JP2016119868A - Thermococcuskodakaraensis由来変異型PCNA - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Thermococcus kodakaraensisのPCNA2由来の特定のアミノ酸配列の第107番目に相当するアミノ酸を中性アミノ酸残基に改変した変異型PCNA。前記で示されるPCNA単量体において、更に、前記配列のアミノ酸配列における、107番目に相当するアミノ酸残基以外の、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入及び/又は付加されているアミノ酸配列からなり、増幅増強活性を有するポリペプチド。前記特定のアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、増幅増強活性を有するポリペプチド。該変異型PCNAを用いれば、PCRの伸長時間を大幅に短縮でき、診断などの遺伝子増幅において非常に有用である。
【選択図】なし
Description
これら特許文献1〜3のPCNA変異体を用いればDNA合成における増幅量の改善につながることがわかっている。
構造解析の結果からは配列番号1に記載のアミノ酸における、第143番目、第177番目のアミノ酸残基群と、第82番目、第87番目、第107、第109番目のアミノ酸残基群とが、また第75番目のアミノ酸と第172番目のアミノ酸とが接合し、相互に影響しあうネットワークを形成すると考えられている。
以下の(1)から(3)のうちいずれかで示されるPCNA単量体。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列の第107番目のアミノ酸残基を中性アミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)(1)で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号1に記載のアミノ酸配列における、107番目に相当するアミノ酸残基以外の、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されているアミノ酸配列からなり、増幅増強活性を有するポリペプチド。
(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、増幅増強活性を有するポリペプチド。
[項2]
項1に記載のPCNA単量体が備えるアミノ酸配列をコードするDNA。
[項3]
項2に記載のDNAを組み込んだベクター。
[項4]
項3に記載のベクターを含む形質転換体。
[項5]
項4に記載の形質転換体を培地で培養し、前記形質転換体中または培地中に、PCNA単量体および/または前記単量体で構成された多量体を蓄積させ、蓄積したPCNAの単量体または多量体を回収する工程を含む、PCNAの製造方法。
[項6]
項1に記載のPCNA単量体および/または前記単量体で構成された多量体を含むDNA複製用試薬。
[項7]
項6に記載の試薬を備えた、DNA複製用キット。
[項8]
PCR用の試薬を備えた、項7に記載のDNA複製用キット。
[項9]
項1に記載のPCNA単量体および/または前記単量体で構成された多量体と、DNAポリメラーゼとの存在下でDNAの合成反応を行う、DNAの複製方法。
[項10]
前記DNAの合成反応がPCRである、項9に記載のDNAの複製方法。
本明細書においては、塩基配列、アミノ酸配列およびその個々の構成因子については、アルファベット表記による簡略化した記号を用いる場合があるが、いずれも分子生物学・遺伝子工学分野における慣行に従う。また、本明細書においては、アミノ酸配列の変異を簡潔に示すため、例えば「D143A」などの表記を用いる。「D143A」は、第143番目のアスパラギン酸をアラニンに置換したことを示しており、すなわち、置換前のアミノ酸残基の種類、その場所、置換後のアミノ酸残基の種類を示している。欠損はΔで表記する。
また、配列番号は、特に断らない限り、配列表に記載された配列番号に対応する。また、多重変異体の場合は、上記の表記を「/」でつなげて表す。たとえば「D143A/D147A」は、第143番目のアスパラギン酸をアラニンに置換し、かつ、第147番目のアスパラギン酸をアラニンに置換したことを示す。三重変異体以上の多重変異体については、さらに「/」の記号のあとに「P36H」などの変異箇所についての情報を追記する。
また、本明細書において「変異型PCNA」という場合の「変異型」とは、従来知られたPCNAとは異なるアミノ酸配列を備えることを意味するものであり、人為的変異によるか自然界における変異によるかを区別するものではない。
本発明の実施形態の一つは、以下の(1)から(3)のうちいずれかで示されるPCNA単量体である。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列の107番目のアミノ酸残基を中性アミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)(1)で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号1に記載のアミノ酸配列における、107番目に相当するアミノ酸残基以外の、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加(これらを纏めて「変異」とも表す。)されているアミノ酸配列からなり、増幅増強活性を有するポリペプチド。
(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、増幅増強活性を有するポリペプチド。
