JP5050834B2 - リチウム二次電池用活物質、リチウム二次電池及びその製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用活物質、リチウム二次電池及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池用活物質及びそれを用いたリチウム二次電池に関する。
従来、リチウム二次電池には、正極活物質として主にLiCoOが用いられている。しかし、LiCoOを正極活物質として用いたリチウム二次電池は、放電容量が120〜130mAh/g程度しかなく、充電状態における電池内での熱的安定性も劣るものであった。
そこで、リチウム二次電池用活物質として、LiCoOを他の化合物と固溶体を形成させた材料が知られている。即ち、リチウム二次電池用活物質として、LiCoO、LiNiO及びLiMnOをそれぞれ3つの成分として配置した三元系状態図上に示されるα−NaFeO型結晶構造を有する固溶体であるLi[Co1−2xNiMn]O(0<x≦1/2)が2001年に発表された。前記固溶体の一例であるLiNi1/2Mn1/2やLiCo1/3Ni1/3Mn1/3を活物質として用いたリチウム二次電池は、放電容量が150〜180mAh/gとLiCoOよりも優れ、充電状態における電池内での熱的安定性の点でもLiCoOより優れている。
しかし、放電容量がさらに大きいリチウム二次電池用活物質が求められていた。
特許文献1〜4には、リチウム二次電池用活物質としてLi[Li1/3Mn2/3]OにFeを添加した化合物が記載されている。特許文献5〜8には、リチウム二次電池用活物質としてLi[Li1/3Mn2/3]OにFeやNiを添加した化合物が記載されている。
しかしながら、特許文献1〜8記載の発明に係る材料は、安価な鉄を原料として用いた点に特徴があるが、これを用いたリチウム二次電池は、従来の正極活物質と比べて、分極が大きく、放電容量も優れるものではなかった。
特許文献9、10には、リチウム二次電池用活物質としてLiNiO−Li[Li1/3Mn2/3]O系の固溶体が記載されている。
しかしながら、特許文献9、10記載のリチウム二次電池用活物質は、Niの電子状態がNi3+であることから、酸素中で合成する必要があり、空気中で合成することが困難であるという問題点があった。このように、工業上の取り扱い易さの点からもNiはNi2+の状態で存在しているリチウム二次電池用活物質材料が望まれている。また、この材料では、Ni3+→Ni4+の1電子反応しか利用できないので、リチウム二次電池の放電容量の向上が期待できない。
特許文献11−12には、リチウム二次電池用活物質としてLiNi1/2Mn1/2− Li[Li1/3Mn2/3]O系の固溶体等が記載されている。
しかしながら、特許文献11、12に記載の材料を用いたリチウム二次電池の放電容量は、LiNi1/2Mn1/2を単独で用いた場合に比べて向上するどころか、逆に劣るものであった。
特許文献13−14には、リチウム二次電池用活物質としてLiMeO(Me:Co、Ni)の粒子表面にLi[Li1/3Mn2/3]Oを存在させた材料が記載されている。
しかしながら、上記した特許文献1〜14に記載された技術や、次に述べる特許文献15〜18に記載された技術は、いずれも、本発明の課題である放電容量の向上に結びつくものではなかった。
特許文献15、16には、「本発明では層状構造を有する
・Li[Ni1/2Mn1/2]O2の割合が(1−3x)(1−y)、
・Li[Li1/3Mn2/3]O2の割合が3x(1−y)、
・LiCoO2の割合がy
で固溶したと仮定される層状リチウム遷移金属複合酸化物、すなわち
[Li](3a)[(LixNi(1-3x)/2Mn(1+x)/2)(1-y)Coy](3b)2 …(II)
を基本構造に持つ。
ここで、(3a)、(3b)はそれぞれ層状R(−3)m構造中の異なる金属サイトを表す。」、「ただし、本発明の重要な点は、さらに(II)式の組成に対してLiをzモルだけ過剰に加え、固溶させたものであり、
[Li](3a)[Liz/(2+z){(LixNi(1-3x)/2Mn(1+x)/2)(1-y)Coy}2/(2+z)](3b)2 …(I)
(ただし、0.01≦x≦0.15、0≦y≦0.35、0.02(1−y)(1−3x)≦z≦0.15(1−y)(1−3x)、また、(3a)、(3b)はそれぞれ層状R(−3)m構造中の異なる金属サイトを表す。)
で表されることを特徴とする。」(段落0018〜0019)等と記載され、Li[Ni1/2Mn1/2]O2とLi[Li1/3Mn2/3]O2とLiCoO2との3つの成分の固溶体を基本構造として採用する考え方については記載がある。しかし、比較例を参照しても、Li量は、そのような固溶体を想定した場合に自然に導かれる量を超えて過剰量としたもののみが具体的に記載されており、Li量を意図的に過剰としない組成範囲内において、3つの成分の比率を特定のものとすることにより、放電容量を向上できることについては記載がない。
特許文献17には、請求項1に、「Li[Ni(x−y)Li(1/3−2x/3)Mn(2/3−x/3−y)Co2y]O(0<x≦0.5、0≦y≦1/6、x>y)」なる組成式が記載されている。
特許文献17の請求項1に記載された組成式は、上位概念としては本発明が特徴とする組成範囲と一部重複するものの、特許文献17には、Li[Ni1/2Mn1/2]O2とLi[Li1/3Mn2/3]O2とLiCoO2との3つの成分の固溶体を採用する技術思想を示唆する記載は皆無であり、上記組成式が示す範囲は、Li[Ni1/2Mn1/2]O2とLi[Li1/3Mn2/3]O2とLiCoO2との3つの成分の固溶体とした場合の組成以外のものを広く含んでいる。
