JP7107345B2 - Pcr方法 - Google Patents

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Description

本発明は、核酸増幅、特にPCR(Polymerase chain reaction)の分野に関する。さらに詳しくは、PCR反応時間を短縮させる方法に関する。
PCR法とは、(1)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの解離)、(2)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって、試料中の標的核酸を増幅する方法である。この方法により、数コピーといった極微量サンプルから標的核酸を何十万倍に増幅することができるため、研究用途のみならず、遺伝子診断、臨床診断といった法医学分野、あるいは、食品や環境中の微生物検査等においても、広く用いられている。
PCRは高い検出感度を持つものの、反応に熱サイクルを実施する必要があり、反応時間が長いことが問題となっている。最近では高速で温度変化を実施するサーマルサイクラーが販売され、より短時間で反応を終了させるための装置の検討が行われている。また、反応の面においても、高速サイクルに対応すべく、PCRの組成、方法の検討が行われている。
反応の面において、高速PCRにはPCRに用いるDNAポリメラーゼの性能が重要となる。我々は、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、Taq DNAポリメラーゼなどのファミリーAに属するポリメラーゼより高速PCRに向いていることを見出している(特許文献1)。またDNAポリメラーゼの補助因子、特にPCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen;増殖細胞核抗原)の添加によって、反応時間を短縮できることも報告されている(特許文献2)。
しかしながら、これらの検討が進められているに関わらず、極端な高速サイクルではDNAポリメラーゼがうまく作用せず、増幅不良が散見されていた。また診断用途では測定サンプルにPCRを阻害する物質が含まれている場合があり、このような阻害物質が含まれる条件では高速PCRができなかった。特に、診断用途では迅速な結果報告が要求されており、高速にかつ高効率にDNA合成する方法が強く求められていた。
特開2010-239880号公報 国際公開第2007/004654号パンフレット
PCRを用いたDNA合成において、反応時間を短縮させる方法、及び試薬組成を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意研究を行った結果、反応時間の短い高速PCRにおいて、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ及びPCNAを用い、さらにプライマー濃度を高くすることで、より効率的な核酸増幅が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
代表的な本発明は、以下の通りである。
項1.ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、Proliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA;増殖細胞核抗原)、および及び0.6μM以上の濃度でプライマーを含み、かつ、30サイクルから50サイクルを40分以内で実施するための組成であることを特徴とするPCR方法組成。
項2.30サイクルから50サイクルを20分以内で実施するための組成である項1に記載のPCR方法組成。
項3.30サイクルから50サイクルを12分以内で実施するための組成である項1又は2に記載のPCR方法組成。
項4.プライマーの濃度が0.8μM以上である項1から3のいずれかに記載のPCR組成方法。
項5.プライマーの濃度が1.0μM以上である項1から4のいずれかに記載のPCR組成方法。
項6.昇温又は降温の速度が0.1℃/秒から20℃/秒の範囲でPCRを実施するための組成であることを特徴とする項1から5のいずれかに記載のPCR方法組成。
項7.昇温又は降温の速度が5℃/秒から20℃/秒の範囲でPCRを実施するための組成である項1から6のいずれかに記載のPCR方法組成。
項8.昇温又は降温の速度が10℃/秒から20℃/秒の範囲でPCRを実施するための組成である項1から7のいずれかに記載のPCR方法組成。
項9.ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである項1から8のいずれかに記載のPCR組成。
項10.ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体である項1から9のいずれかに記載のPCR組成。
項11.PCNAが古細菌(Archea)由来のPCNAである項1から10のいずれかに記載のPCR組成。
項12.PCNAがDNAポリメラーゼ増幅増強活性をもつ変異型PCNAである項1から11のいずれかに記載のPCR組成。
項13.項1から12のいずれかに記載のPCR組成を含むことを特徴とするPCR用試薬。
項14.項13に記載のPCR用試薬を含むことを特徴とするPCR用試薬キット
項15.項1から12のいずれかに記載のPCR組成により、15回から50回の熱サイクルによるPCR方法であって、かつ、PCRの反応時間が60分以内であることを特徴とするPCR方法。
項16.PCRの反応時間が30分以内である項15に記載のPCR方法。
項17.項1から12のいずれかに記載のPCR組成を含む反応液中に、生体試料を直接添加することを特徴とする項15又は16に記載のPCR方法。
本発明により、PCRの反応時間の短縮ができる。本発明における及び組成は血液などの阻害物質が含まれる条件でも、高速PCRを可能にし、特に迅速性が求められる診断用途において非常に有用である。
プライマー濃度、マグネシウム濃度の検討 Ct値 プライマー濃度、マグネシウム濃度の検討 融解曲線 プライマー濃度の検討 融解曲線 PCNAと高濃度プライマーの相乗効果の確認 PCR阻害物質存在下での高速PCRの検討 PCR阻害物質・dUTP存在下での高速PCRの検討 PCNAの配列比較
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説する。
本発明におけるPCR方法は、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、PCNA及び高濃度プライマーを反応液中に含み、高速でPCRを行うことを特徴とする。
(1)アミノ酸の表記
本明細書においては、塩基配列、アミノ酸配列及びその個々の構成因子については、アルファベット表記による簡略化した記号を用いる場合があるが、いずれも分子生物学・遺伝子工学分野における慣行に従う。また、本明細書においては、アミノ酸配列の変異を簡潔に示すため、例えば「D143A」などの表記を用いる。「D143A」は、第143番目のアスパラギン酸をアラニンに置換したことを示しており、すなわち、置換前のアミノ酸残基の種類、その場所、置換後のアミノ酸残基の種類を示している。また、配列番号は、特に断らない限り、配列表に記載された配列番号に対応する。また、多重変異体の場合は、上記の表記を「/」でつなげて表す。例えば「D143A/D147A」は、第143番目のアスパラギン酸をアラニンに置換し、かつ、第147番目のアスパラギン酸をアラニンに置換したことを示す。
また、本明細書において「変異体」、「変異型」とは、従来知られたタンパク質とは異なるアミノ酸配列を備えることを意味するものであり、人為的変異によるか自然界における変異によるかを区別するものではない。
なお、「配列番号1に記載のアミノ酸配列における、142番目に『相当する』アミノ酸」とは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と完全同一ではないアミノ酸配列を有するPCNAにおいて、配列番号1の142番目に対応するアミノ酸配列を含む表現である。本明細書において、前記と同じ形式の表記における「相当する」の意味は、前記の例示と同じである。
本願明細書において、配列番号1に示されるアミノ酸配列と完全同一ではないアミノ酸配列おける、配列番号1上のある位置(順番)と対応する位置とは、配列の一次構造を比較(アラインメント)したとき、配列番号1の当該位置と対応する位置とする。本明細書において、前記と同じ形式の表記における「対応する位置」の意味は、前記の例示と同じである。
配列の一次構造を比較する方法としては、種々の方法が知られている。例えば、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。本明細書では、DNA Databank of Japan(DDBJ)のClustalW(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/index.php/lang=ja)においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いることにより、配列の一次構造を比較する。
(2)高速PCR
本発明におけるPCRは、30回の熱サイクルを行う場合に、反応時間が40分以内である高速PCRであり、好ましくは30分以内、さらに好ましくは20分以内、さらに好ましくは反応時間が10分以内である高速PCRが挙げられる。反応時間とは変性、アニーリング、伸長を繰り返す熱サイクルの時間を示す。通常のサーマルサイクラーの熱サイクル設定では反応時間が60分以内になることはほとんどない。例えば、PCR system GeneAmp(登録商標)9700(Applied Biosystem製)で60分以内に反応を終わらせるには熱サイクルの各ステップの時間を極端に短くする必要がある。実際、各ステップの時間を極端に短くし、94℃、2分の前反応の後、98℃、0秒→60℃、0秒→68℃、0秒を40サイクル実施すると反応時間は約60分となる。また、30分以内の反応時間を達成するには、高速で温度変化を実施するサーマルサイクラーを使用し、さらに熱サイクルの各ステップの時間を短くする必要がある。例えば高速での温度変化が可能なLight cycler(登録商標)2.0(Roche)を用いた場合、94℃、2分の前反応の後、98℃、0秒→55℃、0秒→68℃、0分を50サイクル実施すると反応時間は約20分となる。本発明におけるPCRの熱サイクル数は、15回から50回の範囲で設定して実施することができる。好ましくは25回から45回であり、より好ましくは30回から40回である。
