JP7194097B2 - 熱間加工品およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱処理型アルミニウム合金(単に「Al合金」という。)からなる熱間加工品等に関する。
自動車などの様々な分野で、軽量化を図るために、Al合金の使用が拡大している。例えば、高い機械的特性(強度、靱性等)が要求される構造部材等にもAl合金が使用されるようになっている。このため、従来の鋳物(ダイカスト品)や冷間加工品に加えて、熱処理型のAl合金(展伸材)からなる熱間加工品も増加している。
熱間加工によれば、創成可能な形状自由度の拡大を図れる。また、熱処理(溶体化処理、時効処理等)により高い機械的特性も確保できる。さらに、合金元素量が比較的少ないAl-Si-Mg系合金(6000系合金)を用いれば、機械的特性(強度、延性等)や耐食性の確保に加えて、リサイクル性の向上も図られる。このようなAl合金からなる熱間加工品やその熱処理に関する記載が、例えば下記の特許文献にある。
特開2011-225988号公報 特開2017-155251号公報 特開2017-133097号公報
Materials Science and Engineering: A, 324(2002), 239-243. Scripta Metallurgica et Materialia, 32(1995), 457-462.
特許文献1、2には、6000系アルミニウム合金鍛造材に関する記載がある。特許文献3には、7000系アルミニウム合金押出材に関する記載がある。いずれの特許文献でも、熱間加工(鍛造、押出)後、さらに溶体化処理、焼入れ処理および人工時効処理を行っている。また、各特許文献は小傾角粒界(小角粒界)に触れているが、その具体的な量(割合)等は全く記載していない。特許文献のように、熱間加工後に高温に加熱する溶体化処理を行うと、その金属組織に存在する小傾角粒界は極僅かと考えられる。
非特許文献1、2は、熱処理後の冷間加工により、ピーク時効の短時間化や強度向上等を図れる旨を記載している。しかし、そもそも非特許文献1、2には、熱間加工に関する記載がない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、熱処理の省エネルギー化を図れる熱間加工品等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、金属組織中に小角粒界が多く含まれていると、低温化や短時間化した人工時効処理でも、十分な硬さや強度を確保できることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《熱間加工品》
(1)本発明は、熱処理型のアルミニウム合金からなる熱間加工品であって、該アルミニウム合金は、該アルミニウム合金全体に対して、Si:0.2~1.5質量%とMg:0.3~1.5質量%とを含み、結晶方位差が2°~15°である小角粒界を、3×10μmの視野内における長さの合計で15mm以上含む熱間加工品である。
(2)本発明によれば、低温化および/または短時間化(単に「省エネルギー化」ともいう。)された人工時効処理でも、十分に析出強化がなされた熱間加工品の提供が可能となる。なお、高温(例えば、再結晶温度以上)に加熱することがない限り、人工時効処理前後で小角粒界の長さは実質的に殆ど変化しない。従って、本発明は、人工時効処理前の熱間加工品としても、人工時効処理後の熱間加工品としても把握できる。
ちなみに、小角粒界の増加により、機械的特性(硬さ、強度等)の確保と人工時効処理の省エネルギー化とを両立できる理由は、小角粒界中または小角粒界で囲まれたマトリックス(母相)内で、SiとMgの析出が促進されるためと考えられる。特に、安定相(β相)や中間層(β’)よりも、母相に整合的な準安定相であるβ”相(ベータダブルプライム相)やG.P.ゾーン(Guinier-Preston zone)の生成が、小角粒界により促進されると考えられる。
《熱間加工品の製造方法》