特許文献18の請求項2には、「Li[Ni(x-y)Li(1/3-2x/3)Mn(2/3-x/3-y)Co2y]O2(ただし、xは0より大きく0.5以下であり、yは0以上1/6以下であり、x>yである。)」なる組成式が記載されている。
特許文献18の請求項2に記載された組成式は、上位概念としては本発明が特徴とする組成範囲と一部重複するものの、実施例としては、「組成式Li[Ni0.5Mn0.5]O2により表わされる化合物」や「組成式Li[Ni0.4Mn0.4Co0.2]O2により表わされる化合物」が具体的に記載されているだけであり、これらは完全に本発明が特徴とする組成範囲を外れるものである。また、特許文献18には、Li[Ni1/2Mn1/2]O2とLi[Li1/3Mn2/3]O2とLiCoO2との3つの成分の固溶体を採用する技術思想を示唆する記載は皆無である。
特許文献19には、共沈法によって遷移金属(Co,Ni,Mn)の水酸化物を作製し、これとリチウム化合物を混合し、焼成工程を経てα−NaFeO型結晶構造を有するLi[Co1−2xNiMn]Oを合成する方法が記載されている。
特開2002−068748号公報 特開2002−121026号公報 特許第03500424号公報 特開2005−089279号公報 特開2006−036620号公報 特開2003−048718号公報 特開2006−036621号公報 特許第03940788号公報 特開平09−055211号公報 特許第03539518号公報 特開2004−158443号公報 特許第03946687号公報 特開平08−171935号公報 特許第03258841号公報 特開2006−253119号公報 特開2007−220475号公報 特開2004−006267号公報 特開2004−152753号公報 国際公開第02/086993号パンフレット
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、放電容量の大きなリチウム二次電池とすることのできるリチウム二次電池用活物質を提供することを目的とする。また、放電容量の大きなリチウム二次電池を提供することを目的とする。
本発明について、技術思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態若しくは実験例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、請求の範囲によって示すものであって、明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
公知のLiMnOをリチウム二次電池用活物質として用いた場合、充放電の過程でMn4+/Mn3+の酸化還元反応に起因するヤーンテラー歪みが生じるため、安定した放電容量を得ることができない。
また、公知の、LiCoO、LiNiO及びLiMnOをそれぞれ3つの成分として配置した三元系状態図上に示されるα−NaFeO型結晶構造を有する固溶体であるLi[Co1−2xNiMn]O(0<x≦1/2)の材料は、合成されたときの遷移金属元素の価数は、特殊な場合を除き、Co,Ni,Mnとも3価であり、充放電に伴って、CoやNiのみならず、Mnの価数もまた変動する。ただ、NiとMnが同比率に存在する特殊な場合に限り、Ni2+,Mn4+,Co3+の電子状態を取ることが経験的に可能であり、この場合に限り、この材料に対して電気化学的な酸化還元(リチウムの挿入脱離)を行ってもMnの価数が4価のまま変化しないことから、良好な可逆特性を得ることができると考えられている。なお、このとき、電気化学的酸化に伴って、Niの価数は2価から3価、さらには4価まで変化し、Coの価数は3価から4価まで変化する。ここで、前記NiとMnが同比率に存在する特殊な場合とは、図2に示したように、LiCoO、LiNiO及びLiMnOをそれぞれ3つの成分として配置した三元系状態図で示した直線上の点に相当する。しかし、この直線上を外れると、Ni2+,Mn4+,Co3+の電子状態を取ることができなくなり、放電容量および充放電サイクル性能が優れない結果となってしまう。
各金属元素の価数がLi,Co3+,Ni2+,Mn4+となると考えられる材料は、特許文献15〜18にも一部発見することができる。
しかし、上記したように、特許文献15〜18の記載を参照しても、二次電池としての放電容量が従来の材料を上回るものは得られていない。
LiおよびMn4+を含む代表的な層状構造として、単斜晶のLi[Li1/3Mn2/3]Oがある。このLi[Li1/3Mn2/3]Oをベースとした種々の化合物がこれまでに検討されていることについては、上記特許文献1〜14に記載されるとおりである。しかし、Li[Li1/3Mn2/3]Oは、単体として用いるとほとんど充放電容量を得ることができないことが知られている。これは通常の有機電解液の安定領域においてMn4+→Mn5+の酸化還元反応が起こらないためであると推察される。
本発明者らは、前記Li[Li1/3Mn2/3]Oは、Mnの価数が4価であることに着目し、他の化合物と固溶体を形成させることを検討した。このようにすることで、電気化学的な酸化還元(充放電)を行ってもMnの価数が4価から変化することなく、Li[Li1/3Mn2/3]Oと固溶体を形成している他の化合物を構成している遷移金属元素の価数を変化させることができ、これによって高い放電容量得ることができ、また安定した充放電サイクル性能も得られるのではないかと考えた。
本発明者らは、さらに、この二元系にLiCoOを含めたLiCoO−LiNi1/2Mn1/2−Li[Li1/3Mn2/3]Oの三元系固溶体を検討した。LiCoOは初期充放電効率に優れ、高率充放電特性にも優れているため、この特徴を生かすことができるのではないかと考えたのである。
