JP6061307B2 - スパークプラグ - Google Patents

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Description

この発明は、チップが抵抗溶接により接合された接地電極を備えたスパークプラグに関する。
スパークプラグは、自動車エンジン等の内燃機関の点火用に使用される。スパークプラグは、一般に、筒状の主体金具と、この主体金具の内孔に配置される筒状の絶縁体と、この絶縁体の先端側内孔に配置される中心電極と、一端部が主体金具の先端側に接合され他端部が中心電極の先端部との間に間隙を有する接地電極とを備える。そして、スパークプラグは、この間隙に火花放電され、内燃機関の燃焼室内の燃料を燃焼させる。
中心電極及び接地電極(以下において電極と称することがある)を形成する材料としては、一般にNi合金等が使用される。Ni合金は、耐酸化性及び耐消耗性に関してPt及びIr等の貴金属を主成分とした貴金属合金に比べると多少劣る。しかし、Ni合金は貴金属に比べて安価であるため電極を形成する材料として使用されることが多い。
ところで、近年、燃焼室内の温度が高温化する傾向にある。また、着火性向上のために火花放電間隙を形成する放電部を燃焼室の内部に突き出させるように配置するエンジンが使用されるようになってきている。そのため、Ni合金等で形成された、接地電極の先端部と中心電極の先端部との間で火花放電が生じると、接地電極及び中心電極との対向するそれぞれの先端部が消耗し易くなることがある。そこで、接地電極及び/又は中心電極の先端部に貴金属製のチップを設け、このチップで火花放電が生じるようにすることで接地電極及び中心電極の消耗を抑制させる方法が開発されている。
一方、冷熱サイクルを伴う環境下に曝されるチップは電極から剥離し易い。したがって、従来から、チップが電極から剥離し難いスパークプラグの開発が行われている。
例えば、特許文献1には、Niを主成分としてAlを0.8wt%以上含む合金からなる接地電極への貴金属チップの耐剥離性を向上することを目的として、「・・溶接した貴金属チップを含む半断面の貴金属チップの下20μmの範囲の断面積中、Al凝集物の面積占有率が30%以下であることを特徴とするスパークプラグ」(特許文献1の請求項1)が開示されている。
特開2004−186152号公報
特許文献1に代表されるように、チップの電極からの耐剥離性を向上させる方法について、様々な観点から開発が行われている。しかしながら、チップ材料や電極材料の開発が行われ、また、スパークプラグが置かれる環境等が変化すると、それに伴ってチップの耐剥離性が低下することがある。そのため、チップ材料等の開発と共にチップの耐剥離性を確保するための研究が続けられている。
本発明は、冷熱サイクル環境下においてもチップが剥離し難い接地電極を備えたスパークプラグを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段は、
(1) 絶縁体の軸線方向に延びる軸孔の一端側に保持された中心電極と、
前記絶縁体の外周に設けられた主体金具に接合される一端部を有し、Niを主成分とするNi合金からなり、
外表面のうち100μm×100μmの範囲における前記外表面からの深さ方向の距離をX(nm)、前記深さ方向の距離Xにおける酸素濃度をf(X)(質量%)、前記酸素濃度f(X)が10となるときの前記深さ方向の距離Xの値をX’としたときに、
Figure 0006061307
が、30〜1000質量%・nmである接地電極と、当該接地電極の他端部に、抵抗溶接により接合された中心電極との間に間隙を形成するチップとを有するスパークプラグである。
前記(1)の好ましい態様として、次の態様を挙げることができる。
(2)前記接地電極は、Niの含有量が50質量%以上である。
(3)前記(1)又は(2)のスパークプラグにおいて、前記接地電極は、Crの含有量が10質量%以上30質量%以下である。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか一つのスパークプラグにおいて、前記接地電極は、Y又はZrの含有量が0.1質量%以上0.5質量%以下である。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一つのスパークプラグにおいて、前記接地電極は、Alの含有量が0質量%以上1.8質量%以下である。
(6)前記(1)〜(5)のいずれか一つのスパークプラグにおいて、前記接地電極は、Siの含有量が0質量%以上2質量%以下である。
本発明のスパークプラグは、Ni合金からなる接地電極が、その外表面から深さ方向に所定の距離までの表面部分に所定の酸素濃度を有する高酸素濃度領域を有する。
チップが抵抗溶接された従来の接地電極は、未酸化部分と酸化部分とを有している。すなわち、チップが接合される接地電極の表面部分は、チップ直下のため空気に曝されていないので酸化され難い(未酸化部分)が、その周辺部分は空気に曝されているので酸化され得る(酸化部分)。一方、本発明における接地電極は、チップが抵抗溶接される接地電極の表面部分が高酸素濃度領域を有するので、高酸素濃度領域に含まれる酸素により均一に酸化される。
