JP3759441B2 - 熱交換器用高強度高耐食性アルミニウム合金押出チューブ及びその製造方法並びに熱交換器 - Google Patents
熱交換器用高強度高耐食性アルミニウム合金押出チューブ及びその製造方法並びに熱交換器 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にコンデンサなどの自動車用アルミニウム合金製熱交換器に使用されるアルミニウム合金押出管あるいはヘッダーパイプなどの押出材として、高強度かつ優れた耐食性を有するアルミニウム合金押出チューブおよびその製造方法、並びにそれらを使用して製造された熱交換器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の自動車用熱交換器としては、ヘッダーパイプと称される左右一対の管体の間に多数の偏平チューブを互いに平行に所定の間隔でヘッダーパイプと直角に架設し、扁平チューブの端部をヘッダーパイプの側面に接続してヘッダーパイプの内部空間と各チューブ内部空間とを連通させ、複数のチューブ間にフィン部材を配して熱交換性を高めた構成が広く知られている。この種の熱交換器は、ヘッダーパイプおよび各チューブの内部を冷媒が循環し、各チューブ間に配されたフィンを介して効率良く熱交換できるようになっている。
これらの熱交換器は、チューブとフィン部材をろう付けすることにより製造されるが、チューブに押出材を使用する場合は、チューブ側にろう材層がないため、あらかじめAl合金芯材の両面にAl−Si系合金などのろう材層をクラッドしたフィン部材が一般的に用いられており、このフィン部材のろう材層によりチューブとフィン部材の接合が行われている。
このような熱交換器の使用部材は、軽量化のために年々薄肉化される傾向にあり、特にチューブ材では薄肉化によりさらなる強度アップおよび耐食性の向上が求められてきており、高い強度と耐食性を兼ね備えていることが必要となる。
【0003】
自動車用熱交換器の中でも、コンデンサは熱交換効率の関係から車両の最前部に取り付けられているため、厳しい腐食環境に曝されやすい。特に海岸などの空気中に塩分を含む環境や、空気中に腐食性のガスを含む工業地帯、あるいは塩化物を主体とした融雪剤を散布する地域などの過酷な腐食形態となることが知られており、上記のような環境では特に腐食が促進され、短期間でチューブに貫通孔が発生し冷媒が漏れることで熱交換器の機能が失われる場合がある。また、前記構成の熱交換器において、ろう付けフィレット部(ろう材が溶融凝固した部分)とその周辺のチューブの耐食性を高めるために、フィン部材のAl合金芯材にZn、In、Sn等の電位を卑化する元素を添加してフィン部材の電位を他の部分よりも卑とすることにより、いわゆる犠牲陽極フィンを構成し、これによって仮に腐食環境に曝された場合であっても、フィン部材を積極的に腐食させてチューブは腐食しないようにし、チューブの耐食性を確保してチューブ内を流れる冷却媒体の漏洩が生じないようにすることがなされている。
ところが、特定の腐食環境あるいは腐食条件においては、フィン部材の犠牲陽極防食効果が十分に発揮されず、フィン部材のみによる防食機構では十分な耐食性が得られないことが分かっている。そこで、現在、これらの熱交換器には押出チューブ表面にZn溶射を行い、チューブ内部とチューブ表面との間に電位差を設け、チューブ表面に犠牲陽極層を形成させることで、チューブに深い孔食が発生するのを抑制し、耐食性の向上を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述の如く薄肉化の要求により、押出材にはさらなる強度アップおよび耐食性の向上が求められており、現行材より強度と耐食性がともに優れる材料の開発が望まれている。犠牲陽極フィンを使用した熱交換器にあっては、チューブやろう付け部よりもフィン部材が優先的に腐食することによってチューブやヘッダーパイプの腐食を防止するようになっているが、フィン部材の腐食速度が速く、比較的早期にフィン部材の一部が失われることがあると、チューブの耐食性や熱交換効率の低下などを引き起こしやすいという問題があった。
