JP5049426B2 - アクリル系粘着剤の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル系単量体の溶液重合によつて得られるアクリル系重合体を主剤としたアクリル系粘着剤の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
粘着シ―トは、様々な用途に使用されており、とくに近年では、電子機器内部に利用されるようになつている。この種の用途では、通常の粘着特性に加えて、揮発性のガス成分の低減などが求められ、残留開始剤や未反応モノマ―などの不純物の少ない高純度の粘着性ポリマ―の使用が望まれている。
【0003】
アクリル系粘着剤は、通常、アクリル系単量体を溶液重合して得られるアクリル系重合体を主剤としたもので、上記の単量体には、使用前の重合を防ぐため、通常10〜200ppmの重合禁止剤が添加されている。また、最近では、上記単量体の精製工程の合理化やホモポリマ―の生成を防ぐため、精製法が蒸留法から洗浄法へ切り替えられており、この場合、保存安定性のために添加される酸化防止剤の除去が十分になされず、この酸化防止剤が残存する単量体にさらに重合禁止剤を添加しているのが実状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように酸化防止剤や重合禁止剤を含むアクリル系単量体を重合して、残留開始剤や未反応モノマ―などの少ない、高純度のアクリル系重合体を得るには、重合時の反応温度を上げることが望ましい。しかしながら、この場合、得られる重合体が低分子量化し、粘着特性の低下を招きやすい。
【0005】
また、残留開始剤の量を減らすために、使用する開始剤の量を減らすと、重合率が低下したり、単量体中に含まれる酸化防止剤や重合禁止剤の影響により重合反応の誘導時間が長くなり、結果的に重合時間全体も長くなる。これらの問題を回避し、重合率の向上や重合時間の短縮をはかるため、開始剤の量を増やすと、今度は、残留開始剤の量が増えるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に照らし、アクリル系単量体の溶液重合によつて、残留開始剤や未反応モノマ―などの揮発性成分の少ない、高純度のアクリル系重合体を高い重合率で生成させ、このアクリル系重合体を主剤として粘着特性にすぐれたアクリル系粘着剤を得ることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、鋭意検討した結果、アクリル系単量体の溶液重合に際し、重合開始剤として特定量のアゾ系開始剤を用いて、重合前段の主反応時と重合後段の熟成反応時をそれぞれ特定の反応温度に設定して、溶液重合を完結させるようにすると、残留開始剤や未反応モノマ―などの揮発性成分の少ない、高純度のアクリル系重合体を高い重合率で生成でき、このアクリル系重合体を主剤として粘着特性にすぐれたアクリル系粘着剤を製造できるものであることを見い出し、本発明を完成するに至つた。
【0008】
すなわち、本発明は、アルキル基の炭素数が2〜14個である(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜100モル%とこれと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体50〜0モル%とからなるアクリル系単量体を、この単量体に対して、0.01〜0.1モル%となる割合のアゾ系開始剤を用いて、重合前段の主反応と重合後段の熟成反応とからなる溶液重合を行って、アクリル系重合体を主剤としたアクリル系粘着剤を製造するにあたり、有機溶剤(2種以上の有機溶剤を使用するときは沸点の最も低い有機溶剤)として、メタノール、ヘキサン、酢酸エチルのうちのいずれかを選択使用し、かつアゾ系開始剤として、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸のうちのいずれかを選択使用し、使用する有機溶剤(2種以上の有機溶剤を使用するときは沸点の最も低い有機溶剤)の沸点をbp(℃)、使用するアゾ系開始剤の10時間半減期温度をTH (℃)としたとき、重合前段の主反応時の反応温度Tp(℃)が、下記の式(1),(2);
bp−15<Tp<bp …(1)
TH −10<Tp<TH +5 …(2)
の要件を満たすとともに、重合後段の熟成反応時の反応温度Ta(℃)が、下記の式(3),(4);
bp<Ta<bp+15 …(3)
TH +5<Ta<TH +20 …(4)