高酸素濃度領域のない従来の接地電極では、チップと接地電極における未酸化部分と酸化部分との3つの異なる材料が隣接する部分が存在する。これらはそれぞれ熱膨張率が相違するので、冷熱サイクル環境下ではこの部分に大きな応力が発生し、この部分からチップが剥離し易い。一方、本発明のスパークプラグは、チップが接合される接地電極の表面部分が均一に酸化されている。そのため、チップと接地電極における酸化部分とが面で隣接し、冷熱サイクル環境下で発生する応力がこの面全体に分散するので、従来の接地電極に比べてチップが剥離し難い。
したがって、本発明によると、冷熱サイクル環境下においてもチップが剥離し難い接地電極を備えたスパークプラグを提供することができる。特に、本発明によると、いかなるチップ材料であっても、チップと酸化した接地電極との熱膨張率の差を考慮して抵抗溶接の条件を決定するだけで、所望の溶接強度を確保することができる。
図1は、この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグの一部断面全体説明図である。 図2は、図1に示すスパークプラグにおけるチップと接地電極との接合部分を拡大して示す要部概略断面説明図である。 図3は、従来のスパークプラグにおけるチップと接地電極との接合部分を拡大して示す要部概略断面説明図である。 図4は、耐剥離性の評価試験における亀裂進展長の測定位置を示す要部概略断面説明図である。
この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグを図1に示す。図1はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグ1の一部断面全体説明図である。なお、図1では紙面下方すなわち後述する接地電極が配置されている側を軸線Oの先端方向、紙面上方を軸線Oの後端方向として説明する。
このスパークプラグ1は、図1に示されるように、軸線O方向に延びる軸孔2を有する略円筒形状の絶縁体3と、前記軸孔2内の先端側に配置された略棒状の中心電極4と、前記軸孔2内の後端側に配置された端子金具5と、前記中心電極4と前記端子金具5とを前記軸孔2内で電気的に接続する接続部6と、前記絶縁体3の外周に設けられた略円筒形状の主体金具7と、前記中心電極4との間に間隙Gを形成するチップ9と、前記主体金具7に接合される一端部を有すると共に、前記チップ9が抵抗溶接により接合された他端部を有する接地電極8とを備える。
前記絶縁体3は、軸線O方向に延びる軸孔2を有し、略円筒形状を有している。また、絶縁体3は、後端側胴部11と、大径部12と、先端側胴部13と、脚長部14とを備えている。後端側胴部11は、端子金具5を収容し、端子金具5と主体金具7とを絶縁する。大径部12は、該後端側胴部11よりも先端側において径方向外向きに突出する。先端側胴部13は、該大径部12の先端側において接続部6を収容し、大径部12よりも小さい外径を有する。脚長部14は、この先端側胴部13の先端側において中心電極4を収容し、先端側胴部13より小さい外径及び内径を有する。先端側胴部13と脚長部14との内周面は棚部15を介して接続されている。この棚部15に後述する中心電極4の鍔部16が当接するように配置され、中心電極4が軸孔2内に固定されている。先端側胴部13と脚長部14との外周面は段部17を介して接続されている。この段部17に後述する主体金具7のテーパ部18が板パッキン19を介して当接し、絶縁体3が主体金具7に対して固定されている。絶縁体3は、絶縁体3における先端方向の端部が主体金具7の先端面から突出した状態で、主体金具7に固定されている。絶縁体3は、機械的強度、熱的強度、電気的強度を有する材料で形成されることが望ましい。このような材料として、例えば、アルミナを主体とするセラミック焼結体が挙げられる。
前記絶縁体3の軸孔2内には、その先端側に中心電極4、後端側に端子金具5、中心電極4と端子金具5との間には中心電極4及び端子金具5を軸孔2内に固定すると共にこれらを電気的に接続する接続部6が設けられている。前記接続部6は、伝播雑音を低減するための抵抗体21と、該抵抗体21と中心電極4との間に設けられた第1シール体22と、該抵抗体21と端子金具5との間に設けられた第2シール体23とにより形成されている。抵抗体21は、ガラス粉末、非金属導電性粉末及び金属粉末等を含有する組成物を焼結して形成され、その抵抗値は通常100Ω以上である。第1シール体22及び第2シール体23は、ガラス粉末及び金属粉末等を含有する組成物を焼結して形成され、これらの抵抗値は通常100mΩ以下である。この実施態様における接続部6は、抵抗体21と第1シール体22と第2シール体23とにより形成されているが、抵抗体21と第1シール体22と第2シール体23の少なくとも1つにより形成されていてもよい。