この三元系固溶体は、図1に示す三角相図として表される。このマトリックス上にある全ての化合物はCo3+,Ni2+,Mn4+として存在するものとなる。即ち、前記したLiCoO−LiNiO−LiMnO系においては、図2に示したように、NiとMnが同比率で存在するライン上でしかNi2+,Mn4+として存在できないのに対し、LiCoO−LiNi1/2Mn1/2−Li[Li1/3Mn2/3]Oの三元系固溶体であれば、系内のすべての点においてCo3+,Ni2+,Mn4+として存在しうるのである。
従って、本発明の基礎となる前記三元系固溶体は、x{Li[Li1/3Mn2/3]O}・y{LiNi1/2Mn1/2}・(1−x−y){LiCoO}と表記することができる。これを変形して、Li1+(1/3)Co1−x−yNi (1/2)Mn (2/3)x+(1/2)なる式が導かれる。ここで、定義から、0≦x、0≦y、x+y≦1である。
本発明者らは、前記三元系固溶体において、特に、xの値が1/3<xの範囲内であるとき、この材料を活物質として用いたリチウム二次電池は、従来の材料を用いた場合を大きく上回る放電容量を示し、同時にサイクル安定性にも優れるものとできることを見出し、先に日本特許庁に「特願2007−293777」として出願した。今般、本発明者らは、前記三元系固溶体において、特に、xの値が1/3<x≦2/3の範囲内であるとき、この材料を活物質として用いたリチウム二次電池は、従来の材料を用いた場合を大きく上回る放電容量を示し、同時にサイクル安定性にも優れるものとできることを見出した。
上記組成式から解るように、本発明が特徴とする活物質組成は、従来の活物質に比べてLiの含有比率が高いことが特徴の一つである。この点のみを取り上げて考えても、本発明の活物質組成は、従来技術を説明した図2の組成図上にプロットして表すことができないものである。また、図2の組成図は、本発明に係る材料のように、組成式LiCoNiMnにおいてa+b+c=1の関係を満たさないものは表すことができない。
ここに、本発明は、α−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を含むリチウム二次電池用活物質であって、前記固溶体が含有するリチウム元素及び遷移金属元素の組成比が、組成式Li1+(1/3)xCo1−x−yNi(1/2)yMn(2/3)x+(1/2)y(x+y≦1、0≦y、且つ、0.45≦≦0.6)を満たすことを特徴とするリチウム二次電池用活物質である。
また、本発明は、このリチウム二次電池用活物質を含むリチウム二次電池である。
本発明を実施する便のため、式の変形を行う。即ち、組成式Li1+pCoNiMnと置くと、関係式2a+b+3c=2(a0、b0、c0)が得られると共に、a+2b=αと置くと、p=(1−α)×1/3が得られる。そして、条件1/3<x≦2/3から条件式1/3<1−α≦2/3が導かれる。
なお、一般に、α−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を焼成工程を経て合成する場合、実際に得られる化合物の組成は、原料の仕込み組成比から計算される組成に比べて若干変動することが事実として知られている。本発明は、その技術思想又は主要な特徴から逸脱することなく実施することができるものであって、合成によって得られたものの組成が上記組成式と厳密に一致しないことのみをもって本発明の範囲に属さないものと解釈してはならないことはいうまでもない。特に、Li量については、焼成工程で揮発されやすいことが知られている。また、酸素原子の係数についても、合成条件等によって変動しうるものである。なお、本願クレームは、酸素原子の係数について規定していない。ここで、上記関係式は、経験的誤差範囲を考慮すると、2a+b+3c=2±0.1、p=(1−α)×1/3±0.1と表記される。
ここに、本発明は、α−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を含むリチウム二次電池用活物質であって、前記固溶体が含有するリチウム元素及び遷移金属元素の組成比が、組成式Li1+pCoNiMn(a≧0、b≧0、c>0)において、2a+b+3cの値が2(誤差範囲±0.1)であり、α=a+2bとしたとき、pの値が(1−α)×1/3(誤差範囲±0.1)であって、1−αの値が0.45以上0.6以下であることを特徴とするリチウム二次電池用活物質である。
ここで、LiCoO粉末とLiNi1/2Mn1/2粉末とLi[Li1/3Mn2/3]O粉末との単なる混合物のみからなるものは、本発明に係るリチウム二次電池用活物質が含有する前記「固溶体」には含まれない。これらの3つの材料の単品は、エックス線回折測定を行った場合に観察される各単品に対応するピーク位置がそれぞれ異なるため、これらの単なる混合物についてエックス線回折測定を行うと、それぞれの単品に対応する回折パターンが得られる。しかし、本発明に係るα−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体は、少なくともLi[Li1/3Mn2/3]Oの一部がLiCoO及び/又はLiNi1/2Mn1/2と固溶している。1/3<x≦2/3を満たすものであっても、Li[Li1/3Mn2/3]Oが全くLiCoO及び/又はLiNi1/2Mn1/2と固溶していない場合は、放電容量の大きなリチウム電池とすることができるという本発明の効果が奏されない。
本発明者らは、本発明に係るリチウム二次電池用活物質の中でも、放電容量が特に優れるものは、CuKα線を用いたエックス線回折図の20〜30°付近に、Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶にみられる回折ピークが観察されることを見出した。
