JP2015166480A - アルミニウム合金、アルミニウム合金線材、アルミニウム合金線材の製造方法、アルミニウム合金部材の製造方法、及びアルミニウム合金部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、Si:1.0%超1.5%以下、Mg:0.5%以上1.2%以下、Fe:0.3%以上0.8%以下、Cu:0%以上0.5%以下、Mn:0%以上0.5%以下、Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、前記Feの含有量が前記Cuの含有量以上であり、前記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備えるアルミニウム合金。
【選択図】図1
Description
(鋳造工程)質量%で、Si:1.0%超1.5%以下、Mg:0.5%以上1.2%以下、Fe:0.3%以上0.8%以下、Cu:0%以上0.5%以下、Mn:0%以上0.5%以下、Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、前記Feの含有量が前記Cuの含有量以上であり、前記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備えるアルミニウム合金を連続鋳造して、鋳造材を得る工程。
(圧延工程)前記鋳造材を圧延して圧延材とする工程。
(伸線工程)前記圧延材を伸線して所定の線径の伸線材とする工程。
本発明者らは、A6056と同等程度、好ましくはそれ以上の強度を有しながら、加工性にも優れることを目指して、6000系のアルミニウム合金の組成を基本として鋭意検討を行った。その結果、強度の向上に効果的な元素であるCuを低減して又はCuを含まず、Feを比較的多くすると共に、Feの含有量と過剰に添加するSiの含有量とを特定の範囲とする、という特定の組成とすると、溶体化処理の条件を調整することで、強度、更には耐力にも優れるアルミニウム合金が得られる、との知見を得た。また、上記特定の組成とすることで、その他の添加元素を比較的低減できる、即ち成分の濃化を抑制できるため、耐食性、加工性や生産性を向上できる、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。以下、最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
〈式1〉
過剰Si量=Siの含有量−{(Mgの含有量)/(24.3×2)}×28.1
(鋳造工程)質量%で、Si:1.0%超1.5%以下、Mg:0.5%以上1.2%以下、Fe:0.3%以上0.8%以下、Cu:0%以上0.5%以下、Mn:0%以上0.5%以下、Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、上記Feの含有量が上記Cuの含有量以上であり、上記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備えるアルミニウム合金を連続鋳造して、鋳造材を得る工程。
(圧延工程)上記鋳造材を圧延して圧延材とする工程。
(伸線工程)上記圧延材を伸線して所定の線径の伸線材とする工程。
〈式2〉 Z=ε×exp(Q/RT)
ここでは、Q=1.42×105(J/mol)、R=8.31(J/(K×mol))とする。
以下、実施形態に係るアルミニウム合金、アルミニウム合金線材及びその製造方法、アルミニウム合金部材及びその製造方法を説明する。以下の説明において、アルミニウム合金の組成は、全て質量%で示す。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、後述する試験例において、添加元素の種類、含有量、凝固速度、Z因子、溶体化処理条件、時効処理条件、大きさ(線径)などを適宜変更することができる。
<組成>
実施形態のアルミニウム合金は、3つの元素:Si,Mg,Feを必須元素とし、Cu、Mn及びCrを必須元素としない組成(残部Al及び不可避的不純物)を有する。Cuを特定の範囲で含有する組成(特に0.1%以上含有する組成(第二組成))、Mn及びCrの少なくとも一方の元素を特定の範囲で含有する組成、Ti及びZrから選択される少なくとも1種の元素を特定の範囲で含有する組成(第三組成)などとすることができる。上記3つの必須元素以外の添加元素の合計含有量は0.001%以上1.5%以下、更に1.0%以下が好ましい。以下、元素ごとに含有量及び効果を説明する。
Siは、溶体化処理によってMgと共にAlに固溶し、時効処理(人工時効)によって微細なMg2Siとして析出し、アルミニウム合金を強化する。また、Mgとの反応後に残ったSi(過剰Si)は、Alに固溶したり、析出したり、デンドライト状に晶出したりすることによってアルミニウム合金を強化する。一方で、過剰Siが過多になると、粒界への偏析が過度なものとなり、脆化する。Siを1.0%超含有することで、上述の強化効果を適切に発現させられて、所定の強度を有するアルミニウム合金線材やアルミニウム合金部材、更には強度に優れるアルミニウム合金部材など、好ましくは耐力にも優れるアルミニウム合金部材などを得ることができる。