前記主体金具7は、略円筒形状を有しており、絶縁体3を内装することにより絶縁体3を保持するように形成されている。主体金具7における先端方向の外周面にはネジ部24が形成されており、このネジ部24を利用して図示しない内燃機関のシリンダヘッドにスパークプラグ1が装着される。前記主体金具7は、ネジ部24の後端側にフランジ状のガスシール部25を有し、ガスシール部25の後端側にスパナやレンチ等の工具を係合させるための工具係合部26、工具係合部26の後端側に加締め部27を有する。加締め部27及び工具係合部26の内周面と絶縁体3の外周面との間に形成される環状の空間にはリング状のパッキン28,29及び滑石30が配置され、絶縁体3が主体金具7に対して固定されている。ネジ部24の内周面における先端側は、脚長部14に対して空間を有するように配置され、径方向内向きに突出する突起部32における後端側のテーパ状に拡径するテーパ部18と絶縁体3の段部17とが環状の板パッキン19を介して当接している。主体金具7は、導電性の鉄鋼材料、例えば、低炭素鋼により形成されることができる。
端子金具5は、中心電極4とチップ9との間で火花放電を行うための電圧を外部から中心電極4に印加するための端子であり、絶縁体3の後端側からその一部が露出した状態で軸孔2内に挿入されて第2シール体23により固定されている。端子金具5は、低炭素鋼等の金属材料により形成されることができる。
前記中心電極4は、前記接続部6に接する後端部34と、前記後端部34から先端側に延びる棒状部35とを有する。後端部34は、径方向外向きに突出する鍔部16を有する。該鍔部16が絶縁体3の棚部15に当接するように配置され、前記絶縁体3の内周面と後端部34の外周面との間に第1シール体22が充填されていることで、中心電極4は、その先端が絶縁体3の先端面から突出した状態で絶縁体3の軸孔2内に固定され、主体金具7に対して絶縁保持されている。中心電極4における後端部34と棒状部35とは、Ni又はNiを主成分とするNi合金等の中心電極4に使用される公知の材料で形成されることができる。中心電極4は、Ni合金等により形成される外層と、Ni合金よりも熱伝導率の高い材料により形成され、該外層の内部の軸心部に同心に埋め込まれるように形成されてなる芯部とにより形成されてもよい。芯部を形成する材料としては、例えば、Cu、Cu合金、Ag、Ag合金、純Ni等を挙げることができる。また、中心電極4は、前記棒状部35の先端面にチップを有していてもよい。チップを形成する材料としては、Pt合金及びIr合金等を挙げることができる。チップは、例えば、抵抗溶接及び/又はレーザ溶接等により棒状部35に接合される。
抵抗溶接により接地電極8に接合されている前記チップ9は、この実施形態においては円柱状である。前記チップ9の形状は特に限定されず、円柱状以外の形状として楕円柱状、角柱状、及び板状等の適宜の形状を採用することができる。前記チップ9は、接地電極8を形成する材料よりも耐酸化性及び耐火花消耗性に優れた材料により形成され、例えば、Ptを主成分とするPt合金、Rhを主成分とするRh合金、Pdを主成分とするPd合金により形成される。前記チップに含有される主成分以外の成分としては、Rh、Pt、Pd等が挙げられる。Pt合金又はRh合金により形成されたチップ9は、これを接地電極8に抵抗溶接する際の発熱量が他の貴金属に比べて小さく、接合強度を確保し難い。しかし、後述するように、この発明における接地電極8は高酸素濃度領域を有するので、発熱量の小さいチップ材料であっても所望の接合強度を確保することができる。なお、「主成分」とは、チップ9に含有される成分の中で最も含有量の多い成分のことをいう。
前記間隙Gは、この実施形態においては、接地電極8の先端部の側面に設けられたチップ9の先端面とこの先端面に対向する中心電極4の棒状部35の先端面との間の最短距離である。この間隙Gは、通常、0.3〜1.5mmに設定される。この間隙Gで火花放電が生じる。中心電極がチップを有する中心電極である場合には、接地電極に設けられたチップの先端面と中心電極のチップの先端面との間の最短距離が間隙Gとなる。中心電極の側面と接地電極の先端部に設けられたチップとが対向するように設けられている横放電型のスパークプラグの場合には、中心電極の側面と接地電極の先端部に設けられたチップとの対向するそれぞれの対向面の間の最短距離が間隙Gとなる。
前記接地電極8は、一端部が主体金具7の先端部に接合され、途中で略L字状に屈曲され、他端部にチップ9が抵抗溶接により接合され、このチップ9の先端部と中心電極4の先端部とが間隙Gを介して対向するように形成されている。前記接地電極8は、棒状体であり、棒状体の軸線に直交する断面形状は、特に限定されず、例えば、方形、多角形、円形、楕円形等が挙げられる。前記接地電極8は、Niを主成分とするNi合金により形成されている。前記接地電極8は、中心電極4と同様に、Ni合金により形成される外層と、Ni合金よりも熱伝導率の高い材料により形成され、該外層の内部の軸芯部に同心に埋め込まれるように形成されて成る芯部とにより形成されてもよい。芯部を形成する材料としては、例えば、Cu、Cu合金、Ag、Ag合金、純Ni等を挙げることができる。
図2は、図1に示すスパークプラグにおけるチップと接地電極との接合部分を拡大して示す要部概略断面説明図である。前記接地電極8は、図2に示すように、その外表面41から内部方向に所定の距離までの表面部分44に次の条件(1)を満たす領域を有する。
条件(1):
