JP2023045751A - ブレージングシート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度、耐食性及びろう付性に優れたブレージングシートを提供する。【解決手段】ブレージングシート1は、心材11、心材11の一方の面上に積層された中間材12、中間材12上に積層されたろう材13及び心材11の他方の面上に積層された犠牲陽極材14を有している。心材11は、特定の化学成分を有し、金属組織中に繊維状組織を有している。中間材12は、心材11よりも卑な孔食電位を有するアルミニウム合金からなる。ろう材13は、特定の化学成分を有するとともに18μm以上の厚みを有している。犠牲陽極材14は、特定の化学成分を有するとともに20μm以上の厚みを有している。心材11、中間材12、ろう材13及び犠牲陽極材14の厚みの合計が120~350μmである。心材11の厚みが、心材11、中間材12、ろう材13及び犠牲陽極材14の厚みの合計に対して55%以上である。【選択図】図1
Description
本発明は、ブレージングシート及びその製造方法に関する。
アルミニウム合金は、金属としては軽量である、熱伝導性に優れているなどの特性を活かし、ラジエータやエバポレータ、ヒータ、コンデンサ等の自動車用熱交換器に用いられている。この種の熱交換器は、冷媒を流通させるための複数のチューブと、チューブに冷媒を分配し、またはチューブから流出した冷媒を集めるヘッダと、を有している。
熱交換器におけるチューブには、高い熱伝導性に加え、熱疲労や走行中の振動に対する高い耐久性、路面からの水しぶき等に起因する外面腐食に対する耐食性及び防錆機能が有効でない冷却水を用いることによる内面腐食に対する耐食性等の種々の特性に優れていることが求められている。これらの要求を満たすため、熱交換器のチューブは、心材と、心材の一方の面上に積層されたろう材と、心材の他方の面上に積層された犠牲陽極材とを備えたブレージングシートから構成されていることがある。
近年では、自動車の軽量化の一環として、熱交換器の質量をさらに低減することが求められている。このような要求に対応するため、前述したような優れた特性を確保しつつ、チューブに用いられるブレージングシートの厚みをさらに薄くすることが強く望まれている。
このようなブレージングシートとして、例えば、特許文献1には、芯材の片面に犠牲陽極材をクラッドし、他の面に中間材を介してろう材をクラッドしてなるアルミニウム合金クラッド材が記載されている。
特許文献1のクラッド材における芯材は、少なくともMn(マンガン):0.8~1.8%(質量%、以下同じ)、Mg(マグネシウム):0.1~1.0%を含有するアルミニウム合金から構成されている。また、中間材は、少なくともMn:0.8~1.8%を含有するアルミニウム合金から構成されている。犠牲陽極材は、少なくともMn:0.8~1.8%、Zn(亜鉛):0.5~10%を含有するアルミニウム合金から構成されている。ろう材は、少なくともSi(シリコン):6~13%を含有するアルミニウム合金で構成されている。
特許文献1のクラッド材においては、犠牲陽極材中に比較的多量のMnを添加することにより、犠牲陽極材の強度の向上を図っている。しかし、犠牲陽極材中のMnの含有量が多くなると、犠牲陽極材中に固溶したMnの量が多くなりやすい。犠牲陽極材中の固溶Mnは、犠牲陽極材の電位を貴化させる作用を有しているため、犠牲陽極材中の固溶Mnの量が多くなると、内面腐食に対する耐食性の低下を招くおそれがある。
また、犠牲陽極材中のMnの含有量が多くなると、ろう付中に犠牲陽極材とろうとが接触した際に、ろうが犠牲陽極材上に濡れ広がりにくくなり、健全なろう付接合が形成されにくくなるおそれがある。
このように、特許文献1のクラッド材は、強度、耐食性及びろう付性をバランスよく向上させる観点から、いまだ改善の余地がある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、強度、耐食性及びろう付性に優れたブレージングシートを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、Si(シリコン):0.30質量%以上1.0質量%以下、Cu(銅):0.40質量%以上1.0質量%以下、Mn(マンガン):1.0質量%以上2.0質量%以下及びMg(マグネシウム):0.30質量%以上0.90質量%以下を含有し、残部がAl(アルミニウム)及び不可避的不純物からなる化学成分を有し、金属組織中に繊維状組織を有する心材と、
前記心材よりも卑な孔食電位を有するアルミニウム合金からなり、前記心材の一方の面上に積層された中間材と、
Si:11質量%以上13質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するとともに18μm以上の厚みを有し、前記中間材上に積層されたろう材と、
Zn(亜鉛):3.0質量%以上8.0質量%以下及びMn:0質量%以上0.50質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するとともに20μm以上の厚みを有し、前記心材の他方の面上に積層された犠牲陽極材と、を有し、
前記心材、前記中間材、前記ろう材及び前記犠牲陽極材の厚みの合計が120μm以上350μm以下であり、
前記心材の厚みが、前記心材、前記中間材、前記ろう材及び前記犠牲陽極材の厚みの合計に対して55%以上である、ブレージングシートにある。
前記心材よりも卑な孔食電位を有するアルミニウム合金からなり、前記心材の一方の面上に積層された中間材と、
Si:11質量%以上13質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するとともに18μm以上の厚みを有し、前記中間材上に積層されたろう材と、
Zn(亜鉛):3.0質量%以上8.0質量%以下及びMn:0質量%以上0.50質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するとともに20μm以上の厚みを有し、前記心材の他方の面上に積層された犠牲陽極材と、を有し、
前記心材、前記中間材、前記ろう材及び前記犠牲陽極材の厚みの合計が120μm以上350μm以下であり、
前記心材の厚みが、前記心材、前記中間材、前記ろう材及び前記犠牲陽極材の厚みの合計に対して55%以上である、ブレージングシートにある。
また、本発明の他の態様は、前記の態様のブレージングシートの製造方法であって、
前記心材となる心材用塊、前記中間材となる中間材用塊、前記ろう材となるろう材用塊及び前記犠牲陽極材となる犠牲陽極材用塊を含む複数のアルミニウム塊を準備するアルミニウム塊準備工程と、
前記心材用塊の一方の面上に前記中間材用塊及び前記ろう材用塊を重ね合わせるとともに、他方の面上に前記犠牲陽極材用塊を重ね合わせてクラッド塊を作製する積層工程と、
前記クラッド塊に熱間圧延を施し、複数の前記アルミニウム塊を一体化してクラッド板を作製するクラッド圧延工程と、
前記クラッド板に熱間圧延を施す熱間圧延工程と、
次いで、前記クラッド板に1回以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程が完了した後に、前記クラッド板を180℃以上350℃以下の温度に1時間以上10時間以下保持して焼鈍を行う最終焼鈍工程と、を有する、ブレージングシートの製造方法にある。
前記心材となる心材用塊、前記中間材となる中間材用塊、前記ろう材となるろう材用塊及び前記犠牲陽極材となる犠牲陽極材用塊を含む複数のアルミニウム塊を準備するアルミニウム塊準備工程と、
前記心材用塊の一方の面上に前記中間材用塊及び前記ろう材用塊を重ね合わせるとともに、他方の面上に前記犠牲陽極材用塊を重ね合わせてクラッド塊を作製する積層工程と、
前記クラッド塊に熱間圧延を施し、複数の前記アルミニウム塊を一体化してクラッド板を作製するクラッド圧延工程と、
前記クラッド板に熱間圧延を施す熱間圧延工程と、
次いで、前記クラッド板に1回以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程が完了した後に、前記クラッド板を180℃以上350℃以下の温度に1時間以上10時間以下保持して焼鈍を行う最終焼鈍工程と、を有する、ブレージングシートの製造方法にある。
前記ブレージングシートにおいては、前記心材の一方の面上に前記中間材及び前記ろう材が積層されており、前記心材の他方の面上に犠牲陽極材が積層されている。また、ブレージングシートにおける心材、中間材、ろう材及び犠牲陽極材の厚みは、それぞれ、前記特定の関係を満たしている。前記ブレージングシートにおいては、ブレージングシートを構成する各層の化学成分だけではなく、金属組織及び厚みを最適化することにより、各層の強度を高くするとともに、ろう付後のブレージングシートを時効硬化させることができる。それ故、前記ブレージングシートは、高い強度を容易に実現することができる。
また、前記ブレージングシートは、時効硬化によってろう付後の強度を上昇させることができるため、犠牲陽極材中のMnの含有量を比較的少なくすることができる。そして、犠牲陽極材中のMnの含有量を前記特定の範囲内とすることにより、犠牲陽極材とろうとが接触した場合においても健全なろう付接合を容易に形成することができる。
また、前記ブレージングシートにおいては、中間材の孔食電位及び犠牲陽極材の孔食電位が心材の孔食電位よりも卑である。それ故、ろう材側からの腐食が進行した場合及び犠牲陽極材側からの腐食が進行した場合のいずれにおいても、中間材及び犠牲陽極材を心材に対する犠牲陽極として機能させ、心材の腐食を抑制することができる。
以上の結果、前記ブレージングシートは、強度、耐食性及びろう付性にバランスよく優れている。
また、前記の態様のブレージングシートの製造方法によれば、前記ブレージングシートを容易に得ることができる。
(ブレージングシート)
前記ブレージングシートは、心材と、心材の一方の面上に積層された中間材と、中間材上に積層されたろう材と、心材の他方の面上に積層された犠牲陽極材とを有している。ブレージングシートは、心材、中間材、ろう材及び犠牲陽極材の4つの層から構成される。以下、ブレージングシートを構成する各層について詳説する。
前記ブレージングシートは、心材と、心材の一方の面上に積層された中間材と、中間材上に積層されたろう材と、心材の他方の面上に積層された犠牲陽極材とを有している。ブレージングシートは、心材、中間材、ろう材及び犠牲陽極材の4つの層から構成される。以下、ブレージングシートを構成する各層について詳説する。
[心材]
心材は、Si:0.30質量%以上1.0質量%以下、Cu:0.40質量%以上1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以上2.0質量%以下及びMg:0.30質量%以上0.90質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金から構成されている。また、ろう付前における心材の金属組織には、繊維状組織が含まれている。
心材は、Si:0.30質量%以上1.0質量%以下、Cu:0.40質量%以上1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以上2.0質量%以下及びMg:0.30質量%以上0.90質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金から構成されている。また、ろう付前における心材の金属組織には、繊維状組織が含まれている。
・Si:0.30質量%以上1.0質量%以下
心材中には、必須成分として、0.30質量%以上1.0質量%以下のSiが含まれている。心材中のSiの一部は、Fe及びMnとともにAl-Fe-Mn-Si系金属間化合物として存在しており、心材中のSiの残部は心材中に固溶している。心材中のSiの含有量を前記特定の範囲とすることにより、Al-Fe-Mn-Si系金属間化合物による分散強化及び心材中に固溶したSiによる固溶強化の効果を十分に高め、心材の強度を向上させることができる。
心材中には、必須成分として、0.30質量%以上1.0質量%以下のSiが含まれている。心材中のSiの一部は、Fe及びMnとともにAl-Fe-Mn-Si系金属間化合物として存在しており、心材中のSiの残部は心材中に固溶している。心材中のSiの含有量を前記特定の範囲とすることにより、Al-Fe-Mn-Si系金属間化合物による分散強化及び心材中に固溶したSiによる固溶強化の効果を十分に高め、心材の強度を向上させることができる。
また、心材中のSiは、ろう付加熱が完了した後に、時効により心材中にMg2Siを析出させ、ブレージングシートの強度を向上させる作用を有している。心材中のSiの含有量を前記特定の範囲とすることにより、ろう付後の時効硬化によるブレージングシートの強度の上昇量を高めることができる。
前述した心材の強度向上の効果及び時効硬化による強度の上昇量増大の効果をより高める観点からは、心材中のSiの含有量は、0.35質量%以上であることが好ましい。心材中のSiの含有量が0.30質量%未満の場合には、前述した強度向上の効果が不十分となるとともに時効硬化による強度の上昇量が小さくなり、心材の強度の低下を招くおそれがある。
一方、心材中のSiの含有量が過度に多くなると、心材の融点の低下を招き、ろう付加熱中に心材が溶融しやすくなるおそれがある。心材中のSiの含有量を1.0質量%以下、好ましくは0.60質量%以下、より好ましくは0.55質量%以下とすることにより、ろう付加熱中の心材の溶融を容易に回避することができる。
・Cu:0.40質量%以上1.0質量%以下
心材中には、必須成分として、0.40質量%以上1.0質量%以下のCuが含まれている。Cuは、心材中に固溶し、固溶強化により心材の強度を向上させる作用を有している。心材中のCuの含有量を前記特定の範囲とすることにより、心材の強度を向上させることができる。
心材中には、必須成分として、0.40質量%以上1.0質量%以下のCuが含まれている。Cuは、心材中に固溶し、固溶強化により心材の強度を向上させる作用を有している。心材中のCuの含有量を前記特定の範囲とすることにより、心材の強度を向上させることができる。
