JP4104200B2 - 酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物に関する。さらに詳しくは、紙箱、書籍、アルバム、ファイルなどの表紙などに用いられる、プラスチックをラミネートした紙や樹脂がコートされた紙のような難接着性の紙の難接着面と一般の紙(ラミネートやコートがされていない紙、以下同様)とを張り合わせるための酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、プラスチックをラミネートした紙や樹脂がコートされた紙のような難接着性の紙の難接着面と一般の紙とを張り合わせるためには、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンや、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンにポリアミン類を配合したものが用いられている。
【0003】
しかし、前記のものは、低温接着性がわるいという問題があり、前記問題を解決した接着剤の開発が待ち望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記実情に鑑み、低温接着性のよい酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物を提供するためになされたものであり、(A)酢酸ビニルまたは、酢酸ビニルとアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのなかから選ばれた少なくとも1種の単量体とをポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化(共)重合してえられた酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、(B)グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルおよびアジピン酸ジメチルのなかから選ばれた少なくとも1種の化合物、および(C)カルボキシル基を含むポリ(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンイミンとの反応物を含有してなる酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A)は、酢酸ビニルまたは酢酸ビニルとアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、プロピオン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニルのなかから選ばれた少なくとも1種の単量体とをポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化(共)重合してえられたものである。
【0006】
酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A)における酢酸ビニル系樹脂とは、酢酸ビニル10〜100%(重量%、以下同様)、好ましくは20〜90%、さらに好ましくは40〜85%、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、プロピオン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニルのなかから選ばれた少なくとも1種の単量体0〜90%、好ましくは10〜80%、さらに好ましくは15〜60%を(共)重合してえられる樹脂である。前記酢酸ビニルの割合が少なすぎるばあいにはポリビニルアルコールを保護コロイドとする乳化(共)重合が困難となり、また、接着剤として必要な塗工適性がえられない傾向がある。
【0007】
前記アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、プロピオン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニルのなかから選ばれた少なくとも1種の単量体は樹脂を可塑化し、接着性を向上させるために用いられる成分である。前記酢酸ビニルとの共重合成分としてアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを使用するばあいには、可塑化効果の点から好ましく、プロピオン酸ビニルを使用するばあいには、酢酸ビニルとの共重合性の点から好ましく、バーサチック酸ビニルを使用するばあいには、酢酸ビニルとの共重合性および耐水性の点から好ましい。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかではアクリル酸エステルが可塑化効果による接着性向上の点から好ましい。
【0008】
前記アクリル酸エステルの具体例としては、たとえばアクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸n−オクチルなどの炭素数1〜10のアルキル基を有するアクリル酸アルキル、アクリル酸ヒドロキシエチルなどの炭素数2〜5のヒドロキシアルキル基を有するアクリル酸ヒドロキシアルキル、アクリル酸メトキシエチルなどの炭素数1〜5のアルコキシ基が結合した炭素数2〜5のアルキレン基を有するアクリル酸アルコキシアルキルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでは、炭素数4〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキル、たとえばアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが可塑化効果の点から好ましい。
【0009】
また、前記メタクリル酸エステルの具体例としては、たとえばメタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチルなどの炭素数1〜10のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基を有するメタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸メトキシエチルなどの炭素数1〜5のアルコキシ基が結合した炭素数2〜5のアルキレン基を有するメタクリル酸アルコキシアルキルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