前記接地電極8の外表面41のうち100μm×100μmの範囲における前記外表面41からの深さ方向の距離をX(nm)、前記深さ方向の距離Xにおける酸素濃度をf(X)(質量%)、前記酸素濃度f(X)が10となるときの前記深さ方向の距離Xの値をX’としたときに、
Figure 0006061307
が、30〜1000質量%・nmである。
換言すると、前記接地電極8は、その外表面41から内部方向に所定の距離までの表面部分44の少なくとも一部に高酸素濃度領域を有する。高酸素濃度領域における酸素濃度は、所定領域における酸素濃度の積分値として表すことができる。すなわち、前記接地電極8は、外表面41から深さ方向の距離Xにおける、外表面に平行な100μm×100μmの範囲での酸素濃度をf(X)として、外表面(X=0)から酸素濃度f(X)が10質量%になるときの距離(X=X’)までの酸素濃度f(X)の積分値が30〜1000質量%・nmである高酸素濃度領域を有する。接地電極8は、後述するように、接地電極の製造工程において、特定の条件で焼鈍を施すことにより、その外表面に高酸素濃度領域を形成することができるので、接地電極8における空気に曝されている外表面全体に条件(1)を満たす領域が存在することが多い。チップ9の接地電極8からの耐剥離性の向上の観点から、接地電極8はチップ9の接合が予定されている面の表面部分44に条件(1)を満たす領域を少なくとも有していればよい。したがって、接地電極8が角柱形状である場合には、6面中チップの接合が予定されている面の表面部分44のみに条件(1)を満たす領域を有していてもよい。前記接地電極8が条件(1)を満たすと、チップ9の接地電極8からの耐剥離性を向上させることができる。
図3は、従来のスパークプラグにおけるチップと接地電極との接合部分を拡大して示す要部概略断面説明図である。図3に示されるように、従来の接地電極108では、接地電極108の外表面141から内部方向に所定の距離までの表面部分に、前述した高酸素濃度領域が存在しない。チップ109を抵抗溶接により接地電極108に溶接した場合には、チップ109が接合されているチップ109直下の接地電極108の表面部分142は空気に曝されていないので酸化され難い。一方、前記表面部分142に隣接する接地電極108の表面部分143すなわちチップ109が設けられている接合面Cの外周付近の外表面141から内部方向に所定の距離までの表面部分143は空気中の酸素によって酸化され、酸化物が形成され易い。したがって、チップ109直下の未酸化部分142とこれに隣接する酸化部分143とは熱膨張率が相違する。また、チップ109は、接地電極108に比べて耐酸化性及び耐火花消耗性の良好な材料で形成されているので、チップ109を形成する材料と接地電極108を形成する材料とは相違する。よって、チップ109と接地電極108における未酸化部分142と酸化部分143とは材料が相違し、熱膨張率も相違する。したがって、チップ109の接地電極108に接合されている接合面Cにおける外周線Pでは、チップ109と接地電極108における未酸化部分142と酸化部分143との熱膨張率の異なる3つの材料が隣接している。その結果、冷熱サイクル環境下に曝されるスパークプラグ1は、熱膨張率の異なる3つの材料が隣接しているこの外周線Pに大きな応力が発生し、外周線Pを起点として剥離し易くなる。
一方、本発明における接地電極8は、図2に示されるように、接地電極8の外表面41から深さ方向に所定の距離までの表面部分44に高酸素濃度領域を有する。そのため、チップ9を抵抗溶接により接地電極8に溶接した場合に、チップ9が接合される接地電極8の表面付近が均一に酸化され、形成された酸化物が均一に分散される。すなわち、チップ9直下の接地電極8の表面部分42と前記表面部分42に隣接する接地電極8の表面部分43すなわちチップ9が設けられている接合面Cの外周付近の外表面41から内部方向に所定の距離までの表面部分43とが、高酸素濃度領域に含まれる酸素によって均一に酸化される。したがって、本発明における接地電極8は、チップ9と接合される表面付近に、図3に示される従来の接地電極108のように未酸化部分142と酸化部分143という熱膨張率の異なる材料が存在しない。したがって、このスパークプラグ1は、従来のスパークプラグのように、チップ9と接地電極8との接合面Cの外周線Pに3つの異なる熱膨張率を有する材料が隣接する部分がなく、剥離に弱い部分が点や線で存在せず、チップ9と接地電極8における酸化部分42、43という熱膨張率の異なる2つの材料が面で接しているので、従来のスパークプラグに比べて耐剥離性が向上する。本発明のスパークプラグ1は、接地電極8の表面部分4に高酸素濃度領域を有するので、いかなるチップ材料であっても、チップ9と接地電極8における酸化部分42、43との熱膨張率の差を考慮して抵抗溶接の条件を決定するだけで、所望の溶接強度を確保することができる。
前記高酸素濃度領域は、所定領域の酸素濃度の積分値が30〜1000質量%・nmであればよい。接地電極8の表面部分44における所定領域の酸素濃度の積分値が30質量%・nm未満であると、前記効果が得られ難い。接地電極8の表面部分44における所定領域の酸素濃度の積分値が1000質量%・nmを超えると、チップ9を接地電極8に抵抗溶接する際に、抵抗溶接による熱によって表面部分42、43に形成される酸化物が増大し、抵抗溶接する際の電流が流れ難くなり、却って接合強度が低下する。
