JP2001262264A - 靱性および曲げ性に優れたAl−Mg−Si系Al合金板 - Google Patents

靱性および曲げ性に優れたAl−Mg−Si系Al合金板

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JP2001262264A JP2000077454A JP2000077454A JP2001262264A JP 2001262264 A JP2001262264 A JP 2001262264A JP 2000077454 A JP2000077454 A JP 2000077454A JP 2000077454 A JP2000077454 A JP 2000077454A JP 2001262264 A JP2001262264 A JP 2001262264A
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Katsushi Matsumoto
克史 松本
Yasuaki Sugizaki
康昭 杉崎
Hitoshi Matsuzaki
均 松崎
Seiji Nishi
誠治 西
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高純度Al地金を用いることなく製造可能
で、靭性および曲げ性に優れたAl−Mg−Si系Al
合金板を提供する。 【解決手段】 本発明のAl合金板は、mass%で、M
g:0.1〜2.0%、Si:0.1〜2.0%、F
e:0.1〜1.5%あるいはさらにCu:2.0%以
下および残部Alを本質的成分としてなる。組織中のF
e,Si系化合物あるいはFe,Si,Cu系化合物
(Cuを含有する場合)の最大粒子径は5μm 以下、最
大アスペクト比は5以下であり、かつ平均結晶粒径は3
0μm 以下である。本発明のAl合金板は靭性および曲
げ性に優れ、例えば自動車パネル材として好適に使用さ
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、靱性および曲げ性
に優れたAl−Mg−Si系Al合金板に関するもので
あり、詳細には高強度であると共に、優れた靱性、曲げ
加工性が要求される自動車パネル等の素材として好適な
Al合金板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】地球環境問題を背景に、燃費向上を目的
とした自動車の軽量化の要求が高まってきており、自動
車ボディパネル材に対しても鋼板などの鉄鋼材料に代わ
ってアルミニウム材料の適用が検討されてきている。
【0003】自動車パネル材において、冷延鋼板にかわ
るAl合金板の素材としては、塗装焼き付け工程で耐力
が上昇し、高強度化を図ることのできる焼付硬化性に優
れたAl−Mg−Si系Al合金(6000系合金)が
注目され、例えばAA6009及びAA6010や、特
開平5−295475号公報に開示されているようなA
l合金で形成されたAl合金板の適用が検討されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、600
0系合金は靱性や曲げ性(曲げ加工性)が劣るという問
題を有している。これは、Al合金中の不溶性化合物が
加工方向に延伸されて連なり、鋭い切り欠きとして働く
ことに起因している。
【0005】このようなAl−Mg−Si系合金の靱
性、曲げ性を改善する手段としては、前記不溶性化合物
の生成原因となるSiや不純物元素であるFe、Cu等
の含有量を極力制限する方法が考えられる。しかしなが
ら、Si、Fe、Cuの含有量を極力制限するには、高
純度のAl地金を必要とするため、コスト高を招来し、
実用性に乏しい。また、特開平9−263869号公報
に開示されているように、不溶性化合物サイズを規定す
ることで靱性を改善することも検討されてきているが、
十分な効果が得られているとは言えない。
【0006】本発明は、かかる問題に鑑みなされたもの
で、高純度Al地金を用いることなく製造可能で、靱性
および曲げ性に優れたAl−Mg−Si系Al合金板を
提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のAl合金板は、