配列番号1は、Thermococcus kodakaraensis由来のPCNA(以下、KOD−PCNA2とも記載する。)のアミノ酸配列である。
一又は数個の変異は、制限酵素処理、エキソヌクレアーゼやDNAリガーゼ等による処理、位置指定突然変異導入法やランダム突然変異導入法(Molecular Cloning, Third Edition, Chapter 13 ,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)など公知の手法を利用して、後述する本発明のPCNA単量体をコードするDNAに変異を導入することによって実施することが可能である。また、紫外線照射など他の方法によってもバリアントPCNA単量体を得ることができる。バリアントPCNA単量体には、PCNAを保持する微生物の個体差、種や属の違いに基づく場合などの天然に生じるバリアント(例えば、一塩基多型)も含まれる。
本明細書では、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いることにより、アミノ酸配列の同一性を算出する。
本発明のPCNA単量体においては、配列番号1における107番目のアミノ酸残基が中性アミノ酸残基に置換されるが、置換する塩基性アミノ酸の種類は特に限定されない。本発明の中性アミノ酸としては、天然のものであれば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンが挙げられる。好ましくは、置換部位の周辺部位の立体構造に与える影響がもっとも小さいアラニンである。
増幅増強活性はPCRによって評価できる。鋳型となるDNA、緩衝材、マグネシウム、dNTPs、プライマー、およびファミリーBに属するDNAポリメラーゼを含むPCR反応液に、評価するPCNAを添加し、PCNA添加なしのものと増幅量を比較することで、増幅増強活性を確認することができる。好ましくは、増幅量が少ないPCR反応系でPCNAの増幅増強活性は評価しやすく、さらに好ましくは、dUTPを含む反応系や伸長時間が短い反応条件などでPCNAの増幅増強活性を評価することが望ましい。
PCNAの増幅増強活性を評価しやすくするため、伸長時間を短くし、増幅量を少なくした反応系でPCNAの増幅増強活性を比較する。
本明細書においては、増幅増強活性は以下の方法で評価する。
(i)PCR
KOD Dash(Toyobo社製)添付の10×PCR Buffer(反応に用いる濃度の10倍に濃縮されている。)を用いて、
1×PCR Buffer、
0.2mM dNTPs、
1pmolのプライマー(配列番号3及び4)、
50ngのヒトゲノムDNA(Roche製)、
1Uの KOD −Plus− ポリメラーゼ
を含むよう反応液を調製する。
50μlの前記反応液中に、評価するPCNAを250ng添加し、
94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→68℃、30秒を30サイクル繰り返すスケジュールでPCRを行う。
(ii)PCR産物の分析
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下、増幅DNA断片を、PCNAを添加していないものと比較することで増幅増強活性を評価することができる。増幅増強活性の高いPCNAは添加によって増幅量が増加する。
このような方法で増幅量を比較したとき、PCNAを添加した場合の増幅量が、PCNAを添加しなかった場合の増幅量の1.0倍(好ましくは1.2倍、さらに好ましくは1.5倍、さらに好ましくは2倍、3倍)を超える。もしくは増幅していなかったターゲットが増幅すれば、そのPCNAが「増幅増強活性を有する」と判断する。
PCRにおいては、プライマーと鋳型DNAを用いてDNA複製を繰り返し、幾何級数的にDNAを増幅させる。そのため、PCNAはDNAポリメラーゼに対するクランプとしての機能を果たすと共に、DNAポリメラーゼが鋳型上で安定した後または所定領域の増幅後には鋳型から速やかに外れることが望ましい。
本発明のPCNA変異体が従来のPCNA変異体よりDNAの複製反応を促進し得る作用・機序は必ずしも明確ではないが、多量体により形成される環構造が温度上昇時に解除されるような構造を有することにより、DNAの複製反応の繰り返しが円滑に行われ、その結果、DNA複製反応をより促進するということが推測される。
本発明のPCNA単量体は、単離されたもの又は精製されたものであることが好ましい。また、本発明のPCNA単量体は、上記保存に適した溶液中に溶解した状態又は凍結乾燥された状態(例えば、粉末状)で存在してもよい。本発明のPCNA単量体に関して使用する場合の「単離された」とは、当該酵素以外の成分(例えば、宿主細胞に由来する夾雑タンパク質、他の成分、培養液等)を実質的に含まない)状態をいう。具体的には例えば、本発明の単離されたPCNA単量体は、夾雑タンパク質の含有量が重量換算で全体の約20%未満、好ましくは約10%未満、更に好ましくは約5%未満、より一層好ましくは約1%未満である。一方で、本発明のPCNA単量体は、保存又は酵素活性の測定に適した溶液(例えば、バッファー)中に存在してもよい。また、一部または全部が三量体などの多量体を形成していてもよい。
(2.1)本発明のPCNAをコードするDNA
PCNAをコードする遺伝子は、PCNAをもつ微生物からクローニングすることができる。またアミノ酸の配列情報や核酸の配列情報をもとに人工的に合成することもできる。
本発明の実施形態の一つは、上記の本発明の変異型PCNA単量体が備えるアミノ酸配列をコードするDNAである。具体的には以下の(A)〜(D)のいずれかである。