(1)本発明は、熱間加工品の製造方法としても把握できる。本発明は、例えば、熱処理型のアルミニウム合金からなる加熱したワークを塑性変形させる加工工程を備える熱間加工品の製造方法であって、該アルミニウム合金は、該アルミニウム合金全体に対して、Si:0.2~1.5質量%とMg:0.3~1.5質量%とを含み、該加工工程は、下記に示すZ因子(Zener-Hollomon factor)が1×1011/s以上となる加工条件(ε’、T)でなされる熱間加工品の製造方法である。
Z=ε’exp(Q/RT) [s-1
ε’:塑性変形の開始から終了までのワークの平均ひずみ速度 [s-1
T :塑性変形の開始から終了までのワークの平均温度 [K
Q :144k J・mol-1 (活性化エネルギー)
R :8.31 J・mol-1・K-1 (気体定数)
(2)Z因子の大きい加工条件で熱間加工を行うと、金属組織中に小角粒界を多く含む熱間加工品が得られる。本発明は、そのような本発明者の発見により完成された。
なお、平均ひずみ速度(ε’)は、塑性変形の開始から終了までに要した時間(t)で、その塑性変形により導入されたひずみ量(ε)を除した値[ε/t]である。平均温度(T)は、塑性変形の開始時(加工直前)のワーク温度(Ti)と塑性変形の終了時(加工直後)のワーク温度(Tf)とを相加平均した温度[(Ti+Tf)/2]である。アルミニウムの自己拡散の活性化エネルギー(Q)と気体定数(R)は、計算の便宜上、上述した一定値とした。
ちなみに、塑性変形の開始時は、例えば、工具(金型、ローラ等)がワーク(素材)に接触した時としてもよい。塑性変形の終了時は、例えば、工具(金型、ローラ等)がワーク(素材)から離脱した時としてもよい。
《その他》
特に断らない限り、本明細書でいう「x~y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。また特に断らない限り、本明細書でいう「x~ymm」はxmm~ymmを意味する。他の単位系(μm等)についても同様である。
熱間加工と人工時効処理に係る温度変化を例示する模式図である。 試料1と試料C2に係る金属組織写真とGBマップである。 試料1と試料C2に係る制限視野電子回折像(SAED像)である。 小角粒界の長さと人工時効処理後のビッカース硬さとの関係を示す散布図である。 Z因子と小角粒界の長さとの関係を示す散布図である。 試料1と試料C2に係る小角粒界の長さの変化を示す棒グラフである。
本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を、本発明の構成要素として付加し得る。本明細書で説明する内容は、本発明の熱間加工品のみならず、その製造方法にも該当し得る。方法的な構成要素であっても物に関する構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《Al合金》
Al合金は、少なくともSiとMgにより析出強化される熱処理型合金である。Al合金全体を100質量%(単に「%」という。以下同様)として、Siは、例えば、0.2~1.5%、0.3~1.3%さらには0.4~0.8%含まれるとよい。またMgは、例えば、0.3~1.5質量%、0.4~1.3%、0.5~1.1%さらには0.6~0.9%含まれるとよい。SiおよびMgが過少では、Al合金の析出強化を図れない。SiおよびMgが過多では、Al合金の靱性等が低下し得る。
Al合金は、Al-Si-Mg系合金の代表例である6000系合金の各化学成分に準拠して、Fe、Cu、Mn、Cr、Zn、Ti等の元素を任意に含んでもよい。これらの元素(単に「任意元素」という。)は、結晶粒の微細化や強度の向上等に寄与し得る。
Feは、例えば、0.8%以下、0.7%以下、0.5%以下さらには0.35%以下含まれてもよい。Cuは、例えば、1.1%以下、0.7%以下、0.4%以下さらには0.1%以下含まれてもよい。Mnは、例えば、1.0%以下、0.8%以下、0.7%以下さらには0.15%以下含まれてもよい。Crは、例えば、0.35%以下、0.25%以下さらには0.1%以下含まれてもよい。Znは、例えば、0.7%以下、0.3%以下さらには0.1%以下含まれてもよい。Tiは、例えば、0.2%以下、0.15%以下さらには0.1%以下含まれてもよい。なお、各任意元素は、その下限値は問わないが、敢えていうと、例えば、0.01%以上、0.05%以上さらには0.1%以上含まれてもよい。