の要件を満たすことにより、重合率が99重量%以上のアクリル系重合体を主剤としたアクリル系粘着剤を製造することを特徴とするアクリル系粘着剤の製造法に係るものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるアクリル系単量体は、アルキル基の炭素数が2〜14個である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、必要に応じて、これと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体を加えたものである。上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、全アクリル系単量体中、50〜100モル%の割合で用いられ、また、上記の共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体は、全アクリル系単量体中、50〜0モル%の割合で用いられる。
【0010】
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルには、エチル(メタ)アクリレ―ト、ブチル(メタ)アクリレ―ト、イソブチル(メタ)メタクリレ―ト、ヘキシル(メタ)アクリレ―ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ―ト、ラウリル(メタ)アクリレ―トなどがある。また、上記の共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ―ト、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ―ト、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレ―トなどがある。
【0011】
本発明に用いられるアゾ系開始剤は、これを用いたラジカル重合により上記のアクリル系単量体を付加重合させたときに、有機過酸化物やその他のラジカル開始剤を用いて付加重合させたときよりも、開始剤の分解物が加熱発生ガス成分としてアクリル系重合体中に残留しにくく、この点より、上記単量体の重合開始剤として選択使用されたものである。このアゾ系開始剤は、アクリル系単量体に対して、つまりアクリル系単量体100モル%に対して、0.01〜0.1モル%、好ましくは0.02〜0.08モル%の割合で用いられる。
【0012】
上記アゾ系開始剤としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)(TH :65℃)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(以下、AMBNという)(TH :67℃)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル(TH :67℃)、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸(TH :68℃)などが挙げられる。上記( )内のTH は、アゾ系開始剤の10時間半減期温度を示している。
【0013】
本発明においては、上記のアクリル系単量体を上記のアゾ系開始剤を用いて、溶液重合する。その際、用いる有機溶剤には、酢酸エチル(bp:77℃)、酢酸メチル(bp:60℃)などのエステル系溶剤、アセトン(bp:57℃)、メチルエチルケトン(bp:80℃)などのケトン系溶剤、メタノ―ル(bp:65℃)、エタノ―ル(bp:78℃)、ブタノ―ル(bp:83℃)などのアルコ―ル系溶液、シクロヘキサン(bp:81℃)、ヘキサン(bp:69℃)、ヘプタン(bp:98℃)などの炭化水素系溶液、トルエン(bp:110℃)、キシレン(bp:143℃)などの芳香族系溶剤などがある。上記の( )内のbpは、各溶剤の沸点を示している。これらの有機溶剤は、その1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
【0014】
溶液重合は、常法に準じ、重合前段の主反応と重合後段の熟成反応とにより、行われる。本発明においては、重合前段の主反応時の反応温度Tp(℃)が、使用する有機溶剤の沸点bp(℃)、使用するアゾ系開始剤の10時間半減期温度TH (℃)に対して、下記の式(1),(2);
bp−15<Tp<bp …(1)
TH −10<Tp<TH +5 …(2)
の要件を満たすとともに、重合後段の熟成反応時の反応温度Ta(℃)が、上記有機溶剤の沸点bp(℃)およびアゾ系開始剤の10時間半減期温度TH (℃)に対して、下記の式(3),(4);
bp<Ta<bp+15 …(3)
TH +5<Ta<TH +20 …(4)
の要件を満たすようにしたことを特徴としている。ここで、溶液重合に使用する有機溶剤が2種以上の混合物であるときは、上記式(1)〜(4)中の沸点bp(℃)は、その最も低い有機溶剤の沸点を指すものとする。
【0015】