Mgは、アルミニウム合金を固溶強化すると共に、時効処理を行うことで、Siと共に強度向上に寄与する時効析出物を形成して、析出硬化によって強度を向上させる元素である。Mgを0.5%以上含有することで、固溶強化や析出硬化による強度向上効果を十分に得られて、所定の強度を有するアルミニウム合金線材やアルミニウム合金部材、更には強度に優れるアルミニウム合金部材など、好ましくは耐力にも優れるアルミニウム合金部材などを得ることができる。但し、Mgを過度に含有すると、上述の過剰Siによる強化効果を得難くなって強度や耐力が低下したり、鋳造時に成分がマクロな偏析を起こし易くなったり、応力腐食割れに対する耐性が低下したり、加工性が低下したり、耐熱性が低下したりするため、Mgの含有量は1.2%以下が好ましい。Mgの含有量は、0.6%以上1.1%以下が好ましく、0.7%以上1.0%以下がより好ましい。上述の範囲でMgを含有すると、機械的特性により優れ、耐熱性も良好なアルミニウム合金部材などを得易い。
Feは、マトリクスに固溶してアルミニウム合金を強化する。また、Feは、結晶粒を微細化させたり、アルミニウム合金を加工硬化し易くさせたりする。その結果、引張強さや耐力が増す。また、結晶粒を微細化させて粒界量を増やすことで、相対的にSiの粒界偏析による悪影響を抑制し、粒界脆化を抑制する。そこで、Feをできるだけ低減する従来の6000系合金と異なり、実施形態のアルミニウム合金ではFeを積極的に含有し、特にFeをCuと同等又はより多く含むことを特徴の一つとする。Feを0.3%以上含有すると共に、製造過程では連続鋳造による急冷を利用することで、0.3%以上と高濃度であってもFeを十分に固溶させられる上に、粗大なAl−Fe晶出物の形成を抑制できる。粗大なAl−Fe晶出物の形成を抑制することで、0.3%以上という多量のFeを含有していながらも、上述の結晶粒の微細化効果を良好に得られる。上述の固溶強化の効果、及び結晶粒の微細化効果を適切に得ることで、結果としてMg2Siなどの析出物の析出硬化による強度向上効果を良好に得られる。
Cuは、一般的な従来の6000系合金では、Al−Cu化合物としてマトリクス中に析出し、強度の向上に寄与する。従って、従来の6000系合金では、例えば、6056のようにCuを比較的多く含有するものがある。しかし、実施形態のアルミニウム合金では、合金強化のメカニズムが従来の合金とは異なっていることから、Cuを含有しない(0%)、又はCuを含有する場合でも比較的少ない(0%超0.5%以下)。具体的には、実施形態のアルミニウム合金は、Cuの含有量がFeの含有量の同等以下であることを特徴の一つとする。Cuを含有する場合には(一例として0.01%以上)、特に比較的高温の溶体化処理後に時効処理を施すことによって粒界のSiとCuとがアルミニウム(マトリクスの主成分)と原子配列が整合した化合物として析出し、粒界の脆化を招き難い、又は実質的に脆化しない。この作用によって、本来粒界を脆化させる偏析Siの悪影響をより抑制できるため、Cuを含有する場合には、より高い強度、耐力、伸びを有する組織とすることができる。
Mnを含有しない場合(0%の場合)には、添加元素の合計含有量が少なく、添加元素の高濃度化による加工性の低下を抑制でき、加工性に優れる。また、この場合、鋳造時の溶解原料の種類が少ないため、溶湯の調整に必要な時間を短縮でき、生産性に優れる。更に、この場合、固相線温度が低くなるため、鋳込み温度を低くすることができる。その結果、鋳込み温度への昇温時間を短縮できたり、鋳造速度を大きくしたりできることからも、生産性に優れる。一方、Mnを含有する場合(0%超の場合)には、Mnの一部がマトリクスに固溶し、アルミニウム合金を固溶強化する。また、Mnを含有すると、Mnは、Al−Mn系の分散粒子を形成して、合金組織を構成する結晶粒の粗大化を抑制する。特に、上記分散粒子によって、溶体化処理や時効処理といった熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制して、結晶組織の微細化に寄与する他、耐熱性の向上にも効果がある。合金組織の微細化によって、強度の向上、加工性の向上、耐食性の向上などの効果が期待できる。従って、Mnを含有する場合には、強度、更には耐力にも一層優れるアルミニウム合金部材を得易い。また、通常、針状に晶出するAl−Fe化合物が、Mnの存在下では球状に晶出する。晶出物は球状である方が加工性への悪影響が少ないことから、Mnを適量含有することによって、加工性が向上する場合がある。但し、Mnの含有量が多過ぎると割れの起点となり得る粗大な晶出物や析出物を形成して、このことに起因して加工性の低下を招く。更に、Mnが多くなると、溶湯の固相線温度が上昇するため、鋳込み温度を上げる必要が生じて、生産性の低下を招く。従って、Mnを含有する場合、0.5%以下が好ましく、0.4%以下、更に0.3%以下がより好ましい。
