JP2009249699A - 熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の製造方法及び熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の製造方法 - Google Patents
熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の製造方法及び熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】冷却水が強アルカリ環境となっても十分な防食効果が得られ、早期に貫通孔食を発生させるようなことのない熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の製造方法及び熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の製造方法を提供する。
【解決手段】Zn3.0%〜8.0%、Si0.5%〜1.0%、Fe0.5%〜1.0%、Ti0.1%〜0.2%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を580〜600℃で3時間以上の均質化処理を行なった後の450℃までの冷却速度を1000℃/h以上にすると共に、その後の熱間圧延を450℃以下の温度で行なうことによってアルミニウムに固溶した添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成し溶解を抑制する。それにより、アルカリ腐食液中で良好な耐食性を示すアルミニウム合金クラッド材を実現する。
【選択図】なし
【解決手段】Zn3.0%〜8.0%、Si0.5%〜1.0%、Fe0.5%〜1.0%、Ti0.1%〜0.2%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を580〜600℃で3時間以上の均質化処理を行なった後の450℃までの冷却速度を1000℃/h以上にすると共に、その後の熱間圧延を450℃以下の温度で行なうことによってアルミニウムに固溶した添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成し溶解を抑制する。それにより、アルカリ腐食液中で良好な耐食性を示すアルミニウム合金クラッド材を実現する。
【選択図】なし
Description
本発明は、芯材の一方の面に犠牲材をクラッドし他方の面にAl−Si系ろう材をクラッドした熱交換器用アルミニウム合金クラッド材に用いる犠牲材の製造方法及び当該犠牲材を用いたクラッド材の製造方法に関する。
従来のアルミニウム製熱交換器、例えば自動車用ラジエーターを図1(a),(b)に示す。図1(a)は自動車用熱交換器(ラジエーター)の正面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面拡大図である。
冷却水を通すチューブ管(1)にフィン(2)を配置し、チューブ管(1)の両端にヘッダープレート(3)を取り付けて、コア(4)を組み立て、ろう付け後にヘッダープレート(3)にバッキング(6)を介して樹脂タンク(5A),(5B)を取り付けたものである。
冷却水を通すチューブ管(1)にフィン(2)を配置し、チューブ管(1)の両端にヘッダープレート(3)を取り付けて、コア(4)を組み立て、ろう付け後にヘッダープレート(3)にバッキング(6)を介して樹脂タンク(5A),(5B)を取り付けたものである。
その材料としてフィン(2)にはJIS3003合金にZnを1.50%添加した厚さ0.1mm前後の板を用い、チューブ管(1)には冷却水からの貫通孔食の発生を防止するために、JIS3003合金を芯材とし、冷却水側にZnが添加されているJIS7072合金の犠牲材をクラッドし、外気側にJIS4045合金をろう材としてクラッドした厚さ0.2〜0.4mmのアルミニウム合金クラッド材を用いる。
またヘッダープレート(3)には、厚さ1.0〜1.3mmの厚さで、チューブ管(1)と同様の構成のアルミニウム合金クラッド材を用いる。
チューブ管(1)、ヘッダープレート(3)に用いられているアルミニウム合金クラッド材は、ろう付け加熱時に600℃程度の雰囲気に曝される。このため、犠牲材に添加されているZnは芯材中にZnの拡散層を形成する。このZn拡散層が存在するために、犠牲材に発生した腐食は、芯材方向に進行せず、横広がりに進行するため長期の耐貫通孔食性を示すことが知られている。
これら犠牲材としてはJIS7072合金の他に、Al−Zn−Mg系合金(特許文献1)、Al−Zn−In系合金が知られている。これらの合金もJIS7072合金と同様、アルミニウム合金クラッド材にした場合、犠牲材の腐食は横広がりになることが知られている。
上記チューブ管(1)およびAl−Zn−Mg系合金、Al−Zn−In系合金を犠牲材としたアルミニウム合金クラッド材においては、芯材と犠牲材に孔食電位差が存在し、そのため犠牲材に腐食が発生し芯材が露出した場合においても、犠牲材が優先的に腐食され、芯材の腐食が防止される。
さらに特許文献2には、アルミニウム合金よりなる芯材の片面にアルミニウム合金ろう材をクラッドし、他の面に犠牲材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材において、犠牲材が、Alと結合して犠牲材のマトリックスより貴な化合物を形成する元素を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金から構成され、マトリックス中に粒子径(円相当直径)1〜10μmの前記化合物が1mm2あたり5×102〜5×104個均一に分布していることを特徴とする耐食性に優れたアルミニウム合金クラッド材を提案している。
このアルミニウム合金クラッド材は、アルカリ溶液中では、犠牲材表面の化合物が存在する個所で、マトリックスで溶解し析出した水酸化アルミニウム皮膜の沈着が妨げられ、化合物があると皮膜欠陥が多くなって孔食が分散するため、皮膜欠陥が少ない場合のように孔食が局在化して深さ方向への進行が速くなることが少なく、アルカリ腐食環境においても、貫通孔食の発生が防止できるとしている。
特開平6−23535号公報
特開平11−80871号公報
熱交換器特にラジエーターの冷却水の仕様は、一部地域によって弱アルカリ使用になっているものがある。近年、自動車を走行している環境によって冷却水が何らかの原因で劣化し、強アルカリ環境(pH=11)になることが判明した。
