモチーフと呼ばれる領域が存在する。
このモチーフの中で、D(アスパラギン酸)とE(グルタミン酸)を中性アミノ酸であるA(アラニン)に置換することによって、エキソヌクレアーゼ活性を欠失または1万分の1以下に低減させることが報告されており、DとEはエキソヌクレアーゼ活性に必須であることが知られている。(Kongら(1993)、Journal of Biological Chemistry, vol.268, 1965−1975)(非特許文献1)
特開平10−42871号公報(特許文献5)では、α型DNAポリメラーゼの1種であるKOD DNAポリメラーゼにおけるXDXEXモチーフのXで示されるアミノ酸を任意のアミノ酸に置換することにより、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を段階的に減衰させる試みが記載されている。しかしながら、この方法によっても、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性が低下するにつれてPCR効率の上昇と増幅における正確性(fidelity)の低下が同時に観察される。
本発明者らは本課題を解決するためKOD DNAポリメラーゼの種々の変異体を作製し鋭意検討を重ねた結果、ポリメラーゼドメイン(Pol領域)に位置するFingerモチーフ内 ループ領域に存在するアミノ酸配列のうち、少なくとも1つのアミノ酸を他の種々のアミノ酸に置換することにより、正確性が損なわれない程度に3’−5’エキソヌクレアーゼ活性の低下した、様々な強さのPCR効率を示す耐熱性DNAポリメラーゼの取得が可能であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)本願発明は、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する耐熱性DNAポリメラーゼのアミノ酸配列のうち、ポリメラーゼドメイン(Pol領域)に位置するFingerモチーフ内のループ領域のアミノ酸配列のうち、少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に置換した酵素であることを特徴とする、改変型耐熱性DNAポリメラーゼである。
耐熱性DNAポリメラーゼとしては、サーモコッカス(Thermococcus)属由来のものが例示でき、さらに、サーモコッカス sp.KOD1由来のDNAポリメラーゼが例示できる。
(2)本願発明は、また、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる、(1)に記載の改変型耐熱性DNAポリメラーゼである。
このような改変型耐熱性DNAポリメラーゼとして、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列のうち、第470番目のスレオニン(Thr)をシステイン(Cys)、フェニルアラニン(Phe)およびトリプトファン(Trp)のいずれかのアミノ酸に置換したものが例示できる。
さらに、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列のうち、第470番目のスレオニン(Thr)をシステイン(Cys)に置換したもの、第470番目のスレオニン(Thr)をフェニルアラニン(Phe)に置換したもの、第470番目のスレオニン(Thr)をトリプトファン(Trp)に置換したもの、第471番のイソロイシン(IIe)をセリン(Ser)またはスレオニン(Thr)のいずれかのアミノ酸に置換したもの、第471番のイソロイシン(IIe)をセリン(Ser)に置換したもの、または、第471番のイソロイシン(IIe)をスレオニン(Thr)に置換したものなどが例示できる。
(3)本願発明は、また、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する耐熱性DNAポリメラーゼのアミノ酸配列のうち、ポリメラーゼドメイン(Pol領域)に位置するFingerモチーフ内のループ領域のアミノ酸配列のうち、少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に置換した酵素であることを特徴とする、改変型耐熱性DNAポリメラーゼをコードする遺伝子である。
このような遺伝子としては、(1)または(2)に記載の、耐熱性DNAポリメラーゼをコードする遺伝子が例示できる。
さらには、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、第470番目のスレオニンおよび/または第471番のイソロイシンを他のアミノ酸に置換した酵素であることを特徴とする、改変型耐熱性DNAポリメラーゼをコードする遺伝子が例示できる。
(4)本願発明は、また、(3)に記載の遺伝子をベクターに挿入した遺伝子組換えベクターである。このような遺伝子組換えベクターとしては、pBluescript由来のものが例示できる。
(5)本願発明は、また、(4)に記載の遺伝子組換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換した組換え宿主細胞である。このような宿主細胞としては、大腸菌E.coliが例示できる。
(6)本願発明は、また、(5)に記載の組換え宿主細胞を培養し、培養物から耐熱性DNAポリメラーゼを採取する耐熱性DNAポリメラーゼの製造法である。