Crを含有しない場合(0%の場合)には、添加元素の合計含有量が少なく、上述のように加工性に優れる。また、この場合、Mnと同様に、溶湯の調整時間の短縮、鋳込み温度の低下によって、生産性に優れる。一方、Crを含有する場合(0%超の場合)には、上述のMnと同様に分散粒子を形成して、結晶の微細化に寄与して、強度を向上できる。更に、Crは、耐熱性や耐食性を向上させる効果もある。従って、Crを含有する場合には、強度、更には耐力にも一層優れるアルミニウム合金部材などや、更には耐食性にも優れるアルミニウム合金部材などを得易い。しかし、Crの含有量が多過ぎると割れの起点となり得る粗大な晶出物や析出物を形成して、加工性の低下を招く。また、Crが多くなると、Mnと同様に鋳込み温度の上昇に起因して、生産性の低下を招く。従って、Crを含有する場合、0.5%以下が好ましく、0.4%以下、更に0.3%以下がより好ましい。
Tiを含有すると、鋳造材の結晶組織を微細にしたり、鋳造材中の柱状晶の割合を抑えて等軸晶の割合を増加させたりする効果が得られる。その結果、Tiを含有すると、鋳造材の結晶組織の微細化によって、鋳造以降の塑性加工、例えば、圧延、伸線や鍛造、ボルトへの成形加工などを行うときの加工性を向上できる。また、結晶組織が微細になることで、塑性加工時に疵が生じ難く、疵が少なく表面性状に優れる塑性加工材を得ることができる。更に、結晶組織が微細であることで、強度や耐力の向上も期待できる。Tiを0.001%以上含有することで、上述の微細化効果、及びこの効果に起因する効果が適切に得られる。Tiの含有量が多いほど、上述の微細化効果がある。しかし、Tiの含有量が多過ぎると、添加元素の増大に起因する加工性の低下や生産性の低下を招く恐れがあるため、Tiの含有量は0.1%以下が好ましい。より好ましいTiの含有量は、0.01%以上0.05%以下である。なお、Tiの添加には、Ti単体はもちろん、TiB2といった化合物やAl−Ti−Bといった合金を利用することができる。BもTiと同様に結晶組織を微細にして、強度の向上に効果がある。従って、実施形態のアルミニウム合金では、質量割合で、50ppm以下程度のBの含有を許容する。
Zrを含有すると、耐熱性を向上することができる。また、Zrを含有すると、Mnと同様に、Zrを含有する分散粒子を形成して、上述の熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制して結晶組織の微細化に寄与する。その結果、微細な結晶組織に伴う強度の向上効果や加工性の向上効果が期待できる。Zrを0.05%以上含有することで、耐熱性の向上効果、上述の微細化に起因する強度や加工性の向上効果を適切に得られる。Zrの含有量が0.2%以下であると、粗大な晶出物や析出物の生成に起因する加工性の低下を抑制できる。Zrが多くなると、MnやCrと同様に鋳込み温度の上昇に起因して、生産性の低下を招く。より好ましいZrの含有量は、0.1%以上0.2%以下である。Zrを含有しない場合には、添加元素の合計含有量が少なく、上述のように加工性に優れる。また、この場合、MnやCrと同様に、溶湯の調整時間の短縮、鋳込み温度の低下によって、生産性に優れる。
その他、Srを含有することができる。Srは、鋳造材の結晶組織を微細化する効果がある。特に、Siの存在下でSrを含有すると、Siの晶出物サイズを小さくすることができ、圧延などの塑性加工性を改善できる。Srの含有量は、0.005%以上0.05%以下が好ましく、0.005%以上0.03%以下がより好ましい。
実施形態のアルミニウム合金は、Cuを含有する場合にFeをCuと同等(Fe量=Cu量)、好ましくはCuよりも多く含む(Fe量>Cu量、Cu量はゼロを含む)。こうすることで、Cuの添加によってアルミニウム合金が柔らかくなる効果よりも、Feの固溶によって硬くする効果が強く表れて、特に耐力を高められる。Fe量及びCu量は、上述の範囲内で、かつFe量≧Cu量を満たす任意の量をとり得る。
実施形態のアルミニウム合金では、上述のようにSiの一部を、溶体化処理によってMgと共にAlに固溶し、人工時効によって微細なMg2Siとして析出させ、かつSiの残部(上述の〈式1〉で表わされる過剰Si)を固溶、析出、晶出させ、アルミニウム合金を強化する。但し、過剰Si量が多過ぎると、粒界への偏析Siが過度になって脆化する。一方、結晶粒を微細化するFeは、結晶粒界の量を増やすことで相対的にSiの偏析の影響を低減する効果がある。そのため、上述のようにFeを十分に含有しており、かつ過剰Si量が一定の範囲内であれば、Siの過度の粒界偏析を抑制できる。そこで、実施形態のアルミニウム合金では、(過剰Si量)/(Fe量)=[Siの含有量−{(Mgの含有量)/(24.3×2)}×28.1]/(Fe量)を規定する。(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上であると、過剰Siが十分に存在することで、Siの晶析出や固溶によって強度を向上できることから、優れた強度、更には優れた耐力をも有するアルミニウム合金部材などが得られる。(過剰Si量)/(Fe量)が3.0以下であると、Feの結晶微細化効果によってSiの粒界偏析による悪影響を十分に抑制して、Siの偏析に伴う強度の低下を抑制できる。その結果、優れた強度、更には優れた耐力をも有するアルミニウム合金部材などが得られる。更には伸びにも優れるアルミニウム合金部材などが得られる。(過剰Si量)/(Fe量)は、0.2以上2.0以下が好ましく、0.3以上1.7以下がより好ましい。
