JP5028508B2 - スパークプラグ - Google Patents

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Description

この発明は、スパークプラグに関し、特に、中心電極及び接地電極のいずれか少なくとも一方に貴金属チップが設けられて成るスパークプラグに関する。
自動車エンジン等の内燃機関の点火用に使用されるスパークプラグは、一般に、筒状の主体金具と、この主体金具の内孔に配置される筒状の絶縁体と、この絶縁体の先端側内孔に配置される中心電極と、一端が主体金具の先端側に接合され、他端が中心電極と間隙を形成するように設けられた接地電極とを備える。さらに、耐火花消耗性向上等を目的として、中心電極と接地電極の先端面に貴金属合金により形成されて成るチップが設けられたスパークプラグも知られている。
ところで、近年の自動車等の内燃機関は、高出力及び高着火性が求められており、燃焼室内の圧力の高い過給機付内燃機関や高エネルギーコイルを用いた内燃機関が開発されている。このような内燃機関において使用されるスパークプラグの使用環境は苛酷であるので、耐酸化性だけでなく、耐火花消耗性や耐剥離性に優れたスパークプラグの開発が求められている。
例えば、特許文献1には、Ptに対してRh,Ir,Ni,Pd等を添加した材料について耐消耗性を向上させたスパークプラグが記載されている。また、特許文献2には、電極区分と電極ベースボディとの間に極めて僅かな熱機械的な応力しか生じず、しかも廉価に製造可能となるような点火プラグを提供することを目的として、電極の一方の端区分に電極区分が設けられている形式の物において、電極区分が銅を含有した合金を有していることを特徴とする点火プラグが記載されている。
この他にも、各種貴金属合金で形成されたチップが中心電極及び/又は接地電極に設けられてなるスパークプラグが多数知られている。
特開2005−353606号公報 特開2004−165165号公報
しかし、これまでに知られているいずれの貴金属合金で形成されたチップも一長一短があり、すべての性能を満足するスパークプラグはなかった。
例えば、Pt−Rh合金やPt−Ir合金で形成された貴金属チップは、耐火花消耗性に特に優れるものの、燃焼室内の高温環境及び冷熱サイクルを伴う環境下における、貴金属チップと電極母材との間での耐剥離性及び耐チップ割れ性に劣る。
Pt−Ni合金で形成された貴金属チップは、耐剥離性に特に優れるものの、耐火花消耗性に劣る。
この発明は、このような課題を解決することを目的とし、所望の耐久性を有する貴金属チップを備えたスパークプラグを提供することを課題とする。具体的には、耐消耗性、耐剥離性、及び耐チップ割れ性に優れた貴金属チップを備えたスパークプラグを提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段は、
(I)中心電極、及び前記中心電極との間に間隙を設けた接地電極を備え、前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方に貴金属チップが設けられたスパークプラグにおいて、
前記貴金属チップは、Mp(Mpは、Pt、又はPtとPdとからなる元素群であり、Pdは貴金属チップの質量に対して20質量%以下である。)、Cu、及びM(Mは、Rh、Ir、Ru、Re、及びWからなる元素群から選ばれる少なくとも1種である。)を合計で95質量%以上含有し、かつ、
前記Mp、Cu、Mの質量比(Mp,Cu,M)が各点D(95,5,0)、E(94.5,5,0.5)、F(87,5,8)、G(80,12,8)、H(79.5,20,0.5)、I(80,20,0)、D(95,5,0)をこの順に結ぶ線分で囲まれた領域内(線上を含む。)にある(ただし、「Cuを5質量%以上〜30質量%以下、Irを0.1質量%以上〜15質量%以下含み、残部Ptからなるプラグ電極用材料、及びCuを5質量%以上20質量%以下含み、残部Ptからなるプラグ電極用材料」を除く。)ことを特徴とするスパークプラグ。
前記(I)の好ましい態様は、
(II)前記貴金属チップは、質量比(Mp,Cu,M)が各点E(94.5,5,0.5)、F(87,5,8)、G(80,12,8)、H(79.5,20,0.5)、E(94.5,5,0.5)をこの順に結ぶ線分で囲まれた領域内(線上を含む。)にあることを特徴とする。
また、前記(1)の他の好ましい態様は、
軸孔を有する絶縁体を備え、該軸孔に配設された中心電極、及び前記中心電極との間に間隙を設けられた接地電極を備え、前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方に貴金属チップが設けられて成るスパークプラグにおいて、
以下に記載された、溶接面積S(mm)とチップ出寸法H(mm)、かぶり寸法L(mm)、チップ/溶接部間距離h(mm)とが、次の条件を満たすことを特徴とする。
(a)H≦0.13S+1.18
(b)S≦5
(c)0.1≦h、又は0.03≦L
ただし、溶接面積Sは、
前記貴金属チップが前記中心電極及び/又は前記接地電極の先端面又は周側面に設けられ、
前記貴金属チップが該貴金属チップと設置金属体(ただし、設置金属体は、中心電極、接地電極、又はこれらの電極と前記貴金属チップとの間に設けられた土台をいう。)との溶融により形成されてなる溶接部を介して接合されている前記設置金属体の接合面に対して垂直な方向をX方向とし、該X方向から観察して、前記設置金属体と前記貴金属チップとを前記X方向に直交する面へ投影した場合における両投影領域が重なる領域の面積S(ただし、前記貴金属チップが設置金属体に該設置金属体における複数面で接合されている場合には、各面に対して垂直な方向をY方向とし、各Y方向における重なる領域の合計面積をSとする)であり、
チップ出寸法Hは、
前記貴金属チップと対向金属凸体(ただし、対向金属凸体は、貴金属チップ、中心電極の先端部が突出して形成されて成る中心電極凸部、又は接地電極の先端部が突出して形成されて成る接地電極凸部をいう。)とが対向する方向において、前記設置金属体の前記接合面から最も離れた前記貴金属チップの先端面との間の距離(ただし、前記設置金属体と前記貴金属チップとの間の全面に前記溶接部が設けられている場合には、前記貴金属チップの軸線PX方向における前記溶接部の厚みが最も薄い部位における厚みの1/2となる点から前記軸線PX方向に最も離れた前記貴金属チップの表面までの距離である。)であり、
かぶり寸法Lとチップ/溶接部間距離hについては、
前記軸孔が延伸する方向を前記中心電極の軸線AX方向としたとき、
(1)前記貴金属チップと前記対向金属凸体とが前記軸線AX方向に対向するように配置され、前記貴金属チップが前記設置金属体から前記軸線AXに直交する方向へ突出していない場合には、
かぶり寸法Lは、前記軸線AX方向から観察して、前記貴金属チップの最大径となる周側面上の点k1を含む前記軸線AXに平行な直線群と前記貴金属チップに対向する前記対向金属凸体の最大径となる周側面上の点k2を含む前記軸線AXに平行な直線群との間の最短距離であり、
チップ/溶接部間距離hは、前記貴金属チップにおいて、前記点k1を含み前記軸線AXに平行な面における前記貴金属チップの先端から前記溶接部との境界までの前記軸線AX方向距離であり、
(2)前記貴金属チップが前記接地電極から前記軸線AXに直交する方向へ突出するように前記接地電極に設けられ、前記対向金属凸体の先端面と前記貴金属チップとが前記軸線AX方向において対向するように配置されている場合には、
かぶり寸法Lは、前記軸線AX方向から観察して、前記対向金属凸体の先端面を前記軸線AX方向に垂直な仮想面へ投影した場合における投影面上の点k3と、前記接地電極を該仮想面へ投影した場合における投影面の輪郭線及び前記貴金属チップを該仮想面へ投影した場合における投影面の輪郭線が交差することにより生じる交点k4との最短距離であり、
(i)前記貴金属チップのチップ/溶接部間距離hは、前記貴金属チップにおいて、前記点k4を含み前記軸線AXに平行な面における前記貴金属チップの先端から前記溶接部との境界までの距離であり、
(ii)前記対向金属凸体が中心電極に設けられた貴金属チップである場合には、前記対向金属凸体のチップ/溶接部間距離hは、前記点k3を含み前記軸線AXに平行な面における前記中心電極に設けられた貴金属チップの先端から前記溶接部との境界までの前記軸線AX方向の距離である。
前記(I)の好ましい態様は、
(III)前記MpはPtとPdとからなる元素群であることを特徴とし、
(IV)前記貴金属チップは、Ni、Co、Fe、及びMnからなる元素群A、及び/又は、Ti、Hf、Y、及び希土類元素からなる元素群Bから選ばれるいずれか少なくとも1種を含み、前記元素群Aの合計質量が5質量%以下であり、前記元素群Bの合計質量が1.5質量%以下であり、かつ、前記元素群A及び前記元素群Bの合計質量が5質量%以下であることを特徴とし、
(V)前記Mは、Rhであることを特徴とし、
(VI)前記貴金属チップの硬度が、140Hv以上であることを特徴とし、
(VII)前記貴金属チップの硬度が、200Hv以上であることを特徴とし、
(VIII)前記中心電極が絶縁体の軸方向に形成された軸孔内にその一端部から露出するように固定され、端子金具が前記軸孔内の他端部から露出するように固定され、前記軸孔内における前記中心電極と前記端子金具との間に抵抗体が設けられ、前記抵抗体の抵抗値が10kΩ以下であることを特徴とし、
(IX)前記貴金属チップは、前記接地電極のみに設けられて成ることを特徴とする。
前記(I)のスパークプラグによると、中心電極及び接地電極の少なくとも一方に設けられた貴金属チップが、Mp、Cu、Mを合計で95質量%以上含有し、かつMp、Cu、Mの質量比が特定の範囲にあるので、優れた耐久性を有する、特に耐消耗性、耐剥離性、及び耐チップ割れ性に優れた貴金属チップを備えたスパークプラグを提供することができる。
また、前記貴金属チップが、さらにNi、Co、Fe、及びMnからなる元素群A、及び/又は、Ti、Hf、Y、及び希土類元素からなる元素群Bから選ばれる少なくとも1種を特定量含有すると、耐剥離性及び耐チップ割れ性の少なくとも1つの性能がより一層優れたスパークプラグを提供することができる。
また、前記貴金属チップの硬度が特定の値以上であると、耐衝撃性により一層優れ、製造工程中に治具と接触して衝撃を受けたとしても、貴金属チップの変形を抑制することができる。
また、抵抗体の抵抗値が10kΩ以下であるスパークプラグであって、火花放電の際に火花放電間隙に与えられるエネルギーが大きくなったとしても、耐消耗性等に優れた前記貴金属チップが設けられていると、スパークプラグの性能を維持することができる。