前述した強度向上の効果をより高める観点からは、心材中のCuの含有量は0.50質量%以上であることが好ましく、0.60質量%以上であることがより好ましい。心材中のCuの含有量が0.40質量%未満である場合には、前述した強度向上の効果が不十分となり、心材の強度の低下を招くおそれがある。
一方、心材中のCuの含有量が過度に多くなると、心材の融点の低下を招き、ろう付加熱中に心材が溶融しやすくなるおそれがある。心材中のCuの含有量を1.0質量%以下、好ましくは0.90質量%以下とすることにより、ろう付加熱中の心材の溶融を容易に回避することができる。
・Mn:1.0質量%以上2.0質量%以下
心材中には、必須成分として、1.0質量%以上2.0質量%以下のMnが含まれている。心材中のMnの一部は、Si及びFeとともにAl-Fe-Mn-Si系金属間化合物として存在しており、心材中のMnの残部は心材中に固溶している。心材中のMnの含有量を前記特定の範囲とすることにより、Al-Fe-Mn-Si系金属間化合物による分散強化及び心材中に固溶したMnによる固溶強化の効果を十分に高め、心材の強度を向上させることができる。また、心材中のMnの含有量を前記特定の範囲とすることにより、心材の電位を貴化させるとともに心材の固相線温度を上昇させることができる。
心材中には、必須成分として、1.0質量%以上2.0質量%以下のMnが含まれている。心材中のMnの一部は、Si及びFeとともにAl-Fe-Mn-Si系金属間化合物として存在しており、心材中のMnの残部は心材中に固溶している。心材中のMnの含有量を前記特定の範囲とすることにより、Al-Fe-Mn-Si系金属間化合物による分散強化及び心材中に固溶したMnによる固溶強化の効果を十分に高め、心材の強度を向上させることができる。また、心材中のMnの含有量を前記特定の範囲とすることにより、心材の電位を貴化させるとともに心材の固相線温度を上昇させることができる。
心材中のMnの含有量が1.0質量%未満の場合には、前述した作用効果を十分に得られなくなるおそれがある。
一方、心材中のMnの含有量が過度に多くなると、鋳造時に巨大な金属間化合物が形成されやすくなり、塑性加工性の低下を招くおそれがある。また、この場合には、心材中へのAl-Fe-Mn-Si系金属間化合物に伴って心材中に固溶したSiが消費されやすくなる。心材中に固溶したSiの量が減少すると、ろう付加熱後の時効の際にMg2Siが形成されにくくなり、時効硬化による強度の上昇量の低下を招くおそれがある。心材中のMnの含有量を2.0質量%以下、好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは1.4質量%以下とすることにより、前述した問題を容易に回避することができる。
・Mg:0.30質量%以上0.90質量%以下
心材中には、必須成分として、0.30質量%以上0.90質量%以下のMgが含まれている。心材中のMgは、ろう付加熱後の時効の際にMg2Siを形成し、時効硬化によりろう付加熱後のブレージングシートの強度を向上させる作用を有している。心材中のMgの含有量を0.30質量%以上、好ましくは0.35質量%以上とすることにより、ろう付加熱後の時効硬化によるブレージングシートの強度の上昇量を大きくすることができる。心材中のMgの含有量が0.30質量%未満の場合には、時効硬化による強度の上昇量が小さくなるおそれがある。
心材中には、必須成分として、0.30質量%以上0.90質量%以下のMgが含まれている。心材中のMgは、ろう付加熱後の時効の際にMg2Siを形成し、時効硬化によりろう付加熱後のブレージングシートの強度を向上させる作用を有している。心材中のMgの含有量を0.30質量%以上、好ましくは0.35質量%以上とすることにより、ろう付加熱後の時効硬化によるブレージングシートの強度の上昇量を大きくすることができる。心材中のMgの含有量が0.30質量%未満の場合には、時効硬化による強度の上昇量が小さくなるおそれがある。
一方、心材中のMgの含有量が過度に多くなると、ろう付加熱中に心材が溶融しやすくなるおそれがある。心材中のMgの含有量を0.90質量%以下、好ましくは0.60質量%以下、より好ましくは0.55質量%以下とすることにより、ろう付加熱中の心材の溶融を容易に回避することができる。
前記ブレージングシートの心材には、必須成分としてのSi、Mn、Cu及びMgに加えて、任意成分として、Fe(鉄):0.05質量%以上1.0質量%以下、Ti(チタン):0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr(クロム):0.05質量%以上0.30質量%以下、V(バナジウム):0.05質量%以上0.30質量%以下及びZr(ジルコニウム):0.05質量%以上0.30質量%以下からなる群より選択される1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。
・Fe:0.05質量%以上1.0質量%以下
心材中には、任意成分として、0.05質量%以上1.0質量%以下のFeが含まれていてもよい。心材中のFeは、Si及びMnとともにAl-Fe-Mn-Si系金属間化合物を形成し、析出強化により心材の強度をより向上させる作用を有している。心材中のFeの含有量を前記特定の範囲とすることにより、心材中に適度な量のAl-Fe-Mn-Si系金属間化合物を形成することができる。その結果、心材の強度をより向上させるとともに、心材中に固溶したSiの量を十分に多くし、ろう付加熱後におけるブレージングシートの強度の上昇量をより大きくすることができる。
心材中には、任意成分として、0.05質量%以上1.0質量%以下のFeが含まれていてもよい。心材中のFeは、Si及びMnとともにAl-Fe-Mn-Si系金属間化合物を形成し、析出強化により心材の強度をより向上させる作用を有している。心材中のFeの含有量を前記特定の範囲とすることにより、心材中に適度な量のAl-Fe-Mn-Si系金属間化合物を形成することができる。その結果、心材の強度をより向上させるとともに、心材中に固溶したSiの量を十分に多くし、ろう付加熱後におけるブレージングシートの強度の上昇量をより大きくすることができる。
また、心材中のFeの含有量を前記特定の範囲とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。心材中への粗大な金属間化合物の形成をより確実に回避する観点からは、心材中のFeの含有量は、0.70質量%以下であることがより好ましく、0.40質量%以下であることがさらに好ましい。
また、心材中のFeの含有量を0.05質量%以上とすることにより、心材を作製するための地金として、Feがある程度含まれている比較的安価な地金を使用することができる。これにより、ブレージングシートの材料コストの増大をより容易に抑制することができる。
・Ti:0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.30質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.30質量%以下
前記心材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のTi、0.05質量%以上0.30質量%以下のCr及び0.05質量%以上0.30質量%以下のZrのうち1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。これらの元素は、心材中に固溶し、固溶強化により心材の強度を向上させる作用を有している。
前記心材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のTi、0.05質量%以上0.30質量%以下のCr及び0.05質量%以上0.30質量%以下のZrのうち1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。これらの元素は、心材中に固溶し、固溶強化により心材の強度を向上させる作用を有している。
心材中のTiの含有量、Crの含有量及びZrの含有量をそれぞれ0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、心材の強度をより向上させることができる。また、心材中のTiの含有量、Crの含有量及びZrの含有量をそれぞれ0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
・V:0.05質量%以上0.30質量%以下
心材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のVが含まれていてもよい。Vは、心材中に固溶し、固溶強化により心材の強度を向上させる作用及び心材の耐食性を向上させる作用を有している。心材中のVの含有量を前記特定の範囲とすることにより、心材の強度及び耐食性をより向上させることができる。また、心材中のVの含有量を前記特定の範囲とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。これらの作用効果をより高める観点からは、心材中のVの含有量は、0.10質量%以上0.20質量%以下であることがより好ましい。
心材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のVが含まれていてもよい。Vは、心材中に固溶し、固溶強化により心材の強度を向上させる作用及び心材の耐食性を向上させる作用を有している。心材中のVの含有量を前記特定の範囲とすることにより、心材の強度及び耐食性をより向上させることができる。また、心材中のVの含有量を前記特定の範囲とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。これらの作用効果をより高める観点からは、心材中のVの含有量は、0.10質量%以上0.20質量%以下であることがより好ましい。
・不可避的不純物
心材中には、前述した必須成分および任意成分の他に、心材の製造過程において不可避的に混入する不可避的不純物が含まれている。不可避的不純物としての元素の含有量は、それぞれの元素について0.05質量%以下であり、かつ、含有量の合計が0.15質量%以下である。
心材中には、前述した必須成分および任意成分の他に、心材の製造過程において不可避的に混入する不可避的不純物が含まれている。不可避的不純物としての元素の含有量は、それぞれの元素について0.05質量%以下であり、かつ、含有量の合計が0.15質量%以下である。
・ろう付前の金属組織
ろう付前のブレージングシートにおける心材の金属組織には、繊維状組織が含まれている。すなわち、ろう付け前の心材の金属組織は、繊維状組織と等軸状組織との両方から構成されていてもよいし、繊維状組織のみから構成されていてもよい。ろう付前の心材の金属組織をこのような態様とすることにより、ろう付加熱後の心材の結晶粒を微細化することができる。その結果、ろう付加熱後の心材の強度をより向上させることができる。かかる作用効果をより確実に得る観点からは、心材の金属組織は、繊維状組織のみから構成されていることが好ましい。
ろう付前のブレージングシートにおける心材の金属組織には、繊維状組織が含まれている。すなわち、ろう付け前の心材の金属組織は、繊維状組織と等軸状組織との両方から構成されていてもよいし、繊維状組織のみから構成されていてもよい。ろう付前の心材の金属組織をこのような態様とすることにより、ろう付加熱後の心材の結晶粒を微細化することができる。その結果、ろう付加熱後の心材の強度をより向上させることができる。かかる作用効果をより確実に得る観点からは、心材の金属組織は、繊維状組織のみから構成されていることが好ましい。
なお、繊維状組織とは、圧延や押出、鍛造等の展伸加工によって加工方向に引き伸ばされた多数の結晶粒を備えた組織をいう。繊維状組織は、例えば、倍率25~100倍の金属顕微鏡を用いて加工方向に平行な断面を観察した場合に、加工方向に延びる筋状の模様として観察される。また、等軸状組織とは、多数の等軸な結晶粒を備えた組織をいう。等軸状組織は、例えば、倍率25~100倍の金属顕微鏡を用いて加工方向に平行な断面を観察した場合に、長径と短径との差が比較的小さい粒状の模様として観察される。
・ろう付加熱後の金属組織
ろう付加熱後の心材の金属組織は、平均結晶粒径が60μm未満となる等軸状組織であることが好ましい。このようにろう付加熱後の心材の結晶粒を微細化することにより、ろう付加熱後のブレージングシートのより強度を向上させることができる。なお、前述した「ろう付加熱」においては、具体的には、ブレージングシートの温度が577℃から600℃の範囲内にある時間が3分間となるように加熱を行えばよい。
ろう付加熱後の心材の金属組織は、平均結晶粒径が60μm未満となる等軸状組織であることが好ましい。このようにろう付加熱後の心材の結晶粒を微細化することにより、ろう付加熱後のブレージングシートのより強度を向上させることができる。なお、前述した「ろう付加熱」においては、具体的には、ブレージングシートの温度が577℃から600℃の範囲内にある時間が3分間となるように加熱を行えばよい。
・厚み
前記ブレージングシートにおける心材の厚みは、前記心材、前記中間材、前記ろう材及び前記犠牲陽極材の厚みの合計に対して55%以上である。ブレージングシートにおける心材の厚みを前記特定の範囲とすることにより、心材の厚みを十分に確保し、ブレージングシートの強度を向上させることができる。
前記ブレージングシートにおける心材の厚みは、前記心材、前記中間材、前記ろう材及び前記犠牲陽極材の厚みの合計に対して55%以上である。ブレージングシートにおける心材の厚みを前記特定の範囲とすることにより、心材の厚みを十分に確保し、ブレージングシートの強度を向上させることができる。
[中間材]
前記心材の一方の面上には、中間材が積層されている。中間材は、心材よりも卑な孔食電位を有するアルミニウム合金から構成されている。これにより、ろう材側からの腐食が進行して心材が露出した場合においても、心材上に残存した中間材を心材に対する犠牲陽極として機能させ、心材の腐食を抑制することができる。
