JP6280899B2 - スパークプラグ - Google Patents

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この発明は、スパークプラグに関する。特に、この発明は、耐アルコール腐食性と耐火花消耗性とを両立させた接地電極を備えたスパークプラグに関する。
自動車エンジン等の内燃機関に、スパークプラグが用いられている。内燃機関が高性能化し、内燃機関の燃焼室内の環境が過酷化するのに応じてスパークプラグの構造及び材料等について開発が進められている。例えば、スパークプラグの接地電極に関して次のような報告がある。
特許文献1には、内燃機関のターボチャージャー等の補機類の装備による高性能化に伴って、内燃機関の燃焼室内における混合気の燃焼によって発生する熱量が大きくなるにつれて、燃焼室内に突出するスパークプラグの接地電極の受熱量が大きくなり、この受熱により高温となった接地電極がプレイグニッションの原因の一つとなることが開示されている(特許文献1の0002欄)。特許文献1に記載の発明は、燃焼室内に突出し、混合器の燃焼に伴う受熱により高温となるスパークプラグの接地電極における熱伝導性を向上させて、接地電極の温度を低下させることで耐酸化性を改善したスパークプラグを提供することを課題として(特許文献1の0005欄)、「芯部の金属と、この芯部を被覆してなる外層部からなる複合構造であり、上記芯部の金属を良熱伝導性ニッケル、或はニッケル合金からなるものとし、又、上記外層部の金属を、芯部を構成する金属よりも高温酸化性に優れるニッケル合金とし、更にこの外層部の厚さHを、0.25mm≦H≦0.35mmとしてなる接地電極を有する内燃機関用スパークプラグ」(特許文献1の請求項1)が開示されている。
特許文献2には、接地電極としてニッケル合金単層からなるものが一般的に使用されているが、プレイグニッションを防止するために、良熱伝導材料である銅や純Niを芯材として使用し、その外層部にニッケル合金を設けて複層構造とした従来の接地電極が開示されている(特許文献1の1頁右欄9行〜2頁左上欄3行)。特許文献2に記載の発明は、このような従来の接地電極のもつ欠点を改善し、良熱伝導性を確保し、さらにクラッド材を容易に得ることができるようにすることを課題として、「少なくとも2種以上のニッケル合金と、その内部に伸線長手方向に連続的に銅もしくは銅合金を含む複合材からなる接地電極を有するスパークプラグ」(特許文献2の請求項1)が開示されている。
特開平5−13146号公報 特開平4−43585号公報
ところで、近年、燃料の多様化及び燃焼室内の環境の過酷化が進んでいる。中でもアルコールを燃料とする機種は、燃焼室内の環境の過酷化が急速に進んでいるため、稼働中に接地電極が腐食する不具合が生じる可能性が高い。実際に、燃焼室内の環境を従来よりも厳しくし、アルコール燃料を使用して耐久試験を行ったところ、接地電極が腐食する不具合が生じた。この耐久試験の結果を検討したところ、接地電極を形成する材料によって腐食が生じる場合と生じない場合とがあることが分かった。すなわち、接地電極がNi以外の元素の含有率が少なく、火花放電による耐消耗性が良好な高Ni合金で形成されている場合は、接地電極が短時間で腐食した。一方、接地電極がNi以外の元素の含有率が多く、火花放電による耐消耗性が高Ni合金に比べて劣る、インコネル(登録商標)系材料等の低Ni合金で形成されている場合は、長時間にわたって腐食しなかった。
この耐久試験の結果から、耐アルコール腐食性を確保するためには、インコネル(登録商標)系材料等の低Ni合金で接地電極を形成すればよいことが分かる。しかしながら、低Ni合金製の接地電極は、耐火花消耗性に劣るので、寿命が短くなるという問題がある。耐火花消耗性を確保するために、接地電極における火花放電が行われる部位に貴金属チップを接合することが考えられるが、貴金属チップは高価であるので、なるべく低コストのスパークプラグを提供するためには貴金属チップを用いずに耐アルコール腐食性と耐火花消耗性とを両立することが望まれる。
この発明は、耐アルコール腐食性と耐火花消耗性とを両立させた接地電極を備えたスパークプラグを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段は、
[1] 軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、
前記軸孔内の先端側に設けられた中心電極と、
前記絶縁体の外周に設けられ、前記軸線方向先端側から後端側に延びる筒状の主体金具と、
前記主体金具の先端側端部に固定された基端部及び前記中心電極の先端面と間隙を介して対向する先端部を有する接地電極と、
を備えるスパークプラグであって、
前記接地電極は、Niの含有率が96質量%以上である母材と、前記母材よりも外表面側に形成された層であって、外表面におけるCrの含有率が15質量%以上である保護層とを有し、
前記保護層の外表面に直交する断面において、前記保護層の表面における、単位長さあたりの結晶粒の界面の数Nが4個/mm以上であることを特徴とするスパークプラグである。
前記[1]の好ましい態様は、以下の通りである。
[2] 前記数Nが8個/mm以上である。
[3] 前記[1]又は[2]に記載のスパークプラグにおいて、前記母材は、希土類元素のうちの少なくとも1種を含有し、希土類元素の合計含有率が0.05質量%以上0.5質量%以下である。
[4] 前記[1]〜前記[3]のいずれか一つに記載のスパークプラグにおいて、前記母材は、結晶粒の直径が150μm以下である。
[5] 前記[1]〜前記[4]のいずれか一つに記載のスパークプラグにおいて、前記保護層は、希土類元素のうちの少なくとも1種を含有し、希土類元素の合計含有率が0.01質量%以上0.5質量%以下である。
