JP3858255B2 - 耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、耐食性、特にアルカリ環境下から酸性環境下に渡る広範囲pH領域での耐食性に優れた熱交換器などの構造用部材として用いるアルミニウム合金クラッド材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車のラジエーターやヒーターコアのチューブ材としては、Al−Mn系合金からなる芯材の片面にAl−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、芯材の他方の片面に、犠牲陽極皮材としてAl−Zn系合金をクラッドした3層のアルミニウム合金クラッド材が使用されている。最も一般に使用されている具体的なアルミニウム合金クラッド材は、JIS 3003(重量%で、Mn:1.0〜1.5%、Fe:0.05〜0.20%、Si:0.6%以下、Zr:0.7以下%、Zn:0.10以下%、残部:Alおよび不可避不純物)を芯材とし、その片面にJIS 7072からなるAl−Zn系合金犠牲陽極皮材をクラッドし、芯材の他方の片面にAl−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドしてなるアルミニウム合金クラッド材は知られている。
【0003】
前記アルミニウム合金クラッド材のAl−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材は、ろう付け時にチューブ材とフィン材の接合、およびチューブ材とヘッダープレートとの接合に用いられ、犠牲陽極皮材は芯材と電気化学的性質の違いにより皮材を主として腐食し、芯材の孔食を抑制する作用をなすものである。これら前記従来のアルミニウム合金クラッド材は、ラジエーターやヒーターコアのチューブ材として熱交換器に使用した場合、弱酸性から中性領域では優れた犠牲陽極効果を発揮する。しかし、実際に使用される冷却水は不凍液と防錆剤からなるLLC(ロングライフクーラント)が混入したアルカリ性を示すものであり、冷却水がpH9以上のアルカリ性溶液の場合なお耐食性が十分でなく、早期に孔食が発生したり、防食効果が発揮されない場合がある。
【0004】
これらを改良するために、重量%で(以下%は重量%を示す)
Mn:0.3〜2.0%およびCu:0.10〜0.8%の1種または2種を含有し、必要に応じてMg:0.1〜0.5%、Si:0.1〜1%を含有し、さらに必要に応じてCr:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.3%、Ti:0.05〜0.3%、B:0.01〜0.1%の内の1種または2種以上を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Fe:0.5〜3%、Ni:0.1〜3.0%(ただし、Fe+Ni:3.0%以下)、In:0.01〜0.2%を含有し、必要に応じてMg:0.1〜2.5%、Zn:0.5〜4.0%、Sn:0.01〜0.2%、Ga:0.01〜0.2%の内の1種または2種以上を含有し、さらにCr:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.3%、Ti:0.05〜0.3%、B:0.01〜0.1、Mn:0.1〜2.0%、Si:0.1〜1%の内の1種または2種以上を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなる耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材(特開平10−72635号公報参照)が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のアルミニウム合金クラッド材で作製したラジエーターやヒーターコアのチューブは、弱酸性溶液からpH10以上のアルカリ性溶液に至る広範囲pH領域の水溶液に対して優れた耐食性を示すが、その耐食性はいまだ十分でなく、更なる耐食性に優れたアルミニウム合金クラッド材が求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、従来よりも耐食性に優れたアルミニウム合金クラッド材を得るべく研究を行った結果、
(a)芯材および犠牲陽極皮材の両方にFeおよびNiを添加し、Mn:0.8〜1.8%、Fe:0.4〜1.5%、Ni:0.02〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Zn:4.1〜10%、Fe:0.88〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなるアルミニウム合金クラッド材は、弱酸性溶液からpH10以上のアルカリ性溶液までの広範囲pH領域の水溶液に対して耐食性が従来よりも一層向上し、熱交換器用構造材として優れたものとなる、
(b)前記(a)に記載の芯材に、Si:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜0.7%の内の1種もしくは2種、またはTi:0.05〜0.2%、Zr:0.05〜0.2%の内の1種もしくは2種を含有してもよく、
さらにSi:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜0.7%の内の1種または2種、およびTi:0.05〜0.2%、Zr:0.05〜0.2%の内の1種または2種を同時に含有してもよい、
という知見を得たのである。
【0007】
この発明は、かかる知見に基づいて成されたものであって、
(1)Mn:0.8〜1.8%、Fe:0.4〜1.5%、Ni:0.02〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Zn:4.1〜10%、Fe:0.88〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなる耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、