前記心材の一方の面上には、中間材が積層されている。中間材は、心材よりも卑な孔食電位を有するアルミニウム合金から構成されている。これにより、ろう材側からの腐食が進行して心材が露出した場合においても、心材上に残存した中間材を心材に対する犠牲陽極として機能させ、心材の腐食を抑制することができる。
中間材を構成するアルミニウム合金は、例えば、Si:0.30質量%以上1.0質量%以下及びMn:1.0質量%以上2.0質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有していてもよい。
・Si:0.30質量%以上1.0質量%以下
中間材中には、必須成分として、0.30質量%以上1.0質量%以下のSiが含まれている。中間材中のSiは、心材中のSiと同様に、分散強化及び固溶強化によって中間材の強度を向上させる作用を有している。中間材中のSiの含有量を前記特定の範囲とすることにより、分散強化及び固溶強化の効果を十分に高め、ろう付前の中間材の強度を向上させることができる。
中間材中には、必須成分として、0.30質量%以上1.0質量%以下のSiが含まれている。中間材中のSiは、心材中のSiと同様に、分散強化及び固溶強化によって中間材の強度を向上させる作用を有している。中間材中のSiの含有量を前記特定の範囲とすることにより、分散強化及び固溶強化の効果を十分に高め、ろう付前の中間材の強度を向上させることができる。
また、中間材は心材に隣接しているため、ろう付加熱中に心材から中間材にMg及びSiが拡散する。中間材中のSiは、心材から供給されたMgやSiとともに、ろう付加熱が完了した後に、時効により中間材中にMg2Siを析出させることができる。中間材中のSiの含有量を前記特定の範囲とすることにより、ろう付加熱後の時効硬化による中間材の強度の上昇量を高めることができる。
前述したろう材の強度向上の効果及び時効硬化による強度の上昇量増大の効果をより高める観点からは、中間材中のSiの含有量は、0.40質量%以上であることが好ましい。中間材中のSiの含有量が0.30質量%未満の場合には、前述した強度向上の効果が不十分となるとともに時効硬化による強度の上昇量が小さくなり、中間材の強度の低下を招くおそれがある。
一方、中間材中のSiの含有量が過度に多くなると、中間材の融点の低下を招き、ろう付加熱中に中間材が溶融しやすくなるおそれがある。中間材中のSiの含有量を1.0質量%以下、好ましくは0.80質量%以下とすることにより、ろう付加熱中の中間材の溶融を容易に回避することができる。
・Mn:1.0質量%以上2.0質量%以下
中間材中には、必須成分として、1.0質量%以上2.0質量%以下のMnが含まれている。中間材中のMnは、心材中のMnと同様に、固溶強化及び分散強化により中間材の強度を向上させる作用を有している。中間材中のMnの含有量を前記特定の範囲とすることにより、中間材の強度を向上させることができる。また、中間材中のMnは、熱間圧延時の変形抵抗を高める作用を有している。それ故、中間材中のMnの含有量を前記特定の範囲とすることにより、ブレージングシートの製造過程における心材の変形抵抗と中間材の変形抵抗との差を小さくし、最終的に得られるブレージングシートにおける各層の厚みのばらつきを低減することができる。
中間材中には、必須成分として、1.0質量%以上2.0質量%以下のMnが含まれている。中間材中のMnは、心材中のMnと同様に、固溶強化及び分散強化により中間材の強度を向上させる作用を有している。中間材中のMnの含有量を前記特定の範囲とすることにより、中間材の強度を向上させることができる。また、中間材中のMnは、熱間圧延時の変形抵抗を高める作用を有している。それ故、中間材中のMnの含有量を前記特定の範囲とすることにより、ブレージングシートの製造過程における心材の変形抵抗と中間材の変形抵抗との差を小さくし、最終的に得られるブレージングシートにおける各層の厚みのばらつきを低減することができる。
前述した作用効果をより高める観点からは、中間材中のMnの含有量は1.3質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。中間材中のMnの含有量が1.0質量%未満の場合には、前述した作用効果を十分に得られなくなるおそれがある。
一方、中間材中のMnの含有量が過度に多くなると、鋳造時に巨大な金属間化合物が形成されやすくなり、塑性加工性の低下を招くおそれがある。中間材中のMnの含有量を2.0質量%以下、好ましくは1.8質量%以下とすることにより、前述した問題を容易に回避することができる。
前記ブレージングシートの中間材には、必須成分としてのSi及びMnに加えて、任意成分として、Zn(亜鉛):0質量%超え3.0質量%以下、Fe:0.05質量%以上1.0質量%以下、Ti:0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.30質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.30質量%以下、In(インジウム):0質量%超え0.10質量%以下、Sn(スズ):0質量%超え0.10質量%以下及びNi(ニッケル):0.05質量%以上2.0質量%以下からなる群より選択される1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。
・Zn:0質量%超え3.0質量%以下
中間材中には、任意成分として、0質量%超え3.0質量%以下のZnが含まれていてもよい。中間材中のZnは、中間材の孔食電位を卑化する作用を有している。中間材中に3.0質量%以下のZnを添加することにより、心材と中間材との電位差を十分に大きくし、ろう材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。中間材による犠牲防食効果をより高める観点からは、中間材中のZnの含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。
中間材中には、任意成分として、0質量%超え3.0質量%以下のZnが含まれていてもよい。中間材中のZnは、中間材の孔食電位を卑化する作用を有している。中間材中に3.0質量%以下のZnを添加することにより、心材と中間材との電位差を十分に大きくし、ろう材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。中間材による犠牲防食効果をより高める観点からは、中間材中のZnの含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。
また、中間材中のZnの含有量を3.0質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下とすることにより、心材に対する犠牲防食効果を発揮させつつ、中間材自体の腐食速度を遅くすることができる。これにより、心材に対する犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させることができる。
・Fe:0.05質量%以上1.0質量%以下
中間材中には、任意成分として、0.05質量%以上1.0質量%以下のFeが含まれていてもよい。中間材中のFeの作用効果は、心材中のFeの作用効果と同様である。中間材中のFeの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、分散強化及び固溶強化の効果をより高め、中間材の強度をより向上させることができる。また、この場合には、中間材を作製するための地金として、Feがある程度含まれている比較的安価な地金を使用することができる。これにより、ブレージングシートの材料コストのさらなる低減が期待できる。
中間材中には、任意成分として、0.05質量%以上1.0質量%以下のFeが含まれていてもよい。中間材中のFeの作用効果は、心材中のFeの作用効果と同様である。中間材中のFeの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、分散強化及び固溶強化の効果をより高め、中間材の強度をより向上させることができる。また、この場合には、中間材を作製するための地金として、Feがある程度含まれている比較的安価な地金を使用することができる。これにより、ブレージングシートの材料コストのさらなる低減が期待できる。
また、中間材中のFeの含有量を1.0質量%以下、より好ましくは0.30質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
・Ti:0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.30質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.30質量%以下
前記中間材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のTi、0.05質量%以上0.30質量%以下のCr及び0.05質量%以上0.30質量%以下のZrのうち1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。中間材中のTi、Cr、Zrの作用効果及びこれらの元素の含有量の限定理由は、心材と同様である。
前記中間材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のTi、0.05質量%以上0.30質量%以下のCr及び0.05質量%以上0.30質量%以下のZrのうち1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。中間材中のTi、Cr、Zrの作用効果及びこれらの元素の含有量の限定理由は、心材と同様である。
すなわち、中間材中のTiの含有量、Crの含有量及びZrの含有量をそれぞれ0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、中間材の強度をより向上させることができる。また、中間材中のTiの含有量、Crの含有量及びZrの含有量をそれぞれ0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
・V:0.05質量%以上0.30質量%以下
中間材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のVが含まれていてもよい。中間材中のVの作用効果及びVの含有量の限定理由は、心材と同様である。すなわち、中間材中のVの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、中間材の強度及び耐食性をより向上させることができる。また、中間材中のVの含有量を0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
中間材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のVが含まれていてもよい。中間材中のVの作用効果及びVの含有量の限定理由は、心材と同様である。すなわち、中間材中のVの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、中間材の強度及び耐食性をより向上させることができる。また、中間材中のVの含有量を0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
・In:0質量%超え0.10質量%以下、Sn:0質量%超え0.10質量%以下
中間材中には、任意成分として、0質量%超え0.10質量%以下のIn及び0質量%超え0.10質量%以下のSnのうち1種または2種の元素が含まれていてもよい。これらの元素は、中間材の孔食電位を卑化する作用を有している。中間材中に0.10質量%以下のIn及び/または0.10質量%以下のSnを添加することにより、中間材による犠牲防食効果をより高め、ろう材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。中間材による犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させる観点からは、中間材中のInの含有量及びSnの含有量は、それぞれ、0.05質量%以下であることがより好ましい。
中間材中には、任意成分として、0質量%超え0.10質量%以下のIn及び0質量%超え0.10質量%以下のSnのうち1種または2種の元素が含まれていてもよい。これらの元素は、中間材の孔食電位を卑化する作用を有している。中間材中に0.10質量%以下のIn及び/または0.10質量%以下のSnを添加することにより、中間材による犠牲防食効果をより高め、ろう材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。中間材による犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させる観点からは、中間材中のInの含有量及びSnの含有量は、それぞれ、0.05質量%以下であることがより好ましい。
・Ni:0.05質量%以上2.0質量%以下
中間材中には、任意成分として、0.05質量%以上2.0質量%以下のNiが含まれていてもよい。中間材中に前記特定の範囲のNiを添加することにより、中間材中にAl-Ni系金属間化合物やAl-Fe-Ni系金属間化合物を形成することができる。これらの金属間化合物は、中間材のAl母相に対して貴な孔食電位を有しているため、金属間化合物とAl母相とが接している部分においては、金属間化合物よりも先にAl母相が腐食される。そして、中間材中に腐食の起点となる金属間化合物を分散させることにより、中間材の深さ方向への腐食の進行を抑制することができる。