[6] 前記[1]〜前記[5]のいずれか一つに記載のスパークプラグにおいて、前記接地電極は、前記基端部における前記主体金具の径方向外側の部位から前記先端部に向かって延びる外側面と、前記外側面に隣接する側面とを有し、
前記保護層は、前記側面のうち前記中心電極の先端面より先端側の部位に設けられる。
[7] 前記[1]〜前記[6]のいずれか一つに記載のスパークプラグにおいて、前記保護層は、Crの含有率が5質量%以上であり、かつ、厚さが0.02mm以上0.2mm以下である。
[8] 前記[6]又は前記[7]に記載のスパークプラグにおいて、前記保護層はさらに、前記外側面のうち少なくとも前記中心電極の先端面の位置より先端側に設けられる。
[9] 前記[1]〜前記[8]のいずれか一つに記載のスパークプラグにおいて、前記中心電極の先端面を前記軸線方向に沿って前記接地電極に投影したときに形成される投影領域以外の前記母材の表面全体に前記保護層が設けられている。
この発明における接地電極は、Niの含有率が96質量%以上である母材を有するので、高い熱伝導率を有し、火花放電によって接地電極が受熱した熱を速やかに主体金具に伝導させることができ、所謂熱引きが良好であることから、耐火花消耗性に優れる。また、この発明における接地電極は、前記母材よりも外表面側に形成された層であって、外表面におけるCrの含有率が15質量%以上である保護層を有し、前記保護層の外表面に直交する断面において、前記保護層の外表面における、単位長さあたりの結晶粒の界面の数Nが4個/mm以上であるので、前記数Nが4個/mm未満である場合に比べて接地電極の内部から外表面にCrを速やかに拡散させて接地電極の外表面にCrの酸化物被膜を速やかに形成させることができる。その結果、この発明における接地電極は耐アルコール腐食性に優れる。したがって、この発明によると、耐火花消耗性と耐アルコール腐食性とを両立させた接地電極を備えたスパークプラグを提供することができる。
図1は、この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグの一部断面全体説明図である。 図2(a)は、図1に示すスパークプラグの接地電極近傍を拡大して示す断面説明図である。図2(b)は、図2(a)のA−A断面を示す断面図である。図2(c)は、図2(a)に示す接地電極を中心電極側から見たときの平面図である。 図3(a)は、この発明に係るスパークプラグの別の実施例であるスパークプラグの接地電極近傍を拡大して示す断面説明図である。図3(b)は、図3(a)のA−A断面を示す断面図である。図3(c)は、図3(a)に示す接地電極を中心電極側から見たときの平面図である。 図4(a)は、この発明に係るスパークプラグのさらに別の実施例であるスパークプラグの接地電極近傍を拡大して示す断面説明図である。図4(b)は、図4(a)のA−A断面を示す断面図である。図4(c)は、図4(a)に示す接地電極を中心電極側から見たときの平面図である。
(第1実施形態)
この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグを図1に示す。図1はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグ1の一部断面全体説明図である。なお、図1では紙面下方すなわち後述する接地電極が配置されている側を軸線Oの先端方向、紙面上方を軸線Oの後端方向として説明する。
このスパークプラグ1は、図1に示されるように、軸線O方向に沿って延びる軸孔2を有する略円筒形状の絶縁体3と、前記軸孔2内の先端側に設けられた略棒状の中心電極4と、前記軸孔2内の後端側に設けられた端子金具5と、前記軸孔2内の前記中心電極4と前記端子金具5との間に配置された接続部6と、前記絶縁体3の外周に設けられ、前記軸線O方向先端側から後端側に延びる略円筒形状の主体金具7と、前記主体金具7の先端側端部に固定された基端部及び前記中心電極4の先端面33と間隙Gを介して対向する先端部を有する接地電極8とを備える。
絶縁体3は、軸線O方向に延びる軸孔2を有し、略円筒形状を有している。絶縁体3は、後端側胴部11と、大径部12と、先端側胴部13、脚長部14とを備えている。後端側胴部11は、端子金具5を収容し、端子金具5と主体金具7とを絶縁する。大径部12は、該後端側胴部11よりも先端側に配置され、径方向外向きに突出している。先端側胴部13は、該大径部12の先端側に配置され、大径部12より小さい外径を有し、接続部6を収容する。脚長部14は、該先端側胴部13の先端側に配置され、先端側胴部13より小さい外径及び内径を有し、中心電極4を収容する。絶縁体3は、絶縁体3における先端側端部が主体金具7の先端側端部から突出した状態で、主体金具7に固定されている。絶縁体3は、機械的強度、熱的強度、電気絶縁性を有する材料で形成される。
接続部6は、軸孔2内の中心電極4と端子金具5との間に配置され、中心電極4及び端子金具5を軸孔2内に固定すると共にこれらを電気的に接続する。
主体金具7は、略円筒形状を有しており、絶縁体3を内装することにより絶縁体3を保持する。主体金具7における先端方向の外周面にはネジ部24が設けられている。このネジ部24を利用して図示しない内燃機関のシリンダヘッドにスパークプラグ1が装着される。主体金具7は、ネジ部24の後端側にフランジ状のガスシール部25を有し、ガスシール部25の後端側にスパナやレンチ等の工具を係合させるための工具係合部26、工具係合部26の後端側に加締め部27を有する。ネジ部24の内周面における先端側は、脚長部14に対して空間を有するように配置されている。主体金具7は、導電性の鉄鋼材料、例えば、低炭素鋼により形成されることができる。