(7)本願発明は、また、DNAを鋳型とし、プライマー、dNTPおよび(1)または(2)に記載の耐熱性DNAポリメラーゼを反応させて、プライマーを伸長して、DNAプライマー伸長物を合成することを特徴とする核酸増幅法である。
このような核酸増幅法においては、プライマーが2種のオリゴヌクレオチドであって、一方は他方のDNA伸長生成物に相補的である方法を用いることができる。また、加熱および冷却を繰り返す方法を用いることができる。
(8)本願発明は、また、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に相補的である2種のプライマー、dNTPおよび(1)または(2)に記載の耐熱性DNAポリメラーゼ、2価イオン、1価イオンおよび緩衝液を含む核酸増幅用試薬である。
このような核酸増幅用試薬として、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に相補的である2種のプライマー、dNTPおよび(1)または(2)に記載の耐熱性DNAポリメラーゼ、マグネシウムイオンおよびアンモニウムイオンまたは/およびカリウムイオン、BSAおよび非イオン界面活性剤および緩衝液を含む核酸増幅用試薬が例示できる。
また、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に互いに相補的である2種のプライマー、dNTP、(1)または(2)に記載の耐熱性DNAポリメラーゼ、マグネシウムイオン、アンモニウムイオン及びカリウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種、BSA、非イオン性界面活性剤、緩衝液、及び該耐熱性DNAポリメラーゼのポリメラーゼ活性及び3’−5’エキソヌクレアーゼ活性の少なくとも1つの活性を抑制する活性を有する抗体を含有する核酸増幅用試薬が例示できる。
(9)本願発明は、また、(1)または(2)に記載の耐熱性DNAポリメラーゼを1種以上混合されたことを特徴とするDNAポリメラーゼ組成物である。
(10)本願発明は、また、鋳型としてのDNA、変異導入プライマー、dNTP及び(1)または(2)に記載の耐熱性DNAポリメラーゼを反応させることにより、プライマーを伸長させてDNAプライマー伸長物を合成することを含む遺伝子変異導入方法である。
(11)本願発明は、また、変異導入プライマー、dNTP、及び(1)または(2)に記載の耐熱性DNAポリメラーゼを含んでなることを特徴とする遺伝子変異導入用試薬である。
上述したように、本発明により、DNA増幅効率が向上した耐熱性DNAポリメラーゼの作製が可能となった。この方法を用いることにより、従来の始原菌由来の耐熱性DNAポリメラーゼを様々な用途、すなわち長い領域の増幅や微量な鋳型からの増幅などに使用できるように、改変された耐熱性DNAポリメラーゼを創出することが可能とするものである。
各KOD DNAポリメラーゼ変異体のヒトゲノムDNAを鋳型としたp53遺伝子(4.0kb)のPCRによる増幅を示す図である。A:KOD−Plus− B:HE/TC/IS C:HE/ND/TC/ISM:マーカー 1:鋳型量10ng 2:2ng 3:0.4ng 4:80pg 5:16pg 各KOD DNAポリメラーゼ変異体のヒトゲノムDNAを鋳型としたβ−globin遺伝子(17.5kb)のPCRによる増幅を示す図である。M:マーカー 1:KOD FX 2: HE/RA 3:HE/TC/IS 4:HE/ND/TC/IS 各KOD DNAポリメラーゼ変異体のPCR増幅における変異率(Mutationfrequency)を示す図である。
以下の説明においてアミノ酸の置換を次のように表す。
例えば「H147E」は、147位のヒスチジンをグルタミン酸に置換した変異体を表す。複数箇所を置換した場合は「/」で区切ってそれぞれの置換を併記して示す。例えば「H147E/T470C/I471S」は、147位のヒスチジンをグルタミン酸に置換し、さらに470番目のスレオニンと471番目のイソロイシンを、それぞれシステインとセリンに置換した変異体を示す。
本発明においては、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する耐熱性DNAポリメラーゼのアミノ酸配列中、ポリメラーゼドメイン(Pol領域)に位置するFingerモチーフ内のループ領域に存在するアミノ酸配列のうち、少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に置換することにより、DNA増幅効率を向上させることができる。
実際、KOD DNAポリメラーゼ変異体H147E/T470C/I471S(470番目のスレオニンと471番目のイソロイシンを、それぞれシステインとセリンに置換)および変異体H147E/N210D/T470C/I471S(210番目のアスパラギン、470番目のスレオニンおよび471番目のイソロイシンを、それぞれアスパラギン酸、システインおよびセリンに置換)は改変型KOD DNAポリメラーゼ(H147E)に比べてDNAポリメラーゼ活性がそれぞれ116%、128%程度と上昇した(表1)。
また、本発明において、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する耐熱性DNAポリメラーゼのポリメラーゼドメイン(Pol領域)に位置するFingerモチーフ内 ループ領域に存在するスレオニンをシステインやフェニルアラニンなどの中性アミノ酸に置換すること、および/または該Finger内 ループ領域に存在するイソロイシンをセリンおよびスレオニンのヒドロキシル基をもつ中性アミノ酸に置換することによって、特に低いコピー数のDNAからのPCR増幅における効率を向上させることができる。
