JP2015166480A - アルミニウム合金、アルミニウム合金線材、アルミニウム合金線材の製造方法、アルミニウム合金部材の製造方法、及びアルミニウム合金部材 - Google Patents

アルミニウム合金、アルミニウム合金線材、アルミニウム合金線材の製造方法、アルミニウム合金部材の製造方法、及びアルミニウム合金部材 Download PDF

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Abstract

【課題】強度に優れ、加工性にも優れるアルミニウム合金、強度に優れるアルミニウム合金部材が得られ、加工性にも優れるアルミニウム合金線材及びその製造方法、アルミニウム合金部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、Si:1.0%超1.5%以下、Mg:0.5%以上1.2%以下、Fe:0.3%以上0.8%以下、Cu:0%以上0.5%以下、Mn:0%以上0.5%以下、Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、前記Feの含有量が前記Cuの含有量以上であり、前記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備えるアルミニウム合金。
【選択図】図1

Description

本発明は、構造部材の素材に適したアルミニウム合金、ボルトなどのアルミニウム合金部材の素材に適したアルミニウム合金線材及びその製造方法、アルミニウム合金部材及びその製造方法に関するものである。特に、強度に優れるアルミニウム合金部材が得られて、加工性にも優れるアルミニウム合金線材に関する。
アルミニウム合金は、鉄系材料に比較して軽量であることから、軽量であることが望まれる種々の構造部材の素材に利用されている。特に、6000系のアルミニウム合金は、2000系合金や7000系合金に次ぐ強度を有し、かつ2000系合金や7000系合金よりも耐食性に優れることから、自動車用部品やボルトなどに使用されている。
6000系合金のうち、高強度合金としては、A6056が挙げられる。A6056は、MgやSi,Cuの濃度を高めて高強度化した合金であり、T6材の引張強さは425MPa、0.2%耐力は375MPaに達する。特許文献1は、A6056のようにMg,Si,Cuを高濃度とすると共に、MgSiの含有量と、MnとCrとの合計含有量との比率を特定の範囲とすることで、高強度で、ボルトへの成形性(加工性)にも優れるアルミニウム合金線を開示している。
特開2013−104122号公報
東健司、「第一原理で夢みる錬金術の新世界(前編)」、Journal of Japan Institute of Light Metals、一般社団法人軽金属学会、2010年、第60巻、第8号、p.411−418 東健司、「第一原理で夢みる錬金術の新世界(後編)」、Journal of Japan Institute of Light Metals、一般社団法人軽金属学会、2010年、第60巻、第9号、p.458−466 加藤良知他、「Al−Mg−Si合金の組織と機械的性質に及ぼす添加元素の影響」、一般社団法人軽金属学会第120回春期大会講演概要(2011)、一般社団法人軽金属学会、2011年、p.227−228 Yoshikazu Kato, et al.,"Effect of Alloy Elements on Microstructures and Mechanical Properties in Al−Mg−Si Alloys",ICAA13:13th International Conference on Aluminum Alloys,TMS(The Minerals, Metals & Materials Society),2012,p.1521−1526
A6056と同等程度、好ましくはそれ以上の強度を有しながら、圧延や伸線、ボルトの製造におけるヘッド加工や転造、クランクなどの製造における鍛造などの塑性加工における加工性にも優れるアルミニウム合金の開発が望まれている。
A6056は、上述のように添加元素が高濃度であるために、鋳造や圧延が難しい上に、6000系合金の中では加工性にやや劣る。また、スプールバルブやクランクなどの部材では、0.2%耐力が許容応力を実質的に決定することから、引張強さだけでなく、0.2%耐力といった耐力にも優れることが望まれている。更に、A6056は、A6061、A6151などの他の6000系合金に比較して、耐食性がやや低く、耐食性にも優れるアルミニウム合金の開発が望まれる。
特許文献1に記載されるアルミニウム合金線は、上述のように特定の組成を備えることで、A6056と同等以上の引張強さを有し、ボルトへの成形性に優れるものの、耐力の向上、加工性の更なる向上が望まれる。
特に、ボルトの素材に利用されるアルミニウム合金線材では、それ自体の製造過程で圧延や伸線といった塑性加工を行う上に、ボルトへの製造過程でヘッド加工や転造といった塑性加工を行う。そのため、加工性により優れるアルミニウム合金線材の開発が望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、強度に優れる上に加工性にも優れるアルミニウム合金を提供することにある。本発明の他の目的は、強度に優れるアルミニウム合金部材が得られ、加工性にも優れるアルミニウム合金線材及びその製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、強度に優れるアルミニウム合金部材及びその製造方法を提供することにある。
本発明のアルミニウム合金は、質量%で、Si:1.0%超1.5%以下、Mg:0.5%以上1.2%以下、Fe:0.3%以上0.8%以下、Cu:0%以上0.5%以下、Mn:0%以上0.5%以下、Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、前記Feの含有量が前記Cuの含有量以上であり、前記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備える。
本発明のアルミニウム合金線材は、前記本発明のアルミニウム合金からなる。
本発明のアルミニウム合金線材の製造方法は、以下の鋳造工程と、圧延工程と、伸線工程とを備える。
(鋳造工程)質量%で、Si:1.0%超1.5%以下、Mg:0.5%以上1.2%以下、Fe:0.3%以上0.8%以下、Cu:0%以上0.5%以下、Mn:0%以上0.5%以下、Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、前記Feの含有量が前記Cuの含有量以上であり、前記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備えるアルミニウム合金を連続鋳造して、鋳造材を得る工程。
(圧延工程)前記鋳造材を圧延して圧延材とする工程。
(伸線工程)前記圧延材を伸線して所定の線径の伸線材とする工程。
本発明のアルミニウム合金部材の製造方法は、前記本発明のアルミニウム合金線材の製造方法によって製造されたアルミニウム合金線材に塑性加工を含む加工を行って、アルミニウム合金部材を製造するまでの過程における対象物に、550℃以上580℃以下×15分以上120分以下の溶体化処理を施す工程を備える。
本発明のアルミニウム合金部材は、前記本発明のアルミニウム合金からなり、引張強さが400MPa以上であり、0.2%耐力が375MPa以上であり、破断伸びが10%以上である。
本発明のアルミニウム合金は、強度に優れる上に、加工性にも優れる。本発明のアルミニウム合金線材は、強度に優れるアルミニウム合金部材が得られ、加工性にも優れる。本発明のアルミニウム合金線材の製造方法は、強度に優れるアルミニウム合金部材が得られ、加工性にも優れるアルミニウム合金線材を製造できる。本発明のアルミニウム合金部材の製造方法は、強度に優れるアルミニウム合金部材を製造できる。本発明のアルミニウム合金部材は、強度に優れる。
試験例で作製した試料No.1−1のアルミニウム合金の断面を走査型電子顕微鏡で観察した顕微鏡写真である。
[本発明の実施の形態の説明]
本発明者らは、A6056と同等程度、好ましくはそれ以上の強度を有しながら、加工性にも優れることを目指して、6000系のアルミニウム合金の組成を基本として鋭意検討を行った。その結果、強度の向上に効果的な元素であるCuを低減して又はCuを含まず、Feを比較的多くすると共に、Feの含有量と過剰に添加するSiの含有量とを特定の範囲とする、という特定の組成とすると、溶体化処理の条件を調整することで、強度、更には耐力にも優れるアルミニウム合金が得られる、との知見を得た。また、上記特定の組成とすることで、その他の添加元素を比較的低減できる、即ち成分の濃化を抑制できるため、耐食性、加工性や生産性を向上できる、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。以下、最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1) 実施形態に係るアルミニウム合金は、質量%で、Si:1.0%超1.5%以下、Mg:0.5%以上1.2%以下、Fe:0.3%以上0.8%以下、Cu:0%以上0.5%以下、Mn:0%以上0.5%以下、Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、上記Feの含有量が上記Cuの含有量以上であり、上記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備える。この組成を第一組成ということがある。
過剰Si量は、アルミニウム合金中のSiの含有量(質量%)及びMgの含有量(質量%)を用いて、以下の〈式1〉で求める。
〈式1〉
過剰Si量=Siの含有量−{(Mgの含有量)/(24.3×2)}×28.1