ここに、本発明は、リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体は、CuKα線を用いたエックス線回折測定を行ったときに、20〜30°付近に、Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶にみられる回折ピークが観察されることを特徴としている。
また、本発明者らは、遷移金属元素を含む前駆体とリチウム化合物を混合して焼成工程を経てリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を得る場合において、溶媒中でCo,Ni及びMnを含有する水酸化物を共沈させて前駆体を作製した場合に、特に、放電容量の大きなリチウム電池とすることができるリチウム二次電池用活物質を確実に合成できることを見出した。これは、前駆体として遷移金属水酸化物を共沈法によって得ることにより、遷移金属(Co,Ni,Mn)が前駆体中に均一に分布させることができたことと関連しているものと本発明者らは考えている。なお、このような前駆体の好ましい作製方法については、特許文献19の記載が参考になる。
ここに、本発明は、溶媒中でCo,Ni及びMnを含有する水酸化物を共沈させて前駆体を作製し、前記前駆体とリチウム化合物を混合、焼成する工程を経て前記リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を作製することを特徴とする前記リチウム二次電池用活物質の製造方法である。
本発明に係るリチウム二次電池用活物質は、正極電位4.5V(vs.Li/Li+)付近に至って充放電が可能である。しかしながら、使用する非水電解質の種類によっては、充電時の正極電位が高すぎると、非水電解質が酸化分解され電池性能の低下を引き起こす虞がある。従って、使用時において、充電時の正極の最大到達電位が4.3V(vs.Li/Li+)以下となるような充電方法を採用しても、充分な放電容量が得られるリチウム二次電池が求められる場合がある。本発明に係るリチウム二次電池用活物質を用いると、使用時において、充電時の正極の最大到達電位が4.3V(vs.Li/Li+)以下となるような充電方法を採用しても、200mAh/g以上という従来の正極活物質の容量を大きく超える放電電気量を取り出すことが可能である。
本発明に係るリチウム二次電池用活物質を用い、使用時において、充電時の正極の最大到達電位が4.3V(vs.Li/Li+)以下となるような充電方法を採用しても、充分な放電容量を取り出すことのできるリチウム二次電池を製造するためには、次に述べる、本発明に係るリチウム二次電池用活物質に特徴的な挙動を考慮した充電工程を該リチウム二次電池の製造工程中に設けることが重要である。即ち、本発明に係るリチウム二次電池用活物質を正極に用いて定電流充電を続けると、正極電位4.3V〜4.8Vの範囲に、電位変化が比較的平坦な領域が比較的長い期間に亘って観察される。図7に、実施例6及び比較例4のリチウム二次電池用活物質をそれぞれ用いた正極に対して、初めて充電を行ったときの正極電位挙動を比較して示す。図中「1st charge」と記載した曲線がこれにあたる。図7(a) (実施例6)にみるように、最初の充電時、充電電気量が100mAh/gを超えた付近から、4.45V付近の電位において電位変化が比較的平坦な領域が長い期間に亘って観察されている。これに対して、図7(b)(比較例4)においては、そのような平坦領域はほとんど観察されていない。ここで採用した充電条件は、電流0.1ItA、電圧(正極電位)4.5V(vs.Li/Li+)の定電流定電圧充電であるが、充電電圧をさらに高く設定しても、この比較的長い期間に亘る電位平坦領域は、xの値(あるいは1−αの値)が1/3以下の材料を用いた場合にはほとんど観察されない。逆に、xの値が2/3を超える材料では、電位変化が比較的平坦な領域が観察される場合であっても短いものとなる。また、従来のLi[Co1−2xNiMn]O(0≦x≦1/2)系材料でもこの挙動は観察されない。この挙動は、本発明に係るリチウム二次電池用活物質に特徴的なものである。
ここに、本発明は、充電時の正極の最大到達電位が4.3V(vs.Li/Li+)以下である充電方法が採用される前記リチウム二次電池を製造するための製造方法であって、4.3V(vs.Li/Li+)を超え4.8V以下(vs.Li/Li+)の正極電位範囲に充電電気量に対して出現する電位変化が比較的平坦な領域に少なくとも至る充電を行う工程を含むことを特徴とするリチウム二次電池の製造方法である。
ここで、電池完成前の初期充放電工程における充電は、少なくとも前記電位平坦領域に至るまで行うことが必要である。該電位平坦領域は比較的長く(例えば100mAh/g以上)続くので、この過程をできるだけ経由させるように充電を継続することが好ましい。ここで、電位上昇等により該電位平坦領域の終点が観察される場合にはこれをもって充電終止条件としてもよく、定電流定電圧充電を採用して電流値が設定値にまで減衰したことをもって充電終止条件としてもよい。
本発明によれば、放電容量の大きなリチウム二次電池とすることのできるリチウム二次電池用活物質を提供できる。また、放電容量の大きなリチウム二次電池を提供することができる。
本発明のリチウム二次電池用活物質を製造する方法については、限定されるものではないが、基本的に、活物質を構成する金属元素(Li,Mn,Co,Ni)を目的とする活物質の組成通りに含有する原料を調整し、これを焼成することによって得ることができる。但し、Li原料の量については、焼成中にLi原料の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