(2)Mn:0.8〜1.8%、Fe:0.4〜1.5%、Ni:0.02〜1.0%、Si:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Zn:4.1〜10%、Fe:0.88〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなる耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、
(3)Mn:0.8〜1.8%、Fe:0.4〜1.5%、Ni:0.02〜1.0%、Cu:0.1〜0.7%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Zn:4.1〜10%、Fe:0.88〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなる耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、
(4)Mn:0.8〜1.8%、Fe:0.4〜1.5%、Ni:0.02〜1.0%、Si:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜0.7%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Zn:4.1〜10%、Fe:0.88〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなる耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、
(5)Mn:0.8〜1.8%、Fe:0.4〜1.5%、Ni:0.02〜1.0%、Ti:0.05〜0.2%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Zn:4.1〜10%、Fe:0.88〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなる耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、
(6)Mn:0.8〜1.8%、Fe:0.4〜1.5%、Ni:0.02〜1.0%、Zr:0.05〜0.2%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Zn:4.1〜10%、Fe:0.88〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなる耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、
(7)Mn:0.8〜1.8%、Fe:0.4〜1.5%、Ni:0.02〜1.0%、Ti:0.05〜0.2%、Zr:0.05〜0.2%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Zn:4.1〜10%、Fe:0.88〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなる耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、
(8)前記(2)、(3)または(4)記載の芯材に、さらに、Ti:0.05〜0.2%含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Zn:4.1〜10%、Fe:0.88〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなる耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、
(9)前記(2)、(3)または(4)記載の芯材に、さらに、Zr:0.05〜0.2%含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Zn:4.1〜10%、Fe:0.88〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなる耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、
(10)前記(2)、(3)または(4)記載の芯材に、さらにTi:0.05〜0.2%、Zr:0.05〜0.2%含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、Zn:4.1〜10%、Fe:0.88〜2.0%、Ni:0.1〜1.0%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなる耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、
に特徴を有するものである。
【0008】
この発明の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の成分組成を上述のごとく限定した理由を述べる。
(A)芯材
Mn:
Mnは、芯材素地中にAl−Mn金属間化合物として分散し、耐食性を低下させることなく強度を向上せしめる成分であるが、その含有量が0.8%未満では所望の効果が得られず、一方、1.8%を越えて含有すると粗大な金属間化合物の生成によって加工性が低下するので好ましくない。したがって、Mnの含有量を0.8〜1.8%に定めた。Mnの含有量のいっそう好ましい範囲は1.0〜1.5%である。
【0009】
Fe:
Feは、素地中にAl−Fe金属間化合物を微細に分散させるために面食の腐食形態となり、腐食速度を遅くするが、その含有量が0.4%未満では所望の効果が得られず、一方、1.5%を越えると芯材の自己腐食性が増大するので好ましくない。したがって、Feの含有量は、0.4〜1.5%に定めた。Feの含有量のいっそう好ましい範囲は0.5〜1.0%である。