このように、本発明においては、重合前段の主反応時の反応温度Tpを、有機溶剤の沸点よりも低く、かつアゾ系開始剤の10時間半減期温度にほぼ近い適度な温度範囲に設定したことにより、生成重合体の低分子量化を防ぐことができ、一方、重合後段の熟成反応時の反応温度Taを、有機溶剤の沸点よりも高く、かつアゾ系開始剤の10時間半減期温度よりも高い適度な温度範囲に設定したことにより、残留開始剤や未反応モノマ―などの揮発性成分の低減をはかれ、もつて高純度で高分子量のアクリル系重合体を高い重合率、たとえば99重量%以上の重合率で生成でき、これを粘着剤の主剤とすることにより、粘着特性にすぐれたアクリル系粘着剤を製造できることを見い出したものである。
【0016】
これに対して、重合前段の主反応時の反応温度Tpが有機溶剤の沸点bpより高くなつたり、アゾ系開始剤の10時間半減期温度TH に比べてあまりに高くなると、生成重合体の低分子量化を防げず、また、有機溶剤の沸点bpやアゾ系開始剤の10時間半減期温度TH に比べてあまりに低くなりすぎると、重合率の低下が起こつたり、残留開始剤や未反応モノマ―などの揮発性成分が多くなる。さらに、重合後段の熟成反応時の反応温度Taが有機溶剤の沸点bpより低くなつたり、アゾ系開始剤の10時間半減期温度TH より低くなつたりすると、残留開始剤や未反応モノマ―などの揮発性成分が多くなり、また、有機溶剤の沸点bpやアゾ系開始剤の10時間半減期温度TH に比べてあまりに高くなりすぎると、生成重合体が低分子量化するなどの不都合を生じやすい。
【0017】
本発明においては、上記のような特定の反応温度下で溶液重合して得られる、残留開始剤や未反応モノマ―などの揮発性成分の少ない、高純度で高分子量のアクリル系重合体を主剤として粘着特性にすぐれたアクリル系粘着剤を製造する。このアクリル系粘着剤には、必要により、上記特徴を損なうことない、従来公知の各種の添加剤、たとえば、粘着付与剤、架橋剤、充填剤、顔料、染料、老化防止剤などを通常の使用量で配合することができる。
【0018】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例を記載して、より具体的にに説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施例によりなんら制限を受けるものではない。
【0019】
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロ―トおよび撹拌装置を備えた反応容器に、有機溶剤として酢酸エチル(bp:77℃)100重量部、アクリル系単量体としてブチルアクリレ―ト95重量部およびアクリル酸5重量部(ブチルアクリレ―ト91.44モル%およびアクリル酸8.55モル%)、アゾ系開始剤としてAMBN(TH :67℃)0.05重量部(アクリル系単量体に対して、0.032モル%)を投入し、室温で1時間、窒素還流を行つた。
【0020】
ついで、溶液重合処理として、反応容器の内容物の温度を63℃に昇温して、窒素気流中で、4時間の主反応を行い、その後、80℃に昇温して、2時間の熟成反応を行つた。なお、使用した有機溶剤(酢酸エチル)の沸点bpとアゾ系開始剤(AMBN)の10時間半減期温度TH とから、前記の式(1),(2)の要件を満たす主反応時の反応温度Tpは、62℃<Tp<72℃となり、また、前記の式(3),(4)の要件を満たす熟成反応時の反応温度Taは、77℃<Ta<87℃となる。したがつて、上記実施例で適用した主反応時の反応温度:63℃および熟成反応時の反応温度:80℃は、いずれも、上記の反応温度Tpおよび反応温度Taの範囲内にあることが明らかである。
【0021】
このような溶液重合により、アクリル系重合体の有機溶剤溶液を調製した。これに、アクリル系重合体100重量部あたり、架橋剤としてトリメチロ―ルプロパンのトリレンジイソシアネ―ト付加物(日本ポリウレタン社製の商品名「コロネ―トL」)2重量部(固形分)を加えて、アクリル系粘着剤溶液とした。つぎに、この粘着剤溶液をアプリケ―タを用いて、厚さが38μmのポリエチレンテレフタレ―ト(PET)フイルム上に塗布し、120℃で2分間乾燥して、厚さが30μmの粘着剤層を形成した。この粘着面に剥離ライナ(厚さが150μmの剥離処理ポリエチレンフイルム)を貼り合わせて、粘着テ―プとした。
【0022】
実施例2
有機溶剤をメタノ―ル(bp:65℃)10重量部および酢酸エチル90重量部に、アゾ系開始剤をAIBN(TH :65℃)0.08重量部(アクリル系単量体に対して、0.060モル%)に、それぞれ変更し、かつ主反応時の反応温度を60℃に、熟成反応時の反応温度を75℃に、それぞれ、変更した以外は、実施例1と同様にして、溶液重合を行つた。このような溶液重合により得られたアクリル系重合体の有機溶剤溶液を使用して、実施例1と同様にして、アクリル系粘着剤溶液の調製および粘着テ―プの作製を行つた。
【0023】