前記接地電極8は、外表面41における酸素濃度が最も高く、内部に向かって次第に酸素濃度が低くなることが多い。外表面41における100μm×100μmの範囲における酸素濃度は、50質量%以下であるのが好ましい。前記酸素濃度が50質量%を超えると、接地電極の外表面41にニッケル酸化被膜(NiO)が形成され易くなり、チップ9の接合強度が低下するおそれがある。また、接地電極8における高酸素濃度領域の厚みは、5nm以上100nm以下であるのが好ましい。高酸素濃度領域の厚みが前記範囲内であると、チップ9を接地電極8に抵抗溶接する際に、チップ9が接合される接地電極8の表面部分42、43が均一に酸化され易い。
前記接地電極8が条件(1)を満たすことは、接地電極8の外表面41から深さ方向にオージェ電子分光装置を用いて元素分析を行うことにより確認することができる。元素分析は、具体的には次のようにして行う。接地電極8の外表面41すなわち接地電極8における空気に曝されている表面の任意の位置で元素分析を行う。なお、チップ9及び主体金具7が接合されている付近は、抵抗溶接による熱の影響を受けているおそれがあるので、チップ9及び主体金具7から所定距離、例えば5mm離れた位置で元素分析を行うのがよい。外表面41における分析範囲は100μm×100μmとして、電子線の照射をこの分析範囲でランニングさせて元素分析を行う。得られたスペクトルのピーク強度比から検出された全元素に対する酸素の質量割合を算出して、これを酸素濃度(質量%)とする。前記条件(1)では、外表面41における酸素濃度をf(0)(質量%)として示す。外表面41における元素分析の後、Ar等を照射するイオン銃で外表面41をスパッタリングして、外表面41から深さ方向に数nmの位置で、例えば2nmの位置で、同様にして元素分析を行う。前記条件(1)では、外表面41から深さ方向に距離2(nm)における酸素濃度をf(2)(質量%)として示す。スパッタリングと元素分析とを同様にして交互に繰り返し行い、酸素濃度が10質量%より小さくなるまで深さ方向に元素分析を行う。本発明における接地電極8の表面部分における酸素濃度は、通常、外表面41から内部に向かって次第に減少するので、オージェ電子分光分析を外表面41から深さ方向に進めていくうちに酸素濃度が10質量%よりも小さくなる領域に到達する。外表面(X=0)から酸素濃度f(X)が10質量%になる深さ方向の距離(X=X’)までの酸素濃度f(X)の積分値を算出する。この値が30〜1000質量%・nmであるとき、接地電極8は前記条件(1)を満たす。
前記接地電極8は、Niを主成分とするNi合金からなる。前記接地電極は、Niの含有量が50質量%以上99質量%以下であるのが好ましく、55質量%以上90質量%以下であるのが特に好ましい。前記接地電極8におけるNiの含有量が前記範囲内にあるとき条件(1)を満たすと、チップ9の接地電極8からの耐剥離性がより一層向上する。前記接地電極8は、Ni以外の成分として、例えば、Cr、Zr、Y、Al、Si、Fe、Mn、Mo、W等を含有する。なお、「主成分」とは、接地電極8に含有される成分の中で最も含有量の多い成分のことをいう。
前記接地電極8は、Crを含有するのが好ましく、Crの含有量が10質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。接地電極8におけるCrの含有量が多くなるほど、室温(25℃)における比抵抗値が大きくなる。比抵抗値が大きくなると、チップ9を接地電極8に抵抗溶接する際に発熱量が大きくなり、チップ9と接地電極8との接合強度を確保し易くなる。また、接地電極8におけるCrの含有量が多くなるほど、接地電極8の耐食性が向上するので、チップ9と接地電極8との接合強度を確保し易くなる。接地電極8におけるCrの含有量が10質量%未満であると、前記効果が得られ難くなる。接地電極8におけるCrの含有量が30質量%を超えると、γ’相と称される硬く変形し難い金属間化合物が、チップ9と接合される接地電極8の表面部分42、43に析出し易くなる。このようなγ’相が接地電極8の表面部分42、43に析出すると、抵抗溶接の際にチップ9が接地電極8に沈み込むのが阻害され、チップ9と接地電極8との接合強度が低下するおそれがある。
前記接地電極8は、Y又はZrを含有するのが好ましく、Y又はZrの含有量が0.1質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましい。接地電極8にY又はZrが含有されていると、Y又はZrが接地電極8の表面部分42、43に含まれる酸化物を接地電極8の母材45の表面すなわち抵抗溶接により酸化されていない部位の表面にピン止めして、母材45と酸化された表面部分42、43との密着性が向上する。したがって、接地電極8におけるY又はZrの含有量が多くなるほど、チップ9と接地電極8との接合強度を確保し易くなる。接地電極8におけるY又はZrの含有量が0.1質量%未満であると、前記効果が得られず、母材45と酸化された表面部分42、43との界面で剥離が生じるおそれがある。接地電極8におけるY又はZrの含有量が0.5質量%を超えると、接地電極8を製造する際に所定の形状に加工し難くなる。すなわち、接地電極8を熱間加工で形成することはできるが、冷間加工での加工がし難くなり、生産性に劣る。