本発明における高速の熱サイクル設定においては、アニーリングステップを短くすることが好ましい。なぜなら、PCR反応速度を上げるためにはプライマーの濃度を高くする必要があるが、一般に、プライマーの濃度を高くすると非特異やプライマーダイマーが生じやすい。アニーリングステップを短くすることにより、高濃度のプライマーでも非特異やプライマーダイマーが生じにくくなると考えられる。好ましいアニーリングステップの時間は10秒である。さらに好ましくは5秒、特に好ましくは0秒である。
(3)ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ
本発明の核酸増幅法に用いるDNAポリメラーゼは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである。本発明においてファミリーBに属するDNAポリメラーゼとは、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有さないDNAポリメラーゼをいう。好ましくは古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである。
(3.1)古細菌由来のDNAポリメラーゼ
ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼとしては、パイロコッカス(Pyrococcus)属及びサーモコッカス(Thermococcus)属の細菌から単離されるDNAポリメラーゼが挙げられる。パイロコッカス属由来のDNAポリメラーゼとしては、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus sp.GB-D、Pyrococcus Woesei、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus horikoshiiから単離されたDNAポリメラーゼを含むが、これらに限定されない。サーモコッカス属に由来するDNAポリメラーゼとしては、Thermococcus kodakaraensis、Thermococcus gorgonarius、Thermococcus litoralis、Thermococcus sp.JDF-3、Thermococcus sp.9degrees North-7(Thermococcus sp.9°N-7)、Thermococcus sp.KS-1、Thermococcus celer、又はThermococcus siculiから単離されたDNAポリメラーゼを含むが、これらに限定されない。これらのDNAポリメラーゼを用いたPCR酵素は市販されており、Pfu(Staragene社)、KOD(Toyobo)、Pfx(Life Technologies社)、Vent(New England Biolabs)、Deep Vent(New England Biolabs)、Tgo(Roche)、Pwo(Roche)などがある。
なかでもPCR効率の観点から、伸長性や熱安定性の優れたKOD DNAポリメラーゼが好ましい。
また、前記DNAポリメラーゼに、後述の3‘-5’エキソヌクレアーゼ領域の改変、及び/又は、減少した塩基類似体検出活性を有するような改変を施した変異体を用いても良い。
(3.2)DNAポリメラーゼの改変(I)3‘-5’エキソヌクレアーゼ領域の改変
本発明に用いる改変されたDNAポリメラーゼは、さらに3’-5’エキソヌクレアーゼ活性領域のアミノ酸配列のいずれかに少なくとも1つのアミノ酸の改変を含んでいてもよい。3‘-5’ エキソヌクレアーゼ活性とは、取り込まれたヌクレオチドをDNA重合体の3’末端から除去する能力を指し、上記の3‘-5’エキソヌクレアーゼ領域とは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼで高度に保存されている部位であり、サーモコッカス・コダカラエンシスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号1)、パイロコッカス・フリオサスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号2)、サーモコッカス・ゴルゴナリウスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号3)、サーモコッカス・リトラリスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号4)、パイロコッカス・エスピーGB-Dに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号5)、サーモコッカス・エスピーJDF-3に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号6)、サーモコッカス・エスピー9°N-7に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号7)、サーモコッカス・エスピーKS-1に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号8)、サーモコッカス・セラーに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号9)、又はサーモコッカス・シクリに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号10)においては、137~147、206~222、及び308~318番目のアミノ酸である。本発明は、具体的に配列を提示したDNAポリメラーゼ以外のDNAポリメラーゼにも適用される。また、配列番号1~10に示されるDNAポリメラーゼ以外のファミリーBに属する古細菌由来DNAポリメラーゼにおいては、配列番号1の137~147、206~222、及び308~318番目のアミノ酸からなる3‘-5’エキソヌクレアーゼ領域と対応する領域のことを示す。
なお、「配列番号1に示される137~147、206~222、及び308~318番目に相当するアミノ酸」とは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と完全同一ではないアミノ酸配列を有するDNAポリメラーゼにおいて、配列番号1の137~147、206~222、及び308~318番目に対応するアミノ酸配列を含む表現である。本発明において、前記と同じ形式の表記における「相当する」の意味は、前記の例示と同じである。
本発明において、配列番号1に示されるアミノ酸配列と完全同一ではないアミノ酸配列における、配列番号1上のある位置(順番)と対応するアミノ酸の位置とは、配列の一次構造を比較(アラインメント)したとき、配列番号1の当該位置と対応する位置とする。本発明において、前記と同じ形式の表記における「対応する位置」の意味は、前記の例示と同じである。
配列の一次構造を比較する方法としては、種々の方法が知られている。例えば、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。本発明においては、DNA Databank of Japan(DDBJ)のClustalW(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/index.php/lang=ja)においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、配列の一次構造を比較する。
上記の3‘-5’エキソヌクレアーゼ領域の改変とは、置換、欠失、又は付加からなり得るが特に限定されない。例えば、配列番号1における137~147、206~222、及び308~318番目に対応するアミノ酸への改変を示す。
前記3’-5’エキソヌクレアーゼ活性領域を改変したDNAポリメラーゼとしては、配列番号1又は配列番号2における141、142、143、210、311番目に対応するアミノ酸の少なくとも一つを改変したものが好ましい。これらの改変型DNAポリメラーゼは、3‘-5’エキソヌクレアーゼ活性が欠損している。より好ましくは、アミノ酸の改変がD141A、E143A、D141A/E143A、I142R、N210D、又はY311Fから選択されるいずれか一つである、3‘-5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させたDNAポリメラーゼである。なお、3‘-5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させた(エキソ(-))DNAポリメラーゼとは、活性の完全な欠如を含み、例えば、親酵素と比較して0.03%、0.05%、0.1%、1%、5%、10%、20%、又は最大でも50%以下のエキソヌクレアーゼ活性を有する改変されたDNAポリメラーゼを指す。
前記3’-5’エキソヌクレアーゼ活性領域を改変したDNAポリメラーゼとして、別の好ましい形態は、配列番号1又は配列番号2におけるH147E、又はH147Dから選択されるいずれか一つである。これらの改変型DNAポリメラーゼは、エキソヌクレアーゼ活性を維持したまま、PCR効率が向上している。
なお、3‘-5’エキソヌクレアーゼ活性領域を改変したDNAポリメラーゼを生成する方法や、3‘-5’エキソヌクレアーゼ活性を解析する方法は公知であり、例えば、米国特許第6946273号公報に開示されている。PCR効率を向上させたDNAポリメラーゼとは、PCR産物の量が親酵素と比較して増加している改変されたDNAポリメラーゼを示す。PCR産物の量が親酵素と比較して増加しているかどうかを解析するための方法は、特許第3891330号公報等に記載されている。