実際、KOD DNAポリメラーゼ変異体H147E/T470C/I471S(470番目のスレオニンと471番目のイソロイシンを、それぞれシステインとセリンに置換)および変異体H147E/N210D/T470C/I471S(210番目のアスパラギン、470番目のスレオニンおよび471番目のイソロイシンを、それぞれアスパラギン酸、システインおよびセリンに置換)については、PCR効率の上昇を認めることが可能であった(図1、図2)。これら変異体のうちH147E/T470C/I471Sにおいては、エキソヌクレアーゼ活性の顕著な低下は見られなかったことから(図3)、該Finger内 ループに存在する470番目のスレオニンおよび/または471番目のイソロイシンは、エキソヌクレアーゼ活性の強弱とは独立してPCR効率を左右する役割も担っていることを示唆している。
PCR効率(成功率)の向上とは、少ない鋳型(コピー数)から増幅できること(すなわち、DNA増幅効率の向上)、あるいは、長いターゲットを増幅できること(すなわち、鎖伸長性の向上)を意味する。これら両方が満たされることは、さらに好ましい。
本発明の一実施態様としては、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼのアミノ酸配列中、ポリメラーゼドメイン(Pol領域)に位置するFingerモチーフ内のループ領域のアミノ酸配列のうち、470番目のスレオニンおよび/または471番のイソロイシンを他のアミノ酸に置換した酵素であり、PCR増幅効率が改変された耐熱性DNAポリメラーゼに関する。
3’−5’エキソヌクレアーゼ活性をもつDNAポリメラーゼのアミノ酸配列中には、エキソヌクレアーゼ活性に寄与するエキソヌクレアーゼ領域(Exoドメイン)と、ポリメラーゼ活性に寄与するポリメラーゼ領域とが存在する。
さらに、ポリメラーゼ領域は2重鎖DNAの結合を提供すると考えられる大きな裂け目(cleft)を有する。この裂け目は、2組のヘリックスにより形成され、第1の組はfingerモチーフと呼ばれ、第2の組はthumbモチーフと呼ばれる。裂け目の底は逆平行βシートにより形成され、palmモチーフと呼ばれる。DNAポリメラーゼ構造の概説は、JoyceおよびSteitz,Ann.Rev.Biochem.63:777−822(1994)(非特許文献7)において見出され得る。
なかでも、2重鎖DNAの結合を提供するfingerモチーフは、O−へリックスおよびP−へリックスの2本から成り、ヘリックス同士は数アミノ酸残基のループでつながれている。このループ領域のアミノ酸配列のうち、470番目のスレオニンおよび/または471番のイソロイシンを他のアミノ酸に置換した酵素であり、PCR増幅効率が改変された耐熱性DNAポリメラーゼに関する。
特開2005−65540(特許文献6)には、KOD DNAポリメラーゼ変異体(H147E)の結晶のX線回折データの知見が記載されていて、Fingerモチーフ(ドメイン)、ループ領域(構造)などを含めた構造解析がなされている。
また、本発明の別な実施態様としては、下記性質を有する改変された耐熱性DNAポリメラーゼがある。
(1)熱安定性:pH8.8(25℃での測定値)にて95℃、6時間の処理で60%以上の残存活性を保持することができる
(2)至適温度:約65〜75℃
(3)分子量:88〜90KDa(計算値)であり、下記(4)のスレオニンおよび/またはイソロイシン以外において、糖鎖や欠失、挿入、又は1又は数個のアミノ酸の欠失、置換、挿入、付加があってもよい。
(4)アミノ酸配列:配列番号1に記載のポリメラーゼドメイン(Pol領域) に位置するFingerモチーフ内の ループ領域のアミノ酸配列のうち、470番目のスレオニンおよび/または471番のイソロイシンを他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を有する。
本発明の更に具体的な例としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列中、第470番目のスレオニン残基をシステイン、フェニルアラニンおよびトリプトファンのいずれかに置換した耐熱性DNAポリメラーゼを挙げることができる。また、配列番号1に記載のアミノ酸配列中、第471番目のイソロイシン残基をスレオニンおよびセリンのいずれかに置換した耐熱性DNAポリメラーゼを挙げることができる。
ここで、本願発明において、配列番号1に記載のアミノ酸配列とは、第470番目のスレオニン残基および/または第471番目のイソロイシン以外のアミノ酸のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつDNAポリメラーゼ活性を有するものも含むものである。好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有する範囲で、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、且つDNAポリメラーゼ活性を有するものも含むものが挙げられる。