mass%で、 Mg:0.1〜2.0%、 Si:0.1〜2.0%、 Fe:0.1〜1.5% あるいはさらにCu:2.0%以下 および残部Alを本質的成分としてなり、Fe,Si系
化合物あるいはFe,Si,Cu系化合物(Cuを含有
する場合)の最大粒子径が5μm 以下、最大アスペクト
比が5以下であり、かつ平均結晶粒径が30μm 以下で
ある、靱性および曲げ性に優れたAl−Mg−Si系A
l合金板である。
【0008】前記Al合金板の成分としては、請求項3
に記載したように、さらに、Mn:1.0%以下、C
r:0.3%以下、Zr:0.3%以下、V:0.3%
以下、Ti:0.03%以下よりなる群から選択される
1種以上の成分を含有することができる。
【0009】あるいはさらに、請求項4に記載したよう
に、Zn:1.5%以下、Ag:0.2%以下よりなる
群から選択される1種以上の成分を含有することができ
る。
【0010】あるいはさらに、請求項5に記載したよう
に、Sn:0.2%以下を含有することができる。
【0011】〔発明の詳細な説明〕本発明者は、従来不
純物扱いされてきたFe、Cuが結晶粒微細化効果を有
する点に着目し、さらに前記元素を含む故に不可避的に
晶出した不溶性化合物については、その形態を精緻に制
御することで靱性、曲げ性が向上するのではないかとの
着想に基づき鋭意研究した結果、本発明を完成するに至
った。
【0012】すなわち、特開平9−263869号公報
に記載されているように、晶出物サイズおよびアスペク
ト比の平均値を問題にするだけでは靱性、曲げ性の向上
に限界があり、本発明者が詳細に調査した結果、晶出物
サイズが5μm を超え、アスペクト比(晶出物の圧延方
向の長さL1と板厚方向の長さL2との比L1/L2)
が5を超える領域の晶出物を抑制するとともに、平均結
晶粒径を30μm 以下にすることによって顕著な特性向
上効果が得られることが見出された。
【0013】晶出物の微細化、アスペクト比の低減につ
いては、前記公報の技術では、鋳造時の冷却速度を5℃
/sec 以上、5000℃/sec 以下で行うことだけでそ
の目的の達成を図っているが、実際の工業的製造方法に
即して考えると、鋳造時の鋳塊厚みをかなり薄くしなけ
れば上記冷却速度を達成することは難しく、さらにその
場合鋳塊組織の欠陥が残存するなどの問題があり、冷却
速度を単純に速くするだけでは十分良好な特性が得難
い。
【0014】この点、本発明では、後述の実施例によっ
て明らかなように、冷却速度を速めるだけでなく、鋳塊
の厚さをある程度以上として、鋳塊組織の健全化を図り
ながら、さらに鋳塊組織での晶出物の分布の制御と圧延
条件の制御によって従来不可避的に残存していた5μm
超の粗大な晶出物を排除することに成功したものであ
る。特に、鋳塊をある程度の厚さに鋳造し、鋳塊組織を
板厚中心方向に伸びた柱状晶に制御することは晶出物の
微細化、アスペクト比の低減に非常に効果的であること
が見い出された。すなわち、鋳塊をある程度の厚さとす
ることで、粒界に晶出した晶出物を表面部から板厚中心
方向に列状に並ばせることができ、これによって後工程
の熱間圧延、冷間圧延によって晶出物を容易に微細に砕
くことができるのである。
【0015】上記知見によってなされた本発明のAl合
金板は、mass%で、 Mg:0.1〜2.0%、 Si:0.1〜2.0%、 Fe:0.1〜1.5% および残部Alを、あるいはさらにCu:2.0%以下
を本質的成分としてなり、Fe,Si系化合物あるいは
Fe,Si,Cu系化合物(Cuを含む場合)の最大粒
子径が5μm 以下、最大アスペクト比が5以下であり、
かつ平均結晶粒径が30μm 以下とされたものである。
【0016】まず、本発明のAl合金板の成分限定理由
を説明する。 Mg:0.1〜2.0% Si:0.1〜2.0% Mg、Siは、GPゾーンと称されるMg2Si 組成の
集合体(クラスター)もしくは中間相を形成し、ベーキ
ング処理による強度向上効果に寄与する重要な元素であ
る。Mg、Siの各々につき、前記下限値未満あるいは
上限値を超えると前記GPゾーン形成作用が過少とな
り、有効な強度向上効果が得られないようになる。好ま
しくは、Mg:0.4〜1.5%、Si:0.4〜1.