なお、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A)における酢酸ビニル系樹脂を形成する単量体の組成は、酢酸ビニル系樹脂のガラス転移温度が−30℃以上、さらには−20℃以上であって、30℃以下、さらには10℃以下になるように調整するのが好ましい。前記ガラス転移温度が−30℃以上、さらには−20℃以上のばあいには、接着後にも接着力を維持できる点から好ましく、ガラス転移温度が30℃以下、さらには10℃以下であるばあいには接着の立ち上がり(初期接着性)がよいという点から好ましい。
【0011】
前記酢酸ビニル系樹脂の具体例としては、たとえば酢酸ビニル単独重合体、酢酸ビニル30〜80%およびアクリル酸ブチル20〜70%からなる共重合体、酢酸ビニル60〜90%およびアクリル酸2−エチルヘキシル10〜40%からなる共重合体、酢酸ビニル10〜70%およびバーサチック酸ビニル30〜90%からなる共重合体などがあげられる。
【0012】
本発明で用いられる酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A)は、ポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化(共)重合することによりえられる。ポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化(共)重合されたものであるために、紙などの多孔質材への密着性、ロールコーターなどによる塗工適性の点で優れている。
【0013】
前記ポリビニルアルコールの平均重合度としては300以上、さらには500以上であって、2500以下、さらには2000以下であるのが好ましい。前記平均重合度が300未満のばあいには、樹脂の耐水性がわるくなり、2500をこえるばあいには重合がしにくくなり、またエマルジョンの粘度が高くなり、使用しにくくなる傾向がある。
【0014】
また、前記ポリビニルアルコールのケン化度としては80〜100%、さらには85〜98%であるのが好ましい。前記ケン化度が低すぎるばあいには、乳化重合性が不良となる。
【0015】
前記ポリビニルアルコールの具体例としては、たとえば日本合成化学工業(株)製のGH−17(ケン化度88%で分子量1700)、GL−05(ケン化度88%で分子量500)、AH−17(ケン化度98%で分子量1700)、AL−05(ケン化度98%で分子量500)などがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは、耐水性、作業性、エマルジョン重合のしやすさの点から好ましい。
【0016】
前記ポリビニルアルコールの使用量は、酢酸ビニル系樹脂をうるための単量体100部(重量部、以下同様)に対して3部以上、さらには5部以上であるのが好ましく、15部以下、さらには10部以下であるのが好ましい。前記使用量が3部未満のばあいにはエマルジョンの安定性が充分でなくなり、15部をこえるばあいにはプラスチックフイルムへの接着性が充分でなくなる傾向がある。
【0017】
本発明に用いられる酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A)の製法としては、前記ポリビニルアルコールを保護コロイドとした通常の乳化(共)重合であるかぎり、とくに限定はない。
【0018】
通常、重合開始剤としては、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩、過酸化水素、過酸化ベンゾイル(BPO)、過酸化メチルエチルケトンのような過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ系化合物などがモノマー100部に対し、0.05〜2部用いられる。また、重合温度は、通常40〜95℃、好ましくは50〜90℃である。
【0019】
このようにしてえられる酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A)は数平均粒子径0.3μm以上、さらには0.5μm以上であって、5.0μm以下、さらには3.0μm以下であるのが好ましい。前記数平均粒子径が0.3μm未満のばあいには、エマルジョンの粘度が高くなり、また、機械的安定性もわるくなり、5.0μmをこえるばあいにはエマルジョンの沈降安定性不良となる傾向がある。
【0020】
また、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A)の固形分含有率は30%以上、さらには40%以上であって、70%以下、さらには60%以下であるのが好ましい。前記固形分含有率が30%未満のばあいには、接着の立ちあがり(初期接着性)がわるくなり、70%をこえるばあいには、エマルジョンの粘度が高くなり、塗工性が不良となる傾向がある。
【0021】
本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物には、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A)のほかに、接着剤の樹脂成分を軟らかくするとともに、接着剤とプラスチックをラミネートした紙や樹脂をコートした紙などの難接着性紙との濡れ性を向上させるための成分としてグルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルおよびアジピン酸ジメチルのなかから選ばれた少なくとも1種の化合物(B)が含まれる。
【0022】
前記グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチルのなかから選ばれた少なくとも1種の化合物(B)の具体例としては、グルタル酸ジメチル単独、コハク酸ジメチル単独、アジピン酸ジメチル単独、グルタル酸ジメチルとコハク酸ジメチルとの混合物、グルタル酸ジメチルとアジピン酸ジメチルとの混合物、アジピン酸ジメチルとコハク酸ジメチルとの混合物、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルの混合物があげられる。これらのなかではグルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルの混合物が工業用として入手が容易である。前記混合物としては、たとえばデュポンジャパン(株)製のDBE(商品名)などがあげられる。