本発明において、DNAポリメラーゼ活性とは鋳型DNAにアニールされたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの3’−ヒドロキシル基にデオキシヌクレオチド5’−トリホスフェートのα−ホスフェートを共有結合せしめることにより、デオキシリボ核酸にデオキシリボヌクレオチド5’−モノホスフェートを鋳型依存的に導入する反応を触媒する活性をいう。
[DNAポリメラーゼ活性測定法]
酵素活性が強い場合には、保存緩衝液(50mM Tris−HCl(pH8.0),50mM KCl,1mM ジチオスレイトール,0.1% Tween20,0.1% Nonidet P40,50% グリセリン)でサンプルを希釈して測定を行う。
(1)下記のA液25μl、B液5μl、C液5μl、滅菌水10μl、及び酵素溶液5μlをマイクロチューブに加えて75℃にて10分間反応する。
(2)その後氷冷し、E液50μl、D液100μlを加えて、攪拌後更に10分間氷冷する。
(3)この液をガラスフィルター(ワットマン製GF/Cフィルター)で濾過し、0.1N 塩酸およびエタノールで十分洗浄する。
(4)フィルターの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード製)で計測し、鋳型DNAのヌクレオチドの取り込みを測定する。
酵素活性の1単位はこの条件で30分当りの10nmolのヌクレオチドを酸不溶性画分(即ち、D液を添加したときに不溶化する画分)に取り込む酵素量とする。

A:40mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)16mM 塩化マグネシウム15mM ジチオスレイトール100μg/ml BSA(牛血清アルブミン)
B:1.5μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C:1.5mM dNTP(250cpm/pmol [3H]dTTP)
D:20% トリクロロ酢酸(2mMピロリン酸ナトリウム)
E:1mg/ml仔牛胸腺DNA
[DNAポリメラーゼの正確性]
また、本発明において、DNAポリメラーゼの正確性とはDNA複製時における塩基の取り込みの正確性をいう。本発明におけるDNAポリメラーゼの正確性の評価には、各変異型(改変型)KOD DNAポリメラーゼでターゲットを増幅後、TAクローンニングを行って大腸菌を形質転換し、ターゲットの塩基配列を解析して変異塩基の型と頻度を算出する。
[正確性(Fidelity)測定法]
49μlの反応液(1×KOD−Plus−buffer(東洋紡績製)、0.9mM MgSO4、0.2mM dNTP、50 ngヒトゲノムDNA(Roche社製)、10pmolの配列番号10及び11に記載のプライマー)に酵素(1U/μl)を1μl加えてPCRを実施する。ここでは、サーマルサイクラーはApplied Biosystem社 PCR system GeneAmp9700を用いて以下のように行う。すなわち、94℃、2分行った後、94℃、15秒→60℃、30秒→68℃、2.5分を27サイクル行う。また、同時に天然型KODポリメラーゼ(東洋紡製)についても増幅反応を実施する。
PCR終了後MagExtractorR −PCR & Gel Clean up−(東洋紡社製)でPCR産物の精製を行う。精製産物には、最終濃度が1×Taq Buffer、1.5mM MgCl2、0.2 mM dNTPsになるように各試薬を添加する。さらにTArget Clone −Plus−(東洋紡社製)にてTAクローニングを行い、エシェリシア・コリDH5α株のコンピテントセルを用いて形質転換する。自動核酸抽出装置でクローンから抽出したプラスミドを鋳型として、配列番号12及び13に記載のシーケンスプライマーを用いてターゲット領域約1 kbのシーケンス解析を実施する。配列データは、ソフトウエアSequecher ver4.5を使用しアラインメント解析を行い、変異塩基の位置とその数、変異型について集計し変異挿入率を算出する。
これらの改変された酵素を製造する方法としては、従来の公知の方法が使用できる。
例えば、野生型DNAポリメラーゼをコードする遺伝子に変異を導入して、タンパク質工学的手法により新たな機能を有する変異型(改変型)DNAポリメラーゼを製造する方法がある(J. Biol. Chem., 264(11), 6447−6458(1989))(非特許文献2)。
変異を導入するDNAポリメラーゼをコードする遺伝子は特に限定されないが、例えば、パイロコッカス・コダカラエンシスKOD1株由来の配列表・配列番号1に記載の遺伝子が挙げられる。
また同様に、パイロコッカス・フリオサス(Nucleic Acid Res., 21 (2), 259−265(1993))(非特許文献3)、サーモコッカス・リトラリス(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 5577−5581(1992))(非特許文献4)なども例示することができる。
野生型DNAポリメラーゼ遺伝子に変異を導入する方法は既知のいかなる方法を用いてもよい。例えば、野生型DNAポリメラーゼ遺伝子と変異原となる薬剤を接触させる方法や紫外線照射による方法などからタンパク質工学的手法、例えばPCRや部位特異的変異などの方法を用いることができる。