(3.3)DNAポリメラーゼの改変(II)減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼ変異体を作製する改変
(3.3.1)
本発明に用いるファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、減少した塩基類似体検出活性を有する変異体でもよい。塩基類似体とはアデニンやシトシン、グアニン、チミン以外の塩基を示し、ウラシルやイノシンなどが挙げられる。通常、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、塩基類似体であるウラシルやイノシンを検出すると強く結合し、DNAポリメラーゼ機能を阻害する。塩基類似体検出活性とは、塩基類似体と強く結合し、DNAポリメラーゼ機能を阻害する活性を示す。減少した塩基類似体検出活性を有するファミリーBに属するDNAポリメラーゼ変異体とは、ウラシルやイノシンへの結合能力が低いことを特徴とするファミリーBに属するDNAポリメラーゼ変異体である。
このような変異体は、ウラシルの結合に関するアミノ酸配列(ウラシル結合ポケット)の少なくとも1か所に改変を加えることにより作製できる。具体的には、ファミリーBに属する古細菌DNAポリメラーゼ、例えば、Thermococcus kodakaraensis KOD1株由来のDNAポリメラーゼのアミノ酸配列(配列番号1)の1~40番目、及び78~130番目によって形成されるウラシル結合ポケットの少なくとも1か所に改変を加え、野生型のDNAポリメラーゼと比較してウラシルやイノシンへの結合能力を低下させたDNAポリメラーゼ変異体が例示される。ウラシルやイノシンへの結合能力が低いDNAポリメラーゼ変異体は、dUTPの存在下のPCRでもDNAポリメラーゼの機能低下があまり見られず、dUTPによるDNAポリメラーゼの伸長反応への影響が低減されている。
ウラシルの結合に関するアミノ酸配列はパイロコッカス属に由来するDNAポリメラーゼ及びサーモコッカス属に由来するDNAポリメラーゼにおいて高度に保存されている。サーモコッカス・コダカラエンシスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号1)においては、アミノ酸1~40及びアミノ酸78~130によって形成される。パイロコッカス・フリオサス(配列番号2)においては、アミノ酸1~40、及びアミノ酸78~130によって形成される。サーモコッカス・ゴルゴナリウス(配列番号3)においては、アミノ酸1~40、及びアミノ酸78~130によって形成される。サーモコッカス・リトラリス(配列番号4)においては、アミノ酸1~40、及びアミノ酸78~130によって形成される。パイロコッカス・エスピーGB-D(配列番号5)においては、アミノ酸1~40及びアミノ酸78~130によって形成される。サーモコッカス・エスピーJDF-3(配列番号6)のおいては、アミノ酸1~40、及びアミノ酸78~130によって形成される。サーモコッカス・エスピー9°N-7(配列番号7)においては、アミノ酸1~40及びアミノ酸78~130によって形成される。サーモコッカス・エスピーKS-1(配列番号8)においては、アミノ酸1~40、及びアミノ酸78~130によって形成される。サーモコッカス・セラー(配列番号9)においては、アミノ酸1~40及びアミノ酸78~130によって形成される。サーモコッカス・シクリ(配列番号10)においては、アミノ酸1~40及びアミノ酸78~130によって形成される。
(3.3.2)
本発明に用いる減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼ変異体として、より好ましいのは、ウラシルと相互作用に直接関連していると想定されている7、36、37、90~97及び112~119番目のアミノ酸のうち少なくとも1つに改変を加えた古細菌DNAポリメラーゼ変異体、例えば、(a)配列番号1又は配列番号2で示されるアミノ酸配列の7、36、37、90~97及び112~119番目に相当するアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有するアミノ酸配列で示される古細菌DNAポリメラーゼ変異体である。
上記の古細菌DNAポリメラーゼ変異体は、以下の(b)のアミノ酸配列で示されるものであってもよい。
(b)(a)で示されるアミノ酸配列においてさらに7、36、37、90~97及び112~119番目以外の部位において少なくとも1つのアミノ酸が改変されており、そのアミノ酸配列と配列番号1との同一性又はそのアミノ酸配列と配列番号2との同一性が80%以上(好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、特に好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である)であり、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列。
アミノ酸配列の同一性を算出する方法としては、種々の方法が知られている。例えば、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。
本発明においては、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、アミノ酸配列の同一性を算出する。
上記の古細菌DNAポリメラーゼ変異体は、以下の(c)のアミノ酸配列で示されるものであってもよい。
(c)(a)で示されるアミノ酸配列において、さらに7、36、37、90~97及び112~119番目以外の部位において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されており、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列。
ここで「数個」とは、「減少した塩基類似体検出活性」が維持される限り制限されないが、例えば、全アミノ酸の約20%未満に相当する数であり、好ましくは約15%未満に相当する数であり、さらに好ましくは約10%未満に相当する数であり、より一層好ましくは約5%未満に相当する数であり、最も好ましくは約1%未満に相当する数である。より具体的には、変異されるアミノ酸残基の個数は、例えば、2~160個、好ましくは2~120個、より好ましくは2~80個、更に好ましくは2~40個であり、特に好ましくは2~5個である。
なお、「配列番号1に示されるアミノ酸配列における7、36、37、90~97及び112~119番目に相当するアミノ酸」とは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と完全同一ではないアミノ酸配列を有するDNAポリメラーゼにおいて、配列番号1の7、36、37、90~97及び112~119番目に対応するウラシルの結合に関するアミノ酸配列を含む表現である。
本発明において、配列番号1に示されるアミノ酸配列と完全同一ではないアミノ酸配列おける、配列番号1上のある位置(順番)と対応する位置とは、配列の一次構造を比較(アラインメント)したとき、配列番号1の当該位置と対応する位置とする。本明細書において、前記と同じ形式の表記における「相当する」の意味は、前記の例示と同じである。
本発明において、配列番号1に示されるアミノ酸配列と完全同一ではないアミノ酸配列おける、配列番号1上のある位置(順番)と対応する位置とは、配列の一次構造を比較(アラインメント)したとき、配列番号1の当該位置と対応する位置とする。本明細書において、前記と同じ形式の表記における「対応する位置」の意味は、前記の例示と同じである。
配列の一次構造を比較する方法としては、種々の方法が知られている。例えば、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。本発明においては、DNA Databank of Japan(DDBJ)のClustalW(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/index.php/lang=ja)においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、配列の一次構造を比較する。
(3.3.3)
本発明に用いる減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体は、より好ましくは、配列番号1又は配列番号2におけるアミノ酸Y7、P36、又はV93に相当するアミノ酸から選択される少なくとも1つのアミノ酸の改変を有する。ここで、例えばY7とは、7番目のアミノ酸であるチロシン(Y)残基を意味しており、アルファベット1文字は通用されているアミノ酸の略号を表している。好ましい例において、Y7アミノ酸はチロシン(Y)が非極性アミノ酸に置換されており、具体的にはY7A、Y7G、Y7V、Y7L、Y7I、Y7P、Y7F、Y7M、Y7W、及びY7Cからなる群より選ばれるアミノ酸置換である。別の好ましい例において、P36アミノ酸はプロリン(P)が正電荷をもつ極性アミノ酸に置換されており、具体的にはP36H、P36K、又はP36Rのアミノ酸置換である。別の好ましい例において、V93アミノ酸はバリン(V)が、正電荷をもち極性アミン酸に置換されており、具体的にはV93H、V93K、又はV93Rのアミノ酸置換である。
より好ましくは、改変がY7A、P36H、P36K、P36R、V93Q、V93K、及びV93Rからなる群より選ばれる、少なくとも1つのアミノ酸の改変である。さらに好ましくはP36K、P36R又はP36Hである。特に好ましくはP36Hである。
本発明において用いられる減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体は、配列番号1又は配列番号2におけるアミノ酸Y7、P36、又はV93に相当するアミノ酸から選択される2つ以上のアミノ酸を改変したものでも良い。具体的には、Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、Y7A/V93R、Y7A/V93Q又はP36H/V93Kなどが挙げられ、好ましくは、Y7A/P36H又はY7A/V93Kなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記に例示したDNAポリメラーゼの改変をもとに、本発明に用いる改変されたDNAポリメラーゼとして、種々の変異体が考えられる。そのような変異体として、以下の(1)-(4)のいずれかの改変を有する古細菌DNAポリメラーゼの変異体が例示されるが、これに限定されるわけではない。