さらに、中心電極よりも高温になり、過酷な環境下にある接地電極に前記貴金属チップが備えられていると、より一層効果的である。
図1は、この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグを説明する説明図であり、図1(a)は、この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグの一部断面全体説明図であり、図1(b)は、この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグの主要部分を示す断面説明図である。 図2は、この発明に係るスパークプラグに設けられた貴金属チップのMp、Cu、Mの質量比を示す三成分系組成図である。 図3は、スパークプラグに備えられた貴金属チップの硬度を測定する位置を示す説明図である。 図4(a)はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図4(b)は、図4(a)の観察方向Xから接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。 図5(a)はこの発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図5(b)は、図5(a)の観察方向X2から接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。 図6(a)はこの発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図6(b)は、図6(a)の観察方向X3から接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。 図7(a)はこの発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図7(b)は、図7(a)の観察方向X4から接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。 図8(a)はこの発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図8(b1)は、図8(a)の観察方向Y1から接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。図8(b2)は、図8(a)の観察方向Y2から接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。図8(b3)は、図8(a)の観察方向Y3から接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。 図9(a)はこの発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図9(b)は、図9(a)の観察方向X6から接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。図9(c)は接地電極チップのチップ断面積Aを説明するための説明図である。 図10は、この発明に係るスパークプラグに設けられた貴金属チップのMp、Cu、Mの質量比を示す三成分系組成図である。 図11(a)〜(d)は、スパークプラグに設けられた貴金属チップの耐剥離性を評価する試験の概要を説明するための説明図である。 図12は、スパークプラグに設けられた貴金属チップの耐衝撃性を評価する試験の概要を説明するための説明図である。 図13は、チップ出寸法Hと溶接面積Sとを変化させた場合の耐久性試験の評価結果を示す図である。
(第1の発明)
この発明に係るスパークプラグは、中心電極と接地電極とを有し、この中心電極の一端と接地電極の一端とが間隙を介して対向するように配置され、この中心電極と接地電極との少なくとも一方に貴金属チップが設けられている。この発明に係るスパークプラグは、このような構成を有するスパークプラグであれば、その他の構成は特に限定されず、公知の種々の構成を採ることができる。
この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグを図1に示す。図1(a)はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグ1の一部断面全体説明図であり、図1(b)はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグ1の主要部分を示す断面説明図である。なお、中心電極の軸線をAXとし、図1(a)、図1(b)では紙面下方を軸線AXの先端方向、紙面上方を軸線AXの後端方向として、説明する。
このスパークプラグ1は、図1(a)及び(b)に示されるように、円筒状の主体金具2と、この主体金具2に内装された略円筒状の絶縁体3と、この絶縁体3の軸孔20内に先端方向から順に内装された、中心電極4と抵抗体5と端子金具6と、一端が中心電極4の先端面と間隙を介して対向するように配置されると共に他端が主体金具2の端面に接合された接地電極7とを備え、前記接地電極7の先端部における中心電極に対向する面に貴金属チップが設けられ(以下において、接地電極に設けられた貴金属チップを接地電極チップ8と称することがある。)、前記中心電極4の先端面に貴金属チップが設けられ(以下において、中心電極に設けられた貴金属チップを中心電極チップ9と称することがある。)、接地電極チップ8と中心電極チップ9との間に火花放電間隙Gが形成されている。
前記主体金具2は、略円筒形状を有しており、絶縁体3を内装することにより絶縁体3を保持するように形成されている。主体金具2における先端方向の外周面にはネジ部10が形成されており、このネジ部10を利用して図示しない内燃機関のシリンダヘッドにスパークプラグ1が装着される。主体金具2は、導電性の鉄鋼材料、例えば、低炭素鋼により形成されることができる。
前記絶縁体3は、主体金具2の内周部に滑石(タルク)11又はパッキン12等を介して保持されており、絶縁体3の軸孔20内に中心電極4、抵抗体5及び端子金具6を保持している。絶縁体3は、絶縁体3における先端方向の端部が主体金具2の先端面から突出した状態で、主体金具2に固着されている。絶縁体3は、機械的強度、熱的強度、電気的強度等を有する材料であることが望ましく、このような材料として、例えば、アルミナを主体とするセラミック焼結体が挙げられる。
前記中心電極4は、外材13と、この外材13の内部の軸心部に同心に埋め込まれるように形成されてなる内材14とにより形成されている。中心電極4は、その先端部が絶縁体3の先端面から突出した状態で絶縁体3の軸孔20内に固定されており、主体金具2に対して絶縁保持されている。外材13は、熱伝導性及び機械的強度等を有する材料で形成されることが望ましく、例えば、インコネル(商標名)等のNi基合金で形成される。内材14は、Cu又はAgなどの熱伝導性に優れた金属材料により形成されることができる。
前記接地電極7は、例えば、略角柱体に形成されてなり、一端が主体金具2の端面に接合され、途中で略L字に曲げられて、その先端部が中心電極4の軸線AX方向に位置するように、その形状及び構造が設計されている。接地電極7がこのように設計されることによって、接地電極7の一端が中心電極4と間隙を介して対向するように配置されている。接地電極7は、中心電極4を形成する材料と同様の材料により形成される。
前記端子金具6は、その先端部が絶縁体3の後端面から突出した状態で絶縁体3の軸孔20内に固定されており、主体金具2に対して絶縁保持されている。端子金具6は、例えば、低炭素等で形成され、その表面にNi金属層がメッキ等で形成されている。
前記抵抗体5は、絶縁体3の軸孔20内における、中心電極4と端子金具6との間に固定されている。抵抗体5は、ガラス粉末、セラミック粉末、非金属導電性粉末、及び/又は金属粉末等の混合物により形成されることができる。この抵抗体5の抵抗値は、通常15kΩ以下であるが、10kΩ以下である場合には、特に火花放電の際に火花放電間隙Gに与えられるエネルギーが大きくなるので、火花消耗が顕著になる。したがって、抵抗体5の抵抗値が10kΩ以下の場合には、下記に示すチップ材料で形成された貴金属チップの効果がより発揮される。
前記接地電極チップ8は、例えば円柱形状であり、接地電極7の先端部に中心電極4の先端面に設けられた中心電極チップ9に対向するように設けられる。接地電極チップ8は、後述するチップ材料又はこのチップ材料以外の公知の材料により形成されればよいが、通常、接地電極チップ8は中心電極チップ9よりも高温に曝されるため、接地電極チップ8は後述するチップ材料で形成されるのがよい。
前記中心電極チップ9は、例えば円柱形状であり、中心電極4の先端面に設けられる。中心電極チップ9は、後述するチップ材料又はこのチップ材料以外の公知の材料により形成される。
前記接地電極チップ8と前記中心電極チップ9とは、間隙を有して対向するように配置され、この間隙が火花放電間隙Gである。この発明のスパークプラグ1は、中心電極4及び接地電極7の少なくとも一方に貴金属チップ8,9が設けられていればよく、例えば、接地電極7のみに貴金属チップ8が設けられている場合には、中心電極4と接地電極チップ8との間の間隙が火花放電間隙である。この火花放電間隙は、通常、0.3〜1.5mmに設定される。
スパークプラグ1においては、接地電極チップ8及び中心電極チップ9の少なくとも一方が下記チップ材料で形成され、好ましくは、より高温に達する接地電極チップ8が下記チップ材料で形成される。
これらの貴金属チップを形成するチップ材料は、Mp(Mpは、Pt、又はPtとPdとからなる元素群であり、Pdは貴金属チップの質量に対して20質量%以下である。)、Cu、及びM(Mは、Rh、Ir、Ru、Re、及びWからなる元素群から選ばれる少なくとも1種である。)を合計で95質量%以上含有し、かつ前記Mp、Cu、Mの質量比(Mp,Cu,M)が各点D(95,5,0)、E(94.5,5,0.5)、F(87,5,8)、G(80,12,8)、H(79.5,20,0.5)、I(80,20,0)、D(95,5,0)をこの順に結ぶ線分で囲まれた領域内(線上を含む。)にある。
前記チップ材料におけるMp、Cu、及びMの含有率が95質量%以上であり、図2に示される、Mp、Cu、Mの三成分系組成図における三成分の質量比(Mp,Cu,M)が各点D、E、F、G、H、I、Dをこの順に結ぶ線分で囲まれた領域内(線上を含む。)にあると、耐消耗性、耐剥離性、及び耐チップ割れ性に優れた貴金属チップを備えたスパークプラグを提供することができる。
