JP4238957B2 - 強度および耐食性に優れた熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
強度および耐食性に優れた熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシート Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、強度および耐孔食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートに関し、さらに詳しくはラジエータやヒータコアなどの主に自動車用熱交換器に使用されるチューブ材として使用されるアルミニウム合金ブレージングシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車のラジエータやヒーターコアのチューブ材としては、JIS 3003Al−Mn系アルミニウム合金を芯材とし、この芯材の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、前記芯材の他方の片面に、犠牲陽極皮材として芯材よりも卑なJIS 7072からなるAl−Zn系アルミニウム合金をクラッドした3層のアルミニウム合金ブレージングシートが使用されている。このアルミニウム合金ブレージングシートは、強度が十分でなく、さらに酸性環境およびアルカリ性環境での耐食性が十分でないために、近年の自動車の低燃費化に伴って要求される熱交換器の軽量化、それに伴って要求されるチューブの高強度化・薄肉化に対する要求を満たすことができなかった。
【0003】
前記熱交換器の軽量化に伴うチューブの高強度化・薄肉化に対して、各種のアルミニウム合金ブレージングシートが提案されている。例えば、特開平5−209246号公報には、アルミニウム合金芯材の片面に芯材よりも電位が卑なTi:0.05〜0.3%、Zn:0.5〜3%、Mg:0.1〜5%を含有し、さらに必用に応じてCa:0.05〜0.3%、Li:0.05〜0.3%の1種または2種を含有するAl−Zn−Ti系合金を犠牲陽極皮材としてクラッドし(ただし、%はいずれも質量%を示す。以下同じ)、前記芯材の他方の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドしてなるアルミニウム合金ブレージングシートが記載されている。このアルミニウム合金ブレージングシートはさらなる薄肉化を行った場合、ろう付け後の犠牲陽極皮材中のZn量が不足し、十分な強度および耐食性が得られないことが問題となっていた。
【0004】
また、同じ目的で特許第2564190号明細書には、芯材としてMg<0.1%、Mn:0.2〜1.5%を含み、さらに必要に応じてCu:0.5%以下、Cr:0.3%以下およびZr:0.2%以下のうち1種または2種以上を含有したAl合金芯材の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、前記Al合金芯材の他方の片面にMg:0.3〜2.5%を含み、Zn:2%以下を含有したAl合金犠牲陽極皮材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートが記載されているが、このブレージングシートもやはり強度および耐食性が十分でない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、薄肉化しても十分な強度を有し、更なる耐食性を有する熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシートを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、さらなる強度および耐食性に優れた熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシートを求めて研究を行った結果、
Mn:0.1〜1.8%およびSi:0.37〜2.0%を含有し、さらに必要に応じてCu:0.05〜1.2%、Fe:0.05〜1.5%の内の1種または2種を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl−Mn系合金芯材の片面に、Al−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Mg:0.5〜2.5%、Zn:3.5〜10.0%、Ti:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1.5%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなるアルミニウム合金ブレージングシートは、Mnが芯材および犠牲陽極皮材の両方に含まれているために強度および耐食性が一層向上し、さらにZnが犠牲陽極皮材に比較的多量に含まれているために犠牲陽極作用が促進されて耐食性が一層向上し、特に弱酸性溶液からpH9以上のアルカリ性溶液の広範囲のpH領域の水溶液に対する耐食性が一層向上する、という知見を得たのである。
【0007】
この発明は、かかる知見に基づいて成されたものであって、
(1)Mn:0.1〜1.8%、Si:0.37〜2.0%、Cu:0.05〜1.2%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなるAl合金を芯材とし、
前記芯材の片面に、Mg:0.5〜2.5%、Zn:3.5〜10.0%、Ti:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1.5%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドし、
前記芯材の他方の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドしてなる強度および耐食性に優れた熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシート、