図1に示す自動車用ラジエーター関して説明したJIS3003合金を芯材とし、冷却水側にZnが添加されているJIS7072合金犠牲材をクラッドし、外気側にJIS4045合金をろう材としてクラッドした厚さ0.2〜0.4mmのアルミニウム合金クラッド材は、冷却水がアルカリ化し走行中において高温になるような環境では十分な防食効果が得られず、早期に貫通孔食を発生させてしまう問題を生じていた。
図1に示す自動車用ラジエーター関して説明したJIS3003合金を芯材とし、冷却水側にZnが添加されているJIS7072合金犠牲材をクラッドし、外気側にJIS4045合金をろう材としてクラッドした厚さ0.2〜0.4mmのアルミニウム合金クラッド材は、冷却水がアルカリ化し走行中において高温になるような環境では十分な防食効果が得られず、早期に貫通孔食を発生させてしまう問題を生じていた。
また特許文献2の犠牲材はアルカリ腐食環境においても、貫通孔食の発生が防止でき十分な耐食性を付与することができるとしてはいるが、本発明者がアルカリ環境での犠牲材の溶解について詳細に調査したところ、アルカリ溶液でマトリックスの溶解により析出した水酸化アルミニウムはアルカリ溶解を抑制する皮膜とはなりえず、皮膜のある部分、無い部分にかかわらず均一にアルカリ溶解していくことがわかった。したがって、特許文献2の犠牲材についてもアルカリ溶液中での充分な耐食性は期待できない。
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、自動車を走行している環境によって冷却水が強アルカリ環境となっても十分な防食効果が得られ、早期に貫通孔食を発生させるようなことのない 熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の製造方法及び熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の製造方法を提供することを目的とする。
上記問題に関して発明者らが鋭意研究し、アルカリ環境での犠牲材の溶解について詳細に調査し、特に添加元素の影響を詳細に調べたところ、アルカリ溶液で溶解速度が小さくなる金属をアルミニウムに添加するとアルカリ環境での犠牲材の腐食溶解を抑制できることがわかった。これは特許文献2に示された金属間化合物の効果とは違い、アルミニウムに固溶した添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成し溶解を抑制することであることがわかった。したがって添加元素の固溶量を調整して添加元素の水酸化皮膜を生成することによって、アルカリ腐食液中で良好な耐食性を示すアルミニウム合金クラッド材を実現することができる。
係る本発明の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の製造方法は、芯材の一方の面に犠牲材をクラッドし、他方の面にAl−Si系ろう材をクラッドした熱交換器用アルミニウム合金クラッド材に用いる犠牲材の製造方法であって、Zn3.0%〜8.0%、Si0.5%〜1.0%、Fe0.5%〜1.0%、Ti0.1%〜0.2%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を580〜600℃で3時間以上の均質化処理を行なった後の450℃までの冷却速度を1000℃/h以上にすると共に、その後の熱間圧延を450℃以下の温度で行なうことを特徴とする。
さらに本発明の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の製造方法は、芯材の一方の面に犠牲材をクラッドし、他方の面にAl−Si系ろう材をクラッドした熱交換器用アルミニウム合金クラッド材に用いる犠牲材の製造方法であって、Zn3.0%〜8.0%、Si0.5%〜1.0%、Fe0.5%〜1.0%、Ti0.1%〜0.2%、Mn0.3〜0.5、Zr0.05〜0.15%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を580〜600℃で3時間以上の均質化処理を行なった後の450℃までの冷却速度を1000℃/h以上にすると共に、その後の熱間圧延を450℃以下の温度で行なうことを特徴とする。
また、本発明の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の製造方法は、熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の製造方法によって製造した犠牲材を芯材の一方の面に重ね合わせ、芯材の他方の面にAl−Si系ろう材を重ね合わせ、熱間圧延開始温度である300℃〜450℃まで280℃〜熱間圧延開始温度までの平均昇温速度が40℃/h以上となる昇温速度で加熱し、熱間圧延開始温度に2時間を超えて保持することなく300℃以上の温度で熱間圧延を行ない、ついで冷間圧延をおこなった後に200℃〜250℃で2時間以内の加熱を行なうことを特徴とする。
芯材が、Si0.8%〜1.5%、Fe0.4%以下、Cu0.5%〜1.0%、Mn1.5〜2.0%、Ti0.1%〜0.2%を含有し、残部Alおよび不純物からなるのが好ましい。
本発明の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材に用いる犠牲材の製造方法及び当該犠牲材を用いたクラッド材の製造方法は、酸性側、アルカリ性側の腐食環境で優れた犠牲防食能を有し、かつ長時間にわたり腐食孔食が進行しない優れた耐食性を有し、犠牲材の腐食溶解を必要以上に増大させないものである。
特にフッ化物系フラックスを用いる不活性ガス雰囲気ろう付けあるいは真空ろう付けにより、自動車用ラジエーター、ヒーターコアなどのアルミニウム製熱交換器を製造する場合、その構成部材であるチューブ材(クラッド材の溶接管あるいは成型チューブ)などに適応でき、とくに当該熱交換器においてアルカリ腐食性環境に対して優れた耐食性を備える。
特にフッ化物系フラックスを用いる不活性ガス雰囲気ろう付けあるいは真空ろう付けにより、自動車用ラジエーター、ヒーターコアなどのアルミニウム製熱交換器を製造する場合、その構成部材であるチューブ材(クラッド材の溶接管あるいは成型チューブ)などに適応でき、とくに当該熱交換器においてアルカリ腐食性環境に対して優れた耐食性を備える。
まず本発明の犠牲材の成分限定理由について述べる。