【0023】
本発明で用いられるグルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルおよびアジピン酸ジメチルのなかから選ばれた少なくとも1種の化合物(B)の配合割合としては、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A)100部(固形分)に対して2部以上、さらには4部以上で30部以下であるのが好ましい。前記配合割合が2部未満のばあいには低温時の接着性が充分でなくなり、30部をこえるばあいには接着強度が充分でなくなる傾向にある。
【0024】
(B)成分の添加方法にはとくに限定はなく、乳化(共)重合前、乳化(共)重合中、乳化(共)重合後のいずれの段階で添加してもよいが、乳化重合後に添加するのが容易であるという点から好ましい。
【0025】
乳化重合前に添加するばあいには、(B)成分が重合度を調節する効果もあるため、少量で低温時の接着性をあげる効果がある。
【0026】
このようにしてえられる本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物は、固形分含有率が30%以上、さらには40%以上であって、70%以下、さらには60%以下であり、BH型回転粘度計で測定した組成物の粘度(mPa・s)が100以上、さらには500以上であって、30,000以下、さらには20,000以下であるのが好ましい。前記固形分含有率が30%未満のばあいには、接着の立ち上がり(初期接着性)がわるくなり、70%をこえるばあいには、エマルジョン粘度が高くなり、塗工性が不良となる傾向がある。また、前記粘度が100未満のばあいには、接着剤が流れやすくなり、しみ出しなどの問題が生じやすくなり、30,000をこえるばあいには、塗工性がわるくなったり、塗布量が多くなりすぎるなどの問題が生じる傾向がある。
【0027】
本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物には、本発明の効果を損わない範囲内で樹脂の可塑化および造膜性の向上のために、その他の添加剤、たとえばジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの可塑剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、キシレン、トルエンなどの有機溶剤などの添加剤を用いてもよい。
【0028】
本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物の最低成膜温度は、低いほどよく、20℃以下、さらには10℃以下になるのが好ましい。最低成膜温度が20℃をこえるばあい、低温時の接着性が低下する。
【0029】
また、本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物の接着強度は、たとえばポリプロピレンラミネート紙の貼合物の10℃での材破率は、通常60%以上であり、初期接着性(貼り合わせてから基材を紙破させるまでの時間、以下同様)は、通常60分以内である。
【0030】
本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物には、プラスチックへの接着性を向上させるために、さらにカルボキシル基を含むポリ(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンイミンとの反応物およびその酸中和物などを添加してもよい。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。とくに前記酸中和物が、難接着性紙との密着性の点から好ましい。
【0031】
前記カルボキシル基を含むポリ(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンイミンとの反応物は、カルボキシル基含有不飽和単量体1〜20%と(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする不飽和単量体99〜80%とを適当な有機溶媒中で溶液重合を行なったのちに、生成したポリマーの分子中に存在するカルボキシル基に対して炭素数1〜3のアルキル基を有していてもよいエチレンイミン、プロピレンイミンなどのアルキレンイミンを反応させてえられる。
【0032】
前記カルボキシル基含有不飽和単量体としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸およびイタコン酸などがあげられる。これらのなかではアクリル酸、メタクリル酸がコスト、重合性、アルキレンイミンとの反応性の点から好ましい。
【0033】
前記(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする不飽和単量体としては、酢酸ビニル系樹脂(A)をうる際に用いられるものと同様のものが用いられる。これらのなかではアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが、難接着性紙への接着性の点から好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、スチレンが凝集力を向上させる点から好ましい。
【0034】
前記溶液重合で用いられる有機溶媒としてはメチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルまたはイソ−プロピルアルコール、ノルマル、イソ−またはターシャリー−ブチルアルコールなどの低級アルコール、ブチルセロソルブなどのアルキレングリコール類、MEKなどのケトン類などが好ましい。
【0035】
前記ポリマーの重合は、重合開始剤としてAIBNやBPOなどの存在下、60〜100℃程度で4〜24時間程度反応させることにより行なわれる。
【0036】
前記カルボキシル基を含むポリ(メタ)アクリル酸エステルのカルボキシル基に対しアルキレンイミンを反応させてえられる反応物を製造する方法としては、たとえば米国特許3719629号明細書に記載されている方法があげられる。
