JP2021006061A - Pcr方法 - Google Patents
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Abstract
Description
代表的な本発明は、以下の通りである。
項2.30サイクルから50サイクルを20分以内で実施するための組成である項1に記載のPCR方法組成。
項3.30サイクルから50サイクルを12分以内で実施するための組成である項1又は2に記載のPCR方法組成。
項4.プライマーの濃度が0.8μM以上である項1から3のいずれかに記載のPCR組成方法。
項5.プライマーの濃度が1.0μM以上である項1から4のいずれかに記載のPCR組成方法。
項6.昇温又は降温の速度が0.1℃/秒から20℃/秒の範囲でPCRを実施するための組成であることを特徴とする項1から5のいずれかに記載のPCR方法組成。
項7.昇温又は降温の速度が5℃/秒から20℃/秒の範囲でPCRを実施するための組成である項1から6のいずれかに記載のPCR方法組成。
項8.昇温又は降温の速度が10℃/秒から20℃/秒の範囲でPCRを実施するための組成である項1から7のいずれかに記載のPCR方法組成。
項9.ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである項1から8のいずれかに記載のPCR組成。
項10.ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体である項1から9のいずれかに記載のPCR組成。
項11.PCNAが古細菌(Archea)由来のPCNAである項1から10のいずれかに記載のPCR組成。
項12.PCNAがDNAポリメラーゼ増幅増強活性をもつ変異型PCNAである項1から11のいずれかに記載のPCR組成。
項13.項1から12のいずれかに記載のPCR組成を含むことを特徴とするPCR用試薬。
項14.項13に記載のPCR用試薬を含むことを特徴とするPCR用試薬キット
項15.項1から12のいずれかに記載のPCR組成により、15回から50回の熱サイクルによるPCR方法であって、かつ、PCRの反応時間が60分以内であることを特徴とするPCR方法。
項16.PCRの反応時間が30分以内である項15に記載のPCR方法。
項17.項1から12のいずれかに記載のPCR組成を含む反応液中に、生体試料を直接添加することを特徴とする項15又は16に記載のPCR方法。
本発明におけるPCR方法は、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、PCNA及び高濃度プライマーを反応液中に含み、高速でPCRを行うことを特徴とする。
本明細書においては、塩基配列、アミノ酸配列及びその個々の構成因子については、アルファベット表記による簡略化した記号を用いる場合があるが、いずれも分子生物学・遺伝子工学分野における慣行に従う。また、本明細書においては、アミノ酸配列の変異を簡潔に示すため、例えば「D143A」などの表記を用いる。「D143A」は、第143番目のアスパラギン酸をアラニンに置換したことを示しており、すなわち、置換前のアミノ酸残基の種類、その場所、置換後のアミノ酸残基の種類を示している。また、配列番号は、特に断らない限り、配列表に記載された配列番号に対応する。また、多重変異体の場合は、上記の表記を「/」でつなげて表す。例えば「D143A/D147A」は、第143番目のアスパラギン酸をアラニンに置換し、かつ、第147番目のアスパラギン酸をアラニンに置換したことを示す。
また、本明細書において「変異体」、「変異型」とは、従来知られたタンパク質とは異なるアミノ酸配列を備えることを意味するものであり、人為的変異によるか自然界における変異によるかを区別するものではない。
本発明におけるPCRは、30回の熱サイクルを行う場合に、反応時間が40分以内である高速PCRであり、好ましくは30分以内、さらに好ましくは20分以内、さらに好ましくは反応時間が10分以内である高速PCRが挙げられる。反応時間とは変性、アニーリング、伸長を繰り返す熱サイクルの時間を示す。通常のサーマルサイクラーの熱サイクル設定では反応時間が60分以内になることはほとんどない。例えば、PCR system GeneAmp(登録商標)9700(Applied Biosystem製)で60分以内に反応を終わらせるには熱サイクルの各ステップの時間を極端に短くする必要がある。実際、各ステップの時間を極端に短くし、94℃、2分の前反応の後、98℃、0秒→60℃、0秒→68℃、0秒を40サイクル実施すると反応時間は約60分となる。また、30分以内の反応時間を達成するには、高速で温度変化を実施するサーマルサイクラーを使用し、さらに熱サイクルの各ステップの時間を短くする必要がある。例えば高速での温度変化が可能なLight cycler(登録商標)2.0(Roche)を用いた場合、94℃、2分の前反応の後、98℃、0秒→55℃、0秒→68℃、0分を50サイクル実施すると反応時間は約20分となる。本発明におけるPCRの熱サイクル数は、15回から50回の範囲で設定して実施することができる。好ましくは25回から45回であり、より好ましくは30回から40回である。
本発明の核酸増幅法に用いるDNAポリメラーゼは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである。本発明においてファミリーBに属するDNAポリメラーゼとは、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有さないDNAポリメラーゼをいう。好ましくは古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである。
ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼとしては、パイロコッカス(Pyrococcus)属及びサーモコッカス(Thermococcus)属の細菌から単離されるDNAポリメラーゼが挙げられる。パイロコッカス属由来のDNAポリメラーゼとしては、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus sp.GB−D、Pyrococcus Woesei、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus horikoshiiから単離されたDNAポリメラーゼを含むが、これらに限定されない。サーモコッカス属に由来するDNAポリメラーゼとしては、Thermococcus kodakaraensis、Thermococcus gorgonarius、Thermococcus litoralis、Thermococcus sp.JDF−3、Thermococcus sp.9degrees North−7(Thermococcus sp.9°N−7)、Thermococcus sp.KS−1、Thermococcus celer、又はThermococcus siculiから単離されたDNAポリメラーゼを含むが、これらに限定されない。これらのDNAポリメラーゼを用いたPCR酵素は市販されており、Pfu(Staragene社)、KOD(Toyobo)、Pfx(Life Technologies社)、Vent(New England Biolabs)、Deep Vent(New England Biolabs)、Tgo(Roche)、Pwo(Roche)などがある。
本発明に用いる改変されたDNAポリメラーゼは、さらに3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域のアミノ酸配列のいずれかに少なくとも1つのアミノ酸の改変を含んでいてもよい。3‘−5’ エキソヌクレアーゼ活性とは、取り込まれたヌクレオチドをDNA重合体の3’末端から除去する能力を指し、上記の3‘−5’エキソヌクレアーゼ領域とは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼで高度に保存されている部位であり、サーモコッカス・コダカラエンシスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号1)、パイロコッカス・フリオサスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号2)、サーモコッカス・ゴルゴナリウスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号3)、サーモコッカス・リトラリスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号4)、パイロコッカス・エスピーGB−Dに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号5)、サーモコッカス・エスピーJDF−3に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号6)、サーモコッカス・エスピー9°N−7に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号7)、サーモコッカス・エスピーKS−1に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号8)、サーモコッカス・セラーに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号9)、又はサーモコッカス・シクリに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号10)においては、137〜147、206〜222、及び308〜318番目のアミノ酸である。本発明は、具体的に配列を提示したDNAポリメラーゼ以外のDNAポリメラーゼにも適用される。また、配列番号1〜10に示されるDNAポリメラーゼ以外のファミリーBに属する古細菌由来DNAポリメラーゼにおいては、配列番号1の137〜147、206〜222、及び308〜318番目のアミノ酸からなる3‘−5’エキソヌクレアーゼ領域と対応する領域のことを示す。
(3.3.1)
本発明に用いるファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、減少した塩基類似体検出活性を有する変異体でもよい。塩基類似体とはアデニンやシトシン、グアニン、チミン以外の塩基を示し、ウラシルやイノシンなどが挙げられる。通常、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、塩基類似体であるウラシルやイノシンを検出すると強く結合し、DNAポリメラーゼ機能を阻害する。塩基類似体検出活性とは、塩基類似体と強く結合し、DNAポリメラーゼ機能を阻害する活性を示す。減少した塩基類似体検出活性を有するファミリーBに属するDNAポリメラーゼ変異体とは、ウラシルやイノシンへの結合能力が低いことを特徴とするファミリーBに属するDNAポリメラーゼ変異体である。