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列の107番目のアミノ酸残基を中性アミノ酸残基に置換したアミノ酸配列をコードする塩基配列を示すDNA
(B)配列番号5に記載の塩基配列において、第319〜321番目が中性アミノ酸残基をコードするトリプレットに対応するヌクレオチドで置き換えられたDNA
(C)前記(B)に示される塩基配列との同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつ、第319〜321番目が中性アミノ酸残基をコードするトリプレットに対応するヌクレオチドで置き換えられ、かつ、増幅増強活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(D)配列番号5のポリヌクレオチドの有する塩基配列と相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、
配列番号1における107番目に相当するアミノ酸残基が中性アミノ酸残基で置き換えられたアミノ酸配列をコードする塩基配列を有し、かつ、増幅増強活性を有するPCNAをコードするポリヌクレオチド
本明細書では、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムAdvanced BLAST 2.1において、プログラムにblastnを用い、各種パラメータはデフォルト値に設定して検索を行うことにより、ヌクレオチド配列の相同性の値(%)を算出する。
本明細書では、「ストリンジェントな条件」とは、以下に示す条件を言う。
ハイブリダイゼーション液として50%ホルムアミド、5×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、1×Denhardt溶液、1%SDS、10%デキストラン硫酸、10μg/mLの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いる。
本発明の実施形態の一つは、上記の本発明の変異型PCNAが備えるアミノ酸配列をコードするDNAを組み込んだベクターである。
ベクターの具体例としては、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター等)等を挙げることができる。また、糸状菌を宿主とする場合に適したベクターや、セルフクローニングに適したベクターを使用することも可能である。
本発明の実施形態の一つは、上記の本発明の変異型PCNAが備えるアミノ酸配列をコードするDNAを組み込んだベクターを含む形質転換体である。
DNAの宿主への導入手段は特に制限されないが、例えば、上記(2.2)で説明するベクターに組み込まれた状態で宿主に導入される。宿主細胞は、本発明のDNAを発現して変異型PCNAを生産することが可能である限り、特に制限されない。具体的には、大腸菌、枯草菌等の原核細胞や、酵母、カビ、昆虫細胞、植物培養細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞等を使用することができる。
本発明の実施形態の一つは、前記の形質転換体を培地で培養し、前記形質転換体中または培地中に、PCNA単量体または前記単量体で構成された多量体を蓄積させ、蓄積したPCNAの単量体または多量体を回収する工程を含む、変異型PCNAの製造方法である。
(3.1)DNAの複製方法
本発明の実施形態の一つは、上記の本発明のPCNAおよびDNAポリメラーゼの存在下でDNAの合成反応を行う、DNAの複製方法である。前記方法において、PCNAは単量体であっても前記単量体で構成された多量体のいずれであってもかまわないし、その両方の形態が混在していても良い。
増幅対象DNAに、
(a)DNAポリメラーゼ
(b)PCNA
(c)一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に互いに相補的である一対のプライマー
(d)DNA合成基質(デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP))、および、
(e)マグネシウムイオン、アンモニウムイオン及び/又はカリウムイオンを含むバッファー溶液
を、混合し、
サーマルサイクラー等を用いて反応液の温度を以下の(I)から(IV)で示されるサイクルで上下させることにより、(1)DNA変性、(2)プライマーのアニーリング、(3)プライマーの伸長の熱サイクルを繰り返し、特定のDNA断片を増幅させる。
(I)反応液を94°C程度に加熱し、30秒から1分間温度を保ち、2本鎖DNAを1本鎖に分かれさせる。
(II)60°C程度(プライマーによって若干異なる)にまで急速冷却し、その1本鎖DNAとプライマーをアニーリングさせる。
(III)プライマーの分離がおきずDNAポリメラーゼの活性に至適な温度帯まで、再び加熱する。実験目的により、その温度は60−72℃程度に設定される。DNAが合成されるのに必要な時間、増幅する長さによるが通常1分から2分、この温度を保つ。
(IV)ここまでが1つのサイクルで、以後、(I)から(III)までの手順を繰り返していく事で特定のDNA断片を増幅させる。
本発明のPCNAは特に伸長性向上に有効であり、忠実性には優れるが伸長性に劣るタイプのα型ポリメラーゼとの組み合わせにおいて特に有用である。典型的なα型ポリメラーゼとしては、ファミリーBに属するものが挙げられる。なかでもPyrococcusやThermococcusなど古細菌に由来するものが好ましい。