本発明で使用したQuickChange site−directed mutagenesisキット(ストラタジーン製)は、(1)目的とする遺伝子を挿入したプラスミドを変性させ、該プラスミドに変異プライマーをアニーリングさせ、続いてPfu DNAポリメラーゼを用いて伸長反応を行う、(2)(1)のサイクルを15回繰り返す、(3)例えば、制限酵素DpnIを用いて鋳型としたプラスミドのみを選択的に切断する、(4)新たに合成されたプラスミドにより大腸菌を形質転換し、目的とする変異の導入されたプラスミドを保有する形質転換体を取得することのできるキットである。
上記改変DNAポリメラーゼ遺伝子を必要に応じて発現ベクターに移し替え、宿主として例えば大腸菌を該発現ベクターを用いて形質転換した後、アンピシリン等の薬剤を含む寒天培地に塗布し、コロニーを形成させる。コロニーを栄養培地、例えばLB培地や2×YT培地に接種し、37℃で12〜20時間培養した後、菌体を破砕して粗酵素液を抽出する。ベクターとしては、pBluescript由来のものが好ましい。菌体を破砕する方法としては公知のいかなる手法を用いても良いが、例えば超音波処理、フレンチプレスやガラスビーズ破砕のような物理的破砕法やリゾチームのような溶菌酵素を用いることができる。 この粗酵素液を80℃、30分間熱処理し、宿主由来のポリメラーゼを失活させ、DNAポリメラーゼ活性を測定する。
上記方法により選抜された菌株から精製DNAポリメラーゼを取得する方法は、いかなる手法を用いても良いが、例えば下記のような方法がある。栄養培地に培養して得られた菌体を回収した後、酵素的または物理的破砕法により破砕抽出して粗酵素液を得る。得られた粗酵素抽出液から熱処理、例えば80℃、30分間処理し、その後硫安沈殿によりDNAポリメラーゼ画分を回収する。この粗酵素液をセファデックスG−25(アマシャムファルマシア・バイオテク製)を用いたゲル濾過等の方法により脱塩を行うことができる。この操作の後、ヘパリンセファロースカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品はSDS−PAGEによってほぼ単一バンドを示す程度に純化される。
また、得られた酵素を用いてPCR増幅を行うことにより、その増幅の有無もしくは強度からPCR効率の評価を行うことができる。本発明の改変されたDNAポリメラーゼは、遺伝子の増幅効率の点で優れており、PCRに利用できる。
また、本発明の核酸増幅ないし伸長方法は、本発明の改変された耐熱性DNAポリメラーゼを使用して、DNAを鋳型とし、少なくとも1種のプライマー、dNTP(即ち、4種類のデオキシリボヌクレオチド3リン酸)を反応させることによりプライマーを伸長して、DNAプライマー伸長物を合成する方法を含む。該方法は、1種のプライマーを用いて、核酸を伸長する方法を含む。
具体的には、プライマーエクステンション法、シークエンス法、従来の温度サイクルを行わない方法およびサイクルシーケンス法を含む。
また、本発明の方法は、2種以上のプライマーを用いてPCR法により核酸を増幅させる方法も含む。好ましくは、プライマーは2種のオリゴヌクレオチドであって、互いに一方は他方のDNA生成物に相補的であるプライマーであることが好ましい。また、加熱および冷却を繰り返すのが好ましい。
具体的には、PCR法に基づく遺伝子増幅方法は、標的核酸、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸、一対のプライマー及び本発明の耐熱性DNAポリメラーゼの存在下で、変性、アニーリング、伸長の3工程からなるサイクルを繰り返すことにより、上記一対のプライマーで挟まれる標的核酸の領域を指数関数的に増幅させる方法である(Nature, 324 (6093), 13−19(1986))(非特許文献5)。
すなわち、変性工程で試料の核酸を変性し、続くアニーリング工程において各プライマーと、それぞれに相補的な一本鎖標的核酸上の領域とをハイブリダイズさせ、続く伸長工程で、各プライマーを起点としてDNAポリメラーゼの働きにより鋳型となる各一本鎖標的核酸に相補的なDNA鎖を伸長させ、二本鎖DNAとする。この1サイクルにより、1本の二本鎖DNAが2本の二本鎖DNAに増幅される。従って、このサイクルをn回繰り返せば、理論上上記一対のプライマーで挟まれた試料DNAの領域は2n倍に増幅される。
本発明のDNAポリメラーゼは、その活性を維持するために、例えばマグネシウムイオンのような2価のイオン、及び例えばアンモニウムイオン及び/又はカリウムイオンのような1価のイオンを共存させることが好ましい。
また、PCR反応液には、緩衝液及びこれらのイオンを含むと共に、BSA、例えばTriton X−100のような非イオン性界面活性剤、及び緩衝液が存在してもよい。
緩衝剤としては、トリスやヘペスなどのグッドバッファーおよび、リン酸緩衝液などが用いられる。
本発明の耐熱性DNAポリメラーゼを用いたときのPCRの具体的一態様としては、反応緩衝液(120mM Tris−HCl(pH8.0), 10mM KCl, 6mM (NH4)2SO4, 0.1% TritonX−100, 10μg/ml BSA),プライマー各0.4pmol/μl, dNTPs 0.2mM, 鋳型DNA0.2ng/μl及び本発明のDNAポリメラーゼ0.05u/μlを含有する溶液を94℃;15秒、65℃;2秒、74℃;30秒の温度サイクルを25回程度行う。
本発明の核酸増幅用試薬は、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に互いに相補的である2種のプライマー、dNTP、及び上記のような本発明における耐熱性DNAポリメラーゼ、2価イオン、1価イオン、及び緩衝液を含み、さらに具体的には、一方のプライマーが他方のプライマーDNA伸長生成物に相補的である2種のプライマー、dNTP及び上記耐熱性DNAポリメラーゼ、マグネシウムイオン、アンモニウムイオン及び/又はカリウムイオン、BSA、上述のような非イオン界面活性剤及び緩衝液を含む。
