JP7319450B1 - アルミニウム合金圧延材 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば特許文献1では、Si、Mn、Feを適量含有する熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートが提供されており、高い強度と、優れた耐食性及び曲げ疲労特性を有するものとしている。
展伸材に使用するためには、成分および製法の観点から巨大な金属間化合物が生成しないように製造することが望まれる。
また、高強度化のために元素が多く含まれると一般的には伸びの低下や板材の異方性が大きくなるため、成形性が低下し所望する形状の製品を得にくくなる。そのため、板材の高強度化と成形性を両立することは困難とされている。
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、巨大な金属間化合物の生成が抑制され、かつ高い強度を有し成形性に優れるアルミニウム合金圧延材を提供することを目的とする。
質量%で、
Mn:0.7~1.7%、
Si:0.5~1.7%、
Cu:0.1~0.9%、
Fe:0.2~0.8%、
Zn:0.05~1.1%、
を含有し、残りはAlおよび不可避不純物からなる組成を有し、
前記組成における成分含有量が[%Mn]+[%Fe]+|(1-[%Si])/[%Si]|≦2.6の関係式を満たし、
100nm~500nmの分散粒子の分布密度が1mm2あたり1.0×106個~5.0×106個で分布しており、かつ、200μm以上の化合物が10mm2に1個以下で分布しており、
引張強さが150MPa~250MPa、0.2%耐力が50~80MPa、圧延方向に対して0°、45°、90°方向から測定したr値より算出される平均値raveが0.6以上を有する、ことを特徴とする。
上記組成に、さらに、質量%で、
Cr:0.01~0.10%、
Zr:0.01~0.20%、
Ti:0.01~0.20%、
を1種以上含む。
上記組成に、さらに、
質量%で、
Mg:0.1~1.2%、
を含有する。
(組成)
各元素の添加バランスの適正化により巨大な金属間化合物の生成を抑制する。以下の含有量はいずれも質量%で示される。
Mnの含有は、固溶強化および、Al-Mn系、Al-Mn-Si系、Al-Mn-Fe系、Al-Mn-Fe-Si系などの金属間化合物として析出によって材料強度を向上する。Mn含有量が過小であると所望の強度向上効果を得られない。一方、含有量が過剰であると鋳造時に巨大な金属間化合物を生成し、製造性が低下する。このため、Mn含有量の下限を0.7%とし、上限を1.7%とする。
なお、同様の理由で上限を1.5%、下限を0.8%とするのが望ましい。
Siの含有は、固溶強化および、Al-Mn-Si系、Al-Mn-Fe-Si系などの金属間化合物として析出する分散強化によって材料強度を向上する。
Si含有量が過小であると所望の強度向上効果を得られない。一方、含有量が過剰であると、鋳造時に巨大な金属間化合物を生成し、製造性が低下する。このため、Si含有量の下限を0.5%とし、上限を1.7%とする。
なお、同様の理由で上限を1.6%、下限を0.6%とするのが望ましい。
Cuの含有による固溶強化により材料強度を向上する。またZnと共に添加することで伸びを向上し成形性を向上することに寄与する。Cu含有量が過小であると所望の強度向上効果を得られない。一方、含有量が過剰であると、鋳造時に割れが生じやすくなる。このため、Cu含有量の下限を0.1%、上限を0.9%とする。
なお、同様の理由で上限を0.8%、下限を0.15%とするのが望ましい。
Feの含有によって、主にAl-Fe系、Al-Fe-Si系、Al-Mn-Fe系、Al-Mn-Fe-Si系などの金属間化合物として析出し、材料強度を向上する。
Feは、原料に不純物として存在しているため下限未満とするとコストがかかる。また、所望する強度向上効果を得られない。一方、過剰に含有すると、鋳造時に巨大な金属間化合物を生成し、製造性が低下する。このため、Fe含有量の下限を0.2%、上限を0.8%とする。
なお、同様の理由で上限を0.65%、下限を0.25%とするのが望ましい。