また、フィン部材のみの犠牲陽極防食機構では耐食性が不十分なため、チューブ表面にZn溶射を行い、チューブ表面に犠牲陽極層を形成することにより耐食性の改善を行っている。しかし、ヘッダー部などはZn溶射ができないため、材料自体の耐食性の向上が非常に重要であり、耐食性に優れ、さらに高強度の押出材の開発が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであって、高強度でありかつ押出成形性が良好で、さらにチューブ表面にZn溶射層を形成しなくとも優れた耐食性を得ることができるアルミニウム合金押出チューブおよびその製造方法、並びにこれを用いた熱交換器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、重量%でCu:0.03〜0.4%、Ti:0.03〜0.5%、Mg:0.01〜0.3%、Zr:0.01〜0.3%、Mn:0.03%以下を含み、残部がAlと不可避不純物からなり、高強度、高耐食の特性を併せ持つ熱交換器用アルミニウム合金押出チューブを提供する。
【0007】
本発明者は、AlにTiを含有させることで、押し出し成型時に材料中にTi濃度が高い部分と低い部分が層状に形成され、Ti濃度が低い部分は高い部分に比べ電位が卑になり、優先的に腐食が進行するため腐食形態が層状となり、深い孔食の発生が抑制され耐食性を向上させること、さらにZrを添加することで、より腐食形態が層状となり非常に耐食性が向上することを見出した。以上のようにTi、Zrの相互作用により、深い孔食の発生が抑制され、アルミニウム合金押出チューブの耐食性が著しく向上することを発見した。
さらに、Cu,Mg,Ti,Mn,Zrを添加することで材料強度を向上させた。通常、Cuを添加すると腐食速度が増加し、耐食性は低下するが、Cu等の添加元素を上記範囲とすると、耐食性をほとんど低下させることなく強度を向上させることができることを本発明者は知見した。また、Mgの添加もろう付け性を低下させるためあまり好ましくないが、本発明の記載範囲であれば、フラックス塗布量の制御によりろう付け性を大きく低下させることなくろう付けが可能で、かつ材料強度を向上させることが確認された。従って、強度および耐食性ともに優れた押出チューブとして本発明では上記成分範囲を定めた。
【0008】
以下、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金押出チューブを構成する各成分の含有範囲とその作用について説明する。
【0009】
Cu(0.03%〜0.4%):Cuは、材料の強度を向上させる作用を有する。また、チューブの電位を貴にするため、フィンの犠牲陽極効果を有効に働かせる効果を有する。前記範囲の上限値を越える含有量では、チューブの腐食が速くなり耐食性が低下する。また、前記範囲の下限値未満では強度を向上させる効果が十分に得られない。Cu含有量のより好ましい範囲としては、0.1〜0.3%であり、このような範囲とすることで、強度と耐食性を兼ね備えたチューブを構成することができる。
【0010】
Ti(0.03%〜0.5%):Tiを添加すると鋳造時にTi濃度(固溶度)が高い部分と低い部分が形成され、このTi分布が押出成型時に材料中に層状に分布する。Ti濃度が低い部分は高い部分に比べ電位が卑になるため優先的に腐食が進行し、腐食形態が層状となり、深い孔食の発生が抑制されるため耐食性が向上する。また、材料の強度を向上させる効果もある。前記範囲の上限値を越える量のTiを含む場合、合金の融点が上昇して鋳造時に溶け残りが発生したり、巨大な金属間化合物が生成しやすくなるため、材料の押出加工性を低下させる。また、前記範囲の下限値未満では耐食性を向上させる効果が十分に得られない。Ti含有量のより好ましい範囲としては、0.1〜0.2%の範囲である。
【0011】
Zr(0.01〜0.3%):Zrは、Tiの層状腐食を促進させて耐食性を向上させる効果を有するとともに、材料強度を向上させる効果を有する。前記範囲の上限値を越えるZrを含む場合、Ti−Zr系の巨大金属間化合物が生成して材料の押出加工性が低下する。また、前記範囲の下限値未満では、耐食性を向上させる効果が十分に得られない。Zr含有量の最適な範囲は、0.05〜0.15%の範囲である。
【0012】
Mg(0.01〜0.3%):ろう付け時に材料中に固溶し、その後析出することで材料の強度を向上させる。また、Siが存在する場合には、Mg2Siの析出物を生成し、Mg単独の場合よりさらに強度が向上する。前記範囲の上限値を越える場合には、フラックスの効果を阻害し、ろう付け性を著しく低下させる。ろう付け性を阻害しない範囲のMg添加量は0.1%までだが、それ以上添加してもフラックス塗布量を増量すればろう付け性をある程度改善することが可能である。また、前記範囲の下限値未満では、材料強度を向上させる効果が十分に得られない。Mg含有量の最適な範囲は、0.01〜0.1%の範囲であり、Mg含有量をこの範囲とすることで、高強度でろう付け性に優れたアルミニウム合金押出チューブを構成することができる。
【0013】