一例を挙げると、A6110合金の化学成分は、Si:0.7~1.5%、Fe≦0.8%、Cu:0.2~0.7%、Mn:0.2~0.7%、Mg:0.5~1.1%、Cr:0.04~0.25%、Zn≦0.3%、Ti≦0.15%、残部:Alおよび不純物である。またA6061合金の化学成分は、Si:0.4~0.8%、Fe≦0.7%、Cu:0.15~0.4%、Mn≦:0.15%、Mg:0.8~1.2%、Cr:0.04~0.35%、Zn≦0.25%、Ti≦0.15%、残部:Alおよび不純物である。
《金属組織》
(1)熱間加工品の金属組織は、小角粒界を多く含むほどよい。具体的にいうと、特定視野(3×10μm)あたり、小角粒界の長さの合計が15mm以上、18mm以上、20mm以上、22mm以上、24mm以上さらには26mm以上であるとよい。なお、小角粒界の長さの合計は、熱間加工品の形状、熱間加工装置の能力(例えば印加荷重)等により異なる。このため、小角粒界の長さの合計の上限値は問わないが、敢えていえば、30mm以下としてもよい。
小角粒界は、結晶方位解析法(単に「EBSD法」という。)により定まる。具体的にいうと、例えば、小角粒界の測定領域を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM:Field Emission Scanning Electron Microscope)により観察する。このとき得られた後方散乱電子回折像(EBSD:Electron Backscatter Diffraction)に基づいて、GB(Grain Boundary)マップを作成し、小角粒界(結晶方位差:2°~15°)の長さの合計を算出する。こうして、特定視野内にある小角粒界の長さの合計が求まる。なお、本発明では、EBSD法に伴う誤差を除外するため、方位差2°未満の小角粒界は測定対象外としている。
(2)人工時効処理された熱間加工品の金属組織は、安定相であるβ相(MgSiの立方晶)や中間相であるβ’相(MgSiの六方晶)よりも、準安定相であるβ”相やG.P.ゾーンを含むとよい。小角粒界が多い場合、G.P.ゾーンやβ”相が熱間加工品の強化に大きく寄与すると考えられる。なお、G.P.ゾーンは、SiやMgが母相の{100}面上に整合して配列したものと考えられる。β”相は、析出の進行により、G.P.ゾーンが<100>方向に針状に変化したと考えられる。
《熱間加工》
(1)Z因子と小角粒界
熱間加工(加工工程)は、例えば、Z因子が1×1011/s以上、2×1011/s以上、5×1011/s以上、8×1011/s以上さらには1×1012/s以上となる加工条件下でなされるとよい。このような条件下の熱間加工により、熱間加工品内へ多くの小角粒界を導入できる。
Z因子は、その定義式から明らかなように、ε’とexp(1/T)に比例する。つまり、所定時間内になされる熱間加工において、塑性変形中にワーク温度を低減させつつ、ワークに大きな変形を与えることで、Z因子を大きくできる。
ここで、冷間加工によれば、Z因子を大きくできるが、創成できる形状自由度も小さくなる。熱間加工によれば、成形性(形状自由度)を確保できる。但し、従来の熱間加工のように、ワーク温度(または金型温度等)を再結晶温度以上に保持した状態のまま塑性変形を行うと、塑性変形により導入されたひずみは、再結晶化により回復されて消滅する。つまり、Z因子を大きくできず、小角粒界の増加を図れない。
そこで、例えば、塑性変形中のワークの温度が、アルミニウム合金の再結晶温度超から再結晶温度未満に変遷する条件下で、加工工程がなされるとよい。この場合、ワークが高温状態にある初期に大変形が可能となり成形性が確保される。また、ワークが低温状態にある後期に多くのひずみが導入されて、小角粒界の増大が図られる。
(2)過飽和固溶状態
加工工程後(人工時効処理前)のワーク(Al合金)は、合金元素(Si、Mg等)が過飽和に固溶した状態であるとよい。つまり、熱間加工(加工工程)が、実質的に、溶体化処理および焼入れを兼ねていると好ましい。これにより、熱処理(溶体化処理等)を省略して省エネルギー化を図れるとともに、多くの小角粒界を維持したままで、人工時効処理を行うことが可能となる。
