JP5019797B2 - 犠牲陽極材およびアルミニウム合金複合材 - Google Patents
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Description
この自動車用熱交換器は、冷却水を通すチューブ管(1)にフィン(2)を配置し、チューブ管(1)の両端にヘッダープレート(3)を取り付けて、コア(4)を組み立て、ろう付け後にヘッダープレート(3)にバッキング(6)を介して樹脂タンク(5A),(5B)を取り付けてなる。
図1に示す自動車用ラジエーター関して説明したJIS3003合金を芯材とし、冷却水側にZnが添加されているJIS7072合金を犠牲陽極材としてクラッドし、外気側にJIS4045合金をろう材としてクラッドした厚さ0.2〜0.4mmのアルミニウム合金複合材を用いたチューブ(1)では、そのような環境では十分な防食効果が得られず、早期に貫通孔食を発生させてしまう問題を発生させていた。
2Al+4H2O→2AlO2 −+3H2+2H+・・・・・(1)
上記(1)の反応式をおのおのの素反応に分解すると以下の反応式(2),(3)になる。
Al+2H2O→AlO2 −+4H++3e−・・・・・(2)
2H2O+2e−→H2+2OH−・・・・・(3)
これら(1)〜(3)の式のうち、反応式(2)を進ませないことがアルカリ溶液中における腐食溶解反応を抑制することになる。
以下にこの様にアルミニウム表面に緻密な皮膜を形成することを基本的な要請とし、アルカリ環境における板厚方向への腐食抑制を強化するべく構成された犠牲陽極材の成分の限定理由について述べる。
この化合物は中性環境においては孔食の起点となり、腐食点を分散させることにより犠牲陽極材の腐食を横広がりにする効果がある。またアルカリ環境においては、化合物中のAlが選択溶解することにより、金属間化合物表面にFeの水酸化物を形成する。この皮膜が形成することによりアルカリ環境化での腐食溶解を防止する。この効果が0.50%未満では十分でなく、また1.00%を越えると圧延加工性が劣る。従ってFeの添加量を0.50〜1.00%と規定した。
また鋳造時において化合物とその周辺部にVの濃淡層を形成する。この濃淡層は圧延によって伸ばされ、板厚方向にVの濃淡層を形成する。Al−V系の化合物は中性環境においては孔食の起点となり、腐食点を分散させることにより犠牲腐食を横広がりにする効果がある。またアルカリ環境においてはこのVの濃淡により、Vが濃い部分が優先的に溶解して板厚方向への腐食を抑制する。この中性、アルカリ環境で耐食性を向上させるVの添加は、0.01%未満では十分でなく、0.30%を越えるとアルカリ環境での腐食溶解量が増大する。従ってVの添加量を0.01〜0.30%と規定した。
Si:Siは、マトリックスに固溶し、またFe、Mnと金属間化合物を形成し強度向上に寄与する。その含有量が0.40%未満であると強度向上効果が無く、1.00%を越えるとろう付け時の芯材の溶融および外部耐食性に劣る。従って本発明においてはSi含有量を0.40〜1.00%と規定した。
Fe:Feは、マトリックスに固溶し、またSi、Mnと金属間化合物を形成し強度向上に寄与する。その含有量が0.25%未満であると強度向上効果がなく、1.00%を超えると複合材の芯材とした場合に、圧延加工時に端部に割れが発生し圧延加工が困難になる。従って本発明においてはFe含有量を0.25〜0.80%と規定した。
Mn:Mnはマトリックスに固溶し、またSi、Feと金属間化合物を形成し強度向上に寄与する。その含有量が0.50%未満では強度向上効果が十分でなく、1.60%を越えると複合材の芯材とした場合に、圧延加工時に端部に割れが発生し圧延加工が困難になる。従って本発明においてはMn含有量を0.50〜1.60%と規定した。
従ってTiの添加量を0.05〜0.20%と規定した。
表1に本発明例及び比較例の芯材合金成分を示す。
表2に本発明例及び比較例の犠牲陽極材合金成分を示す。
また犠牲陽極材については表2に示す各犠牲陽極材の組成の中で、No.1試験片にはG1、No.2試験片にはG2、No.3試験片にはG3、No.4試験片にはG4、No.5試験片にはG5、No.6試験片にはG6、No.7試験片にはG7、No.8試験片にはG8の組成の犠牲陽極材がそれぞれ用いられた。
またその芯材については表1に示す各種芯材のなかでNo.9及びNo.19試験片はS1組成、No.10及びNo.20試験片はS2組成、No.11及びNo.21試験片はS3組成、No.12及びNo.22試験片はS4組成、No.13及びNo.23試験片はS6組成、No.14及びNo.24試験片はS7組成、No.15及びNo.25試験片はS8組成、No.16及びNo.26試験片はS9組成、No.17及びNo.27試験片はS10組成、No.18及びNo.28試験片はS11組成の芯材を用いた複合材として構成された。
また犠牲陽極材については表2に示す各犠牲陽極材の組成の中で、No.41試験片にはG9、No.42試験片にはG10、No.43試験片にはG11、No.44試験片にはG12、No.45試験片にはG13、No.46試験片にはG14、No.47試験片にはG15、No.48試験片にはG16、No.49試験片にはG17、No.50試験片にはG18の組成の犠牲陽極材がそれぞれ用いられた。