前記チップ材料は、三成分系組成図における三成分の質量比(Mp,Cu,M)が各点E(94.5,5,0.5)、F(87,5,8)、G(80,12,8)、H(79.5,20,0.5)、E(94.5,5,0.5)をこの順に結ぶ線分で囲まれた領域内(線上を含む。)にあるのが好ましい。
前記チップ材料は、三成分系組成図において、Cuが5質量%以上であることにより、中心電極及び接地電極を形成する電極材料に用いられるNi基合金とチップ材料との熱膨張係数の差が小さくなるので、Pt−Rh合金、Pt−Ir合金に比べて耐剥離性に優れる。また、耐剥離性の向上に効果的である材料として知られているPt−Ni合金よりも融点の低下を抑えることができ、耐剥離性だけでなく耐火花消耗性にも優れる。さらに、結晶粒度が大きくなる傾向にあるPt−Rh合金に比べて、このチップ材料は結晶粒度が大きくならず、またPt−Ir合金に比べて内部酸化を抑えられるので、耐チップ割れ性にも優れる。
三成分系組成図においてCuが5質量%未満であると、前記効果が得られない。三成分系組成図においてCuが25質量%を超えると、酸化しやすいCuが増えるため、耐酸化性が低下する他、結晶粒界で内部酸化を引き起こし、チップ割れやチップ剥離が生じることがある。さらには、これらが原因で、熱伝導性が低下して耐消耗性に悪影響を及ぼすおそれがある。
前記チップ材料がMを含有すると、特に三成分系組成図においてMが0.5質量%以上であると、Mは融点が高いので耐火花消耗性に優れるチップ材料となる。また、結晶粒度が細かくなるので、チップ内での割れに起因する結晶粒の脱落を抑制することができる。さらに、高強度となるので、製造工程中に治具と接触して衝撃を受けても貴金属チップの変形を抑制することができるので、耐衝撃性にも優れる。
ただし、三成分系組成図においてMが8質量%を超えると、脆化を引き起こすので、加工性の低下及び熱応力や内部腐食によるチップ割れを生じ易くなる。また、Mは熱膨張係数が小さいので、Mを多量に含有すると電極材料に用いられるNi基合金とチップ材料との熱膨張係数の差が大きくなるので、耐剥離性に悪影響を及ぼす。したがって、三成分系組成図においてMは8質量%以下である。
以上においてチップ材料におけるCu及びMの作用について述べたが、勿論チップ材料における単独成分の質量割合の影響だけでなく、三成分(Mp、Cu、M)の質量比による影響が大きい。チップ材料がCuとMとを合わせて所定割合以上含有している場合、すなわち三成分系組成図においてCuとMとの質量割合が直線GHを超えている場合には、耐剥離性、耐消耗性、耐チップ割れ性の少なくとも1つが劣ってしまう。したがって、三成分系組成図においてCuとMとの質量割合は直線GH以下である。
なお、MはRh、Ir、Ru、Re、及びWからなる元素群から選ばれる少なくとも1種である。Rh、Ir、Ru、Re、及びWはいずれも融点が高く、スパッタリングしにくく、Ptと共に使用することによって、強度が向上し、結晶粒を細かくできるので、これらの元素群から選ばれる少なくとも1種が三成分系組成図に示される範囲にあると、耐剥離性、耐消耗性、及び耐チップ割れ性に優れた貴金属チップを備えたスパークプラグを提供することができる。これらの元素群の中でもRhは自らが酸化して緻密な酸化皮膜を形成し、それ以上の酸化を抑制できるので、特に好ましい。
Mpは、Pt、又はPtとPdとからなる元素群であり、Pdは貴金属チップの質量に対して20質量%以下である。Ptは、耐酸化性、耐火花消耗性及び加工性に優れるので、チップ材料の主成分として優れている。また、PdはPtと同様に耐酸化性に優れるだけでなく、熱膨張係数がPtよりも大きいので、特定量のPdを含有した方が耐剥離性において有利である。したがって、チップ材料からなる貴金属チップの全質量に対してPdが20質量%以下である場合には、さらに耐剥離性に優れた貴金属チップを備えたスパークプラグを提供することができる。ただし、Pdが20質量%を超えると、チップ材料の融点が低下することにより耐消耗性が低下する。
チップ材料は、Ni、Co、Fe、及びMnからなる元素群A、及び/又は、Ti、Hf、Y、及び希土類元素からなる元素群Bから選ばれる少なくとも1種を含み、前記元素群Aの合計質量がチップ材料からなる貴金属チップの全質量に対して5質量%以下であり、前記元素群Bの合計質量がチップ材料からなる貴金属チップの全質量に対して1.5質量%以下であり、かつ、前記元素群A及び前記元素群Bの合計質量がチップ材料からなる貴金属チップの全質量に対して5質量%未満であるのが好ましい。
チップ材料における元素群Aの合計質量が、0質量%を超え5質量%以下であると、耐剥離性、耐チップ割れ性により一層優れる。元素群Aは熱膨張係数が大きいので、電極材料の熱膨張係数との差が小さくなり、熱応力の発生を抑えることができること、及び結晶粒が細かくなるので耐チップ割れ性に有効である。
チップ材料における元素群Bの合計質量が、0質量%を超え1.5質量%以下、特に0.01質量%以上1質量%以下であると、結晶粒が細かくなるので耐チップ割れ性に優れる。
チップ材料における元素群A及び元素群Bの含有率が大きすぎると、融点が低下して耐消耗性が劣るおそれがある。したがって、元素群A及び元素群Bの合計質量は貴金属チップに対して5質量%以下であるのが好ましい。
このチップ材料は、Mp、Cu、及びMを合計で95質量%以上と、所望によりNi、Co、Fe、及びMnからなる元素群Aと、Ti、Hf、Y、及び希土類元素からなる元素群Bとを実質的に含有する。これらの各成分は、前述した各成分の含有率の範囲内で、これら各成分と不可避不純物との合計が100質量%になるように含有される。前記成分以外の成分、例えば、Ag、B、Ca、Al、Si、Mgが微量の不可避不純物として含有されることがある。これらの不可避不純物の含有量は少ない方が好ましいが、本願発明の目的を達成することができる範囲内で含有していてもよく、前述した成分の合計質量を100質量部としたときに、前述した1種類の不可避不純物の割合は0.1質量部以下、含有される全種類の不可避不純物の合計割合は0.2質量部以下であるのがよい。
このチップ材料で形成されてなる貴金属チップに含まれる各成分の含有率は、次のようにして測定することができる。すなわち、まず貴金属チップ8,9を切断して断面を露出させ、この貴金属チップ8,9の断面において任意の複数箇所(たとえば、5箇所)を選択し、EPMAを利用して、WDS(Wavelength Dispersive X-ray Spectrometer)分析を行うことにより、各々の箇所の質量組成を測定する。次に、測定した複数箇所の値の平均値を算出して、この平均値を貴金属チップの組成とする。なお、測定場所として、貴金属チップ8,9と中心電極4、接地電極7、及び/又は土台等の設置金属体とを溶融接着する際に形成される溶接部15を除く。
なお、このチップ材料は、所定の原料を所定の配合割合で配合して、後述する方法で製造される。製造されたチップ材料の組成は、原料の組成とはほぼ一致する。したがって、このチップ材料に含まれる各成分の含有率は、簡易的な方法として原料の配合割合からも算出することができる。
前記チップ材料で形成される貴金属チップの硬度は、140Hv以上であるのが好ましく、200Hv以上であるのが特に好ましい。
貴金属チップの硬度が前記範囲内であると、製造工程中にチップが治具に接触しても、貴金属チップの変形を防止することができる。
貴金属チップの硬度は次のように測定する。図3に示すように、貴金属チップ8,9の表面における中心電極4又は接地電極7に接合している面とは反対側の面の中心において、マイクロビッカース硬度計により、1N荷重の条件でJIS Z 2244に準拠して、マイクロビカース硬さを測定する。
貴金属チップの硬度は、チップ材料の組成、貴金属チップを製造する際の加工条件、この加工前後の熱処理温度及び時間、貴金属チップを接地電極及び中心電極に溶接する際の熱負荷及び抵抗溶接する場合にはその際に生じる貴金属チップの変形量、中心電極に設けられている貴金属チップの場合には、抵抗体、絶縁体、金属端子、及び中心電極を接合する際の熱処理条件等によって調整することができる。具体的には、貴金属チップを製造する際の加工率を大きくする、加工後の熱処理温度を低くする若しくは時間を短くする、貴金属チップを接地電極及び中心電極に溶接する際の温度を低くする若しくは時間を短くする、及び/又は抵抗溶接する場合には貴金属チップの変形量を大きくすることにより、加工歪が大きくなるので高い変形抵抗が得られ、高硬度となる。
この発明のスパークプラグが、前記チップ材料により形成されるだけでなく、下記寸法を有する貴金属チップを備えることにより、耐消耗性、耐チップ割れ性及び耐剥離性により一層優れた貴金属チップを有するスパークプラグを提供することができる。
すなわち、以下に規定する、溶接面積S(mm)、チップ出寸法H(mm)、かぶり寸法L(mm)、及びチップ/溶接部間距離h(mm)が、次の条件を満たすことが好ましい。
(a)H≦0.13S+1.18
(b)S≦5
(c)0.1≦h、又は0.03≦L
さらに、貴金属チップは、以下に規定するチップ断面積A(mm)が、
(d)0.2≦A≦1.8
を満たすのが好ましい。
前記貴金属チップにおける溶接面積Sとチップ出寸法Hとが(a)H≦0.13S+1.18という関係を満たすと、耐消耗性により一層優れた貴金属チップを有するスパークプラグを提供することができる。貴金属チップの耐消耗性を向上させるためには、貴金属チップの熱引きを良好にするのが良い。溶接面積Sが小さいと貴金属チップと電極との接触面積が小さくなる結果、貴金属チップが受熱した熱を電極へ伝導させ難くなり、熱引きが悪くなるとこれまで考えられてきた。しかし、溶接面積Sだけでなくチップ出寸法Hも熱引きに影響を与えることを発明者らは見出した。すなわち、溶接面積Sが小さくてもチップ出寸法Hが所定値より小さければ、貴金属チップの過熱を抑えることができ、耐消耗性が良好になる。逆にチップ出寸法Hが大きくても溶接面積Sが大きければ熱引きが良好となるので過熱を抑えることができる。
前記貴金属チップにおける溶接面積Sとかぶり寸法Lとチップ/溶接部間距離hとが(b)S≦5、かつ(c)0.1≦h、又は0.03≦Lという関係を満たすと、耐剥離性により一層優れた貴金属チップを有するスパークプラグを提供することができる。溶接面積Sが大きいと、貴金属チップを形成するチップ材料と電極を形成する電極材料との間の熱膨張係数の差により、特に貴金属チップの外周部に高い熱応力が発生することにより、貴金属チップが電極から剥離し易くなる。したがって、溶接面積Sは5以下であるのが好ましい。また、燃焼室内は気流の乱れが激しいので、かぶり寸法Lとチップ/溶接部間距離hとが前記範囲外であると、電極における貴金属チップの外周に近接する部分及び/又は溶接部に放電し易くなる。電極及び溶接部は貴金属チップよりも融点が低いので電極及び溶接部が消耗し易くなり、貴金属チップと電極及び溶接部との界面が抉れることにより耐剥離性が低下する。さらに、電極及び溶接部が消耗することにより、実質的に溶接面積Sが小さくなることによって耐消耗性にも悪影響を及ぼす。したがって、チップ/溶接部間距離hは0.1以上、又はかぶり寸法Lは0.03以上であるのが好ましい。