具体的にいうと、例えば、加工工程は、Al合金の溶解度線温度以上で固相線温度未満の温度(「溶体化温度」という。)にしたワークに対して開始された後、Al合金の過飽和固溶体が維持される温度(「凍結温度」という。)までワークを冷却して終了されるとよい。凍結温度は、例えば、加工工程後になされる人工時効処理の加熱温度(「時効温度」という。)よりも低いとよい。加工工程は、ワークを過飽和固溶状態とるために、ワークが溶解度線温度以下(未満)となる後期(終了直前)に、水冷等の急冷過程を備えるとよい。このときの冷却速度(熱間加工後期の冷却速度)は、例えば、70~1000℃/sさらには120~600℃/sであるとよい。
《人工時効処理》
熱間加工後の人工時効処理(時効工程)により、強化元素(Si、Mg)やその化合物が小角粒界やマトリックス等に析出して、熱間加工品の硬さや強度の向上が図られる。
人工時効処理されるワークの加熱温度(時効温度)と加熱時間(時効時間)は、適宜、組み合わされる。但し、ワークに小角粒界が多く導入されている場合、時効温度の低減や時効時間の短縮を図りつつも、従来と同等以上の硬さや強度が確保され得る。例えば、最高強度(硬さ)を得るピーク時効を行う場合でも、時効温度を200℃以下、180℃以下さらには160℃以下とできる。また時効時間も、4時間以下、2時間以下さらには1時間以下とできる。
《塑性加工と用途》
熱間加工(塑性加工)の種類は、圧延、鍛造、押出し、転造、プレス成形等のいずれでもよい。熱間加工品の種類や用途も様々である。例えば、自動車用部品(ナックル、ロアアーム、アッパーアーム等)、航空機用部品(フレーム、ジョイント部材等)、建設機械用部品等に、本発明の熱間加工品が用いられるとよい。
なお、本発明によれば、熱間加工品の熱処理(少なくとも人工時効処理)の省エネルギー化が可能となる。これにより、熱間加工品の低コスト化に加えて、ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)に沿ったCO排出量の削減や環境負荷の低減も実現され得る。
6000系合金にZ因子の異なる種々の熱間加工を施した試料(熱間加工品)を製造した。各試料について、金属組織と、人工時効処理後の硬さとを測定した。これらの具体例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
《試料の製造》
(1)素材
市販されている2種のAl合金板を用意した。一方はA6110合金(Al-0.9%Mg-0.9%Si)であり、他方はA6061合金(Al-1%Mg-0.6%Si)である。各合金板を所定サイズ(50mm×70mm×5mm)に切断した供試材(ワーク)を、以下の熱間加工に供した。なお、各供試材には、熱間加工前に、予め均質化処理を施した。均質化処理は、加熱炉で555℃×2時間で加熱後、水冷(W.Q.)により急冷した。特に断らない限り、加熱雰囲気は大気雰囲気とした(以下同様)。
(2)熱間加工(加工工程)
555℃に加熱した各供試材を一対の平行ロールにより圧延した。このとき、表1に示すように、ロールの周速と温度とを種々変化させた。但し、圧下率(狙い値)は全て50%(板厚:5mm→2.5mm)とした。また、全て1パスの圧延とした。ロールを通過した供試材は直ちに水冷(急冷)した。
ちなみに、A6110合金は液相線温度:650℃、固相線温度:560℃であり、A6061合金は液相線温度:652℃、固相線温度:559℃である。いずれものAl合金も、通常、530℃程度に加熱して溶体化処理される。
また、圧延中、各供試材の温度を、各供試材に取り付けた熱電対により測定した。測定された圧延直後のワーク温度を表1に併せて示した。表1から明らかなように、ロール温度が高い場合、供試材はAl合金の再結晶温度(約200℃)以上のまま、ロールを通過していることがわかった。一方、ロール温度が低い場合、供試材は加工初期に再結晶温度以上の高温で塑性変形を受けた後、加工後期には再結晶温度未満の低温で塑性変形を受けることもわかった。なお、いずれの供試材も、熱間加工の終了時(ロールからの離脱後)、水冷されて約20℃となっていた。