実施形態のアルミニウム合金は、代表的には、連続鋳造を経た素材に溶体化処理及び時効処理が施されて、種々の分散粒子(主として晶出物や析出物)が分散した組織を有する。実施形態のアルミニウム合金では、ある程度の大きさの分散粒子がある程度存在すること、即ち、Mg2Siなどによる一般的な分散強化組織を有するアルミニウム合金と比較して、比較的大きい分散粒子が多めに存在することを許容する。ここで、粗大な分散粒子、例えば直径が0.1μm以上、更には0.3μm以上、特に1μm以上の分散粒子は、それ自身が応力の集中や破壊の起点となり、強度や伸びを低下させる。実施形態のアルミニウム合金は、上述のようにFeなどの成分の固溶量が多く、粒界の脆化が抑制されており、更には結晶粒径も小さい。そのため、実施形態のアルミニウム合金は、上述のような粗大な分散粒子がある程度存在していても、高強度で高靭性という高い機械的特性を有することができると考えられる。例えば、実施形態のアルミニウム合金における粗大な分散粒子の許容量として、断面に存在する分散粒子であって直径が0.3μm以上の分散粒子(以下、粗大粒子と呼ぶ)の数が、0.01mm2当たりに3000個以下であることが挙げられる。好ましくは、上記粗大粒子の数が1000個以下/0.01mm2である。更に、実施形態のアルミニウム合金は、その断面に存在する分散粒子の直径が概ね10μm以下を満たすことが好ましい。上記分散粒子の直径とは、断面に存在する分散粒子を抽出し、この分散粒子の面積と同等の面積を有する円の直径、即ち等価面積円の直径とする。上記「概ね10μm以下」の定義は、以下とする。測定対象であるアルミニウム合金の断面をとり、この断面における100μm×100μm以上の領域を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、この観察領域に存在する上記直径が0.1μm以上の分散粒子を全て抽出する。抽出した粒子について上記直径が大きい粒子から順に数えたとき、抽出した個数のうち上から5%となる粒子の大きさが10μm以下であるとき、「概ね10μm以下」を満たす、とする。例えば、測定対象であるアルミニウム合金の断面をとり、この断面における200μm×200μmの領域をSEM観察して、直径が0.1μm以上の分散粒子を抽出し、0.1μm以上の分散粒子が1000個であった場合、50番目に大きい粒子における上記直径が10μm以下であれば、このアルミニウム合金は、分散粒子の直径が概ね10μm以下を満たす。直径が0.3μm以上の粗大粒子は少ない方が好ましいが、実施形態のアルミニウム合金では、例えば、上記粗大粒子が100個以上/0.01mm2、120個以上/0.01mm2、更に150個以上/0.01mm2を許容できる。分散粒子の抽出、等価面積円の直径の測定などは、画像処理装置などを用いてSEMの観察像を画像処理すると容易に行える。
実施形態のアルミニウム合金は、種々の形状をとり得る。代表的には、少なくとも1種の塑性加工が少なくとも1回(1パス)施された形状のものが挙げられる。具体的には、圧延材(棒材や板材)、伸線材(実施形態のアルミニウム合金線材)、鍛造材などの1次加工材、即ち、更に別の加工(2次加工、例えば、塑性加工、切削など)が施される2次加工用素材が挙げられる。2次加工材は、例えば、上記伸線材にヘッド加工や転造加工を施したボルト、上記伸線材を所定の形状に切削などしたスプールバルブなどのアルミニウム合金部材(実施形態のアルミニウム合金部材)が挙げられる。その他、鋳造材を鍛造した鍛造材(クランクなど、実施形態のアルミニウム合金部材の一例)が挙げられる。実施形態のアルミニウム合金は、特に、後述する連続鋳造を含む工程を経て製造されることが好ましいことから、連続鋳造材を用いて製造可能な形状をとり得る素材に好適に利用できる。上述の伸線材(又は引抜材)、鍛造材などでは、連続鋳造材を素材に利用できる。
実施形態のアルミニウム合金は、種々の大きさをとり得る。例えば、実施形態のアルミニウム合金線材では、その線径は、用途などに応じて選択することができる。例えば、ボルト用のアルミニウム合金線材では、その線径は3mm以上15mm以下程度、更に13mm以下、12mm以下が挙げられる。このような線径のアルミニウム合金線材は、自動車部品の締め付けなどに適したサイズのボルトを製造できる。例えば、スプールバルブ用のアルミニウム合金線材では、その線径は3mm以上15mm以下程度が挙げられる。
実施形態のアルミニウム合金は、溶体化処理及び時効処理を行うことで、従来の6000系合金と同様に、析出硬化による強度向上効果が得られる。特に、実施形態のアルミニウム合金は、上述の特定の組成を有することから、特に、後述する特定の条件で溶体化処理を行った後、適宜時効処理を行うことで、A6056と同等程度の強度、更にはA6056よりも高い強度、更にはより高い耐力や優れた伸びを有することができる。即ち、実施形態のアルミニウム合金の一例として、高強度で耐力にも優れ、高靭性でもあるものが挙げられる。