Feの含有量がCuの含有量と同等、好ましくはFeをCuよりも多く含むと共に、(過剰Si量)/(Fe量)が特定の範囲を満たす実施形態のアルミニウム合金は、強度に優れる。好ましくは実施形態のアルミニウム合金は、耐力や伸びにも優れる。この理由は、以下のように考えられる。Siを過剰に含むアルミニウム合金に対して、後述するように溶体化処理を比較的高い温度で行うと、結晶粒界付近に濃化したSiの固溶析出状態をコントロールして粒界の脆化を抑制できる。特にCuを特定の範囲で含有する場合には、粒界のSiとCuとがAlの格子と整合した状態の化合物として析出し、粒界の脆化をより抑制できる。しかし、上述の高い温度では、結晶粒界へのSiの偏析も進み易く、溶体化処理の温度が高過ぎると、Siの偏析量が、Siの偏析に起因する悪影響を抑制可能な量(許容量)を超えてしまう。また、溶体化時間が長過ぎたり、溶体化時の昇温速度が低過ぎたりした場合も、Siの偏析量が許容量を超え得る。その結果、強度の低下、加工性の低下、更には耐力の低下などが生じ得る。一方、Feを比較的多く含有する場合には結晶粒を微細化できる。結晶粒の微細化によって粒界が多くなれば、粒界あたりのSiの偏析量を低減できる。換言すれば、Feを特定の範囲で含有することで比較的高い温度で溶体化処理を行った場合でも、Siの偏析に起因する悪影響を低減できる。その結果、MgSiなどの析出物の析出硬化による強度向上効果に加えて、粒界脆化の抑制効果をも得られるため、強度に優れ、更には耐力や伸びにも優れると考えられる。ここで、Feは固溶強化能が極めて高い。しかし、Feは一般に固溶させることが難しい。そこで、本発明者らが検討した結果、連続鋳造を行うなどして、凝固速度を十分に速くすると、多量のFeをマトリクスに固溶させられる、との知見を得た。この知見に基づき、後述するように凝固速度とFeの添加量とを制御して、Feをマトリクスに比較的多量に固溶させ、強度を高める。このように強度、好ましくは耐力や伸びにも優れる実施形態のアルミニウム合金は、種々の構造部材やその素材に好適に利用できる。
かつ、実施形態のアルミニウム合金は、従来のA6056や特許文献1に記載されるアルミニウム合金よりもCuを少量としたり又はCuを含有していなかったり、その他の元素(例えば、Mnなど)を少量としたり、ZnやZrを必須としなくても、上述のように強度、更には耐力にも優れる。このように添加元素の濃度が比較的低い実施形態のアルミニウム合金は、加工性にも優れ、圧延や伸線、ヘッド加工や転造、鍛造などの種々の塑性加工について、加工時に割れなどが生じ難い。従って、実施形態のアルミニウム合金を素材とすることで、種々の塑性加工材を良好に製造でき、塑性加工材の量産に寄与すると期待される。
(2) 実施形態に係るアルミニウム合金の一例として、上記組成における各元素の含有量が、質量%で、Si:1.0%超1.3%以下、Mg:0.7%以上1.0%以下、Fe:0.3%以上0.6%以下、Cu:0.1%以上0.4%以下、Mn:0%以上0.3%以下、Cr:0%以上0.3%以下であり、上記(過剰Si量)/(Fe量)が0.3以上1.7以下である形態が挙げられる。この組成を第二組成ということがある。
上述の第一組成に対して、上記の各元素の含有量をより限定した第二組成の上記形態は、強度及び加工性により優れる。更には、上記形態は耐力もより優れる。
(3) 実施形態に係るアルミニウム合金の一例として、上記組成が、更に、質量%で、Ti:0.001%以上0.1%以下、及びZr:0.05%以上0.2%以下から選択される少なくとも1種の元素を含む形態が挙げられる。この組成を第三組成ということがある。
上述の第一組成の元素に加えて、Ti及びZrの少なくとも一方を含む第三組成の形態は、微細な結晶組織になり易いことから、微細な結晶組織に伴う強度の向上や加工性の向上を期待できる。
(4) 実施形態に係るアルミニウム合金の一例として、上記アルミニウム合金に、550℃以上580℃以下×15分以上120分以下の溶体化処理を行った後、160℃以上180℃以下×4時間以上の時効処理を施した後の引張強さが400MPa以上、0.2%耐力が375MPa以上、破断伸びが10%以上である形態が挙げられる。
上記形態は、上述の特定の条件で溶体化処理及び時効処理を施した後の強度、耐力、及び伸びに優れる。このことから、上記形態のアルミニウム合金を素材とし、少なくとも溶体化処理及び時効処理を施すことで、強度、更には耐力にも優れるアルミニウム合金部材を製造することができるといえる。また、実施形態のアルミニウム合金は加工性にも優れることから、上記形態のアルミニウム合金を素材とし、更に塑性加工をも施してアルミニウム合金線材やアルミニウム合金部材を製造する場合に、塑性加工を良好に行える。従って、上記形態は、製造過程における塑性加工の有無に係わらず、強度、更には耐力にも優れるアルミニウム合金線材やアルミニウム合金部材の素材に好適に利用することができる。この特性評価に用いる代表的な条件としては、溶体化処理は、570℃×30分、時効処理は、170℃×16時間、が挙げられる。組成によっては、例えば、上述の第二組成や第三組成などでは、上述の特定の溶体化処理及び時効処理を施した後の引張強さが410MPa以上であり、0.2%耐力が385MPa以上であり、破断伸びが10%以上である形態、引張強さが420MPa以上であり、0.2%耐力が395MPa以上であり、破断伸びが10%以上である形態とすることができる。
(5) 実施形態に係るアルミニウム合金線材は、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載された実施形態のアルミニウム合金からなる。
実施形態のアルミニウム合金線材は、加工性に優れる実施形態のアルミニウム合金から構成されることから、ボルトやクランクなどの塑性加工が施されて製造されるアルミニウム合金部材の素材に好適に利用することができる。特に、実施形態のアルミニウム合金線材は、加工性に優れることで、ボルトといった塑性加工を多段に施すアルミニウム合金部材の素材に好適に利用することができる。かつ、実施形態のアルミニウム合金線材を素材とすることで、強度、更には耐力にも優れるアルミニウム合金部材を製造することができる。特に、実施形態のアルミニウム合金線材は、少なくとも圧延や伸線といった塑性加工が施されているため、塑性加工時に粗大な晶出物を分断したり、溶体化時に加工歪みに起因する再結晶組織の微細化を行ったり、ひけ巣などの表面欠陥を押し潰したりすることができる。その結果、上記(4)に規定する特定の条件で溶体化処理及び時効処理を施した場合、上述の特定の高い強度、耐力、及び伸びが得られ易い、更にはより高い強度、耐力、及び伸びを有することができる。
(6) 実施形態に係るアルミニウム合金線材の製造方法は、以下の鋳造工程と、圧延工程と、伸線工程とを備える。
(鋳造工程)質量%で、Si:1.0%超1.5%以下、Mg:0.5%以上1.2%以下、Fe:0.3%以上0.8%以下、Cu:0%以上0.5%以下、Mn:0%以上0.5%以下、Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、上記Feの含有量が上記Cuの含有量以上であり、上記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備えるアルミニウム合金を連続鋳造して、鋳造材を得る工程。
(圧延工程)上記鋳造材を圧延して圧延材とする工程。
(伸線工程)上記圧延材を伸線して所定の線径の伸線材とする工程。
実施形態のアルミニウム合金線材の製造方法は、線材の構成成分を添加元素が比較的低濃度である特定の組成のアルミニウム合金とすることで、加工性に優れることから、アルミニウム合金線材(代表的には、実施形態のアルミニウム合金線材)を生産性よく製造することができる。特に、実施形態のアルミニウム合金線材の製造方法は、機械的特性に優れるアルミニウム合金部材の素材に好適に利用できるアルミニウム合金線材を得ることができる。
また、実施形態のアルミニウム合金線材の製造方法は、急冷凝固が可能な連続鋳造を行うことで、列挙した添加元素(特にFe)を十分に固溶できる。その結果、上述のようにFeによる強力な固溶強化効果、結晶の微細化による粒界の増加効果(ひいては粒界脆化の抑制効果)が得られる。更に、急冷凝固が可能な連続鋳造を行うことで、FeやSi以外の晶出物の生成、更には粗大化を抑制できる。そのため、上記形態は、Siの粗大な晶出物による悪影響が生じ難く、強度、更には耐力や伸びにも優れるアルミニウム合金部材が得られるアルミニウム合金線材を製造できる。
(7) 実施形態に係るアルミニウム合金線材の製造方法の一例として、上記鋳造工程では、凝固速度を1℃/秒以上とする形態が挙げられる。凝固速度は、{(鋳込み温度−アルミニウム合金の液相線温度)/(鋳込みから凝固に要した時間)}とする。鋳込みから凝固に要した時間は、例えば、連続鋳造機に備える鋳型(例えば、ベルト)の内壁に熱電対を取り付け、鋳込み温度から液相線温度までの温度変化を実測することで測定できる。なお、液相線温度は、アルミニウム合金の組成から予め求められる。
上記形態は、凝固速度が十分に速く、上述の晶出物の生成、粗大化を良好に抑制できる上にFeを効果的に固溶させられる。そのため、上記形態は、強度、更には耐力にも優れるアルミニウム合金部材が得られるアルミニウム合金線材を製造できる。また、割れの起点になるような粗大な晶出物を抑制できる上に、このような急冷によって結晶も微細にできることで、圧延や伸線などの塑性加工性にも優れることから、上記形態は、アルミニウム合金線材を生産性よく量産できる。
(8) 実施形態に係るアルミニウム合金線材の製造方法の一例として、上記圧延工程では、圧延時のZ因子を1.0×1010以上1.0×1019以下とする形態が挙げられる。圧延時のZ因子(Z)は、ε(歪み速度、/sec)と、Q(アルミニウムの活性エネルギー、J/mol)、R(気体定数、J/(K×mol))、T(絶対温度、K)を用いて、以下の〈式2〉で求める。
〈式2〉 Z=ε×exp(Q/RT)
ここでは、Q=1.42×10(J/mol)、R=8.31(J/(K×mol))とする。
上記形態は、Z因子を特定の範囲とすることで、鋳造工程で生成された晶出物を分断でき、粗大な晶出物をより低減し易い。その結果、上記形態は、次の伸線工程において伸線加工性を高められて、アルミニウム合金線材の量産に寄与できる。得られたアルミニウム合金線材を用いて、切削、鍛造、塑性加工などを施してアルミニウム合金部材を製造する場合に、アルミニウム合金部材の生産性も高められる。また、上記形態は、破壊の起点となる粗大な晶出物を低減できるため、アルミニウム合金線材の引張強さや破断伸びの向上に寄与することができる。
(9) 実施形態に係るアルミニウム合金部材の製造方法は、上記(6)〜(8)のいずれか1つの実施形態に係るアルミニウム合金線材の製造方法によって製造されたアルミニウム合金線材に塑性加工を含む加工を行って、アルミニウム合金部材を製造するまでの過程における対象物に、550℃以上580℃以下×15分以上120分以下の溶体化処理を施す工程を備える。