前記貴金属チップにおけるチップ断面積Aは、(d)0.2≦A≦1.8であるのが好ましく、チップ断面積Aが前記範囲内にあると耐消耗性により一層優れる。
図4(a)はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図4(b)は、図4(a)の観察方向Xから接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。
この実施形態のスパークプラグ1の接地電極チップ8における溶接面積をSg1とすると、溶接面積Sg1は、この接地電極チップ8がこの接地電極チップ8と接地電極7(設置金属体と称することもある。)との溶融により形成されてなる溶接部15を介して接合されている接地電極の接合面16に対して垂直な方向であるX方向から観察した場合に、図4(b)に示されるように、接地電極7をX方向に直交する面へ投影した場合における投影領域Pg1と接地電極チップ8をX方向に直交する面へ投影した場合における投影領域Pt1とが重なる領域の面積である。中心電極チップ9における溶接面積Sc1もまた、接地電極チップ8の溶接面積Sg1と同様に規定される。
溶接面積Sg1は、接地電極7の上部X方向から写真を撮り、接地電極チップ8と溶接部15との境界線17で囲まれた部分の面積を画像解析ソフト(例えば、Photoshop)を使用して算出する。溶接面積Sc1もまた、同様にして求めることができる。
この実施形態のスパークプラグ1の接地電極チップ8におけるチップ出寸法をチップ出寸法Hg1とすると、チップ出寸法Hg1は、この接地電極チップ8と中心電極チップ9(対向金属凸体と称することもある。)とが対向する方向において、前記接地電極7の前記接合面16から最も離れた前記接地電極チップ8の先端面との間の距離である。中心電極チップ9におけるチップ出寸法Hc1もまた、接地電極チップ8のチップ出寸法Hg1と同様に規定される。
この実施形態のスパークプラグ1のかぶり寸法をかぶり寸法Lとし、絶縁体3の軸孔20が延伸する方向を中心電極4の軸線AX方向としたとき、この実施形態のスパークプラグ1は、接地電極チップ8と中心電極チップ9とが前記軸線AX方向に対向するように配置され、前記接地電極チップ8が前記接地電極7から前記軸線AXに直交する方向へ突出していない場合であるので、次のように規定される。すなわち、かぶり寸法Lは、前記軸線AX方向から観察して、前記接地電極チップ8の最大径となる周側面上の点k1を含む前記軸線AXに平行な直線群lg1と中心電極チップ9の最大径となる周側面上の点k2を含む前記軸線AXに平行な直線群lc1との間の最短距離である。
この実施形態のスパークプラグ1の接地電極チップ8におけるチップ/溶接部間距離をチップ/溶接部間距離hg1とすると、チップ/溶接部間距離hg1は、前記接地電極チップ8において、前記点k1を含み前記軸線AXに平行な面における前記接地電極チップ8の先端から前記溶接部15との境界までの前記軸線AX方向距離である。中心電極チップ9におけるチップ/溶接部間距離hc1もまた、接地電極チップ8のチップ/溶接部間距離hg1と同様に規定される。
この実施形態のスパークプラグ1の接地電極チップ8におけるチップ断面積をチップ断面積Ag1、中心電極チップ9におけるチップ断面積をチップ断面積Ac1とすると、図4に示すように、接地電極チップ8及び中心電極チップ9はいずれも円柱体であり、接地電極チップ8及び中心電極チップ9の先端面は平面であり、これらの先端面は互いに平行であるので、チップ断面積Ag1及びチップ断面積Ac1は接地電極チップ8及び中心電極チップ9それぞれの先端面の面積である。なお、製造上の誤差によりこれらの先端面が厳密には互いに平行でない場合であってもチップ断面積はそれぞれの貴金属チップの先端面の面積としてよい。
上述した貴金属チップがスパークプラグにおける中心電極及び接地電極のいずれか少なくとも一方、特に接地電極に設けられると、過給機付内燃機関や高エネルギーコイルを用いた内燃機関など過酷な環境下でこの発明のスパークプラグが使用されても、耐消耗性、耐チップ割れ性及び耐剥離性に優れた貴金属チップを備えているので、所望の性能を維持することができる。
前記スパークプラグ1は、例えば次のようにして製造される。まず、貴金属チップ8,9は、各成分の含有率が前述した範囲となるチップ材料を配合及び溶解して得られる溶解材を、例えば熱間圧延により板材に加工し、その板材を熱間打ち抜き加工により所定のチップ形状に打ち抜いて形成する方法、合金を熱間圧延、熱間鋳造又は熱間伸線により線状又はロッド状の素材に加工した後に、これを長さ方向に所定長に切断して形成する方法等を採用することができる。
中心電極4及び/又は接地電極7は、例えば、真空溶解炉を用いて、所望の組成を有する合金の溶湯を調製し、真空鋳造にて各溶湯から鋳塊を調製した後、この鋳塊を、熱間加工、線引き加工等して、所定の形状及び所定の寸法に適宜調整して、中心電極4及び/又は接地電極7を作製することができる。なお、カップ状に形成した外材13に内材14を挿入し、押し出し加工等の塑性加工にて中心電極4を形成することもできる。また、接地電極7が外部層とこの外部層の軸心部に埋め込まれるように設けられた軸部とにより形成されてなる場合には(図示せず。)、カップ状に形成した外部層に軸部を挿入し、押し出し加工等の塑性加工した後、略角柱状に塑性加工したものを、接地電極7にすることができる。
次いで、所定の形状に塑性加工等によって形成した主体金具2の端面に、接地電極7の一端部を電気抵抗溶接又はレーザ溶接等によって接合する。接地電極が接合された主体金具にZnめっき又はNiめっきを施す。Znめっき又はNiめっきの後に3価クロメート処理を行っても良い。
次いで、上述のように作製した貴金属チップ8,9を接地電極7及び中心電極4に抵抗溶接及び/又はレーザ溶接等により溶融固着する。抵抗溶接で貴金属チップ8,9を接地電極7及び/又は中心電極4に接合する場合には、例えば、貴金属チップ8,9を接地電極7及び/又は中心電極4の所定位置に設置して押し当てながら抵抗溶接を施す。レーザ溶接で貴金属チップ8,9を接地電極7及び/又は中心電極4に接合する場合には、例えば、貴金属チップ8,9を接地電極7及び/又は中心電極4の所定位置に設置し、貴金属チップ8の斜め上方から貴金属チップ8,9と接地電極7及び/又は中心電極4との接触部分を部分的に又は全周に渡ってレーザビームを照射する。なお、抵抗溶接をした後にレーザ溶接を施してもよい。
一方、セラミック等を所定の形状に焼成することによって絶縁体3を作製し、この絶縁体3の軸孔20内に貴金属チップ9が接合された中心電極4を挿設し、ガラスシールを形成するガラス粉末、抵抗体5を形成する抵抗体組成物、前記ガラス粉末をこの順に前記軸孔20内に予備圧縮しつつ充填する。次いで前記軸孔20内の端部から金属端子6を圧入しつつ抵抗体組成物及びガラス粉末を圧縮加熱する。こうして抵抗体組成物及びガラス粉末が焼結して抵抗体5及びガラスシール層が形成される。次いで接地電極7が接合された主体金具2にこの中心電極4等が固定された絶縁体3を組み付ける。最後に接地電極7の先端部を中心電極4側に折り曲げて、接地電極7の一端が中心電極4の先端部と対向するようにして、スパークプラグ1が製造される。
この発明に係るスパークプラグの他の実施例であるスパークプラグを図5に示す。図5(a)はこの発明に係るスパークプラグの他の実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図5(b)は、図5(a)の観察方向X2から接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。
この実施形態のスパークプラグ201は、接地電極208の接合面216に、接地電極チップ208が抵抗溶接で接合されている結果、接地電極チップ208の外周部に極めて小さな体積の溶接部215(溶接ダレと称されることもある。)が形成されてなること、また、中心電極204の先端面に中心電極チップが設けられずに、中心電極204の先端部が凸状に突出して形成されて成る中心電極凸部222(対向金属凸体と称することもある。)を有していること以外は、図4に示したスパークプラグ1と同様の構成を有している。
したがって、この実施形態のスパークプラグ201の接地電極チップ208における溶接面積Sg2、チップ出寸法Hg2、かぶり寸法L、チップ/溶接部間距離hg2、チップ断面積Ag2は、スパークプラグ1と同様に規定される。中心電極204には貴金属チップ209が設けられていないので、中心電極204における溶接面積チップ出寸法、チップ/溶接部間距離、チップ断面積については規定されない。
この発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグを図6に示す。図6(a)はこの発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図6(b)は、図6(a)の観察方向X3から接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。
この実施形態のスパークプラグ301は、中心電極304に対向する側の接地電極307の表面に土台318が設けられ、この土台318の接地電極307と接合している面とは反対側の面に溶接部315を介して接地電極チップ308が設けられ、接地電極チップ308と土台318とが接触することなく、接地電極チップ308と土台318との間の全面に溶接部315が設けられていること以外は、図4に示したスパークプラグ1と同様の構成を有している。
したがって、この実施形態のスパークプラグ301の接地電極チップ308における溶接面積Sg3、かぶり寸法L、チップ/溶接部間距離hg3、チップ断面積Ag3、及び中心電極チップ309における溶接面積Sc3、チップ出寸法Hc3、チップ/溶接部間距離hc3、チップ断面積Ac3は、スパークプラグ1と同様に規定される。
この実施形態のスパークプラグ301の接地電極チップ308におけるチップ出寸法Hg3に関しては、接地電極チップ308と土台318との間の全面に溶接部315が設けられているので、接地電極チップ308と土台318とが直接に接触して接合している面がない。したがって、チップ出寸法Hg3は、接地電極チップ308の軸線PX3方向における溶接部315の厚みが最も薄い部位における厚みの1/2となる点から前記軸線PX方向に最も離れた接地電極チップ308の先端面までの距離とする。