端子金具5は、中心電極4と接地電極8との間で火花放電を行うための電圧を外部から中心電極4に印加するための端子である。端子金具5は、絶縁体3の後端側からその一部が露出した状態で軸孔2内に挿入されて接続部6により固定されている。端子金具5は、低炭素鋼等の金属材料により形成されることができる。
中心電極4は、接続部6に接する後端部28と、前記後端部28から先端側に延びる棒状部29とを有する。中心電極4は、その先端が絶縁体3の先端から突出した状態で絶縁体3の軸孔2内に固定され、主体金具7に対して絶縁保持されている。中心電極4における後端部28と棒状部29とは、Ni合金等の中心電極4に使用される公知の材料で形成されることができる。中心電極4は、2層構造であり、Ni合金等により形成される外層31と、外層31を形成するNi合金等よりも熱伝導率の高い材料により形成され、該外層31の内部の軸心部に同心に埋め込まれるように形成されてなる芯部32とにより形成される。芯部32を形成する材料としては、例えば、Cu、Cu合金、Ag、Ag合金、純Ni等を挙げることができる。なお、中心電極4は、単層構造でNi合金等により形成されてもよい。
次に、この発明の特徴部分である接地電極について説明する。
図2に示すように、接地電極8は、例えば、略角柱形状を有し、基端部15が主体金具7の先端側端部に固定され、途中で略L字状に屈曲され、先端部16が中心電極4の先端面33との間に間隙Gを介して対向するように設けられている。接地電極8は、基端部15における主体金具7の径方向外側の部位から先端部16に向かって延びる外側面43と、外側面43に隣接する2つの側面44a,44bと、基端部15における主体金具7の径方向内側の部位から先端部16に向かって延びる内側面45と、これら4つの面に隣接する先端面46とを有する。この実施形態における間隙Gは、中心電極4の先端面33と前記先端面33に対向する接地電極8の内側面45との最短距離である。この間隙Gは、通常、0.3〜1.5mmに設定される。
接地電極8は、Niの含有率が96質量%以上である母材41と、前記母材41よりも外表面側に形成された層であって、外表面におけるCrの含有率が15質量%以上である保護層42とを有する。保護層42は、保護層42の外表面に直交する断面において、保護層42の外表面における、単位長さあたりの結晶粒の界面の数Nが4個/mm以上であり、好ましくは8個/mm以上である。
接地電極8は、外表面におけるCrの含有率が15質量%以上である保護層42を有し、保護層42の外表面における、単位長さあたりの結晶粒の界面の数Nが4個/mm以上であるので、前記数Nが4個/mm未満である場合に比べて接地電極8の内部から外表面にCrを速やかに拡散させて接地電極8の外表面にCrの酸化物被膜を速やかに形成させることができる。その結果、この接地電極8は耐アルコール腐食性に優れる。
発明者らは、貴金属チップを用いずに、接地電極の耐火花消耗性と耐アルコール腐食性とを高い次元で両立するためには、接地電極の材料組成の最適化だけでは困難であると考え、耐火花消耗性に優れる高Ni合金で形成された母材を、耐アルコール腐食性を有するCrの含有率が多い低Ni合金で形成された被覆層で被覆した2層構造を有する接地電極を試作した。そして、この2層構造を有する接地電極を備えたスパークプラグに対してアルコール燃料を使用して耐久試験を行ったところ、予想に反して、短時間でアルコール燃料により腐食してしまった。この原因を明らかにするために、Crの含有率が多い低Ni合金で形成された単層の接地電極と2層構造を有する接地電極との違いについて検討したところ、アルコール燃料を使用した耐久試験前後のいずれにおいても、2層構造における被覆層の結晶粒径が、単層の接地電極の結晶粒径よりも大きいことが確認された。2層構造を有する接地電極の被覆層の結晶粒径が大きいのは、2層構造の接地電極を製造する際に、母材と被覆層との密着性を上げる目的で、高温での熱処理を行うためであると考えられる。この熱処理により、被覆層の結晶粒径が大きくなり、それによって接地電極の内部から表面へのCrの拡散経路が少なくなり、その結果、接地電極の表面にCrの酸化被膜を形成する速さが単層の接地電極の場合よりも遅くなったことから、2層構造の接地電極は予想に反して短時間で腐食してしまったと考えられる。特に、母材のNiの含有率が大きいほど被覆層の結晶が成長し易く、耐火花消耗性を向上させようとして母材のNi含有率を上げるほど、被覆層の結晶が粒成長し、耐アルコール腐食性が低下してしまうことが分かった。
検討した結果、発明者らは、2層構造を有する接地電極を形成する際に、被覆層すなわち本発明における保護層42の結晶粒成長を抑制することに成功し、保護層の外表面における、単位長さあたりの結晶粒の界面の数Nを4個/mm以上、好ましくは8個/mm以上とすると、接地電極8の内部から外表面にCrを速やかに拡散させてCrの酸化被膜を速やかに形成させることができ、その結果、耐アルコール腐食性に優れた接地電極8とすることができることを見出した。
保護層42の外表面における、単位長さあたりの結晶粒の界面の数Nは、熱処理前における母材41の加工率、熱処理温度、熱処理時間、母材41及び保護層42における希土類元素の含有率等を変更することにより、調整することができる。
保護層42の外表面における、単位長さあたりの結晶粒の界面の数Nは、次のようにして求めることができる。まず、接地電極8の先端面46から基端部15側に2mmの位置で、保護層42の外表面に直交するように接地電極8を切断し、切断面を得る。金属顕微鏡を用いてこの切断面の端縁すなわち保護層42の外表面に相当する領域を観察し、1mmあたりの結晶粒界の数を数える。このとき、金属間化合物、窒化物、酸化物、炭化物、及びその他析出物が観察された場合には、これらの粒界を数えないようにする。