実施形態のアルミニウム合金部材の製造方法は、実施形態のアルミニウム合金線材の製造方法によって製造されたことで加工性に優れるアルミニウム合金線材を素材にすることから、塑性加工などを良好に行える。かつ、実施形態のアルミニウム合金部材の製造方法は、特定の条件で溶体化処理を行う、より具体的には比較的高めの温度で溶体化処理を行うことで、上述のように結晶粒界近傍におけるSiの固溶析出状態をコントロールすると共に、通常の温度で溶体化処理を施した場合よりも多くのFeをマトリクスに固溶させた溶体化材が得られる。この溶体化材に、別途時効処理を施すことで、強度、更には耐力にも優れるアルミニウム合金部材が得られる。従って、実施形態のアルミニウム合金部材の製造方法は、強度、更には耐力にも優れるアルミニウム合金部材を製造することができる。なお、塑性加工と溶体化処理との順序は問わない。
(10) 実施形態に係るアルミニウム合金部材は、上記(1)〜(3)のいずれか1つの実施形態に係るアルミニウム合金からなり、引張強さが400MPa以上であり、0.2%耐力が375MPa以上であり、破断伸びが10%以上である。
実施形態のアルミニウム合金部材は、A6056と同等、更にはそれ以上の引張強さ及び0.2%耐力を有しており、強度及び耐力に優れる上に、伸びにも優れる。このようなアルミニウム合金部材として、例えば、ボルト、スプールバルブ、クランクなどが挙げられる。上述のように組成によっては、引張強さが410MPa以上であり、0.2%耐力が385MPa以上であり、破断伸びが10%以上である形態、引張強さが420MPa以上であり、0.2%耐力が395MPa以上であり、破断伸びが10%以上である形態とすることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、実施形態に係るアルミニウム合金、アルミニウム合金線材及びその製造方法、アルミニウム合金部材及びその製造方法を説明する。以下の説明において、アルミニウム合金の組成は、全て質量%で示す。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、後述する試験例において、添加元素の種類、含有量、凝固速度、Z因子、溶体化処理条件、時効処理条件、大きさ(線径)などを適宜変更することができる。
[アルミニウム合金]
<組成>
実施形態のアルミニウム合金は、3つの元素:Si,Mg,Feを必須元素とし、Cu、Mn及びCrを必須元素としない組成(残部Al及び不可避的不純物)を有する。Cuを特定の範囲で含有する組成(特に0.1%以上含有する組成(第二組成))、Mn及びCrの少なくとも一方の元素を特定の範囲で含有する組成、Ti及びZrから選択される少なくとも1種の元素を特定の範囲で含有する組成(第三組成)などとすることができる。上記3つの必須元素以外の添加元素の合計含有量は0.001%以上1.5%以下、更に1.0%以下が好ましい。以下、元素ごとに含有量及び効果を説明する。
・ Si:1.0%超1.5%以下
Siは、溶体化処理によってMgと共にAlに固溶し、時効処理(人工時効)によって微細なMgSiとして析出し、アルミニウム合金を強化する。また、Mgとの反応後に残ったSi(過剰Si)は、Alに固溶したり、析出したり、デンドライト状に晶出したりすることによってアルミニウム合金を強化する。一方で、過剰Siが過多になると、粒界への偏析が過度なものとなり、脆化する。Siを1.0%超含有することで、上述の強化効果を適切に発現させられて、所定の強度を有するアルミニウム合金線材やアルミニウム合金部材、更には強度に優れるアルミニウム合金部材など、好ましくは耐力にも優れるアルミニウム合金部材などを得ることができる。
Siを1.5%以下の範囲で含有することで、粒界脆化を抑制でき、高強度化や、加工性の向上を図ることができる。例えば、鋳造材から線材への加工過程や、線材からボルトへの成形過程、鋳造材からクランクへの成形過程などの種々の塑性加工を行うときの加工性が阻害され難い。かつ、Siを1.5%以下の範囲で含有することで、上述の塑性加工時などに割れの起点となり得る粗大な晶出物や析出物の形成を抑制できる。この結果、加工性に優れるアルミニウム合金線材が得られたり、アルミニウム合金部材の高強度化に寄与したりすることができる。Siの含有量は、1.0%超1.4%以下が好ましく、1.1%以上1.3%以下がより好ましい。上述の範囲でSiを含有すると、機械的特性により優れるアルミニウム合金部材などを得易い。なお、アルミニウム合金の製造過程に連続鋳造を含む場合、連続鋳造では凝固速度が速いため、他の代表的な製造方法(例えば、ビレット鋳造→押出など)を利用する場合に比較して、過剰Siを多めに含有させられる。
・ Mg:0.5%以上1.2%以下
Mgは、アルミニウム合金を固溶強化すると共に、時効処理を行うことで、Siと共に強度向上に寄与する時効析出物を形成して、析出硬化によって強度を向上させる元素である。Mgを0.5%以上含有することで、固溶強化や析出硬化による強度向上効果を十分に得られて、所定の強度を有するアルミニウム合金線材やアルミニウム合金部材、更には強度に優れるアルミニウム合金部材など、好ましくは耐力にも優れるアルミニウム合金部材などを得ることができる。但し、Mgを過度に含有すると、上述の過剰Siによる強化効果を得難くなって強度や耐力が低下したり、鋳造時に成分がマクロな偏析を起こし易くなったり、応力腐食割れに対する耐性が低下したり、加工性が低下したり、耐熱性が低下したりするため、Mgの含有量は1.2%以下が好ましい。Mgの含有量は、0.6%以上1.1%以下が好ましく、0.7%以上1.0%以下がより好ましい。上述の範囲でMgを含有すると、機械的特性により優れ、耐熱性も良好なアルミニウム合金部材などを得易い。
・ Fe:0.3%以上0.8%以下
Feは、マトリクスに固溶してアルミニウム合金を強化する。また、Feは、結晶粒を微細化させたり、アルミニウム合金を加工硬化し易くさせたりする。その結果、引張強さや耐力が増す。また、結晶粒を微細化させて粒界量を増やすことで、相対的にSiの粒界偏析による悪影響を抑制し、粒界脆化を抑制する。そこで、Feをできるだけ低減する従来の6000系合金と異なり、実施形態のアルミニウム合金ではFeを積極的に含有し、特にFeをCuと同等又はより多く含むことを特徴の一つとする。Feを0.3%以上含有すると共に、製造過程では連続鋳造による急冷を利用することで、0.3%以上と高濃度であってもFeを十分に固溶させられる上に、粗大なAl−Fe晶出物の形成を抑制できる。粗大なAl−Fe晶出物の形成を抑制することで、0.3%以上という多量のFeを含有していながらも、上述の結晶粒の微細化効果を良好に得られる。上述の固溶強化の効果、及び結晶粒の微細化効果を適切に得ることで、結果としてMgSiなどの析出物の析出硬化による強度向上効果を良好に得られる。
Feを0.8%以下の範囲で含有することで、Fe系の晶出物(Al−Fe−SiなどのAl−Fe系化合物)や析出物(Al−Feなど)を過度に生成して合金の塑性加工性が低下することを抑制できる。そのため、圧延や伸線が施されるアルミニウム合金線材や、ヘッド加工などが施されるボルトなどのアルミニウム合金部材といった、塑性加工材を生産性よく製造できる。更に、所定の強度を有するアルミニウム合金線材やアルミニウム合金部材、更には強度だけでなく、耐力、伸びにも優れるアルミニウム合金部材などを得ることができる。その他、Feを上記の範囲で含有すると共に、Tiを含む結晶微細化効果がある元素を含有する場合には、アルカリ土類金属元素(例えばMgや後述するSr)の存在下で、鋳造時に、上記元素による結晶の微細化を促進することもでき、微細な結晶組織をより得易い。鋳造材では、微細な結晶組織を有することで、鋳造以降の加工性を高められたり、微細組織による強度の向上をある程度期待できたりする。加工性を考慮すると、Feの含有量は0.7%以下、更に0.6%以下が好ましい。この範囲でFeを含有すると、アルミニウム合金線材やアルミニウム合金部材を生産性よく製造できる上に、強度、更には耐力にも優れるアルミニウム合金部材などを得易い。
・ Cu:0%以上0.5%以下
Cuは、一般的な従来の6000系合金では、Al−Cu化合物としてマトリクス中に析出し、強度の向上に寄与する。従って、従来の6000系合金では、例えば、6056のようにCuを比較的多く含有するものがある。しかし、実施形態のアルミニウム合金では、合金強化のメカニズムが従来の合金とは異なっていることから、Cuを含有しない(0%)、又はCuを含有する場合でも比較的少ない(0%超0.5%以下)。具体的には、実施形態のアルミニウム合金は、Cuの含有量がFeの含有量の同等以下であることを特徴の一つとする。Cuを含有する場合には(一例として0.01%以上)、特に比較的高温の溶体化処理後に時効処理を施すことによって粒界のSiとCuとがアルミニウム(マトリクスの主成分)と原子配列が整合した化合物として析出し、粒界の脆化を招き難い、又は実質的に脆化しない。この作用によって、本来粒界を脆化させる偏析Siの悪影響をより抑制できるため、Cuを含有する場合には、より高い強度、耐力、伸びを有する組織とすることができる。
Cuを含有する場合には、Cuの含有量が多いほど強度を高められることから、0.01%以上、0.05%以上、更に0.1%以上、特に0.2%以上とすることができる。Cuの含有量を少なくするほど耐食性の低下や耐熱性の低下などといったCuの添加に起因する悪影響を抑制できて耐食性や耐熱性などに優れることから、Cuの上限は0.5%とする。Cuの含有量は、0.4%以下とすることができる。規定する範囲でCuを含有すると、機械的特性により優れ、耐熱性も耐食性も良好なアルミニウム合金部材などを得易い。Cuの一部が固溶して存在することを許容する。Cuを含有しない場合でも、上述のようにFeを特定の範囲で含有すること、及び高温溶体化の効果によって、強度、更には耐力や伸びにも優れる上に、耐食性に特に優れる。
・ Mn:0%以上0.5%以下