実施形態のアルミニウム合金は、Znといった耐食性を阻害する元素を実質的に含まない、又は含有しても非常に微量である(0.25%以下)。従って、実施形態のアルミニウム合金、実施形態のアルミニウム合金線材、実施形態のアルミニウム合金部材は、耐食性にも優れ、自動車部品などの腐食環境で使用される部品やその素材に好適に利用できる。特に、Cuを含有しない実施形態のアルミニウム合金は、耐食性により優れる。
実施形態のアルミニウム合金は、少なくとも鋳造工程を含む製造方法によって製造することができる。上記製造方法は、鋳造工程に加えて、更に、伸線や圧延といった塑性加工を行う加工工程、及び塑性加工材に熱処理を施す熱処理工程の少なくとも一方を備えることができる。つまり、実施形態のアルミニウム合金は、製造過程で区別すると、鋳造材、この鋳造材の少なくとも一部に塑性加工を施した塑性加工材(例えば、圧延材、伸線材や鍛造材など)、鋳造材や塑性加工材に熱処理を施した熱処理材、鋳造材・塑性加工材・熱処理材のいずれかに切削加工を施した切削材という種々の存在状態をとり得る。所望の存在状態のアルミニウム合金が得られるように、製造過程を選択するとよい。
連続鋳造は、急冷凝固が可能であることから、晶出物の生成を抑制して、粗大な晶出物が生じることを低減できる。粗大な晶出物を低減することで、溶体化処理によって添加元素、特にFeを十分に固溶でき、その後の時効処理によって所望の析出物を良好に、かつ均一的に形成できる。その結果、析出硬化による強度向上効果を良好に得られ、強度、更には耐力、伸びにも優れるアルミニウム合金部材などを製造できる。また、粗大な晶出物に起因する加工性の低下を抑制できる。更に、急冷凝固によって結晶粒の粗大化も抑制でき、微細な結晶組織の鋳造材としたり、単位断面積あたりの等軸晶の割合が高い鋳造材としたりすることができる。この点からも、鋳造以降に行う塑性加工時の加工性の低下を抑制でき、良好な加工性を有するアルミニウム合金を製造できる。連続鋳造には、ベルトアンドホイール方式、プロペルチ方式などの公知の手法を利用できる。
溶体化処理は、保持温度を550℃以上580℃以下、保持時間を15分以上120分以下とする。溶体化処理の保持温度を550℃以上と比較的高くすることで、添加元素を十分に固溶できる他、結晶粒界近傍におけるSiの固溶析出状態をコントロールしたり、Cuを含有する場合には、SiとCuとを上述の特定の状態で析出させたりできて、粒界の脆化を防止できる。この保持温度が高いほどFeなどの添加元素の固溶を促進でき、結晶粒界へのSiの偏析の悪影響を抑制できることから、保持温度は560℃以上が好ましい。保持温度が高過ぎると、Siの拡散が活発になり、粒界に偏析し易くなる。実施形態のアルミニウム合金は、Feを比較的多く含み、かつ過剰Si量とFe量とを特定の比率で含むことで、上述のSiの偏析による悪影響を軽減できるものの、Siの偏析を十分に抑制するには、保持温度は580℃以下が好ましい。一方、保持時間を15分以上とすることで、添加元素の固溶を十分に行える。この保持時間が長いほど固溶を促進でき、30分以上とすることができる。保持時間が長過ぎると、上述の粒界へのSiの偏析が進み、Feによる結晶粒の微細化や、CuとSiとを含む化合物をもってしても上記悪影響を抑制し難く、特性の低下を招く。また、保持時間を過度に長くすると、Siの偏析が更に進み、偏析箇所近傍の融点が局所的に低下して合金の一部が溶融し、合金表面に粒状の塊が生じることがあり(発汗現象と呼ばれることがある)、外観不良などを招き易い。従って、溶体化処理は、120分以下が好ましく、60分以下、更に45分以下がより好ましい。
均質化処理は、代表的には、組成の不均一を是正し、均一的な成分分布とすることなどを目的として、冷間の塑性加工の前に行う。上述のように鋳造段階での凝固速度が十分に速い場合には鋳造段階での組成の不均一が少ないため、均質化処理は行わなくてもよい。均質化処理を行う場合には、保持温度は500℃以下、保持時間は10時間以下が好ましい。
実施形態のアルミニウム合金線材は、代表的には、鋳造工程、圧延工程、伸線工程を経て製造することができる。特に、鋳造工程では、上述の連続鋳造を行うことが好ましい。そこで、実施形態のアルミニウム合金線材の製造に適した製造方法として、実施形態のアルミニウム合金線材の製造方法は、上述の特定の組成のアルミニウム合金に連続鋳造を行う鋳造工程と、得られた鋳造材に圧延加工を施す圧延工程と、得られた圧延材に伸線加工を施す伸線工程とを備えることを規定する。各工程の詳細は次の通りである。
鋳造工程は、上述の特定の組成のアルミニウム合金を連続鋳造して、鋳造材を得る工程である。連続鋳造の条件(方式、凝固速度など)は、上述の<連続鋳造>の項で述べた通りである。