本発明の核酸増幅用試薬の別な態様としては、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に互いに相補的である2種のプライマー、dNTP及び上述したような本発明における耐熱性DNAポリメラーゼ、2価イオン、1価イオン、緩衝液、及び必要に応じて耐熱性DNAポリメラーゼのポリメラーゼ活性及び/又は3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を抑制する活性を有する抗体を含む核酸増幅用試薬がある。
該抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体などが挙げられる。
本核酸増幅用試薬は、PCRの感度上昇、非特異増幅の軽減に特に有効である。
本発明の遺伝子変異導入用試薬は、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に互いに相補的である変異導入プライマー、dNTP、及び上述したような本発明における耐熱性DNAポリメラーゼを含む。
さらに上述したような2価イオン、1価イオン、緩衝液を含んでもよい。本発明における変異導入プライマーは、その長さが20〜150塩基程度であり、共にその配列のほぼ中央あたりに変異部分、即ち、鋳型のなるDNA配列と異なる部分(例えば、挿入、欠失、置換)を含み、互いに相補的である。
本発明の遺伝子増幅用試薬及び遺伝子変異用試薬において、緩衝液としては、トリスやヘペスなどのグッドバッファーおよび、リン酸緩衝液などが用いられるが、具体的には、10〜200mMの各種バッファー(pH7.5〜9.0(at 25℃))が例示できる。
また、マグネシウムイオンやマンガンイオンのような2価のイオンの濃度は、反応段階で0.5〜2mM、及び例えばアンモニウムイオン及び/又はカリウムイオンのような1価のイオンの濃度は、反応の段階で10〜100mM程度となるようなものがよい。
本発明のDNAポリメラーゼは、反応の段階で0.01〜0.1単位/μl程度となるようなものがよい。また、プライマーの濃度は、0.2〜2pmol/μl程度である。
また、本発明の実施態様としては、上述したような本発明における耐熱性DNAポリメラーゼを1種又は2種以上混合したことを特徴とするDNAポリメラーゼ組成物がある。
具体的には、上述のような本発明における耐熱性DNAポリメラーゼと別なDNAポリメラーゼ、例えば3’−5’エキソヌクレアーゼ活性の低いDNAポリメラーゼなどを混合せしめることによって、長鎖核酸を増幅する場合(例えばlongPCR)に有用な組成物を得ることができる。
実際、長鎖核酸を増幅する方法として、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠くTaqポリメラーゼと3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するPfuポリメラーゼまたはTiポリメラーゼまたはこれらの変異酵素を混合したDNAポリメラーゼ組成物を用いて、PCRを行う方法が報告されている(Barns, W.M.(1994) Proc.Natl. Acad. Sci. USA 91, 2216−2220)(非特許文献6)。
本発明においては、本発明のDNAポリメラーゼとTthポリメラーゼとの組み合わせや、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性の高いDNAポリメラーゼと本発明のDNAポリメラーゼ活性の高い本発明のDNAポリメラーゼとの見合わせが例示できる。本発明のDNAポリメラーゼ組成物に添加することができる他の成分は、該DNAポリメラーゼの活性を抑制する抗体などが例示できる。
以下に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
実施例1
KOD1株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子を含有するプラスミド、pKOD H147Eを回収した。KOD1株由来のDNAポリメラーゼ遺伝子は2325塩基からなり、770個のアミノ酸がコードされていた(配列番号1)。該プラスミドの作製はQuickChange site directed mutagenesis kit(ストラタジーン製)を用いた。方法は取扱い説明書に準じて行った。変異作製用プライマーとしては、配列番号2及び3に記載されるプライマーを使用した。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリJM109を形質転換し、エシェリシア・コリJM109株(pKOD H147E/T470C/I471S)を得た。
実施例2