Mnを含有しない場合(0%の場合)には、添加元素の合計含有量が少なく、添加元素の高濃度化による加工性の低下を抑制でき、加工性に優れる。また、この場合、鋳造時の溶解原料の種類が少ないため、溶湯の調整に必要な時間を短縮でき、生産性に優れる。更に、この場合、固相線温度が低くなるため、鋳込み温度を低くすることができる。その結果、鋳込み温度への昇温時間を短縮できたり、鋳造速度を大きくしたりできることからも、生産性に優れる。一方、Mnを含有する場合(0%超の場合)には、Mnの一部がマトリクスに固溶し、アルミニウム合金を固溶強化する。また、Mnを含有すると、Mnは、Al−Mn系の分散粒子を形成して、合金組織を構成する結晶粒の粗大化を抑制する。特に、上記分散粒子によって、溶体化処理や時効処理といった熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制して、結晶組織の微細化に寄与する他、耐熱性の向上にも効果がある。合金組織の微細化によって、強度の向上、加工性の向上、耐食性の向上などの効果が期待できる。従って、Mnを含有する場合には、強度、更には耐力にも一層優れるアルミニウム合金部材を得易い。また、通常、針状に晶出するAl−Fe化合物が、Mnの存在下では球状に晶出する。晶出物は球状である方が加工性への悪影響が少ないことから、Mnを適量含有することによって、加工性が向上する場合がある。但し、Mnの含有量が多過ぎると割れの起点となり得る粗大な晶出物や析出物を形成して、このことに起因して加工性の低下を招く。更に、Mnが多くなると、溶湯の固相線温度が上昇するため、鋳込み温度を上げる必要が生じて、生産性の低下を招く。従って、Mnを含有する場合、0.5%以下が好ましく、0.4%以下、更に0.3%以下がより好ましい。
・ Cr:0%以上0.5%以下
Crを含有しない場合(0%の場合)には、添加元素の合計含有量が少なく、上述のように加工性に優れる。また、この場合、Mnと同様に、溶湯の調整時間の短縮、鋳込み温度の低下によって、生産性に優れる。一方、Crを含有する場合(0%超の場合)には、上述のMnと同様に分散粒子を形成して、結晶の微細化に寄与して、強度を向上できる。更に、Crは、耐熱性や耐食性を向上させる効果もある。従って、Crを含有する場合には、強度、更には耐力にも一層優れるアルミニウム合金部材などや、更には耐食性にも優れるアルミニウム合金部材などを得易い。しかし、Crの含有量が多過ぎると割れの起点となり得る粗大な晶出物や析出物を形成して、加工性の低下を招く。また、Crが多くなると、Mnと同様に鋳込み温度の上昇に起因して、生産性の低下を招く。従って、Crを含有する場合、0.5%以下が好ましく、0.4%以下、更に0.3%以下がより好ましい。
・ Ti:0.001%以上0.1%以下
Tiを含有すると、鋳造材の結晶組織を微細にしたり、鋳造材中の柱状晶の割合を抑えて等軸晶の割合を増加させたりする効果が得られる。その結果、Tiを含有すると、鋳造材の結晶組織の微細化によって、鋳造以降の塑性加工、例えば、圧延、伸線や鍛造、ボルトへの成形加工などを行うときの加工性を向上できる。また、結晶組織が微細になることで、塑性加工時に疵が生じ難く、疵が少なく表面性状に優れる塑性加工材を得ることができる。更に、結晶組織が微細であることで、強度や耐力の向上も期待できる。Tiを0.001%以上含有することで、上述の微細化効果、及びこの効果に起因する効果が適切に得られる。Tiの含有量が多いほど、上述の微細化効果がある。しかし、Tiの含有量が多過ぎると、添加元素の増大に起因する加工性の低下や生産性の低下を招く恐れがあるため、Tiの含有量は0.1%以下が好ましい。より好ましいTiの含有量は、0.01%以上0.05%以下である。なお、Tiの添加には、Ti単体はもちろん、TiBといった化合物やAl−Ti−Bといった合金を利用することができる。BもTiと同様に結晶組織を微細にして、強度の向上に効果がある。従って、実施形態のアルミニウム合金では、質量割合で、50ppm以下程度のBの含有を許容する。
・ Zr:0.05%以上0.2%以下
Zrを含有すると、耐熱性を向上することができる。また、Zrを含有すると、Mnと同様に、Zrを含有する分散粒子を形成して、上述の熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制して結晶組織の微細化に寄与する。その結果、微細な結晶組織に伴う強度の向上効果や加工性の向上効果が期待できる。Zrを0.05%以上含有することで、耐熱性の向上効果、上述の微細化に起因する強度や加工性の向上効果を適切に得られる。Zrの含有量が0.2%以下であると、粗大な晶出物や析出物の生成に起因する加工性の低下を抑制できる。Zrが多くなると、MnやCrと同様に鋳込み温度の上昇に起因して、生産性の低下を招く。より好ましいZrの含有量は、0.1%以上0.2%以下である。Zrを含有しない場合には、添加元素の合計含有量が少なく、上述のように加工性に優れる。また、この場合、MnやCrと同様に、溶湯の調整時間の短縮、鋳込み温度の低下によって、生産性に優れる。
・ その他の元素
その他、Srを含有することができる。Srは、鋳造材の結晶組織を微細化する効果がある。特に、Siの存在下でSrを含有すると、Siの晶出物サイズを小さくすることができ、圧延などの塑性加工性を改善できる。Srの含有量は、0.005%以上0.05%以下が好ましく、0.005%以上0.03%以下がより好ましい。
その他、Znを含有することができる。Znを含有すると、ZnがAl−Zn化合物として析出し、析出硬化による強化効果が得られる。この効果を得るには、Znの含有量は、0.005%以上が好ましい。過度のZnの含有は、耐食性や耐熱性の低下を招くため、Znの含有量は0.25%以下が好ましい。より好ましいZnの含有量は、0.05%以上0.2%以下である。Znを含有しない場合には、添加元素の合計含有量が少なく、上述のように加工性に優れる上に、耐食性や耐熱性にも優れる。
・ Feの含有量(Fe量)≧Cuの含有量(Cu量)
実施形態のアルミニウム合金は、Cuを含有する場合にFeをCuと同等(Fe量=Cu量)、好ましくはCuよりも多く含む(Fe量>Cu量、Cu量はゼロを含む)。こうすることで、Cuの添加によってアルミニウム合金が柔らかくなる効果よりも、Feの固溶によって硬くする効果が強く表れて、特に耐力を高められる。Fe量及びCu量は、上述の範囲内で、かつFe量≧Cu量を満たす任意の量をとり得る。
・ (過剰Si量)/(Fe量):0.1以上3.0以下
実施形態のアルミニウム合金では、上述のようにSiの一部を、溶体化処理によってMgと共にAlに固溶し、人工時効によって微細なMgSiとして析出させ、かつSiの残部(上述の〈式1〉で表わされる過剰Si)を固溶、析出、晶出させ、アルミニウム合金を強化する。但し、過剰Si量が多過ぎると、粒界への偏析Siが過度になって脆化する。一方、結晶粒を微細化するFeは、結晶粒界の量を増やすことで相対的にSiの偏析の影響を低減する効果がある。そのため、上述のようにFeを十分に含有しており、かつ過剰Si量が一定の範囲内であれば、Siの過度の粒界偏析を抑制できる。そこで、実施形態のアルミニウム合金では、(過剰Si量)/(Fe量)=[Siの含有量−{(Mgの含有量)/(24.3×2)}×28.1]/(Fe量)を規定する。(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上であると、過剰Siが十分に存在することで、Siの晶析出や固溶によって強度を向上できることから、優れた強度、更には優れた耐力をも有するアルミニウム合金部材などが得られる。(過剰Si量)/(Fe量)が3.0以下であると、Feの結晶微細化効果によってSiの粒界偏析による悪影響を十分に抑制して、Siの偏析に伴う強度の低下を抑制できる。その結果、優れた強度、更には優れた耐力をも有するアルミニウム合金部材などが得られる。更には伸びにも優れるアルミニウム合金部材などが得られる。(過剰Si量)/(Fe量)は、0.2以上2.0以下が好ましく、0.3以上1.7以下がより好ましい。
<組織>
実施形態のアルミニウム合金は、代表的には、連続鋳造を経た素材に溶体化処理及び時効処理が施されて、種々の分散粒子(主として晶出物や析出物)が分散した組織を有する。実施形態のアルミニウム合金では、ある程度の大きさの分散粒子がある程度存在すること、即ち、MgSiなどによる一般的な分散強化組織を有するアルミニウム合金と比較して、比較的大きい分散粒子が多めに存在することを許容する。ここで、粗大な分散粒子、例えば直径が0.1μm以上、更には0.3μm以上、特に1μm以上の分散粒子は、それ自身が応力の集中や破壊の起点となり、強度や伸びを低下させる。実施形態のアルミニウム合金は、上述のようにFeなどの成分の固溶量が多く、粒界の脆化が抑制されており、更には結晶粒径も小さい。そのため、実施形態のアルミニウム合金は、上述のような粗大な分散粒子がある程度存在していても、高強度で高靭性という高い機械的特性を有することができると考えられる。例えば、実施形態のアルミニウム合金における粗大な分散粒子の許容量として、断面に存在する分散粒子であって直径が0.3μm以上の分散粒子(以下、粗大粒子と呼ぶ)の数が、0.01mm当たりに3000個以下であることが挙げられる。好ましくは、上記粗大粒子の数が1000個以下/0.01mmである。更に、実施形態のアルミニウム合金は、その断面に存在する分散粒子の直径が概ね10μm以下を満たすことが好ましい。上記分散粒子の直径とは、断面に存在する分散粒子を抽出し、この分散粒子の面積と同等の面積を有する円の直径、即ち等価面積円の直径とする。上記「概ね10μm以下」の定義は、以下とする。測定対象であるアルミニウム合金の断面をとり、この断面における100μm×100μm以上の領域を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、この観察領域に存在する上記直径が0.1μm以上の分散粒子を全て抽出する。抽出した粒子について上記直径が大きい粒子から順に数えたとき、抽出した個数のうち上から5%となる粒子の大きさが10μm以下であるとき、「概ね10μm以下」を満たす、とする。例えば、測定対象であるアルミニウム合金の断面をとり、この断面における200μm×200μmの領域をSEM観察して、直径が0.1μm以上の分散粒子を抽出し、0.1μm以上の分散粒子が1000個であった場合、50番目に大きい粒子における上記直径が10μm以下であれば、このアルミニウム合金は、分散粒子の直径が概ね10μm以下を満たす。直径が0.3μm以上の粗大粒子は少ない方が好ましいが、実施形態のアルミニウム合金では、例えば、上記粗大粒子が100個以上/0.01mm、120個以上/0.01mm、更に150個以上/0.01mmを許容できる。分散粒子の抽出、等価面積円の直径の測定などは、画像処理装置などを用いてSEMの観察像を画像処理すると容易に行える。