本発明に用いる減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼ変異体として、より好ましいのは、ウラシルと相互作用に直接関連していると想定されている7、36、37、90〜97及び112〜119番目のアミノ酸のうち少なくとも1つに改変を加えた古細菌DNAポリメラーゼ変異体、例えば、(a)配列番号1又は配列番号2で示されるアミノ酸配列の7、36、37、90〜97及び112〜119番目に相当するアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有するアミノ酸配列で示される古細菌DNAポリメラーゼ変異体である。
(b)(a)で示されるアミノ酸配列においてさらに7、36、37、90〜97及び112〜119番目以外の部位において少なくとも1つのアミノ酸が改変されており、そのアミノ酸配列と配列番号1との同一性又はそのアミノ酸配列と配列番号2との同一性が80%以上(好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、特に好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である)であり、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列。
本発明においては、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、アミノ酸配列の同一性を算出する。
(c)(a)で示されるアミノ酸配列において、さらに7、36、37、90〜97及び112〜119番目以外の部位において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されており、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列。
本発明に用いる減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体は、より好ましくは、配列番号1又は配列番号2におけるアミノ酸Y7、P36、又はV93に相当するアミノ酸から選択される少なくとも1つのアミノ酸の改変を有する。ここで、例えばY7とは、7番目のアミノ酸であるチロシン(Y)残基を意味しており、アルファベット1文字は通用されているアミノ酸の略号を表している。好ましい例において、Y7アミノ酸はチロシン(Y)が非極性アミノ酸に置換されており、具体的にはY7A、Y7G、Y7V、Y7L、Y7I、Y7P、Y7F、Y7M、Y7W、及びY7Cからなる群より選ばれるアミノ酸置換である。別の好ましい例において、P36アミノ酸はプロリン(P)が正電荷をもつ極性アミノ酸に置換されており、具体的にはP36H、P36K、又はP36Rのアミノ酸置換である。別の好ましい例において、V93アミノ酸はバリン(V)が、正電荷をもち極性アミン酸に置換されており、具体的にはV93H、V93K、又はV93Rのアミノ酸置換である。
(1)(A)H147Eと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36H/V93K、P36K、P36R、P36H、V93R又はV93Qのいずれか
(2)(A)N210Dと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36K、P36R、P36H、V93Q、V93K又はV93Rのいずれか
(3)(A)I142Rと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36H、V93K、V93R又はV93Qのいずれか
(4)(A)D141A/E143Aと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36H又はV93Kのいずれか
本発明における塩基類似体検出活性はPCRによって評価できる。塩基類似体は、典型的にはウラシルである。本発明においては、鋳型となるDNA、緩衝材、マグネシウム、dNTPs、プライマー、及び評価対象のDNAポリメラーゼを含む通常のPCR反応液に、dUTP溶液を、終濃度0.5μM〜200μMで添加し、熱サイクルを行う。反応後に、エチジウムブロマイド染色1%アガロース電気泳動でPCR産物の有無を確認し、許容できたdUTP濃度によって、ウラシルの検出活性を評価することが出来る。ウラシル検出活性の高いDNAポリメラーゼは少しのdUTPの添加で伸長反応が阻害され、PCR産物が確認できない。また、ウラシルの検出活性の低いDNAポリメラーゼは、高濃度のdUTPを添加しても問題なくPCRによる遺伝子増幅が確認できる。
KOD −Plus− Ver.2(Toyobo製)添付の10×PCR Buffer、又はPfu DNA Polymerase(Agilent製)添付の10×PCR Bufferを用い、1×PCR Buffer、及び1.5mM MgSO4、0.2mM dNTPs(dATP、dTTP,dCTP、dGTP)、約1.3kbを増幅する15pmolの配列番号11及び12に記載のプライマー、10ngのヒトゲノムDNA(Roche製)、1Uの各酵素を含む50μlの反応液中に、dUTP(Roche製)を終濃度0.5、5、50、100、200μMになるよう添加する。94℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→65℃、30秒→68℃、1分30秒を30サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp(登録商標)9700(Applied Biosystem)にてPCRを行う。反応終了後、5μlの反応液について1%アガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下約1.3kbの増幅DNA断片を確認することで、塩基類似体検出活性が減少しているかどうかが評価できる。