5%とするのがよい。さらにSiについては、Si系晶
出物(単体Si等)を形成し、後述のFe系晶出物と同
様、結晶粒微細化に効果がある。
【0017】Fe:0.1〜1.5% Feは、Fe系晶析出物(α−AlFeSi、β−AlFeSi、Al
6Fe 、Al6(Fe,Mn)、Al12(Fe,Mn)3Cu12、Al7Cu2Fe等)
を生成し、結晶粒微細化に効果がある。下限値未満では
微細化効果が過少であり、靱性および曲げ性の向上作用
が不足する。一方、上限値を超えると粗大な晶出物が形
成され、靱性および曲げ性が劣化するようになる。好ま
しくは、0.6%以下がよい。本発明では、Feの結晶
粒微細化効果を利用するため、Feを積極的に添加する
が、その付随的効果として、不可避的にFeを多量に含
んだ安価なAl地金やスクラップ材を利用することがで
き、低コスト化に寄与することができる。
【0018】Cu:2.0%以下 Cuは、ベーキング時の時効硬化速度を向上させる効果
があるが、上限値を超えると、粗大な化合物を形成して
靱性および曲げ性が劣化すると共に、耐食性も劣化する
傾向がある。好ましくは、0.6%以下にするのがよ
い。さらにCuはCu系晶出物(Al2Cu、Al2Cu
Mg等)を形成し、Fe系晶出物と同様、結晶粒微細化
効果がある。また、Cu添加効果として、Feの場合と
同様、安価なAl地金等を用いることができ、製造コス
トの低減を図ることができる。
【0019】本発明のAl合金板は、上記Mg、Si、
Fe、あるいはさらにCu、および残部Alを本質的成
分としてなり、残部不可避的不純物よりなるほか、本発
明のAl合金板の特性をさらに向上させる元素として下
記元素群あるいは元素の内から1種以上を添加すること
ができる。
【0020】(1) Mn:1.0%以下、Cr:0.3
%以下、Zr:0.3%以下、V:0.3%以下、T
i:0.03%以下 これらの元素は、結晶粒微細化効果を有し、靱性および
曲げ性向上に効果がある。各元素の上限を超えると、粗
大な化合物を形成し、これが破壊の起点となり、靱性お
よび曲げ性を劣化させる。なおTiは鋳造時の微細化能
もあり、その上限を超えると鋳塊の柱状晶形成が妨げら
れ、晶出物分断効果が劣化する。より好ましくは、M
n:0.6%以下、Cr:0.2%以下、Zr:0.2
%以下、V:0.2%以下、Ti:0.01%以下とす
るのがよい。
【0021】(2) Zn:1.5%以下、Ag:0.2%
以下 これらの元素は、ベーキング時の時効硬化速度を向上さ
せる効果を有する。各元素の上限値を超えると、粗大な
化合物を形成して靱性および曲げ性が劣化するようにな
る。より好ましくは、Zn:0.6%以下、Ag:0.
1%以下とするのがよい。
【0022】(3) Sn:0.2%以下 Snは、ベーキング前の室温時効を抑制し、ベーキング
時の時効を促進する作用を有する。0.2%を超える
と、粗大な化合物を形成して靱性および曲げ性が劣化す
るようになる。より好ましくは、0.1%以下とするの
がよい。
【0023】次に、本発明のAl合金板の組織について
説明する。本発明では、Fe,Si系化合物(Cuを含
まない場合)あるいはFe,Si,Cu系化合物(Cu
を含む場合)の最大粒子径が5μm 以下、最大アスペク
ト比が5以下であり、かつ、平均結晶粒径が30μm 以
下とされる。
【0024】前記Fe,Si系化合物、あるいはFe,
Si,Cu系化合物(以下、両者を区別せずに単にF
e,Si,Cu系化合物と記載する。)は、走査型電子
顕微鏡(1000〜10000倍)で観察したAl合金
板の金属組織中で確認される晶出物であって、その晶出
物にFe,Si,Cuのいずれか1種以上を含むものを
指す。このとき、晶出物中に含まれるFe,Si,Cu
の確認はX線マイクロアナライザ(EPMA: Electro
n Probe Micro Analyzer)を用いて行う。本発明でサイ
ズ、形態を規定する晶出物をFe,Si,Cu系化合物
に限定しているのは、本発明のAl合金で主に形成され
る晶出物は上記の元素で構成された晶出物であり、これ
らの晶出物が靱性、曲げ性を阻害するからである。
【0025】晶出物の形態は、平均粒子径が小さくと
も、5μm を超える大きな粒子径の晶出物があると、そ
れが破壊の起点となるため、Al合金板の靱性、曲げ性
に大きな影響を及ぼす。また、平均アスペクト比が小さ
く、たとえ最大粒子径が5μm以下であっても、最大ア
スペクト比が5を超える晶出物があると、その晶出物は
応力集中が生じやすく、破壊の起点になりやすいため、
やはり満足な特性が得られない。このため、本発明で
は、最大粒子径、最大アスペクト比を制限する。最大粒
子径が5μm を超え、また最大アスペクト比が5を超え
ると、靱性および曲げ性が急速に劣化するようになるの
で、本発明では最大粒子径を5μm 以下、最大アスペク