中間材中には、任意成分として、0.05質量%以上2.0質量%以下のNiが含まれていてもよい。中間材中に前記特定の範囲のNiを添加することにより、中間材中にAl-Ni系金属間化合物やAl-Fe-Ni系金属間化合物を形成することができる。これらの金属間化合物は、中間材のAl母相に対して貴な孔食電位を有しているため、金属間化合物とAl母相とが接している部分においては、金属間化合物よりも先にAl母相が腐食される。そして、中間材中に腐食の起点となる金属間化合物を分散させることにより、中間材の深さ方向への腐食の進行を抑制することができる。
前述した作用効果をより高める観点からは、中間材中のNiの含有量は、0.10質量%以上であることがより好ましい。また、中間材中のNiの含有量を2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下をより容易に回避することができる。
・その他の成分
中間材中には、前述した必須成分および任意成分の他に、中間材の製造過程において不可避的に混入する不可避的不純物が含まれている。不可避的不純物としての元素の含有量は、それぞれの元素について0.05質量%以下であり、かつ、含有量の合計が0.15質量%以下である。
中間材中には、前述した必須成分および任意成分の他に、中間材の製造過程において不可避的に混入する不可避的不純物が含まれている。不可避的不純物としての元素の含有量は、それぞれの元素について0.05質量%以下であり、かつ、含有量の合計が0.15質量%以下である。
また、中間材中には、不可避的不純物としてCuが含まれていてもよいが、中間材中のCuは中間材の電位を貴化する作用を有している。そのため、Cuの含有量が過度に多くなると中間材と心材との電位差が小さくなりやすい。Cuによる中間材の犠牲防食効果の低下をより確実に回避する観点からは、中間材中のCuの含有量は0.05質量%未満であることが好ましく、0.03質量%以下であることがより好ましい。
・厚み
中間材は、12μm以上の厚みを有していることが好ましい。中間材の厚みを12μm以上とすることにより、中間材の犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させ、ろう材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。また、この場合には、ろう付加熱中に心材からろう材の表面まで到達するMgの量を低減し、Mgとフラックスとの反応によるろう付性の悪化をより容易に回避することができる。さらに、中間材の厚みを12μm以上とすることにより、ろう付加熱中にろう材から心材まで到達するSiの量を低減し、心材のエロージョン、つまり、心材に到達したSiが、心材の粒界を拡散経路として心材を侵食する現象の発生をより容易に回避することができる。これらの作用効果をより高める観点からは、中間材の厚みは18μm以上であることがより好ましい。
中間材は、12μm以上の厚みを有していることが好ましい。中間材の厚みを12μm以上とすることにより、中間材の犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させ、ろう材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。また、この場合には、ろう付加熱中に心材からろう材の表面まで到達するMgの量を低減し、Mgとフラックスとの反応によるろう付性の悪化をより容易に回避することができる。さらに、中間材の厚みを12μm以上とすることにより、ろう付加熱中にろう材から心材まで到達するSiの量を低減し、心材のエロージョン、つまり、心材に到達したSiが、心材の粒界を拡散経路として心材を侵食する現象の発生をより容易に回避することができる。これらの作用効果をより高める観点からは、中間材の厚みは18μm以上であることがより好ましい。
[ろう材]
前記中間材上には、ろう材が積層されている。ろう材は、Si:11質量%以上13質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金から構成されている。
前記中間材上には、ろう材が積層されている。ろう材は、Si:11質量%以上13質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金から構成されている。
・Si:11質量%以上13質量%以下
ろう材中には、必須成分として、11質量%以上13質量%以下のSiが含まれている。ろう材中のSiは、ろう付加熱中にろうを生じさせ、ろう付接合を形成する作用を有している。
ろう材中には、必須成分として、11質量%以上13質量%以下のSiが含まれている。ろう材中のSiは、ろう付加熱中にろうを生じさせ、ろう付接合を形成する作用を有している。
前記ブレージングシートは、全体の厚みが薄いことに加え、中間材、ろう材及び犠牲陽極材それぞれの厚みも薄いため、ろう付加熱時の昇温過程において、心材中のMgがこれらの層に拡散しやすい。しかし、心材からの拡散によってろう材の表面に到達するMg量が過度に多くなると、フラックスを用いたろう付及びフラックスフリーろう付のいずれにおいてもろう付性の悪化を招きやすい。
すなわち、フラックスを用いたろう付においては、ろう材の表面に到達したMgがフラックスと反応することにより、フラックスが消費される。その結果、フラックスによる酸化皮膜の破壊が不十分となり、ろうの濡れ広がりが阻害されやすくなる。また、フラックスを用ずにろう付を行う場合においては、ろう材の表面に到達したMgが雰囲気中の酸素や水分と反応して厚い酸化皮膜を形成することにより、ろうの濡れ拡がりが阻害されやすくなる。
ろう材の表面に到達したMgによるろう付性の悪化を回避するためには、ろう材の表面に到達したMgの量が比較的少ない間に、相手材との間にろう付接合を形成することが望ましい。Mgの拡散速度は加熱温度が高くなるほど大きくなる。特に、共晶温度より高い温度領域においては、液相のろうが生成するため、液相のろうが生じる前に比べて格段にMgの拡散速度が速くなる。そのため、加熱温度が共晶温度に到達した後に、ろう材全体を迅速に液相化させ、ろうの濡れ拡がりが阻害される前に相手材との間にろう付接合を形成することが重要である。また、加熱温度が共晶温度に到達した時点でのろう材の液相率が高いほど、心材から拡散したMgの影響を受ける前に、ろう付接合を形成しようとする部分にろうを供給しやすい上、ろう材の厚みを薄くすることができる。
このような考え方に基づき、前記ブレージングシートにおけるろう材中のSiの含有量は11質量%以上とする。ろう材中のSiの含有量を11質量%以上とすることにより、ろう付加熱中に共晶温度を超えた直後の液相率を十分に高くすることができる。その結果、ろう材の表面に到達したMgがろう付性を悪化させる前に、相手材との間に健全なろう付接合を容易に形成することができる。ろう材中のSiの含有量が11質量%未満の場合には、相手材との間に健全なろう付接合を形成することが難しくなるおそれがある。
一方、ろう材中のSiの含有量が過度に多くなると、ろう付加熱中に相手材に拡散するSiの量が過度に多くなり、相手材の溶融を招くおそれがある。ろう材中のSiの含有量を13.0質量%以下、好ましくは12.5質量%以下とすることにより、優れたろう付性を確保しつつ相手材の溶融をより確実に回避することができる。
前記ブレージングシートのろう材には、必須成分としてのSiに加えて、任意成分として、Fe:0.05質量%以上1.0質量%以下、Zn:0質量%超え4.0質量%以下、Ti:0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.30質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.30質量%以下、In:0質量%超え0.10質量%以下、Sn:0質量%超え0.10質量%以下、Na(ナトリウム):0.001質量%以上0.050質量%以下及びSr:(ストロンチウム)0.001質量%以上0.050質量%以下からなる群より選択される1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。
・Fe:0.05質量%以上1.0質量%以下
ろう材中には、任意成分として、0.05質量%以上1.0質量%以下のFeが含まれていてもよい。ろう材中のFeの含有量が過度に多くなるとろう付性の悪化を招くおそれがあるが、ろう材中のFeの含有量を1.0質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下とすることにより、Feによるろう付性の悪化を容易に回避することができる。それ故、Feの含有量が前記特定の範囲内であるろう材は、良好なろう付性を有しており、相手材との間に健全なろう付接合を容易に形成することができる。
ろう材中には、任意成分として、0.05質量%以上1.0質量%以下のFeが含まれていてもよい。ろう材中のFeの含有量が過度に多くなるとろう付性の悪化を招くおそれがあるが、ろう材中のFeの含有量を1.0質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下とすることにより、Feによるろう付性の悪化を容易に回避することができる。それ故、Feの含有量が前記特定の範囲内であるろう材は、良好なろう付性を有しており、相手材との間に健全なろう付接合を容易に形成することができる。
また、ろう材中のFeの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、ろう材を作製するための地金として、Feがある程度含まれている比較的安価な地金を使用することができる。これにより、ブレージングシートの材料コストの増大をより容易に抑制することができる。
・Zn:0質量%超え4.0質量%以下
ろう材中には、任意成分として、0質量%超え4.0質量%以下のZnが含まれていてもよい。ろう材中のZnは、ろう材の孔食電位を卑化する作用を有している。ろう材中に4.0質量%以下のZnを添加することにより、心材とろう材との電位差を十分に大きくし、ろう材を心材に対する犠牲陽極として機能させることができる。その結果、ろう材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。
ろう材中には、任意成分として、0質量%超え4.0質量%以下のZnが含まれていてもよい。ろう材中のZnは、ろう材の孔食電位を卑化する作用を有している。ろう材中に4.0質量%以下のZnを添加することにより、心材とろう材との電位差を十分に大きくし、ろう材を心材に対する犠牲陽極として機能させることができる。その結果、ろう材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。
ろう材中のZnの含有量は、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。この場合には、ろう材に心材に対する犠牲防食効果を発揮させつつ、ろう材自体の腐食速度を遅くすることができる。これにより、心材に対する犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させることができる。
・Ti:0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.30質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.30質量%以下
前記ろう材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のTi、0.05質量%以上0.30質量%以下のCr及び0.05質量%以上0.30質量%以下のZrのうち1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。ろう材中のTi、Cr、Zrの作用効果及びこれらの元素の含有量の限定理由は、心材と同様である。
前記ろう材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のTi、0.05質量%以上0.30質量%以下のCr及び0.05質量%以上0.30質量%以下のZrのうち1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。ろう材中のTi、Cr、Zrの作用効果及びこれらの元素の含有量の限定理由は、心材と同様である。
すなわち、ろう材中のTiの含有量、Crの含有量及びZrの含有量をそれぞれ0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、ろう材の強度をより向上させることができる。また、ろう材中のTiの含有量、Crの含有量及びZrの含有量をそれぞれ0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
・V:0.05質量%以上0.30質量%以下
ろう材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のVが含まれていてもよい。ろう材中のVの作用効果及びVの含有量の限定理由は、心材と同様である。すなわち、ろう材中のVの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、ろう材の強度及び耐食性をより向上させることができる。また、ろう材中のVの含有量を0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
ろう材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のVが含まれていてもよい。ろう材中のVの作用効果及びVの含有量の限定理由は、心材と同様である。すなわち、ろう材中のVの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、ろう材の強度及び耐食性をより向上させることができる。また、ろう材中のVの含有量を0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
・In:0質量%超え0.10質量%以下、Sn:0質量%超え0.10質量%以下