Mn(0.03%以下):MnはAlとの金属間化合物を形成して金属組織中に晶出又は析出し、ろう付け後の強度を向上させる効果を有する。さらに、アルミニウム合金チューブの電位をフィン部材に対して貴にするため、フィン部材との電位差を大きくすることができ、フィン部材の犠牲陽極効果をより有効に作用させて耐食性を向上させる。前記範囲の上限値を超える場合には、Al−Mn系化合物として材料中に分散し、高温での変形抵抗が大きくなるため、押出加工性を著しく低下させる。偏平多穴管のようにチューブ形状が複雑な場合はMn添加量は少なくする方が好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金押出チューブにおいては、Fe:0.15〜1.0%及び/又はSi:0.3〜1.0%を含む組成とすることもできる。以下に、Fe及びSiの作用と含有範囲について説明する。
【0015】
Fe(0.15〜1.0%):FeもMnと同様にAlとの金属間化合物を形成して金属組織中に晶出又は析出し、さらにろう付け後の結晶粒を細かくする作用によりろう付け後の強度を向上させる効果を有する。前記範囲の上限値を超える含有量では、粗大なAl−Fe系化合物として材料中に分散するため、高温での変形抵抗が上昇し、押出加工性を著しく低下させる。また、上記範囲の下限値未満では、上述の効果が得られない。
【0016】
Si(0.3〜1.0%):Siは材料中に固溶あるいは析出物として微細に分布され、ろう付け後の強度を向上させる効果を有する。さらに、固溶したSiはフィン部材に対してチューブの電位を貴にするため、フィン部材との電位差が大きくとれ、フィン部材の犠牲陽極効果を有効に働かせることができ、チューブの耐食性を向上させることができる。また、チューブのろう付け性を向上させる効果も有する。Siは上記範囲の上限値を越える含有量では、材料の融点が低下するため押出時に局所融解が生じたり、高温強度の低下によりチューブの変形が起こりやすい。また、粒界腐食の発生により耐食性が低下するおそれもある。また、前記範囲の下限値未満では、上記ろう付け強度の向上効果が十分に得られない。
【0017】
また、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金押出チューブは、Ce、La、Ndの希土類元素のうち1種または2種以上を含有し、その総量(Ce+La+Nd)が重量%で0.005〜0.2%の範囲とされた構成としても良い。以下にこれの希土類元素を含有した場合の作用とその含有範囲について説明する。
【0018】
Ce,La,Nb(総量0.005〜0.2%):これらの希土類元素は、Al−X系(X=Ce,La,Nb)、あるいはFeが含まれる場合には、Al−Fe−X系の晶析出物を形成し、これらの晶析出物が素地中に微細均一に分布することで材料の強度を向上させる効果を有する。含有量が前記範囲の上限値を越える場合には、粗大な金属間化合物が生成し、押出加工性及び切削加工性が低下する。また、前記範囲の下限値未満では、材料の強度を向上させる効果が不十分なものとなる。
これらCe,La,Nbは、それぞれの純金属を必要量添加することもできるが、これら希土類元素の混合物として算出されるミッシュメタルを添加しても良い。このミッシュメタルは、前記元素の純金属よりも割安であり、アルミニウム合金押出チューブのコスト削減に非常に有効である。ミッシュメタルには、前記Ce,La,Nb以外の元素として数%のPrやごく微量のPb,P,S等が含まれることがあるが、これらの不純物が含まれることによる本発明のアルミニウム合金押出チューブへの影響は殆ど無い。従って、実用的にはミッシュメタルの添加量を制御することで、極めて容易に希土類元素の総量を調整することができる。尚、ミッシュメタルの典型的な組成は、Ce:約50%、La:約25%、Nd:約10%である。
【0019】
次に、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金押出チューブの製造方法は、先のいずれかに記載の合金組成のビレットを鋳造し、その後均質化処理を実施せずに押出成形することを特徴とする。
【0020】
すなわち、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金押出チューブの製造方法は、重量%で、Cu:0.03〜0.4%、Ti:0.03〜0.5%、Mg:0.01〜0.3%、Mn:0.03%以下、Zr:0.01〜0.3%を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなる合金組成のビレットを鋳造し、その後均質化処理を実施せずに押出成形するものである。