ト比を5以下とする。
【0026】また、結晶粒径も、後述の実施例から明ら
かなように、靱性、曲げ性を大きく左右することが分か
った。このため、本発明では晶出物の形態のみならず結
晶粒径についても制限を加える。すなわち、平均結晶粒
径が30μm を超えると、靱性、曲げ性の劣化が顕著に
なるため、本発明では平均結晶粒径を30μm 以下、好
ましくは20μm 以下とする。
【0027】本発明のAl−Mg−Si系Al合金板
は、鋳造後、熱間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍
の工程を経て製造される。もっとも、所定の組織を得る
ことができるように下記の点に留意することが望まし
い。
【0028】鋳造時の凝固速度は高いほど、鋳塊での晶
出物を微細にすることができ、靱性および曲げ性の向上
に寄与することができる。このため、凝固速度を好まし
くは10℃/sec以上、より好ましくは20℃/sec以上に
することが望ましい。具体的な鋳造方法としては、薄板
連続鋳造方法(連鋳・直送圧延法;例えばベルトキャス
ター法)を挙げることができる。また、鋳造に双ロール
法を採用すれば100℃/s以上の凝固速度の実現も可
能である。なお、連続鋳造法は、従来法(DC法)にお
ける鋳塊製造後の長時間の均質化処理を省略することが
でき、製造コストの低減を図ることができるいうメリッ
トがある。また、DC鋳造の場合には、凝固速度が小さ
いのでFe,Si,Cu系化合物のサイズやアスペクト
比を本発明範囲内に制御することは非常に困難である。
【0029】鋳塊欠陥を消滅させ、最終製品で鋳造組織
が残らず、晶出物が所定サイズに分断され、均一に分散
した健全な組織を得るためには、凝固時の組織を柱状晶
にすることが望ましいことが明らかになった。その理由
は、凝固時の組織を柱状晶にすることで、表層部から板
厚中心方向に結晶粒が細長く伸びた組織形態が得られ、
これによって結晶粒界に晶出した晶出物が表層部から板
厚中心方向に列状に並ぶようになり、後工程の熱間圧
延、冷間圧延の際に晶出物が効果的に微細に分断される
からである。凝固時の組織を柱状晶にするためには、柱
状晶形成を阻害するTi添加量を0.03%以下に、よ
り好ましくは0.01%以下にすることが望ましく、か
つ鋳造時の冷却速度を10℃/s以上とすることが望ま
しい。
【0030】しかし、鋳造時の冷却速度を増大させるこ
とは、鋳塊厚みを減少させることにつながり、後述する
ように、最終製品での晶出物微細化は後工程の熱延、冷
延での圧下率も必要であることから、単純に鋳造時の冷
却速度を増大させると、熱延、冷延時の圧下率が稼げな
くなり、結果的に晶出物微細化効果が低減してしまうこ
とになる。後述する熱間圧延、冷間圧延条件を満たすた
めには、鋳塊厚みは好ましくは15mm以上、より好ま
しくは25mm以上とするのがよい。凝固時の冷却速度
に関しては、鋳造条件によって変動するため、一概に規
定することができないが、上記鋳塊厚みを得るための実
製造装置での冷却速度から勘案すると100℃/s以下
が望ましい。
【0031】鋳塊の熱延条件としては、鋳塊中の晶出物
の微細分断化、アスペクト比低下のために、高温域で行
うことが望ましいが、高すぎると部分溶融を起こす。従
って、熱延開始温度としては好ましくは450℃以上5
90℃以下、より好ましくは500℃以上570℃以下
とするのがよい。また、熱延時の圧下率増大も晶出物微
細分断化、アスペクト比低下に効果的であり、トータル
の圧下率を好ましくは80%以上、より好ましくは90
%以上とするのがよい。
【0032】中間焼鈍条件および冷延後の最終焼鈍に関
しては特に規定されるものではなく、通常の焼鈍方法
(連続焼鈍或いはバッチ焼鈍)で実施すれば良い。
【0033】冷延条件としては、冷間圧延時の圧下率
(冷延率)が増大するほど晶出物の微細分断化、アスペ
クト比低下に効果的である。もっとも、熱延時の圧延率
を増大させる方が晶出物の微細化には効果が大きい。一
方、冷延後、あるいは最終焼鈍後の結晶粒微細化には冷
延時の圧下効果が大きい。これらの効果を勘案して、冷
延時のトータルの圧下率は好ましくは60%以上、より
好ましくは70%以上とするのがよい。
【0034】以下、実施例によって本発明をさらに説明
するが、本発明はこれらの実施例によって制限的に解釈
されるものではない。
【0035】
【実施例】下記表1に示す組成のAl合金を溶製し、表
2に示すように0.1〜35℃/sec の凝固時冷却速度
にて連続鋳造して、種々の肉厚の移動帯板を作製し、こ
の帯板に直ちに熱間圧延を施して肉厚1.5〜5mmの
板材を得た。前記熱間圧延は、表2に示すように、圧延
開始温度を350〜570℃とし、圧下率を91〜50
%とした。このようにして得た熱延板に500℃で1分
