JP2020180320A - 強度、成形性、および耐食性に優れるアルミニウム合金フィン材および熱交換器 - Google Patents
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Abstract
Description
また、熱交換器が車載される場合には、熱交換器の剛性を保つ必要があり、フィンが腐食して脱落することは熱交換器コア全体の剛性を損なうことになるので、実使用環境におけるフィン自体の耐食性も重要である。
特許文献2では、ろう付前の第2相粒子の密度に着目し、コルゲート成形性が良好であり、かつ、ろう付加熱後に優れた強度を有し、特に自動車用熱交換器のフィンとして好適に使用できるアルミニウム合金フィン材及びその製造方法が提案されている。
特許文献3では、成分設計によって、優れたろう付性と耐サグ性を有するアルミニウム合金フィン材およびその製造方法が提案されている。
特許文献4では、成分設計と強化機構の設計により、ろう付後の強度、ろう付性に優れるフィン材が提案されている。
すなわち、本発明の強度、成形性、および耐食性に優れるアルミニウム合金フィン材の発明のうち、第1の形態は、質量%で、Mn:1.2〜2.0%、Si:0.5〜1.3%、Cu:0.05〜0.13%、Fe:0.1〜0.5%、Zn:0.5〜3.0%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金からなり、コルゲート成形前のフィン材表面で、円相当径で500μm以上の結晶粒が10〜200個/cm2存在し、その90%以上が幅方向よりも圧延方向に長い組織を有し、引張強さが200〜250MPa、伸びが1.0〜5.0%であり、600℃で3分間保持するろう付相当熱処理後に引張強さが140MPa以上で、中性塩水噴霧試験で16週間後の腐食減量が150mg/dm2以下であることを特徴とする。
MnはAl−Mn−Si系化合物を析出させ、分散強化によるろう付後の強度を得るために添加する。Mn含有量が1.2%未満では、Al−Mn−Si系金属間化合物による分散強化の効果が小さく、所望のろう付後強度を得られない。また、2.0%を超えて含有していると、鋳造時にAl−Mn系の巨大金属間化合物が晶出し、圧延時破断に至る懸念がある。また、マトリクスへの固溶度が大きくなり固相線温度(融点)が低下し、ろう付時にフィンが溶融してしまう場合があり好ましくない。これらの理由によりMn含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Mn含有量は、下限を1.4%、上限を1.8%とするのが望ましい。
SiはAl−Mn−Si系の金属間化合物を析出させ、分散強化によってろう付後の強度を得るために添加する。Si含有量が0.5%未満では、Al−Mn−Si系金属間化合物による分散強化の効果が小さく、所望のろう付後強度が得られない。また、1.3%を超えて含有するとマトリクスへの固溶度が大きくなり、固相線温度(融点)が低下し、ろう付時にフィンが溶融してしまう場合があり好ましくない。これらの理由によりSi含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Si含有量は、下限を0.7%、上限を1.2%とするのが望ましい。
CuはAlマトリクスへ固溶するか、Al−Cu系化合物を生成して存在する。Cu含有量が0.05%未満であると、固溶強化によるろう付後の強度への寄与が小さい。一方、0.13%を超えて含有すると、マトリクスよりも電位が貴なθ−CuAl2安定相やθ’−CuAl2準安定相が化合物として存在し、腐食の起点となり耐食性を低下させるため好ましくない。これらの理由によりCu含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Cu含有量は、下限を0.07%、上限を0.12%とするのが望ましい。
Feは、Al−Fe系およびAl−Fe−Si系の金属間化合物を晶出、析出し、分散強化によるろう付後の強度を得るために添加する。0.1%未満の含有ではその効果が小さく、所望のろう付後強度が得られない。また高純度地金の使用に限定されるためコストアップとなるため好ましくない。一方、0.5%以上含有すると、Al−Fe、Al−Fe−Si化合物が腐食の起点として作用し、耐食性が低下するため好ましくない。これらの理由によりFe含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Fe含有量は、下限を0.15%、上限を0.45%とするのが望ましい。