この発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグを図7に示す。図7(a)はこの発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図7(b)は、図7(a)の観察方向X4から接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。
この実施形態のスパークプラグ401は、中心電極404に対向する側の接地電極407の表面に土台418が設けられ、この土台418の接地電極407と接合している面とは反対側の面に溶接部415を介して接地電極チップ408が設けられ、接地電極チップ408と土台418とが溶接部415を介さずに一部接触していること以外は、図6に示したスパークプラグ301と同様の構成を有している。
したがって、この実施形態のスパークプラグ401の接地電極チップ408における溶接面積Sg4、かぶり寸法L、チップ/溶接部間距離hg4、チップ断面積Ag4、及び中心電極チップ409における溶接面積Sc4、チップ出寸法Hc4、チップ/溶接部間距離hc4、チップ断面積Ac4は、スパークプラグ1と同様に規定される。
この実施形態のスパークプラグ401の接地電極チップ408におけるチップ出寸法Hg4に関しては、接地電極チップ408と土台418との間の全面に溶接部315が設けられていない場合であり、チップ出寸法Hg4は接地電極チップ408と中心電極チップ404とが対向する方向において、土台418における接地電極チップ408と接触している接合面416から最も離れた接地電極チップ408の表面との間の距離である。
この発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグを図8に示す。図8(a)はこの発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図8(b1)〜(b3)は、図8(a)の観察方向Y〜Yそれぞれに直交する面へ中心電極チップ、接地電極チップ及び/又は接地電極を投影した場合における投影領域を示す投影領域説明図である。
この実施形態のスパークプラグ501は、接地電極チップ508が角柱体であり、この角柱体の一部が接地電極507の先端面及び周側面に開口するように設けられた切欠き519に嵌め込まれて、角柱体が有する6つの面のうちの4つの面とこの切欠き519が有する4つの面とが接合され、接地電極チップ508が接地電極507から中心電極504の軸線AX5に直交する方向へ突出するように設けられていること以外は、図4に示したスパークプラグ1と同様の構成を有している。
なお、この実施形態のスパークプラグ501は、前記接地電極507における平坦面に接地電極チップ508を溶融接合する際に、接地電極チップ508を接地電極507に押圧することにより接地電極507に形成された凹部に接地電極チップ508が嵌め込まれるように形成される態様も含む。したがって、前記切欠き519は、接地電極チップ508を嵌め込む前に予め接地電極507に形成する場合と溶融接合する際に形成される場合とを含む。
したがって、この実施形態のスパークプラグ501の中心電極チップ509における溶接面積Sc5、チップ出寸法Hc5、チップ/溶接部間距離hc5、チップ断面積Ac5は、スパークプラグ1と同様に規定される。
この実施形態のスパークプラグ501の接地電極チップ508における溶接面積Sg5は、角柱体の接地電極チップ508が有する6つの面のうちの4つの面が接地電極507における切欠き519が有する4つの面で接合されているので、4つの面それぞれの面に対して垂直な方向をY、Y、Y、Y方向とし、Y、Y、Y、Y方向それぞれから観察して、接地電極507と接地電極チップ508とをY、Y、Y、Y方向に直交する面へ投影した場合における、接地電極507の投影領域Pg51、Pg52、Pg53、Pg54と接地電極チップ508の投影領域Pt51、Pt52、Pt53、Pt54とが重なる領域の面積Sg51、Sg52、Sg53、Sg54の合計面積Sg51+Sg52+Sg53+Sg54である(図8(b1)〜(b3)参照。)。
チップ出寸法Hg5は、接地電極チップ508と中心電極チップ509とが対向する方向において、接地電極507の接合面516から最も離れた接地電極チップ508の先端面との間の距離である。なお、前記接合面516は、接地電極チップ508と中心電極チップ509とが対向する方向における接地電極507の表面であって、切欠き519が設けられている部位以外の面である。
かぶり寸法Lに関しては、図4に示されるスパークプラグ1とは異なり、接地電極チップ508が接地電極507から軸線AX5に直交する方向へ突出するように接地電極507に設けられ、中心電極チップ509の先端面と接地電極チップ508とが軸線AX5方向において対向するように配置されているので、次のように規定される。すなわち、かぶり寸法Lは、図8(b1)に示されるように、軸線AX5方向から観察して、中心電極チップ509の先端面を軸線AX5方向に垂直な仮想面へ投影した場合における投影面Pct5上の点k3と、接地電極507を該仮想面へ投影した場合における投影面Pg51の輪郭線及び接地電極チップ508を該仮想面へ投影した場合における投影面Pt5の輪郭線が交差することにより生じる2つの交点k41、k42との距離のうち最短距離を形成する交点k41との距離である。
接地電極チップ508におけるチップ/溶接部間距離hg5は、接地電極チップ508において、前記点k41を含み軸線AX5に平行な面における接地電極チップ508の先端から前記溶接部との境界までの距離である。
中心電極チップ509におけるチップ/溶接部間距離hc5は、前記点k3を含み軸線AX5に平行な面における中心電極チップ509の先端から中心電極504における溶接部521との境界までの前記軸線AX5方向の距離である。
接地電極チップ508におけるチップ断面積Ag5に関しては、接地電極チップ508は角柱体であり、6つの面はいずれも平面であるので、チップ断面積Ag5は、接地電極チップ508における中心電極チップ509に対向する側の面の面積である。
この発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグを図9に示す。図9(a)はこの発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグの発火部分を示す断面説明図である。図9(b)は、図9(a)の観察方向X6から接地電極を観察した場合の接地電極要部説明図である。図9(c)は、接地電極チップのチップ断面積Ag6を説明するための説明図である。
この実施形態のスパークプラグ601は、接地電極チップ608が半球形状であること以外は、図4に示したスパークプラグ1と同様である。
したがって、この実施形態のスパークプラグ601の接地電極チップ608における溶接面積Sg6、チップ出寸法Hg6、かぶり寸法L、チップ/溶接部間距離hg6、及び中心電極チップ609における溶接面積Sc6、チップ出寸法Hc6、チップ/溶接部間距離hc6、チップ断面積Ac6は、スパークプラグ1と同様に規定される。
この実施形態のスパークプラグ601の接地電極チップ608におけるチップ断面積Ag6は、接地電極チップ608の先端面が平面でないので、次のように規定する。すなわち、チップ断面積Ag6は、接地電極チップ608とこの接地電極チップ608に対向する中心電極チップ609との最短距離を結ぶ直線KXと前記接地電極チップ608との表面との交点を点fとし、前記直線KXと前記中心電極チップ609の表面との交点をgとし、接地電極チップ608において、点fから点gとは反対側方向に点fから0.2mmの距離にあって、中心電極チップ609の先端面に対して平行となる平面Mg6と、前記接地電極チップ608の表面とで囲まれる部分の体積Vと等しい体積Vの高さ0.2mmの円柱体を想定した場合における該円柱体の底面積である(図9(c)参照。)。
なお、例えば前記接地電極チップ608が、その先端面は平面であるが接地電極チップ608の軸線に直交する方向における断面積が前記軸線に沿って変化する場合、例えば接地電極607に向かって拡径されるテーパ形状を有している場合にも、チップ断面積Ag6は接地電極チップ608の先端面の面積でなく、前述したチップ断面積Ag6と同様にしてチップ断面積が規定される。
(第2の発明)
この発明に係るスパークプラグは、中心電極と接地電極とを有し、この中心電極の一端と接地電極の一端とが間隙を介して対向するように配置され、この中心電極と接地電極との少なくとも一方に貴金属チップが設けられている。この発明に係るスパークプラグは、このような構成を有するスパークプラグであれば、その他の構成は特に限定されず、公知の種々の構成を採ることができる。この発明に係るスパークプラグは、図1に示されるスパークプラグ1における中心電極チップ9及び接地電極チップ8の組成に関する説明以外は、図1に示されるスパークプラグ1に関して説明した構成と同様の構成を有している。
この発明に係るスパークプラグにおいては、接地電極チップ及び中心電極チップの少なくとも一方が下記のチップ材料で形成され、好ましくは、より高温に達する接地電極チップが下記のチップ材料で形成される。
これらの貴金属チップを形成するチップ材料は、Mp(Mpは、Pt、又はPtとPdとからなる元素群であり、Pdは貴金属チップの質量に対して20質量%以下である。)、Cu、及びM(Mは、Rh、Ir、Ru、Re、及びWからなる元素群から選ばれる少なくとも1種である。)を合計で95質量%以上含有し、かつ、
前記Mp、Cu、Mの質量比(Mp,Cu,M)が各点A(97,3,0)、B(80,3,17)、C(75,25,0)、A(97,3,0)をこの順に結ぶ線分で囲まれた領域内(線上を含む。)にある。
前記チップ材料におけるMp、Cu、及びMの含有率が95質量%以上であり、図10に示される、Mp、Cu、Mの三成分系組成図における三成分の質量比(Mp,Cu,M)が各点A、B、C、Aをこの順に結ぶ線分で囲まれた領域内(線上を含む。)にあり、さらに貴金属チップが下記に示す構造を有すると、耐消耗性、耐剥離性、及び耐チップ割れ性に優れた貴金属チップを備えたスパークプラグを提供することができる。すなわち、上述した第1の発明における貴金属チップの組成の範囲外であっても、特定の組成範囲にあり、かつ特定の構造を有する貴金属チップであれば、耐消耗性、耐剥離性、及び耐チップ割れ性に優れた貴金属チップを備えたスパークプラグを提供することができる。
以下においては、貴金属チップが後述する特定の構造を有することを前提として、貴金属チップの組成による作用について説明する。