なお、使用した最も沸点の低い有機溶剤(メタノ―ル)の沸点bpとアゾ系開始剤(AIBN)の10時間半減期温度TH とから、前記の式(1),(2)の要件を満たす主反応時の反応温度Tpは、55℃<Tp<65℃となり、また、前記の式(3),(4)の要件を満たす熟成反応時の反応温度Taは、70℃<Ta<80℃となる。したがつて、上記実施例で適用した主反応時の反応温度:60℃および熟成反応時の反応温度:75℃は、いずれも、上記の反応温度Tpおよび反応温度Taの範囲内にあることが明らかである。
【0024】
比較例1
アゾ系開始剤をAIBN0.008重量部(アクリル系単量体に対して、0.0060モル%)に変更し、かつ主反応時の反応温度を75℃に、熟成反応時の反応温度を80℃に、それぞれ、変更した以外は、実施例1と同様にして、溶液重合を行つた。このような溶液重合により得られたアクリル系重合体の有機溶剤溶液を使用して、実施例1と同様にして、アクリル系粘着剤溶液の調製および粘着テ―プの作製を行つた。
【0025】
なお、使用した有機溶剤(酢酸エチル)の沸点bpとアゾ系開始剤(AIBN)の10時間半減期温度TH とから、前記の式(1),(2)の要件を満たす主反応時の反応温度Tpは、62℃<Tp<70℃となり、また、前記の式(3),(4)の要件を満たす熟成反応時の反応温度Taは、77℃<Ta<85℃となる。したがつて、上記の比較例で適用した熟成反応時の反応温度:80℃は、上記の反応温度Taの範囲内にあるが、主反応時の反応温度:75℃は、上記の反応温度Tpの範囲の上限を超えるものである。
【0026】
比較例2
アゾ系開始剤(AIBN)の使用量を0.08重量部(アクリル系単量体に対して、0.060モル%)に変更した以外は、比較例1と同様にして、溶液重合を行つた。このような溶液重合により得られたアクリル系重合体の有機溶剤溶液を使用して、実施例1と同様にして、アクリル系粘着剤溶液の調製および粘着テ―プの作製を行つた。なお、この比較例は、アゾ系開始剤の使用量が異なる以外は、比較例1と同じであり、したがつて、比較例1の場合と同様に、熟成反応時の反応温度:80℃は、反応温度Ta(77℃<Ta<85℃)の範囲内にあるが、主反応時の反応温度:75℃は、反応温度Tp(62℃<Tp<70℃)の範囲の上限を超えるものである。
【0027】
比較例3
アゾ系開始剤をAIBN(TH :65℃)0.08重量部(アクリル系単量体に対して、0.060モル%)に変更し、かつ主反応時の反応温度を65℃に、熟成反応時の反応温度を70℃に、それぞれ、変更した以外は、実施例1と同様にして、溶液重合を行つた。このような溶液重合により得られたアクリル系重合体の有機溶剤溶液を使用して、実施例1と同様にして、アクリル系粘着剤溶液の調製および粘着テ―プの作製を行つた。なお、この比較例においては、主反応時の反応温度:65℃は、反応温度Tp(62℃<Tp<70℃)の範囲内にあるが、熟成反応時の反応温度:70℃は、反応温度Ta(77℃<Ta<85℃)の範囲の下限に達しないものである。
【0028】
実施例3
実施例1と同様の反応容器に、有機溶剤として酢酸エチル70重量部およびトルエン(bp:110℃)30重量部、アクリル系単量体として2−エチルヘキシルアクリレ―ト90重量部およびアクリル酸10重量部(2−エチルヘキシルアクリレ―ト77.87モル%およびアクリル酸22.13モル%)、アゾ系開始剤としてAIBN0.08重量部(アクリル系単量体に対して、0.078モル%)を投入し、室温で1時間、窒素還流を行つた。
【0029】
ついで、溶液重合処理として、反応容器の内容物の温度を63℃に昇温して、窒素気流中で、4時間の主反応を行い、その後、80℃に昇温して、2時間の熟成反応を行つた。このような溶液重合により得られたアクリル系重合体の有機溶剤溶液を使用して、実施例1と同様にして、アクリル系粘着剤溶液の調製および粘着テ―プの作製を行つた。
【0030】
なお、この実施例では、前記の比較例1〜3の場合と同様に、使用した最も沸点の低い有機溶剤(酢酸エチル)の沸点bpとアゾ系開始剤(AIBN)の10時間半減期温度TH とから、前記の式(1),(2)の要件を満たす主反応時の反応温度Tpは、62℃<Tp<70℃となり、また、前記の式(3),(4)の要件を満たす熟成反応時の反応温度Taは、77℃<Ta<85℃となる。したがつて、上記実施例で適用した主反応時の反応温度:63℃および熟成反応時の反応温度:80℃は、いずれも、上記の反応温度Tpおよび反応温度Taの範囲内にあることが明らかである。
【0031】
比較例4
有機溶剤をトルエン100重量部に変更した以外は、実施例3と同様にして、溶液重合を行つた。このような溶液重合により得られたアクリル系重合体の有機溶剤溶液を使用して、実施例1と同様にして、アクリル系粘着剤溶液の調製および粘着テ―プの作製を行つた。なお、この比較例に適用した主反応時の反応温度:63℃および熟成反応時の反応温度:80℃は、いずれも、使用した有機溶剤(トルエン)の沸点bpから前記式(1)より求められる主反応時の反応温度Tp(95℃<Tp<110℃)および前記式(3)より求められる熟成反応時の反応温度Ta(110℃<Tp<125℃)を満足しないものである。
【0032】