本発明に用いるDNAポリメラーゼを改変する方法は、既に当該技術分野において確立されている。よって、公知の方法に従い改変を行うことが出来、その態様は特に制限されない。
上記改変DNAポリメラーゼ遺伝子を必要に応じて発現ベクターに移し替え、宿主として例えば大腸菌を、該発現ベクターを用いて形質転換した後、アンピシリン等の薬剤を含む寒天培地に塗布し、コロニーを形成させる。コロニーを栄養培地、例えばLB培地や2×YT培地に接種し、37℃で12〜20時間培養した後、菌体を破砕して粗酵素液を抽出する。ベクターとしては、pBluescript由来のものが好ましい。菌体を破砕する方法としては公知のいかなる手法を用いても良いが、例えば超音波処理、フレンチプレスやガラスビーズ破砕のような物理的破砕法やリゾチームのような溶菌酵素を用いることができる。この粗酵素液を80℃、30分間熱処理し、宿主由来のDNAポリメラーゼを失活させ、DNAポリメラーゼ活性を測定する。
本発明に用いるDNAポリメラーゼは、以下のように活性を測定する。酵素活性が強い場合には、保存緩衝液(50mM Tris−HCl(pH8.0),50mM KCl,1mM ジチオスレイトール,0.1% Tween20,0.1% Nonidet P40,50% グリセリン)でサンプルを希釈して測定を行う。(1)下記のA液25μl、B液5μl、C液5μl、滅菌水10μl、及び酵素溶液5μlをマイクロチューブに加えて75℃にて10分間反応する。(2)その後氷冷し、E液50μl、D液100μlを加えて、攪拌後更に10分間氷冷する。(3)この液をガラスフィルター(ワットマン製GF/Cフィルター)で濾過し、0.1N 塩酸及びエタノールで十分洗浄する。(4)フィルターの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パーキンエルマー製TriCarb 2810TR)で計測し、鋳型DNAのヌクレオチドの取り込みを測定する。酵素活性の1単位はこの条件で30分当りの10nmolのヌクレオチドを酸不溶性画分(即ち、D液を添加したときに不溶化する画分)に取り込む酵素量とする。
A液:40mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)、16mM 塩化マグネシウム、15mM ジチオスレイトール、100μg/mL BSA(牛血清アルブミン)
B液:1.5μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C液:1.5mM dNTP(250cpm/pmol [3H]dTTP)
D液:20% トリクロロ酢酸(2mM ピロリン酸ナトリウム)
E液:1mg/mL仔牛胸腺DNA
(4.1)
本発明に用いるPCNAは、PCR増強因子の一種である。前記PCNAとしては、特に限定されないが、PCRの熱サイクルに耐えられる耐熱性のものが望ましく、好ましくはPCR後も活性が残るものが望まれる。さらに好ましくは80℃で30分の熱処理を行っても可溶性であり、活性が50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上残っているものが望まれる。
PCNAが多量体形成に関する部位は、サーモコッカス・コダカラエンシスに由来するPCNA(KOD−PCNAとも記載)(配列番号13)、パイロコッカス・フリオサスのPCNA(Pfu−PCNAとも記載)(配列番号14)においては、82、84、109番目のアミノ酸からなるN末端領域と139、143、147番目のアミノ酸からなるC末端領域が挙げられる。N末端領域はプラスに帯電し、C末端領域はマイナスに帯電し、相互作用することで多量体形成を行う。
(a)82、84、109番目に相当するアミノ酸からなるN末端領域、又は、
(b)139、143、147番目に相当するアミノ酸からなるC末端領域に少なくともひとつの改変を有し、RFCがなくともDNAにロードし、DNAポリメラーゼの伸長反応を促進する変異体が挙げられる。
本発明の中性アミノ酸としては、天然のものであれば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンが挙げられる。好ましくは、置換部位の周辺部位の立体構造に与える影響が最も小さいアラニンである。塩基性アミノ酸としては、天然のものであれば、アルギニン、ヒスチジン、リシン及びトリプトファンが挙げられる。好ましくはアルギニン又はリジンである。
また、本発明に用いるPCNAは、以下の(A)から(E)のうちいずれかに示されるPCNA単量体である。
(A)配列番号23に記載のアミノ酸配列における142番目のアミノ酸残基を、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファンからなる群がら選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチドからなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド。