前記接地電極8は、Alの含有量が0質量%以上1.8質量%以下であるのが好ましい。すなわち、前記接地電極8は、Alを無含有であるか、或いはAlを含有するとしてもその含有量は1.8質量%以下であるのが好ましい。接地電極8は、接地電極8の耐酸化性の観点から、Alを含有するのが好ましく、0.3質量%以上含有するのがより好ましい。しかし、接地電極8におけるAlの含有量が1.8質量%を超えると、接地電極8を製造する際に窒素雰囲気で熱処理を行うので、表面に窒化アルミニウムの凝集層を形成し易くなる。窒化アルミニウムの凝集層が形成された接地電極8にチップ9を溶接すると、溶接による熱により凝集層表面の酸化が促進され、チップ9と接地電極8との接合界面に酸化アルミニウムが形成され易くなる。この酸化アルミニウムによってチップ9の接地電極8への接合強度が低下するおそれがある。
前記接地電極8は、Siの含有量が0質量%以上2質量%以下であるのが好ましい。すなわち、前記接地電極8は、Siを無含有であるか、或いはSiを含有するとしてもその含有量は2質量%以下であるのが好ましい。接地電極8は、接地電極8の耐酸化性の向上の観点から、Siを含有するのが好ましく、0.2質量%以上含有するのがより好ましい。しかし、例えば、チップ9がPt合金からなる場合に接地電極8におけるSiの含有量が2質量%を超えると、燃焼室内の高温環境下においてSiがチップ9に拡散し、共晶反応を生じ易くなる。チップ9における接地電極8との界面付近で共晶反応が生じると、主に粒界付近が低融点化し、内燃機関の稼働時にチップ9の一部に液相が生じ易くなるため、チップ9の接地電極8への接合強度が低下するおそれがある。
前記接地電極8に含まれる各成分の含有量は、次のようにして測定することができる。すなわち、まず接地電極8をその軸線を含む平面で切断して切断面を露出させる。この接地電極8の切断面において中心付近における任意の複数箇所を選択し、EPMAを利用して、WDS(Wavelength Dispersive X-ray Spectrometer)分析を行うことにより、各々の箇所の質量組成を測定する。次に、測定した複数箇所の測定値の算術平均値を算出して、この平均値を接地電極8の組成とする。
前記接地電極8が条件(1)を満たす領域を有すると、冷熱サイクル環境下においてもチップ9が接地電極8から剥離し難い。また、前記接地電極8が前述したように特定の組成を有するNi合金からなり、かつ条件(1)を満たす領域を有すると、チップ9が接地電極8からより一層剥離し難くなる。
前記スパークプラグ1は、例えば次のようにして製造される。まず、中心電極4及び接地電極8は、例えば、真空溶解炉を用いて、所望の組成を有する合金の溶湯を調製し、真空鋳造にて各溶湯から鋳塊を調製した後、この鋳塊を、熱間加工、線引き加工等して、所定の形状及び所定の寸法に適宜調整した後、これを焼鈍することにより製造される。前記条件(1)を満たす領域を表面部分に有する接地電極8は、接地電極8を焼鈍する際の、雰囲気中の酸素濃度、温度、材料の送り速度等を適宜調整することにより、製造することができる。
接地電極8が、外層とこの外層の軸心部に埋め込まれるように設けられた芯部とにより形成されている場合には、接地電極8はカップ状に形成したNi合金からなる外材に、外材より熱伝導率の高いCu合金等からなる内材を挿入し、押し出し加工等の塑性加工にて、外層の内部に芯部を有する接地電極8を形成する。中心電極4が、外層と芯部とにより形成されている場合には、接地電極8と同様にして中心電極4を形成する。
接地電極8に接合されるチップ9は、所望の組成となるように金属材料を配合及び溶解して得られる溶解材を、例えば、圧延により板材に加工し、この板材を打ち抜き加工により所定のチップ形状に打ち抜いて形成することができる。また、チップ9は、所望の組成を有する合金を圧延、鍛造又は伸線により線状又はロッド状の素材に加工した後に、これを長さ方向に所定の長さに切断して形成することができる。また、材料の加工性によって、加工工程は熱間又は冷間のどちらかを適宜選択することができる。中心電極4がチップを有する場合には、接地電極9に接合されるチップ9と同様にしてチップを形成することができる。
次いで、所定の形状に塑性加工等によって形成した主体金具7の端面に、接地電極8の一端部を電気抵抗溶接及び/又はレーザ溶接等によって接合する。次いで、接地電極8が接合された主体金具7にZnめっき又はNiめっきを施す。Znめっき又はNiめっきの後に3価クロメート処理を行ってもよい。また、接地電極に施されためっきは剥離してもよい。
次いで、上述のように作製したチップ9を接地電極8に抵抗溶接により接合する。抵抗溶接は、チップ9を接地電極8の所定位置に設置して押し当てながら電流を流すことにより行う。中心電極4がチップを有する場合には、抵抗溶接及び/又はレーザ溶接等によりチップを中心電極4を形成する母材に接合する。