(1)(A)H147Eと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36H/V93K、P36K、P36R、P36H、V93R又はV93Qのいずれか
(2)(A)N210Dと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36K、P36R、P36H、V93Q、V93K又はV93Rのいずれか
(3)(A)I142Rと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36H、V93K、V93R又はV93Qのいずれか
(4)(A)D141A/E143Aと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36H又はV93Kのいずれか
(3.3.4)塩基類似体検出活性の評価方法
本発明における塩基類似体検出活性はPCRによって評価できる。塩基類似体は、典型的にはウラシルである。本発明においては、鋳型となるDNA、緩衝材、マグネシウム、dNTPs、プライマー、及び評価対象のDNAポリメラーゼを含む通常のPCR反応液に、dUTP溶液を、終濃度0.5μM~200μMで添加し、熱サイクルを行う。反応後に、エチジウムブロマイド染色1%アガロース電気泳動でPCR産物の有無を確認し、許容できたdUTP濃度によって、ウラシルの検出活性を評価することが出来る。ウラシル検出活性の高いDNAポリメラーゼは少しのdUTPの添加で伸長反応が阻害され、PCR産物が確認できない。また、ウラシルの検出活性の低いDNAポリメラーゼは、高濃度のdUTPを添加しても問題なくPCRによる遺伝子増幅が確認できる。
減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体とは、酵素至適の反応Buffer中で、任意のプライマー、及び鋳型となるDNAを用い、至適の熱サイクルを行った結果、変異がない野生型と比較し、高濃度のdUTPを添加しても伸長反応が阻害されず、PCR産物が確認できるDNAポリメラーゼのことをいう。ただし、野生型との比較が困難な場合は、dUTPを0.5μMの濃度で添加してもPCRの増幅ができる古細菌DNAポリメラーゼ変異体については、当該変異体が野生型と比較して減少した塩基類似体検出活性を有すると推定する。
本発明における塩基類似体検出活性の評価は、以下の方法に従う。
KOD -Plus- Ver.2(Toyobo製)添付の10×PCR Buffer、又はPfu DNA Polymerase(Agilent製)添付の10×PCR Bufferを用い、1×PCR Buffer、及び1.5mM MgSO、0.2mM dNTPs(dATP、dTTP,dCTP、dGTP)、約1.3kbを増幅する15pmolの配列番号11及び12に記載のプライマー、10ngのヒトゲノムDNA(Roche製)、1Uの各酵素を含む50μlの反応液中に、dUTP(Roche製)を終濃度0.5、5、50、100、200μMになるよう添加する。94℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→65℃、30秒→68℃、1分30秒を30サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp(登録商標)9700(Applied Biosystem)にてPCRを行う。反応終了後、5μlの反応液について1%アガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下約1.3kbの増幅DNA断片を確認することで、塩基類似体検出活性が減少しているかどうかが評価できる。
(3.4)アミノ酸改変の導入方法
本発明に用いるDNAポリメラーゼを改変する方法は、既に当該技術分野において確立されている。よって、公知の方法に従い改変を行うことが出来、その態様は特に制限されない。
アミノ酸の改変を導入する方法の一態様として、Inverse PCR法に基づく部位特異的変異導入法を用いることができる。例えば、KOD -Plus- Mutagenesis Kit(Toyobo製)は、(1)目的とする遺伝子を挿入したプラスミドを変性させ、該プラスミドに変異プライマーをアニーリングさせ、続いてKOD DNAポリメラーゼを用いて伸長反応を行う、(2)(1)のサイクルを15回繰り返す、(3)制限酵素DpnIを用いて鋳型としたプラスミドのみを選択的に切断する、(4)新たに合成された遺伝子をリン酸化、Ligationを実施し環化させる、(5)環化した遺伝子を大腸菌に形質転換し、目的とする変異の導入されたプラスミドを保有する形質転換体を取得することのできるキットである。
(3.5)
上記改変DNAポリメラーゼ遺伝子を必要に応じて発現ベクターに移し替え、宿主として例えば大腸菌を、該発現ベクターを用いて形質転換した後、アンピシリン等の薬剤を含む寒天培地に塗布し、コロニーを形成させる。コロニーを栄養培地、例えばLB培地や2×YT培地に接種し、37℃で12~20時間培養した後、菌体を破砕して粗酵素液を抽出する。ベクターとしては、pBluescript由来のものが好ましい。菌体を破砕する方法としては公知のいかなる手法を用いても良いが、例えば超音波処理、フレンチプレスやガラスビーズ破砕のような物理的破砕法やリゾチームのような溶菌酵素を用いることができる。この粗酵素液を80℃、30分間熱処理し、宿主由来のDNAポリメラーゼを失活させ、DNAポリメラーゼ活性を測定する。
上記方法により選抜された菌株から精製DNAポリメラーゼを取得する方法は、いかなる手法を用いても良いが、例えば下記のような方法がある。栄養培地に培養して得られた菌体を回収した後、酵素的又は物理的破砕法により破砕抽出して粗酵素液を得る。得られた粗酵素抽出液から熱処理、例えば80℃、30分間処理し、その後硫安沈殿によりDNAポリメラーゼ画分を回収する。この粗酵素液をセファデックスG-25(アマシャムファルマシア・バイオテク製)を用いたゲル濾過等の方法により脱塩を行うことができる。この操作の後、ヘパリンセファロースカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品はSDS-PAGEによってほぼ単一バンドを示す程度に純化される。
(3.5.1)DNAポリメラーゼ活性測定法
本発明に用いるDNAポリメラーゼは、以下のように活性を測定する。酵素活性が強い場合には、保存緩衝液(50mM Tris-HCl(pH8.0),50mM KCl,1mM ジチオスレイトール,0.1% Tween20,0.1% Nonidet P40,50% グリセリン)でサンプルを希釈して測定を行う。(1)下記のA液25μl、B液5μl、C液5μl、滅菌水10μl、及び酵素溶液5μlをマイクロチューブに加えて75℃にて10分間反応する。(2)その後氷冷し、E液50μl、D液100μlを加えて、攪拌後更に10分間氷冷する。(3)この液をガラスフィルター(ワットマン製GF/Cフィルター)で濾過し、0.1N 塩酸及びエタノールで十分洗浄する。(4)フィルターの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パーキンエルマー製TriCarb 2810TR)で計測し、鋳型DNAのヌクレオチドの取り込みを測定する。酵素活性の1単位はこの条件で30分当りの10nmolのヌクレオチドを酸不溶性画分(即ち、D液を添加したときに不溶化する画分)に取り込む酵素量とする。
A液:40mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)、16mM 塩化マグネシウム、15mM ジチオスレイトール、100μg/mL BSA(牛血清アルブミン)
B液:1.5μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C液:1.5mM dNTP(250cpm/pmol [3H]dTTP)
D液:20% トリクロロ酢酸(2mM ピロリン酸ナトリウム)
E液:1mg/mL仔牛胸腺DNA
(4)PCNA
(4.1)
本発明に用いるPCNAは、PCR増強因子の一種である。前記PCNAとしては、特に限定されないが、PCRの熱サイクルに耐えられる耐熱性のものが望ましく、好ましくはPCR後も活性が残るものが望まれる。さらに好ましくは80℃で30分の熱処理を行っても可溶性であり、活性が50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上残っているものが望まれる。
そのようなPCNAとしては、例えばパイロコッカス(Pyrococcus)属及びサーモコッカス(Thermococcus)属の細菌から単離されたPCNAが挙げられる。パイロコッカス属由来のPCNAとしては、Pyrococcus furiosus(配列番号13)、Pyrococcus sp.GB-D、Pyrococcus Woesei、Pyrococcus abyssi又はPyrococcus horikoshiiから単離されたPCNAを含むが、これらに限定されない。サーモコッカス属に由来するPCNAとしては、Thermococcus kodakaraensis(配列番号14)、Thermococcus gorgonarius、Thermococcus litoralis、Thermococcus sp.JDF-3、Thermococcus sp.9degrees North-7(Thermococcus sp.9°N-7)、Thermococcus sp.KS-1、Thermococcus celer、又はThermococcus siculi、Methanocaldococcus jannaschii(Mja)又はMethanobacterium thermoautotrophicum(Mth)から単離されたPCNAを含むが、これらに限定されない。