ろう材中には、任意成分として、0質量%超え0.10質量%以下のIn及び0質量%超え0.10質量%以下のSnのうち1種または2種の元素が含まれていてもよい。ろう材中のIn、Snの作用効果及びこれらの元素の含有量の限定理由は、中間材と同様である。すなわち、ろう材中に0.10質量%以下のIn及び/または0.10質量%以下のSnを添加することにより、ろう材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。ろう材による犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させる観点からは、ろう材中のInの含有量及びSnの含有量は、それぞれ0.05質量%以下であることがより好ましい。
ろう材中には、任意成分として、0質量%超え0.10質量%以下のIn及び0質量%超え0.10質量%以下のSnのうち1種または2種の元素が含まれていてもよい。ろう材中のIn、Snの作用効果及びこれらの元素の含有量の限定理由は、中間材と同様である。すなわち、ろう材中に0.10質量%以下のIn及び/または0.10質量%以下のSnを添加することにより、ろう材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。ろう材による犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させる観点からは、ろう材中のInの含有量及びSnの含有量は、それぞれ0.05質量%以下であることがより好ましい。
・Na:0.001質量%以上0.050質量%以下、Sr:0.001質量%以上0.050質量%以下
ろう中には、任意成分として、0.001質量%以上0.050質量%以下のNa及び0.001質量%以上0.050質量%以下のSrのうち1種または2種の元素が含まれていてもよい。ろう材中に0.001質量%以上0.050質量%以下のNa及び/または0.001質量%以上0.050質量%以下のSrを添加することにより、ろう材中のSi粒子を微細化することができる。かかる作用効果をより高める観点からは、ろう材中のNaの含有量及びSrの含有量は、それぞれ0.003質量%以上であることが好ましい。
ろう中には、任意成分として、0.001質量%以上0.050質量%以下のNa及び0.001質量%以上0.050質量%以下のSrのうち1種または2種の元素が含まれていてもよい。ろう材中に0.001質量%以上0.050質量%以下のNa及び/または0.001質量%以上0.050質量%以下のSrを添加することにより、ろう材中のSi粒子を微細化することができる。かかる作用効果をより高める観点からは、ろう材中のNaの含有量及びSrの含有量は、それぞれ0.003質量%以上であることが好ましい。
一方、ろう材中のNaの含有量またはSrの含有量が過度に多くなると、ろう付加熱中にろう材の表面に形成される酸化皮膜の厚みが厚くなりやすく、ろう付性の悪化を招くおそれがある。ろう材中のNaの含有量及びSrの含有量を、それぞれ0.050質量%以下とすることにより、かかる問題を容易に回避することができる。同様の観点から、ろう材中のNaの含有量及びSrの含有量は、それぞれ0.020質量%以下であることがより好ましい。
・その他の成分
ろう材中には、前述した必須成分および任意成分の他に、ろう材の製造過程において不可避的に混入する不可避的不純物が含まれている。不可避的不純物としての元素の含有量は、それぞれの元素について0.05質量%以下であり、かつ、含有量の合計が0.15質量%以下である。
ろう材中には、前述した必須成分および任意成分の他に、ろう材の製造過程において不可避的に混入する不可避的不純物が含まれている。不可避的不純物としての元素の含有量は、それぞれの元素について0.05質量%以下であり、かつ、含有量の合計が0.15質量%以下である。
・厚み
ろう材の厚みは、18μm以上である。ろう材の厚みを18μm以上とすることにより、ろう付加熱中に十分な量のろうを生成し、相手材との間に健全なろう付接合を容易に形成することができる。一方、ろう材の厚みが過度に厚くなると、心材の厚みを十分に確保することが難しくなり、ブレージングシートの強度の低下を招くおそれがある。また、この場合には、ろう付加熱中に生じるろうの量が過剰となり、心材や相手材がろうによって侵食されやすくなるおそれもある。これらの問題をより確実に回避する観点からは、ろう材の厚みは40μm以下であることが好ましい。
ろう材の厚みは、18μm以上である。ろう材の厚みを18μm以上とすることにより、ろう付加熱中に十分な量のろうを生成し、相手材との間に健全なろう付接合を容易に形成することができる。一方、ろう材の厚みが過度に厚くなると、心材の厚みを十分に確保することが難しくなり、ブレージングシートの強度の低下を招くおそれがある。また、この場合には、ろう付加熱中に生じるろうの量が過剰となり、心材や相手材がろうによって侵食されやすくなるおそれもある。これらの問題をより確実に回避する観点からは、ろう材の厚みは40μm以下であることが好ましい。
[犠牲陽極材]
前記ブレージングシートにおける心材の他方の面、つまり、中間材及びろう材が設けられていない面上には、犠牲陽極材が積層されている。犠牲陽極材は、Zn:3.0質量%以上8.0質量%以下及びMn:0質量%以上0.5質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金から構成されている。
前記ブレージングシートにおける心材の他方の面、つまり、中間材及びろう材が設けられていない面上には、犠牲陽極材が積層されている。犠牲陽極材は、Zn:3.0質量%以上8.0質量%以下及びMn:0質量%以上0.5質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金から構成されている。
・Zn:3.0質量%以上8.0質量%以下
犠牲陽極材中には、必須成分として、3.0質量%以上8.0質量%以下のZnが含まれている。犠牲陽極材中のZnは、犠牲陽極材の孔食電位を卑化する作用を有している。犠牲陽極材中のZnの含有量を前記特定の範囲とすることにより、心材と犠牲陽極材との電位差を十分に大きくし、犠牲陽極材を心材に対する犠牲陽極として機能させることができる。その結果、犠牲陽極材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。
犠牲陽極材中には、必須成分として、3.0質量%以上8.0質量%以下のZnが含まれている。犠牲陽極材中のZnは、犠牲陽極材の孔食電位を卑化する作用を有している。犠牲陽極材中のZnの含有量を前記特定の範囲とすることにより、心材と犠牲陽極材との電位差を十分に大きくし、犠牲陽極材を心材に対する犠牲陽極として機能させることができる。その結果、犠牲陽極材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。
犠牲陽極材中のZnの含有量は、4.0質量%以上であることが好ましい。この場合には、心材に対する犠牲防食効果をより高めることができる。犠牲陽極材中のZnの含有量が3.0質量%未満の場合には、心材と犠牲陽極材との電位差が小さくなり、犠牲防食効果が不十分となるおそれがある。
一方、犠牲陽極材中のZnの含有量が過度に多い場合には、犠牲陽極材の腐食速度が速くなるため、犠牲陽極材が早期に消失しやすい。犠牲陽極材中のZnの含有量を8.0質量%以下、好ましくは7.0質量%以下とすることにより、心材に対する犠牲防食効果を発揮させつつ、犠牲陽極材自体の腐食速度を遅くすることができる。これにより、心材に対する犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させることができる。
・Mn:0質量%以上0.50質量%以下
犠牲陽極材中には、任意成分として、0.50質量%以下のMnが含まれていてもよい。犠牲陽極材中のMnは、中間材中のMnと同様に、分散強化及び固溶強化により犠牲陽極材の強度を向上させるともに、熱間圧延時の変形抵抗を高める作用を有している。それ故、犠牲陽極材中に0質量%超え0.50質量%以下のMnを添加することにより、犠牲陽極材の強度を向上させるとともに、ブレージングシートにおける各層の厚みのばらつきを低減することができる。これらの作用効果をより高める観点からは、犠牲陽極材中のMnの含有量は0.10質量%以上であることが好ましく、0.20質量%以上であることがより好ましい。
犠牲陽極材中には、任意成分として、0.50質量%以下のMnが含まれていてもよい。犠牲陽極材中のMnは、中間材中のMnと同様に、分散強化及び固溶強化により犠牲陽極材の強度を向上させるともに、熱間圧延時の変形抵抗を高める作用を有している。それ故、犠牲陽極材中に0質量%超え0.50質量%以下のMnを添加することにより、犠牲陽極材の強度を向上させるとともに、ブレージングシートにおける各層の厚みのばらつきを低減することができる。これらの作用効果をより高める観点からは、犠牲陽極材中のMnの含有量は0.10質量%以上であることが好ましく、0.20質量%以上であることがより好ましい。
一方、犠牲陽極材中のMnは、犠牲陽極材の孔食電位を貴化させる作用を有している。そのため、犠牲陽極材中のMnの含有量が過度に多くなると、犠牲陽極材と心材との電位差が小さくなり、犠牲防食効果の低下を招くおそれがある。さらに、犠牲陽極材中のMnの含有量が過度に多くなると、ろう付加熱中にろうと接触した場合にろうが濡れ広がりにくくなり、ろう付性の悪化を招くおそれもある。
犠牲陽極材中のMnの含有量を0.50質量%以下、好ましくは0.40質量%以下とすることにより、前述した問題を容易に回避しつつ、犠牲陽極材の強度向上の効果及び厚みのばらつきを低減する効果を得ることができる。
犠牲陽極材中には、前述したZn及びMnに加えて、さらに、Si:0質量%超え1.0質量%以下、Fe:0.05質量%以上1.0質量%以下、Ti:0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.30質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.30質量%以下、In:0質量%超え0.1質量%以下、Sn:0質量%超え0.1質量%以下及びNi:0.05質量%以上2.0質量%以下からなる群より選択される1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。
・Si:0質量%超え1.0質量%以下
犠牲陽極材中には、任意成分として、0質量%超え1.0質量%以下のSiが含まれていてもよい。心材は中間材だけではなく犠牲陽極材とも接しているため、ろう付加熱中に心材から犠牲陽極材にMg及びSiが拡散する。犠牲陽極材中のSiは、心材から供給されたMgやSiとともに、ろう付加熱が完了した後に、時効により犠牲陽極材中にMg2Siを析出させることができる。犠牲陽極材中のSiの含有量を前記特定の範囲とすることにより、ろう付加熱後の時効硬化による犠牲陽極材の強度の上昇量をより高めることができる。かかる作用効果をより高める観点からは、犠牲陽極材中のSiの含有量は、0.10質量%以上であることがより好ましく、0.20質量%以上であることがさらに好ましい。
犠牲陽極材中には、任意成分として、0質量%超え1.0質量%以下のSiが含まれていてもよい。心材は中間材だけではなく犠牲陽極材とも接しているため、ろう付加熱中に心材から犠牲陽極材にMg及びSiが拡散する。犠牲陽極材中のSiは、心材から供給されたMgやSiとともに、ろう付加熱が完了した後に、時効により犠牲陽極材中にMg2Siを析出させることができる。犠牲陽極材中のSiの含有量を前記特定の範囲とすることにより、ろう付加熱後の時効硬化による犠牲陽極材の強度の上昇量をより高めることができる。かかる作用効果をより高める観点からは、犠牲陽極材中のSiの含有量は、0.10質量%以上であることがより好ましく、0.20質量%以上であることがさらに好ましい。
一方、犠牲陽極材中のSiの含有量が過度に多くなると、ろう付加熱中に犠牲陽極材が溶融し、心材のエロージョンの発生を招くおそれがある。犠牲陽極材中のSiの含有量を1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下とすることにより、犠牲陽極材の溶融を回避しつつ前述した作用効果を得ることができる。
・Fe:0.05質量%以上1.0質量%以下
犠牲陽極材中には、任意成分として、0.05質量%以上1.0質量%以下のFeが含まれていてもよい。犠牲陽極材中のFeの作用効果は、中間中のFeの作用効果と同様である。犠牲陽極材中のFeの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、分散強化及び固溶強化の効果をより高め、犠牲陽極材の強度をより向上させることができる。また、この場合には、犠牲陽極材を作製するための地金として、Feがある程度含まれている比較的安価な地金を使用することができる。これにより、ブレージングシートの材料コストの増大をより容易に抑制することができる。
犠牲陽極材中には、任意成分として、0.05質量%以上1.0質量%以下のFeが含まれていてもよい。犠牲陽極材中のFeの作用効果は、中間中のFeの作用効果と同様である。犠牲陽極材中のFeの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、分散強化及び固溶強化の効果をより高め、犠牲陽極材の強度をより向上させることができる。また、この場合には、犠牲陽極材を作製するための地金として、Feがある程度含まれている比較的安価な地金を使用することができる。これにより、ブレージングシートの材料コストの増大をより容易に抑制することができる。
また、犠牲陽極材中のFeの含有量を1.0質量%以下、より好ましくは0.30質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
・Ti:0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.30質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.30質量%以下