Znの含有は、結晶粒微細化により強度および成形性が向上する。またCuと共に添加することで伸びを向上し成形性を向上することに寄与する。下限未満であると所望する効果が得られない。一方、過剰に含有すると、成形性への影響は小さいものの、自己腐食速度が増大することで耐食性が低下する。このため、Zn含有量の下限を0.05%、上限を1.1%とするのが望ましい。
なお、同様の理由で上限を1.0%、下限を0.35%とするのが望ましい。
Cr:0.01~0.10%
これらの成分は、固溶強化および、金属間化合物として析出する分散強化により材料強度を向上させるので、所望により一種以上を含有させる。
これら元素の含有量が過小であると所望の強度向上効果を得られない。一方、含有量が過剰であると、鋳造時に巨大な金属間化合物を生成し、製造性が低下する。このため、これら元素の含有量の下限をそれぞれ0.01%とし、上限をTi,Zrはそれぞれ0.20%、Crは0.10%とする。
なお、同様の理由でTi,Zr含有量の上限を0.1%、下限を0.05%とするのが望ましい。
またCr含有量の上限を0.08%、下限を0.05%とするのが望ましい。これら元素を添加しない場合でも、いずれかの元素を不可避不純物として含有するものであってもよい。
Mgの含有は、固溶強化および、Mg-Si系の金属間化合物として析出し時効析出能を発揮することで材料強度が向上するので、所望により含有させる。
Mgの含有が過小であると、所望の強度向上効果が得られない。一方で、過剰に含有すると、熱間圧延時に割れが生じ易くなり、製造性が低下する。このため、Mgを含有する場合、下限は0.1%、上限は1.2%とする。
なお、同様の理由で上限を1.0%、下限を0.4%とするのが望ましい。
Mgを添加しない場合でもMgを不可避不純物として含有するものであってもよく、その場合、0.05%以下であるのが望ましい。
本発明では、上記成分およびアルミニウムの他に、Ni,Bi,V,In,Sr,Sc,Beなどの不可避不純物を含んでいるものとしてもよい。
不可避不純物量は、特に限定されるものではなく、各成分量で質量%で0.05%以下で含有するものとしてもよい。
これらの関係式を満たすことで、巨大な金属間化合物の生成が抑制される。この関係式を満たさないと、製造方法等の条件如何に拘わらず、巨大な金属間化合物の生成抑制が困難になる。
上記関係式は、成分含有量と単位面積当たりの200μm径以上の化合物の生成個数との関係を、製造した合金に存在する200μm以上の化合物の個数と、MnとFeおよびSiの添加量との対応を回帰分析により求めたものであり、上記関係式を満たすことで、200μm以上の化合物を10mm2に1個以下とすることができる。上記関係式を満たさないと、上記粗大化合物の生成個数を10mm2当たり1個以下とするのが困難になる。
所望する焼鈍後の引張強さおよび0.2%耐力を得るために、上記の金属間化合物の分布状態に調整する必要がある。金属間化合物の粒子サイズが100nm未満および500nm超では所望する強度を得られないため、100nm~500nmの分散粒子に着目した。これらの分散粒子の分散密度については、1.0×106個未満または5.0×106個超では所望する強度を得られない。
これらの化合物が存在する場合、表面剥離や圧延中の破断の原因となり圧延性の低下を招く恐れがある。
焼鈍後において、引張強さが上記の範囲であることが好ましい。強度が150MPa未満であると成形後の構造強度を保つことができない。一方、上記引張強さが250MPa超であると成形時に割れが発生する恐れがある。なお耐力も同様に、80MPaを超えると、成形時に割れが発生するおそれがあり、50MPa未満であると、構造強度が不十分である。
r値は0.6以上が好ましい。raveは、JISZ2254:2008に準ずる方法で、常温において均一な塑性ひずみが生じている5~10%の間で、0°、45°、90°で測定されたr値(;r0°、r45°、r90°)に基づいて、以下の式により算出される。
rave=(r0°+r90°+2*r45°)/4
raveが0.6未満であると、異方性が高くなりプレス成形性が低下し、割れなどが生じ易くなる。
質量%で、Mn:0.7~1.7%、Si:0.5~1.7%、Cu:0.1~0.9%、Fe:0.2~0.8%、Zn:0.05~1.1%を含有し、所望によりCr:0.01~0.10%、Zr:0.01~0.20%、Ti:0.01~0.20%を1種以上、所望によりMg:0.1~1.2%を含有し、残りはAlおよび不可避不純物からなる組成を用意する。