例えば、Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ社)、TaKaRa EX Taq(タカラバイオ社)、Vent DNA Polymerase(NEW ENGLAND Bio Labs社)、Deep VentR DNA Polymerase(New England Biolabs社)、Pfu Turbo DNA Polymerase(ストラタジーン社)、KOD DNA Polymerase(東洋紡社)、およびPwo DNA Polymerase(ロッシュ・ダイアグノスティックス社)など、現在主要に用いられているDNAポリメラーゼのほとんどに適用し得るが、これらに限定されるものではない。
上記のα型ポリメラーゼは、さらに、減少した塩基類似体検出活性を有する変異体であっても良い。塩基類似体とはアデニンやシトシン、グアニン、チミン以外の塩基を示し、ウラシルやイノシンなどが挙げられる。通常、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、塩基類似体であるウラシルやイノシンを検出すると強く結合し、ポリメラーゼ機能を阻害する。塩基類似体検出活性とは、塩基類似体と強く結合し、ポリメラーゼ機能を阻害する活性を示す。減少した塩基類似体検出活性を有するファミリーBに属するDNAポリメラーゼ変異体とは、ウラシルやイノシンへの結合能力が低いことを特徴とするファミリーBに属するDNAポリメラーゼ変異体である。
このような変異体は、ウラシルの結合に関するアミノ酸配列(ウラシル結合ポケット)の少なくとも1か所に改変を加えることにより作製できる。具体的には、Thermococcus kodakaraensis KOD1株由来のDNAポリメラーゼのアミノ酸配列(配列番号6)の1〜40番目、および78〜130番目によって形成されるウラシルの結合に関するアミノ酸配列(ウラシル結合ポケット)の少なくとも1か所に改変を加え、野生型のDNAポリメラーゼと比較してウラシルやイノシンへの結合能力を低下させたDNAポリメラーゼ変異体が例示される。
本発明の核酸増幅法に用いる減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼ変異体として、より好ましいのは、ウラシルと相互作用に直接関連していると想定されている、配列番号6または配列番号7で示されるアミノ酸配列の7、36、37、90〜97および112〜119番目のうち少なくとも1つに改変を加えた古細菌DNAポリメラーゼ変異体、たとえば、
(a1)配列番号6または配列番号7で示されるアミノ酸配列の7、36、37、90〜97および112〜119番目に相当するアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド
である。
上記のDNAポリメラーゼ変異体は、以下の(a2)で示されるものであってもよい。
(a2)(a1)で示されるDNAポリメラーゼ変異体において、さらに、7、36、37、90〜97および112〜119番目以外の部位において少なくとも1つのアミノ酸が改変されており、そのアミノ酸配列と配列番号6との同一性またはそのアミノ酸配列と配列番号7との同一性が80%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)であり、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するポリペプチド。
本明細書では、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、アミノ酸配列の同一性を算出する。
上記のDNAポリメラーゼ変異体は、以下の(a3)で示されるものであってもよい。
(a3)(a1)で示されるDNAポリメラーゼ変異体において、さらに、7、36、37、90〜97および112〜119番目以外の部位において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されており、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するポリペプチド。
本明細書では、DNA Databank of Japan(DDBJ)のClustalW(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/index.php?lang=ja)においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、配列の一次構造を比較する。
本発明の核酸増幅法に用いる減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体は、より好ましくは、配列番号6または配列番号7で示されるアミノ酸配列の7、36、または93番目に相当するアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付の10×PCR Buffer、またはPfu DNA Polymerase(Agilent社製)添付の10×PCR Bufferを用い、1×PCR Buffer、および1.5mM MgSO4、0.2mM dNTPs(dATP、dTTP,dCTP、dGTP)、約1.3kbを増幅する15pmolの配列番号16及び17に記載のプライマー、10ngのヒトゲノムDNA(Roche製)、1Uの各酵素を含む50μlの反応液中に、dUTP(Roche製)を終濃度0.5、5、50、100、200μMになるよう添加する。94℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→65℃、30秒→68℃、1分30秒を30サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)にてPCRを行う。反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下約1.3kbの増幅DNA断片を確認することで塩基類似体検出活性が減少しているかどうかが評価できる。