前記チップ材料は、図10に示す三成分系組成図において、Cuが3質量%以上であることにより、特に5質量%以上であることにより、中心電極及び接地電極を形成する電極材料に用いられるNi基合金とチップ材料との熱膨張係数の差が小さくなるので、耐剥離性に優れる。また、耐剥離性の向上に効果的である材料として知られているPt−Ni合金よりも融点の低下を抑えることができ、耐剥離性だけでなく耐火花消耗性にも優れる。さらに、結晶粒度が大きくなる傾向にあるPt−Rh合金に比べて、このチップ材料は結晶粒度が大きくならず、またPt−Ir合金に比べて内部酸化を抑えられるので、耐チップ割れ性にも優れる。
三成分系組成図においてCuが3質量%未満であると、前記効果が得られない。三成分系組成図においてCuが25質量%を超えると、酸化しやすいCuが増えるため、耐酸化性が低下する他、結晶粒界で内部酸化を引き起こし、チップ割れやチップ剥離が生じることがある。さらには、これらが原因で、熱伝導性が低下して耐消耗性に悪影響を及ぼすおそれがある。
前記チップ材料がMを含有すると、特に三成分系組成図においてMが0.5質量%以上であると、Mは融点が高いので耐火花消耗性に優れるチップ材料となる。また、結晶粒度が細かくなるので、チップ内での割れに起因する結晶粒の脱落を抑制することができる。さらに、高強度となるので、製造工程中に治具と接触して衝撃を受けても貴金属チップの変形を抑制することができるので、耐衝撃性にも優れる。
ただし、三成分系組成図においてMが17質量%を超えると、脆化を引き起こすので、加工性の低下及び熱応力や内部腐食によるチップ割れを生じ易くなる。また、Mは熱膨張係数が小さいので、Mを多量に含有すると電極材料に用いられるNi基合金とチップ材料との熱膨張係数の差が大きくなるので、耐剥離性に悪影響を及ぼす。したがって、三成分系組成図においてMは17質量%以下であり、8質量%以下であるのが好ましい。
以上においてチップ材料におけるCu及びMの作用について述べたが、勿論チップ材料における単独成分の質量割合の影響だけでなく、三成分(Mp、Cu、M)の質量比による影響が大きい。チップ材料がCuとMとを合わせて所定割合以上含有している場合、すなわち三成分系組成図においてCuとMとの質量割合が直線BCを超えている場合には、耐剥離性、耐消耗性、耐チップ割れ性の少なくとも1つが劣ってしまう。したがって、三成分系組成図においてCuとMとの質量割合は直線BC以下であり、直線GH以下であるのが好ましい。
なお、MはRh、Ir、Ru、Re、及びWからなる元素群から選ばれる少なくとも1種である。Rh、Ir、Ru、Re、及びWはいずれも融点が高く、スパッタリングしにくい。さらに、固溶強化によって強度が向上し、結晶粒を細かくできるので、これらの元素群から選ばれる少なくとも1種が三成分系組成図に示される範囲にあると、耐剥離性、耐消耗性、及び耐チップ割れ性に優れた貴金属チップを備えたスパークプラグを提供することができる。これらの元素群の中でもRhはこれらの元素群の中でもRhは自らが酸化して緻密な酸化皮膜を形成し、これがCu等の酸化を抑制できるので、特に好ましい。
Mpは、Pt、又はPtとPdとからなる元素群であり、Pdは貴金属チップの質量に対して20質量%以下である。Ptは、耐酸化性、耐火花消耗性及び加工性に優れるので、チップ材料の主成分として優れている。また、PdはPtと同様に耐酸化性に優れるだけでなく、熱膨張係数がPtよりも大きいので、特定量のPdを含有した方が耐剥離性において有利である。したがって、チップ材料からなる貴金属チップの全質量に対してPdが20質量%以下である場合には、耐剥離性、耐消耗性、及び耐チップ割れ性に優れた貴金属チップを備えたスパークプラグを提供することができる。価格としてもPtより安価である。ただし、Pdが20質量%を超えると、チップ材料の融点が低下することにより耐消耗性が低下する。
チップ材料は、Ni、Co、Fe、及びMnからなる元素群A、及び/又は、Ti、Hf、Y、及び希土類元素からなる元素群Bから選ばれる少なくとも1種を含み、前記元素群Aの合計質量がチップ材料からなる貴金属チップの全質量に対して5質量%以下であり、前記元素群Bの合計質量がチップ材料からなる貴金属チップの全質量に対して1.5質量%以下であり、かつ、前記元素群A及び前記元素群Bの合計質量がチップ材料からなる貴金属チップの全質量に対して5質量%未満であるのが好ましい。
チップ材料における元素群Aの合計質量が、0質量%を超え5質量%以下であると、耐剥離性及び耐チップ割れ性により一層優れる。元素群Aは熱膨張係数が大きいので、電極材料の熱膨張係数との差が小さくなり、熱応力の発生を抑えることができること、及び結晶粒が細かくなるので耐チップ割れ性に有効である。
チップ材料における元素群Bの合計質量が、0質量%を超え1.5質量%以下、特に0.01質量%以上1質量%以下であると、結晶粒が細かくなるので耐チップ割れ性に優れる。
チップ材料における元素群A及び元素群Bの含有率が大きすぎると、融点が低下して耐消耗性が劣るおそれがある。したがって、元素群A及び元素群Bの合計質量は貴金属チップに対して5質量%未満であるのが好ましい。
このチップ材料は、Mp、Cu、及びMを合計で95質量%以上と、所望によりNi、Co、Fe、及びMnからなる元素群Aと、Ti、Hf、Y、及び希土類元素からなる元素群Bとを実質的に含有する。これらの各成分は、前述した各成分の含有率の範囲内で、これら各成分と不可避不純物との合計が100質量%になるように含有される。前記成分以外の成分、例えば、Ag、B、Ca、Al、Si、Mgが微量の不可避不純物として含有されることがある。これらの不可避不純物の含有量は少ない方が好ましいが、本願発明の目的を達成することができる範囲内で含有していてもよく、前述した成分の合計質量を100質量部としたときに、前述した1種類の不可避不純物の割合は0.1質量部以下、含有される全種類の不可避不純物の合計割合は0.2質量部以下であるのがよい。
このチップ材料で形成されてなる貴金属チップに含まれる各成分の含有率は、第1の発明で説明したのと同様にして測定することができる。
前記チップ材料で形成される貴金属チップの硬度は、140Hv以上であるのが好ましく、200Hv以上であるのが特に好ましい。
貴金属チップの硬度が前記範囲内であると、製造工程中にチップが治具に接触しても、貴金属チップの変形を防止することができる。
貴金属チップの硬度は第1の発明で説明したのと同様にして測定することができる。貴金属チップの硬度の調整もまた第1の発明で説明したのと同様にして行うことができる。
この発明に係るスパークプラグに設けられる貴金属チップは、以下に記載された、溶接面積S(mm)、チップ出寸法H(mm)、かぶり寸法L(mm)、及びチップ/溶接部間距離h(mm)が、次の条件を満たす。
(a)H≦0.13S+1.18
(b)S≦5
(c)0.1≦h、又は0.03≦L
さらに、貴金属チップは、以下に規定するチップ断面積A(mm)が、
(d)0.2≦A≦1.8
を満たすのが好ましい。
前記貴金属チップにおける溶接面積Sとチップ出寸法Hとが(a)H≦0.13S+1.18という関係を満たすと、耐消耗性に優れた貴金属チップを有するスパークプラグを提供することができる。貴金属チップの耐消耗性を向上させるためには、貴金属チップの熱引きを良好にするのが良い。溶接面積Sが小さいと貴金属チップと電極との接触面積が小さくなる結果、貴金属チップが受熱した熱を電極へ伝導させ難くなり、熱引きが悪くなるとこれまで考えられてきた。しかし、溶接面積Sだけでなくチップ出寸法Hも熱引きに影響を与えることを発明者らは見出した。すなわち、溶接面積Sが小さくてもチップ出寸法Hが所定値より小さければ、貴金属チップの過熱を抑えることができ、耐消耗性が良好になる。逆にチップ出寸法Hが大きくても溶接面積Sが大きければ熱引きが良好となるので過熱を抑えることができる。
前記貴金属チップにおける溶接面積Sとかぶり寸法Lとチップ/溶接部間距離hとが(b)S≦5、かつ(c)0.1≦h、又は0.03≦Lという関係を満たすと、耐剥離性に優れた貴金属チップを有するスパークプラグを提供することができる。溶接面積Sが大きいと、貴金属チップを形成するチップ材料と電極を形成する電極材料との間の熱膨張係数の差により、特に貴金属チップの外周部に高い熱応力が発生することにより、貴金属チップが電極から剥離し易くなる。したがって、溶接面積Sは5以下である。また、燃焼室内は気流の乱れが激しいので、かぶり寸法Lとチップ/溶接部間距離hとが前記範囲外であると、電極における貴金属チップの外周に近接する部分及び/又は溶接部に放電し易くなる。電極及び溶接部は貴金属チップよりも融点が低いので電極及び溶接部が消耗し易くなり、貴金属チップと電極及び溶接部との界面が抉れることにより耐剥離性が低下する。さらに、電極及び溶接部が消耗することにより、実質的に溶接面積Sが小さくなることによって耐消耗性にも悪影響を及ぼす。したがって、チップ/溶接部間距離hが0.1以上、又はかぶり寸法Lが0.03以上である。
前記貴金属チップにおけるチップ断面積Aは、(d)0.2≦A≦1.8であるのが好ましく、チップ断面積Aが前記範囲内にあると耐消耗性により一層優れる。
第2の発明において規定される、前記溶接面積S、前記チップ出寸法H、前記かぶり寸法L、前記チップ/溶接部間距離h、及び前記チップ断面積Aは、第1の発明において図4〜図9を参照しつつ説明したのと同様にして規定される。
第2の発明に係るスパークプラグは、前記第1の発明に係るスパークプラグと同様にして製造することができる。
第1及び第2の発明に係るスパークプラグは、自動車用の内燃機関例えばガソリンエンジン等の点火栓として使用され、内燃機関の燃焼室を区画形成するヘッド(図示せず)に設けられたネジ穴に前記ネジ部10が螺合されて、所定の位置に固定される。この発明に係るスパークプラグは、如何なる内燃機関にも使用することができるが、耐剥離性、耐消耗性、及び耐チップ割れ性に優れた貴金属チップを備えているから、特に、過給機付内燃機関や高エネルギーコイルを用いた内燃機関に好適に使用されることができる。
第1及び第2の発明に係るスパークプラグは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記スパークプラグ1は、中心電極チップ9及び接地電極チップ8が共に前記チップ材料で形成されているが、この発明において、中心電極チップ9のみが前記チップ材料で形成されていてもよく、接地電極チップ8のみが前記チップ材料で形成されていてもよい。この発明に係るスパークプラグは、通常、中心電極よりも接地電極の方がより高温に曝されるため、少なくとも接地電極チップを前記チップ材料で形成するのが好ましい。
(第1の発明)
<耐消耗性及び耐チップ割れ性を評価するためのスパークプラグ試験体Aの作製>