<形状:アルミニウム合金線材、アルミニウム合金部材など>
実施形態のアルミニウム合金は、種々の形状をとり得る。代表的には、少なくとも1種の塑性加工が少なくとも1回(1パス)施された形状のものが挙げられる。具体的には、圧延材(棒材や板材)、伸線材(実施形態のアルミニウム合金線材)、鍛造材などの1次加工材、即ち、更に別の加工(2次加工、例えば、塑性加工、切削など)が施される2次加工用素材が挙げられる。2次加工材は、例えば、上記伸線材にヘッド加工や転造加工を施したボルト、上記伸線材を所定の形状に切削などしたスプールバルブなどのアルミニウム合金部材(実施形態のアルミニウム合金部材)が挙げられる。その他、鋳造材を鍛造した鍛造材(クランクなど、実施形態のアルミニウム合金部材の一例)が挙げられる。実施形態のアルミニウム合金は、特に、後述する連続鋳造を含む工程を経て製造されることが好ましいことから、連続鋳造材を用いて製造可能な形状をとり得る素材に好適に利用できる。上述の伸線材(又は引抜材)、鍛造材などでは、連続鋳造材を素材に利用できる。
<大きさ>
実施形態のアルミニウム合金は、種々の大きさをとり得る。例えば、実施形態のアルミニウム合金線材では、その線径は、用途などに応じて選択することができる。例えば、ボルト用のアルミニウム合金線材では、その線径は3mm以上15mm以下程度、更に13mm以下、12mm以下が挙げられる。このような線径のアルミニウム合金線材は、自動車部品の締め付けなどに適したサイズのボルトを製造できる。例えば、スプールバルブ用のアルミニウム合金線材では、その線径は3mm以上15mm以下程度が挙げられる。
<機械的特性>
実施形態のアルミニウム合金は、溶体化処理及び時効処理を行うことで、従来の6000系合金と同様に、析出硬化による強度向上効果が得られる。特に、実施形態のアルミニウム合金は、上述の特定の組成を有することから、特に、後述する特定の条件で溶体化処理を行った後、適宜時効処理を行うことで、A6056と同等程度の強度、更にはA6056よりも高い強度、更にはより高い耐力や優れた伸びを有することができる。即ち、実施形態のアルミニウム合金の一例として、高強度で耐力にも優れ、高靭性でもあるものが挙げられる。
具体的には、実施形態のアルミニウム合金の一例として、550℃以上580℃以下×15分以上120分以下の溶体化処理を行った後、160℃以上180℃以下×4時間以上の時効処理を施した後の引張強さが400MPa以上、0.2%耐力が375MPa以上、破断伸びが10%以上を満たすものが挙げられる。組成、製造条件、溶体化処理の条件、時効処理の条件などによっては、強度、耐力、伸びにより優れる。特に、製造過程に塑性加工を含み、塑性加工が施されたもの(例えば、実施形態のアルミニウム合金線材)は、鋳造材などの塑性加工が施されていないものに比較して、上記溶体化処理及び時効処理後の引張強さ、0.2%耐力、破断伸びが高い傾向にある。例えば、引張強さが410MPa以上、0.2%耐力が385MPa以上、及び破断伸びが10%以上を満たしたり、引張強さが415MPa以上、0.2%耐力が390MPa以上、及び破断伸びが12%以上の少なくとも一つを満たしたり、引張強さが420MPa以上、0.2%耐力が395MPa以上、及び破断伸びが13%以上の少なくとも一つを満たしたりすることができる。このように溶体化処理及び時効処理後に高強度で耐力にも優れ、高靭性でもある実施形態のアルミニウム合金(例えば、実施形態のアルミニウム合金線材)は、2次加工(例えば、塑性加工、切削、アルマイトなどの表面処理など)と、溶体化処理及び時効処理とが施されて製造されるアルミニウム合金部材(例えば、実施形態のアルミニウム合金部材)の素材に好適に利用できる。なお、アルミニウム合金線材の機械的特性は、溶体化処理及び時効処理を行ったものを加工して、JIS Z 2241(2011)に準拠して測定用の試験片を作製し、この試験片を用いて引張試験により測定することができる。
2次加工材であるボルトなどの実施形態のアルミニウム合金部材は、最終製品が得られるまでの製造過程で、上述の550℃以上580℃以下×15分以上120分以下の溶体化処理、及び160℃以上180℃以下×4時間以上の時効処理を行うことで、高強度で耐力にも優れ、更に高靭性である。具体的には、実施形態のアルミニウム合金部材の一例(実施形態のアルミニウム合金の一例でもある)として、引張強さが400MPa以上、0.2%耐力が375MPa以上、破断伸びが10%以上を満たすものが挙げられる。組成、製造条件(塑性加工条件など)、溶体化処理の条件、時効処理の条件などによっては、引張強さが410MPa以上、0.2%耐力が385MPa以上、破断伸びが10%以上を満たすもの、その他、引張強さが415MPa以上、0.2%耐力が390MPa以上、及び破断伸びが12%以上の少なくとも一つを満たすもの、引張強さが420MPa以上、0.2%耐力が395MPa以上、及び破断伸びが13%以上の少なくとも一つを満たすものが挙げられる。なお、ボルトの機械的特性は、JIS B 1051(2000)に準拠して、ボルトを試験片とする引張試験により測定することができる。
<耐食性>
実施形態のアルミニウム合金は、Znといった耐食性を阻害する元素を実質的に含まない、又は含有しても非常に微量である(0.25%以下)。従って、実施形態のアルミニウム合金、実施形態のアルミニウム合金線材、実施形態のアルミニウム合金部材は、耐食性にも優れ、自動車部品などの腐食環境で使用される部品やその素材に好適に利用できる。特に、Cuを含有しない実施形態のアルミニウム合金は、耐食性により優れる。
[アルミニウム合金の製造方法]
実施形態のアルミニウム合金は、少なくとも鋳造工程を含む製造方法によって製造することができる。上記製造方法は、鋳造工程に加えて、更に、伸線や圧延といった塑性加工を行う加工工程、及び塑性加工材に熱処理を施す熱処理工程の少なくとも一方を備えることができる。つまり、実施形態のアルミニウム合金は、製造過程で区別すると、鋳造材、この鋳造材の少なくとも一部に塑性加工を施した塑性加工材(例えば、圧延材、伸線材や鍛造材など)、鋳造材や塑性加工材に熱処理を施した熱処理材、鋳造材・塑性加工材・熱処理材のいずれかに切削加工を施した切削材という種々の存在状態をとり得る。所望の存在状態のアルミニウム合金が得られるように、製造過程を選択するとよい。
鋳造工程では、連続鋳造を利用することが好ましい。上記熱処理は、塑性加工途中に施す中間熱処理、最終形状の塑性加工材に施す最終熱処理、溶体化処理及び時効処理が挙げられる。ボルトなどの2次加工材を製造する場合には、溶体化処理は、2次加工の前後のいずれでもよい。2次加工が複数種の加工を備える場合には、ある加工と別の加工との中間に溶体化処理を行うこともできる。時効処理は、溶体化処理以降であれば任意の時期に行える。例えば、時効処理は、溶体化処理の直後に行ってもよいし、溶体化処理と時効処理との間に種々の加工を行ってもよい。溶体化処理は、後述する特定の条件で行うことが好ましい。その他、冷間塑性加工を行う場合には、鋳造以降、冷間加工が完了するまでの間に均質化処理を行わないことが好ましい。以下、連続鋳造、溶体化処理、均質化処理の省略について、まず説明する。
<連続鋳造>
連続鋳造は、急冷凝固が可能であることから、晶出物の生成を抑制して、粗大な晶出物が生じることを低減できる。粗大な晶出物を低減することで、溶体化処理によって添加元素、特にFeを十分に固溶でき、その後の時効処理によって所望の析出物を良好に、かつ均一的に形成できる。その結果、析出硬化による強度向上効果を良好に得られ、強度、更には耐力、伸びにも優れるアルミニウム合金部材などを製造できる。また、粗大な晶出物に起因する加工性の低下を抑制できる。更に、急冷凝固によって結晶粒の粗大化も抑制でき、微細な結晶組織の鋳造材としたり、単位断面積あたりの等軸晶の割合が高い鋳造材としたりすることができる。この点からも、鋳造以降に行う塑性加工時の加工性の低下を抑制でき、良好な加工性を有するアルミニウム合金を製造できる。連続鋳造には、ベルトアンドホイール方式、プロペルチ方式などの公知の手法を利用できる。
急冷凝固に関する具体的な制御条件として、例えば、鋳造工程の凝固速度(冷却速度)を1℃/秒以上とすることが挙げられる。凝固速度を速くするほど、晶出物の生成を抑制し、粗大な晶出物をより効果的に低減できる。凝固速度は、2℃/秒以上、更に5℃/秒以上、8℃/秒以上、10℃/秒以上とすることができる。冷却過程にある溶湯の任意の位置において凝固速度が1℃/秒以上であること、つまり溶湯全体が均一的に冷却されることがより好ましい。こうすることで、凝固状態の不均一に伴う成分の不均一を抑制し易く、均質化処理を不要にしても、鋳造以降に圧延などの塑性加工を良好に行える。また、凝固速度がこのように速いために(高速であるために)、Feを過飽和に固溶させられる。このような凝固速度は、例えば、水冷銅鋳型や強制水冷機構などを有する連続鋳造機を用いることで実現できる。例えば、鋳型温度を低くすると、凝固速度を速くできる。その他、凝固速度の調整パラメータは、鋳造材の大きさ(横断面積)、溶湯の温度、鋳造速度、冷却液量、鋳型(溝付きホイール、ベルト、ダムブロックなど)の材質・表面粗さなどが挙げられる。
連続鋳造で急冷凝固を行うことで、微細な結晶組織を有する鋳造材が得られる。この鋳造材を素材に用いることで、鋳造以降に、圧延や伸線、鍛造などの塑性加工を施した場合に割れや疵の発生を低減でき、表面性状に優れる圧延材や伸線材、鍛造材などが得られる。更に、表面性状に優れる伸線材などを2次加工材の素材にすることで、2次加工時(特に塑性加工時)にも、割れや疵の発生を低減でき、表面性状に優れる2次加工材が得られる。従って、連続鋳造工程を備える製造方法は、表面性状に優れる長尺な鋳造材を量産でき、ひいては表面性状にも優れるアルミニウム合金線材などの量産や、強度、更には耐力にも優れるアルミニウム合金部材の量産に寄与できる。
<溶体化処理>