本発明の核酸増幅法に用いる改変されたDNAポリメラーゼは、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域のアミノ酸配列のいずれかに少なくとも1つのアミノ酸の改変を含んでいてもよい。
3‘−5’エキソヌクレアーゼ活性とは、取り込まれたヌクレオチドをDNA重合体の3’末端から除去する能力を指し、上記の3‘−5’エキソヌクレアーゼ領域とは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼで高度に保存されている部位であり、サーモコッカス・コダカラエンシスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号6)、パイロコッカス・フリオサスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号7)、サーモコッカス・ゴルゴナリウスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号8)、サーモコッカス・リトラリスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号9)、パイロコッカス・エスピーGB−Dに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号10)、サーモコッカス・エスピーJDF−3に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号11)、サーモコッカス・エスピー9°N−7に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号12)、サーモコッカス・エスピーKS−1に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号13)、サーモコッカス・セラーに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号14)、又はサーモコッカス・シクリに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号15)においては、137〜147、206〜222、および308〜318番目のアミノ酸である。
本発明は具体的に配列を提示したDNAポリメラーゼ以外のDNAポリメラーゼにも適用される。また、配列番号6〜15に示されるDNAポリメラーゼ以外のファミリーBに属する古細菌由来DNAポリメラーゼにおいては、配列番号6の137〜147、206〜222、および308〜318番目のアミノ酸からなる3‘−5’エキソヌクレアーゼ領域と対応する領域のことを示す。
より好ましくは、アミノ酸の改変がD141A、E143A、D141A/E143A、I142R、N210D、またはY311Fから選択されるいずれか一つである、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させたDNAポリメラーゼである。
なお、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させた(エキソ(−))DNAポリメラーゼとは、活性の完全な欠如を含み、例えば、親酵素と比較して0.03%、0.05%、0.1%、1%、5%、10%、20%、または最大でも50%以下のエキソヌクレアーゼ活性を有する改変されたDNAポリメラーゼを指す。
本発明のDNA複製方法においては,本発明のPCNAがRFCを必要としないことから、反応系にRFCを添加しなくてよい。RFC標品は一般には市販されておらず、その調製は手間を要する。RFC標品が利用できるとしても、添加して使用する場合には、RFC以外のDNA複製系の諸因子との適切な量比等の条件設定が必要であるが、本発明においてはこれらを考慮しなくてよいというメリットがある。また、特にPCRでの使用の場合には、本発明のPCNAはRFCを併用しなくとも、野生型PCNAとRFCの併用時よりも優れた促進活性を発揮する。
本発明の試薬キットは、上記本発明のPCNAおよび必要に応じその他の試薬類を含むDNA複製用の試薬キットである。本発明のPCNAは、単量体および/または前記単量体で構成された多量体を含む形態で、DNA複製用試薬の一成分として好適に用い得る。本発明の試薬キットは、本発明のPCNAがPCRにおいて特に好適に用い得るため、PCR用の試薬キットとして特に好適である。
(4.1)DNAポリメラーゼ活性測定法
酵素活性が強い場合には、保存緩衝液(50mM Tris−HCl(pH8.0),50mM KCl,1mM ジチオスレイトール,0.1% Tween20,0.1% Nonidet P40,50% グリセリン)でサンプルを希釈して測定を行う。(1)下記のA液25μl、B液5μl、C液5μl、滅菌水10μl、及び酵素溶液5μlをマイクロチューブに加えて75℃にて10分間反応する。(2)その後氷冷し、E液50μl、D液100μlを加えて、攪拌後更に10分間氷冷する。(3)この液をガラスフィルター(ワットマン製GF/Cフィルター)で濾過し、0.1N 塩酸およびエタノールで十分洗浄する。(4)フィルターの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード製)で計測し、鋳型DNAのヌクレオチドの取り込みを測定する。酵素活性の1単位はこの条件で30分当りの10nmolのヌクレオチドを酸不溶性画分(即ち、D液を添加したときに不溶化する画分)に取り込む酵素量とする。