圧延工程は、上記連続鋳造によって製造された鋳造材に圧延加工を施して圧延材を得る工程である。この圧延加工は、熱間又は温間で行うことが好ましい。また、圧延は鋳造に連続して行うことが好ましい。圧延を鋳造に連続して行うと、鋳造材に蓄積される熱を利用して熱間圧延などを容易に行えて、エネルギー効率がよく、鋳造圧延材を量産できる。例えば、ベルトアンドホイール方式の鋳造機とこの鋳造機に連なる圧延機とを用いて行う。このような装置として、例えば、プロペルチ式連続鋳造圧延機を用いることができる。
伸線工程では、上記圧延加工が施された圧延材に伸線加工を施して伸線材を得る工程である。伸線加工は、所定の線径になるまで行う。この伸線は代表的には冷間で行う。伸線加工前の圧延材の表面状態に応じて、皮剥加工を行うことができる。このように圧延後に伸線を行うことで、即ち、圧延前に均質化処理を行わなかったり、均質化処理後に(熱間)押出を行わなかったりすることで、伸線工程後に得られる線材に存在する分散粒子のサイズは、圧延材の分散粒子のサイズにほぼ一致する。
・WR軟化処理
上記圧延工程後上記伸線工程前の素材(ワイヤロッド)に軟化処理を行うことができる。WR軟化処理を行うことで、圧延工程で導入された不均一な歪みを除去して、伸線工程で均一的な加工組織を得易い。WR軟化処理の条件は、例えば、雰囲気は、非酸化性雰囲気(減圧雰囲気や不活性ガス雰囲気、還元ガス雰囲気など)や大気雰囲気、保持温度は、250℃以上450℃以下、保持時間は、1時間以上48時間以下が挙げられる。
上記伸線加工の途中の線材に、中間軟化処理を行うことができる。中間軟化処理を行うことで、伸線工程における過度な歪みの蓄積を抑制し、断線を防止できる。中間軟化処理の条件は、例えば、雰囲気は、上述の非酸化性雰囲気や大気雰囲気、保持温度は、250℃以上500℃未満(好ましくは300℃以上420℃以下)、保持時間は、0.5時間以上40時間以下(好ましくは1時間以上24時間以下)、が挙げられる。加工硬化によって高めた線材の強度を極端に低下させないように、条件を調整するとよい。中間軟化処理の条件は、公知の条件を利用することができる。
最終伸線後に軟化処理を行うことができる。最終軟化処理の条件は、上述の非酸化性雰囲気、保持温度が300℃以上、保持時間が1時間以上、が挙げられる。最終軟化処理を行うと、アルミニウム合金線材をボルトなどのアルミニウム合金部材の素材に用いる場合にボルトなどの加工時の成形性を向上できる。
更に、最終伸線後の伸線材に、上述の溶体化処理や、上述の溶体化処理及び時効処理(条件は後述)を施すことができる。溶体化処理及び時効処理を施すことで、上述の<機械的特性>の項で述べた高強度で耐力にも優れ、高靭性なアルミニウム合金線材が得られる。特に伸びに優れるアルミニウム合金線材であれば、塑性加工が施される2次加工材の素材にも利用できると期待される。
実施形態のアルミニウム合金部材は、代表的には、実施形態のアルミニウム合金からなる素材を準備する工程(素材準備工程)と、上記素材に、塑性加工を含む加工(2次加工)と上記溶体化処理とを施す工程(加工・熱処理工程)とを備える製造方法によって製造することができる。この製造方法は、更に、上記溶体化処理以降に時効処理を施す工程(時効工程)を備えることができる。
上記素材は、例えば、上述の実施形態のアルミニウム合金線材や、上述の実施形態のアルミニウム合金線材の製造方法によって製造されたアルミニウム合金線材(以下、まとめて実施形態のアルミニウム合金線材等と呼ぶ)を利用することができる。上述の実施形態のアルミニウム合金線材等のように、鋳造以降に少なくとも1回(1パス)の塑性加工が施されたものを素材とすると、結晶が微細化されていたり、粗大な晶出物が低減されていたり、表面欠陥が低減されていたりすることで、2次加工(特に塑性加工)が行い易い。そのため、アルミニウム合金部材を量産できて好ましい。実施形態のアルミニウム合金線材等を素材に利用する場合、適宜、所定の長さに切断することができる。その他、連続鋳造材(キャストバー)を素材に利用することもできる。
上記加工と上記溶体化処理の順序は問わない。いずれが先でもよい。上記加工が複数ある場合には、ある加工と別の加工との間に溶体化処理を挟むことができる。この場合、時効処理は、溶体化処理の後であればよく、ある加工と別の加工との間に溶体化処理及び時効処理を挟んだり、上記別の加工の前に溶体化処理を行い、上記別の加工の後に時効処理を行ったりすることができる。つまり、上記素材に塑性加工を含む加工を施して、アルミニウム合金部材を製造するまでの過程における対象物に上記溶体化処理を施せばよい。例えば、上記素材として上述の実施形態のアルミニウム合金線材等を利用して、ボルトを製造する場合、上記アルミニウム合金線材等に塑性加工を含む加工を施して、ボルトなどのアルミニウム合金部材を製造するまでの過程における対象物に上記溶体化処理を施す。この場合、上記対象物は、上記アルミニウム合金線材等を所定の長さに切断した切断片、この切断片に中間鍛造を施した鍛造片、上記切断片にヘッダ加工を施したヘッダ片、上記切断片にヘッダ加工及び転造加工を施したボルト素材などが挙げられる。上述のように鋳造工程以後、溶体化処理までの間に均質化処理を含まないと、強度、更には耐力にもより優れるアルミニウム合金部材が得られて好ましい。