一方、絶縁体3は、セラミック等を所定の形状に焼成することによって作製される。この絶縁体3の軸孔2内に中心電極4を挿設し、第1シール体22を形成する組成物、抵抗体21を形成する組成物、第2シール体23を形成する組成物をこの順に前記軸孔2内に予備圧縮しつつ充填する。次いで前記軸孔2内の端部から端子金具5を圧入しつつ前記組成物を圧縮加熱する。こうして前記組成物が焼結して抵抗体21、第1シール体22及び第2シール体23が形成される。次いで接地電極8が接合された主体金具7にこの中心電極4等が固定された絶縁体3を組み付ける。最後に接地電極8の先端部を中心電極4側に折り曲げて、接地電極8の一端が中心電極4の先端部と対向するようにして、スパークプラグ1が製造される。
本発明に係るスパークプラグは、自動車用の内燃機関例えばガソリンエンジン等の点火栓として使用される。スパークプラグ1は、内燃機関の燃焼室を区画形成するヘッド(図示せず)に設けられたネジ穴に前記ネジ部24が螺合されて、所定の位置に固定される。この発明に係るスパークプラグは、冷熱サイクル環境下におけるチップ9の接地電極8からの耐剥離性に優れているので、燃焼室内の温度差の大きい内燃機関に特に好適である。
この発明に係るスパークプラグ1は、前述した実施例に限定されることはなく、本発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記スパークプラグ1は、中心電極4の先端面と接地電極8に設けられたチップ9の先端面とが、軸線O方向で、間隙Gを介して対向するように配置されているが、この発明において、中心電極の側面と接地電極に設けられたチップの先端面とが、中心電極の半径方向で、間隙を介して対向するように配置されていてもよい。この場合に、中心電極の側面に対向する接地電極は、単数が設けられても、複数が設けられてもよい。
(試験番号1〜22)
<試験体の作製>
真空溶解炉を用いて合金の溶湯を調製し、真空鋳造にて各溶湯から鋳塊を調製した後、この鋳塊を熱間加工、線引き加工等して角柱形状(1.5mm×3.0mm×20.0mm)を有する接地電極母材を作製した。その後、接地電極母材に焼鈍を施して、表面部分の酸素濃度を高めた接地電極を作製した。接地電極の表面部分における酸素濃度は、接地電極母材を焼鈍する際の雰囲気中の酸素濃度、温度、接地電極母材の送り速度等の焼鈍条件を適宜変更することにより、調整した。
作製した接地電極の先端部の側面すなわち角柱形状の接地電極における6面中、最大面積を有する2面のうちの一方の面の先端部に、Ptを80質量%及びNiを20質量%含有する円柱状のチップ(直径0.7mm、高さ0.3mm)を設置し、抵抗溶接により接合して試験体を作製した。抵抗溶接は、荷重300Nでチップを接地電極に押し当てながら電流値を適宜変更させて行った。
<接地電極の組成>
表1に示される接地電極の組成は、EPMA(日本電子株式会社製JXA-8500F)のWDS分析を行うことにより、測定した。まず、接地電極をその中心軸線を含む平面で切断し、この切断面において中心付近における任意の複数箇所を選択し、各々の箇所の質量組成を測定した。次に、測定した複数箇所の特定値の算術平均値を算出して、この平均値を接地電極の組成とした。結果を表1に示す。
<酸素濃度の積分値>
角柱形状の接地電極における6面中、チップが接合されている面において、チップから5mm以上離れている任意の測定点を選択し、オージェ電子分光装置を用いて元素分析を行った。分析範囲を100μm×100μmとして、電子線の照射をこの分析範囲でランニングさせて、得られたスペクトルのピーク強度比から酸素濃度(質量%)を算出した。外表面における元素分析の後、Arイオン銃で前記分析範囲をスパッタリングして、外表面から数nmの位置でさらに元素分析を行った。元素分析とスパッタリングとを交互に繰り返し行い、酸素濃度f(X)が10質量%より小さくなるまで深さ方向に元素分析を行った。外表面(X=0)から酸素濃度f(X)が10質量%である深さ方向の距離(X=X’)までの酸素濃度の積分値
Figure 0006061307
を算出した。結果を表1に示す。
<耐剥離性の評価>
接地電極におけるチップが接合されている部分をガスバーナで950℃に2分間加熱し、次いで1分間空冷するサイクルを1000回繰り返し行う冷熱サイクル試験を行った。次に、チップの軸線を通る面にて切断及び研磨して、研磨面を拡大鏡にて観察し、チップと接地電極との接合面に発生した亀裂の測定を行った。図4に示すように、接合面の両端から亀裂が進展している場合には、それぞれの亀裂進展長r、rを測定し、接合面の全長Rに対する亀裂進展長の合計(r+r)を亀裂進展率{(r+r)/R}として算出した。この亀裂進展率が50%を超えた場合には、チップを接地電極に抵抗溶接する際の電流値を上げることにより接合強度を高めた試験体を作製し、この試験体で冷熱サイクル試験を行い、同様に亀裂進展率を求めた。亀裂進展率が50%未満になるまで電流値を変更して試験を繰り返し、亀裂進展率が50%未満になる電流値の下限値を求めた。
耐剥離性の評価は、以下の基準にしたがって行った。結果を表1に示す。
◎:亀裂進展率が50%未満になる電流値の下限値が800A未満