保護層42は、外表面におけるCrの含有率が15質量%以上の金属材料である。保護層42は、Cr以外の元素が含有される場合には、含有される元素はNiが好ましい。保護層42がNiを含有すると、Niを多く含有する母材41との密着性が向上する。保護層42は、外表面におけるCrの含有率が最大100質量%であってもよい。接地電極8は、母材41よりも外表面側に、Crの含有率が15質量%以上である保護層42を有することにより、内燃機関の稼働中に接地電極8の外表面に強固なCrの酸化被膜を形成させることができる。また、保護層42の外表面におけるCrの含有率が15質量%以上であると、内燃機関の稼働中に結晶が粒成長するのを抑制することができる。したがって、保護層42の外表面におけるCrの含有率が15質量%以上であると、接地電極8の外表面にCrの酸化被膜を形成させることができ、アルコール燃料による接地電極8の腐食を抑制することができる。保護層42は、外表面におけるCrの含有率が40質量%以下である金属材料により形成されることが好ましい。保護層42は、外表面におけるCrの含有率が40質量%以下であると、接地電極8の表面における割れを抑制することができ、また、耐アルコール腐食性の劣化を抑制することができる。
保護層42は、Ni及びCr以外の元素として、希土類元素等から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。希土類元素としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuを挙げることができる。保護層42は、希土類元素のうちの少なくとも1種を含有し、希土類元素の合計含有率が0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。保護層42が、希土類元素のうちの少なくとも1種を合計で0.01質量%以上含有すると、希土類元素をCrの酸化被膜と保護層42との界面近傍に速やかに拡散させて、Crの酸化被膜の保護層42への密着性を向上させることができる。また、保護層42が、希土類元素のうちの少なくとも1種を合計で0.01質量%以上含有すると、内燃機関の稼働中に結晶が粒成長するのを抑制することができる。したがって、接地電極8の耐アルコール腐食性を向上させることができる。保護層42が希土類元素のうちの少なくとも1種を合計で0.5質量%以下含有すると、接地電極8の基端部15を主体金具7の先端側端部に固定した後に、先端部16を中心電極4の先端面33に近づけるように屈曲させる際に、保護層42に割れが発生するのを抑制することができる。
接地電極8は、母材41の表面の少なくとも一部に保護層42を有する。保護層42は、外表面におけるCrの含有率が最も高く、母材41と保護層42との隣接部においては、保護層42におけるCrが母材41に拡散することにより、Crの含有率は外表面から内部に向かって次第に減少する。Crの含有率が5質量%以上である領域を保護層42とすると、保護層42の厚さは0.02mm以上0.2mm以下であることが好ましい。Crの含有率が5質量%以上である保護層42の厚さが0.02mm以上であると、母材41がアルコール燃料由来の酸素で酸化されるのを抑制し、耐アルコール腐食性を向上させることができる。また、Crの含有率が5質量%以上である保護層42の厚さが0.2mm以下であると、保護層42の割れ及び脱落を抑制し、耐火花消耗性の低下を抑制することができる。したがって、Crの含有率が5質量%以上である保護層42の厚さが0.02mm以上0.2mm以下であると、耐アルコール腐食性を向上させ、また、耐火花消耗性を維持することができる。なお、Crの含有率が5質量%以上である領域を保護層42としたとき、保護層42より内側の領域であって、Crの含有率が5質量%未満であり、かつNiの含有率が96質量%未満である領域を拡散層と称することができる。拡散層の厚さは、2μm〜8μmの範囲にあるのが好ましい。拡散層の厚さが前記範囲内にあると、母材41と保護層42との密着性を高めることができ、また、耐火花消耗性を維持することができる。
保護層42の外表面におけるCrの含有率、希土類元素の含有率、及びCrの含有率が5質量%以上である保護層42の厚さは、FE−EPMAに付属されたWDS(Wavelength Dispersive X-ray Spectrometer)を用いて、次のようにして求めることができる。保護層42の外表面におけるCrの含有率は、接地電極8の先端面46から基端部15側に2mmの位置で、接地電極8の幅方向の中心において、加速電圧15kV、スポット径1μmにて1辺100μmの正方形の領域でエリア分析を行うことにより、測定する。Crの含有率が5質量%以上である保護層42の厚さは、まず、接地電極8の先端面46から基端部15側に2mmの位置で、保護層42の外表面に直交するように接地電極8を切断し、切断面を得る。この切断面において、加速電圧20kV、スポット径1μmにて、保護層42の外表面から内部に向かってライン分析を行う。Crの含有率が5質量%以上である領域の外表面からの距離を測定し、これをCrの含有率が5質量%以上である保護層42の厚さとする。希土類元素の含有率は、Crの含有率が5質量%以上である保護層42の厚さ方向の中心で、加速電圧15kV、スポット径1μmにて1辺10μmの正方形の領域でエリア分析を行うことにより、測定する。
保護層42は、燃焼室内において、アルコール燃料がかかり易く、かつ、火花放電に寄与しない、母材41の表面に設けられるのが好ましい。図2に示すように、この実施形態では、中心電極4の先端面33を軸線O方向に沿って接地電極8に投影したときに形成される投影領域47以外の母材41の表面全体に保護層42が設けられている。接地電極8の側面44a,44bのうち、中心電極4の先端面33より軸線O方向に先端側の部位は、アルコール燃料がかかり易いので、少なくともこの部位に保護層42が設けられていると、耐アルコール腐食性が向上する点で好ましい。また、母材41は、保護層42に比べて熱引きが良好であり、耐火花消耗性に優れるので、火花放電が行われる部位すなわち中心電極4の先端面33に対向する投影領域47に保護層42が設けられていず、母材41が露出していると、耐火花消耗性が向上する点で好ましい。