PCNAをコードする遺伝子は、PCNAをもつ生物からクローニングすることができる。また、アミノ酸の配列情報や核酸の配列情報をもとに人工的に合成することもできる。
さらに、本発明に用いるPCNAは単独でDNAにロードする(DNAポリメラーゼ増幅増強活性のある)変異体であってもよい。PCNAは通常、多量体を形成し輪のような構造をとる。DNAにロードするとは、PCNA多量体の輪の構造内部にDNAを通すことを示し、通常はRFCと呼ばれる因子と共同して初めてPCNAはDNAにロードすることができる。単独でDNAにロードする変異体とは、PCNAの多量体形成に関わる部位を改変し、多量体形成を不安定化することで、RFCなしでもDNAをPCNA多量体内部に通しやすくした変異体を示す。
(4.1.1)KOD-PCNA及びPfu-PCNA
PCNAが多量体形成に関する部位は、サーモコッカス・コダカラエンシスに由来するPCNA(KOD-PCNAとも記載)(配列番号13)、パイロコッカス・フリオサスのPCNA(Pfu-PCNAとも記載)(配列番号14)においては、82、84、109番目のアミノ酸からなるN末端領域と139、143、147番目のアミノ酸からなるC末端領域が挙げられる。N末端領域はプラスに帯電し、C末端領域はマイナスに帯電し、相互作用することで多量体形成を行う。
上記及び下記において、配列番号13又は配列番号14を例にして説明したことは、本明細書で具体的に配列を提示したPCNA以外のPCNAにも適用される。例えば、図7で示したように配列番号13及び14に示されるPCNA以外のPCNAにおいては、配列番号13の82、84、109、139、143、147番目のアミノ酸からなる多量体形成に関する領域と対応する領域のことを示す。ここで、異なる2つのアミノ酸配列があるとき、基準となる一方のアミノ酸配列においてアミノ酸や領域が「対応する」とは、アミノ酸配列の一次構造を比較(アラインメント)したとき、基準となる配列の当該位置と対応する位置とする。
単独でDNAにロードするPCNA変異体は、より好ましくは、PCNAの多量体形成に関わる、
(a)82、84、109番目に相当するアミノ酸からなるN末端領域、又は、
(b)139、143、147番目に相当するアミノ酸からなるC末端領域に少なくともひとつの改変を有し、RFCがなくともDNAにロードし、DNAポリメラーゼの伸長反応を促進する変異体が挙げられる。
例えば、配列番号13の143番目に相当するアミノ酸を塩基性アミノ酸に改変したもの、82番目と143番目を共に中性アミノ酸に改変したもの、147番目を中性アミノ酸に改変したもの、又は、109番目と143番目を共に中性アミノ酸に改変したものなどが挙げられる。
本発明の中性アミノ酸としては、天然のものであれば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンが挙げられる。好ましくは、置換部位の周辺部位の立体構造に与える影響が最も小さいアラニンである。塩基性アミノ酸としては、天然のものであれば、アルギニン、ヒスチジン、リシン及びトリプトファンが挙げられる。好ましくはアルギニン又はリジンである。
より好ましくは、WO2007/004654に記載のPCNA変異体が例示されるほか、第147番目のアミノ酸残基をアラニンに換えた配列(D147A)、第82番目、及び第143番目のアミノ酸残基をアラニンに変えた配列(R82A/D143A、もしくはR82A/E143A)、第109番目、及び第143番目のアミノ酸残基をアラニンに変えた配列(R109A/D143A、もしくはR109A/E143A)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明に用いるPCNAは発現量を増やすため、配列番号13又は配列番号14の73番目に相当するメチオニンを改変したものでもよい。より好ましくはM73Lに改変したものが挙げられるが、これに限定されない。
(4.1.2)Mja-PCNA
また、本発明に用いるPCNAは、以下の(A)から(E)のうちいずれかに示されるPCNA単量体である。
(A)配列番号23に記載のアミノ酸配列における142番目のアミノ酸残基を、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファンからなる群がら選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチドからなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド。
(B)(A)で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号23に記載のアミノ酸配列における142番目のアミノ酸残基を、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファンからなる群がら選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチドからなり、以下の(a)から(e)のいずれかの置換、欠失、挿入及び/又は付加(これらを纏めて「変異」とも表す。)を含んでなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド。
(a)80番目のアミノ酸残基をリジン、ヒスチジン及びトリプトファンからなる群から選択されるいずれかに置換
(b)82番目のアミノ酸残基をアルギニン、ヒスチジン及びトリプトファンからなる群から選択されるいずれかに置換
(c)108番目のアミノ酸残基をリジン、ヒスチジン及びトリプトファンからなる群から選択されるいずれかに置換
(d)138番目のアミノ酸残基をグルタミン酸に置換
(e)146番目のアミノ酸残基をグルタミン酸に置換
(C)(A)で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号23に記載のアミノ酸配列における142番目のアミノ酸残基を、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファンからなる群がら選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチドからなり、、80番目、82番目、108番目、138番目、142番目及び第146番目に相当するアミノ酸残基以外の、1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入又は付加されているアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド。
(D)(A)で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号23に記載のアミノ酸配列の142番目のアミノ酸残基のみを、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファンからなる群がら選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(E)(A)で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号23で示されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド。
配列番号23において、142番目のアミノ酸残基はPCNAの多量体形成に関わるアミノ酸残基のうちの1つである。PCNAの多量体形成に関わるアミノ酸残基は、各単量体のN末端側領域とC末端側領域とに存在する。PCNA多量体は、一方の単量体のN末端側領域と他方の単量体のC末端側領域とが界面となって接合することにより形成される。真核細胞及び古細菌においては、多くの場合PCNAは三量体を形成する。配列番号23で示されるアミノ酸配列においては、N末端領域が下記の(a)で示される群の位置に該当し、C末端領域が下記の(b)で示される群の位置に該当する。
(a)80、82、108番目のアミノ酸残基群
(b)138、142、146番目のアミノ酸残基群
上記(2)のポリペプチドは、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を保持する限度で、配列番号23に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸配残基が置換、欠失、挿入及び/又は付加(以下、これらを纏めて「変異」とも表す。)されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである。一又は数個の変異は、制限酵素処理、エキソヌクレアーゼやDNAリガーゼ等による処理、位置指定突然変異導入法やランダム突然変異導入法(Molecular Cloning, Third Edition, Chapter 13 ,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)など公知の手法を利用して、後述する本発明のPCNA単量体をコードするDNAに変異を導入することによって実施することが可能である。また、紫外線照射など他の方法によってもバリアントPCNA単量体を得ることができる。バリアントPCNA単量体には、PCNAを保持する微生物の個体差、種や属の違いに基づく場合などの天然に生じるバリアント(例えば、一塩基多型)も含まれる。
上記[3]のポリペプチドは、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を保持することを限度で、配列番号23に示されるアミノ酸配列と比較した同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。好ましくは、本発明のPCNA単量体が有するアミノ酸配列と配列番号23に示されるアミノ酸配列との同一性は、85%以上であり、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上、より更に好ましくは93%以上、一層好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。このような一定以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドは、上述するような公知の遺伝子工学的手法に基づいて作成することができる。