(B)(A)で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号23に記載のアミノ酸配列における142番目のアミノ酸残基を、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファンからなる群がら選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチドからなり、以下の(a)から(e)のいずれかの置換、欠失、挿入及び/又は付加(これらを纏めて「変異」とも表す。)を含んでなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド。
(a)80番目のアミノ酸残基をリジン、ヒスチジン及びトリプトファンからなる群から選択されるいずれかに置換
(b)82番目のアミノ酸残基をアルギニン、ヒスチジン及びトリプトファンからなる群から選択されるいずれかに置換
(c)108番目のアミノ酸残基をリジン、ヒスチジン及びトリプトファンからなる群から選択されるいずれかに置換
(d)138番目のアミノ酸残基をグルタミン酸に置換
(e)146番目のアミノ酸残基をグルタミン酸に置換
(C)(A)で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号23に記載のアミノ酸配列における142番目のアミノ酸残基を、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファンからなる群がら選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチドからなり、、80番目、82番目、108番目、138番目、142番目及び第146番目に相当するアミノ酸残基以外の、1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入又は付加されているアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド。
(D)(A)で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号23に記載のアミノ酸配列の142番目のアミノ酸残基のみを、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファンからなる群がら選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(E)(A)で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号23で示されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド。
(a)80、82、108番目のアミノ酸残基群
(b)138、142、146番目のアミノ酸残基群
上記PCNAを得る方法はPCNA遺伝子を必要に応じて発現ベクターに移し替え、宿主として例えば大腸菌を、該発現ベクターを用いて形質転換した後、アンピシリン等の薬剤を含む寒天培地に塗布し、コロニーを形成させる。コロニーを栄養培地、例えばLB培地や2×YT培地に接種し、37℃で12〜20時間培養した後、菌体を破砕して粗酵素液を抽出する。ベクターとしては、pBluescript由来のものが好ましい。菌体を破砕する方法としては公知のいかなる手法を用いても良いが、例えば超音波処理、フレンチプレスやガラスビーズ破砕のような物理的破砕法やリゾチームのような溶菌酵素を用いることができる。この粗酵素液を80℃、30分間熱処理し、遠心することで宿主由来のタンパクを除去し、SDS−PAGEに供することで、目的タンパク質の発現を確認することができる。
上記PCNA変異体が単独でDNAにロードできるか(DNAポリメラーゼ増幅増強活性があるか)どうかは、PCRによって評価できる。鋳型となるDNA、緩衝材、マグネシウム、dNTPs、プライマー、及びファミリーBに属するDNAポリメラーゼを含むPCR反応液に、評価するPCNAを添加し、PCNA添加なしのもの、また野生型PCNA添加のものと増幅量を比較することで、単独でDNAにロードできるかを確認することができる。野生型のPCNAをはじめ、単独でDNAにロードできないPCNAは添加しても、PCRの増幅量は変化せず、むしろ増幅量を減らす傾向がある。一方、単独でDNAにロードできる変異体は、PCNA添加なしのものと比較することでDNAポリメラーゼ増幅増強活性を評価することができる。
KOD Dash(Toyobo製)添付の10×PCR Buffer(反応に用いる濃度の10倍に濃縮されている)を用いて、
1×PCR Buffer、
0.2mM dNTPs、
約3.6kbを増幅する15pmolの配列番号15及び16に記載のプライマー、
10ngのヒトゲノムDNA(Roche製Human Genomic DNA;型番11691112001)、
1U KOD −Plus− ポリメラーゼ
を含むよう反応液を調製し、
50μlの反応液中に、評価するPCNAを250ng添加し、
94℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→68℃、30秒を30サイクル繰り返すスケジュールでPCRを行う。反応終了後、5μlの反応液について1%アガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下約3.6kbの増幅DNA断片を、野生型PCNAを添加したものと比較することで、単独でDNAにロードできるPCNAかどうかを評価することができる。単独でDNAにロードできるPCNAは添加によって増幅量が増加する。