【0037】
前記反応物は、塩酸、酢酸などの酸によってアミン部分を中和させてもよい。中和させることにより、前記反応物の水に対する溶解性が向上し、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンへの混和性が向上する。
【0038】
本発明に使用する前記反応物のアミン当量(g−solid/eq)は200〜700の範囲が好ましい。アミン当量が700より大きいばあいには、難接着性紙への密着性が低下し、200より小さいばあいには、接着製品の耐水性が低下する傾向がある。また本発明で使用される前記反応物の分子量は20000〜400000の範囲であるのが好ましい。
【0039】
前記分子量が20000より小さいばあいには、接着製品の耐水性が低下し、400000より大きいばあいには、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンへの混和性がわるくなる傾向がある。
【0040】
なお、前記カルボキシル基を含むポリ(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンイミンとの反応物は、たとえば一般式(I):
【0041】
【化1】
【0042】
(式中、R1およびR2はHまたは炭素数1〜3のアルキル基、nは1〜3、HXは酸、x:y=100:0〜0:100を示す)で表わされるような構造ものである。
【0043】
前記カルボキシル基を含むポリ(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンイミンとの反応物(固形分)の配合量としては、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A)とグルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルおよびアジピン酸ジメチルのなかから選ばれた少なくとも1種の化合物(B)との合計量100部(有効成分)に対して1部以上、さらには3部以上で、30部以下、さらには20部以下であるのが好ましい。前記配合割合が1部未満のばあいには難接着性紙への密着性が充分改善されず、30部をこえるばあいにはコスト的に不利になる傾向がある。
【0044】
なお、前記カルボキシル基を含むポリ(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンイミンとの反応物は、酢酸ビニル系樹脂を重合したのちに添加するのが好ましい。重合前に添加すると、重合反応が行ないにくくなり、粗粒子が発生したり、残存モノマーが多く残る傾向がある。
【0045】
このようにしてえられるカルボキシル基を含むポリ(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンイミンとの反応物を添加した酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物は、固形分含有率が30%以上、さらには40%以上であって、70%以下、さらには60%以下であり、組成物の粘度(mPa・s)が100以上、さらには500以上であって、30,000以下、さらには20,000以下であるのが好ましい。前記固形分含有率が30%未満のばあいには、初期接着性がわるくなり、70%をこえるばあいにはコストが高くなり、また、エマルジョンの粘度が高くなるなどの問題が生じる傾向がある。また、前記粘度が100未満のばあいには、接着剤が流れやすくなり、しみ出しの原因となり、30,000をこえるばあいには塗工性がわるくなり、また塗布量が多くなりすぎてコスト的に不利になるなどの問題が生じる傾向がある。
【0046】
えられた組成物は、塗工性良好で、難接着性紙への接着性良好で、とくに接着の立ち上がり(初期接着性)が良好なものである。
【0047】
本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物(改質剤を添加していないもの、添加したものの両方)は、紙箱、書籍、アルバム、ファイルなどの表紙などに用いられるプラスチックをラミネートした紙、樹脂をコートした紙などの難接着性の紙や、プラスチックフィルムなどの接着に好ましく用いられる。とくに、ポリプロピレンラミネート紙やPETラミネート紙などの接着に用いると、従来難接着性の紙の接着に用いられている接着剤に比べて接着の立ち上がりが著しく速くなり、また、低温時の接着にも優れている。
【0048】
本発明の好ましい態様としては、酢酸ビニル40〜85%と炭素数4〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキル15〜60%とをポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化共重合させたエマルジョンおよび(B)成分を含有してなるPPラミネート紙の接着に使用する接着剤組成物があげられる。
【0049】
【実施例】
つぎに、本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
なお、実施例、比較例での評価方法を以下にまとめて示す。
【0051】
(初期接着性)
えられた酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物0.01gを、室温でポリプロピレンラミネート紙(ボール紙にポリプロピレンを20g/m2ラミネートした3×3cmの紙)の裏面の中心部に塗布したのち、すぐに別のポリプロピレンラミネート紙の表面をあて、指で押さえて接着した。このサンプルをそれぞれ5分ごとに手で強制剥離して、ポリプロピレンラミネート紙が破れるまでの時間を測定した。
【0052】
(低温接着性(材破率))
えられた酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物およびポリプロピレンラミネート紙(前記と同様)をあらかじめ10℃に冷却しておいた。前記酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物0.01gを前記ポリプロピレンラミネート紙の裏面の中心部に塗布したのち、すぐに別のポリプロピレンラミネート紙の表面をあて、指で押さえた。これを10℃で24時間保存したのち手で強制剥離して、材破率(10個のうちの紙破した割合)を測定した。