母材41は、Niの含有率が96質量%以上である金属材料により形成される。母材41は、Ni以外の元素の含有率が4質量%以下であるので、熱伝導性に優れる。したがって、接地電極8は、火花放電により接地電極8が熱を受熱した場合に、先端部16から基端部15及び主体金具7に向かって熱を速やかに伝導することができ、所謂熱引きが良好であるので、耐火花消耗性に優れる。
母材41は、Ni以外の元素として、希土類元素等から選ばれる少なくも1種を含有することができる。希土類元素としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuを挙げることができる。母材41は、希土類元素のうちの少なくとも1種を含有し、希土類元素の合計含有率が0.05質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。母材41が、希土類元素のうちの少なくとも1種を合計で0.05質量%以上含有すると、希土類元素をCrの酸化被膜と保護層42との界面近傍に速やかに拡散させて、Crの酸化被膜の保護層42への密着性を向上させることができる。また、母材41が、希土類元素のうちの少なくとも1種を合計で0.05質量%以上含有すると、内燃機関の稼働中に結晶が粒成長するのを抑制することができる。その結果、接地電極8の耐アルコール腐食性を向上させることができる。保護層42が希土類元素を含有せずに母材41のみが希土類元素を含有している場合であっても、接地電極8の耐アルコール腐食性を向上させる効果が得られるが、母材41と保護層42との両方に希土類元素を含有させると、保護層42が脆くならない程度の希土類元素を保護層42に含有させて、耐アルコール腐食性を向上させる効果を持続できる点で好ましい。母材41が希土類元素のうちの少なくとも1種を合計で0.5質量%以下含有すると、母材41、保護層42、及びCrの酸化被膜が脆くなることを防止することができる。
母材41のNiの含有率、及び希土類元素の含有率は、FE−EPMAに付属されたWDS(Wavelength Dispersive X-ray Spectrometer)を用いて、次のようにして求めることができる。まず、接地電極8の先端面46から基端部15側に2mmの位置で、接地電極8の外表面に直交するように接地電極8を切断し、切断面を得る。母材41のNiの含有率は、この切断面における接地電極8の一方の端部から他方の端部に向かって、加速電圧20kV、スポット径10μmにてライン分析を行うことにより測定し、Niの含有率が96質量%以上の領域を母材41とする。母材41の希土類元素の含有率は、この切断面における接地電極8の厚さ方向の中心において、加速電圧15kV、スポット径10μmにて1辺1mmの正方形の領域でエリア分析を行うことにより、測定する。
母材41は、結晶粒の直径が150μm以下であることが好ましい。母材41の結晶粒の直径が150μm以下であると、母材41に含有される希土類元素が接地電極8の表面に形成されるCrの酸化被膜と保護層42との界面近傍に拡散し易くなるので、Crの酸化被膜の密着性が向上する。また、母材41の結晶粒の直径が150μm以下であると、母材41に含有される希土類元素が保護層42に拡散し易くなるので、より速やかに保護層42の結晶粒成長を抑制する効果を発揮することができ、接地電極8の表面へのCrの拡散経路の減少を抑制することができる。したがって、母材41の結晶粒の直径が150μm以下であると、耐アルコール腐食性をより一層向上させることができる。
母材41の結晶粒の直径は、加工率、熱処理条件等によって調整することができる。
母材41の結晶粒の直径は、次のようにして求めることができる。まず、接地電極8の先端面46から基端部15側に2mmの位置で、保護層42の外表面に直交するように接地電極8を切断し、切断面を得る。金属顕微鏡を用いてこの切断面における接地電極8の厚さ方向の中心の撮影画像を得て、この撮影画像において1辺1mmの正方形の領域に、縦方向及び横方向にそれぞれ0.2mm間隔で線分を各6本描く。合計12本の線分に交差する結晶粒界の数を数え、以下の式(1)にしたがって結晶粒径を算出する。
結晶粒径(μm)=(1000μm×12本)/(交差した結晶粒界の数−12)
・・・式(1)
(第2実施形態)
この実施形態のスパークプラグ101は、接地電極108における保護層142が設けられている領域が異なること以外は第1実施形態のスパークプラグ1と同様の構成を有する。図3に示すように、この実施形態における接地電極108は、側面144a,144bと外側面143のうち中心電極104の先端面133より軸線O方向に先端側の部位と接地電極108の先端面146とに設けられている。すなわち、接地電極108における内側面145は母材141が露出している。この実施形態のスパークプラグ101は、接地電極108における内側面145に保護層142が設けられていず、母材141が露出しているので、内側面に保護層が設けられている場合に比べて火花消耗による熱を速やかに主体金具107に熱伝導することができる。
(第3実施形態)
この実施形態のスパークプラグ201は、接地電極208における保護層242が設けられている領域が異なること以外は第1実施形態のスパークプラグ1と同様の構成を有する。図4に示すように、この実施形態における接地電極208は、側面244a,244bのうち中心電極204の先端面233より軸線O方向に先端側の部位に設けられている。この実施形態のスパークプラグ201は、接地電極208におけるアルコール燃料がかかりやすい部位のみに保護層242が設けられているので、母材の表面全体に保護層が設けられている場合に比べて火花消耗による熱を速やかに主体金具207に熱伝導することができる。