上記2次加工は、所望のアルミニウム合金部材が得られるように適宜選択することができる。例えば、アルミニウム合金部材がボルトである場合、2次加工としては、ヘッド加工や転造加工、鍛造加工などの塑性加工が挙げられる。例えば、アルミニウム合金部材が自転車のクランクである場合、鍛造加工などの塑性加工が挙げられる。2次加工のうち、塑性加工以外の加工としては、例えば、切削や表面処理(研磨や陽極酸化処理など)が挙げられる。切削後にバフ研磨やアルマイト処理といった表面処理を行うことができる。例えば、アルミニウム合金部材がスプールバルブである場合、棒状の素材(例えば、実施形態のアルミニウム合金線材)を所望の形状に切削するとよい。各塑性加工の条件などは、公知の条件を利用できる。連続鋳造材を素材とする場合も、切削や表面処理などの加工を行うことができる。
溶体化処理の条件(保持温度、保持時間、昇温時間など)は、上述の<溶体化処理>の項で述べたとおりである。
種々の組成のアルミニウム合金線材を作製し、機械的特性を調べた。この試験では、鋳造→圧延→伸線の工程によって、アルミニウム合金線材を作製する。得られた伸線材に溶体化処理及び時効処理を施した熱処理材を試験片として、機械的特性を調べた。各試料の組成(各元素の含有量は質量%、残部Al及び不可避的不純物)、機械的特性を表1に示す。表1に示す過剰Si/Feは、(過剰Si量)/(Fe量)であり、(過剰Si量)は、上述の〈式1〉で求められる値である。
ベースとなる純アルミニウムを溶解し(ここでは700℃以上750℃以下)、その溶湯に添加元素が表1に示す所定の濃度となるように投入して、十分に保持する(ここでは3時間以上)。成分調整したアルミニウム合金の溶湯は、適宜、水素ガス除去処理や、異物除去処理を行う。作製したアルミニウム合金の溶湯を用いて、ベルトアンドホイール方式の連続鋳造機を備えるプロペルチ式連続鋳造圧延機によって、鋳造と熱間圧延とを連続して行い、ワイヤロッド(ここでは直径φ9.5mmの連続鋳造圧延材)を作製する。鋳造時における凝固速度は5℃/秒である。ここでは、水冷銅鋳型を用いて、冷却過程にある溶湯の任意の位置において凝固速度が5℃/秒になるように鋳造する。また、ここでは、圧延工程のZ因子が1.9×1016となるように線速と圧延温度とを調整して圧延する。続いて、上記ワイヤロッドに冷間伸線加工を施して、伸線材(ここでは直径φ4.5mm)を作製する。ここでは、伸線途中に中間軟化処理を行った(250℃〜450℃×5時間)。なお、得られた伸線材の組成は、表1の組成と同様である。伸線材の組成分析には、公知の手法が利用でき、例えば、エネルギー分散型X線分析装置などが利用できる。
得られたアルミニウム合金線材(上記伸線材)に、溶体化処理及び時効処理を施して、熱処理材を作製する。溶体化処理の条件は570℃×30分、時効処理の条件は170℃×16時間である。なお、試料No.1−106は、伸線時に割れが生じたため、機械的特性の評価を行なっていない。また、溶体化処理及び時効処理を施した各試料はいずれも、鋳造以降、上記溶体化処理までの間に均質化処理を行っていない。
得られた熱処理材を用いて、試験片を作製し、引張試験(常温)を行って、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、及び破断伸び(%)を評価した。この引張試験は、JIS Z 2241(2011)に準拠して行う。
表1に示すように、Si,Mg,Feを特定の範囲で含み、(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下を満たし、かつ(Fe量)≧(Cu量)である試料No.1−1〜No.1−10はいずれも、550℃以上580℃以下×15分以上120分以下の溶体化処理を行った後、160℃以上180℃以下×4時間以上の時効処理を施すと、高い強度を有することが分かる。ここでは、試料No.1−1〜No.1−10はいずれも、耐力にも優れる上に、高い伸びも有することが分かる。具体的には、試料No.1−1〜No.1−10はいずれも、引張強さが400MPa以上、0.2%耐力が375MPa以上、破断伸びが10%以上を満たす。特に、Cuの含有量が非常に少ない試料No.1−9や、Cuを実質的に含有しない試料No.1−10であっても、高強度で、耐力にも優れ、高い伸びを有していることが分かる。Cuを0.1%以上含有する第二組成であると引張強さ、耐力、及び伸びにより優れることが分かる。Si,Mg,Fe加えて、CuやMn,Cr,Zr,Tiの少なくとも1種を含有すると、強度、更には耐力をより高め易いことが分かる。
試験例1の試料No.1−1のアルミニウム合金(質量%で、Si:1.2%、Mg:0.8%、Fe:0.5%、Cu:0.3%を含有、(過剰Si量)/(Fe量)=1.47)からなるアルミニウム合金線材を作製し、種々の条件で溶体化処理及び時効処理を施した熱処理材を試験片として、機械的特性を調べた。その結果を表2、表3に示す。