【0021】
また、本発明においては、重量%で、Cu:0.03〜0.4%、Ti:0.03〜0.5%、Mg:0.01〜0.3%、Mn:0.03%以下、Zr:0.01〜0.3%を含有し、Fe:0.15〜1.0%、Si:0.3〜1.0%のうち1種又は2種を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなる合金組成のビレットを鋳造し、その後均質化処理を実施せずに押出成形することを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金押出チューブの製造方法も適用することができる。
【0022】
あるいはまた、本発明においては、重量%で、Cu:0.03〜0.4%、Ti:0.03〜0.5%、Mg:0.01〜0.3%、Mn:0.03%以下、Zr:0.01〜0.3%を含有し、Ce,La,Ndの希土類元素のうち1種又は2種以上を、その総量が重量%で0.005〜0.2%となるように含有し、残部がAlと不可避不純物とからなる合金組成のビレットを鋳造し、その後均質化処理を実施せずに押出成形することを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金押出チューブの製造方法も適用可能である。
【0023】
上記熱交換器用アルミニウム合金押出チューブの製造方法の特徴的な点は、合金ビレットの鋳造後、従来実施されていた均質化処理を施すことなく鋳造ままで押出成形を行うことにある。均質化処理は、鋳造凝固時に偏析した元素あるいは金属間化合物を安定化(均一化)させるために、通常はほぼ全ての材料で実施されている。本発明に係るアルミニウム合金においては、Ti及びZrの材料中の不均一分布により腐食形態を層状にすることで耐食性の向上を図っている。このTi及びZrの不均一分布は鋳造時に形成されるため、その後均質化処理を行うと前記Ti,Zrの不均一分布が若干解消され、層状腐食の効果が弱まり、押出材の耐食性が低下することが分かった。本発明に係る合金組成を備えたアルミニウム合金においては、均質化処理をしなくとも押出加工性や特性上の問題は発生しないことが本発明者らにより確認されており、耐食性向上の面から、本発明に係る製造方法では、均質化処理を実施せずに押出成形を行うこととした。
【0024】
次に、本発明に係る熱交換器は、先のいずれかに記載の本発明の熱交換器用アルミニウム合金押出チューブと、該アルミニウム合金押出チューブにろう付けされたフィン部材とを備えたことを特徴とする。係る構成とすることで、高強度で耐食性に優れる熱交換器を提供することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。図1は本発明に係る熱交換器の一例を示すもので、この例の熱交換器Aは、左右に離間して配置されて上下方向に伸びるヘッダーパイプ1、2と、これらのヘッダーパイプ1、2の間に相互の間に間隙をあけて互いに平行に、かつ、ヘッダーパイプ1、2に対して直角に接合された複数のチューブ3と、チューブ3にそれぞれろう付けされた波形の複数のフィン部材4を主体として構成されている。前記ヘッダーパイプ1、2とチューブ3とフィン部材4は、それぞれ熱伝導性に優れたAlまたはAl合金から構成されているが、これらの中でチューブ3は本発明に係るAl合金押出チューブから構成され、フィン部材4は、Al合金の芯材4aと、この芯材4aの表面と裏面を覆って設けられたAl合金からなるろう材層4bとからなるブレージングシートをフィン状に加工することで構成されている。
【0026】
前記チューブ3は、Cu,Ti,Mg,Mn,Zrを添加したAl合金押出チューブから形成され、各添加元素の含有量は、重量%でCu:0.03〜0.4%、Ti:0.03〜0.5%、Mg:0.01〜0.3%、Zr:0.01〜0.3%、Mn:0.03%以下とされる。前記フィン部材4の芯材4aは、例えばMnとSiとFeとZrとZnを添加したAl合金から形成される。また、前述のチューブ3の組成に加えて、Fe及び/又はSiを、重量%で0.15%≦Fe≦1.0%、0.3%≦Si≦1.0%の割合で添加してもよい。あるいはまた、前記のいずれかの組成に加えて、Ce,La,Nbから選ばれる1種又は2種以上の希土類元素を、その総量が重量%で0.005〜0.2%の範囲となるように加えても良い。これらの元素をさらに添加することによる効果は、上記(課題を解決するための手段)の項で述べた通りである。
【0027】