溶体化処理は、保持温度を550℃以上580℃以下、保持時間を15分以上120分以下とする。溶体化処理の保持温度を550℃以上と比較的高くすることで、添加元素を十分に固溶できる他、結晶粒界近傍におけるSiの固溶析出状態をコントロールしたり、Cuを含有する場合には、SiとCuとを上述の特定の状態で析出させたりできて、粒界の脆化を防止できる。この保持温度が高いほどFeなどの添加元素の固溶を促進でき、結晶粒界へのSiの偏析の悪影響を抑制できることから、保持温度は560℃以上が好ましい。保持温度が高過ぎると、Siの拡散が活発になり、粒界に偏析し易くなる。実施形態のアルミニウム合金は、Feを比較的多く含み、かつ過剰Si量とFe量とを特定の比率で含むことで、上述のSiの偏析による悪影響を軽減できるものの、Siの偏析を十分に抑制するには、保持温度は580℃以下が好ましい。一方、保持時間を15分以上とすることで、添加元素の固溶を十分に行える。この保持時間が長いほど固溶を促進でき、30分以上とすることができる。保持時間が長過ぎると、上述の粒界へのSiの偏析が進み、Feによる結晶粒の微細化や、CuとSiとを含む化合物をもってしても上記悪影響を抑制し難く、特性の低下を招く。また、保持時間を過度に長くすると、Siの偏析が更に進み、偏析箇所近傍の融点が局所的に低下して合金の一部が溶融し、合金表面に粒状の塊が生じることがあり(発汗現象と呼ばれることがある)、外観不良などを招き易い。従って、溶体化処理は、120分以下が好ましく、60分以下、更に45分以下がより好ましい。
粒界へのSiの偏析は、約500℃から開始する。そのため、500℃超溶体化温度以下の温度域では、Siの偏析という好ましくない現象のみが進む反面、MgやSiの固溶といった有益な現象は進まない。従って、実施形態のアルミニウム合金を製造するには、溶体化工程において、この温度域をできるだけ速やかに通過することが好ましい。具体的には、500℃超から上記溶体化処理の目標温度までに要する昇温時間を100分以下にすることが好ましい。例えば、上記目標温度が570℃のときには、500℃に達してから570℃になるまでの昇温時間を100分以下にする。上記昇温時間は、短いほど好ましく、60分以下、30分以下、更に15分以下にすることができる。
<均質化処理の省略>
均質化処理は、代表的には、組成の不均一を是正し、均一的な成分分布とすることなどを目的として、冷間の塑性加工の前に行う。上述のように鋳造段階での凝固速度が十分に速い場合には鋳造段階での組成の不均一が少ないため、均質化処理は行わなくてもよい。均質化処理を行う場合には、保持温度は500℃以下、保持時間は10時間以下が好ましい。
[アルミニウム合金線材の製造方法]
実施形態のアルミニウム合金線材は、代表的には、鋳造工程、圧延工程、伸線工程を経て製造することができる。特に、鋳造工程では、上述の連続鋳造を行うことが好ましい。そこで、実施形態のアルミニウム合金線材の製造に適した製造方法として、実施形態のアルミニウム合金線材の製造方法は、上述の特定の組成のアルミニウム合金に連続鋳造を行う鋳造工程と、得られた鋳造材に圧延加工を施す圧延工程と、得られた圧延材に伸線加工を施す伸線工程とを備えることを規定する。各工程の詳細は次の通りである。
<鋳造工程>
鋳造工程は、上述の特定の組成のアルミニウム合金を連続鋳造して、鋳造材を得る工程である。連続鋳造の条件(方式、凝固速度など)は、上述の<連続鋳造>の項で述べた通りである。
<圧延工程>
圧延工程は、上記連続鋳造によって製造された鋳造材に圧延加工を施して圧延材を得る工程である。この圧延加工は、熱間又は温間で行うことが好ましい。また、圧延は鋳造に連続して行うことが好ましい。圧延を鋳造に連続して行うと、鋳造材に蓄積される熱を利用して熱間圧延などを容易に行えて、エネルギー効率がよく、鋳造圧延材を量産できる。例えば、ベルトアンドホイール方式の鋳造機とこの鋳造機に連なる圧延機とを用いて行う。このような装置として、例えば、プロペルチ式連続鋳造圧延機を用いることができる。
圧延工程では、上記鋳造工程で生成され得る晶出物を分断するように圧延条件を調整することが好ましい。例えば、上述の〈式2〉Z=ε×exp(Q/RT)で表わされるZ因子を1.0×1010以上1.0×1019以下とすることが好ましい。Z因子を1.0×1010以上とすることで、粗大な晶出物(例えば、10μm〜50μm程度)が生成されている場合でも、分断して微細化することができ、例えば、晶出物を概ね10μm以下にまで小さくできる。その結果、粗大な晶出物に起因する伸線加工性の低下や、伸線材に塑性加工を施す場合にその加工性の低下を抑制できる。従って、アルミニウム合金線材を良好に製造できる。より好ましいZ因子の範囲は、1.0×1012以上1.0×1017以下である。Z因子は、工業的には、圧延時の線速と、圧延温度(〈式2〉におけるT)とによって調整することができる。圧延対象の大きさ(断面積)、組成などにもよるが、例えば、線速は、5cm/秒以上50cm/秒以下、圧延温度は、300℃以上550℃以下が挙げられる。
<伸線工程>
伸線工程では、上記圧延加工が施された圧延材に伸線加工を施して伸線材を得る工程である。伸線加工は、所定の線径になるまで行う。この伸線は代表的には冷間で行う。伸線加工前の圧延材の表面状態に応じて、皮剥加工を行うことができる。このように圧延後に伸線を行うことで、即ち、圧延前に均質化処理を行わなかったり、均質化処理後に(熱間)押出を行わなかったりすることで、伸線工程後に得られる線材に存在する分散粒子のサイズは、圧延材の分散粒子のサイズにほぼ一致する。
<線材の製造に関するその他の工程>
・WR軟化処理
上記圧延工程後上記伸線工程前の素材(ワイヤロッド)に軟化処理を行うことができる。WR軟化処理を行うことで、圧延工程で導入された不均一な歪みを除去して、伸線工程で均一的な加工組織を得易い。WR軟化処理の条件は、例えば、雰囲気は、非酸化性雰囲気(減圧雰囲気や不活性ガス雰囲気、還元ガス雰囲気など)や大気雰囲気、保持温度は、250℃以上450℃以下、保持時間は、1時間以上48時間以下が挙げられる。
・中間軟化処理
上記伸線加工の途中の線材に、中間軟化処理を行うことができる。中間軟化処理を行うことで、伸線工程における過度な歪みの蓄積を抑制し、断線を防止できる。中間軟化処理の条件は、例えば、雰囲気は、上述の非酸化性雰囲気や大気雰囲気、保持温度は、250℃以上500℃未満(好ましくは300℃以上420℃以下)、保持時間は、0.5時間以上40時間以下(好ましくは1時間以上24時間以下)、が挙げられる。加工硬化によって高めた線材の強度を極端に低下させないように、条件を調整するとよい。中間軟化処理の条件は、公知の条件を利用することができる。
・最終軟化処理
最終伸線後に軟化処理を行うことができる。最終軟化処理の条件は、上述の非酸化性雰囲気、保持温度が300℃以上、保持時間が1時間以上、が挙げられる。最終軟化処理を行うと、アルミニウム合金線材をボルトなどのアルミニウム合金部材の素材に用いる場合にボルトなどの加工時の成形性を向上できる。
・溶体化処理、時効処理
更に、最終伸線後の伸線材に、上述の溶体化処理や、上述の溶体化処理及び時効処理(条件は後述)を施すことができる。溶体化処理及び時効処理を施すことで、上述の<機械的特性>の項で述べた高強度で耐力にも優れ、高靭性なアルミニウム合金線材が得られる。特に伸びに優れるアルミニウム合金線材であれば、塑性加工が施される2次加工材の素材にも利用できると期待される。
<アルミニウム合金部材の製造方法>
実施形態のアルミニウム合金部材は、代表的には、実施形態のアルミニウム合金からなる素材を準備する工程(素材準備工程)と、上記素材に、塑性加工を含む加工(2次加工)と上記溶体化処理とを施す工程(加工・熱処理工程)とを備える製造方法によって製造することができる。この製造方法は、更に、上記溶体化処理以降に時効処理を施す工程(時効工程)を備えることができる。
<素材準備工程>
上記素材は、例えば、上述の実施形態のアルミニウム合金線材や、上述の実施形態のアルミニウム合金線材の製造方法によって製造されたアルミニウム合金線材(以下、まとめて実施形態のアルミニウム合金線材等と呼ぶ)を利用することができる。上述の実施形態のアルミニウム合金線材等のように、鋳造以降に少なくとも1回(1パス)の塑性加工が施されたものを素材とすると、結晶が微細化されていたり、粗大な晶出物が低減されていたり、表面欠陥が低減されていたりすることで、2次加工(特に塑性加工)が行い易い。そのため、アルミニウム合金部材を量産できて好ましい。実施形態のアルミニウム合金線材等を素材に利用する場合、適宜、所定の長さに切断することができる。その他、連続鋳造材(キャストバー)を素材に利用することもできる。
<加工・熱処理工程>
上記加工と上記溶体化処理の順序は問わない。いずれが先でもよい。上記加工が複数ある場合には、ある加工と別の加工との間に溶体化処理を挟むことができる。この場合、時効処理は、溶体化処理の後であればよく、ある加工と別の加工との間に溶体化処理及び時効処理を挟んだり、上記別の加工の前に溶体化処理を行い、上記別の加工の後に時効処理を行ったりすることができる。つまり、上記素材に塑性加工を含む加工を施して、アルミニウム合金部材を製造するまでの過程における対象物に上記溶体化処理を施せばよい。例えば、上記素材として上述の実施形態のアルミニウム合金線材等を利用して、ボルトを製造する場合、上記アルミニウム合金線材等に塑性加工を含む加工を施して、ボルトなどのアルミニウム合金部材を製造するまでの過程における対象物に上記溶体化処理を施す。この場合、上記対象物は、上記アルミニウム合金線材等を所定の長さに切断した切断片、この切断片に中間鍛造を施した鍛造片、上記切断片にヘッダ加工を施したヘッダ片、上記切断片にヘッダ加工及び転造加工を施したボルト素材などが挙げられる。上述のように鋳造工程以後、溶体化処理までの間に均質化処理を含まないと、強度、更には耐力にもより優れるアルミニウム合金部材が得られて好ましい。
・加工
上記2次加工は、所望のアルミニウム合金部材が得られるように適宜選択することができる。例えば、アルミニウム合金部材がボルトである場合、2次加工としては、ヘッド加工や転造加工、鍛造加工などの塑性加工が挙げられる。例えば、アルミニウム合金部材が自転車のクランクである場合、鍛造加工などの塑性加工が挙げられる。2次加工のうち、塑性加工以外の加工としては、例えば、切削や表面処理(研磨や陽極酸化処理など)が挙げられる。切削後にバフ研磨やアルマイト処理といった表面処理を行うことができる。例えば、アルミニウム合金部材がスプールバルブである場合、棒状の素材(例えば、実施形態のアルミニウム合金線材)を所望の形状に切削するとよい。各塑性加工の条件などは、公知の条件を利用できる。連続鋳造材を素材とする場合も、切削や表面処理などの加工を行うことができる。
・溶体化処理及び時効処理
溶体化処理の条件(保持温度、保持時間、昇温時間など)は、上述の<溶体化処理>の項で述べたとおりである。