前記焼成に供する前駆体の調整方法については限定されるものではない。Li化合物、Mn化合物、Ni化合物及びCo化合物を単に混合してもよく、溶液中で遷移金属元素を含む水酸化物を共沈させ、これとLi化合物とを混合してもよい。均一な複合酸化物を作製するためには、MnとNiとCoとの共沈水酸化物とLi化合物とを混合し、焼成する方法が好ましい。
前記共沈水酸化物前駆体の作製は、MnとNiとCoとが均一に混合された化合物であることが好ましい。この条件を満たす製法であれば特に限定されないが、「Mn、NiおよびCoの酸性水溶液を水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液で沈澱させる共沈製法」を採用してもよく、この方法によりとりわけ優れた電池性能を示すリチウム二次電池用活物質を作製することができる。
前記共沈水酸化物前駆体の原料は、Mn化合物としては酸化マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン等を、Ni化合物としては、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル等を、Co化合物としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト等を一例として挙げることができる。
前記共沈水酸化物前駆体の作製に用いる原料としては、アルカリ水溶液と沈殿反応を形成するものであればどのような形態のものでも使用することができるが、好ましくは溶解度の高い金属塩を用いるとよい。
本発明におけるリチウム二次電池用活物質は前記共沈水酸化物前駆体とLi化合物とを混合した後、熱処理することで好適に作製することができる。Li化合物としては、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム等を用いることで好適に製造することができる。
前記熱処理は、700℃以上1200℃以下の範囲において好適に製造することができる。前記熱処理温度が700℃を下回ると、固相反応が進行せず、また1200℃より高いと固相反応が過度に進行する結果、極度に焼結化が進行するので好ましくない。従って、好ましくは700から1200℃、より好ましくは900から1100℃であれば高い特性を発揮することができる。
本発明に係るリチウム二次電池に用いる非水電解質は、限定されるものではなく、一般にリチウム電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水電解質に用いる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
非水電解質に用いる電解質塩としては、例えば、LiClO4,LiBF4,LiAsF6,LiPF6,LiSCN,LiBr,LiI,Li2SO4,Li210Cl10,NaClO4,NaI,NaSCN,NaBr,KClO4,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCF3SO3,LiN(CF3SO22,LiN(C25SO22,LiN(CF3SO2)(C49SO2),LiC(CF3SO23,LiC(C25SO23,(CH34NBF4,(CH34NBr,(C254NClO4,(C254NI,(C374NBr,(n−C494NClO4,(n−C494NI,(C254N−maleate,(C254N−benzoate,(C254N−phtalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
さらに、LiBF4とLiN(C25SO22のようなパーフルオロアルキル基を有す
るリチウム塩とを混合して用いることにより、さらに電解質の粘度を下げることができるので、低温特性をさらに高めることができ、また、自己放電を抑制することができ、より望ましい。
また、非水電解質として常温溶融塩やイオン液体を用いてもよい。
非水電解質における電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する非水電解質電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5mol/lが好ましく、さらに好ましくは、0.5mol/l〜2.5mol/lである。
負極材料としては、限定されるものではなく、リチウムイオンを析出あるいは吸蔵することのできる形態のものであればどれを選択してもよい。例えば、Li[Li1/3Ti5/3]Oに代表されるスピネル型結晶構造を有するチタン酸リチウム等のチタン系材料、SiやSb,Sn系などの合金系材料リチウム金属、リチウム合金(リチウム−シリコン、リチウム−アルミニウム,リチウム−鉛,リチウム−スズ,リチウム−アルミニウム−スズ,リチウム−ガリウム,及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)、リチウム複合酸化物(リチウム−チタン)、酸化珪素の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)等が挙げられる。
正極活物質の粉体および負極材料の粉体は、平均粒子サイズ100μm以下であることが望ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解質電池の高出力特性を向上する目的で10μm以下であることが望ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