(2)Mn:0.1〜1.8%、Si:0.37〜2.0%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなるAl合金を芯材とし、
前記芯材の片面に、Mg:0.5〜2.5%、Zn:3.5〜10.0%、Ti:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1.5%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドし、
前記芯材の他方の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドしてなる強度および耐食性に優れた熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシート、
(3)Mn:0.1〜1.8%、Si:0.37〜2.0%、Cu:0.05〜1.2%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなるAl合金を芯材とし、
前記芯材の片面に、Mg:0.5〜2.5%、Zn:3.5〜10.0%、Ti:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1.5%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドし、
前記芯材の他方の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドしてなる強度および耐食性に優れた熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシート、に特徴を有するものである。
【0008】
この発明は、前記(1)〜(3)のうちの何れかに記載のアルミニウム合金ブレージングシートを構成する芯材に、さらにTi:0.03〜0.5%、Zr:0.03〜0.5%、Cr:0.03〜0.5%の内の1種または2種以上を含有させることにより一層強度を向上させることができる。したがって、この発明は、
(4)Mn:0.1〜1.8%、Si:0.37〜2.0%、Cu:0.05〜1.2%を含有し、さらにTi:0.03〜0.5%、Zr:0.03〜0.5%、Cr:0.03〜0.5%の内の1種または2種以上を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなるAl合金を芯材とし、
前記芯材の片面に、Mg:0.5〜2.5%、Zn:3.5〜10.0%、Ti:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1.5%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドし、
前記芯材の他方の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドしてなる強度および耐食性に優れた熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシート、
(5)Mn:0.1〜1.8%、Si:0.37〜2.0%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、さらにTi:0.03〜0.5%、Zr:0.03〜0.5%、Cr:0.03〜0.5%の内の1種または2種以上を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなるAl合金を芯材とし、
前記芯材の片面に、Mg:0.5〜2.5%、Zn:3.5〜10.0%、Ti:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1.5%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドし、
前記芯材の他方の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドしてなる強度および耐食性に優れた熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシート、
(6)Mn:0.1〜1.8%、Si:0.37〜2.0%、Cu:0.05〜1.2%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、さらにTi:0.03〜0.5%、Zr:0.03〜0.5%、Cr:0.03〜0.5%の内の1種または2種以上を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなるAl合金を芯材とし、
前記芯材の片面に、Mg:0.5〜2.5%、Zn:3.5〜10.0%、Ti:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1.5%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドし、
前記芯材の他方の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドしてなる強度および耐食性に優れた熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシート、に特徴を有するものである。
【0009】
まず、この発明の熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシートの成分組成を上述のごとく限定した理由を述べる。
(A)芯材
Mn:
Mnは、芯材素地中にAl−Mn金属間化合物として晶出または析出して分散し、ろう付け後の強度を向上させ、芯材の電位を貴にして犠牲陽極皮材側だけでなく、ろう材側からの耐孔食性を向上せしめる成分であるが、その含有量が0.1%未満では所望の効果が得られず、一方、1.8%を越えて含有すると粗大な金属間化合物の生成によって加工性を劣化させるので好ましくない。したがって、Mnの含有量を0.1〜1.8%に定めた。Mnの含有量のいっそう好ましい範囲は0.8〜1.5%である。
【0010】
Si:
Siは、Mnと共存させることによりAl−Mn−Si金属間化合物となって素地中に分散、あるいはマトリックスに固溶して芯材の強度を向上させ、またろう付け熱処理により犠牲陽極皮材から拡散してきたMgと反応してMg2Siを形成して強度を向上させる作用があるが、その含有量が0.37%未満では所望の効果が得られず、一方、2.0%を越えて含有すると芯材の融点を低下させ、ろう付け時に溶融するようになるので好ましくない。したがって、Siの含有量を0.37〜2.0%に定めた。Siの含有量のいっそう好ましい範囲は0.4〜1.2%である。
【0011】
Cu:
芯材に含まれるCuは、マトリックスに固溶してろう付け後の芯材の強度を向上させると共に、ろう付け熱処理によって犠牲陽極皮材に拡散することにより芯材の電気化学的性質を貴にして、犠牲陽極皮材側だけでなくろう材側の耐孔食性を向上させる作用を有するが、その含有量が0.05%未満では所望の効果が得られず、一方、1.2%を越えて含有すると腐食速度が速くなりすぎ、特に接合部の腐食速度が速くなりすぎるので好ましくない。したがって、Cuの含有量を0.05〜1.2%に定めた。Cuの含有量の一層好ましい範囲は0.3〜0.7%である。
【0012】
Fe:
芯材に含まれるFeは、素地中にAl−Fe金属間化合物として晶出または析出し、ろう付け後の強度を向上させ、またアルカリ性の腐食に対して、晶出または析出したAl−Fe金属間化合物が芯材での腐食の進行を抑制することからアルカリ性での耐食性を向上させる作用を有するが、その含有量が0.05%未満では所望の効果が得られず、一方、1.5%を越えると芯材の酸性での腐食速度が速くなりすぎるので好ましくない。したがって、Feの含有量は、0.05〜1.5%に定めた。Feの含有量のいっそう好ましい範囲は0.7を越え〜1.3%である。
【0013】
Ti:
Ti成分は、ろう付け後にTiAl3 などの微細な金属間化合物として素地中に分散し、芯材の強度を向上させる作用を有するので必要に応じて添加するが、その含有量が0.03%未満では所望の効果が得られず、一方、0.5%を越えると加工性を阻害し、さらに巨大なTi−Al系金属間化合物による耐食性の低下をもたらすので好ましくない。したがって、Tiの含有量は0.03〜0.5%に定めた。Tiの含有量の一層好ましい範囲は0.07〜0.25%である。
【0014】
Zr:
ZrもTiと同様に、ろう付け後にZrAl3 などの微細な金属間化合物として素地中に分散し、芯材の強度を向上させる作用を有するので必要に応じて添加するが、その含有量が0.03%未満では所望の効果が得られず、一方、0.5%を越えると加工性を阻害するので好ましくない。したがって、Zrの含有量は0.03〜0.5%に定めた。Zrの含有量の一層好ましい範囲は0.07〜0.25%である。
【0015】
Cr:
Crも、ろう付け後に微細なAl−Cr系金属間化合物として素地中に分散し、芯材の強度を向上させる作用を有するので必要に応じて添加するが、その含有量が0.03%未満では所望の効果が得られず、一方、0.5%を越えると加工性を阻害するので好ましくない。したがって、Crの含有量は0.03〜0.5%に定めた。Crの含有量の一層好ましい範囲は0.07〜0.25%である。
【0016】
(B)犠牲陽極皮材
Mg:
Mgは、マトリックスに固溶して強度を向上させるとともに、芯材から拡散あるいは芯材中のSiとMg2Siを形成して強度を向上させる作用があるが、その含有量が0.5%未満では所望の耐食性が得られないので好ましくなく、一方、2.5%を越えて含有しても一層の強度向上効果が得られない。したがって、犠牲陽極皮材に含まれるMg含有量は、0.5〜2.5%に定めた。Mg含有量の一層好ましい範囲は0.7〜1.8%である。
【0017】
Zn:
Znは、犠牲陽極皮材の電位を卑にしてろう付け熱処理により皮材表面から芯材へ防食上有効な電位分布を形成し、耐孔食性を向上させ、さらにMgとMgZn2を形成し、強度を向上させる作用を有するが、その含有量が3.5%未満では酸性溶液中での犠牲陽極効果が十分に働かないので好ましくない。一方、Znを10.0%を越えて含有すると、自己腐食性が速くなりすぎると共に加工性が低下するので好ましくない。したがって、犠牲陽極皮材中のZn含有量は、3.5〜10.0%に定めた。Znの含有量の一層好ましい範囲は4.0〜8.0%である。
【0018】
Ti:
犠牲陽極皮材中のTiは、ろう付け後に微細な金属間化合物として分散し、強度を向上させ、さらに圧延時に圧延方向に対して形成されたTiの濃淡層が腐食形態としては好ましい層状に広がる腐食を生成してブレージングシートの寿命を短くする孔食の発生を抑制する作用を有するが、その含有量が0.05%未満では所望の耐食性が得られないので好ましくなく、一方、0.5%を越えて含有すると加工性が低下すると共にAl−Ti系金属間化合物の生成による耐食性の低下をもたらすので好ましくない。したがって、犠牲陽極皮材に含まれるTi含有量は、0.05〜0.5%に定めた。Ti含有量の一層好ましい範囲は0.07〜0.25%である。
【0019】
Mn:
犠牲陽極皮材中のMnは、素地中にAl−Mn系金属間化合物として分散し、強度を向上させ、アルカリ溶液中での腐食に対しては分散しているAl−Mn系金属間化合物により腐食が抑制され、耐食性が向上する作用があるので添加するが、その含有量が0.1%未満では所望の耐食性が得られないので好ましくなく、一方、1.5%を越えて含有すると粗大な金属間化合物の形成によって圧延加工性が低下するので好ましくない。したがって、犠牲陽極皮材に含まれるMn含有量は、0.1〜1.5%に定めた。Mn含有量の一層好ましい範囲は0.2〜0.8%である。
【0020】
Fe:
犠牲陽極皮材に含まれるFeは、素地中にAl−Fe金属間化合物として晶出または析出し、ろう付け後の強度を向上させ、またアルカリ性の腐食に対して、晶出または析出したAl−Fe金属間化合物が犠牲陽極皮材の腐食の進行を抑制することからアルカリ性での耐食性を向上させる作用を有するが、その含有量が0.05%未満では所望の効果が得られず、一方、1.5%を越えると犠牲陽極皮材の酸性での腐食速度が速くなりすぎるので好ましくない。したがって、Feの含有量は、0.05〜1.5%に定めた。Feの含有量のいっそう好ましい範囲は0.45〜1.3%である。