○:亀裂進展率が50%未満になる電流値の下限値が800A以上1000A未満
△:亀裂進展率が50%未満になる電流値の下限値が1000A以上1200A未満
×:亀裂進展率が50%未満になる電流値の下限値が1200A以上
−:評価せず
Figure 0006061307
表1に示されるように、接地電極の表面部分における「酸素濃度の積分値」が30〜1000質量%・nmの範囲にある試験体は、耐剥離性の評価結果が良好であった。一方、「酸素濃度の積分値」が30質量%・nm未満である試験体及び1000質量%・nmを超える試験体は、耐剥離性の評価結果に劣っていた。なお、接地電極におけるZr又はYの含有量が0.5質量%を超える試験体は、冷間加工をする際の加工性が悪かったため、耐剥離性の評価を行わなかった。
(試験番号23〜27)
接地電極の組成を変更し、抵抗溶接の際の電流値を0.8kAにしたこと以外は試験番号1〜22と同様にして試験体を作製し、「接地電極の組成」及び「酸素濃度の積分値」を測定した。
接地電極におけるチップが接合されている部分をガスバーナで1000℃に2分間加熱して、次いで1分間空冷するサイクルを1000回繰り返し行ったこと以外は、試験番号1〜22と同様に冷熱サイクル試験を行い、チップと接地電極との接合面における亀裂進展率を求めた。
耐剥離性の評価は、以下の基準にしたがって行った。結果を表2に示す。
○: 亀裂進展率が50%未満
×: 亀裂進展率は50%以上
Figure 0006061307
表2に示されるように、接地電極におけるAlの含有量が1.8質量%以下である試験体は、Alの含有量が1.8質量%を超える試験体に比べて、耐剥離性の評価結果が良好であった。
(試験番号28〜32)
接地電極の組成を変更し、抵抗溶接の際の電流値を0.8kAにしたこと以外は試験番号1〜22と同様にして試験体を作製し、「接地電極の組成」及び「酸素濃度の積分値」を測定した。
作製した試験体を1200℃で500時間、真空中にて焼鈍を行う拡散処理を行った。
次に、チップの軸線を通る面にて切断して、得られた切断面に対して、エネルギー分散型X線分光装置(EDS)によりマッピング分析を行い、PtとSiとの共晶の発生の有無を調べた。
観察画面に共晶が観察されなかった場合を「○」、共晶が観察された場合を「×」として、結果を表3に示す。
Figure 0006061307
表3に示されるように、接地電極におけるSiの含有量が2質量%を超える試験体は、接地電極に含まれるSiがチップに拡散し、共晶反応により共晶が形成されていることが確認された。チップにおける接地電極との界面付近で共晶反応が生じると、主に粒界付近が低融点化し、内燃機関の稼働時にチップの一部に液相が生じ易くなるため、チップの接地電極への接合強度が低下し易くなる。
1 スパークプラグ
2 軸孔
3 絶縁体
4 中心電極
5 端子金具
6 接続部
7 主体金具
8、108 接地電極
9、109 チップ
11 後端側胴部
12 大径部
13 先端側胴部
14 脚長部
15 棚部
16 鍔部
17 段部
18 テーパ部
19 板パッキン
21 抵抗体
22 第1シール体
23 第2シール体
24 ネジ部
25 ガスシール部
26 工具係合部
27 加締め部
28,29 パッキン
30 滑石
32 突起部
34 後端部
35 棒状部
36 溶融部
37 境界面
38 表面
41、141 外表面
42、43、44、142、143、144 表面部分
45 母材

Claims (6)

  1. 絶縁体の軸線方向に延びる軸孔の一端側に保持された中心電極と、
    前記絶縁体の外周に設けられた主体金具に接合される一端部を有し、Niを主成分とするNi合金からなり、外表面のうち100μm×100μmの範囲における前記外表面からの深さ方向の距離をX(nm)、前記深さ方向の距離Xにおける酸素濃度をf(X)(質量%)、前記酸素濃度f(X)が10となるときの前記深さ方向の距離Xの値をX’としたときに、
    Figure 0006061307
    が、30〜1000質量%・nmである接地電極と、当該接地電極の他端部に、抵抗溶接により接合された中心電極との間に間隙を形成するチップとを有するスパークプラグ。
  2. 前記接地電極は、Niの含有量が50質量%以上である請求項1に記載のスパークプラグ。
  3. 前記接地電極は、Crの含有量が10質量%以上30質量%以下である請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記接地電極は、Y又はZrの含有量が0.1質量%以上0.5質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  5. 前記接地電極は、Alの含有量が0質量%以上1.8質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  6. 前記接地電極は、Siの含有量が0質量%以上2質量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
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