上記の[2]又は[3]に記載したようなPCNAとして、好ましくは、PCNAの精製を簡便にすべくN末端に挿入したHisタグなどのアフィニティタグを付加するものが挙げられるが、特にこれに限定されない。
上記のPCNA単量体においては、配列番号23における142番目のアミノ酸残基が塩基性アミノ酸残基に置換されるが、置換する塩基性アミノ酸の種類は特に限定されない。塩基性アミノ酸としては、天然のものであれば、アルギニン、ヒスチジン、リシン及びトリプトファンが挙げられる。好ましくはアルギニン又はリジンである。
(4.2)
上記PCNAを得る方法はPCNA遺伝子を必要に応じて発現ベクターに移し替え、宿主として例えば大腸菌を、該発現ベクターを用いて形質転換した後、アンピシリン等の薬剤を含む寒天培地に塗布し、コロニーを形成させる。コロニーを栄養培地、例えばLB培地や2×YT培地に接種し、37℃で12~20時間培養した後、菌体を破砕して粗酵素液を抽出する。ベクターとしては、pBluescript由来のものが好ましい。菌体を破砕する方法としては公知のいかなる手法を用いても良いが、例えば超音波処理、フレンチプレスやガラスビーズ破砕のような物理的破砕法やリゾチームのような溶菌酵素を用いることができる。この粗酵素液を80℃、30分間熱処理し、遠心することで宿主由来のタンパクを除去し、SDS-PAGEに供することで、目的タンパク質の発現を確認することができる。
上記方法により選抜された菌株から精製PCNAを取得する方法は、いかなる手法を用いても良いが、例えば下記のような方法がある。栄養培地に培養して得られた菌体を回収した後、酵素的又は物理的破砕法により破砕抽出して粗酵素液を得る。得られた粗酵素抽出液から熱処理、例えば80℃、30分間処理し、その後硫安沈殿によりPCNA画分を回収する。この粗酵素液をセファデックスG-25(アマシャムファルマシア・バイオテク製)を用いたゲル濾過等の方法により脱塩を行うことができる。この操作の後、Qセファロースカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品は、SDS-PAGEによってほぼ単一バンドを示す程度に純化される。
(4.3)DNAポリメラーゼ増幅増強活性
上記PCNA変異体が単独でDNAにロードできるか(DNAポリメラーゼ増幅増強活性があるか)どうかは、PCRによって評価できる。鋳型となるDNA、緩衝材、マグネシウム、dNTPs、プライマー、及びファミリーBに属するDNAポリメラーゼを含むPCR反応液に、評価するPCNAを添加し、PCNA添加なしのもの、また野生型PCNA添加のものと増幅量を比較することで、単独でDNAにロードできるかを確認することができる。野生型のPCNAをはじめ、単独でDNAにロードできないPCNAは添加しても、PCRの増幅量は変化せず、むしろ増幅量を減らす傾向がある。一方、単独でDNAにロードできる変異体は、PCNA添加なしのものと比較することでDNAポリメラーゼ増幅増強活性を評価することができる。
本発明において「PCNA変異体が単独でDNAにロードできるかどうか」の評価(DNAポリメラーゼ増幅増強活性の評価)は、以下の方法に従う。
KOD Dash(Toyobo製)添付の10×PCR Buffer(反応に用いる濃度の10倍に濃縮されている)を用いて、
1×PCR Buffer、
0.2mM dNTPs、
約3.6kbを増幅する15pmolの配列番号15及び16に記載のプライマー、
10ngのヒトゲノムDNA(Roche製Human Genomic DNA;型番11691112001)、
1U KOD -Plus- ポリメラーゼ
を含むよう反応液を調製し、
50μlの反応液中に、評価するPCNAを250ng添加し、
94℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→68℃、30秒を30サイクル繰り返すスケジュールでPCRを行う。反応終了後、5μlの反応液について1%アガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下約3.6kbの増幅DNA断片を、野生型PCNAを添加したものと比較することで、単独でDNAにロードできるPCNAかどうかを評価することができる。単独でDNAにロードできるPCNAは添加によって増幅量が増加する。
増幅量の増加を定量的に評価するためには、本発明においては、Gel Pro Analyzer(Media Cybernetics)という解析ソフトウェアを利用することにより、増幅量を数値化することにより行う。このような方法で増幅量を比較したとき、PCNAを添加した場合の増幅量が、PCNAを添加しなかった場合の増幅量の1.0倍(好ましくは1.2倍、さらに好ましくは1.5倍、さらに好ましくは2倍、3倍)を超える。もしくは増幅していなかったターゲットが増幅すれば、そのPCNAが「DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有する」と判断する。
PCNAの改変についても、DNAポリメラーゼの改変と同様に行うことができる。
(5)高濃度プライマー
本発明におけるプライマー濃度は、0.6μM以上である。一般に、高濃度のプライマーは非特異やプライマーダイマーの原因になるため、通常のPCRでは0.1~0.5μMで使用するのが一般的といわれている。本発明における高速PCR条件では、サイクルのアニーリングステップが短いため、高い濃度でないとプライミングの効率が低下することがわかっている。逆に、高速PCR条件ではアニーリングステップが短いため、高濃度のプライマーでも非特異やプライマーダイマーが生じにくい。本発明におけるプライマー濃度は、より好ましくは0.8μM以上、さらに好ましくは1.0μM以上である。なお、4.0μM、好ましくは2.0μM、さらに好ましくは1.4μMを超えないことが好ましい。
本明細書において、「プライマー濃度0.6μM以上」と言う場合、一組のプライマー対におけるフォワード(F)、リバース(R)それぞれのプライマー濃度が同じであってもよいし、どちらか一方のプライマー濃度が他方の濃度を超えていても(プライマー濃度が非対称であっても)よい。また、マルチプレックスPCRの場合は、前記のほか、すべてのプライマー対間の濃度が同じであってもよいし、各プライマー対間で濃度が異なっていてもよい。
(6)熱サイクルの速度
本発明におけるPCRにおいては、熱サイクルにおける昇温又は降温の速度が0.1℃/秒から20℃/秒で実施することが好ましい。より好ましくは5℃/秒から20℃/秒の範囲、さらに好ましくは10℃/秒から20℃/秒の範囲である。このような昇温又は降温の速度の熱サイクルを実施するためには、空気による加熱及び冷却により温度制御することができるようなサーマルサイクラーを用いることが特に好ましい。
(7)阻害物質を含んだ状態でのPCR
本発明のPCR方法は、阻害物質を含んだ状態で実施することに適している。本発明における阻害物質とは、例えば生体試料を示すが、PCRを阻害する物質であれば特に限定されない。生体試料は、生体から採取された試料であれば特に限定されない。例えば、体毛、爪、口腔粘膜などの動植物組織、血液などの体液、糞便や尿などの排泄物、細胞、細菌、ウイルス等をいう。体液には血液や唾液が含まれ、細胞には血液から分離した白血球が含まれるが、これらに限定されるものではない。
(8)抗体
本発明においては、必要に応じて、さらに耐熱性DNAポリメラーゼのポリメラーゼ活性及び/又は3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を抑制する活性を有する抗体を用いても良い。前記抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体などが挙げられる。本反応組成は、PCRの感度上昇、非特異的増幅の軽減に特に有効である。
(9)核酸増幅法を実行するための試薬
本発明のPCRを実行するための試薬は、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、及びPCNA及び0.6μM以上の濃度のプライマーを反応液中に含み、それ以外の構成は特に限定されない。なお、前記試薬にはキットの形態も含まれる。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。もっとも、本発明は、下記実施例により、特に限定されるものではない。
(実施例1)
KOD DNAポリメラーゼ変異体の作製
後述の実施例に用いるために、サーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ(Y7A/P36H/N210D変異体)遺伝子を含有するプラスミドを作製した。変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたサーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号17)(pKOD)を用いた。
変異導入にはKOD -Plus- Mutagenesis Kit(Toyobo製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリJM109を形質転換し、酵素調製に用いた。
(実施例2)
改変型耐熱性DNAポリメラーゼの作製
実施例1で得られた菌体の培養は以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを、500mL坂口フラスコに分注した。この培地に、予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリJM109(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に、細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、ヘパリンセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1% ノニデットP40、50% グリセリン)に置換し、改変型耐熱性DNAポリメラーゼを得た。