表1〜5に示す組成を有する合金を溶解して溶解材を調整し、この溶解材を熱間もしくは冷間で、圧延、鍛造、伸線、スエージングのいずれか一つ以上の工程を用いて線状の素材に加工した後に、これを長さ方向に切断して、円柱体の貴金属チップを製造した。
INC601を鋳造加工して中心電極と接地電極を製造した。棒状に形成された中心電極の先端面に、製造した中心電極用の貴金属チップを抵抗溶接後、さらにレーザ溶接して接合した(以下において、中心電極に接合された貴金属チップを中心電極チップと称する。)。また、略角柱状に形成した接地電極の先端部の周側面に、製造した接地電極用の貴金属チップを抵抗溶接後、さらにレーザ溶接をして接合した(以下において接地電極に接合された貴金属チップを接地電極チップと称する。)。なお、接地電極は1.6×3.0mmの略角柱体であり、幅が3.0mmである面に貴金属チップを接合した。
そして、公知の手法により、主体金具の一端面に貴金属チップが接合されていない接地電極の一端部を接合し、次いで、セラミックで形成された絶縁体に前記中心電極を組み付け、接地電極が接合された主体金具にこの絶縁体を組み付けた。そして、接地電極の先端部を中心電極側に折り曲げて、接地電極の一端が中心電極の先端部と対向するようにして、スパークプラグ試験体Aを製造した。
なお、製造されたスパークプラグ試験体Aのねじ径はM14であり、中心電極チップの先端面とこの中心電極チップに対向する接地電極チップの先端面との間の火花放電間隙は1.1mmであった。また、中心電極チップ及び接地電極チップは共に、溶接面積Sが0.2mm、チップ出寸法Hが1.4mm、かぶり寸法Lが0mm、チップ/溶接部間距離hが1.0mm、チップ断面積Aが0.2mmの円柱体であった。これらのスパークプラグ試験体は図4に示すスパークプラグ試験体と同様に、貴金属チップが円柱体であり、抵抗溶接及びレーザ溶接により電極に接合されている。このような貴金属チップの形状を、以下において円柱形状Iと称する。
中心電極に接合された貴金属チップと接地電極に接合された貴金属チップの硬度を前述した方法で測定したところ、いずれも140Hv以上であった。中心電極と端子金具との間に設けられている抵抗体の抵抗値は、5kΩであった。
<耐剥離性を評価するためのスパークプラグ試験体Bの作製>
接地電極チップがレーザー溶接を行わずに抵抗溶接のみにより電極に接合され、接地電極チップの溶接面積Sが5.3mm、チップ出寸法Hが0.2mm、かぶり寸法Lが0.02mm、チップ/溶接部間距離hが0mm、チップ断面積が5.3mmの円柱体であったこと以外は、前記スパークプラグの試験体Aと同様にして、スパークプラグ試験体Bを製造した。これらのスパークプラグ試験体は図5に示すスパークプラグ試験体と同様に、貴金属チップが円柱体であり、抵抗溶接のみにより電極に接合されている。このような貴金属チップの形状を、以下において円柱形状IIと称する。
また、中心電極に接合された貴金属チップと接地電極に接合された貴金属チップの硬度を前述した方法で測定したところ、いずれも140Hv以上であった。中心電極と端子金具との間に設けられている抵抗体の抵抗値は、5kΩであった。
<耐変形性を評価するためのスパークプラグ試験体Cの作製>
表6に示す組成を有する接地電極チップを成形する際の加工率及び加工温度などの加工条件、及び貴金属チップを接地電極に溶接する際の溶接条件を変えて、硬度の異なる接地電極チップを形成し、その接地電極チップの溶接面積Sが0.4mm、チップ出寸法Hが1mm、チップ/溶接部間距離hが0.6mm、チップ断面積Aが0.4mmの円柱体であったたこと以外はスパークプラグ試験体Aと同様にして、接地電極チップの硬度の異なるスパークプラグ試験体Cを製造した。このスパークプラグ試験体Cの接地電極チップの形状は円柱形状Iである。
<抵抗体の抵抗値による影響を評価するためのスパークプラグ試験体Dの作製>
スパークプラグ試験体Aのうち3つについて、抵抗体の原料の混合割合等を変化させて、抵抗体の抵抗値が10kΩ又は15kΩであるスパークプラグ試験体Dを製造した。
<評価方法>
(耐久性試験の方法)
前述のように製造したスパークプラグ試験体A、B、Dを過給機付の2000cc、4気筒のエンジンに取り付け、スロットル全開状態でエンジン回転数6000rpmの状態を3分間維持し、その後アイドリングをエンジン回転数900rpmで行うというサイクルを300時間繰り返した時点で、以下に記載する耐消耗性、耐チップ割れ性、及び耐剥離性の評価を行った。
[耐消耗性の評価]
前記耐久性試験を300時間継続前後のスパークプラグ試験体A、Dにおける中心電極チップの先端面と接地電極チップの先端面との間隙をピンゲージにより測定し、前記間隙の広がり量を算出して、この広がり量を以下の基準に基づいて評価した。結果を表1〜5、表7に示す。

×:0.2mm以上。
○:0.15mm以上0.2mm未満。
◎:0.12mm以上0.15mm未満。
☆:0.12mm未満。
[耐チップ割れ性の評価]
前記耐久性試験を300時間継続後のスパークプラグ試験体Aについて、貴金属チップが接合された接地電極を切り出し、火花放電間隙に沿う方向からと、これに垂直な方向で貴金属チップの全周に亘る方向からとよりSEMを用いて250倍で観察し、以下の基準に基づいて評価した。結果を表1〜5に示す。

×:貴金属チップの表面に割れが10箇所以上観察されるか、又は結晶粒の脱落が観察される。
○:貴金属チップの表面に割れが10箇所未満観察される。
◎:貴金属チップの表面に割れが観察されない。
[耐剥離性の評価]
前記耐久性試験を300時間継続後のスパークプラグ試験体Bについて、貴金属チップが接合された接地電極を切り出し、貴金属チップの中心を通り、接地電極の長手方向に平行な断面が得られるように切断して、この半断面を金属顕微鏡で観察して、酸化スケールの有無を調べた。
なお、酸化スケールは、金属顕微鏡で観察した場合に黒色に見える部分であり、貴金属チップと溶接部又は接地電極との界面が酸化又は剥離している部分である。図11に示すように、前述した溶接面積における接地電極の長手方向距離(a)と、この判断面における接地電極の接合面16、216、516、616に平行な方向の各酸化スケールの長さ(b、c、d)を測定し、a値に対する各酸化スケールの合計長さ(b+c+d)の割合を算出し、以下の基準に基づいて評価した。結果を表1〜5に示す。

×:酸化スケールの割合が60%以上。
○:酸化スケールの割合が30%以上60%未満。
◎:酸化スケールの割合が30%未満。
(耐変形性試験の方法)
前述のように製造したスパークプラグ試験体Cについて、貴金属チップ8が接合された接地電極7を切り出し、図12に示される装置に円柱形状の貴金属チップ8の先端面が上側になるように設置し、接地電極を設置する土台表面からの高さが50mmの位置から45gの落下治具を落下させて貴金属チップ8に衝突させ、貴金属チップ8と落下治具との衝突方向の変形量を測定した。なお、貴金属チップ8は、貴金属チップ8の周側面から中心方向に0.2mmまでの面が落下治具と衝突するように配置した。
[耐変形性の評価]
前述のように製造したスパークプラグ試験体Cを、前述した耐変形性試験に供して前記貴金属チップの変形量を測定し、この測定値を以下の基準に基づいて評価した。結果を表6に示す。

×:250μm以上。
○:210μm以上250μm未満。
◎:180μm以上210μm未満。
☆:180μm未満。
なお、スパークプラグ試験体の耐久性試験の結果を示す表1〜5における総合評価は、以下の基準に基づいて評価した。

×:耐消耗性、耐チップ割れ性、耐剥離性の評価結果のうち少なくとも1つが×である。
○:耐消耗性、耐チップ割れ性、耐剥離性の評価結果がいずれも○である。
◎:耐消耗性、耐チップ割れ性、耐剥離性の評価結果のうち◎以上が1つある。
☆:耐消耗性、耐チップ割れ性、耐剥離性の評価結果のうち◎以上が2つある。
☆☆:耐消耗性、耐チップ割れ性、耐剥離性の評価結果がいずれも◎以上である。
また、表1及び表2に示す組成を有する接地電極チップのPt、Cu、Rhの質量比を図2に示した。図2では、表1及び表2における総合評価が「×」のときの質量比を「▲」、「○」及び「◎」のときの質量比を「●」で示した。なお、図2におけるMpがPtに、MがRhに対応する。
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第1の発明の範囲に含まれる貴金属チップを備えたスパークプラグは、表2〜表7に示されるように、耐消耗性、耐剥離性、及び耐チップ割れ性に優れていた。
一方、第1の発明の範囲外にある貴金属チップを備えたスパークプラグは、表1及び表4〜7に示されるように、耐消耗性、耐剥離性、及び耐チップ割れ性の少なくとも1つの特性が劣っていた。
表3に示されるように、貴金属チップがRh、Ir、Ru、Re、及びWのうちのいずれの元素を含有していても、同様の性能を有する貴金属チップが得られた。表4に示されるように、PtとCuとを含有する貴金属チップを備えたスパークプラグ(No.38)に比べて、PtとCuとPdとを含有する貴金属チップを備えたスパークプラグ(No.70、71)は、耐剥離性に優れていた。表5に示されるように、Ni、Co、Mnの少なくとも1つを含有するスパークプラグ(No.73〜75、82)は、これらの元素を含有しないスパークプラグ(No.35、36)に比べて耐剥離性及び耐チップ割れ性により一層優れていた。また、Hf、Ti、Y、Laのいずれかを含有するスパークプラグ(No.77〜82)は、これらの元素を含有しないスパークプラグ(No.35、46、36)に比べて、耐チップ割れ性により一層優れていた。
表6に示されるように、この発明の範囲に含まれる貴金属チップを備えたスパークプラグは、貴金属チップの硬度が140Hv以上、特に200Hv以上であると耐変形性により一層優れていた。表7に示されるように、この発明の範囲に含まれる貴金属チップを備えてなるスパークプラグは、抵抗体の抵抗値が10kΩ以下であっても耐消耗性に優れていた。
(第2の発明)
<耐消耗性及び耐チップ割れ性を評価するためのスパークプラグ試験体Eの作製>
表8〜12に示す組成を有する貴金属チップにおいて、接地電極チップのチップ出寸法Hが1.2mm、チップ/溶接部間距離hが0.8mmであったこと以外は、前記スパークプラグ試験体Aと同様にしてスパークプラグ試験体Eを製造した。このスパークプラグ試験体Eの貴金属チップの形状は円柱形状Iである。
また、中心電極チップと接地電極チップの硬度を前述した方法で測定したところ、いずれも140Hv以上であった。中心電極と端子金具との間に設けられている抵抗体の抵抗値は、5kΩであった。
<耐剥離性を評価するためのスパークプラグ試験体Fの作製>
表8〜12に示す組成を有する貴金属チップにおいて、接地電極チップの溶接面積Sが5mm、かぶり寸法Lが0.03mm、チップ断面積Aが5mmであったこと以外は、前記スパークプラグ試験体Bと同様にしてスパークプラグ試験体Fを製造した。このスパークプラグ試験体Fの中心電極チップの形状は円柱形状I、接地電極チップの形状は円柱形状IIである。