時効処理の条件は、保持温度が160℃以上180℃以下、保持時間が4時間以上、が挙げられる。保持温度を160℃以上、及び保持時間を4時間以上とすることで、析出物を十分に析出して、析出硬化による強度向上効果が得られ、強度、更には耐力をも高め易い。保持温度を180℃以下とすることで、析出物の粗大化による強度の低下を抑制できる。上記の条件で時効処理を行うことで、強度、更には耐力も高く、伸びにも優れるアルミニウム合金部材が得られる。
上記の範囲で保持温度が低めであれば、保持時間を長くするほど(例えば、160℃程度では8時間超、170℃程度では4時間超)、析出硬化による強度向上効果が得られ、強度、更には耐力をも高め易い。上記の範囲で保持温度が高めであれば(例えば180℃程度)、保持時間が短くても、高い強度、更には高い耐力が得られる。また、上記の範囲で保持温度が高いと耐力が高まる傾向があり、保持温度が低いと引張強さや破断伸びが高まる傾向がある。求める特性に応じて、保持温度及び保持時間を適宜選択することができる。例えば、アルミニウム合金を鋳造材の原料に利用する場合には、加工性を重視し、アルミニウム合金をボルト用素材の原料に利用する場合には、耐力を重視することができる。特に、耐力を優先する場合、時効処理の条件は、保持温度が170℃以上、保持時間が8時間超、が好ましい。上述の特定の条件によって溶体化処理及び時効処理を行うことで、実施形態のアルミニウム合金線材や実施形態のアルミニウム合金部材の代表的な形態では、断面における等価面積円の直径が0.3μm以上である分散粒子の含有量が、3000個以下/0.01mmを満たし、かつ断面における分散粒子の直径が概ね10μm以下を満たす。
以下、試験例を挙げて、アルミニウム合金の特性、製造条件などを具体的に説明する。
[試験例1]
種々の組成のアルミニウム合金線材を作製し、機械的特性を調べた。この試験では、鋳造→圧延→伸線の工程によって、アルミニウム合金線材を作製する。得られた伸線材に溶体化処理及び時効処理を施した熱処理材を試験片として、機械的特性を調べた。各試料の組成(各元素の含有量は質量%、残部Al及び不可避的不純物)、機械的特性を表1に示す。表1に示す過剰Si/Feは、(過剰Si量)/(Fe量)であり、(過剰Si量)は、上述の〈式1〉で求められる値である。
<アルミニウム合金線材の作製>
ベースとなる純アルミニウムを溶解し(ここでは700℃以上750℃以下)、その溶湯に添加元素が表1に示す所定の濃度となるように投入して、十分に保持する(ここでは3時間以上)。成分調整したアルミニウム合金の溶湯は、適宜、水素ガス除去処理や、異物除去処理を行う。作製したアルミニウム合金の溶湯を用いて、ベルトアンドホイール方式の連続鋳造機を備えるプロペルチ式連続鋳造圧延機によって、鋳造と熱間圧延とを連続して行い、ワイヤロッド(ここでは直径φ9.5mmの連続鋳造圧延材)を作製する。鋳造時における凝固速度は5℃/秒である。ここでは、水冷銅鋳型を用いて、冷却過程にある溶湯の任意の位置において凝固速度が5℃/秒になるように鋳造する。また、ここでは、圧延工程のZ因子が1.9×1016となるように線速と圧延温度とを調整して圧延する。続いて、上記ワイヤロッドに冷間伸線加工を施して、伸線材(ここでは直径φ4.5mm)を作製する。ここでは、伸線途中に中間軟化処理を行った(250℃〜450℃×5時間)。なお、得られた伸線材の組成は、表1の組成と同様である。伸線材の組成分析には、公知の手法が利用でき、例えば、エネルギー分散型X線分析装置などが利用できる。
<試験片の作製>
得られたアルミニウム合金線材(上記伸線材)に、溶体化処理及び時効処理を施して、熱処理材を作製する。溶体化処理の条件は570℃×30分、時効処理の条件は170℃×16時間である。なお、試料No.1−106は、伸線時に割れが生じたため、機械的特性の評価を行なっていない。また、溶体化処理及び時効処理を施した各試料はいずれも、鋳造以降、上記溶体化処理までの間に均質化処理を行っていない。
<機械的特性の評価>
得られた熱処理材を用いて、試験片を作製し、引張試験(常温)を行って、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、及び破断伸び(%)を評価した。この引張試験は、JIS Z 2241(2011)に準拠して行う。
<考察>
表1に示すように、Si,Mg,Feを特定の範囲で含み、(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下を満たし、かつ(Fe量)≧(Cu量)である試料No.1−1〜No.1−10はいずれも、550℃以上580℃以下×15分以上120分以下の溶体化処理を行った後、160℃以上180℃以下×4時間以上の時効処理を施すと、高い強度を有することが分かる。ここでは、試料No.1−1〜No.1−10はいずれも、耐力にも優れる上に、高い伸びも有することが分かる。具体的には、試料No.1−1〜No.1−10はいずれも、引張強さが400MPa以上、0.2%耐力が375MPa以上、破断伸びが10%以上を満たす。特に、Cuの含有量が非常に少ない試料No.1−9や、Cuを実質的に含有しない試料No.1−10であっても、高強度で、耐力にも優れ、高い伸びを有していることが分かる。Cuを0.1%以上含有する第二組成であると引張強さ、耐力、及び伸びにより優れることが分かる。Si,Mg,Fe加えて、CuやMn,Cr,Zr,Tiの少なくとも1種を含有すると、強度、更には耐力をより高め易いことが分かる。
試料No.1−1〜No.1−10の熱処理材(φ4.5mm)についてそれぞれ、断面をとってその断面を研磨し、走査型電子顕微鏡(SEM)によって断面観察を行った。図1は、試料No.1−1のアルミニウム合金(熱処理材)のSEM写真である。図1において、白色の粒が分散粒子(晶出物、析出物)であり、その他の灰色の領域は合金マトリクスである。図1に示すように試料No.1−1のアルミニウム合金は、比較的大きな分散粒子がある程度多く存在することが分かる。その他の試料No.1−2〜No.1−10のアルミニウム合金(熱処理材)も、試料No.1−1と同様に、比較的大きな分散粒子がある程度多く存在している。試料No.1−1〜No.1−10の断面のSEM観察像を用いて、分散粒子の大きさ及び存在量を調べた。具体的には、断面のSEM観察像について、100μm×100μm(0.01mm)に存在する分散粒子を抽出し、抽出した各粒子の等価面積円の直径を測定し、0.1μm以上の粒子を抽出した。抽出した分散粒子について直径が0.3μm以上の粒子の個数を調べた結果、試料No.1−1〜No.1−10はいずれも、直径が0.3μm以上の分散粒子の個数が200個以上950個以下/0.01mmであった。また、直径が0.1μm以上の粒子の個数及び大きさを調べた結果、試料No.1−1〜No.1−10はいずれも、分散粒子の直径が概ね10μm以下であった。
一方、Fe量に比較して過剰Si量が多過ぎる試料No.1−101やSi量自体が多過ぎる試料No.1−102、Fe量自体が少な過ぎる試料No.1−105は、強度がある程度高いものの、破断伸びが低い。このような結果となった理由の一つとして、Feの微細化効果による結晶粒界の増大が不十分であり、Siの偏析による悪影響を十分に抑制できなかったり、粗大な晶出物などが生成されたりしていることが考えられる。試料No.1−3やNo.1−8を見れば、Si量自体が多くても、Fe量が適切であれば強度に優れる上に伸びも高いことから、Si量に応じてFe量を適切に調整することで、強度、更には耐力、伸びといった機械的特性を改善できると考えられる。Siが少な過ぎる試料No.1−103やMgが多過ぎる試料No.1−104は、耐力が低い。このような結果になった理由の一つとして、SiやMgの析出や固溶による強度向上効果、耐力の向上効果が十分に得られなかった、と考えられる。Feが多過ぎると、加工性に劣り、破断などが生じ易いことが分かる(試料No.1−106)。
そして、(Fe量)≧(Cu量)を満たさない、即ち、(Fe量)<(Cu量)であり、CuをFeよりも多く含む試料No.1−107は、高強度であるものの、耐力に劣ることが分かる。この結果から、強度に加えて耐力の向上をも図る場合には、Cuの含有量を抑えて(Cuを含まなくてもよい)、Feを積極的に添加すると共に、Si,Mg,Feの含有量及び(過剰Si量)/(Fe量)を特定の範囲にすることが好ましいことが分かる。
この試験結果から、Si,Mg,Feを特定の範囲で含み、(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下を満たし、かつ(Fe量)≧(Cu量)である組成を有するアルミニウム合金は、連続鋳造を行い、その後に溶体化処理を適切に行い(溶体化処理の前に圧延や伸線といった塑性加工を介在させてもよい)、更には時効処理を施すことで、高強度で、耐力にも優れ、更には伸びにも優れることが確認できた。このようなアルミニウム合金は、ボルトやスプールバルブ、クランクなどのアルミニウム合金部材に好適に利用できるといえる。また、この試験で作製したNo.1−1〜No.1−10のアルミニウム合金線材は、ボルトやスプールバルブなどのアルミニウム合金部材の素材に好適に利用できるといえる。
[試験例2]
試験例1の試料No.1−1のアルミニウム合金(質量%で、Si:1.2%、Mg:0.8%、Fe:0.5%、Cu:0.3%を含有、(過剰Si量)/(Fe量)=1.47)からなるアルミニウム合金線材を作製し、種々の条件で溶体化処理及び時効処理を施した熱処理材を試験片として、機械的特性を調べた。その結果を表2、表3に示す。
この試験では、試験例1と同様の条件で伸線材(アルミニウム合金線材)を製造した後(凝固速度:5℃/秒、圧延時のZ因子:1.9×1016)、溶体化処理及び時効処理を施して、試験例1と同様にして機械的特性の測定に用いる試験片を作製する。そして、試験例1と同様に、引張試験(常温)を行って、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、及び破断伸び(%)を評価した。各試料はいずれも、鋳造以降、上記溶体化処理までの間に均質化処理を行っていない。
表2に示す各試料は、溶体化処理を表2に示す条件で行い、時効処理の条件を170℃×16時間としている。表3に示す各試料は、溶体化処理の条件を570℃×30分とし、時効処理を表3に示す条件で行う。
<考察>