前記犠牲陽極材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のTi、0.05質量%以上0.30質量%以下のCr及び0.05質量%以上0.30質量%以下のZrのうち1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。犠牲陽極材中のTi、Cr及びZrの作用効果及びこれらの元素の含有量の限定理由は、心材と同様である。
前記犠牲陽極材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のTi、0.05質量%以上0.30質量%以下のCr及び0.05質量%以上0.30質量%以下のZrのうち1種または2種以上の元素が含まれていてもよい。犠牲陽極材中のTi、Cr及びZrの作用効果及びこれらの元素の含有量の限定理由は、心材と同様である。
すなわち、犠牲陽極材中のTiの含有量、Crの含有量及びZrの含有量をそれぞれ0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、犠牲陽極材の強度をより向上させることができる。また、犠牲陽極材中のTiの含有量、Crの含有量及びZrの含有量をそれぞれ0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
・V:0.05質量%以上0.30質量%以下
犠牲陽極材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のVが含まれていてもよい。犠牲陽極材中のVの作用効果及びVの含有量の限定理由は、心材と同様である。すなわち、犠牲陽極材中のVの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、犠牲陽極材の強度及び耐食性をより向上させることができる。また、犠牲陽極材中のVの含有量を0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
犠牲陽極材中には、任意成分として、0.05質量%以上0.30質量%以下のVが含まれていてもよい。犠牲陽極材中のVの作用効果及びVの含有量の限定理由は、心材と同様である。すなわち、犠牲陽極材中のVの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、犠牲陽極材の強度及び耐食性をより向上させることができる。また、犠牲陽極材中のVの含有量を0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下を容易に回避することができる。
・In:0質量%超え0.10質量%以下、Sn:0質量%超え0.10質量%以下
犠牲陽極材中には、任意成分として、0質量%超え0.10質量%以下のIn及び0質量%超え0.10質量%以下のSnのうち1種または2種の元素が含まれていてもよい。犠牲陽極材中のIn、Snの作用効果及びこれらの元素の限定理由は、中間材と同様である。すなわち、犠牲陽極材中に0.10質量%以下のIn及び/または0.10質量%以下のSnを添加することにより、犠牲陽極材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。犠牲陽極材による犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させる観点からは、犠牲陽極材中のInの含有量及びSnの含有量は、それぞれ0.05質量%以下であることがより好ましい。
犠牲陽極材中には、任意成分として、0質量%超え0.10質量%以下のIn及び0質量%超え0.10質量%以下のSnのうち1種または2種の元素が含まれていてもよい。犠牲陽極材中のIn、Snの作用効果及びこれらの元素の限定理由は、中間材と同様である。すなわち、犠牲陽極材中に0.10質量%以下のIn及び/または0.10質量%以下のSnを添加することにより、犠牲陽極材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。犠牲陽極材による犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させる観点からは、犠牲陽極材中のInの含有量及びSnの含有量は、それぞれ0.05質量%以下であることがより好ましい。
・Ni:0.05質量%以上2.0質量%以下
犠牲陽極材には、任意成分として、0.05質量%以上2.0質量%以下のNiが含まれていてもよい。犠牲陽極材中のNiの作用効果及びNiの含有量の限定理由は、中間材と同様である。すなわち、中間材中のNiの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、犠牲陽極材の深さ方向への腐食の進行を抑制することができる。また、中間材中のNiの含有量を2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下をより容易に回避することができる。
犠牲陽極材には、任意成分として、0.05質量%以上2.0質量%以下のNiが含まれていてもよい。犠牲陽極材中のNiの作用効果及びNiの含有量の限定理由は、中間材と同様である。すなわち、中間材中のNiの含有量を0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上とすることにより、犠牲陽極材の深さ方向への腐食の進行を抑制することができる。また、中間材中のNiの含有量を2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下とすることにより、粗大な金属間化合物の形成による塑性加工性の低下をより容易に回避することができる。
・その他の成分
犠牲陽極材中には、前述した必須成分および任意成分の他に、犠牲陽極材の製造過程において不可避的に混入する不可避的不純物が含まれている。不可避的不純物としての元素の含有量は、それぞれの元素について0.05質量%以下であり、かつ、含有量の合計が0.15質量%以下である。
犠牲陽極材中には、前述した必須成分および任意成分の他に、犠牲陽極材の製造過程において不可避的に混入する不可避的不純物が含まれている。不可避的不純物としての元素の含有量は、それぞれの元素について0.05質量%以下であり、かつ、含有量の合計が0.15質量%以下である。
・厚み
犠牲陽極材は、20μm以上の厚みを有している。犠牲陽極材の厚みを20μm以上、好ましくは25μm以上とすることにより、犠牲陽極材の犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させ、犠牲陽極材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。犠牲陽極材の厚みが20μm未満の場合には、犠牲陽極材が腐食により消失しやすくなり、犠牲防食効果が早期に損なわれやすくなるおそれがある。
犠牲陽極材は、20μm以上の厚みを有している。犠牲陽極材の厚みを20μm以上、好ましくは25μm以上とすることにより、犠牲陽極材の犠牲防食効果をより長期間に亘って発揮させ、犠牲陽極材側からの腐食に対する耐食性をより向上させることができる。犠牲陽極材の厚みが20μm未満の場合には、犠牲陽極材が腐食により消失しやすくなり、犠牲防食効果が早期に損なわれやすくなるおそれがある。
[ブレージングシートの厚み]
前記ブレージングシートの厚みは、120μm以上350μm以下であることが好ましい。前記ブレージングシートの厚みを120μm以上とすることにより、心材の厚みを十分に確保しつつ、ろう材、中間材及び犠牲陽極材の厚みを適度に厚くすることができる。これにより、ろう付後におけるブレージングシートの強度を高めるとともに、優れた耐食性及びろう付性をバランスよく高めることができる。
前記ブレージングシートの厚みは、120μm以上350μm以下であることが好ましい。前記ブレージングシートの厚みを120μm以上とすることにより、心材の厚みを十分に確保しつつ、ろう材、中間材及び犠牲陽極材の厚みを適度に厚くすることができる。これにより、ろう付後におけるブレージングシートの強度を高めるとともに、優れた耐食性及びろう付性をバランスよく高めることができる。
また、前記ブレージングシートの厚みを350μm以下とすることにより、前記ブレージングシートを、軽量化が強く望まれている自動車用熱交換器に好適に用いることができる。前記ブレージングシートの厚みは、290μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることがさらに好ましく、220μm以下であることが特に好ましい。前記ブレージングシートは、心材、中間材、ろう材及び犠牲陽極材の化学成分、金属組織及び厚みを最適化しているため、このように厚みを薄くした場合においても、強度、耐食性及びろう付性のバランスよく高めることができる。そして、かかる厚みを有するブレージングシートを用いることにより、熱交換器等に要求される性能を確保しつつ、熱交換器の軽量化をより容易に行うことができる。
[ろう付後におけるブレージングシートの強度]
前記ブレージングシートは、ろう付加熱を行い、次いで室温で7日間保持した後の強度が200MPa以上であることが好ましく、210MPa以上であることがより好ましい。このような時効硬化特性を有するブレージングシートは、ろう付後の強度に優れているため、自動車用熱交換器に好適である。なお、前述した「ろう付加熱」においては、具体的には、ブレージングシートの温度が577℃から600℃の範囲内にある時間が3分間となるように加熱を行えばよい。また、「室温」とは、15℃以上25℃以下の温度範囲をいう。
前記ブレージングシートは、ろう付加熱を行い、次いで室温で7日間保持した後の強度が200MPa以上であることが好ましく、210MPa以上であることがより好ましい。このような時効硬化特性を有するブレージングシートは、ろう付後の強度に優れているため、自動車用熱交換器に好適である。なお、前述した「ろう付加熱」においては、具体的には、ブレージングシートの温度が577℃から600℃の範囲内にある時間が3分間となるように加熱を行えばよい。また、「室温」とは、15℃以上25℃以下の温度範囲をいう。
[ブレージングシートの用途]
前記ブレージングシートは、例えばエバポレータやコンデンサ、ラジエータ、ヒータ、インタークーラ、オイルクーラなど、自動車用熱交換器の構成部品に好適であり、自動車用熱交換器の構成部品の中でも特に、エンジン冷却水などの水系冷媒や、フロン系冷媒などの非水系冷媒が流通するチューブに好適である。チューブとしては、例えば、ブレージングシートが筒状に折り曲げ加工され、ろう材と犠牲陽極材との間にろう付接合が形成されてなるろう付チューブや、ブレージングシートの端面を突き合わせて溶接する溶接チューブなどに使用することができる。
前記ブレージングシートは、例えばエバポレータやコンデンサ、ラジエータ、ヒータ、インタークーラ、オイルクーラなど、自動車用熱交換器の構成部品に好適であり、自動車用熱交換器の構成部品の中でも特に、エンジン冷却水などの水系冷媒や、フロン系冷媒などの非水系冷媒が流通するチューブに好適である。チューブとしては、例えば、ブレージングシートが筒状に折り曲げ加工され、ろう材と犠牲陽極材との間にろう付接合が形成されてなるろう付チューブや、ブレージングシートの端面を突き合わせて溶接する溶接チューブなどに使用することができる。
(ブレージングシートの製造方法)
前記ブレージングシートは、例えば以下の製造方法により得られる。すなわち、ブレージングシートの製造方法は、前記心材となる心材用塊、前記中間材となる中間材用塊、前記ろう材となるろう材用塊及び前記犠牲陽極材となる犠牲陽極材用塊を含む複数のアルミニウム塊を準備するアルミニウム塊準備工程と、
前記心材用塊の一方の面上に前記中間材用塊及び前記ろう材用塊を重ね合わせるとともに、他方の面上に前記犠牲陽極材用塊を重ね合わせてクラッド塊を作製する積層工程と、
前記クラッド塊に熱間圧延を施し、複数の前記アルミニウム塊を一体化してクラッド板を作製するクラッド圧延工程と、
前記クラッド板に熱間圧延を施す熱間圧延工程と、
次いで、前記クラッド板に1回以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程が完了した後に、前記クラッド板を180℃以上350℃以下の温度に1時間以上10時間以下保持して焼鈍を行う最終焼鈍工程と、を有している。
前記ブレージングシートは、例えば以下の製造方法により得られる。すなわち、ブレージングシートの製造方法は、前記心材となる心材用塊、前記中間材となる中間材用塊、前記ろう材となるろう材用塊及び前記犠牲陽極材となる犠牲陽極材用塊を含む複数のアルミニウム塊を準備するアルミニウム塊準備工程と、
前記心材用塊の一方の面上に前記中間材用塊及び前記ろう材用塊を重ね合わせるとともに、他方の面上に前記犠牲陽極材用塊を重ね合わせてクラッド塊を作製する積層工程と、
前記クラッド塊に熱間圧延を施し、複数の前記アルミニウム塊を一体化してクラッド板を作製するクラッド圧延工程と、
前記クラッド板に熱間圧延を施す熱間圧延工程と、
次いで、前記クラッド板に1回以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程が完了した後に、前記クラッド板を180℃以上350℃以下の温度に1時間以上10時間以下保持して焼鈍を行う最終焼鈍工程と、を有している。
[アルミニウム塊準備工程]
アルミニウム塊準備工程においては、心材用塊、中間材用塊、ろう材用塊及び犠牲陽極材用塊を含む複数のアルミニウム塊を準備する。これらのアルミニウム塊の化学成分は、ブレージングシートにおける対応する層の化学成分と同様である。アルミニウム塊の鋳造方法は特に限定されることはなく、DC鋳造やCC鋳造などの公知の方法を採用することができる。鋳造後のアルミニウム塊は、そのまま積層工程に供してもよいし、必要に応じて均質化処理を施した後に積層工程に供してもよい。
アルミニウム塊準備工程においては、心材用塊、中間材用塊、ろう材用塊及び犠牲陽極材用塊を含む複数のアルミニウム塊を準備する。これらのアルミニウム塊の化学成分は、ブレージングシートにおける対応する層の化学成分と同様である。アルミニウム塊の鋳造方法は特に限定されることはなく、DC鋳造やCC鋳造などの公知の方法を採用することができる。鋳造後のアルミニウム塊は、そのまま積層工程に供してもよいし、必要に応じて均質化処理を施した後に積層工程に供してもよい。