上記精製工程のDNAポリメラーゼ活性測定は、上記のDNAポリメラーゼ活性測定法に従い行った。また、酵素活性が高い場合はサンプルを希釈して測定を行った。
(実施例3)
KOD-PCNA変異体の作製
サーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性PCNA(M73L/D147A変異体)遺伝子を含有するプラスミドを作製した。変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBlueScriptにクローニングされたサーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来のPCNA(配列番号18)(pKODPCNA)を用いた。変異導入にはKOD -Plus- Mutagenesis Kit(Toyobo製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリDH5αを形質転換し、酵素調製に用いた。
(実施例4)
改変型耐熱性PCNAの作製
実施例3で得られた菌体の培養は、以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを、500mL坂口フラスコに分注した。この培地に予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地(1% バクトトリプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリDH5α(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、Qセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1% ノニデットP40、50% グリセリン)に置換し、改変型耐熱性PCNAを得た。
(実施例5)
プライマー濃度、マグネシウム濃度の検討
上記で得られたKOD Y7A/P36H/N210D、及びKOD PCNA D147Aを用いて、高速PCRを実施し、プライマー濃度の影響、及びマグネシウム濃度の影響を確認した。
PCRにはKOD Dash(Toyobo製)添付の10×PCR Bufferを10倍希釈した 1×PCR Buffer(1.2mM MgSOを含む)に、0.2mM dNTPs、1U KOD DNAポリメラーゼ変異体、250ng KOD PCNA変異体、及び、1/30,000に希釈したSYBR(登録商標) GreenIを含む50μlの反応液中に、以下の(a)又は(b)を添加し、それぞれでCt値を比較した。
(a)サルモネラのinvA遺伝子(約700bp)を増幅する配列番号19及び20に記載のプライマー、及び、50コピー相当のサルモネラ菌ゲノム
(b)アクチン遺伝子(約550bp)を増幅する配列番号21及び22に記載のプライマー、及び、50コピー相当のヒトゲノム
プライマー濃度は0.2、0.4、0.6μMの3水準を設定した。また、MgSOを添加して、Mg濃度を1.2、2、4、6、8mMの5水準で設定し、前記プライマー濃度3水準との組合せをそれぞれ検討した。
PCRは、94℃、30秒の前反応の後、98℃、0秒→55℃、0秒→68℃、0秒の高速サイクルを50サイクル繰り返すスケジュールでLight cycler2.0を用いて、昇温及び降温の速度を20℃/秒で行った。反応時間は約20分で実施された。
図1は、プライマー濃度、Mg濃度を変えて、50コピー相当のサルモネラ菌ゲノム又はヒトゲノムから高速PCRで増幅を比較した場合のCt値、図2はそれらの融解曲線を示す。プライマー濃度は、0.2、0.4、0.6μM、Mg濃度は1.2、2、4、6、8mMで実施し、融解曲線で非特異的な増幅が見られる場合、Ct値は非特異増幅の量に応じて、丸で囲いマーキング(目的増幅もあるが非特異的増幅もある)、四角で囲いマーキングした(非特異的増幅のみ見られる)。
サルモネラ菌invA遺伝子の増幅は、プライマー、Mg濃度をそれぞれ高めることで、Ctが改善される傾向が見られた。
これに対して、アクチン遺伝子の増幅は、Mg濃度が低い場合は、プライマー濃度を高めることでCtが改善されたが、Mg濃度を上げると非特異増幅が出現する結果となった。プライマー、Mgは濃度を上げると、それぞれPCRの効率を高める働きがある、一方、あまり上げすぎると非特異的増幅につながることが知らている。しかし、今回のような高速PCRにおいては、高濃度のMgは通常のPCRと同様、非特異的増幅を増やす可能性が高まるものの、高濃度のプライマーでは非特異的増幅は生じにくくする結果になった。
高速PCR条件では、サイクルのアニーリングステップが短いため、高濃度のプライマーを用いても非特異的増幅やプライマーダイマーが生じにくく、特異性を保ったまま、PCR効率のみを向上させる働きがあることが考えられる。
(実施例6)
プライマー濃度の検討
実施例5と同様、上記で得られたKOD Y7A/P36H/N210D、及びKOD PCNA D147Aを用いて、高速PCRを実施し、プライマー濃度の影響を確認した。
ここでは。dUTP存在下の高速PCRでもプライマー濃度の影響があるかについても確認した。
PCRにはKOD Dash(Toyobo製)添付の10×PCR Bufferを10倍希釈した 1×PCR Buffer(1.2mM MgSOを含む)に、0.2mM dNTPs、又はdTTPをdUTPに置換した2mM dNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、1U KOD DNAポリメラーゼ変異体、250ng KOD PCNA変異体、及び、1/30,000に希釈したSYBR GreenIを含む50μlの反応液中に、アクチン遺伝子 約550bpを増幅する配列番号21及び22に記載のプライマー、ならびに50コピー相当のヒトゲノムを添加し、それぞれでCt値を比較した。プライマー濃度はそれぞれ0.2、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4μMで実施した。PCRは、94℃、30秒の前反応の後、98℃、0秒→55℃、0秒→68℃、0秒の高速サイクルを50サイクル繰り返すスケジュールでLight cycler2.0を用いて、昇温及び降温の速度を20℃/秒で行った。反応時間は約20分で実施された。
表1は、プライマー濃度を変えて、高速PCRによる50コピーからの増幅を比較した場合のCt値、図3は融解曲線を示す。dTTP存在下(通常のdNTPs)とdUTP存在下(dTTPをdUTPに置換したdNTPs)で、プライマー濃度は、0.2、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4μMで実施した。
Figure 0007107345000001
結果、dTTP存在下、dUTP存在下共にプライマー濃度を0.6μM以上に上げることで、Ct値が改善することが示された。また、この実験では非特異的増幅やプライマーダイマーはまったく見られなかった。
(実施例7)
PCNAと高濃度プライマーの相乗効果の確認
上記で得られたKOD Y7A/P36H/N210D及びKOD PCNA D147Aを用いて、高速PCRを実施し、PCNAと高濃度プライマーの相乗効果を確認した。
PCRにはKOD Dash(Toyobo製)添付の10×PCR Bufferを10倍希釈した 1×PCR Buffer(1.2mM MgSOを含む)に、0.2mM dNTPs、1U KOD DNAポリメラーゼ変異体、250ng KOD PCNA変異体、及び、1/30,000に希釈したSYBR GreenIを含む50μlの反応液中に、アクチン遺伝子、約550bpを増幅する配列番号21及び22に記載のプライマー、ならびに様々な濃度のヒトゲノムを添加し、それぞれでCt値を比較した。
ヒトゲノムは、10、10、10、10コピー、ノンテンプレートコントロール(NTC)の5サンプルで行った。今回、PCNA変異体を含まない組成でもPCRを実施し、比較した。プライマー濃度はそれぞれ0.2、1.0μMで実施し、PCRは、94℃、30秒の前反応の後、98℃、0秒→55℃、0秒→68℃、0秒のサイクルを50サイクル繰り返す高速PCRスケジュールと、94℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→60℃、10秒→68℃、30秒のサイクルを50サイクル繰り返す通常PCRスケジュールの2種類で比較した。サーマルサイクラーにはLight cycler(登録商標)2.0を用いて、昇温及び降温の速度を20℃/秒で行った。
図4は、プライマー濃度とPCNA変異体の相乗効果を確認するため、様々なコピー数のヒトゲノムから高速PCRで増幅を比較し、Ct値を示したものになる。プライマー濃度は、0.2、1.0μMで実施し、PCNAがある場合とない場合とのそれぞれにおけるCtを示した。またプライマー0.2μMにおいて、通常のサイクルでのPCNAがある場合とない場合とのそれぞれにおけるCtも示した。ここでは融解曲線で非特異的な増幅が見られる場合、非特異的増幅の量に応じて、丸で囲いマーキング(目的遺伝子の増幅もあるが非特異的増幅もある)、四角で囲いマーキングした(非特異的増幅のみ見られる)。
プライマー濃度が0.2μMの場合、通常のサイクルではPCNAの添加で大きな差は見られなかった。通常のサイクルでは、PCNAの添加の大きな効果は見られないことが示される。一方、高速サイクルでは、PCNAの添加なしでは大きくCtが遅れるものの、PCNAの添加でCtが改善する結果となった。しかし、プライマー濃度が0.2μMではPCNAを添加しても通常サイクルに比べ、Ctは劣る結果となっている。プライマー濃度が1.0μMの場合、PCNAなしでもCtは改善するものの、やはり通常サイクルにはCtが1程度遅れている。そこへPCNAを添加した場合は通常サイクルほぼ同等のCtが得られた。高速サイクルを通常サイクルと同等の効率にするには、プライマー濃度を上げることと、PCNAを添加することの両方が必要であることが示された。