以上、正極及び負極の主要構成成分である正極活物質及び負極材料について詳述したが、前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1重量%〜50重量%が好ましく、特に0.5重量%〜30重量%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため望ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は30重量%以下が好ましい。
正極及び負極は、前記主要構成成分(正極においては正極活物質、負極においては負極材料)、およびその他の材料を混練し合剤とし、N−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶媒に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、、または圧着して50℃〜250℃程度の温度で、2時間程度加熱処理することにより好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
セパレータの空孔率は強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
また、セパレータは、例えばアクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタアクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーと電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。非水電解質を上記のようにゲル状態で用いると、漏液を防止する効果がある点で好ましい。
さらに、セパレータは、上述したような多孔膜や不織布等とポリマーゲルを併用して用いると、電解質の保液性が向上するため望ましい。即ち、ポリエチレン微孔膜の表面及び微孔壁面に厚さ数μm以下の親溶媒性ポリマーを被覆したフィルムを形成し、前記フィルムの微孔内に電解質を保持させることで、前記親溶媒性ポリマーがゲル化する。
前記親溶媒性ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデンの他、エチレンオキシド基やエステル基等を有するアクリレートモノマー、エポキシモノマー、イソシアナート基を有するモノマー等が架橋したポリマー等が挙げられる。該モノマーは、ラジカル開始剤を併用して加熱や紫外線(UV)を用いたり、電子線(EB)等の活性光線等を用いて架橋反応を行わせることが可能である。
リチウム二次電池の構成については特に限定されるものではなく、正極、負極及びロール状のセパレータを有する円筒型電池、角型電池、扁平型電池等が一例として挙げられる。
表1に、実施例及び比較例に係るリチウム二次電池に用いた正極活物質の組成を示す。ここで、実施例1〜8の組成は、組成式Li1+(1/3)Co1−x−yNi (1/2)Mn (2/3)x+(1/2)を満たし、且つ、xの値が1/3<x≦2/3の範囲を満たすものであり、比較例1〜4及び比較例10〜19は、前記組成式を満たすがxの値が1/3<x≦2/3の範囲から外れるものであり、比較例5〜9は、前記組成式すら満たさないものである。これらの実施例及び比較例の組成について、図1上にプロットして示した。ここで、黒丸(●)印は実施例に対応し、三角(▲)印は比較例に対応する。但し、比較例5〜9については、図1上にプロットすることが不可能な組成であるため、示していない。
(実施例1)
反応槽に水を0.5リットル入れた。さらにpH=11.5±0.1となるよう、32%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。パドルタイプの攪拌羽根を備えた攪拌機を用いて300rpmの回転速度で攪拌し、外部ヒーターにより反応槽内溶液温度を50℃に保った。別途、Co、Ni及びMnの各元素が0.25:0.17:0.45の比率で含有するように、硫酸マンガン5水和物と硫酸ニッケル6水和物と硫酸コバルト7水和物が溶解している原料溶液を調整した。前記原料溶液を約3ml/分の流量で前記反応槽に連続的に滴下した。また、上記pHを維持するよう、32%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に投入した。また、前記反応槽内の溶液温度が50℃と一定になるよう断続的にヒーターで制御した。原料溶液が全量滴下された後、撹拌及びヒーター加熱を停止して一晩静置した。次いで、沈殿物のスラリーを採取した。採取したスラリーを水洗、ろ過し、110℃で一晩乾燥させ、共沈水酸化物前駆体の乾燥粉末を得た。
この乾燥粉末は、エックス線回折測定により、β−Ni(OH)型の単相が確認された。また、EPMA測定により、Co,Ni,Mnは均一に分布していることが確認された。
水酸化リチウム一水塩粉末を、遷移金属(Ni+Mn+Co)に対するLi量が表1の実施例1の組成式を満たすように秤量し、混合した。これを圧粉成型してペレットを作製し、電気炉を用いて、エアポンプによる空気流通下、200℃/時間の昇温速度で1000℃まで昇温し、1000℃の温度を10時間保持した後、自然冷却した。次いで、乳鉢を用いて粒径を揃える程度に粉砕した。
得られた活物質の結晶構造は、CuKα線を用いた粉末エックス線回折測定の結果、α−NaFeO型の六方晶構造が主相として確認されると共に、一部Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶にみられる20〜30°付近の回折ピークが観察された。また、遷移金属元素の価数評価としてEXAFS測定をおこなった。XANES領域のスペクトルを解析したところ、Co3+,Ni2+,Mn4+の電子状態をとることを確認した。XANES測定結果を図4に示す。