上記組成の成分含有量について、[%Mn]+[%Fe]+|(1-[%Si])/[%Si]|≦2.6の関係式を示している。
上記組成においてアルミニウム合金を溶製する。溶製の方法としては、例えば半連続鋳造法によりアルミニウム合金を鋳造する。
一般的な鋳造速度で鋳造を実施すると鋳造開始から凝固までの間でAl-Mn-Fe系の化合物が成長し、200μm以上の粗大な金属間化合物を形成しやすくなる。このような金属間化合物は特に冷間圧延中に、表面剥離や破断の原因となり製造性を大きく低下させる。これを抑制するために鋳造時に640℃~670℃を通過する際の合金の冷却速度が0.1℃/s~10℃/sの間で実施するのが望ましい。これにより200μm以上の粗大な金属間化合物の生成を効果的に抑制することができる。なお、640℃~670℃は上記化合物が成長する温度である。
上記冷却速度が0.1℃/秒未満の場合、粗大な金属間化合物が生成しやすい。また10℃/秒以上の場合、粗大な金属間化合物の生成抑制については効果的であるが、割れの感受性が高まり製造性が低下する。より好ましくは、上記温度範囲の冷却速度を0.5℃/秒~5℃/秒とする。
得られた合金に対しては均質化処理を行うことができる。
均質化処理では、得られた合金に400℃~600℃未満、処理時間3時間~12時間未満の範囲で均質化処理を施すことができる。これにより、所望する特性を得るための適切な金属間化合物として、円相当径100nm~500nm程度の微細な分散状態が得られる。上記温度および処理時間外の条件を施すと、所望する金属間化合物の分布状態を得ることができず、強度が低下する。また600℃以上では、材料が均質化処理中に溶融するリスクもある。より好ましい温度は、420℃~580℃である。
上記合金に対しては、熱間圧延を行うことができる。
ここで熱間圧延前の均熱処理は400℃から550℃で1~10時間の温度で行うことが望ましい。これ以上の温度では均質化処理にて析出させた分散粒子が再固溶するため素材強度が低下する。加えて、鋳造時に生成した粗大な金属間化合物を熱間圧延中に破砕することを目的として、入側の厚さに対して出側の厚さが20mm以上の減少を伴うように圧延されるパスを15回以上実行することが望ましい。またこの条件を行うことで、破砕された金属間化合物が核生成サイトとして有効に働く1μm程度のサイズとなるとともに、金属間化合物の分布状態が好適化することで、板材のr値を向上させることができる。
これ以下の圧下量もしくは回数の場合、鋳造時に生成した粗大な金属間化合物が残留し、後の製造性が低下する。一方で30mmを超える圧下量は粗大な金属間化合物の破砕には効果的であるが、板幅方向の割れが助長されるため製造性が低下する。したがって、1パス当たりの圧下量を20mm~30mmとし、そのパス数を15回以上とするのがより好ましい。
熱間圧延を行った合金に対しては、冷間圧延を行うことができる。この際に、特に規定されるものではないが、1パス当たりの圧下率が10~40%の間で実施するのが望ましい。この範囲以外の場合、製造性が低下する。
冷間圧延の途中で、冷間圧延を続行するために実施しても良い。バッチ式の焼鈍炉を用いて昇温速度30~70℃/時間で250~450℃、処理時間3~10時間の範囲で施すことができる。250℃未満では再結晶が完了できず、450℃以上の場合、二次再結晶が生じて不均一な再結晶粒となるおそれがある。
また連続焼鈍炉(昇温速度50℃/s以上、処理温度400℃以上、処理時間60s、冷却速度200℃/s以下)を用いても良い。
特に定められるものではないが、0.5mm~3.5mmが例示される。
冷間圧延を終了したアルミニウム合金圧延材では、最終焼鈍を行う。最終焼鈍としては、バッチ式の焼鈍炉を用いて昇温速度30~70℃/時間で300~400℃、処理時間3~10時間の範囲で施すことができる。300℃未満では再結晶が完了できず、400℃以上の場合、二次再結晶が生じて不均一な再結晶粒となるおそれがある。
また連続焼鈍炉(昇温速度50℃/s以上、処理温度400℃以上、処理時間60s、冷却速度200℃/s以下)を用いた場合であれば、さらに焼鈍後の結晶粒が微細となり強度と成形性が向上する。
本発明のアルミニウム合金圧延材は、特定の用途に限定されるものではないが、例えば、熱交換器用のプレート材などに好適に用いることができる。