本発明におけるプライマー濃度は、0.6μM以上である。一般に、高濃度のプライマーは非特異やプライマーダイマーの原因になるため、通常のPCRでは0.1〜0.5μMで使用するのが一般的といわれている。本発明における高速PCR条件では、サイクルのアニーリングステップが短いため、高い濃度でないとプライミングの効率が低下することがわかっている。逆に、高速PCR条件ではアニーリングステップが短いため、高濃度のプライマーでも非特異やプライマーダイマーが生じにくい。本発明におけるプライマー濃度は、より好ましくは0.8μM以上、さらに好ましくは1.0μM以上である。なお、4.0μM、好ましくは2.0μM、さらに好ましくは1.4μMを超えないことが好ましい。
本発明におけるPCRにおいては、熱サイクルにおける昇温又は降温の速度が0.1℃/秒から20℃/秒で実施することが好ましい。より好ましくは5℃/秒から20℃/秒の範囲、さらに好ましくは10℃/秒から20℃/秒の範囲である。このような昇温又は降温の速度の熱サイクルを実施するためには、空気による加熱及び冷却により温度制御することができるようなサーマルサイクラーを用いることが特に好ましい。
本発明のPCR方法は、阻害物質を含んだ状態で実施することに適している。本発明における阻害物質とは、例えば生体試料を示すが、PCRを阻害する物質であれば特に限定されない。生体試料は、生体から採取された試料であれば特に限定されない。例えば、体毛、爪、口腔粘膜などの動植物組織、血液などの体液、糞便や尿などの排泄物、細胞、細菌、ウイルス等をいう。体液には血液や唾液が含まれ、細胞には血液から分離した白血球が含まれるが、これらに限定されるものではない。
本発明においては、必要に応じて、さらに耐熱性DNAポリメラーゼのポリメラーゼ活性及び/又は3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を抑制する活性を有する抗体を用いても良い。前記抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体などが挙げられる。本反応組成は、PCRの感度上昇、非特異的増幅の軽減に特に有効である。
本発明のPCRを実行するための試薬は、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、及びPCNA及び0.6μM以上の濃度のプライマーを反応液中に含み、それ以外の構成は特に限定されない。なお、前記試薬にはキットの形態も含まれる。
KOD DNAポリメラーゼ変異体の作製
後述の実施例に用いるために、サーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ(Y7A/P36H/N210D変異体)遺伝子を含有するプラスミドを作製した。変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたサーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号17)(pKOD)を用いた。
変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(Toyobo製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリJM109を形質転換し、酵素調製に用いた。
改変型耐熱性DNAポリメラーゼの作製
実施例1で得られた菌体の培養は以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを、500mL坂口フラスコに分注した。この培地に、予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリJM109(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に、細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、ヘパリンセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1% ノニデットP40、50% グリセリン)に置換し、改変型耐熱性DNAポリメラーゼを得た。
上記精製工程のDNAポリメラーゼ活性測定は、上記のDNAポリメラーゼ活性測定法に従い行った。また、酵素活性が高い場合はサンプルを希釈して測定を行った。
KOD−PCNA変異体の作製
サーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性PCNA(M73L/D147A変異体)遺伝子を含有するプラスミドを作製した。変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBlueScriptにクローニングされたサーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来のPCNA(配列番号18)(pKODPCNA)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(Toyobo製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリDH5αを形質転換し、酵素調製に用いた。
改変型耐熱性PCNAの作製