【0010】
Ni:
Niは、素地中にAl−Ni金属間化合物を微細に分散させるために面食の腐食形態となり、腐食速度を遅くするが、その含有量が0.02%未満では所望の効果が得られず、一方、1.0%を越えると芯材の自己腐食性が増大すると共に加工性が低下するので好ましくない。したがって、Niの含有量は、0.02〜1.0%に定めた。Niの含有量のいっそう好ましい範囲は0.5〜1.0%である。
【0011】
Si:
Siは、Mnと共存させることによりAl−Mn−Si金属間化合物となって素地中に分散、あるいはマトリックスに固溶して芯材の強度を向上させる作用があるので必要に応じて添加するが、その含有量が0.1%未満では所望の効果が得られず、一方、1.0%を越えて含有すると芯材の融点を低下させるので好ましくない。したがって、Siの含有量を0.1〜1.0%に定めた。Siの含有量のいっそう好ましい範囲は0.2〜0.5%である。
【0012】
Cu:
芯材に含まれるCuは、マトリックスに固溶して芯材の強度を向上させると共に、芯材の電気化学的性質を貴にして、犠牲陽極皮材およびろう材との電位差を大きくする作用を有するので必要に応じて添加するが、その含有量が0.1%未満では所望の効果が得られず、一方、0.7%を越えて含有すると芯材の融点が低下するためろう付け時に材料が溶融しやすく、さらに酸性溶液中で粒界腐食が起こりやすくなり、耐食性が低下するので好ましくない。したがって、Cuの含有量を0.1〜0.7%に定めた。Cuの含有量の一層好ましい範囲は0.3〜0.5%である。
【0013】
Ti:
Ti成分は、ろう付け後に微細な金属間化合物として素地中に分散し、芯材の強度を向上させる作用を有するので必要に応じて添加するが、その含有量が0.05%未満では所望の効果が得られず、一方、0.2%を越えると加工性を阻害するので好ましくない。したがって、Tiの含有量は0.05〜0.2%に定めた。Tiの含有量の一層好ましい範囲は0.07〜0.15%である。
【0014】
Zr:
ZrもTiと同様に、ろう付け後に微細な金属間化合物として素地中に分散し、芯材の強度を向上させる作用を有するので必要に応じて添加するが、その含有量が0.05%未満では所望の効果が得られず、一方、0.2%を越えると加工性を阻害するので好ましくない。したがって、Zrの含有量は0.05〜0.2%に定めた。Zrの含有量の一層好ましい範囲も0.07〜0.18%である。
【0015】
(B)犠牲陽極皮材
Fe:
Feは、素地中にAl−Fe金属間化合物を微細に分散させるために、そこを起点として材料表面に微小ピットが多数発生するが、その数が多く材料表面に均一に分布するため腐食深さは浅くなり、腐食形態は面食となるため、深い孔食は発生しない。しかし犠牲陽極皮材に含まれるFeの含有量が0.88%未満では所望の効果が得られず、一方、2.0%を越えると犠牲陽極皮材の自己腐食性が増大するので好ましくない。したがって、Feの含有量は、0.88〜2.0%に定めた。Feの含有量の一層好ましい範囲は0.88〜1.0%である。
【0016】
Zn:
Znは、犠牲陽極皮材の電位を卑にし、芯材に対する犠牲陽極効果を向上させ、芯材に孔食が発生するのを防止する作用を有するが、その含有量が4.1%未満では酸性領域で十分な犠牲陽極効果が得られず、一方、10%を越えて含有すると自己腐食性が増大し過ぎて好ましくない。したがって、犠牲陽極皮材中のZn含有量は、4.1〜10%に定めた。Znの含有量の一層好ましい範囲は4.1〜6.0%である。
【0017】
Ni:
Niは、Feと同様に素地中にAl−Ni金属間化合物を微細に分散させるために、そこを起点として材料表面に微小ピットが多数発生するが、その数が多く材料表面に均一に分布するため腐食深さは浅くなり、腐食形態は面食となるため、深い孔食は発生しない。しかし犠牲陽極皮材に含まれるNiの含有量が0.1%未満では所望の効果が得られず、一方、1.0%を越えると犠牲陽極皮材の自己腐食性が増大すると共に加工性が低下するので好ましくない。したがって、Niの含有量は、0.1〜1.0%に定めた。Feの含有量の一層好ましい範囲は0.3〜0.7%である。
【0018】
(C)ろう材
この発明の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材で使用するろう材は、通常のAl−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材であればよく、特に限定されるものではないが、ろう材中に含まれるSiは融点を下げると共に流動性を付与する成分であり、その含有量が5%未満では所望の効果が得られず、一方、15%を越えて含有するとかえって流動性が低下するので好ましくない。したがって、ろう材中のSiの含有量を3〜15%に定めた。ろう材中のSiの含有量のいっそう好ましい範囲は5〜12%である。また、Al−Si−Zn系ろう材に含まれるZnは1.0〜5.0%が好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
表1〜表3に示す成分組成のAl合金を溶解し、鋳造してインゴットを製造し、このインゴットを通常の条件で均質化処理後、熱間圧延を行い、厚さ:150mmの熱延板からなる芯材a〜Dを作製した。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
さらに、表4〜5に示す成分組成のAl合金を溶解し、鋳造してインゴットを製造し、このインゴットを通常の条件で均質化処理後、熱間圧延を行い、厚さ:30mmの熱延板からなる犠牲陽極皮材ア〜ツを作製した。
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
一方、表6に示す成分組成のAl合金を溶解し、鋳造してインゴットを製造し、このインゴットを通常の条件で熱間圧延を行い、厚さ:20mmの熱延板からなるろう材I〜IIを作製した。
【0027】
【表6】