次に、フィン部材4の折曲部4Aとチューブ3のろう付け部を図2に拡大して示すが、フィン部材4の折曲部4Aがチューブ3の外周部に当接され、この当接部まわりの、例えばSiとZnを添加したAl合金からなるろう材層4bが、ろう付け時の熱により溶融凝固されて折曲部分4Aの先端部周りを覆ってろう付け部6が形成され、このろう付け部6においてろう材が拡がった部分がフィレット部6aとされ、このフィレット部6aにはZnの濃縮部が形成されている。前記ろう付け部6のフィレット部6aとその周囲部分の構造において、フィレット部6aとろう材層4bと芯材4aとチューブ3の順に次第に電気化学的に貴になるように各部材が設けられている。
【0028】
上記構成の熱交換器に用いられているチューブ3は、所定の組成を有するAl合金のビレットを鋳造し、このビレットに均質化処理を実施せずに押出成形することで製造することができる。このようにビレットへの均質化処理を実施しないのは、ビレット鋳造時に金属組織中に形成されるTi及びZrの不均一分布を保持するためである。均質化処理を行うと、この不均一分布が解消されて、チューブの耐食性が低下するため好ましくない。
図2に示すチューブ3の表面には、溶射によりZnからなる層を形成しても良い。このようにして形成されたZn層は、チューブ3の表面と内部とに電位差を生じさせてチューブ3の表面に犠牲陽極層を形成する。これにより、深い孔食がチューブ3に生じるのを効果的に防止することができる。
また、前記チューブ3の表面に、Si粉末、あるいはAl−Si系又はAl−Si−Zn系の粉末ろう材を含有するフラックスを塗布することもできる。このような構成とすることで、フィン部材4とチューブ3あるいはヘッダーパイプ1,2を一括的にろう付け接合して製造することができるので、熱交換器Aの製造コストを低減することができる。特に、Si粉末は安価で塗布量が少なくてすむため、幅広い使用が期待できる。従来、Si粉末やAl−Si粉末をろう材として使用する場合、押出チューブの耐食性が問題となっていたが、本発明に係る合金組成を備えた押出チューブは、優れた耐食性を備えているので、これらの粉末を含むフラックスをも用いる場合にも、腐食の心配がない。
【0029】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について比較例あるいは従来例と対比して説明する。
(実施例1)
本例では、表1に示す合金組成を有するアルミニウム合金の直径8インチ(203.2mm)のビレットを、常法に基づき溶解鋳造を行って作製した。次いで、このビレットを押出成形して、成形直後に水冷することにより、図3に示す多穴のアルミニウム合金押出チューブ13を作製した。図3に示す押出チューブ13は、複数の仕切壁13Aにより内部を区画されており、この区画された空間が冷媒流路である通孔13Bとされている。本例では、押出チューブ13として幅20mm、高さ2mm、肉厚0.4mmであり、通孔13Bが24個形成されたものを作製した。
次に、JIS3003合金を芯材とし、JIS4045合金を芯材の両面にクラッドした板厚0.1mmの板材を、高さ10mm、フィンピッチ3mmのコルゲート状に加工してフィン部材を作製した。そして、上記押出チューブ13及びフィン部材を脱脂後、ステンレスワイヤで拘束してフッ化フラックスを均一に塗布した後、100℃で5分間加熱乾燥して、これを窒素ガス雰囲気中で600℃×3分間加熱するろう付け熱処理にてろう付けし、評価用の模擬コアを作製した。
【0030】
【表1】
【0031】
以上の工程により得られた本発明材(No.1〜14)及び比較材(No.15〜24)について、以下の評価を行った。その結果を表2に示す。
まず、押出加工性の評価は、押出成形後の押出チューブの断面形状を観察することにより行った。この観察において、割れやくびれ等の異常が無く、良好な断面形状が得られたものには、○(良好)を付し、異常が見られたものには×(不良)を付して評価した。
次に、フィン部材と押出チューブとのろう付け性の評価は、押出チューブとフィン部材との接合を確認することにより行い、その接合部におけるろう付け状態を○(良好)、×(不良)とに分類して表2に併記する。
次に、耐食性の評価は、上記のコアに対し、塩水噴霧4時間→乾燥2時間→湿潤2時間の乾湿サイクルを付加するサイクル試験を行い、この腐食サイクル試験条件に500時間暴露して腐食させた後、押出チューブに生じた孔食の最大腐食深さを測定することにより行った。
次に、材料強度の評価は、断面積及び断面形状を同じくした押出チューブを一定長さに切断し、窒素ガス雰囲気中で600℃×3分間加熱するろう付け相当の熱処理を行った後に、引張試験を行って機械的性質を測定し、この引張強さを比較することにより行った。