得られた菌体の培養は以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mlのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)1Lを2L坂口フラスコ3本に分注した。この培地に予め100μg/mlのアンピシリンを含有する80mlのLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリJM109(pKOD H147E/T470C/I471S)(500ml坂口フラスコ使用)を接種し、35℃にて12時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、400mlの破砕緩衝液(10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、80mM KCl、5mM 2−メルカプトエタノール、1mM EDTA)に懸濁後、フレンチプレス処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に細胞破砕液を85℃にて30分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、ヘパリンセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1%ノニデットP40、50%グリセリン)に置換し、改変型耐熱性DNAポリメラーゼ(H147E/T470C/I471S)を得た。上記精製工程のDNAポリメラーゼ活性測定は以下の操作で行った。また、酵素活性が高い場合はサンプルを希釈して測定を行った。
(試薬)
A液:40mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)、16mM 塩化マグネシウム、15mM ジチオスレイトール100μg/ml BSA
B液: 1.5μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C液: 1.5mM dNTP(250cpm/pmol [3H]dTTP)
D液: 20% トリクロロ酢酸(2mMピロリン酸ナトリウム)
E液: 1mg/ml仔牛胸腺DNA
(方法)
A液25μl、B液5μl、C液5μl及び滅菌水10μlをマイクロチューブに加えて攪拌混合後、上記精製酵素希釈液5μlを加えて75℃で10分間反応する。その後冷却し、E液50μl、D液100μlを加えて、攪拌後更に10分間氷冷する。この液をガラスフィルター(ワットマン製GF/Cフィルター)で濾過し、0.1N塩酸及びエタノールで十分洗浄し、フィルターの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード製)を用いて計測し、鋳型DNAへのヌクレオチドの取り込みを測定した。酵素活性の1単位はこの条件下で30分当り10nmolのヌクレオチドを酸不溶性画分に取り込む酵素量とした。
実施例3
変異体(H147E/T470C/I471S)遺伝子の作製及び改変型耐熱性DNAポリメラーゼの精製実施例1と同様の方法にて、KOD DNAポリメラーゼの第210番目のアスパラギン(Asn)をアスパラギン酸(Asp)に置換した耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子を作製した(pKOD H147E/N210D/T470C/I471S)。変異プライマーとしては、配列番号4及び5に記載されるプライマーを使用した。更に、実施例2と同様の精製方法にて改変型耐熱性DNAポリメラーゼ(H147E/N210D/T470C/I471S)を得た。
実施例4
改変型DNAポリメラーゼを用いたPCR例(1)
野生型(WT)KOD DNAポリメラーゼ(KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績製))、並びに改変型耐熱性DNAポリメラーゼを用いてPCRを行った。PCRは49μlの反応液(1×KOD−Plus−buffer(東洋紡績製)、0.9mM MgSO4、0.2mM dNTP、10ngのヒトゲノムDNA(Roche社製)、10pmolの配列番号6及び7に記載のプライマー)に各酵素(1U/μl)を1μlを加えてPCRを実施した。サーマルサイクラーはApplied Biosystem社 PCR system GeneAmp9700を用いて、以下のように行った。すなわち、94℃、2分反応を行った後、94℃、20秒→60℃、30秒→68℃、4分を30サイクル行った。反応終了後10μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下約4.0kbの増幅DNA断片を確認した。図1にアガロースゲル電気泳動の写真を示した。この結果より、変異体H147E/T470C/I471S、H147E/N210D/T470C/I471Sを用いた場合、特に低いコピー数の鋳型DNA(16pg)からの増幅において、野生型のKOD DNAポリメラーゼを用いるよりも良好な増幅を示すことが証明された。
実施例5
改変型DNAポリメラーゼを用いたPCR例(2)
実施例1で良好な結果の得られた改変型耐熱性DNAポリメラーゼH147E/T470C/I471S、H147E/N210D/T470C/I471Sについて更にサイズの大きな遺伝子の増幅を試みた。49μlの反応液(1×KOD FX buffer(東洋紡績製)、0.2mM dNTP、200ngヒトゲノムDNA(Roche社製)、10pmolの配列番号8及び9に記載のプライマー)に各酵素(1U/μl)を1μl加えてPCRを実施した。サーマルサイクラーはApplied Biosystem社 PCR system GeneAmp9700を用いて以下のように行った。すなわち、94℃、2分反応後、98℃、10秒→74℃、24分(5サイクル)→98℃、10秒→72℃、24分(5サイクル)→98℃、10秒→70℃、24分(5サイクル)→98℃、10秒→68℃、24分(20サイクル)→68℃、7分のステップダウンで行った。反応終了後、10μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色して紫外線照射下約17.5kbの増幅断片を確認した。その結果、野生型のKOD DNAポリメラーゼを用いるよりも良好な増幅を確認することができた(図2)。