Zn:Znは中性および酸性環境においては、アルミニウム合金に固溶し、犠牲材の自然電極電位を卑にして芯材を防食し、チューブの耐食性を向上させる。しかしながらアルカリ環境においては高温において過剰に溶解してチューブに貫通孔を生じてしまう。中性および酸性域の腐食とアルカリ域での腐食を両立させるためには、添加量3.0%未満ではアルカリ溶液で加熱中の溶解量が多く、8.0%を越えると中性および酸性環境において過剰に溶解し、チューブの貫通寿命を短くする。従ってZnの添加量を3.0%〜8.0%以下と規定した。
Zn:Znは中性および酸性環境においては、アルミニウム合金に固溶し、犠牲材の自然電極電位を卑にして芯材を防食し、チューブの耐食性を向上させる。しかしながらアルカリ環境においては高温において過剰に溶解してチューブに貫通孔を生じてしまう。中性および酸性域の腐食とアルカリ域での腐食を両立させるためには、添加量3.0%未満ではアルカリ溶液で加熱中の溶解量が多く、8.0%を越えると中性および酸性環境において過剰に溶解し、チューブの貫通寿命を短くする。従ってZnの添加量を3.0%〜8.0%以下と規定した。
Si:Siはアルミニウム合金に添加すると、アルミに固溶またはAl−Si−Fe系の化合物を形成する。この化合物は中性環境においては孔食の起点となり、腐食点を分散させることにより犠牲腐食を横広がりにする効果がある。またアルカリ環境においては、高温での腐食溶解量を抑制する効果を有する。この効果が0.5未満では十分でなく、1.0%を越えるとろう付け加熱時に溶けてしまう。従ってSiの添加量を0.5%以上、1.0%以下と規定した。
Fe:Feはアルミニウム合金に添加すると、アルミに固溶またはAl−Fe系の化合物を形成する。この化合物は中性環境においては孔食の起点となり、腐食点を分散させることにより犠牲材の腐食を横広がりにする効果がある。またアルカリ環境においては、高温での腐食溶解を減少させる効果を有する。この効果が0.5%未満では十分でなく、Fe添加量1.0%以上では圧延加工中に割れてしまう。従ってFeの添加量を0.5%〜1.0と規定した。
Ti:Tiはアルミニウム合金に添加するとアルミに固溶またはAl−Ti系の化合物を形成する。この化合物は中性環境においては孔食の起点となり、腐食点を分散させることにより犠牲腐食を横広がりにする効果がある。またアルカリ環境においては、高温での腐食溶解を抑制する効果を有する。この効果が0.10%未満では十分でなく、0.20%を越えると圧延加工中に割れてしまう。従ってTiの添加量を0.1%以上0.2%以下と規定した。
本発明の犠牲材においてはさらに以下の元素を添加するのが好ましい。
Mn:Mnはアルミニウム合金に添加すると、アルミに固溶またはAl−Mn−Fe系の化合物を形成する。この化合物は中性環境において孔食の起点とならず、そのため腐食による減耗を抑制する効果を有する。またアルカリ環境においては、高温での腐食溶解を抑制する効果を有する。この効果が0.3%未満では十分でなく、0.5%を越えると中性環境中での耐食性に劣る。従ってMnの添加量を0.3%〜0.5%と規定した。
Mn:Mnはアルミニウム合金に添加すると、アルミに固溶またはAl−Mn−Fe系の化合物を形成する。この化合物は中性環境において孔食の起点とならず、そのため腐食による減耗を抑制する効果を有する。またアルカリ環境においては、高温での腐食溶解を抑制する効果を有する。この効果が0.3%未満では十分でなく、0.5%を越えると中性環境中での耐食性に劣る。従ってMnの添加量を0.3%〜0.5%と規定した。
Zr:Zrはアルミニウムに添加するとアルミに固溶またはAl−Zr系の化合物を形成する。この化合物は中性環境においては孔食の起点となり、腐食点を分散させることにより犠牲腐食を横広がりにする効果がある。アルカリ環境においては高温での腐食溶解を抑制する効果を有する。この効果が0.05%未満では十分でなく、0.15%以上であると圧延割れを生じてしまう。従ってZrの添加量を0.05%〜0.15%に規定した。
本発明において、芯材としては犠牲材より孔食電位の高いアルミニウム合金なら基本的に何でも使える。しかし、熱交換器とした場合、振動等による破壊を生じないため、ろう付け加熱後の強度が高いものが必要になる。そのため、請求項4に規定した組成の合金を用いるのが好ましい。
次に本発明請求項4における芯材の合金組成の限定理由を述べる
Si:Siは、マトリックスに固溶およびFe、Mnと金属間化合物を形成し強度向上に寄与する。その含有量が0.8%未満であると強度向上効果が無く、1.5%を越えるとろう付け時の芯材の溶融および外部耐食性に劣る、従って本発明においてはSi含有量を0.8%以上1.5%以下と規定した。
Si:Siは、マトリックスに固溶およびFe、Mnと金属間化合物を形成し強度向上に寄与する。その含有量が0.8%未満であると強度向上効果が無く、1.5%を越えるとろう付け時の芯材の溶融および外部耐食性に劣る、従って本発明においてはSi含有量を0.8%以上1.5%以下と規定した。
Fe:Feは、マトリックスに固溶およびSi、Mnと金属間化合物を形成する。その含有量が0.4%を越えるとクラッド材の芯材とした場合に、芯材の耐食性が劣化する。従って本発明においてはFe含有量を0.4%以下と規定した。
Cu:Cuは、マトリックスに固溶し強度向上に寄与する。その含有量が0.5%未満であると強度向上効果に乏しく、1.0%を超えるとろう付け時の芯材の溶融および芯材に粒界腐食が発生し外部耐食性に劣る、従って本発明においてはCuの含有量を0.5%以上1.0%以下と規定した。
Mn:Mnはマトリックスに固溶およびSi、Feと金属間化合物を形成し強度向上に寄与する。その含有量が1.5%未満では強度向上効果が十分でなく、2.0%を越えるとクラッド材の芯材とした場合に、圧延加工時に端部に割れが発生し圧延加工が困難になる。従って本発明においてはMn含有量を1.5%〜2.0%と規定した。
Ti:Tiは鋳造時においてTiの濃淡部を形成する、この濃淡部が圧延加工により伸ばされTiの濃淡層を圧延方向に形成することで芯材自身の耐食性を向上させる。0.1%未満の添加量では上記効果が期待できず、0.2%以上ではTiの巨大晶出物を形成し、圧延時に割れの原因となる。従ってTiの添加量を0.1%〜0.2%以下と規定した。
芯材の製造方法は特に規制しないが、通常は均質化した鋳塊のまま用いる。
本発明においてクラッド材を形成する場合に、ろう材として使用される合金はJISに規定されているBA4343P、BA4045P、BA4047Pが用いられるが、本発明においては限定されるものではなく、熱交換器の形状および熱交換器を作成する時の加熱条件によって種々選択が可能である。
またろう材の製造方法は特に規制しないが、通常はクラッド率の調整のため熱間圧延材を用いる。