【0053】
また、表1および表2で使用した略号およびその内容を以下にまとめて示す。
【0054】
A−1:製造例1でえられた酢酸ビニル系樹脂エマルジョン
A−2:製造例2でえられた酢酸ビニル系樹脂エマルジョン
AB:実施例7でえられた下記B−1を含む酢酸ビニル系樹脂エマルジョン
B−1:グルタル酸ジメチル/コハク酸ジメチル/アジピン酸ジメチルの混合物(配合比60/20/20)、デユポン ジャパン(株)製のDBE
C−1:カルボキシル基を含むポリ(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンイミンとの反応物(固形分49%、(株)日本触媒製のポリメントNK−100PM)
D−1:ジブチルフタレート(可塑剤)
製造例1
撹拌機、還流冷却機、滴下ロートおよび温度計を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに水470gをいれ、つづいてポリビニルアルコール(平均重合度1700、ケン化度98%)30gを添加して90℃で溶解させた。溶解後、75℃まで冷却し、重合開始剤として過酸化水素(38%水溶液)2gおよび酒石酸の25%水溶液2gを添加したのち、酢酸ビニル350g、アクリル酸2−エチルヘキシル150gの混合物を3時間かけて連続滴下して重合させ、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A−1)(固形分含有率56%、数平均粒子径1.5μm)をえた。えられた酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A−1)を乾燥してえられた樹脂成分のガラス転移点は−5℃、最低成膜温度は0℃であった。
【0055】
製造例2
撹拌機、還流冷却機、滴下ロートおよび温度計を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに水470gをいれ、つづいてポリビニルアルコール(平均重合度1700、ケン化度98%)30gを添加して90℃で溶解させた。溶解後、75℃まで冷却し、重合開始剤として過酸化水素(38%水溶液)2gおよび酒石酸の25%水溶液2gを添加したのち、酢酸ビニル500gを3時間かけて連続滴下して重合させ、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A−2)(固形分含有率56%、数平均粒子径1.5μm)をえた。えられた酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(A−2)を乾燥してえられた樹脂成分のガラス転移点は29℃、最低成膜温度は15℃であった。
【0056】
実施例1〜6および比較例1〜4
表1に示す成分を表1に示す量を配合して、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物をえ、評価した。
【0057】
結果を表1に示す。
【0058】
実施例7
撹拌機、還流冷却機、滴下ロートおよび温度計を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに水470gをいれ、つづいてポリビニルアルコール(平均重合度1700、ケン化度98%)30gを添加して90℃で溶解させた。溶解後、75℃まで冷却した。つぎに、重合開始剤として過酸化水素(38%水溶液)2gおよび酒石酸の25%水溶液2gを添加したのち、酢酸ビニル350g、アクリル酸2−エチルヘキシル150g、グルタル酸ジメチル/コハク酸ジメチル/アジピン酸ジメチルの混合物(B−1)20gの混合物を3時間かけて連続滴下して重合させ、グルタル酸ジメチル/コハク酸ジメチル/アジピン酸ジメチルの混合物(B−1)を含む酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物(AB)(固形分含有率56%、数平均粒子径1.0μm)をえ、評価した。
【0059】
別に、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンのみを製造し、乾燥してえられた樹脂成分の樹脂のガラス転移点は−5℃、最低造膜温度は0℃であった。
【0060】
結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示された結果から実施例1〜7の接着剤は接着の立ち上がり、低温接着性ともに優れていることがわかる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物は、難接着性の紙の接着に使用したばあいに、接着の立ち上がりおよび低温接着性が優れており、難接着性の紙の接着に好ましく使用しうる。
Claims (1)
- (A)酢酸ビニルまたは、酢酸ビニルとアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのなかから選ばれた少なくとも1種の単量体とをポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化(共)重合してえられた酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、(B)グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルおよびアジピン酸ジメチルのなかから選ばれた少なくとも1種の化合物、および(C)カルボキシル基を含むポリ(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンイミンとの反応物を含有してなる酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物。
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JP07085298A JP4104200B2 (ja) | 1998-03-19 | 1998-03-19 | 酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤組成物 |
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