均質化処理における保持温度及び保持時間は、アルミニウム塊の化学成分等に応じて適宜設定すればよい。例えば、心材用塊に均質化処理を施す場合には、心材用塊を450℃以上620℃以下の温度に1時間以上20時間保持することが好ましい。このような条件で心材用塊に均質化処理を施すことにより、鋳造時に析出したMg2SiをAl母相中に十分に再溶解させることができる。その結果、ブレージングシートのろう付加熱が完了した後に、時効によって析出するMg2Siの量をより多くし、時効硬化によるブレージングシートの強度の上昇量をより高くすることができる。
また、鋳造後のアルミニウム塊に、必要に応じて熱間圧延を施すことにより、アルミニウム塊の厚みを調整してもよい。アルミニウム塊に熱間圧延を施す場合には、アルミニウム塊を400℃以上560℃以下の温度に1時間以上10時間保持した後に熱間圧延を行うことが好ましい。熱間圧延前の加熱温度が400℃未満の場合、または、加熱時間が1時間未満の場合には、アルミニウム塊の塑性加工性が低くなり、熱間圧延中にアルミニウム塊の端縁に割れが発生しやすくなるおそれがある。熱間圧延前の加熱温度が560℃を超える場合には、加工発熱によってアルミニウム塊が溶融するおそれがある。加熱時間が10時間を超える場合には、生産性の悪化を招くおそれがある。
[積層工程]
積層工程においては、複数のアルミニウム塊を、所望するブレージングシートの層の順に重ね合わせてクラッド塊を作製すればよい。
積層工程においては、複数のアルミニウム塊を、所望するブレージングシートの層の順に重ね合わせてクラッド塊を作製すればよい。
[クラッド圧延工程]
クラッド圧延工程においては、前記クラッド塊に熱間圧延を施すことにより、複数の前記アルミニウム塊を一体化してクラッド板を作製する。クラッド圧延における圧延条件は特に限定されることはなく、隣り合うアルミニウム塊同士を接合することができる条件であればよい。
クラッド圧延工程においては、前記クラッド塊に熱間圧延を施すことにより、複数の前記アルミニウム塊を一体化してクラッド板を作製する。クラッド圧延における圧延条件は特に限定されることはなく、隣り合うアルミニウム塊同士を接合することができる条件であればよい。
[熱間圧延工程]
熱間圧延工程においては、クラッド圧延により得られたクラッド板に熱間圧延を行い、クラッド板の厚みを減少させる。熱間圧延工程においては、クラッド板を400℃以上560℃に加熱した状態で熱間圧延を行うことが好ましい。また、熱間圧延終了時のクラッド板の温度は、350℃以下であることが好ましい。熱間圧延が完了した後のクラッド板の厚みは、1mm以上10mm以下であることが好ましい。この場合には、後に行う冷間圧延工程においてクラッド板に蓄積される加工ひずみを十分に大きくし、ブレージングシートの心材中に繊維状組織を容易に形成することができる。
熱間圧延工程においては、クラッド圧延により得られたクラッド板に熱間圧延を行い、クラッド板の厚みを減少させる。熱間圧延工程においては、クラッド板を400℃以上560℃に加熱した状態で熱間圧延を行うことが好ましい。また、熱間圧延終了時のクラッド板の温度は、350℃以下であることが好ましい。熱間圧延が完了した後のクラッド板の厚みは、1mm以上10mm以下であることが好ましい。この場合には、後に行う冷間圧延工程においてクラッド板に蓄積される加工ひずみを十分に大きくし、ブレージングシートの心材中に繊維状組織を容易に形成することができる。
[冷間圧延工程]
冷間圧延工程においては、熱間圧延工程が完了した後のクラッド板に1回又は複数回の冷間圧延を行うことにより、所望の厚みを有するブレージングシートを得ることができる。
冷間圧延工程においては、熱間圧延工程が完了した後のクラッド板に1回又は複数回の冷間圧延を行うことにより、所望の厚みを有するブレージングシートを得ることができる。
[中間焼鈍工程]
前記冷間圧延工程において複数回の冷間圧延を行う場合、前記製造方法は、さらに、冷間圧延の途中で前記クラッド板を加熱して焼鈍する中間焼鈍工程を有していてもよいが、クラッド板に蓄積される加工ひずみをより大きくする観点からは、中間焼鈍工程を行わないことが好ましい。
前記冷間圧延工程において複数回の冷間圧延を行う場合、前記製造方法は、さらに、冷間圧延の途中で前記クラッド板を加熱して焼鈍する中間焼鈍工程を有していてもよいが、クラッド板に蓄積される加工ひずみをより大きくする観点からは、中間焼鈍工程を行わないことが好ましい。
[最終焼鈍工程]
最終焼鈍工程においては、冷間圧延が完了した後のクラッド板を180℃以上350℃以下の温度に1時間以上10時間以下保持することにより焼鈍を行う。前述したように、冷間圧延工程において十分に加工ひずみが蓄積したクラッド板に前記特定の加熱条件で焼鈍を行うことにより、得られるブレージングシートの心材中に繊維状組織を形成するとともに、心材に残留する加工ひずみの量を十分に大きくすることができる。
最終焼鈍工程においては、冷間圧延が完了した後のクラッド板を180℃以上350℃以下の温度に1時間以上10時間以下保持することにより焼鈍を行う。前述したように、冷間圧延工程において十分に加工ひずみが蓄積したクラッド板に前記特定の加熱条件で焼鈍を行うことにより、得られるブレージングシートの心材中に繊維状組織を形成するとともに、心材に残留する加工ひずみの量を十分に大きくすることができる。
このようなブレージングシートにろう付加熱を行うと、心材に蓄積された加工ひずみを駆動力として心材が再結晶し、再結晶後の心材の結晶粒を微細化することができる。その結果、ろう付後のブレージングシートの強度を向上させることができる。かかる作用効果をより確実に得る観点からは、最終焼鈍工程における加熱温度は、180℃以上300℃以下であることが好ましい。
最終焼鈍工程における加熱温度が180℃未満の場合、または、保持時間が1時間未満の場合には、ブレージングシートの成形性の低下を招き、ブレージングシートを所望の形状に成形することが難しくなる恐れがある。また、最終焼鈍工程における加熱温度が350℃を超える場合には、焼鈍中に心材が再結晶し、所望の特性を得られなくなるおそれがある。最終焼鈍工程における保持時間が10時間を超える場合には、ブレージングシートの生産性の低下を招くおそれがある。
前記ブレージングシート及びその製造方法の実施例を、図1~図3を参照しつつ説明する。本例のブレージングシート1は、図1に示すように、心材11と、心材11の一方の面上に積層された中間材12と、中間材12上に積層されたろう材13と、心材11の他方の面上に積層された犠牲陽極材14と、を有している。
心材11は、Si:0.3質量%以上1.0質量%以下、Cu:0.4質量%以上1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以上2.0質量%以下及びMg:0.30質量%以上0.90質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金から構成されている。心材11の金属組織中には繊維状組織が含まれている。
中間材12は、心材11よりも卑な孔食電位を有するアルミニウム合金から構成されている。ろう材13は、Si:11質量%以上13質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金から構成されている。ろう材13の厚みは18μm以上である。犠牲陽極材14は、Zn:3.0質量%以上8.0質量%及びMn:0質量%以上0.50質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金から構成されている。犠牲陽極材14の厚みは20μm以上である。
心材11、中間材12、ろう材13及び犠牲陽極材14の厚みの合計は120μm以上350μm以下である。心材11の厚みは、心材11、中間材12、ろう材13及び犠牲陽極材14の厚みの合計に対して55%以上である。
本例のブレージングシート1は、自動車用熱交換器における、冷媒を流通させるための熱交換器用チューブ2に好適である。図2に、ブレージングシート1からなるチューブ2の一例を示す。なお、図2においては、便宜上、中間材12の記載を割愛した。
冷媒の流通方向に対して垂直な断面におけるチューブ2の形状は、概ね長方形状または長円状である。図2に示すチューブ2は、その外壁を構成する外壁部21と、外壁部21によって囲まれた内部空間を2つの冷媒流路22に区画する隔壁部23と、を有している。外壁部21の外表面にはブレージングシート1のろう材13が配置されており、内表面にはブレージングシート1の犠牲陽極材14が配置されている。このようなチューブ2は、例えば、ブレージングシート1に曲げ加工を施し、ブレージングシート1の幅方向における両端15を犠牲陽極材14と当接させることにより形成できる。
本例のブレージングシート1のより具体的な構成の例を、製造方法と共に説明する。ブレージングシート1を作製するに当たっては、まず、表1の合金記号A1~A5に示す化学成分を有する心材用塊、合金記号B1~B8に示す化学成分を有する中間材用塊、合金記号C1~C4に示す化学成分を有するろう材用塊及び合金記号D1~D4に示す化学成分を有する犠牲陽極材用塊を準備する。これらのアルミニウム塊の作製は、例えば、DC鋳造により行えばよい。なお、表1における記号「-」は当該元素の含有量が0.01質量%未満であることを示し、「Bal.」は残部であることを示す。
アルミニウム塊を準備した後、アルミニウム塊の表面を面削する。その後、一部の心材用塊については、表2に示す加熱温度及び保持時間で心材用塊を加熱して均質化処理を行う。また、中間材用塊、ろう材用塊及び心材用塊については、480℃の温度に1時間保持した後、熱間圧延を行い、最終的に得られるブレージングシートにおけるクラッド率が所望の値となるように中間材用塊、ろう材用塊及び心材用塊の厚みを調整する。
次に、心材用塊、中間材用塊、ろう材用塊及び犠牲陽極材用塊を表2に示す組み合わせで重ね合わせ、クラッド塊とする。このクラッド塊を480℃の温度に1時間保持した後、クラッド圧延を施して厚み3.0mmのクラッド板を得る。
得られたクラッド板に冷間圧延を施し、クラッド板全体の厚みを表2に示す厚みとする。その後、クラッド板を220℃の温度に2時間保持して最終焼鈍を行う。以上により、表2に示すブレージングシート1(試験材S1~S11)を得ることができる。試験材S1~S11における、心材11、中間材12、ろう材13及び犠牲陽極材14のそれぞれの厚みは、表2に示す値となる。なお、表2には、心材11の厚みとともに、ブレージングシート1全体の厚みに対する心材11の厚みの比率(単位:%)を記載した。
なお、表2に示す試験材S12~S15は、試験材S1~S11との比較のための試験材である。試験材S12~S14の構成は、心材11、中間材12、ろう材13及び犠牲陽極材14の組み合わせが表2に示すように変更されている以外は、試験材S1~S11と同様である。
また、試験材S15は、最終焼鈍における保持温度を220℃から400℃に変更するとともに、保持時間を2時間から3時間に変更する以外は、試験材S9と同様の方法により作製することができる。
次に、試験材S1~S15の諸特性の評価方法を説明する。
[ろう付加熱前の心材の金属組織の評価]
ろう付加熱前の試験材を圧延方向に沿って切断し、圧延方向及び厚み方向の両方に平行な断面を露出させる。この断面を鏡面研磨した後、ケラー氏液を用いてエッチングする。その後、金属顕微鏡を用いて断面に露出した心材の金属組織を観察する。表2の「金属組織」欄における記号「F」は心材の金属組織が繊維状組織であることを示し、記号「R」は心材の金属組織が再結晶により生じた等軸状組織であることを示す。
ろう付加熱前の試験材を圧延方向に沿って切断し、圧延方向及び厚み方向の両方に平行な断面を露出させる。この断面を鏡面研磨した後、ケラー氏液を用いてエッチングする。その後、金属顕微鏡を用いて断面に露出した心材の金属組織を観察する。表2の「金属組織」欄における記号「F」は心材の金属組織が繊維状組織であることを示し、記号「R」は心材の金属組織が再結晶により生じた等軸状組織であることを示す。
[ろう付加熱後の心材の平均結晶粒径]
試験材を加熱炉内に吊り下げた状態で炉内温度を上昇させ、炉内温度が577℃~600℃の範囲内である時間が3分間となるように、試験材を加熱する。炉内で冷却した試験材を加熱炉から取り出した後、温度20℃の恒温槽に7日間保管する。
試験材を加熱炉内に吊り下げた状態で炉内温度を上昇させ、炉内温度が577℃~600℃の範囲内である時間が3分間となるように、試験材を加熱する。炉内で冷却した試験材を加熱炉から取り出した後、温度20℃の恒温槽に7日間保管する。
そして、恒温槽から取り出した試験材を圧延方向に沿って切断し、圧延方向及び厚み方向の両方に平行な断面を露出させる。この断面を鏡面研磨した後、電子後方散乱回折法(EBSD)により心材の結晶方位マップを取得する。なお、EBSDにおける観察領域は、圧延方向における長さが1.5mmとなるように設定する。また、EBSDにおいては、互いに異なる結晶方位を有する領域の境界のうち、隣り合う領域との結晶方位差が20度以上となる境界を結晶粒界とし、結晶粒界により囲まれた領域を結晶粒とする。
EBSDにより得られた結晶方位マップにおける、全ての結晶粒の円相当径を算出し、これらを算術平均することにより心材の平均結晶粒径を算出する。ろう付後の各試験材における心材の平均結晶粒径は、表3に示す値となる。なお、表3の「ろう付加熱後の心材の平均結晶粒径」欄における記号「-」は、心材の平均結晶粒径の評価を行っていないことを示す。
[ろう付加熱後の引張強さ]
試験材を加熱炉内に吊り下げた状態で炉内温度を上昇させ、炉内温度が577℃~600℃の範囲内である時間が3分間となるように、試験材を加熱する。炉内で冷却した試験材を加熱炉から取り出した後、温度20℃の恒温槽に7日間保管する。
試験材を加熱炉内に吊り下げた状態で炉内温度を上昇させ、炉内温度が577℃~600℃の範囲内である時間が3分間となるように、試験材を加熱する。炉内で冷却した試験材を加熱炉から取り出した後、温度20℃の恒温槽に7日間保管する。