Znは、Alマトリクス中に固溶して電位を卑にさせる作用があり、フィンの犠牲陽極効果を得るために添加する。但し、0.5%未満の含有では電位を卑にさせる作用が小さく、所望の犠牲陽極効果を得られず組み合わされるチューブの侵食深さが大きくなる。一方、3.0%を超えて含有すると電位が過剰に卑となり、フィンの自己耐食性が低下するため好ましくない。これらの理由によりZn含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Zn含有量は、下限を0.8%、上限を2.5%とするのが望ましい。
Ti、Cr、Mg、Zrは、アルミニウムと金属間化合物を形成し、分散強化および固溶強化により強度が向上するので、所望により1種以上を含有する。但し、それぞれの含有量が下限未満であると、分散強化および固溶強化への影響が小さく、強度が向上する効果が小さい。一方、Ti、Cr、Zrがそれぞれの上限を超えると鋳塊の鋳造時に巨大金属間化合物が晶出し、圧延時破断に至る懸念がある。また、Mgは、上限を超えるとろう付性が低下する。したがって、それぞれの含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Ti、Cr、Mg、Zrは、下限0.03%、上限0.15%とするのが望ましい。
なお、これら元素を積極的に添加しない場合でも、それぞれを不純物として0.01%未満で含有しても良い。
コルゲート成形前のフィン材表面で、円相当径500μm以上の結晶粒が10個/cm2以下の場合、面内で1つの結晶粒が大きいため、コルゲート成形時に各結晶が有する異方性の影響が大きく現れてしまい、成形後のフィンの山高さが不揃いとなるため好ましくない。一方、200個/cm2を超える場合は、小さい結晶粒が多く存在するため、高速のコルゲート成形では、巻出し時に発生する張力の増加に伴い結晶粒界から一瞬で破断してしまうことがある。また、小さい結晶粒はろう付時の耐エロージョン性にも劣るため好ましくない。また、その90%以上が板幅方向よりも圧延方向に長い組織を有して、コルゲート成形の長手方向と一致させることで、コルゲート成形時の異方性影響を排除することができるため成形性の向上に寄与する効果がある。
上記規定は、連続鋳造圧延法、均質化処理、圧延率等の製造工程条件などにより達成することができる。
コルゲート成形前で、引張強さが200MPa未満の場合は、熱交換器組み付け時の荷重に対して変形してしまうため好ましくない。一方、250MPaを超える引張強さを有する場合は、高速のコルゲート成形に対して所望のフィン形状、フィン高さ、フィンピッチを得ることが困難となる。また、成形性を向上させるためには適度な伸びを有していることも重要であり、伸びが1.0%未満の場合は、コルゲート成形時の巻出しや成形時に破断することが多い。一方、伸びが5%を超える場合、フィンをルーバー加工する場合にバリの発生が多くなるため好ましくない。これらの理由により、コルゲート成形前における引張り強さおよび伸びを上記範囲に規定する。同様の理由により、引張強さは、下限を205MPa、上限を245MPaとするのが望ましく、伸びは、下限を1.5%、上限を4.0%とするのが望ましい。
上記規定は、圧延率等の製造工程条件などにより達成することができる。
熱交換器の軽量化に合わせてフィンも薄肉、高強度材が求められている。フィンのろう付後強度が低いと車載搭載時に熱交換器に負荷される繰返しの振動や冷却水の膨張、圧縮を抑制することができずチューブは太鼓状に膨張して早期の破断つまり内部冷却水の漏れにつながる。よって、フィン材の強度が必要であり、ろう付加熱後の引張強さを上記範囲に規定する。同様の理由により145MPa以上とするのが一層望ましい。
上記規定は、均質化処理条件、Al−Mn−Si化合物の数密度調整などにより達成することができる。Al−Mn−Si化合物の数密度調整は、均質化処理条件などにより行うことができる。
前記ろう付加熱後の引張強さは、600℃で3分間保持するろう付相当熱処理後に測定することができる。このろう付相当熱処理は、標準的なろう付を模して測定を行うためのものであり、本発明のアルミニウム合金フィン材のろう付条件を限定することを意図するものではない。