またろう材の製造方法は特に規制しないが、通常はクラッド率の調整のため熱間圧延材を用いる。
本発明の犠牲材は、前述した成分組成の合金を常法に従って溶解し、DC鋳造法等の通常の鋳造法によって鋳造する。
得られた鋳塊に対しては580〜600℃で3時間以上の均質化処理を行なった後の450℃までの冷却速度を1000℃/h以上で行なう。このように均質化処理およびその後の冷却条件を規定した理由は次の通りである。
得られた鋳塊に対しては580〜600℃で3時間以上の均質化処理を行なった後の450℃までの冷却速度を1000℃/h以上で行なう。このように均質化処理およびその後の冷却条件を規定した理由は次の通りである。
均質化処理とは、鋳塊の添加元素の偏析を除去したり、鋳塊のセル・結晶粒の境界に存在する粗大な第2相粒子、晶出物などを母相に固溶させる効果があり、さらには熱間圧延工程とお互いに関連しあっての添加元素の固溶量を得るのに重要な工程である。
この均質化温度が580℃未満では、添加元素の固溶量が不十分になり、そのため添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成する効果が不十分になる。一方、600℃を越えると鋳塊が共晶融解を起こす危険性がある、また均質化処理の時間が3時間未満では上述の効果が不十分になる。均質化処理の時間の上限は特に規定しないが、経済性の観点から10時間以下が望ましい。
これによって、犠牲材に添加したZn以外の元素(Si、Fe、Mn、Ti、Zr等)を十分に固溶させることができる。
これによって、犠牲材に添加したZn以外の元素(Si、Fe、Mn、Ti、Zr等)を十分に固溶させることができる。
また均質化処理後450℃まで1000℃/h以上の冷却速度で鋳塊を冷却することは、アルカリ溶液で添加元素の緻密な水酸化物を形成させるための固溶量を得るために必要になる。この温度域までこの冷却速度未満で鋳塊を冷却した場合、均質化処理で固溶した元素が、冷却過程においてAl−Mn−FeあるいはAl−Mn−Si、Al−Mn−Si−Fe等の析出物の生成および粗大化が起こり、添加元素の固溶量が所望の値にならず、その後の450℃以下で開始される熱間圧延では、その粗大化合物を解消できず、それに伴い添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成する効果が得られない。なおここで言う冷却速度は鋳塊を均質化処理温度から450℃以下の温度まで冷却したときの平均冷却速度である。
尚、冷却速度の上限は特に規定していないが、鋳塊に過剰な冷却を行なうと、鋳塊が幅方向によじれる現象があり、熱間圧延が困難になる。従って鋳塊の冷却速度は1000℃/h〜1500℃/hであることが好ましい。
均質化処理後の熱間圧延の条件として本発明は450℃以下で実施することとしている。
これは、均質化処理およびその後の冷却速度を調整することで得られた、犠牲材中の添加元素の固溶量を所望の値にし、添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成する効果を得るためである。
熱間圧延開始温度が450℃を超えて実施した場合、圧延中に析出物の生成がおこり添加元素の固溶量が所望の値にならない。また圧延温度の下限は特に規定しないが、300℃未満では熱間圧延自体が困難になる。従って熱間圧延温度は300℃〜450℃が好ましい。
これは、均質化処理およびその後の冷却速度を調整することで得られた、犠牲材中の添加元素の固溶量を所望の値にし、添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成する効果を得るためである。
熱間圧延開始温度が450℃を超えて実施した場合、圧延中に析出物の生成がおこり添加元素の固溶量が所望の値にならない。また圧延温度の下限は特に規定しないが、300℃未満では熱間圧延自体が困難になる。従って熱間圧延温度は300℃〜450℃が好ましい。
また本発明において熱間圧延の開始温度を450℃以下とし、この温度に達するまでの時間は特に規定しないが、280℃〜熱間圧延開始温度までの平均昇温速度は40℃/h以上が好ましい。この温度範囲での昇温速度が40℃/h未満であると、加熱中に添加元素の析出が起こり、犠牲材の製造工程を調整することで得られた、犠牲材に添加された元素の固溶量が所望の値にならず、添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成する効果が得られないからである。
さらに本発明は、クラッド材の熱間圧延において、クラッド鋳塊を熱間圧延の開始温度である300℃〜450℃まで、加熱途中の280℃〜熱間圧延開始温度までの平均昇温速度を40℃/h以上で加熱し、熱間圧延開始温度に保持しないか、保持する場合においても2時間以内保持した後に300℃以上の温度で熱間圧延を行ない、ついで冷間圧延をおこなった後に200℃〜250℃で2時間以内の加熱を行なうことを特徴とするアルミニウム合金クラッド材の製造方法である。
クラッド鋳塊を熱間圧延の開始温度まで加熱し、加熱途中の280℃〜熱間圧延開始温度までの平均昇温速度を40℃/h未満で加熱した場合、加熱中に添加元素の析出が起こり、犠牲材の製造工程を調整することで得られた、犠牲材に添加された元素の固溶量が所望の値にならず、添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成する効果が得られない。
またクラッド鋳塊を450℃を越えて加熱した場合、また2時間を越えて保持した場合も同様に、犠牲材の製造工程を調整することで得られた、犠牲材に添加された元素の固溶量が所望の値にならず、添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成する効果が得られない。それに加え熱間圧延において、300℃未満では熱間圧延自体が困難になり、450℃を越えると圧延中に犠牲材に添加した元素の析出が起こり、犠牲材の製造工程を調整することで得られた、犠牲材に添加された元素の固溶量が所望の値にならず、添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成する効果が得られない。
また、熱間圧延後、冷間圧延をして所望の板厚にするが、このままでは材料の引張性能において伸びの値が小さく熱交換器用チューブとしての成型ができない、したがって加熱を施して材料の伸びの値を大きくする必要がある。この加熱が200℃未満では所望の伸びの値が得られず、250℃を超えると加熱中に犠牲材に添加した元素の析出が起こり、犠牲材の製造工程を調整することで得られた、犠牲材に添加された元素の固溶量が所望の値にならず、添加元素がアルカリ溶液中で溶解・再析出して添加元素の水酸化物を表面に緻密に生成する効果が得られない。また保持時間が2時間を越えると上述した結果と同じことになる。