表2に示すように、溶体化処理の条件を550℃以上580℃以下×15分以上120分以下とした試料No.2−1〜No.2−16はいずれも、高強度で、耐力にも優れることが分かる。また、試料No.2−1〜No.2−16はいずれも、伸びにも優れる。具体的には、試料No.2−1〜No.2−16はいずれも、引張強さが410MPa以上、0.2%耐力が385MPa以上、破断伸びが10%以上を満たす。溶体化処理では、保持時間が短過ぎると(ここでは10分)、強度が低く、更に保持温度が低い場合には耐力も低い傾向にある(試料No.2−101,No.2−104,No.2−106,No.2−108)。このような結果になった理由として、固溶が不十分な場合がったため、と考えられる。一方、保持時間が長過ぎても(ここでは、150分、180分)、強度が低く、更には耐力も低くなる傾向にある(試料No.2−102,No.2−103,No.2−105,No.2−107,No.2−109)。このような結果になった理由として、溶体化処理中に粒界へのSiの偏析が進み、偏析したSi量がFeによる結晶粒の微細化効果やCuとの化合物の形成などで無害化できない量に達して、脆化を招いたため、と考えられる。更に、保持時間が長過ぎるこれらの試料は、合金表面に粒状の塊があり、外観も劣っていた。
試験例1の試料No.1−1のアルミニウム合金(質量%で、Si:1.2%、Mg:0.8%、Fe:0.5%、Cu:0.3%を含有、(過剰Si量)/(Fe量)=1.47)からなるアルミニウム合金線材を、種々の鋳造条件、圧延条件で作製し、試験例1と同様の条件で溶体化処理及び時効処理を施した熱処理材を試験片として、機械的特性を調べた。その結果を表4に示す。
Claims (10)
- 質量%で、
Si:1.0%超1.5%以下、
Mg:0.5%以上1.2%以下、
Fe:0.3%以上0.8%以下、
Cu:0%以上0.5%以下、
Mn:0%以上0.5%以下、
Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、
前記Feの含有量が前記Cuの含有量以上であり、
前記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備えるアルミニウム合金。 - 前記組成における各元素の含有量が、質量%で、
Si:1.0%超1.3%以下、
Mg:0.7%以上1.0%以下、
Fe:0.3%以上0.6%以下、
Cu:0.1%以上0.4%以下、
Mn:0%以上0.3%以下、
Cr:0%以上0.3%以下であり、
前記(過剰Si量)/(Fe量)が0.3以上1.7以下である請求項1に記載のアルミニウム合金。 - 前記組成は、更に、質量%で、
Ti:0.001%以上0.1%以下、及びZr:0.05%以上0.2%以下から選択される少なくとも1種の元素を含む請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金。 - 前記アルミニウム合金に、550℃以上580℃以下×15分以上120分以下の溶体化処理を行った後、160℃以上180℃以下×4時間以上の時効処理を施した後の引張強さが400MPa以上、0.2%耐力が375MPa以上、破断伸びが10%以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金。
- 請求項1に記載のアルミニウム合金からなるアルミニウム合金線材。
- 質量%で、
Si:1.0%超1.5%以下、
Mg:0.5%以上1.2%以下、
Fe:0.3%以上0.8%以下、
Cu:0%以上0.5%以下、
Mn:0%以上0.5%以下、
Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、
前記Feの含有量が前記Cuの含有量以上であり、
前記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備えるアルミニウム合金を連続鋳造して、鋳造材を得る鋳造工程と、
前記鋳造材を圧延して圧延材とする圧延工程と、
前記圧延材を伸線して所定の線径の伸線材とする伸線工程とを備えるアルミニウム合金線材の製造方法。 - 前記鋳造工程では、凝固速度を1℃/秒以上とする請求項6に記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
- 前記圧延工程では、圧延時のZ因子を1.0×1010以上1.0×1019以下とする請求項6又は請求項7に記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
- 請求項6に記載のアルミニウム合金線材の製造方法によって製造されたアルミニウム合金線材に塑性加工を含む加工を行って、アルミニウム合金部材を製造するまでの過程における対象物に、550℃以上580℃以下×15分以上120分以下の溶体化処理を施す工程を備えるアルミニウム合金部材の製造方法。
- 請求項1に記載のアルミニウム合金からなり、
引張強さが400MPa以上であり、
0.2%耐力が375MPa以上であり、
破断伸びが10%以上であるアルミニウム合金部材。
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