フィン材の自己耐食性を確保するため、JIS Z2371 (2015年)準拠の方法の中性塩水噴霧試験により測定したフィン材の16週間後の腐食減量が150mg/dm2以下であることが望ましい。16週間後の腐食減量が150mg/dm2以下であれば、実際の使用環境であってもフィン自体の腐食による性能劣化や部分的な脱落を抑制できるので、熱交換器としての特性を維持することができる。
上記規定は、Fe、Cu等の組成の成分設計により達成することができる。
フィン材の固相線温度は高いほどろう付が容易である。通常のろう付方法の場合、615℃以上あれば、フィンが溶融することなくろう付が可能であり、所望によりフィン材の固相線温度を規定する。固相線温度は成分の設計により設定することができる。
フィン材の電位が−800mV未満の場合、接合される他部材(例えばチューブ、プレート材)に対して電位が過度に卑(低い)となるため、ガルバニック腐食によりフィンの腐食が加速してしまう。フィン材の電位が−730mV超の場合、接合される他部材を対象として、電位差を十分に得ることができず犠牲陽極効果が得られない。この場合、例えばチューブの腐食が加速してしまう。上記理由により、フィン材の電位は所望により上記範囲内とする。より好ましくは、−735mV以下である。
上記規定は、Cu、Zn等の組成の成分設計により達成することができる。
ろう付加熱中における再結晶温度範囲はフィンのろう付性に大きく影響する。一般的にろう付加熱は600℃付近の温度範囲で試されるが、再結晶完了温度が450℃を超える場合、再結晶時の組織変化とそれに伴う高温での強度低下が大きく、結果高温クリープの増大を伴いサグ性が大きく低下し、それに伴いろう付特性にも劣る。そこでろう付加熱時の再結晶温度範囲は450℃以下とするのが望ましい。なお、再結晶完了温度とは、ろう付加熱後に比べて耐力値が+20%以内まで低下し始める温度と定義する。
上記規定は、連続鋳造圧延法、均質化処理、圧延率等の製造工程条件などにより達成することができる。
本実施形態のアルミニウム合金フィン材は、双ロール鋳造機等の連続鋳造圧延(Continuous Casting:CC法)を用いて鋳造し、鋳造板を均質化処理、冷間圧延と途中の中間焼鈍の工程を経て製造することができる。
すなわち、質量%で、Mn:1.2〜2.0%、Si:0.5〜1.3%、Cu:0.05〜0.13%、Fe:0.1〜0.5%未満、Zn:0.5〜3.0%を含有し、所望により、さらに、所望により、質量%で、Ti:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mg:0.01〜0.20%、Zr:0.01〜0.20%のうち、1種または2種以上を含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を作製し、常法によってアルミニウム合金の鋳造板を得る。
上記工程により、ろう付前、ろう付中、およびろう付後に所望する強度、とろう付前、ろう付後の結晶組織を持つ、熱交換器用のフィン材を得ることができる。
本発明としてはろう付の熱処理条件や方法(ろう付温度、雰囲気、フラックスの有無、ろう材の種類等)は特に限定されず、所望の方法によってろう付を行うことができるが、(例えば、室温から600℃まで平均昇温速度100℃/分で昇温し、600℃で3分保持後、100℃/分の降温速度で降温冷却する熱処理の条件のろう付相当加熱)、ろう付後のフィンは、強度と耐食性に優れるため、熱交換器としての高い性能に寄与する。
図1は、本実施形態のフィン4にチューブ3、ヘッダー2、サイドプレート5を組み付けてろう付により製造された熱交換器1を示している。
表1に示す成分(残部Alと不可避不純物)となるように調整した溶湯からCC法を用いて連続鋳造圧延板を作製した。得られた鋳造板に対して、均質化処理を行い、その後、冷間圧延と途中工程で中間焼鈍を行った。中間焼鈍は、200〜350℃で2〜8時間で行い、H14調質で35〜80μmのフィン材を作製した。
得られたフィン材に対して引張試験を行い、機械的性質(引張強さ、伸び)を確認した。次に、塩酸、フッ酸、硝酸の混合液にてサンプル表面をエッチングして結晶粒を露出させ、12mm(圧延方向と平行)×9mm(圧延方向と垂直=板幅方向)視野の表面写真を撮影した。各々の結晶組織について、圧延方向平行、垂直長さを画像処理により算出し、1cm2当たりで円相当径500μm以上の結晶粒数と『圧延方向と平行>圧延方向と垂直となる結晶粒の割合%』を計算した。