圧延開始時のワーク温度(555℃)、表1に示した圧延直後のワーク温度(水冷前の温度)、ロール周速から求まる加工時間(圧延部の通過時間)および圧下率に基づいて、平均ワーク温度と平均ひずみ速度が求まる。なお、ロール周速が1m/minのときの加工時間は8s、ロール周速が10m/minのときの加工時間は0.8sとなる。これらを用いて各試料の加工条件の指標となるZ因子を算出した。その結果を表1に併せて示した。
(3)人工時効処理
各試料に係る熱間加工後の供試材に、3つの異なる条件下(人工温度×時効時間)で人工時効処理を行った。条件I:160℃×3時間、条件II:190℃×1時間、条件III:190℃×3時間とした。
《観察・測定》
(1)結晶粒界
各試料の熱間加工後の供試材について、人工時効処理前後の金属組織を観察して、EBSD法により小角粒界(結晶方位差:2°~15°)の長さを測定した。観察は、電界放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製 JSM-7000F)により行った。測定は、得られた後方散乱電子回折像から求めたGBマップを画像解析ソフト(株式会社TSLソリューションズ製 OIM Analysis) で処理して行った。
具体的にいうと、観察は、各供試材から採取した検体を樹脂埋め、機械研磨および鏡面仕上等して、板厚中央付近にある圧延方向に平行な断面(L-ST面)について行った。観察倍率は500倍とした。観察範囲は150μm×200μm(3×10μm)とした。観察ステップは1μmとした。
GBマップは、観察した回折像から、CI値(Confidence Index)が0.1以下、IQ値(Image Quality)が1000以下となるデータを除外して(換言すると、CI>0.1、IQ>1000として)作成した。各試料について、GBマップを画像解析して求めた小角粒界の長さの合計を表1に示した。また、人工時効処理前の試料1(高Z条件)と試料C2(低Z条件)について、金属組織写真、小角粒界(方位差:2°~15°)と大角粒界(方位差15°以上)を示すGBマップを図2Aに併せて示した。
(2)析出物
各試料に係る人工時効処理後の金属組織について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて制限視野電子回折(SAED:Selected area electron diffraction)像を観察した。一例として、試料1と試料C2のSAED像を図2Bに示した。
(3)人工時効処理後の硬さ
各試料について、熱間加工後に人工時効処理をした各供試材のビッカース硬さを測定した。この際、測定荷重:5kgf、負荷時間:30sとした。各供試材のビッカース硬さを表1に併せて示した。なお、表1には、時効条件の相違によるビッカース硬さの差分も併せて示した。
《評価》
(1)小角粒界と硬さ
表1に示したA6110合金に係る試料について、小角粒界の長さと人工時効処理後のビッカース硬さ(HV)との関係を図3Aに示した。図3Aおよび表1から明らかなように、先ず、小角粒界が長くなると、時効条件の相違に拘わらず、人工時効処理後のビッカース硬さ(絶対値)が高くなることがわかった。また小角粒界が長くなると、時効温度が低い場合でも、時効温度が高い場合と同等以上の硬さが得られることもわかった。特に小角粒界の長さが所定以上になると、低い時効温度または短い時効時間のときの方が、むしろビッカース硬さが高くなり、その絶対値も大きくなることもわかった。
ちなみに、低い時効温度または短い時効時間でも、高い時効温度または長い時効時間と略同等かそれ以上のビッカース硬さが得られる場合、人工時効処理の省エネルギー化を図れ得る。表1に示す評価では、そのような場合を○(優)とした。
(2)Z因子と小角粒界の長さと
表1に基づいて、Z因子と小角粒界の長さとの関係を図3Bに示した。図3Bから明らかなように、小角粒界の長さはZ因子と正の相関があり、Z因子を増加させる加工条件で熱間加工を行うと、多くの小角粒界を導入できることがわかった。
(3)金属組織
Z因子と小角粒界の長さとの間に相関があることは、図2Aに示したGBマップからもわかる。つまり、Z因子が小さい加工条件(「低Z条件」という。)で熱間加工を行うと、小角粒界の少ない金属組織となる(試料C2)。逆に、Z因子が大きい加工条件(「高Z条件」という。)で熱間加工を行うと、小角粒界の多い金属組織となる(試料1)。