実施例3で得られた菌体の培養は、以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを、500mL坂口フラスコに分注した。この培地に予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地(1% バクトトリプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリDH5α(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、Qセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1% ノニデットP40、50% グリセリン)に置換し、改変型耐熱性PCNAを得た。
プライマー濃度、マグネシウム濃度の検討
上記で得られたKOD Y7A/P36H/N210D、及びKOD PCNA D147Aを用いて、高速PCRを実施し、プライマー濃度の影響、及びマグネシウム濃度の影響を確認した。
PCRにはKOD Dash(Toyobo製)添付の10×PCR Bufferを10倍希釈した 1×PCR Buffer(1.2mM MgSO4を含む)に、0.2mM dNTPs、1U KOD DNAポリメラーゼ変異体、250ng KOD PCNA変異体、及び、1/30,000に希釈したSYBR(登録商標) GreenIを含む50μlの反応液中に、以下の(a)又は(b)を添加し、それぞれでCt値を比較した。
(a)サルモネラのinvA遺伝子(約700bp)を増幅する配列番号19及び20に記載のプライマー、及び、50コピー相当のサルモネラ菌ゲノム
(b)アクチン遺伝子(約550bp)を増幅する配列番号21及び22に記載のプライマー、及び、50コピー相当のヒトゲノム
プライマー濃度は0.2、0.4、0.6μMの3水準を設定した。また、MgSO4を添加して、Mg濃度を1.2、2、4、6、8mMの5水準で設定し、前記プライマー濃度3水準との組合せをそれぞれ検討した。
PCRは、94℃、30秒の前反応の後、98℃、0秒→55℃、0秒→68℃、0秒の高速サイクルを50サイクル繰り返すスケジュールでLight cycler2.0を用いて、昇温及び降温の速度を20℃/秒で行った。反応時間は約20分で実施された。
これに対して、アクチン遺伝子の増幅は、Mg濃度が低い場合は、プライマー濃度を高めることでCtが改善されたが、Mg濃度を上げると非特異増幅が出現する結果となった。プライマー、Mgは濃度を上げると、それぞれPCRの効率を高める働きがある、一方、あまり上げすぎると非特異的増幅につながることが知らている。しかし、今回のような高速PCRにおいては、高濃度のMgは通常のPCRと同様、非特異的増幅を増やす可能性が高まるものの、高濃度のプライマーでは非特異的増幅は生じにくくする結果になった。
高速PCR条件では、サイクルのアニーリングステップが短いため、高濃度のプライマーを用いても非特異的増幅やプライマーダイマーが生じにくく、特異性を保ったまま、PCR効率のみを向上させる働きがあることが考えられる。
プライマー濃度の検討
実施例5と同様、上記で得られたKOD Y7A/P36H/N210D、及びKOD PCNA D147Aを用いて、高速PCRを実施し、プライマー濃度の影響を確認した。
ここでは。dUTP存在下の高速PCRでもプライマー濃度の影響があるかについても確認した。
PCNAと高濃度プライマーの相乗効果の確認
上記で得られたKOD Y7A/P36H/N210D及びKOD PCNA D147Aを用いて、高速PCRを実施し、PCNAと高濃度プライマーの相乗効果を確認した。
PCRにはKOD Dash(Toyobo製)添付の10×PCR Bufferを10倍希釈した 1×PCR Buffer(1.2mM MgSO4を含む)に、0.2mM dNTPs、1U KOD DNAポリメラーゼ変異体、250ng KOD PCNA変異体、及び、1/30,000に希釈したSYBR GreenIを含む50μlの反応液中に、アクチン遺伝子、約550bpを増幅する配列番号21及び22に記載のプライマー、ならびに様々な濃度のヒトゲノムを添加し、それぞれでCt値を比較した。
ヒトゲノムは、104、103、102、101コピー、ノンテンプレートコントロール(NTC)の5サンプルで行った。今回、PCNA変異体を含まない組成でもPCRを実施し、比較した。プライマー濃度はそれぞれ0.2、1.0μMで実施し、PCRは、94℃、30秒の前反応の後、98℃、0秒→55℃、0秒→68℃、0秒のサイクルを50サイクル繰り返す高速PCRスケジュールと、94℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→60℃、10秒→68℃、30秒のサイクルを50サイクル繰り返す通常PCRスケジュールの2種類で比較した。サーマルサイクラーにはLight cycler(登録商標)2.0を用いて、昇温及び降温の速度を20℃/秒で行った。
PCR阻害物質存在下での高速PCRの検討
上記で得られたKOD Y7A/P36H/N210D、及びKOD PCNA D147Aを用いて、阻害物質を含む条件で高速PCRを実施した。
阻害物質は以下のように調製した。
糞便:8mlの水に2gの糞便を懸濁し、20%糞便懸濁液を作製する。95℃、5分熱処理し、12,000rpm、1分の遠心後、上清を20%糞便とした。
尿:ヒトから採取した尿を100%尿とした。
口腔粘膜:200μlの水に綿棒で採取した口腔粘膜を落とし、100%口腔粘膜液とした。
血液:EDTA採血管で採取した血液を100%血液とした。