表2に示すように、溶体化処理の条件を550℃以上580℃以下×15分以上120分以下とした試料No.2−1〜No.2−16はいずれも、高強度で、耐力にも優れることが分かる。また、試料No.2−1〜No.2−16はいずれも、伸びにも優れる。具体的には、試料No.2−1〜No.2−16はいずれも、引張強さが410MPa以上、0.2%耐力が385MPa以上、破断伸びが10%以上を満たす。溶体化処理では、保持時間が短過ぎると(ここでは10分)、強度が低く、更に保持温度が低い場合には耐力も低い傾向にある(試料No.2−101,No.2−104,No.2−106,No.2−108)。このような結果になった理由として、固溶が不十分な場合がったため、と考えられる。一方、保持時間が長過ぎても(ここでは、150分、180分)、強度が低く、更には耐力も低くなる傾向にある(試料No.2−102,No.2−103,No.2−105,No.2−107,No.2−109)。このような結果になった理由として、溶体化処理中に粒界へのSiの偏析が進み、偏析したSi量がFeによる結晶粒の微細化効果やCuとの化合物の形成などで無害化できない量に達して、脆化を招いたため、と考えられる。更に、保持時間が長過ぎるこれらの試料は、合金表面に粒状の塊があり、外観も劣っていた。
表3に示すように、時効処理の条件を160℃以上180℃以下×4時間以上とした試料No.2−21〜No.2−29はいずれも、高強度で、耐力にも優れることが分かる。更に、試料No.2−21〜No.2−29はいずれも、伸びにも優れる。ここでは、試料No.2−21〜No.2−29はいずれも、引張強さが410MPa以上、0.2%耐力が385MPa以上、破断伸びが10%以上である。また、表3に示すように、時効処理の条件を160℃以上180℃以下×4時間以上とすることで、強度に優れるものの(ここでは引張強さが410MPa以上)、耐力をも向上するには、保持温度が低めの場合には保持時間を長めにすること、具体的には160℃の場合8時間超、170℃の場合4時間超とすることが好ましいといえる。保持時間が長過ぎると、強度などの機械的特性が低下し易く、また生産性も低下することから、保持時間は48時間以下、更に30時間以下が好ましいといえる。
[試験例3]
試験例1の試料No.1−1のアルミニウム合金(質量%で、Si:1.2%、Mg:0.8%、Fe:0.5%、Cu:0.3%を含有、(過剰Si量)/(Fe量)=1.47)からなるアルミニウム合金線材を、種々の鋳造条件、圧延条件で作製し、試験例1と同様の条件で溶体化処理及び時効処理を施した熱処理材を試験片として、機械的特性を調べた。その結果を表4に示す。
この試験では、試験例1と同様に、連続鋳造圧延→伸線、という工程で伸線材(アルミニウム合金線材)を製造した。各試料について、鋳造工程の凝固速度(℃/秒)を表4に示す。凝固速度は、鋳型の材質や鋳造速度(ton/hour)、冷却液量を調整することで変化させた。各試料について、圧延時のZ因子を表4に示す。Z因子は、線速及び圧延温度の少なくとも一方を調整することで変化させた。圧延温度は、インラインのバークーラーやバーヒーターを使用し、これらを調節することで調整した。
この試験では、試料No.3−2のみ、圧延後(ここでは、連続鋳造圧延材であるワイヤロッド)に均質化処理を行った。均質化条件を表4に示す。その他の試料は、鋳造以降、上記溶体化処理までの間に均質化処理を行っていない。
得られたアルミニウム合金線材に、溶体化処理(570℃×30分)及び時効処理(170℃×16時間)を施し、試験例1と同様にして機械的特性の測定に用いる試験片を作製する。そして、試験例1と同様に、引張試験(常温)を行って、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、及び破断伸び(%)を評価した。試料No.3−101は、伸線時に割れが生じたため、試料No.3−103は、圧延時に割れが生じたため、機械的特性の評価を行なっていない。
表4に示すように、試料No.3−1,No.3−3〜No.3−15はいずれも、高強度で、耐力にも優れることが分かる。また、試料No.3−1,No.3−3〜No.3−15はいずれも、伸びにも優れる。ここでは、試料No.3−1,No.3−3〜No.3−15はいずれも、引張強さが410MPa以上、0.2%耐力が385MPa以上、破断伸びが10%以上を満たす。そして、このような高強度で耐力に優れ、高靱性であるアルミニウム合金(ここではアルミニウム合金線材)は、(1)連続鋳造時の凝固速度を1℃/秒以上にする、(2)アルミニウム合金線材の製造にあたり、鋳造材に圧延加工を施す場合には、圧延時のZ因子を1.0×1010以上1.0×1019以下にする、(3)鋳造以降伸線完了までの間、更には鋳造以降溶体化処理までの間に均質化処理を行わないことが好ましいことが分かる。
一方、鋳造時の凝固速度を遅くすると(ここでは0.5℃/秒、試料No.3−101)、伸線時に割れが生じた。このような結果となった理由の一つとして、凝固速度が遅いことで粗大な晶出物が生成され、この粗大粒が割れの起点になったため、と考えられる。圧延時のZ因子が大き過ぎると(ここでは1.0×1020、試料No.3−103)、圧延時に割れが生じた。圧延時のZ因子が小さ過ぎると(ここでは1.9×10、試料No.3−102)、試料No.3−1,No.3−3〜No.3−15に比較して強度及び耐力が低く、伸びが特に小さいことが分かる。このような結果となった理由の一つとして、鋳造時に生成された晶出物を圧延時に十分に分断できず、粗大な晶出物が存在したため、と考えられる。
他方、鋳造以降、冷間塑性加工(ここでは伸線)完了までの間に均質化処理を行うと、均質化処理を行わない場合と比較して強度や耐力が低下することがあることが分かる。このような結果となった理由の一つとして、試料No.3−2は、凝固速度が大きく鋳造段階で既に均一な組織ができていたことで均質化処理による効果が実質的に得られなかったため、と考えられる。また、均質化処理時にSiが粒界に偏析して脆化させたため、と考えられる。
本発明のアルミニウム合金は、種々の構造部材の素材に利用できる。本発明のアルミニウム合金線材は、自動車部品や自転車部品、例えば、自動車部品では締付用ボルトやスプールバルブなど、自転車部品ではクランクなどの軽量・高強度、更には高い耐力が望まれるアルミニウム合金部材の素材に利用できる。本発明のアルミニウム合金部材は、上記ボルトやスプールバルブ、クランクなどに利用できる。本発明のアルミニウム合金線材の製造方法は、アルミニウム合金線材の製造に利用できる。本発明のアルミニウム合金部材の製造方法は、アルミニウム合金部材の製造に利用できる。

Claims (10)

  1. 質量%で、
    Si:1.0%超1.5%以下、
    Mg:0.5%以上1.2%以下、
    Fe:0.3%以上0.8%以下、
    Cu:0%以上0.5%以下、
    Mn:0%以上0.5%以下、
    Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、
    前記Feの含有量が前記Cuの含有量以上であり、
    前記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備えるアルミニウム合金。
  2. 前記組成における各元素の含有量が、質量%で、
    Si:1.0%超1.3%以下、
    Mg:0.7%以上1.0%以下、
    Fe:0.3%以上0.6%以下、
    Cu:0.1%以上0.4%以下、
    Mn:0%以上0.3%以下、
    Cr:0%以上0.3%以下であり、
    前記(過剰Si量)/(Fe量)が0.3以上1.7以下である請求項1に記載のアルミニウム合金。
  3. 前記組成は、更に、質量%で、
    Ti:0.001%以上0.1%以下、及びZr:0.05%以上0.2%以下から選択される少なくとも1種の元素を含む請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金。
  4. 前記アルミニウム合金に、550℃以上580℃以下×15分以上120分以下の溶体化処理を行った後、160℃以上180℃以下×4時間以上の時効処理を施した後の引張強さが400MPa以上、0.2%耐力が375MPa以上、破断伸びが10%以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金。
  5. 請求項1に記載のアルミニウム合金からなるアルミニウム合金線材。
  6. 質量%で、
    Si:1.0%超1.5%以下、
    Mg:0.5%以上1.2%以下、
    Fe:0.3%以上0.8%以下、
    Cu:0%以上0.5%以下、
    Mn:0%以上0.5%以下、
    Cr:0%以上0.5%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、
    前記Feの含有量が前記Cuの含有量以上であり、
    前記Feの含有量に対する過剰Siの含有量の比率である(過剰Si量)/(Fe量)が0.1以上3.0以下である組成を備えるアルミニウム合金を連続鋳造して、鋳造材を得る鋳造工程と、
    前記鋳造材を圧延して圧延材とする圧延工程と、
    前記圧延材を伸線して所定の線径の伸線材とする伸線工程とを備えるアルミニウム合金線材の製造方法。
  7. 前記鋳造工程では、凝固速度を1℃/秒以上とする請求項6に記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
  8. 前記圧延工程では、圧延時のZ因子を1.0×1010以上1.0×1019以下とする請求項6又は請求項7に記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
  9. 請求項6に記載のアルミニウム合金線材の製造方法によって製造されたアルミニウム合金線材に塑性加工を含む加工を行って、アルミニウム合金部材を製造するまでの過程における対象物に、550℃以上580℃以下×15分以上120分以下の溶体化処理を施す工程を備えるアルミニウム合金部材の製造方法。
  10. 請求項1に記載のアルミニウム合金からなり、
    引張強さが400MPa以上であり、
    0.2%耐力が375MPa以上であり、
    破断伸びが10%以上であるアルミニウム合金部材。
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