従って本発明においては、クラッド材の熱間圧延において、クラッド鋳塊を熱間圧延の開始温度まで加熱し、熱間圧延開始温度である300℃〜450℃まで、そのときの280℃〜熱間圧延開始温度までの平均昇温速度を40℃/h以上で加熱し、熱間圧延開始温度に保持しないか、保持する場合においても2時間以内保持した後に300℃以上の温度で熱間圧延を行ない、ついで冷間圧延をおこなった後に200℃〜250℃で2時間以内の加熱を行なうと規定した。
以下、段落番号がずれる。
次に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。
表1に本発明例の芯材合金成分と本発明例を外れる比較例芯材合金を示す。
表2に本発明例の犠牲材合金成分と本発明例を外れる比較例犠牲材合金を示す。
次に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。
表1に本発明例の芯材合金成分と本発明例を外れる比較例芯材合金を示す。
表2に本発明例の犠牲材合金成分と本発明例を外れる比較例犠牲材合金を示す。
表1にS1〜S8として示すアルミニウム合金クラッド材の芯材は、Si0.8%〜1.5%、Fe0.4%以下、Cu0.5%〜1.0%、Mn1.5〜2.0%、Ti0.1%〜0.2%を含有し、残部Alおよび不純物からなるとする本発明のアルミニウム合金クラッド材の条件を充足する。
しかしS9〜S17は本発明のアルミニウム合金クラッド材の条件を充足しない。具体的にはS9はSi量が本発明の下限値の0.8%未満の0.52%であり、S10はSi量が本発明の上限値の1.5%を越える1.62%であり、S11はFe量が本発明の上限値の0.4%を超える0.62%である。
しかしS9〜S17は本発明のアルミニウム合金クラッド材の条件を充足しない。具体的にはS9はSi量が本発明の下限値の0.8%未満の0.52%であり、S10はSi量が本発明の上限値の1.5%を越える1.62%であり、S11はFe量が本発明の上限値の0.4%を超える0.62%である。
S12はCu量が0.32%であって0.50%以上とする本発明の規定値未満である。さらにS13はCu量が本発明の上限値である1.00%を越える1.21%である。またS14は芯材のMn量が本発明の下限値の1.5%未満の1.12%である。S15は芯材のMn量が本発明の上限値の2.0%を越える2.25%である。
S16はTi量が0.08%であって芯材のTi量が0.1%以上とする本発明規定値未満である。さらにS17はTi量が本発明の上限値である0.20%を越える0.22%である。
表2にG1〜G9として示すアルミニウム合金クラッド材の犠牲材は、Zn3.0%〜8.0、Si0.5%〜1.0%、Fe0.5%〜1.0%、Ti0.1%〜0.2%を含有し、残部Alおよび不純物からなるとする本発明の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の条件を充足する。
しかしG10〜G21は本発明のアルミニウム合金クラッド材の条件を充足しない。具体的にはG10はSi量が0.43%であって、Si量が0.50%以上とする本発明規定値未満である。またG11はSi量が本発明の上限値である1.0%を越え1.23%である。G12はFe量が0.41%であって、犠牲材のFe量が0.50%以上とする本発明の規定値未満である。G13はFe量が本発明の上限値である1.00%を越え1.22%である。
しかしG10〜G21は本発明のアルミニウム合金クラッド材の条件を充足しない。具体的にはG10はSi量が0.43%であって、Si量が0.50%以上とする本発明規定値未満である。またG11はSi量が本発明の上限値である1.0%を越え1.23%である。G12はFe量が0.41%であって、犠牲材のFe量が0.50%以上とする本発明の規定値未満である。G13はFe量が本発明の上限値である1.00%を越え1.22%である。
またG14はZn量が2.54%であって、Zn量が3.00%以上とする本発明規定値未満である。またG15はZn量が9.03%であって、Zn量が8.00%以下とする本発明規定値を超える。さらにG16はTi量が0.08%であって、Ti量が0.1%以上とする本発明規定値未満である。
またG17はTi量が0.22%であって、Ti量が0.2%以下とする本発明規定値を超える。G18はMn量が0.21%であって、Mn量が0.3%以上とする本発明規定値未満である。G19はMn量が0.75%であって、Mn量が0.5%以下とする本発明規定値を超える。
さらにG20は、犠牲材のZr量が0.03%であって、Zr量が0.05%以上とする本発明規定値未満である。
またG21は、Zr量が0.21%であって、Zr量が0.15%以下とする本発明規定値を超える。
またG21は、Zr量が0.21%であって、Zr量が0.15%以下とする本発明規定値を超える。
これら犠牲材と芯材合金と内ろう材(BA4045P合金(ろう材と示す)を鋳塊サイズ幅600mm、長さ5000mm、幅1200mmのサイズで鋳造した。犠牲材は580℃〜600℃で3〜10時間の均質化処理を施した後に鋳塊に1000℃/h以上の冷却を施し、熱間圧延開始の温度が450℃以下である熱間圧延を行ない所定厚さにした。また、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施した。またろう材は熱間圧延にて所定厚さとした。
これら芯材と犠牲材合金とろう材(BA4045P合金)とを所定のクラッド率(ろう材10%、犠牲材20%)になるように合わせて、280℃〜450℃までの昇温速度を45℃〜50℃/hで435℃〜445℃まで加熱し、5〜20分保持した後に、435℃〜440℃で熱間圧延を開始した。その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に235℃〜240℃で1〜2時間の焼鈍を実施し、表3に示す本発明例及び表4に示す比較例のアルミニウムブレージングシート0.20mmの板を得た。
表3−1に示す本発明例のNo.1〜No.30にあってはそのアルミニウム合金芯材の組成(S1〜S8)は本発明のアルミニウム合金クラッド材の条件を充足し、犠牲材の組成(G1〜G8)は本発明の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の条件を充足する。