(実施例2〜8)
共沈水酸化物前駆体が含有する遷移金属元素の組成及び水酸化リチウムの混合量について、表1に実施例2〜8に示す組成式に沿って変更した他は、実施例1と同様にして、本発明に係る活物質を合成した。
エックス線回折測定の結果、実施例1と同様に、α−NaFeO型の六方晶構造が主相として確認されると共に、一部Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶にみられる20〜30°付近の回折ピークが観察された。
(比較例1〜6、比較例8〜19)
共沈水酸化物前駆体が含有する遷移金属元素の組成及び水酸化リチウムの混合量について、表1に比較例1〜6、比較例8〜15に示す組成式に沿って変更した他は、実施例1と同様にして、本発明に係る活物質を合成した。ここで、比較例5と比較例6は、後述する試験条件における充電電圧の設定値が異なるだけであり、活物質としては同一である。また、比較例8と比較例9も、後述する試験条件における充電電圧の設定値が異なるだけであり、活物質としては同一である。
エックス線回折測定の結果、xの値が2/3以上である比較例17〜19については、実施例1と同様に、α−NaFeO型の六方晶構造が主相として確認されると共に、一部Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶にみられる20〜30°付近の回折ピークが観察された。しかしながら、xの値が1/3以下である比較例1〜6、比較例8〜16については、α−NaFeO型の六方晶構造が確認されたが、エックス線回折図上において最大強度のピーク高さをフルスケールとした限りでは、Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶にみられる回折ピークは明確には観察されなかった。
図3に、実施例及び比較例の活物質に対するエックス線回折図を示す。実施例1〜8のエックス線回折図は同様であったので、代表して実施例1の場合について図3(a)に示す。比較例1〜6及び比較例8〜16実施例1〜8のエックス線回折図のエックス線回折図は同様であったので、代表して比較例3の場合について図3(b)に示す。図3(a)において、最大強度を示す18°付近のピークのカウント数を100とした場合、Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶にみられる21°の回折ピークのカウント数は7であった。
(比較例7)
共沈水酸化物前駆体粉末に代えて、LiOH・HO、Co(OH)、Ni(OH)及びMnOOHのそれぞれの粉体を元素比がLi:Co:Ni:Co=1:0.33:0.33:0.33となるように混合して得た粉体を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、比較例7に係る活物質を合成した。得られたエックス線回折図は、比較例1,6と区別が付かないものであった。しかしながら、EPMA観察の結果、Co,Ni,Mnは均一に分布しているものではなかった。
(リチウム二次電池の作製及び評価)
実施例1〜8及び比較例1〜19のそれぞれの活物質をリチウム二次電池用正極活物質として用いて以下の手順でリチウム二次電池を作製し、電池特性を評価した。
活物質、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を重量比85:8:7の割合で混合し、分散媒としてN−メチルピロリドンを加えて混練分散し、塗布液を調製した。なお、PVdFは固形分が溶解分散された液を用い、固形重量換算した。該塗布液を厚さ20μmのアルミニウム箔集電体に塗布し、正極板を作製した。なお、全ての電池において同様の試験条件となるよう電極重量、厚みは統一した。
対極には、正極の単独挙動を観察する目的のため、リチウム金属を負極とした。リチウム金属はニッケル箔集電体に密着させた。ただし、リチウム二次電池の容量が十分正極規制となるよう調製した。
電解液にはLiPFをEC/EMC/DMCが体積比6:7:7である混合溶媒に濃度が1mol/lとなるよう溶解させたものを用いた。セパレータにはポリアクリレートで表面改質して電解質の保持性を向上させたポリプロピレン製の微孔膜を用いた。また、ニッケル板にリチウム金属箔をはりつけたものを参照極として用いた。外装体には、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用い、正極端子、負極端子および参照極端子の開放端部が外部露出するように電極を収納し、前記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止した。
上記のようにして作製されたリチウム二次電池は、20℃の下、5サイクルの初期充放電工程に供した。電圧制御は全て正極電位に対して行った。充電は、電流0.1ItA、電圧4.5Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。放電は、電流0.1ItA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。全てのサイクルにおいて充電後及び放電後に30分の休止時間を設定した。この初期充放電工程における最初の2サイクルの挙動を図7に示す。図7(a)及び図7(b)は実施例6及び比較例4にそれぞれ対応する。この初期充放電工程における1サイクル目について、充電電気量に対する放電電気量の百分率を「初期効率(%)」として記録した。