該合金の鋳造方法は半連続鋳造を採用し、アルミニウム合金の物体温度が640℃~670℃を通過する際には、適正な鋳造速度および冷却水量の調節を行うことで冷却速度を制御し、0.5℃~5.0℃/secの範囲とした。640℃未満の冷却速度については一般的な鋳造速度で鋳造した。640℃~670℃の範囲で冷却速度を0.5℃~5.0℃/secの範囲で制御したものを●、0.5℃/sec未満で制御したものを△で表2に示した。
熱間圧延材の厚さは、7.0mmとし、その後、冷間圧延を行った。
冷間圧延の条件は、1パス当たりの圧下率を15%から30%の間で実施した。供試材No.1から20については、冷間圧延により、板厚1.0mmの冷間圧延材を得た。供試材No.21については、冷間圧延の途中で、中間焼鈍を行った。熱間圧延後に冷間圧延にて3.0mmまで圧延を行った後、中間焼鈍の条件として、350℃×4時間で熱処理を実施した。その後、冷間圧延にて1.0mmの冷間圧延材を得た。
全ての供試材は1.0mmまで冷間圧延後に、最終焼鈍として400℃で3時間の熱処理を付加してO材調質の材料を得た。
200μm以上の化合物の確認
製造したアルミニウム合金について、圧延方向に平行な断面を機械研磨し、光学顕微鏡にて金属間化合物を観察した。光学顕微鏡にて倍率×100で、0.35mm2の面積で10視野を観察し、10枚取得した画像より、画像解析ソフト(例えばImageJ、Wayne Rasband開発)を用いて、金属間化合物の粒子の円相当径および分布量を算出し、その結果を表2に示した。
上記と同様に圧延方向に平行な断面にクロスセクションポリッシャ加工を施し、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM;日本電子製JSM-7900F)を用いて二次電子像を倍率30000倍で、12μm2の面積で10視野を観察し、10枚の画像を取得した。取得した画像より画像解析ソフトを用いて、金属間化合物の粒子の円相当径および分布量を算出し、表2に示した。
引張試験
圧延方向と平行になるようJISZ2241に準ずる方法で5号試験片を採取し、0.2%耐力および引張強さを測定した。引張強さは、140MPa未満を×、140MPa以上、180MPa未満を〇、180MPa以上を◎とし、その結果を表2に示した。
JISZ2254:2008に準ずる方法で、塑性ひずみ5~10%の間でのr値を測定した。圧延方向に平行方向を0°としてr0°を測定し、同様に45°方向からr45°および90°方向からr90°を測定した。
平均r値として(r0°+r90°+2*r45°)/4を算出し、その絶対値が0.6以上、0.7未満のものを〇、0.7以上のものを◎とし、0.6未満のものは×として評価し、算出値および評価を表2に示した。
成形性の評価として、打ち抜きと曲げを踏まえたプレス成型加工を実施した。寸法精度が特に優れたものをA、それ以外で規格をクリアしたものをBとして合格判定し、優れなかったものをCとして不合格判定した。
Claims (3)
- 質量%で、
Mn:0.7~1.7%、
Si:0.5~1.7%、
Cu:0.1~0.9%、
Fe:0.2~0.8%、
Zn:0.05~1.1%、
を含有し、残りはAlおよび不可避不純物からなる組成を有し、
前記組成における成分含有量が[%Mn]+[%Fe]+|(1-[%Si])/[%Si]|≦2.6の関係式を満たし、
100nm~500nmの分散粒子の分布密度が1mm2あたり1.0×106個~5.0×106個で分布しており、かつ、200μm以上の化合物が10mm2に1個以下で分布しており、
引張強さが150MPa~250MPa、0.2%耐力が50~80MPa、圧延方向に対して0°、45°、90°方向から測定したr値より算出される平均値raveが0.6以上を有する、
ことを特徴とするアルミニウム合金圧延材。 - 上記組成に、さらに、
質量%で、
Cr:0.01~0.10%、
Zr:0.01~0.20%、
Ti:0.01~0.20%、
を1種以上含む請求項1記載のアルミニウム合金圧延材。 - 上記組成に、さらに、
質量%で、
Mg:0.1~1.2%、
を含有する請求項1または2に記載のアルミニウム合金圧延材。
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