したがって比較例複合材No.41〜No.55試験片(S5、S1、S3、S7、S9、S11)にあってはアルミニウム合金芯材におけるSi含有量を0.40〜1.00%とし、Fe含有量を0.25〜0.80%とし、Cu含有量を0.50〜1.00%とし、Mn含有量を0.50〜1.60%とすると共にTi含有量を0.05〜0.20%とする本発明のアルミニウム合金複合材の条件を充足する。しかし、No.56試験片にあっては係る本発明のアルミニウム合金複合材の条件は充足しない(S18)。
表3の構成のブレージングシートをJIS5号の試験片に加工し、窒素雰囲気化でろう付け相当の加熱(600℃×3分)を行った後、室温で7日間放置した後引張試験を行い強度を測定した。その結果を表3に示す。
犠牲陽極材のFe量が本発明の上限値である1.00%を越え1.20%である比較例No.44は圧延加工することができなかった。
表1に示す成分の各試験片を、幅30mm、長さ120mmの板に切り出し、窒素雰囲気下でろう付け相当の加熱(600℃×3.5分)を行った。その後、端部を絶縁テープ等でマスキングした後に、Cl−:195ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe2+:30ppm(pH=11に水酸化ナトリウムで調整)溶液に、腐食試験片の試験面に対して比液量6mL/cm2で試験片を浸漬し、試験液を88℃で8時間加熱した。その後、16時間放置するサイクル試験を3ヶ月間実施し、試験後の最大孔食深さを測定した。その結果を表3に示す。
表1に示す成分の各試験片を、幅30mm、長さ120mmの板に切り出し、窒素雰囲気化でろう付け相当の加熱(600℃で3.5分間保持)を行った後、端部を絶縁テープ等でマスキングした後に、Cl−:195ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe2+:30ppm溶液に、腐食試験片の試験面に対して比液量6mL/cm2で試験片を浸漬し、試験液を88℃で8時間加熱した後、16時間放置するサイクル試験を3ヶ月間実施し、試験後の最大孔食深さを測定した。なお、この腐食試験(ii)にあっては、腐食試験(i)では水酸化ナトリウムでpH=11に調整された溶液が用いられたのに対し、特にその様な調整は行われず、pH=3として行われた。
結果を表3に示す。
表3に示す成分の各試験片を、幅16mm、長さ80mmの板に切り出し、2枚の板の間にろう材面にフィン材が接するように組み付け、窒素雰囲気下でろう付け相当の加熱(600℃にて3.5分間保持)を実施して1段のミニコアを作製した。作成したミニコアの概念図を図2として示す。フィン材としてはJIS3003合金にZnを1.5%添加した板厚0.1mmのものを使用した。このミニコアのフィンが接していない面を信越化学製のシリコンシーラントでマスキングして試験に供した。試験はJIS Z2731に準じる塩水噴霧試験を2000h行った。試験後、マスキング面とフィンを削除し、フィンとフィンの間のチューブ表面の孔食深さを測定した、結果を表3に示す。
Claims (6)
- 0.40〜1.00mass%[以下同じ]のSi、0.25〜0.80%のFe、0.50〜1.00%のCu、0.50〜1.60%のMn、0.05〜0.20%のTiを含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金芯材の両面に3.00〜8.00%のZn、0.50〜1.00%のFe、0.30〜1.00%のSi、0.01〜0.05%のTi、0.01〜0.30%のVを含み残部Al及び不可避不純物からなる犠牲陽極材をクラッドしたことを特徴とするアルミニウム合金複合材。
- 0.40〜1.00mass%のSi、0.25〜0.80%のFe、0.50〜1.00%のCu、0.50〜1.60%のMn、0.05〜0.20%のTiを含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金芯材の片面に3.00〜8.00%のZn、0.50〜1.00%のFe、0.30〜1.00%のSi、0.01〜0.05%のTi、0.01〜0.30%のVを含み残部Al及び不可避不純物からなる犠牲陽極材をクラッドしたことを特徴とするアルミニウム合金複合材。
- アルミニウム合金芯材の組成が、0.40〜1.00%のSi、0.25〜0.80%のFe、0.50〜1.00%のCu、0.50〜1.60%のMn、0.05〜0.20%のTiを含有し、さらに0.05〜0.20%のCr、0.05〜0.20%のZrのうち1種または2種以上を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアルミニウム合金複合材。
- 芯材の片面にろう材を重ね合わせた請求項2又は請求項3に記載のアルミニウム合金複合材。
- 引っ張り試験での強度が134〜178MPaのブレージングシートである請求項4記載のアルミニウム合金複合材。
- 自動車用熱交換器用である請求項1〜請求項5に記載のいずれか1に記載のアルミニウム合金複合材。
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