表4−1に示すNo.31〜No.39は、そのアルミニウム合金芯材における成分構成が本発明のクラッド材の製造方法の条件を充足しない。
一方No.40〜No.51にあってはその犠牲材の組成は、本発明の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の条件を充足しない。
一方No.40〜No.51にあってはその犠牲材の組成は、本発明の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の条件を充足しない。
したがって、No.31〜No.51は芯材若しくは犠牲材の何れかが本発明の規定を充足しない。
しかしNo.52〜No.71は芯材及び犠牲材の何れもが本発明の規定を充足する。
しかしNo.52〜No.71は芯材及び犠牲材の何れもが本発明の規定を充足する。
この芯材、犠牲材合金の成分が本発明例範囲内であるNo.52〜No.71につき製造工程の比較例として表4−1〜表4−3に示す各条件設定によるアルミニウムブレージングシートの製造を行った。
No.52〜No.54には犠牲材の均質化処理を580℃〜600℃×3〜10時間で行い、その後鋳塊の冷却速度を本発明を外れた1000℃/h未満として冷却を行ない、犠牲材の熱間圧延の開始温度を450℃以下として熱間圧延を行って所定厚さにした。
一方、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施し、ろう材は熱間圧延にて所定厚さとした。
これらの芯材と犠牲材合金とろう材とを上記と同様のクラッド率にしてクラッドし、そのクラッド鋳塊を280℃〜450℃までの昇温速度を45℃/hとして445℃まで加熱し、5分保持した後に、440℃で熱間圧延を開始した。その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に240℃×2hの焼鈍を実施したものを作成した。
一方、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施し、ろう材は熱間圧延にて所定厚さとした。
これらの芯材と犠牲材合金とろう材とを上記と同様のクラッド率にしてクラッドし、そのクラッド鋳塊を280℃〜450℃までの昇温速度を45℃/hとして445℃まで加熱し、5分保持した後に、440℃で熱間圧延を開始した。その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に240℃×2hの焼鈍を実施したものを作成した。
No.55、No.56には犠牲材の均質化温度を580℃〜600℃とし、均質化時間を本発明の規定を外れる3時間未満として均質化を行い、その後鋳塊の冷却速度を1000℃/h以上で行い、犠牲材の熱間圧延の開始温度を450℃以下として熱間圧延を行って所定厚さにした。
一方、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施し、ろう材は熱間圧延にて所定厚さとした。これらの芯材と犠牲材合金とろう材とを上記と同様のクラッド率にしてクラッドし、そのクラッド鋳塊を280℃〜450℃までの昇温速度を45〜50℃/hとして445℃まで加熱し、5分保持した後に、440℃で熱間圧延を開始した。その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に235℃×2hの焼鈍を実施したものを作成した。
一方、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施し、ろう材は熱間圧延にて所定厚さとした。これらの芯材と犠牲材合金とろう材とを上記と同様のクラッド率にしてクラッドし、そのクラッド鋳塊を280℃〜450℃までの昇温速度を45〜50℃/hとして445℃まで加熱し、5分保持した後に、440℃で熱間圧延を開始した。その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に235℃×2hの焼鈍を実施したものを作成した。
No.57〜No.59には、犠牲材の均質化処理を本発明温度範囲を外れた550℃〜570℃×3〜10時間で行い、その後鋳塊の冷却を冷却速度を1000℃/h以上として行ない、熱間圧延の開始温度を450℃以下として熱間圧延を行って所定厚さにした。
一方、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施し、ろう材は熱間圧延にて所定厚さとした。
これらの芯材と犠牲材合金とろう材とを上記と同様のクラッド率にしてクラッドし、そのクラッド鋳塊を280℃〜450℃までの昇温速度を50℃/hとして445℃まで加熱し、5分保持した後に、440℃で熱間圧延を開始した。その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に235℃×2hの焼鈍を実施したものを作成した。
一方、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施し、ろう材は熱間圧延にて所定厚さとした。
これらの芯材と犠牲材合金とろう材とを上記と同様のクラッド率にしてクラッドし、そのクラッド鋳塊を280℃〜450℃までの昇温速度を50℃/hとして445℃まで加熱し、5分保持した後に、440℃で熱間圧延を開始した。その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に235℃×2hの焼鈍を実施したものを作成した。
No.60〜No.62には犠牲材の均質化処理を580℃〜600℃×3〜10時間で行い、その後鋳塊の冷却速度を1000℃/h以上として行ない、熱間圧延の開始温度を本発明の規定を外れる480℃〜500℃として熱間圧延を行って所定厚さとした。
一方、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施し、ろう材は熱間圧延にて所定厚さとして、それらの芯材と犠牲材合金とろう材とを上記と同様のクラッド率にしてクラッドして得られたクラッド鋳塊280℃〜450℃までの昇温速度を45℃/hとして440℃まで加熱し、15分保持した後に、435℃で熱間圧延を開始した。その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に240℃×2hの焼鈍を実施したものを作成した。