図2Bに示した各SAED像から、試料1(190℃×3h)では析出物がβ’相であり、残り3つは析出物がβ”相であることがわかった。Al格子からの020、 002基本反射の半分の位置における弱いストリーク(白矢印)がβ”相を示す。一方、試料1(190℃×3h)では、ストリーク(白矢印)が細かいスポットの連なりに変化しており、β’相を示す。
ちなみに、時効による析出の進行により、β”相はβ’相へ変化する。同じ時効条件(190℃×3h)である試料1と試料C2を比較すると、小角粒界が多い試料1の方が、小角粒界が少ない試料C2よりも、析出が進行しているといえる。また、小角粒界が多いと、低温または短時間の時効処理でもβ”相が析出して、硬さや強度が増大し易いといえる。
(4)小角粒界の変化
試料1と試料C2に係る熱間加工後の供試材について、人工時効処理前の小角粒界の長さ、人工時効処理後(190℃×3h)の小角粒界の長さ、T6処理後の小角粒界の長さをそれぞれ比較した棒グラフを図4に示した。なお、T6処理は、熱間加工後の供試材に、溶体化処理(540℃×2h)および人工時効処理(190℃×3h)を行ったことを意味する。
図4から明らかなように、熱間加工後に、再結晶温度未満の人工時効処理を行っても、小角粒界の長さは変化しなかった。一方、T6処理のように再結晶温度以上の溶体化処理を行うと、小角粒界の長さが減少(小角粒界が消滅)した。なお、試料1のように小角粒界が多い場合、再結晶温度以上の高温処理により、小角粒界は殆ど消滅することも明らかとなった。これは、多くの小角粒界により、再結晶化が促進されたためとも考えられる。
Figure 0007194097000001

Claims (5)

  1. 熱処理型のアルミニウム合金からなる熱間加工品であって、
    該アルミニウム合金は、該アルミニウム合金全体を100質量%(単に「%」という。)として、下記に示す化学成分(1)または(2)のいずれかを満たし、
    結晶方位差が2°~15°である小角粒界を、3×10μmの視野内における長さの合計で15mm以上含む熱間加工品。
    化学成分(1)
    Si:0.7~1.5%、Fe≦0.8%、Cu:0.2~0.7%、
    Mn:0.2~0.7%、Mg:0.5~1.1%、Cr:0.04~0.25%、
    Zn≦0.3%、Ti≦0.15%、残部:Alおよび不純物
    化学成分(2)
    Si:0.4~0.8%、Fe≦0.7%、Cu:0.15~0.4%、
    Mn≦:0.15%、Mg:0.8~1.2%、Cr:0.04~0.35%、
    Zn≦0.25%、Ti≦0.15%、残部:Alおよび不純物
  2. SiとMgからなるG.P.ゾーンまたはβ”相を含む請求項1に記載の熱間加工品。
  3. 熱処理型のアルミニウム合金からなる加熱したワークを塑性変形させる加工工程を備え、請求項1または2に記載した熱間加工品が得られる製造方法であって、
    該加工工程は、下記に示すZ因子(Zener-Hollomon factor)が1×10 11 /s以上となる加工条件(ε’、T)でなされ、
    該ワークは、該塑性変形中に、該アルミニウム合金の再結晶温度超から再結晶温度未満にされる熱間加工品の製造方法。
    Z=ε’exp(Q/RT) [s-1
    ε’:塑性変形の開始から終了までのワークの平均ひずみ速度 [s-1
    T :塑性変形の開始から終了までのワークの平均温度 [K]
    Q :144 kJ・mol-1 (活性化エネルギー)
    R :8.31 J・mol-1・K-1 (気体常数)
  4. 前記アルミニウム合金は、前記加工工程の終了後に、SiおよびMgが過飽和に固溶した状態となる請求項3に記載の熱間加工品の製造方法。
  5. さらに、前記加工工程後のワークに、溶体化処理を行なわずに人工時効処理を行う請求項3または4に記載の熱間加工品の製造方法。
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