【0021】
(C)ろう材
この発明の熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシートで使用するろう材は、通常のAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材であればよく、特に限定されるものではないが、ろう材中に含まれるSiは融点を下げると共に流動性を付与する成分であり、その含有量が3%未満では所望の効果が得られず、一方、15%を越えて含有するとかえって流動性が低下するので好ましくない。したがって、ろう材中のSiの含有量を3〜15%に定めた。ろう材中のSi含有量の一層好ましい範囲は5〜12%である。また、Al−Si−Zn系ろう材は前記Al−Si系ろう材にZnを1.0〜5.0%含有させたものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
表1に示す成分組成のAl合金を溶解し、鋳造してインゴットを製造し、このインゴットを通常の条件で均質化処理した後、厚さ:400mmの芯材g,h,j,q,r,t,u,w,xを作製した。
【0023】
【表1】
【0024】
さらに、表2に示す成分組成のAl合金を溶解し、鋳造してインゴットを製造し、このインゴットを通常の条件で均質化処理したのち熱間圧延を行い、厚さ:50mmの熱延板からなる犠牲陽極皮材キ,ク,コ,チ,ツ,ト,ナ,ヌ,ネを作製した。
【0025】
【表2】
【0026】
一方、表3に示す成分組成のAl合金を溶解し、鋳造してインゴットを製造し、このインゴットを通常の条件で熱間圧延を行い、厚さ:50mmの熱延板からなるろう材I〜IIを作製した。
【0027】
【表3】
【0028】
これら表1の芯材g,h,j,q,r,t,u,w,x、表2の犠牲陽極皮材キ,ク,コ,チ,ツ,ト,ナ,ヌ,ネおよび表3のろう材I〜IIを表4に示される組み合わせにしたがって重ね合わせ、熱間圧延にてクラッドし、引き続いて中間焼鈍を行ったのち冷間圧延を行うことにより、いずれも板厚:0.225mm、犠牲陽極皮材およびろう材のクラッド率がそれぞれ10%で調質H14の本発明ブレージングシート7,8,10,17,18,20,21,23および従来ブレージングシートを作製した。これら本発明ブレージングシート7,8,10,17,18,20,21,23および従来ブレージングシートを用いてそれぞれの試験片を作製し、これら試験片を600℃に3分間保持した後、冷却速度:100℃/min.で室温まで冷却するろう付けを想定した熱処理を行い、その後、下記の条件の強度試験および腐食試験1〜2を行った。
【0029】
強度試験
JIS H4000で規定される方法にしたがって引張り試験を行ない、その測定結果を表4に示した。
【0030】
腐食試験1(耐酸性試験)
試験片のろう材側を接着剤にて被覆して得られた試料を用意し、さらにCl- :270ppm,SO4 2-:60ppm,Fe3+:30ppm,Cu2+:1ppmを含む温度:80℃の水溶液(pH:3.4)を腐食液として用意し、前記試料を前記腐食液に前記試料を8時間浸漬保持した後、室温の静止腐食液の中に16時間浸漬保持すると云う温度サイクルを加える操作を90日間行い、90日間経過後の犠牲陽極皮材層の表面からの最大腐食深さを測定し、その測定結果を表4に示した。
【0031】
腐食試験2(耐アルカリ試験)
Cl- :270ppm,SO4 2-:60ppm,Fe3+:30ppmを含む水溶液をNaOHでpH11に調整した温度:88℃の水溶液を腐食液として用意し、前記試料を自動車用熱交換器の冷却水を想定して、流速:0.7m/sec.で流れている温度:88℃の腐食液の中に8時間浸漬保持した後、室温の静止腐食液の中に16時間に浸漬保持すると云う温度サイクルを加える操作を120日間行い、120日間経過後の犠牲陽極皮材層の表面からの最大腐食深さを測定し、その測定結果を表4に示した。
【0032】
【表4】
【0033】
表4に示される結果から、本発明ブレージングシート7,8,10,17,18,20,21,23は、従来ブレージングシートに比べて、強度が優れ、さらに表面からの最大腐食深さが極めて小さいところから、耐食性に優れていることが分かる。
【0034】
【発明の効果】
上述のように、この発明のブレージングシートは強度に一層優れているために一層薄くすることができ、さらに耐食性に優れているところから、この発明のブレージングシートを用いて作製した熱交換器チューブ材は、一層軽量化することができて自動車などの燃費の向上に寄与し、さらに広範囲のpHの冷却水を使用しても貫通することなく長期間使用することができ、産業上優れた効果をもたらすものである。
Claims (2)
- 質量%で(以下、%は質量%を示す)Mn:0.1〜1.8%およびSi:0.37〜2.0%を含有し、さらに、Cu:0.05〜1.2%、Fe:0.05〜1.5%の内の1種または2種を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなるAl合金を芯材とし、
前記芯材の片面に、Mg:0.5〜2.5%、Zn:3.5〜10.0%、Ti:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1.5%、Fe:0.05〜1.5%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドし、
前記芯材の他方の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドしてなることを特徴とする強度および耐食性に優れた熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシート。 - 前記芯材に、さらにTi:0.03〜0.5%、Zr:0.03〜0.5%、Cr:0.03〜0.5%の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の強度および耐食性に優れた熱交換器チューブ材用アルミニウム合金ブレージングシート。
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