一方、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施し、ろう材は熱間圧延にて所定厚さとして、それらの芯材と犠牲材合金とろう材とを上記と同様のクラッド率にしてクラッドして得られたクラッド鋳塊280℃〜450℃までの昇温速度を45℃/hとして440℃まで加熱し、15分保持した後に、435℃で熱間圧延を開始した。その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に240℃×2hの焼鈍を実施したものを作成した。
No.63〜No.65には、犠牲材の均質化処理を580℃で10時間を行い、その後鋳塊の冷却速度を1100℃/h以上で行い、熱間圧延の開始温度を450℃で行い所定厚さにし、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施し、ろう材は熱間圧延にて所定厚さとし、芯材と犠牲材合金とろう材を上記と同様のクラッド率にしてクラッド鋳塊の加熱を280℃〜450℃までの間、本発明の規定を外れる20℃/hで昇温し、クラッド鋳塊を440℃加熱し5分保持したのちに、435℃で熱間圧延し、その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に235℃×1時間の焼鈍を実施したものを作成した。
No.66〜No.68には犠牲材の均質化処理を600℃×3時間を行い、その後鋳塊の冷却速度を1000℃/h以上で行い、熱間圧延の開始温度を430℃で行い所定厚さにし、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施し、ろう材は熱間圧延にて所定厚さとし、芯材と犠牲材合金とろう材を上記と同様のクラッド率にしてクラッド鋳塊の加熱を280℃〜450℃までの間、40℃/hで昇温し、そのクラッド鋳塊を505℃に加熱したのちに、10分保持し、本発明規定を超える温度の500℃で熱間圧延し、その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に245℃×1時間の焼鈍を実施したものを作成した。
No.69〜No.71には、芯材、犠牲材合金の成分は本発明範囲内であり、犠牲材の均質化処理を600℃×3時間を行い、その後鋳塊の冷却速度を1000℃/h以上で行い、熱間圧延の開始温度を450℃で行い所定厚さにし、芯材には560℃×3時間の均質化処理を施し、ろう材は熱間圧延にて所定厚さとし、芯材と犠牲材合金とろう材を上記と同様のクラッド率にしてクラッド鋳塊の加熱を280℃〜450℃までの間、45℃/hで昇温し、440℃に鋳塊を加熱し、5分保持したのちに435℃で熱間圧延し、その後冷間圧延を施し、0.2mmの板にした後に本発明の規定を外れる300℃×2時間の焼鈍を実施したものを作成した。
これらのアルミニウムブレージングシートに関して以下の評価を行った。その結果を表3及び表4に示した。
これらのアルミニウムブレージングシートに関して以下の評価を行った。その結果を表3及び表4に示した。
(1)引張り試験
表3に示す本発明例及び表4に示す比較例の構成のブレージングシートをJIS5号のに加工し、窒素雰囲気下でろう付け相当の加熱(600℃で3分)を行った後、室温で7日間放置した後、引張り試験を行い、強度を測定した。
本発明例はろう付け加熱後の強度が150MPa程度であり高強度を示した。それに対し、比較例No.31では芯材のSi量が本発明未満のため強度が劣っていた。比較例No.34では芯材のCu量が本発明未満のため強度が劣っていた。比較例No.36では芯材のMn量が本発明未満にため強度が劣っていた。
表3に示す本発明例及び表4に示す比較例の構成のブレージングシートをJIS5号のに加工し、窒素雰囲気下でろう付け相当の加熱(600℃で3分)を行った後、室温で7日間放置した後、引張り試験を行い、強度を測定した。
本発明例はろう付け加熱後の強度が150MPa程度であり高強度を示した。それに対し、比較例No.31では芯材のSi量が本発明未満のため強度が劣っていた。比較例No.34では芯材のCu量が本発明未満のため強度が劣っていた。比較例No.36では芯材のMn量が本発明未満にため強度が劣っていた。
比較例No.32では、芯材のSi量が本発明を超えるため、クラッド材がろう付け加熱中に溶融してしまった。比較例No.35では、芯材のCu量が本発明を超えるため、クラッド材がろう付け加熱中に溶融してしまった。比較例No.37では、芯材のMn量が本発明例を越えるため、クラッドした鋳塊の圧延加工が出来なかった。
比較例No.39では、芯材のTi量が本発明例を越えるため、クラッドした鋳塊の圧延加工が出来なかった。比較例No.41では、犠牲材のSi量が本発明例を超えるため、クラッド材がろう付け加熱中に溶融してしまった。比較例No.43では、犠牲材のFe量が本発明例を超えるため、犠牲材の圧延加工が出来なかった。比較例No.47では、犠牲材のTi量が本発明例を超えるため、犠牲材の圧延加工が出来なかった。比較例No.51では、犠牲材中のZr量が本発明例を越えるため、犠牲材の圧延加工が出来なかった。
(2)腐食試験1
表3に示す本発明例及び表4に示す比較例の構成のブレージングシートを幅30mm、長さ120mmの板に切り出し、窒素雰囲気下でろう付け相当の加熱(600℃で3分)を行った後、端部を絶縁テープでマスキングした後に、Cl−:195ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppm(pH=11に水酸化ナトリウムで調整)溶液に、腐食の試験面に対して、比液量6mL/cm2でを浸漬し、試験液88℃で8時間過熱した後、16時間放置するサイクル試験を3ヶ月間実施し、試験後の最大孔食深さを測定した。
表3に示す本発明例及び表4に示す比較例の構成のブレージングシートを幅30mm、長さ120mmの板に切り出し、窒素雰囲気下でろう付け相当の加熱(600℃で3分)を行った後、端部を絶縁テープでマスキングした後に、Cl−:195ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppm(pH=11に水酸化ナトリウムで調整)溶液に、腐食の試験面に対して、比液量6mL/cm2でを浸漬し、試験液88℃で8時間過熱した後、16時間放置するサイクル試験を3ヶ月間実施し、試験後の最大孔食深さを測定した。