(実施例8)
PCR阻害物質存在下での高速PCRの検討
上記で得られたKOD Y7A/P36H/N210D、及びKOD PCNA D147Aを用いて、阻害物質を含む条件で高速PCRを実施した。
阻害物質は以下のように調製した。
糞便:8mlの水に2gの糞便を懸濁し、20%糞便懸濁液を作製する。95℃、5分熱処理し、12,000rpm、1分の遠心後、上清を20%糞便とした。
尿:ヒトから採取した尿を100%尿とした。
口腔粘膜:200μlの水に綿棒で採取した口腔粘膜を落とし、100%口腔粘膜液とした。
血液:EDTA採血管で採取した血液を100%血液とした。
PCRにはKOD Dash(Toyobo製)添付の10×PCR Bufferを10倍希釈した1×PCR Buffer(1.2mM MgSOを含む)に、0.2mM dNTPs、1U KOD DNAポリメラーゼ変異体、250ng KOD PCNA変異体、及び、1/30,000に希釈したSYBR GreenIを含む50μlの反応液中に、サルモネラ菌invA遺伝子、約700bpを増幅する配列番号19及び20に記載のプライマー、ならびに50コピー相当のサルモネラ菌ゲノムを添加し、それぞれでCt値を比較した。
プライマー濃度は0.2、1.0μMで実施した。阻害物質には上記で調製したサンプルを用い、2.5、0.5、0.1% 糞便、5、1、0.2、0.04% 尿、25、5、1、0.2% 口腔粘膜、1.6、0.32、0.06% 血液を添加した。PCRは、94℃、30秒の前反応の後、98℃、0秒→55℃、0秒→68℃、0秒の高速サイクルを50サイクル繰り返すスケジュールでLight cycler(登録商標)2.0を用いて、昇温及び降温の速度を20℃/秒で行った。反応時間は約20分で実施された。
図5は、阻害物質を含む組成から高速PCRを実施し、サルモネラ菌50コピーを増幅した場合のCtを示す。プライマー濃度は0.2、1.0μMで実施し、阻害物質がない場合と、2.5、0.5、0.1%糞便、5、1、0.2、0.04%尿、25、5、1、0.2%口腔粘膜液、又は1.6、0.32、0.06%血液をそれぞれ添加した場合の影響を確認した。融解曲線で非特異的な増幅が見られる場合、非特異的増幅の量に応じて、丸で囲いマーキング(目的遺伝子の増幅もあるが非特異的増幅もある)、四角で囲いマーキングした(非特異的増幅のみ見られる)。また、まったく増幅しないサンプルはN.D.と表記した。
この系は、阻害物質がなくてもPCNAなしでは増幅しない系となる。
糞便に関しては、プライマー濃度が0.2μMでは0.5%までしか増幅しないところ、プライマー濃度を1.0μMに上げることで、2.5%含まれていても増幅が確認できた。
尿に関しては、プライマー濃度が0.2μMでは立ち上がりが遅れるものの、プライマー濃度を1.0μMに上げることで、立ち上がりが改善され、5%の持込でも増幅が確認された。口腔粘膜に関しては、プライマー濃度が0.2μMでは5%までしか増幅しないところ、プライマー濃度を1.0μMに上げることで、25%含まれていても増幅が確認できた。
血液に関しては、プライマー濃度が0.2μMでは0.32%までしか増幅しないところ、プライマー濃度を1.0μMに上げることで、1.6%含まれていても増幅が確認できた。
PCNAの添加に加え、プライマー濃度を高めることで阻害物質が含まれていても高速PCRが可能になったと考えられる。
(実施例9)
PCR阻害物質・dUTP存在下での高速PCRの検討
上記で得られたKOD Y7A/P36H/N210D、及びKOD PCNA D147Aを用いて、阻害物質及びdUTPを含む条件で高速PCRを実施した。
阻害物質は以下のように調製した。
糞便:8mlの水に2gの糞便を懸濁し、20%糞便懸濁液を作製した。95℃、5分熱処理し、12,000rpm、1分の遠心後、上清を20%糞便とした。
PCRにはKOD Dash(Toyobo製)添付の10×PCR Bufferを10倍希釈した 1×PCR Buffer(1.2mM MgSOを含む)に、dTTPをdUTPに置換した2mM dNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、1U KOD DNAポリメラーゼ変異体、250ng KOD PCNA変異体、及び、1/30,000に希釈したSYBR GreenIを含む50μlの反応液中にアクチン遺伝子、1.0μM 約550bpを増幅する配列番号21及び22に記載のプライマー、ならびに、50コピー相当のヒトゲノムを添加し、2.5、2、1.5、1、0.5、0.25、0.1% 糞便存在下でのCt値を比較した。
コントロールにTaqの反応系でも同様の検討を実施した。Taq DNAポリメラーゼはToyobo製のものを用い、Anti-Taq High(Toyobo製)と混合したものを用いた。反応は1×BlendTaqに添付のBuffer、2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、0.2、及び1.0μMのプライマー(上記と同様)、抗体と混合した2.5Uの酵素を含む50μlの反応液に50コピー相当のヒトゲノム、2.5、2、1.5、1、0.5、0.25、0.1%糞便を添加し、Ct値を比較した。PCRはそれぞれ、94℃、30秒の前反応の後、98℃、0秒→55℃、0秒→68℃、0秒の高速サイクルを50サイクル繰り返すスケジュールでLight cycler2.0を用いて、昇温及び降温の速度を20℃/秒で行った。反応時間は約20分で実施された。
図6は、糞便・dUTPを含む組成から高速PCRを実施し、ヒトゲノム50コピーを増幅した場合のCtを示す。KOD変異体を用いた系ではプライマー濃度は1.0μMで実施し、PCNA変異体がある場合とない場合とのそれぞれで実施した。阻害物質がない場合と2.5、2、1.5、1、0.5、0.25、0.1%糞便でのCtを確認した。Taq DNAポリメラーゼを用いた系では0.2、1.0μMのプライマー濃度で、同様に阻害物質がない場合と2.5、2、1.5、1、0.5、0.25、0.1% 糞便でのCtを確認した。融解曲線で非特異的な増幅が見られる場合、非特異的増幅の量に応じて、丸で囲いマーキング(目的遺伝子の増幅もあるが非特異的増幅もある)、四角で囲いマーキングした(非特異的増幅のみ見られる)。また、まったく増幅しないサンプルは「N.D.」と表記した。
検査の現場では、糞便1%存在下で増幅を確認することが必要になる。Taqの系での結果、糞便1%存在下では、プライマー濃度が高くても、そもそも高速PCRで増幅が見られなかった。一方、KODの系では、PCNAを添加しなくても、0.5%まで増幅は確認できたが、0.5%で阻害が生じ始め、非特異的増幅が出現することが示された。PCNAを入れた系では1.5%糞便を入れても増幅が確認された。これらの結果から、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが高速PCRに向いていることがわかる。しかし、高濃度プライマーとファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いてもCtの立ち上がりはあまりよくなく、1%以下の糞便でも大きく影響を受ける結果となった。やはり高濃度プライマーとファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、PCNAを組み合わせた系が最も効率的であり、1%糞便を含んだ高速PCRにおいては、この組み合わせでないと増幅ができない結果が得られた。
本発明は、DNA合成に関わるバイオテクノロジー関連産業において有用であり、特に診断用途において有用である。

Claims (13)

  1. 動植物組織、体液、排泄物、細胞、細菌、及びウイルスからなる群より選択される少なくとも一種の阻害物質を含む生体試料を含んだ状態でPCRを行うための組成物であって、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、Proliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA;増殖細胞核抗原)、及び0.8μM以上の濃度でプライマーを含み、かつ、30サイクルから50サイクルを40分以内で実施するための組成物であることを特徴とするPCR用の組成物。
  2. 30サイクルから50サイクルを30分以内で実施するための組成物である請求項1に記載の組成物。
  3. 30サイクルから50サイクルを12分以内で実施するための組成物である請求項1又は2に記載の組成物。
  4. プライマーの濃度が1.0μM以上である請求項1からのいずれかに記載の組成物。
  5. 昇温又は降温の速度が10℃/秒以上となる速度でPCRを実施するための組成物である請求項1からのいずれかに記載の組成物。
  6. ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである請求項1からのいずれかに記載の組成物。
  7. ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体である請求項1からのいずれかに記載の組成物。
  8. PCNAが古細菌(Archea)由来のPCNAである請求項1からのいずれかに記載の組成物。
  9. PCNAがDNAポリメラーゼ増幅増強活性をもつ変異型PCNAである請求項1からのいずれかに記載の組成物。
  10. 請求項1からのいずれかに記載の組成物を反応液中に含むように構成されていることを特徴とするPCR用試薬。
  11. 請求項10に記載のPCR用試薬を含むことを特徴とするPCR用試薬キット。
  12. 請求項1からのいずれかに記載の組成物を用いる、15回から50回の熱サイクルによるPCR方法であって、前記組成物を含む反応液中に動植物組織、体液、排泄物、細胞、細菌、及びウイルスからなる群より選択される少なくとも一種の阻害物質を含む生体試料を添加し、かつ、PCRの反応時間が60分以内であることを特徴とするPCR方法。
  13. PCRの反応時間が30分以内である請求項12に記載のPCR方法。
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