スパークプラグ201は、例えば次のようにして製造される。まず、この発明の特徴部分である接地電極208の製造方法について説明する。
母材241と保護層242との2層構造を有する接地電極208を形成する方法としては、例えば、母材241にCrめっきをする方法、及び母材241にクロマイジングをする方法等を挙げることができる。母材241にCrめっきをする方法では、まず、Niの含有率が96質量%以上である高Ni合金のコイル材を準備する。次いで、コイル材を伸線加工しつつCrめっき処理を行う。次いで、Crめっき処理を行ったコイル材をArガス等の不活性ガス雰囲気にて、900℃〜1100℃の温度範囲の所定の温度で2時間〜10時間維持する熱処理を行う。熱処理によって、母材241と保護層242との間に拡散層が形成され、これによって母材241と保護層242との密着性を高めることができる。なお、前記拡散層の厚さは、Crの含有率が5質量%未満であり、かつNiの含有率が96質量%未満の領域の厚さである。次いで、コイル材を所望の長さに切断し、接地電極208を形成する。母材241にクロマイジングをする方法では、まず、Niの含有率が96質量%以上である高Ni合金製で、長さ2〜3cm程度のピース材を準備する。このピース材を適宜伸線加工し、大型炉でクロマイジング処理を行う。次いで、主体金具207に接合する端部を適宜切断し、接地電極208を形成する。
なお、Crめっき及びクロマイジングを行う際に、母材241の表面の所望の位置にマスキングをすることにより、母材241の表面における所望の位置に保護層242を設けることができる。また、母材241の表面にCrめっき及びクロマイジングを行った後に、一部の保護層242を切削及び切断等して除去することにより、母材241の表面における所望の位置に保護層242を設けることができる。また、コイル材及びピース材の加工率、熱処理温度、熱処理時間、コイル材及びピース材の組成、めっき浴の組成等のCrめっき処理の条件、クロマイジング処理条件等を適宜変更することにより、母材241と保護層242との間の密着性を維持しつつ、母材241の結晶粒の直径、保護層242の外表面における、単位長さあたりの結晶粒の数Nを調整することができる。
次いで、所定の形状に塑性加工等によって形成した主体金具207の端面に、接地電極208の一端部を電気抵抗溶接又はレーザ溶接等によって接合する。次いで、接地電極208が接合された主体金具7にZnめっき又はNiめっきを施す。Znめっき又はNiめっきの後に3価クロメート処理を行ってもよい。
中心電極204は、カップ状に形成したNi合金等からなる外材に、外材より熱伝導率の高いCu合金等からなる内材を挿入し、押し出し加工等の塑性加工にて、外層の内部に芯部を有する中心電極204を形成する。
一方、セラミック等を所定の形状に焼成することによって絶縁体203を作製し、この絶縁体203の軸孔202内に中心電極204を挿設し、接続部206を形成する組成物を前記軸孔202内に予備圧縮しつつ充填する。次いで前記軸孔202内の後端側端部から端子金具205を圧入しつつ前記組成物を圧縮加熱する。こうして前記組成物が焼結して接続部206が形成される。次いで接地電極208が接合された主体金具207に、この中心電極204等が固定された絶縁体203を組み付ける。最後に接地電極208の先端部216を中心電極204側に折り曲げて、接地電極208の先端部216内側面245と中心電極204の先端面233とが対向するようにして、スパークプラグ201が製造される。
この発明に係るスパークプラグ1、101、201は、自動車用の内燃機関例えばガソリンエンジン等の点火栓として使用され、内燃機関の燃焼室を区画形成するヘッド(図示せず)に設けられたネジ穴に前記ネジ部24、124、224が螺合されて、所定の位置に固定される。この発明に係るスパークプラグ1、101、201は、如何なる内燃機関にも使用することができる。この発明に係るスパークプラグ1、101、201は、耐アルコール腐食性と耐火花消耗性とを両立させた接地電極8、108、208を備えているので、アルコール燃料を使用する内燃機関に特に好適である。
この発明に係るスパークプラグは、前述した実施例に限定されることはなく、本発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
(スパークプラグ試験体の作製)
高Ni合金製の母材にCrめっき処理を行うことにより2層構造を有する接地電極を形成した。具体的には、Niの含有率が96質量%以上である高Ni合金製のコイル材を準備し、このコイル材を伸線加工しつつCrめっき処理を行った。Crめっき処理を行ったコイル材をArガス雰囲気にて、900℃〜1200℃の温度範囲で2時間〜20時間維持する熱処理を行った。Crめっき処理により形成された保護層における結晶粒の大きさは、コイル材の加工率及び組成、Crめっき処理条件、及び熱処理条件を適宜変更することにより調整した。次いで、コイル材を所定の長さに切断し、接地電極の内側面及び外側面となる面を切削し、両側面に保護層を有する接地電極を作製した。
作製した接地電極を準備した主体金具に接合し、この主体金具に中心電極及び端子金具を固定した絶縁体を組み付けた。最後に、接地電極の先端部を中心電極側に折り曲げて接地電極の先端部内側面と中心電極の先端面とが対向するようにして、図3に示す構造を有するスパークプラグ試験体を製造した。