プライマー濃度は0.2、1.0μMで実施した。阻害物質には上記で調製したサンプルを用い、2.5、0.5、0.1% 糞便、5、1、0.2、0.04% 尿、25、5、1、0.2% 口腔粘膜、1.6、0.32、0.06% 血液を添加した。PCRは、94℃、30秒の前反応の後、98℃、0秒→55℃、0秒→68℃、0秒の高速サイクルを50サイクル繰り返すスケジュールでLight cycler(登録商標)2.0を用いて、昇温及び降温の速度を20℃/秒で行った。反応時間は約20分で実施された。
糞便に関しては、プライマー濃度が0.2μMでは0.5%までしか増幅しないところ、プライマー濃度を1.0μMに上げることで、2.5%含まれていても増幅が確認できた。
尿に関しては、プライマー濃度が0.2μMでは立ち上がりが遅れるものの、プライマー濃度を1.0μMに上げることで、立ち上がりが改善され、5%の持込でも増幅が確認された。口腔粘膜に関しては、プライマー濃度が0.2μMでは5%までしか増幅しないところ、プライマー濃度を1.0μMに上げることで、25%含まれていても増幅が確認できた。
血液に関しては、プライマー濃度が0.2μMでは0.32%までしか増幅しないところ、プライマー濃度を1.0μMに上げることで、1.6%含まれていても増幅が確認できた。
PCNAの添加に加え、プライマー濃度を高めることで阻害物質が含まれていても高速PCRが可能になったと考えられる。
PCR阻害物質・dUTP存在下での高速PCRの検討
上記で得られたKOD Y7A/P36H/N210D、及びKOD PCNA D147Aを用いて、阻害物質及びdUTPを含む条件で高速PCRを実施した。
阻害物質は以下のように調製した。
糞便:8mlの水に2gの糞便を懸濁し、20%糞便懸濁液を作製した。95℃、5分熱処理し、12,000rpm、1分の遠心後、上清を20%糞便とした。
コントロールにTaqの反応系でも同様の検討を実施した。Taq DNAポリメラーゼはToyobo製のものを用い、Anti−Taq High(Toyobo製)と混合したものを用いた。反応は1×BlendTaqに添付のBuffer、2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、0.2、及び1.0μMのプライマー(上記と同様)、抗体と混合した2.5Uの酵素を含む50μlの反応液に50コピー相当のヒトゲノム、2.5、2、1.5、1、0.5、0.25、0.1%糞便を添加し、Ct値を比較した。PCRはそれぞれ、94℃、30秒の前反応の後、98℃、0秒→55℃、0秒→68℃、0秒の高速サイクルを50サイクル繰り返すスケジュールでLight cycler2.0を用いて、昇温及び降温の速度を20℃/秒で行った。反応時間は約20分で実施された。
Claims (14)
- 阻害物質を含む生体試料からPCRを行うための組成物であって、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、Proliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA;増殖細胞核抗原)、及び0.6μM以上の濃度でプライマーを含み、かつ、30サイクルから50サイクルを40分以内で実施するための組成物であることを特徴とするPCR用の組成物。
- 30サイクルから50サイクルを30分以内で実施するための組成物である請求項1に記載の組成物。
- 30サイクルから50サイクルを12分以内で実施するための組成物である請求項1又は2に記載の組成物。
- プライマーの濃度が0.8μM以上である請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
- プライマーの濃度が1.0μM以上である請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
- 昇温又は降温の速度が10℃/秒以上となる速度でPCRを実施するための組成物である請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
- ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
- ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体である請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
- PCNAが古細菌(Archea)由来のPCNAである請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
- PCNAがDNAポリメラーゼ増幅増強活性をもつ変異型PCNAである請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
- 請求項1から10のいずれかに記載の組成物を反応液中に含むように構成されていることを特徴とするPCR用試薬。
- 請求項11に記載のPCR用試薬を含むことを特徴とするPCR用試薬キット。
- 請求項1から10のいずれかに記載の組成物を用いる、15回から50回の熱サイクルによるPCR方法であって、前記組成物を含む反応液中に阻害物質を含む生体試料を添加し、かつ、PCRの反応時間が60分以内であることを特徴とするPCR方法。
- PCRの反応時間が30分以内である請求項13に記載のPCR方法。
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