これら表1〜表3の芯材a〜D、表4〜表5の犠牲陽極皮材ア〜ツおよび表6のろう材I〜IIを表7〜表9に示される組み合わせにしたがって重ね合わせ、熱間圧延にてクラッドし、引き続いて中間焼鈍を行ったのち、冷間圧延を行うことによりいずれも板厚:0.25mm、犠牲陽極皮材およびろう材にクラッド率がそれぞれ15%および10%で調質H14の本発明クラッド材1〜53、比較クラッド材1〜7および従来クラッド材1〜2を作製した。これら本発明クラッド材1〜53、比較クラッド材1〜7および従来クラッド材1〜2を用いてそれぞれの試験片を作製し、これら試験片を600℃に3分間保持した後、冷却速度:100℃/min.で室温まで冷却するろう付けを想定した熱処理を行い、その後、下記の条件の腐食試験を行った。
【0029】
腐食試験1
Cl- :195ppm,SO4 2-:60ppm,Fe3+:30ppm,Cu2+:1ppmを含む水溶液(pH:2.6)を腐食液として用意し、前記本発明クラッド材1〜53、比較クラッド材1〜7および従来クラッド材1〜2の熱処理した試験片を自動車用熱交換器の冷却水を想定して、流速:1m/sec.で流れている温度:80℃の腐食液の中に8時間浸漬保持した後、室温の静止腐食液の中に16時間浸漬保持すると云う温度サイクルを加える操作を60日間行い、60日間経過後の犠牲陽極皮材層の表面からの最大腐食深さを測定し、その測定結果を表7〜表10に示した。
【0030】
腐食試験2
Cl- :195ppm,SO4 2-:60ppm,Fe3+:30ppm,Cu2+:1ppmを含む水溶液をNaOHでpH11に調整した水溶液を腐食液として用意し、前記本発明クラッド材1〜53、比較クラッド材1〜7および従来クラッド材1〜2の熱処理した試験片を自動車用熱交換器の冷却水を想定して、流速:1m/sec.で流れている温度:80℃の腐食液の中に8時間浸漬保持した後、室温の静止腐食液の中に16時間に浸漬保持すると云う温度サイクルを加える操作を60日間行い、60日間経過後の犠牲陽極皮材層の表面からの最大腐食深さを測定し、その測定結果を表7〜表10に示した。
【0031】
【表7】
【0032】
【表8】
【0033】
【表9】
【0034】
【表10】
【0035】
表7〜表10に示される結果から、本発明クラッド材1〜53は、従来クラッド材1〜2に比べて、表面からの最大腐食深さが極めて小さいところから、耐食性に優れていることが分かる。また、構成成分の内の少なくとも1種の含有量がこの発明の範囲から外れている比較クラッド材1〜7は耐食性またはその他の特性が劣ることも分かる。
【0036】
【発明の効果】
上述のように、この発明のクラッド材は耐食性に優れているため、この発明のクラッド材を用いて作製した熱交換器は、広範囲のpHの冷却水を使用しても貫通することなく長期間使用することができ、産業上優れた効果をもたらすものである。
Claims (4)
- 重量%で、
Mn:0.8〜1.8%、
Fe:0.4〜1.5%、
Ni:0.02〜1.0%、
を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、
Zn:4.1〜10%、
Fe:0.88〜2.0%、
Ni:0.1〜1.0%、
を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなることを特徴とする耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。 - 重量%で、
Mn:0.8〜1.8%、
Fe:0.4〜1.5%、
Ni:0.02〜1.0%、
を含有し、さらに、
Si:0.1〜1.0%、
Cu:0.1〜0.7%、
の内の1種または2種を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、
Zn:4.1〜10%、
Fe:0.88〜2.0%、
Ni:0.1〜1.0%、
を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなることを特徴とする耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。 - 重量%で、
Mn:0.8〜1.8%、
Fe:0.4〜1.5%、
Ni:0.02〜1.0%、
を含有し、さらに、
Ti:0.05〜0.2%、
Zr:0.05〜0.2%、
の内の1種または2種を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、
Zn:4.1〜10%、
Fe:0.88〜2.0%、
Ni:0.1〜1.0%、
を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなることを特徴とする耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。 - 重量%で、
Mn:0.8〜1.8%、
Fe:0.4〜1.5%、
Ni:0.02〜1.0%、
を含有し、さらに、
Si:0.1〜1.0%、
Cu:0.1〜0.7%、
の内の1種または2種を含有し、さらに、
Ti:0.05〜0.2%、
Zr:0.05〜0.2%、
の内の1種または2種を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成のAl合金からなる芯材の一方の片面に、Al−Si系あるいはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、該芯材の他方の片面に、
Zn:4.1〜10%、
Fe:0.88〜2.0%、
Ni:0.1〜1.0%、
を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成の犠牲陽極皮材をクラッドしてなることを特徴とする耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
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