続いて、充放電サイクル試験を行った。電圧制御は全て正極電位に対して行った。充放電サイクル試験の条件は、充電電圧を表1の「充電電圧」の欄にそれぞれ記載した値としたことを除いては前記初期充放電工程の条件と同一である。全てのサイクルにおいて充電後及び放電後に30分の休止時間を設定した。この充放電サイクル試験における5サイクル目の放電電気量を「放電容量(mAh/g)」として記録した。この充放電サイクル試験における5サイクル目の充放電曲線を代表して図5に示す。
また、この充放電サイクル試験における10サイクル目の放電電気量の、前記「放電容量(mAh/g)」に対する百分率を求め、「容量維持率(%)」とした。
表1にこれら電池試験を行った結果を示す。また、実施例1〜8、並びに、比較例1〜4及び比較例10〜19の放電容量の値を組成式Li1+(1/3)Co1−x−yNi (1/2)Mn (2/3)x+(1/2)におけるx値との関係でプロットして図6に示す。
表1や図6の結果からわかるように、前記xの値が1/3<x≦2/3を満たす活物質を用いることで、x≦1/3であるものや、2/3<xであるものに比べて、放電容量が大きく、充放電サイクル性能にも優れたリチウム二次電池とすることができる。この放電容量の値は、Li[Co1−2xNiMn]O(0≦x≦1/2)系や高容量系の代表とされていたLiNiO系を上回るものである。
また、前記xの値をx≦2/3とすることにより、初期効率の点において優れたものとすることができることがわかる。
また、容量維持率の評価結果からもわかるように、本発明に係るリチウム二次電池は、充放電サイクル性能の点でも極めて優れるものである。
本発明の技術思想の過程を説明するための図である。 従来技術の技術思想を説明するための図である。 実施例に係るリチウム二次電池用活物質のエックス線回折図である。 比較例に係るリチウム二次電池用活物質のエックス線回折図である。 実施例及び比較例に係るリチウム二次電池用活物質のEXAFS測定結果を示す図である。 実施例及び比較例に係るリチウム二次電池の充放電挙動を示す図である。 実施例及び比較例に係るリチウム二次電池の放電容量を比較した図である。 実施例及び比較例に係るリチウム二次電池用の製造工程中に行った初期充放電工程時の電位挙動を示す図である。

Claims (6)

  1. α−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を含むリチウム二次電池用活物質であって、前記固溶体が含有するリチウム元素及び遷移金属元素の組成比が、組成式Li1+(1/3)xCo1−x−yNi(1/2)yMn(2/3)x+(1/2)y(x+y≦1、0≦y、且つ、0.45≦≦0.6)を満たし、且つ、4.3V(vs.Li/Li+)を超え4.8V以下(vs.Li/Li+)の正極電位範囲に充電電気量に対して出現する電位変化が比較的平坦な領域に少なくとも至る初期充電を行う工程を経た場合に、4.3V(vs.Li/Li+)以下の電位領域において放電可能な電気量が200mAh/g以上となることを特徴とするリチウム二次電池用活物質。
  2. α−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を含むリチウム二次電池用活物質であって、前記固溶体が含有するリチウム元素及び遷移金属元素の組成比が、組成式Li1+pCoNiMn(a≧0、b≧0、c>0)において、2a+b+3cの値が2(誤差範囲±0.1)であり、α=a+2bとしたとき、pの値が(1−α)×1/3(誤差範囲±0.1)であって、1−αの値が0.45以上0.6以下であり、且つ、4.3V(vs.Li/Li+)を超え4.8V以下(vs.Li/Li+)の正極電位範囲に充電電気量に対して出現する電位変化が比較的平坦な領域に少なくとも至る初期充電を行う工程を経た場合に、4.3V(vs.Li/Li+)以下の電位領域において放電可能な電気量が200mAh/g以上となることを特徴とするリチウム二次電池用活物質。
  3. 前記リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体は、CuKα線を用いたエックス線回折測定を行ったときに、20〜30°付近に、Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶にみられる回折ピークが観察されることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用活物質。
  4. 溶媒中でCo,Ni及びMnを含有する水酸化物を共沈させて前駆体を作製し、前記前駆体とリチウム化合物を混合、焼成する工程を経て前記リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を作製することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のリチウム二次電池用活物質の製造方法。
  5. 正極が請求項1〜のいずれかに記載のリチウム二次電池用活物質を含むリチウム二次電池。
  6. 充電時の正極の最大到達電位が4.3V(vs.Li/Li+)以下である充電方法が採用される請求項5に記載のリチウム二次電池を製造するための製造方法であって、4.3V(vs.Li/Li+)を超え4.8V以下(vs.Li/Li+)の正極電位範囲に充電電気量に対して出現する電位変化が比較的平坦な領域に少なくとも至る充電を行う工程を含むことを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
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