間の中間焼鈍を施した後、表2に示した冷延率にて冷間
圧延を行い、肉厚1mmのAl合金板を得た。この合金
板に550℃で1分間の最終焼鈍を施して水焼き入れを
行った。なお、試料No. 19は比較例であり、特開平9
−263869号公報に記載の方法に従い、表1に示す
成分組成のAl合金を用い、連続鋳造法にて表2に示す
冷却速度で鋳造し、熱間圧延を行い、500℃で1分間
の中間焼鈍を施した後、冷間圧延して肉厚1mmの板材
とした後、520℃で10秒間の最終焼鈍を施して室温
まで冷却したものである。
【0036】このようにして作製したAl合金板試料に
ついて、走査型電子顕微鏡観察と画像解析を行うことに
よって晶出物の最大サイズおよび最大アスペクト比を求
めた。また、光学顕微鏡観察で切片法によって平均結晶
粒径を測定した。さらに、引張試験を行い、荷重−変位
曲線と変位座標軸で囲まれた面積、すなわち破断に要し
た仕事量を求め、これを試験片のゲージ長さ部分の体積
で除して単位体積あたりの仕事量を求めた。この仕事量
によって、靱性を評価した。さらに曲げ試験として、引
張試験片を曲げ半径0.5mmで180°折り曲げる曲
げ試験を行い、屈曲部における割れ状況を目視観察し、
5段階評価(AA:優、A:良、B:可、C:劣、D:
不可)を行った。これらの調査結果を表3に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】表3より、実施例の試料No. 1〜10、2
0〜25は、靱性、曲げ性のいずれも良好な特性が得ら
れた。一方、成分および組織が本発明条件を満足してい
ない比較例No. 12〜19,26,28,29,31は
靱性、曲げ性が共に劣化している。また、本発明の成分
条件を満足していても、組織条件が本発明範囲外の比較
例試料No. 11,27,30は、靱性が実施例に比して
低下しており、曲げ性の劣化も著しい。特に、No. 30
は最大粒子径、最大アスペクト比が本発明条件を満足
し、平均結晶粒径のみが発明範囲外とされた例である
が、満足な特性が得られていない。
【0041】
【発明の効果】本発明のAl−Mg−Si系Al合金板
によれば、Mg、Si、Alのほか、所定量のFeある
いはさらにCuを本質的成分として含み、Fe,Si,
Cu系化合物の最大粒子径、最大アスペクト比および平
均結晶粒径を所定の値以下に制限したので、特性に悪影
響を及ぼす有害な晶出物が残留せず、優れた靱性と曲げ
性とを兼ね備えることができ、これらの特性が要求され
る、例えば自動車パネル等の素材として好適に使用する
ことができる。また、本発明のAl合金板は、高純度の
Al地金を用いることなく製造することができるので、
製造コストを低減することができ、アルミ材料のリサイ
クルにも資することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松崎 均 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 西 誠治 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 mass%で、 Mg:0.1〜2.0%、 Si:0.1〜2.0%、 Fe:0.1〜1.5% および残部Alを本質的成分としてなり、Fe,Si系
    化合物の最大粒子径が5μm 以下、最大アスペクト比が
    5以下であり、かつ平均結晶粒径が30μm 以下であ
    る、靱性および曲げ性に優れたAl−Mg−Si系Al
    合金板。
  2. 【請求項2】 mass%で、 Mg:0.1〜2.0%、 Si:0.1〜2.0%、 Fe:0.1〜1.5%、 Cu:2.0%以下 および残部Alを本質的成分としてなり、Fe,Si,
    Cu系化合物の最大粒子径が5μm 以下、最大アスペク
    ト比が5以下であり、かつ平均結晶粒径が30μm 以下
    である、靱性および曲げ性に優れたAl−Mg−Si系
    Al合金板。
  3. 【請求項3】 さらに、 Mn:1.0%以下、 Cr:0.3%以下、 Zr:0.3%以下、 V:0.3%以下、 Ti:0.03%以下 よりなる群から選択される1種以上の成分を含有する請
    求項1または2に記載したAl−Mg−Si系Al合金
    板。
  4. 【請求項4】 さらに、 Zn:1.5%以下、 Ag:0.2%以下 よりなる群から選択される1種以上の成分を含有する請
    求項1〜3のいずれか1項に記載したAl−Mg−Si
    系Al合金板。
  5. 【請求項5】 さらに、Sn:0.2%以下を含有する
    請求項1〜4のいずれか1項に記載したAl−Mg−S
    i系Al合金板。
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