この試験材を用い、JIS Z2241:2011に準拠した方法により引張試験を行う。引張試験における引張速度は10mm/分とし、ゲージ長は50mmとする。引張試験により得られる応力-ひずみ曲線に基づいて試験材の引張強さを決定する。各試験材のろう付後の引張強さは、表3に示す値となる。なお、表3の「ろう付加熱後の引張強さ」欄における記号「-」は、ろう付後の引張強さの評価を行っていないことを示す。
[ろう付性]
コルゲートフィン型熱交換器のコアを模擬したミニコア試験体3を用いてろう付性の評価を行う。図3に示すように、ミニコア試験体3は、コルゲートフィン31と、コルゲートフィン31を狭持する2枚の平板32(32a、32b)と、を有している。コルゲートフィン31は、A3003合金に1.5質量%のZnを添加したアルミニウム合金からなる厚み0.08mmの板材である。また、コルゲートフィン31には、質別記号H14で表される調質が施されている。コルゲートフィン31の長さは40mmであり、高さは10mmであり、隣り合う頂部311間のピッチは3mmである。
コルゲートフィン型熱交換器のコアを模擬したミニコア試験体3を用いてろう付性の評価を行う。図3に示すように、ミニコア試験体3は、コルゲートフィン31と、コルゲートフィン31を狭持する2枚の平板32(32a、32b)と、を有している。コルゲートフィン31は、A3003合金に1.5質量%のZnを添加したアルミニウム合金からなる厚み0.08mmの板材である。また、コルゲートフィン31には、質別記号H14で表される調質が施されている。コルゲートフィン31の長さは40mmであり、高さは10mmであり、隣り合う頂部311間のピッチは3mmである。
平板32は、いずれかの試験材から構成されている。平板32の長さは40mmであり、幅は16mmである。
ミニコア試験体3を作製するに当たっては、まず、一方の平板32aのろう材13上にコルゲートフィン31を配置する。次いで、コルゲートフィン31上に、コルゲートフィン31とろう材13とが当接するようにして他方の平板32bを配置する。その後、平板32のろう材13に、刷毛を用いて濃度5質量%のフッ化物フラックス溶液を塗布する。なお、図3においては、便宜上、中間材12の記載を割愛した。
このようにして得られたミニコア試験体3を加熱炉内に配置した後、炉内温度を上昇させ、炉内温度が577℃~600℃の範囲内である時間が3分間となるように、ミニコア試験体3を加熱する。以上により、試験材からなる平板32とコルゲートフィン31とをろう付する。
ろう付性の評価は、コルゲートフィン31の接合率及びコルゲートフィン31の溶融の有無に基づいて行う。コルゲートフィン31の接合率を算出するに当たっては、まず、ろう付後のミニコア試験体3からコルゲートフィン31を切除する。次いで、ろう付前におけるコルゲートフィン31の頂部311と平板32との当接部の総数に対する、ろう付後に形成されたコルゲートフィン31の頂部311と平板32とのろう付接合の数の比率を算出する。この値を百分率(単位:%)で表した値をコルゲートフィン31の接合率とする。各試験材を用いたミニコア試験体3における、コルゲートフィン31の接合率を表3の「接合率」欄に示す。なお、同欄における記号「-」は、ろう付性の評価を行っていないことを示す。
コルゲートフィン31の溶融の有無を評価するに当たっては、ろう付後のミニコア試験体3を目視観察し、コルゲートフィン31が溶融しているか否かを判定する。表3の「フィンの溶融の有無」欄に、各試験材を用いたミニコア試験体3におけるコルゲートフィン31の溶融の有無を示す。
[ろう材側耐食性]
ろう材側耐食性の評価に当たっては、まず、前述したミニコア試験体3を作製する。ミニコア試験体3における平板32の犠牲陽極材14を絶縁樹脂で被覆した後、ろう材13側の表面を試験面として、JIS H8502:1999に規定された方法によりCASS試験を実施する。なお、CASS試験の試験時間は1000時間とする。表3の「ろう材側耐食性」欄に記載した記号「A+」は、試験完了まで腐食による貫通が試験材に生じないことを示し、記号「A」は、試験開始からの経過時間が700時間に達した後に腐食による貫通が試験材に生じることを示し、記号「B」は、試験開始からの経過時間が700時間に到達する前に腐食による貫通が試験材に生じることを示し、記号「-」は、CASS試験を行っていないことを示す。
ろう材側耐食性の評価に当たっては、まず、前述したミニコア試験体3を作製する。ミニコア試験体3における平板32の犠牲陽極材14を絶縁樹脂で被覆した後、ろう材13側の表面を試験面として、JIS H8502:1999に規定された方法によりCASS試験を実施する。なお、CASS試験の試験時間は1000時間とする。表3の「ろう材側耐食性」欄に記載した記号「A+」は、試験完了まで腐食による貫通が試験材に生じないことを示し、記号「A」は、試験開始からの経過時間が700時間に達した後に腐食による貫通が試験材に生じることを示し、記号「B」は、試験開始からの経過時間が700時間に到達する前に腐食による貫通が試験材に生じることを示し、記号「-」は、CASS試験を行っていないことを示す。
[犠牲陽極材側耐食性]
犠牲陽極材側耐食性の評価に当たっては、2枚の試験材を犠牲陽極材14同士が当接するようにして重ね合わせた状態で加熱炉内に配置した後、炉内温度を上昇させる。そして、炉内温度が577℃~600℃の範囲内である時間が3分間となるように、2枚の試験材を加熱する。炉内で冷却した2枚の試験材を加熱炉から取り出した後、一方の試験材を他方の試験材から分離する。そして、試験材のろう材13を絶縁樹脂で被覆する。
犠牲陽極材側耐食性の評価に当たっては、2枚の試験材を犠牲陽極材14同士が当接するようにして重ね合わせた状態で加熱炉内に配置した後、炉内温度を上昇させる。そして、炉内温度が577℃~600℃の範囲内である時間が3分間となるように、2枚の試験材を加熱する。炉内で冷却した2枚の試験材を加熱炉から取り出した後、一方の試験材を他方の試験材から分離する。そして、試験材のろう材13を絶縁樹脂で被覆する。
このようにして得られた試験片を用い、サイクル浸漬試験を実施する。サイクル浸漬試験においては、試験片の犠牲陽極材14側の表面を、500質量ppmのCl-と、100質量ppmのSO4
2-と、10質量ppmのCu2+とを含有する88℃の水溶液中に8時間浸漬した後、試験片を水溶液から取り出して室温中で16時間静置するサイクルを繰り返し実施する。試験開始からの経過時間が1000時間に到達した時点で試験を終了する。そして、腐食による貫通が試験材に生じるまでの経過時間に基づいて、耐食性を評価する。
表3の「犠牲陽極材側耐食性」欄に記載した記号「A」は、試験完了まで腐食による貫通が試験材に生じないことを示し、記号「B」は、試験完了前に腐食による貫通が試験材に生じることを示し、記号「-」は、試験を行っていないことを示す。
表2及び表3に示したように、試験材S1~S11における心材、中間材、ろう材及び犠牲陽極材は、前記特定の化学成分および金属組織を有しているとともに、前記特定の厚みを有している。それ故、これらの試験材は、ろう付後の強度、ろう付性、ろう材側耐食性及び犠牲陽極材側耐食性の全てに優れている。これらの試験材の中でも、中間材中にZnが含まれている試験材S2、S3、S8及びS10は、中間材の犠牲防食効果が高いため、他の試験材よりもさらに高いろう材側耐食性を有している。
一方、試験材S12及びS13の中間材には比較的多量のCuが含まれているため、これらの試験材の中間材は、試験材S1~S11の中間材に比べて心材に対する犠牲防食効果が低い。それ故、試験材S12及びS13は、試験材S1~S11に比べてろう材側耐食性に劣っている。
試験材S14のろう材におけるSiの含有量は、前記特定の範囲よりも少ない。そのため、試験材S14は、試験材S1~S11に比べてろう付性に劣っている。
試験材S15は、最終焼鈍工程における加熱温度が高すぎるため、最終焼鈍工程において心材が再結晶し、等軸状組織となる。心材の金属組織が等軸状組織であるブレージングシートを用いてろう付を行うと、心材の金属組織が繊維状組織である場合に比べてろう付加熱後の結晶粒が粗大になる。そのため、試験材S15は、試験材S1~S11に比べてろう付後の強度に劣っている。
以上、前記ブレージングシート及びその製造方法の実施例を説明したが、本発明に係るブレージングシート及びその製造方法の具体的な態様は前述した実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
1 ブレージングシート
11 心材
12 中間材
13 ろう材
14 犠牲陽極材
11 心材
12 中間材
13 ろう材
14 犠牲陽極材
Claims (7)
- Si:0.3質量%以上1.0質量%以下、Cu:0.4質量%以上1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以上2.0質量%以下及びMg:0.30質量%以上0.90質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有し、金属組織中に繊維状組織を有する心材と、
前記心材よりも卑な孔食電位を有するアルミニウム合金からなり、前記心材の一方の面上に積層された中間材と、
Si:11質量%以上13質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するとともに18μm以上の厚みを有し、前記中間材上に積層されたろう材と、
Zn:3.0質量%以上8.0質量%以下及びMn:0質量%以上0.50質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するとともに20μm以上の厚みを有し、前記心材の他方の面上に積層された犠牲陽極材と、を有し、
前記心材、前記中間材、前記ろう材及び前記犠牲陽極材の厚みの合計が120μm以上350μm以下であり、
前記心材の厚みが、前記心材、前記中間材、前記ろう材及び前記犠牲陽極材の厚みの合計に対して55%以上である、ブレージングシート。 - 前記心材は、さらに、Fe:0.05質量%以上1.0質量%以下、Ti:0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.30質量%以下及びZr:0.05質量%以上0.30質量%以下からなる群より選択される1種または2種以上の元素を含有している、請求項1に記載のブレージングシート。
- 前記犠牲陽極材は、さらに、Si:0質量%超え1.0質量%以下、Fe:0.05質量%以上1.0質量%以下、Ti:0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.30質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.30質量%以下、In:0質量%超え0.10質量%以下、Sn:0質量%超え0.10質量%以下及びNi:0.05質量%以上2.0質量%以下からなる群より選択される1種または2種以上の元素を含有している、請求項1または2に記載のブレージングシート。
- 前記ろう材は、さらに、Fe:0.05質量%以上1.0質量%以下、Zn:0質量%超え4.0質量%以下、Ti:0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.30質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.30質量%以下、In:0質量%超え0.10質量%以下、Sn:0質量%超え0.10質量%以下、Na:0.001質量%以上0.050質量%以下及びSr:0.001質量%以上0.050質量%以下からなる群より選択される1種または2種以上の元素を含有している、請求項1~3のいずれか1項に記載のブレージングシート。
- 前記中間材を構成するアルミニウム合金は、Si:0.3質量%以上1.0質量%以下及びMn:1.0質量%以上2.0質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有している、請求項1~4のいずれか1項に記載のブレージングシート。
- 前記中間材を構成するアルミニウム合金は、さらに、Zn:0質量%超え3.0質量%以下、Fe:0.05質量%以上1.0質量%以下、Ti:0.05質量%以上0.30質量%以下、Cr:0.05質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.30質量%以下、Zr:0.05質量%以上0.30質量%以下、In:0質量%超え0.10質量%以下、Sn:0質量%超え0.10質量%以下及びNi:0.05質量%以上2.0質量%以下からなる群より選択される1種または2種以上の元素を含有しており、12μm以上の厚みを有している、請求項5に記載のブレージングシート。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載のブレージングシートの製造方法であって、
前記心材となる心材用塊、前記中間材となる中間材用塊、前記ろう材となるろう材用塊及び前記犠牲陽極材となる犠牲陽極材用塊を含む複数のアルミニウム塊を準備するアルミニウム塊準備工程と、
前記心材用塊の一方の面上に前記中間材用塊及び前記ろう材用塊を重ね合わせるとともに、他方の面上に前記犠牲陽極材用塊を重ね合わせてクラッド塊を作製する積層工程と、
前記クラッド塊に熱間圧延を施し、複数の前記アルミニウム塊を一体化してクラッド板を作製するクラッド圧延工程と、
前記クラッド板に熱間圧延を施す熱間圧延工程と、
次いで、前記クラッド板に1回以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程が完了した後に、前記クラッド板を180℃以上350℃以下の温度に1時間以上10時間以下保持して焼鈍を行う最終焼鈍工程と、を有する、ブレージングシートの製造方法。
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