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示すように、本発明の要件を満たすNo.1〜14の本発明材は、本発明の要件を満たさないNo.15〜24の比較材に比して、強度が高く、かつ押出加工性、ろう付け性も良好であり、その腐食形態が層状あるいは面状であるために孔食の深さが浅く、優れた耐食性を有していた。一方、比較材においては、その腐食形態が孔食型であるために、深い孔食が形成されて短期間に貫通孔が発生し、特性は明らかに劣っていた。また、貫通孔が発生しなかったもの(No.15,18〜21)についても、引張強さが90MPa未満で強度不足となるか、またはろう付け性や押出加工性に劣るものであった。
【0034】
(実施例2)
本例では、本発明に係る製造方法における均質化処理の有無による耐食性への影響をより明らかにするために、表1に示す試料No.2の組成のアルミニウム合金のビレットを作製後、均質化処理を行った後に押出成形を行ったコアを作製した。このコアと、No.2のコアについて、上記実施例1と同様に押出加工性と、耐食性の評価を行った。その結果を表3に示す。表3に示すように、均質化処理を行った後に押出成形を行ったコアは、均質化処理を実施しない以外は同等の構成のNo.2のコアに比して耐食性に劣る結果となった。これは、均質化処理によりTi及びZrの不均一分布が一部解消され、深い孔食が生じ易くなったためであると考えられる。
【0035】
【表3】
【0036】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、重量%で、Cu:0.03〜0.4%、Ti:0.03〜0.5%、Mg:0.3〜0.3%。Mn:0.3〜0.8%、Zr:0.01〜0.3%を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなる構成とされた本発明のアルミニウム合金押出チューブは、高強度で耐食性に優れており、また押出加工性及びろう付け性にも優れていることから、コンデンサなどの押出チューブを使用する自動車の熱交換器に好適に使用することができ、熱交換器の寿命や品質向上に大いに貢献し得るものである。
次に、本発明に係る製造方法によれば、上記優れた強度を耐食性を兼ね備えたアルミニウム合金押出チューブを、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る熱交換器の一例を示す構成図である。
【図2】 図2は、図1に示すチューブ及びフィン部材を拡大して示す図である。
【図3】 図3は、本発明に係る多穴の押出チューブの一例における断面図である。
【符号の説明】
A 熱交換器
1,2 ヘッダーパイプ
13 チューブ(アルミニウム合金押出チューブ)
4 フィン部材
Claims (5)
- 重量%で、
Cu:0.03〜0.4%、
Ti:0.03〜0.5%、
Mg:0.01〜0.3%、
Mn:0.03%以下、
Zr:0.01〜0.3%を含有し、
残部がAlと不可避不純物とからなることを特徴とする高強度で耐食性に優れる熱交換器用アルミニウム合金押出チューブ。 - 重量%で、Fe:0.15〜1.0%、Si:0.3%〜1.0%のうち、1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度で耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金押出チューブ。
- Ce、La、Ndの希土類元素のうち1種または2種以上を含有し、その総量(Ce+La+Nd)が重量%で0.005〜0.2%の範囲とされたことを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度で耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金押出チューブ。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の合金組成のビレットを鋳造し、
その後均質化処理を実施せずに押出成形することを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金押出チューブの製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウム合金押出チューブと、該アルミニウム合金押出チューブにろう付けされたフィン部材とを備えたことを特徴とする高強度高耐食性の熱交換器。
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