製造したスパークプラグのねじ径はM14、主体金具の先端から突出している絶縁体の長さは3mm、絶縁体の先端から突出している中心電極の長さは3mm、中心電極の先端面と接地電極との間隙Gは0.85mm、中心電極の先端面における直径は2.5mm、接地電極の外側面及び内側面の幅は2.8mm、接地電極の側面の幅は1.6mmであった。
(接地電極の組成、保護層の厚さの測定)
接地電極における母材及び保護層の組成は、FE−EPMA(日本電子株式会社製JXA−8500F)に付属されたWDSを用いて、測定した。まず、作製した接地電極の先端面から基端部側に2mmの位置で、保護層の外表面に直交するように接地電極を切断し、切断面を得た。
母材のNiの含有率は、この切断面における一方の端部から他方の端部に向かって、加速電圧20kV、スポット径10μmにてライン分析を行うことにより測定し、分析値の最大値を表1を示した。
母材の希土類元素の含有率は、この切断面における接地電極の厚さ方向の中心において、加速電圧15kV、スポット径10μmにて1辺1mmの正方形の領域でエリア分析を行うことにより、測定した。
Crの含有率が5質量%以上である保護層の厚さは、この切断面において、加速電圧20kV、スポット径1μmにて、保護層の外表面から内部に向かってライン分析を行い、Crの含有率が5質量%以上である領域の外表面からの距離を測定した。
保護層の希土類元素の含有率は、測定した保護層の厚さ方向の中心において、加速電圧15kV、スポット径1μmにて1辺10μmの正方形の領域でエリア分析を行うことにより、測定した。
保護層の外表面におけるCrの含有率は、接地電極の先端面から基端部側に2mmの位置で、接地電極の幅方向の中心において、加速電圧15kV、スポット径1μmにて1辺100μmの正方形の領域でエリア分析を行うことにより、測定した。結果を表1に示す。
(保護層の外表面における結晶粒界数の測定)
まず、作製した接地電極の先端面から基端部側に2mmの位置で、保護層の外表面に直交するように接地電極を切断し、切断面を得た。金属顕微鏡を用いて、この切断面の端縁すなわち保護層の外表面に相当する領域を観察し、1mm当たりの結晶粒界の数を数えた。これを保護層の外表面における結晶粒界の数とした。結果を表1に示す。
(母材の結晶粒界径の測定)
保護層の外表面における結晶粒界数を求めたときの切断面において、金属顕微鏡を用いて、接地電極の厚さ方向における中心の撮影画像を得た。この撮影画像において1辺1mmの正方形の領域に、縦方向及び横方向にそれぞれ0.2mm間隔で線分を6本描いた。合計12本の線分に交差する結晶粒界の数を数え、以下の式(1)にしたがって結晶粒径を算出した。結果を表1に示す。
結晶粒径(μm)=(1000μm×12本)/(交差した結晶粒界の数−12)
・・・式(1)
(耐久試験方法)
製造したスパークプラグ試験体を、2000ccのアルコールを燃料とするエンジンに取り付け、スロットル全開、エンジンの回転数6000rpmで最大800時間の運転を行う耐久試験を行った。
(耐アルコール腐食性の評価方法)
耐久試験において、運転時間100時間毎に接地電極の外観を拡大鏡(100倍)で観察し、孔食の有無を調べた。以下の基準にしたがって耐アルコール腐食性を評価した。結果を表1に示す。
G:運転100時間で孔食が発生
F:運転200時間で孔食が発生
E:運転400時間で孔食が発生
D:運転500時間で孔食が発生
C:運転600時間で孔食が発生
B:運転700時間で孔食が発生
A:運転800時間で孔食が発生
(耐火花消耗性の評価方法)
耐久性試験後(運転800時間後)の中心電極の先端面と接地電極との間隙Gをピンケージで測定した。以下の基準にしたがって耐火花消耗性を評価した。結果を表1に示す。
C:間隙Gが1.21mm以上
B:間隙Gが1.11mm〜1.20mm
A:間隙Gが1.10mm以下
(加工性の評価方法)
接地電極を主体金具に抵抗溶接した後に、治具を用いて接地電極を中心電極が配置されている側に45°の角度まで折り曲げた。折り曲げた後の接地電極の基端部を拡大鏡(200倍)で観察し、割れの有無を調べた。以下の基準にしたがって加工性を評価した。結果を表1に示す。
B:接地電極の外側面に割れがある場合
A:接地電極に割れがない場合
Figure 0006280899
表1に示すように、本発明の範囲内にある試験番号17〜60のスパークプラグ試験体は、耐アルコール腐食性の評価結果がA〜E、耐火花消耗性の評価結果がAであり、耐アルコール腐食性と耐火花消耗性とが共に優れていたのに対し、本発明の範囲外にある試験番号1〜16のスパークプラグ試験体は、母材のNi含有率、保護層の外表面におけるCrの含有率、保護層の外表面における結晶粒界の数の少なくとも一つが請求項1に記載の数値範囲外にあり、耐アルコール腐食性の評価結果がF又はG、耐火花消耗性の評価結果がA〜Cであり、耐アルコール腐食性と耐火花消耗性とが両立できていなかった。
保護層の外表面における結晶粒界の数が4〜7個/mmである試験番号17〜20のスパークプラグ試験体は、耐アルコール腐食性の評価結果がEであるのに対し、保護層の外表面における結晶粒界の数が8〜90個/mmである試験番号21及び24のスパークプラグ試験体は、耐アルコール腐食性の評価結果がDであり、保護層の外表面における結晶粒界の数が8個/mm以上になると耐アルコール腐食性が向上した。
母材の希土類元素の含有率が0〜0.04質量%の範囲内にある試験番号21〜24のスパークプラグ試験体は、耐アルコール腐食性の評価結果がDであるのに対し、母材の希土類元素の含有率が0.05質量%〜0.5質量%の範囲内にある試験番号25〜28のスパークプラグ試験体は、耐アルコール腐食性の評価結果がCであり、母材の希土類元素の含有率が0.05質量%以上になると耐アルコール腐食性が向上した。