実施例6
改変型KOD DNAポリメラーゼの正確性の測定
野生型(WT)KOD DNAポリメラーゼ(KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績製))及び改変型耐熱性DNAポリメラーゼについて正確性を以下の方法にて測定した。49μlの反応液(1×KOD−Plus−buffer(東洋紡績製)、0.9mM MgSO4、0.2mM dNTP、50 ngヒトゲノムDNA(Roche社製)、10pmolの配列番号10及び11に記載のプライマー)に酵素(1U/μl)を1μl加えてPCRを実施した。ここでは、サーマルサイクラーはApplied Biosystem社 PCR system GeneAmp9700を用いて以下のように行った。すなわち、94℃、2分行った後、94℃、15秒→60℃、30秒→68℃、2.5分を27サイクル行った。また、同時に野生型KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績製)についても増幅反応を実施した。
PCR終了後MagExtractorR −PCR & Gel Clean up−(東洋紡績製)でPCR産物の精製を行った。精製産物には、最終濃度が1×Taq Buffer、1.5mM MgCl2、0.2 mM dNTPsになるように各試薬を添加した。さらにTArget Clone −Plus−(東洋紡績製)にてTAクローニングを行い、エシェリシア・コリDH5α株のコンピテントセルを用いて形質転換した。自動核酸抽出装置でクローンから抽出したプラスミドを鋳型として、配列番号12及び13に記載のシーケンスプライマーを用いてターゲット領域約1 kbのシーケンス解析を実施した。配列データは、ソフトウエアSequecher ver4.5を使用しアラインメント解析を行い、変異塩基の位置とその数、変異型について集計し変異挿入率を算出した。この変異率が低いほど、DNA複製時のDNAポリメラーゼの正確性が良いことを示している。変異挿入率は、KOD−Plus−(東洋紡績製)は10.3×10−5、H147E/T470C/I471Sは13.7×10−5であり、変異体H147E/T470C/I471SはKOD−Plus−に相当する高正確性を保持していた(図3)。
本発明により、DNA増幅効率が向上した耐熱性DNAポリメラーゼの作製が可能となった。この方法を用いることにより、従来の始原菌由来の耐熱性DNAポリメラーゼを様々な用途、すなわち長い領域の増幅や微量な鋳型からの増幅などに使用できるように、改変された耐熱性DNAポリメラーゼを創出することが可能となる。

Claims (10)

  1. 配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列において、以下の(1)または(2)の変異を有するアミノ酸配列からなる、改変型耐熱性DNAポリメラーゼ。
    (1)470番目のスレオニンをシステインに、および、471番目のイソロイシンをセリンに、それぞれ置換されている。
    (2)210番目のアスパラギンをアスパラギン酸に、470番目のスレオニンをシステインに、および、471番目のイソロイシンをセリンに、それぞれ置換されている。
  2. 請求項1に記載の耐熱性DNAポリメラーゼをコードする遺伝子
  3. 請求項2に記載の遺伝子をベクターに挿入した遺伝子組換えベクター。
  4. 請求項3に記載の遺伝子組み換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換した組換え宿主細胞。
  5. 請求項4に記載の組換え宿主細胞を培養し、培養物から耐熱性DNAポリメラーゼを採取することを特徴とする耐熱性DNAポリメラーゼの製造法。
  6. DNAを鋳型とし、プライマー、dNTPおよび請求項1に記載の耐熱性DNAポリメラーゼを反応させて、プライマーを伸長して、DNAプライマー伸長物を合成することを特徴とする核酸増幅法。
  7. 一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に相補的である2種のプライマー、dNTPおよび請求項1に記載の耐熱性DNAポリメラーゼ、2価イオン、1価イオンおよび緩衝液を含む核酸増幅用試薬。
  8. 請求項1に記載の耐熱性DNAポリメラーゼを1種以上混合されたことを特徴とするDNAポリメラーゼ組成物。
  9. 鋳型としてのDNA、変異導入プライマー、dNTP及び請求項1に記載の耐熱性DNAポリメラーゼを反応させることにより、プライマーを伸長させてDNAプライマー伸長物を合成することを含む遺伝子変異導入方法。
  10. 変異導入プライマー、dNTP、及び請求項1に記載の耐熱性DNAポリメラーゼを含んでなることを特徴とする遺伝子変異導入用試薬。
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