本発明例のブレージングシートは良好な耐食性を示した。それに対し比較例No.40は犠牲材のSi量が本発明未満のため、貫通腐食を生じた。比較例No.42は、犠牲材のFe量が本発明未満のため、貫通腐食を生じた。比較例No.44は、犠牲材のZn量が本発明未満のため、貫通腐食を生じた。比較例No.46は、犠牲材のTi量が本発明未満のため、貫通腐食を生じた。比較例No.48は、犠牲材のZn、Mn量が本発明未満のため、貫通腐食を生じた。比較例No.50は犠牲材のZn、Zr量が本発明未満のため、貫通腐食を生じた。
比較例No.52〜No.54は芯材、犠牲材の成分が本発明内にあるが、犠牲材の鋳塊の冷却速度が本発明範囲を外れるため貫通腐食を生じた。
比較例No.55、No.56は犠牲材鋳塊の均質化処理温度が本発明にあるが、時間が本発明の規定を外れるために貫通腐食を生じた。
比較例No.57〜No.59は犠牲材鋳塊の均質化処理温度が本発明の規定を外れるために貫通腐食を生じた。比較例No.60〜No.62は犠牲材鋳塊の熱間圧延の開始温度が本発明の規定を外れるために貫通腐食を生じた。比較例No.63〜No.65は、クラッド鋳塊の熱間圧延前の昇温速度が本発明をはずれるために貫通腐食を生じた。比較例No.66〜No.68はクラッド鋳塊の熱間圧延温度が本発明をはずれるために貫通腐食を生じた。比較例No.69〜No.71はクラッド材の焼鈍温度が本発明をはずれるために貫通腐食を生じた。
比較例No.55、No.56は犠牲材鋳塊の均質化処理温度が本発明にあるが、時間が本発明の規定を外れるために貫通腐食を生じた。
比較例No.57〜No.59は犠牲材鋳塊の均質化処理温度が本発明の規定を外れるために貫通腐食を生じた。比較例No.60〜No.62は犠牲材鋳塊の熱間圧延の開始温度が本発明の規定を外れるために貫通腐食を生じた。比較例No.63〜No.65は、クラッド鋳塊の熱間圧延前の昇温速度が本発明をはずれるために貫通腐食を生じた。比較例No.66〜No.68はクラッド鋳塊の熱間圧延温度が本発明をはずれるために貫通腐食を生じた。比較例No.69〜No.71はクラッド材の焼鈍温度が本発明をはずれるために貫通腐食を生じた。
(4)腐食試験2(酸性内部試験)
表3に示す本発明例及び表4に示す比較例の組成のブレージングシートを幅30mm、長さ120mmの板に切り出し、窒素雰囲気下でろう付け相当の加熱(600℃で3分)を行った後、端部を絶縁テープ等でマスキングした後に、Cl−:195ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppm(未調整でpH=3)溶液に、腐食の試験面に対して比液量6mL/cm2でを浸漬し、試験液を88℃で8時間加熱した後、16時間放置するサイクル試験を3ヶ月間実施し、試験後の最大孔食深さを測定した。
表3に示す本発明例及び表4に示す比較例の組成のブレージングシートを幅30mm、長さ120mmの板に切り出し、窒素雰囲気下でろう付け相当の加熱(600℃で3分)を行った後、端部を絶縁テープ等でマスキングした後に、Cl−:195ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppm(未調整でpH=3)溶液に、腐食の試験面に対して比液量6mL/cm2でを浸漬し、試験液を88℃で8時間加熱した後、16時間放置するサイクル試験を3ヶ月間実施し、試験後の最大孔食深さを測定した。
本発明のクラッド材の製造方法によって製造されたブレージングシートは良好な耐食性を示した。それに対し比較例No.33は、芯材のFe量が本発明を超えるために、貫通腐食を生じた。比較例No.38は、芯材のTi量が本発明未満のため、貫通腐食を生じた。比較例No.45は、犠牲材のZn量が本発明を超えるために、貫通腐食を生じた。比較例No.49は犠牲材のMn量が本発明を超えるために、貫通腐食を生じた。
以上の様に、本発明のクラッド材の製造方法によって製造されたブレージングシートは、ろう付け加熱後に高い強度を示し、酸性側およびアルカリ性側で良好な耐食性を示す。
1・・・チューブ管、2・・・フィン、3・・・ヘッダープレート、4・・・コア、5・・・樹脂タンク、6・・・バッキング。
Claims (4)
- 芯材の一方の面に犠牲材をクラッドし、他方の面にAl−Si系ろう材をクラッドした熱交換器用アルミニウム合金クラッド材に用いる犠牲材の製造方法であって、Zn3.0%(mass%、以下同じ)〜8.0%、Si0.5%〜1.0%、Fe0.5%〜1.0%、Ti0.1%〜0.2%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を580〜600℃で3時間以上の均質化処理を行なった後の450℃までの冷却速度を1000℃/h以上にすると共に、その後の熱間圧延を450℃以下の温度で行なうことを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の製造方法。
- 芯材の一方の面に犠牲材をクラッドし、他方の面にAl−Si系ろう材をクラッドした熱交換器用アルミニウム合金クラッド材に用いる犠牲材の製造方法であって、Zn3.0%〜8.0%、Si0.5%〜1.0%、Fe0.5%〜1.0%、Ti0.1%〜0.2%、Mn0.3〜0.5、Zr0.05〜0.15%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を580〜600℃で3時間以上の均質化処理を行なった後の450℃までの冷却速度を1000℃/h以上にすると共に、その後の熱間圧延を450℃以下の温度で行なうことを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材用犠牲材の製造方法によって製造した犠牲材を芯材の一方の面に重ね合わせ、芯材の他方の面にAl−Si系ろう材を重ね合わせ、熱間圧延開始温度である300℃〜450℃まで280℃〜熱間圧延開始温度までの平均昇温速度が40℃/h以上となる昇温速度で加熱し、熱間圧延開始温度に2時間を超えて保持することなく300℃以上の温度で熱間圧延を行ない、ついで冷間圧延をおこなった後に200℃〜250℃で2時間以内の加熱を行なうことを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の製造方法。
- 芯材が、Si0.8%〜1.5%、Fe0.4%以下、Cu0.5%〜1.0%、Mn1.5〜2.0%、Ti0.1%〜0.2%を含有し、残部Alおよび不純物からなることを特徴とする請求項3記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の製造方法。
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