母材の結晶粒径が160μm〜250μmである試験番号25〜28のスパークプラグ試験体は、耐アルコール腐食性の評価結果がCであるのに対し、母材の結晶粒径が150μm以下である試験番号29〜32のスパークプラグ試験体は、耐アルコール腐食性の評価結果がBであり、母材の結晶粒径が150μm以下になると耐アルコール腐食性が向上した。
保護層の希土類元素の含有率が0質量%である試験番号29〜32のスパークプラグ試験体は、耐アルコール腐食性の評価結果がBであるのに対し、保護層の希土類元素の含有率が0.01質量%〜0.5質量%の範囲内にある試験番号33〜36のスパークプラグ試験体は、耐アルコール腐食性の評価結果がAであり、保護層の希土類元素の含有率が0.01質量%以上になると耐アルコール腐食性が向上した。
保護層の希土類元素の含有率が0.01質量%〜0.5質量%の範囲内にある試験番号33〜36のスパークプラグ試験体は、加工性の評価結果がAであるのに対し、保護層の希土類元素の含有率が0.6質量%〜3.5質量%の範囲内にある試験番号57〜60のスパークプラグ試験体は、加工性の評価結果がBであり、保護層の希土類元素の含有率が0.6質量%以上になると加工性が低下した。
Crの含有率が5質量%以上の保護層の厚さが0.01μmである試験番号1及び2のスパークプラグ試験体は、耐アルコール腐食性の評価結果がGであるのに対し、Crの含有率が5質量%以上の保護層の厚さが0.02μm〜0.2μmの範囲内にある試験番号13及び14のスパークプラグ試験体は、耐アルコール腐食性の評価結果がFであり、保護層のCrの含有率が5質量%以上の領域の厚さが0.02μm以上になると耐アルコール腐食性が向上した。
Crの含有率が5質量%以上の保護層の厚さが0.02μm〜0.2μmの範囲内にある試験番号13及び14のスパークプラグ試験体は、耐火花消耗性の評価結果がBであるのに対し、Crの含有率が5質量%以上の保護層の厚さが0.21μm〜0.5μmの範囲内にある試験番号3及び4のスパークプラグ試験体は、耐火花消耗性の評価結果がCであり、Crの含有率が5質量%以上の保護層の厚さが0.21μm以上になると耐火花消耗性が低下した。
1、101、201 スパークプラグ
2、102、302 軸孔
3、103、203 絶縁体
4、104、204 中心電極
5 端子金具
6 接続部
7、107、207 主体金具
8、108、208 接地電極
11 後端側胴部
12 大径部
13 先端側胴部
14 脚長部
15、115、215 基端部
16、116、216 先端部
24 ネジ部
25 ガスシール部
26 工具係合部
27 加締め部
28 後端部
29 棒状部
31、131、231 外層
32、132、232 芯部
33、133、233 先端面
41、141、241 母材
42、142、242 保護層
43、143、243 外側面
44a、44b、144a、144b、244a、244b 側面
45、145、245 内側面
46、146、246 先端面
47 投影領域
G 間隙

Claims (9)

  1. 軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、
    前記軸孔内の先端側に設けられた中心電極と、
    前記絶縁体の外周に設けられ、前記軸線方向先端側から後端側に延びる筒状の主体金具と、
    前記主体金具の先端側端部に固定された基端部及び前記中心電極の先端面と間隙を介して対向する先端部を有する接地電極と、
    を備えるスパークプラグであって、
    前記接地電極は、Niの含有率が96質量%以上である母材と、前記母材よりも外表面側に形成された層であって、外表面におけるCrの含有率が15質量%以上である保護層とを有し、
    前記保護層の外表面に直交する断面において、前記保護層の外表面における、単位長さあたりの結晶粒の界面の数Nが4個/mm以上であることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記数Nが8個/mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
  3. 前記母材は、希土類元素のうちの少なくとも1種を含有し、希土類元素の合計含有率が0.05質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記母材は、結晶粒の直径が150μm以下であることを特徴とする請求項3に記載のスパークプラグ。
  5. 前記保護層は、希土類元素のうちの少なくとも1種を含有し、希土類元素の合計含有率が0.01質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
  6. 前記接地電極は、前記基端部における前記主体金具の径方向外側の部位から前記先端部に向かって延びる外側面と、前記外側面に隣接する側面とを有し、
    前記保護層は、前記側面のうち前記中心電極の先端面より先端側の部位に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
  7. 前記保護層は、Crの含有率が5質量%以上であり、かつ、厚さが0.02mm以上0.2mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
  8. 前記保護層はさらに、前記外側面のうち少なくとも前記中心電極の先端面の位置より先端側に設けられることを特徴とする請求項6又は7に記載のスパークプラグ。
  9. 前記中心電極の先端面を前記軸線方向に沿って前記接地電極に投影したときに形成される投影領域以外の前記母材の表面全体に前記保護層が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
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