固相線温度は、示差走査熱分析装置(Differential scanning calorimetry:DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度で測定した。
次に、各板厚のフィンに対して予備試験による条件出し後にコルゲート成形を行い、コルゲートフィンを作製した。ランダムに測定した20箇所について、フィン高さとフィンピッチが狙い値に対して、±10%以内の差であった場合は◎、±20%であった場合は〇、それ以外を×とした。
また、同様に単板の状態で、昇温速度100℃/分、600℃で3分保持、冷却速度100℃/分の条件でろう付熱処理を行い、ろう付後の機械的性質を確認した。
また、表面にフッ化物系フラックスを塗布した後、上記同様の条件でろう付熱処理した単板について、電位の測定と中性塩水噴霧試験を行い、16週間後の腐食減量を調査した。
比較例1;ろう付後の引張強さが低い
比較例2;ろう付前の引張強さが高い、コルゲート成形性に劣る
比較例3;ろう付後の引張強さが低い
比較例4;固相線温度が低い
比較例5;ろう付後の引張強さが低い
比較例6;ろう付前の伸びが低い、コルゲート成形性に劣る
比較例7;耐食性に劣る
比較例8;電位が貴
比較例9;電位が卑、耐食性に劣る
比較例10;ろう付前の引張強さが高い、伸びが高い、コルゲート成形性に劣る
比較例11;圧延途中で破断
比較例12;耐食性に劣る
比較例13;耐食性に劣る
比較例14;円相当径500μm以上の結晶粒が少ない、コルゲート成形性に劣る
比較例15;圧延途中で破断
比較例16;ろう付前の伸びが低い、コルゲート成形性に劣る
比較例17;圧延途中で破断
比較例18;ろう付前の引張強さが高い、コルゲート成形性に劣る
比較例19;ろう付前の伸びが低い、コルゲート成形性に劣る
比較例20;円相当径500μm以上の結晶粒が多い、コルゲート成形性に劣る
比較例21;ろう付中の再結晶完了温度が高温、ろう付性に劣る
2 ヘッダー
3 チューブ
4 フィン
5 サイドプレート
Claims (5)
- 質量%で、Mn:1.2〜2.0%、Si:0.5〜1.3%、Cu:0.05〜0.13%、Fe:0.1〜0.5%、Zn:0.5〜3.0%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金からなり、
コルゲート成形前のフィン材表面で、円相当径で500μm以上の結晶粒が10〜200個/cm2存在し、その90%以上が幅方向よりも圧延方向に長い組織を有し、引張強さが200〜250MPa、伸びが1.0〜5.0%であり、
600℃で3分間保持するろう付相当熱処理後の引張強さが140MPa以上で、中性塩水噴霧試験で16週間後の腐食減量が150mg/dm2以下であることを特徴とする強度、成形性、および耐食性に優れるアルミニウム合金フィン材。 - 前記アルミニウム合金が、さらに、質量%で、Ti:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mg:0.01〜0.20%、Zr:0.01〜0.20%のうち、1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の強度、成形性、および耐食性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- ろう付前の固相線温度が615℃以上、前記ろう付相当加熱処理後の電位が−800mV以上−730mV以下 vs Ag/AgClであることを特徴とする請求項1または2に記載の強度、成形性、および耐食性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- ろう付前における再結晶完了温度が450℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の強度、成形性、および耐食性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウム合金フィン材を備えることを特徴とする熱交換器。
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