以上の実施例1〜3および比較例1〜4の各粘着テ―プについて、下記の方法により、粘着力、保持力および加熱発生ガス量を測定した。また、各粘着テ―プの作製に使用したアクリル系重合体の重合率を、下記の方法により、測定した。
これらの結果は、表1に示されるとおりであつた。
【0033】
<重合率の測定>
アクリル系重合体の溶液約1gを正確に秤量し、乾燥機で130℃で3時間乾燥させ、再度秤量する。この方法で求めた固形分測定値(%)と、重合時の仕込み比から求めた固形分計算値(%)から、以下の式により、重合率を求めた。
【0034】
<粘着力の測定>
粘着テ―プを20mm×100mmの大きさに切断し、23℃,65%RHの雰囲気中で、粘着テ―プから剥離ライナを剥がして、被着体としてのアルミ板に2Kgロ―ラ1往復の条件で圧着し、30分後に、剥離速度300mm/分の条件下で、180°剥離粘着力(N/20mm幅)を測定した。
【0035】
<保持力の測定>
粘着テ―プから剥離ライナを剥がして、被着体としてのベ―クライト板に接着面積20mm×10mmで貼り付け、この粘着テ―プに荷重500gを負荷した状態で80℃の雰囲気中に放置して、60分後のズレ距離(mm)を測定した。
【0036】
<加熱発生ガス量の定量>
粘着テ―プより剥離ライナを剥がして、試料を秤量し、バ―ジ&トラツプヘツドスペ―スサンプラにより、試料の120℃×10分加熱を行い、発生したガスを−120℃コ―ルド・トラツプした。このトラツプ(発生ガス)成分についてガスクロマトグラフ/質量分析計による測定を行つた。
【0037】
【0038】
上記の表1から明らかなように、ブチルアクリレ―ト91.44モル%およびアクリル酸8.55モル%からなるアクリル系単量体を溶液重合する場合に、本発明の構成を採用する実施例1,2の方法によれば、本発明の構成を採用しない比較例1〜3の方法に比べて、残留開始剤や未反応モノマ―などの少ない、高純度で高分子量のアクリル系重合体を高い重合率で生成でき、そのために、粘着力および保持力からなる粘着特性にすぐれるとともに、加熱発生ガス量の少ない、アクリル系粘着剤が得られるものであることがわかる。
【0039】
また、2−エチルヘキシルアクリレ―ト77.87モル%およびアクリル酸22.13モル%からなるアクリル系単量体を溶液重合する場合も、本発明の構成を採用する実施例3の方法によれば、本発明の構成を採用しない比較例4の方法に比べ、上記同様に、粘着力および保持力からなる粘着特性にすぐれ、かつ加熱発生ガス量の少ない、アクリル系粘着剤が得られるものであることがわかる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、アクリル系単量体を、重合開始剤として特定量のアゾ系開始剤を用いて、重合前段の主反応時と重合後段の熟成反応時をそれぞれ特定の反応温度に設定して、溶液重合するようにしたことにより、残留開始剤や未反応モノマ―などの揮発性成分の少ない、高純度で高分子量のアクリル系重合体を高い重合率で生成でき、このアクリル系重合体を主剤とすることにより粘着特性にすぐれたアクリル系粘着剤を製造することができる。
Claims (1)
- アルキル基の炭素数が2〜14個である(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜100モル%とこれと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体50〜0モル%とからなるアクリル系単量体を、この単量体に対して、0.01〜0.1モル%となる割合のアゾ系開始剤を用いて、重合前段の主反応と重合後段の熟成反応とからなる溶液重合を行って、アクリル系重合体を主剤としたアクリル系粘着剤を製造するにあたり、有機溶剤(2種以上の有機溶剤を使用するときは沸点の最も低い有機溶剤)として、メタノール、ヘキサン、酢酸エチルのうちのいずれかを選択使用し、かつアゾ系開始剤として、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸のうちのいずれかを選択使用し、使用する有機溶剤(2種以上の有機溶剤を使用するときは沸点の最も低い有機溶剤)の沸点をbp(℃)、使用するアゾ系開始剤の10時間半減期温度をTH (℃)としたとき、重合前段の主反応時の反応温度Tp(℃)が、下記の式(1),(2);
bp−15<Tp<bp …(1)
TH −10<Tp<TH +5 …(2)
の要件を満たすとともに、重合後段の熟成反応時の反応温度Ta(℃)が、下記の式(3),(4);
bp<Ta<bp+15 …(3)
TH +5<Ta<TH +20 …(4)
の要件を満たすことにより、重合率が99重量%以上のアクリル系重合体を主剤としたアクリル系粘着剤を製造することを特徴とするアクリル系粘着剤の製造法。
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