A:40mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)16mM 塩化マグネシウム15
mM ジチオスレイトール100μg/mL BSA(牛血清アルブミン)
B:1.5μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C:1.5mM dNTP(250cpm/pmol [3H]dTTP)
D:20% トリクロロ酢酸(2mMピロリン酸ナトリウム)
E:1mg/mL仔牛胸腺DNA
KOD−PCNA2変異体のプラスミド作製
Thermococcus kodakaraensis KOD1株由来の改変型耐熱性PCNA遺伝子を含有するプラスミドを作製した。
変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBlueScriptにクローニングされたサーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来のPCNA2(配列番号5)(pKODPCNA2)を参考にし、人工合成にて作成した。人工合成した核酸を、pET23bにクローニングし、変異導入のDNA鋳型(pMjaPCNA)として利用した。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(Toyobo社製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリDH5αを形質転換し、酵素調製に用いた。
実施例1で作製したプラスミドを表1に示す。
KOD−PCNA2変異体の作製
実施例1で得られた菌体の培養は以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを500mL坂口フラスコに分注した。この培地に予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリDH5α(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、Qセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1%ノニデットP40、50%グリセリン)に置換し、KOD−PCNA2変異体を得た。
KOD−PCNA2のスクリーニング
PCRで増幅増強活性がある変異体を取得するため、上記で作製したKOD−PCNA2変異体を用いて、上記(1.3.1)で示した増幅増強活性の測定方法に従い、PCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いてHuman β−グロビンの3.6kbを増幅することで比較した。PCNAは25、50、100、200、400、800ngを反応系に添加した。
増幅量を以下の0〜2の3段階で示した。
0:増幅なし(増幅増強活性なし)
1:薄く増幅している(微弱な増幅増強活性あり)
2:増幅している(増幅増強活性あり)
Claims (10)
- 以下の(1)から(3)のうちいずれかで示されるPCNA単量体。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列の第107番目のアミノ酸残基を中性アミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)(1)で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号1に記載のアミノ酸配列における、107番目に相当するアミノ酸残基以外の、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されているアミノ酸配列からなり、増幅増強活性を有するポリペプチド。
(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、増幅増強活性を有するポリペプチド。 - 請求項1に記載のPCNA単量体が備えるアミノ酸配列をコードするDNA。
- 請求項2に記載のDNAを組み込んだベクター。
- 請求項3に記載のベクターを含む形質転換体。
- 請求項4に記載の形質転換体を培地で培養し、前記形質転換体中または培地中に、PCNA単量体および/または前記単量体で構成された多量体を蓄積させ、蓄積したPCNAの単量体または多量体を回収する工程を含む、PCNAの製造方法。
- 請求項1に記載のPCNA単量体および/または前記単量体で構成された多量体を含むDNA複製用試薬。
- 請求項6に記載の試薬を備えた、DNA複製用キット。
- PCR用の試薬を備えた、請求項7に記載のDNA複製用キット。
- 請求項1に記載のPCNA単量体および/または前記単量体で構成された多量体と、DNAポリメラーゼとの存在下でDNAの合成反応を行う、DNAの複製方法。
- 前記DNAの合成反応がPCRである、請求項9に記載のDNAの複製方法。
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PROTEIN SCIENCE, vol. 12, JPN6018033928, 2003, pages 823 - 831, ISSN: 0004003469 * |
生化学, vol. 81 (12), JPN6018033924, 2009, pages 1056 - 1063, ISSN: 0004003468 * |
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