<スパークプラグ試験体Gの作製>
表13に示す組成を有する貴金属チップにおいて、接地電極チップの径及び高さを変えることにより、溶接面積S及びチップ出寸法Hを変化させたこと以外は、スパークプラグ試験体Eと同様にしてスパークプラグ試験体Gを製造した。このスパークプラグ試験体Gの接地電極チップの形状は円柱形状Iである。
なお、表13においてPt−18Cu−5Rhで示される記号は、貴金属チップがPtを77質量%、Cuを18質量%、Rhを5質量%含有することを示す。以下において示される同様の記号も同様の意味である。
<スパークプラグ試験体Hの作製>
表14に示す組成を有する貴金属チップにおいて、接地電極チップの溶接面積S及びチップ出寸法Hを固定したまま、接地電極チップの形状を変化させたこと以外は、スパークプラグ試験体Eと同様にしてスパークプラグ試験体Hを製造した。
なお、表14に示される貴金属チップの形状について、突出形状は図6及び7に示される接地電極チップと同様の形状であり、角チップ形状は図8に示される接地電極チップと同様の形状であり、半球形状は図9に示される接地電極チップと同様の形状である。
<スパークプラグ試験体Iの作製>
表15に示す組成を有する接地電極チップにおいて、接地電極チップの径及び溶接条件を変えることにより、溶接面積Sを変化させたこと以外は、スパークプラグ試験体Fと同様にしてスパークプラグ試験体Iを製造した。なお、かぶり寸法Lは0mm、チップ/溶接部間距離hは0.1mmであった。
<スパークプラグ試験体Jの作製>
表16に示す組成を有する接地電極チップにおいて、接地電極チップの径及び溶接条件を変えることにより、かぶり寸法L、チップ/溶接部間距離hを変化させたこと以外は、スパークプラグ試験体Fと同様にしてスパークプラグ試験体Iを製造した。
<スパークプラグ試験体Kの作製>
表17に示す組成を有する接地電極チップにおいて、溶接面積S、かぶり寸法L及びチップ/溶接部間距離hを固定したまま、接地電極チップの形状を変化させたこと以外は、スパークプラグ試験体Fと同様にしてスパークプラグ試験体Hを製造した。
<耐変形性を評価するためのスパークプラグ試験体Lの作製>
表18に示す組成を有する接地電極チップを成形する際の加工率及び加工温度などの加工条件、及び貴金属チップを接地電極に溶接する際の溶接条件を変えて、硬度の異なる接地電極チップを形成し、その接地電極チップの溶接面積Sが0.4mm、チップ出寸法Hが1mm、チップ/溶接部間距離hが0.6mm、チップ断面積Aが0.4mmの円柱体であったたこと以外はスパークプラグ試験体Eと同様にして、接地電極チップの硬度の異なるスパークプラグ試験体Lを製造した。このスパークプラグ試験体Lの接地電極チップの形状は円柱形状Iである。
<抵抗体の抵抗値による影響を評価するためのスパークプラグ試験体Mの作製>
スパークプラグ試験体Eのうち2つについて、抵抗体の原料の混合割合等を変化させて、抵抗体の抵抗値を10kΩ又は15kΩにしたスパークプラグ試験体Mを製造した。
<評価方法>
前述のように製造したスパークプラグ試験体について、第1の発明における評価方法と同様にして試験を行い、評価した。また、スパークプラグ試験体の耐久性試験の結果を示す表8〜12における総合評価もまた、第1の発明において記載した基準にしたがって評価した。結果を表8〜19及び図13に示す。
また、表8及び表9に示す組成を有する接地電極チップのPt、Cu、Rhの質量比を図10に示した。図10では、表8及び表9における総合評価が「×」のときの質量比を「▲」、「◎」のときの質量比を「◆」、「☆」及び「☆☆」のときの質量比を「●」で示した。なお、図10におけるMpがPtに、MがRhに対応する。
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第2の発明の範囲に含まれる貴金属チップを備えたスパークプラグは、表9〜表19に示されるように、耐消耗性、耐剥離性、及び耐チップ割れ性に優れていた。
一方、本願発明の範囲外にある貴金属チップを備えたスパークプラグは、表8、12〜19に示されるように、耐消耗性、耐剥離性、及び耐チップ割れ性の少なくとも1つの特性が劣っていた。
表10に示されるように、貴金属チップがRh、Ir、及びRuのうちのいずれの元素を含有していても、同様の性能を有する貴金属チップが得られた。表11に示されるように、PtとCuとRhとを含有する貴金属チップを備えたスパークプラグ(No.121)と、PtとCuとRhとPdとを含有する貴金属チップを備えたスパークプラグ(No.164)とは、いずれも同様の性能を有する貴金属チップが得られた。表12に示されるように、Ni、Co、Ti、及びLaの少なくとも1つを合計で5質量%以下含有するスパークプラグは、これらの元素を含有しないスパークプラグ及びこれらの元素を合計で5質量%を超えて含有するスパークプラグに比べて耐消耗性、耐剥離性及び耐チップ割れ性により一層優れていた。
表13において元素組成が、Pt−18Cu−5Rhである貴金属チップを備えたスパークプラグの評価結果を、縦軸をチップ出寸法H(mm)、横軸を溶接面積S(mm)として図13に示した。図13に示されるように、点(0.2,1.2)と点(5,1.8)とを結ぶ直線H=0.13S+1.18よりもHが大きい接地電極チップを備えてなる第2の発明の範囲外にあるスパークプラグ(No.182、186、190、192)に比べて、第2の発明の範囲内にあるスパークプラグの耐消耗性及び耐チップ割れ性の評価結果が良好であった。表14に示されるように、前記直線よりもチップ出寸法Hが小さい接地電極チップを備えてなるスパークプラグは、接地電極チップの形状が異なっても総合評価が良好であった。
表15に示されるように、溶接面積Sが5.0以下である接地電極チップを備えて成るスパークプラグは、耐剥離性の評価が良好であった。表16に示されるように、hが0.1(mm)以上又はLが0.03(mm)以上である接地電極チップを備えてなるスパークプラグは、耐剥離性の評価が優れていた。表17に示されるように、溶接面積S(mm)が5.0以下かつhが0.1(mm)以上又はLが0.03(mm)以上である接地電極チップを備えてなるスパークプラグは、接地電極チップの形状が異なっていても耐剥離性の評価が良好であった。
表18に示されるように、この発明の範囲に含まれる貴金属チップを備えたスパークプラグは、貴金属チップの硬度が140Hv以上、特に200Hv以上であると耐変形性により一層優れていた。表19に示されるように、この発明の範囲に含まれる貴金属チップを備えてなるスパークプラグは、抵抗体の抵抗値が10kΩ以下であっても耐消耗性に優れていた。
1,101,102 スパークプラグ
2 主体金具
3 絶縁体
4 中心電極
5 抵抗体
6 端子金具
7 接地電極
8 接地電極チップ
9 中心電極チップ
10 ネジ部
11 タルク
12 パッキン
13 外材
14 内材
15 溶接部
16 接合面
17 境界線
18 土台
20 軸孔
21 中心電極チップにおける溶接部
G 火花放電間隙

Claims (9)

  1. 中心電極、及び前記中心電極との間に間隙を設けた接地電極を備え、前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方に貴金属チップが設けられたスパークプラグにおいて、
    前記貴金属チップは、Mp(Mpは、Pt、又はPtとPdとからなる元素群であり、Pdは貴金属チップの質量に対して20質量%以下である。)、Cu、及びM(Mは、Rh、Ir、Ru、Re、及びWからなる元素群から選ばれる少なくとも1種である。)を合計で95質量%以上含有し、かつ、
    前記Mp、Cu、Mの質量比(Mp,Cu,M)が各点D(95,5,0)、E(94.5,5,0.5)、F(87,5,8)、G(80,12,8)、H(79.5,20,0.5)、I(80,20,0)、D(95,5,0)をこの順に結ぶ線分で囲まれた領域内(線上を含む。)にある(ただし、「Cuを5質量%以上〜30質量%以下、Irを0.1質量%以上〜15質量%以下含み、残部Ptからなるプラグ電極用材料、及びCuを5質量%以上20質量%以下含み、残部Ptからなるプラグ電極用材料」を除く。)ことを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記貴金属チップは、質量比(Mp,Cu,M)が各点E(94.5,5,0.5)、F(87,5,8)、G(80,12,8)、H(79.5,20,0.5)、E(94.5,5,0.5)をこの順に結ぶ線分で囲まれた領域内(線上を含む。)にあることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
  3. 前記MpはPtとPdとからなる元素群であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記貴金属チップは、Ni、Co、Fe、及びMnからなる元素群A、及び/又は、Ti、Hf、Y、及び希土類元素からなる元素群Bから選ばれるいずれか少なくとも1種を含み、前記元素群Aの合計質量が5質量%以下であり、前記元素群Bの合計質量が1.5質量%以下であり、かつ、前記元素群A及び前記元素群Bの合計質量が5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
  5. 前記Mは、Rhであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
  6. 前記貴金属チップの硬度が、140Hv以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
  7. 前記貴金属チップの硬度が、200Hv以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
  8. 前記中心電極が絶縁体の軸方向に形成された軸孔内にその一端部から露出するように固定され、端子金具が前記軸孔内の他端部から露出するように固定され、前記軸孔内における前記中心電極と前記端子金具との間に抵抗体が設けられ、前記抵抗体の抵抗値が10kΩ以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
  9. 前記貴金属チップは、前記接地電極のみに設けられて成ることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
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